JP2013202822A - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】通常の加工を施してもガスバリア性が劣化せず、高いガスバリア性を持つ透明なガスバリア性積層フィルムの提供。
【解決手段】基材層1の表面上にガスバリア層2、ガスバリア被膜層3を順次積層し、ガスバリア層2は酸化珪素からなり、ガスバリア被膜層3は、一般式Si(ORで表される珪素化合物およびその加水分解物のうちの少なくとも1つと、一般式(RSi(ORで表される珪素化合物、およびその加水分解物のうちの少なくとも1つと、水酸基を有する水溶性高分子と、を含有する塗布液を塗布して乾燥してなり、前記ガスバリア層2の厚さ(X)が、3nm以上30nm以下であり、前記ガスバリア被膜層3の厚さ(Y)が、50nm以上3000nm以下であり、前記ガスバリア層2を積層する前記基材層1の表面の算術平均粗さRaがZ[nm]であり、X、YおよびZの関係が、XY≧1000、Z≦X/10の式を満たす。
【選択図】図1

Description

本発明は、食品、日用品、医薬品などの包装分野および太陽電池関連部材や電子機器関連部材などの分野において、特に高いガスバリア性が必要とされる場合に好適に用いられる透明なガスバリア性積層フィルムに関する。
食品、日用品、医薬品などの包装に用いられる包装材料は、収容物の変質を抑制して、その機能や性質を包装中においても保持できるようにするため、包装材料を透過する酸素、水蒸気など、収容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これらの気体を遮断するガスバリア性を備えていることが求められている。
通常のガスバリア性を有する包装材料としては、比較的ガスバリア性に優れている塩化ビニリデン樹脂フィルムまたは塩化ビニリデン樹脂をコーティングしたフィルムなどがよく用いられてきたが、これらの包装材料は、高度なガスバリア性が要求される包装に用いることはできない。従って、高度なガスバリア性が要求される場合においては、アルミニウムなどの金属箔をガスバリア層として積層した包装材料を用いざるを得なかった。アルミニウムなどの金属箔を積層した包装材料は、温度や湿度の影響が殆どなく、高度なガスバリア性を有している。しかし、こうした包装材料では、それを透視して収容物を確認することができない、使用後に不燃物として廃棄処理しなければならない、収容物の検査に金属探知器が使用できない、などの多くの欠点を有していた。
これらの欠点を克服した包装材料として、特許文献1には、透明なプラスチックフィルムからなる基材層に、透明な酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの無機酸化物の蒸着薄膜層をガスバリア層とし、その上に適宜のガスバリア性被膜層とを積層してなる積層フィルムが開示されている。
一方、近年、地球温暖化問題に対する関心が高まるなか、太陽電池市場が急速に拡大している。太陽電池の構造としては、太陽電池素子をその単体の状態でそのまま使用することはなく、一般的に数枚から数十枚の素子を直列、並列に配線し、素子を長期間保護するために、パッケージが行なわれ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを、太陽電池モジュールと呼び、一般的に太陽光が当たる面をガラスで覆い、熱可塑性プラスチックからなる充填材で隙間を埋め、裏面を耐熱、耐候性プラスチック材料などからなるシートで保護された構成になっている。
これらの太陽電池モジュールは、屋外で使用されるために、使用される材料およびその構成などにおいて、十分な耐久性、耐候性が要求される。特に、裏面保護シートは耐候性とともに高いガスバリア性が要求されている。これは、水分の透過によるユニット内の充填材が剥離したりして配線の腐食を起こし、モジュールの出力そのものに悪影響を及ぼすためである。
従来、この太陽電池用裏面保護シートとしては、白色のフッ素系フィルムでアルミニウム箔を両側からサンドイッチした積層構成が多く用いられていた。しかし、このフッ素系フィルムは、機械的強度が弱いので太陽電池素子とアルミニウム箔が短絡して電池性能に悪影響を及ぼす欠点がある。さらに価格が高いために太陽電池モジュールを低価格化する際に1つの障害となっている。
これらの問題点を改善するべく、アルミニウム箔を用いずに、耐候性と高いガスバリア性を兼ね備えたガスバリアフィルムの要求が高まっている。
また、この太陽電池モジュールをフレキシブル化させるべく開発も行なわれており、これを達成するためには太陽光が当たる表面のガラス基板もプラスチック材料などからなるシートに置き換える必要があり、この表面保護シートも裏面保護シートと同様に、耐候性および高いガスバリア性が要求されている。
また、近年、次世代のフラットパネルディスプレイ(FPD)として期待される電子ペーパー、有機ELなどの開発が進むなかで、これらFPDのフレキシブル化を達成するために、ガラス基板をプラスチックフィルムに置き換えたいという要求が高まっている。ガラス基板は環境由来の酸素や水蒸気による内部素子の劣化を抑制するため必要とされるガスバリア性が備わっている。しかし、上述した包装材料用のガスバリアフィルムは、そのバリアレベルに達しておらず、プラスチックフィルムが適用され得る電子ペーパー、有機ELなどでは、食品包材用バリアフィルムの100倍から1万倍のガスバリア性が必要とも言われている。
このような高いガスバリア性を有するプラスチックフィルムを実現するために電子ビーム蒸着や誘導加熱蒸着を用いた反応性蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD(化学的気相成長)法などのドライコーティング法により成膜された無機酸化物薄膜は、高いガスバリア性の発現が期待できるものとして検討されている。
その中で、有機シラン化合物を用いたプラズマ気相成長(PCVD)法による酸化珪素薄膜は、高いガスバリア性を発現するバリア層として検討されており、食品包装分野では実用化されている。特許文献2には炭素濃度および、酸化珪素薄膜の組成を制御することで、密着性と透明性が改善するとの報告がある。
特開平7−164591号公報 特開平11−322981号公報
しかしながら、特許文献1に記載された積層フィルムは、印刷、ラミネート、製袋などの、包装材料としての通常の加工を施したときに、酸素透過度や水蒸気透過度などのガスバリア性が劣化してしまうという欠点がある。また、高いガスバリア性を有するプラスチックフィルムを得るために上記ドライコーティング法を用いたとしても高いガスバリア性を目指すために緻密な膜を得ようとすると、高温プロセスが必要であったり、緻密であるために膜中の応力が大きくなったりする傾向があるため、プラスチックフィルムの使用可能な温度範囲では緻密な膜を得ることが困難であったり、プラスチックフィルムと無機酸化物薄膜との熱膨張係数の差が大きいため密着不良やクラックが発生したりする問題が生じ、高いガスバリア性の発現は容易ではない。
また、特許文献2に記載された透明バリア性フィルムは、水蒸気バリア性は若干劣ると記載されており、高いガスバリア性を必要とする電子ペーパーや有機ELなどのFPD向けとしては、ガスバリア性が不十分である。
そこで、本発明の目的は、食品、日用品、医薬品などの包装分野や、太陽電池関連部材や電子機器関連部材などの分野において、通常の加工を施してもガスバリア性が劣化しない、特に高いガスバリア性が必要とされる場合に好適に用いることができる透明なガスバリア性積層フィルムを提供することにある。また、本発明の目的は、上述した太陽電池モジュールの裏面保護シートや表面保護シート、電子ペーパーや有機ELなどのFPD向けとして、ガスバリア性が不十分である問題を解決するための、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れた、透明なガスバリア性積層フィルムを提供することにある。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、透明なプラスチックフィルムからなる基材層1の一方の表面上に、ガスバリア層2、ガスバリア被膜層3を順次積層してなるガスバリア性積層フィルムにおいて、
前記ガスバリア層2は酸化珪素からなり、
前記ガスバリア被膜層3は、
一般式Si(OR…(1)で表される珪素化合物およびその加水分解物のうちの少なくとも1つと、
一般式(RSi(OR…(2)で表される珪素化合物、およびその加水分解物のうちの少なくとも1つと、
(但し、一般式(1)および(2)中、R、RはCH、C、またはCOCH、Rは有機官能基を表し、nは1以上の整数を表す。)
水酸基を有する水溶性高分子と、
を含有する塗布液を塗布して乾燥させてなり、
前記ガスバリア層2の厚さ(X)が、3nm以上30nm以下であり、
前記ガスバリア被膜層3の厚さ(Y)が、50nm以上3000nm以下であり、
前記ガスバリア層2を積層する前記基材層1の表面の算術平均粗さRaがZ[nm]であり、
X、YおよびZの関係が、下記2つの式を満たすことを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
XY≧1000
Z≦X/10
(式中の厚さX、Yおよび算術平均粗さZの単位はnmである。)
また、請求項2に記載の発明は、前記基材層の表面上に積層した前記ガスバリア層2の厚さ(X)が、3nm以上15nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルム。
また、請求項3に記載の発明は、前記基材層の表面上に積層した前記ガスバリア層2が、プラズマ化学的気相成長法により形成されたことを特徴とする、請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
また、請求項4に記載の発明は、前記一般式(RSi(OR…(2)が、式(NCO−RSi(OR(但し、式中、Rは(CHを表し、nは1以上の数を表す)で表される三量体の1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
また、請求項5に記載の発明は、前記一般式Si(OR…(1)の(R)が、Cであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
また、請求項6に記載の発明は、前記一般式(RSi(OR…(2)が、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
本発明によれば、食品、日用品、医薬品などの包装分野において、包装材料としての通常の加工を施してもガスバリア性が劣化せず、また包装材料を透視して収容物を確認することができ、また、太陽電池モジュール向けやFPD向けとして特に高いガスバリア性が必要とされる場合に好適に用いることができる透明なガスバリア性積層フィルムを提供できる。
本発明の実施の形態におけるガスバリア性積層フィルムの断面図である。
以下、本発明のガスバリア性積層フィルムの実施形態を、図面に沿って説明する。図1は、ガスバリア性積層フィルムの一例の断面図である。ガスバリア性積層フィルム10は、基材層1の一方の表面上に、ガスバリア層2とガスバリア被膜層3とがそれらの厚み方向に順次積層されており、
上記ガスバリア層2は、酸化珪素からなり、
上記ガスバリア被膜層3は、
一般式Si(OR…(1)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つと、
一般式(RSi(OR…(2)で表される珪素化合物、およびその加水分解物のうちの少なくとも1つと、
(但し、一般式(1)および(2)中の、R、RはCH、C、またはCOCHを表し、Rは有機官能基を表し、nは1以上の整数を表す。)
水酸基を有する水溶性高分子と、
を含有する塗布液を、塗布、加熱および乾燥して得られる。
ガスバリア性積層フィルム10においての基材層1は透明なプラスチックフィルムからなっている。この透明なプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックフィルム、などが用いられる。
これらの透明なプラスチックフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械的強度や寸法安定性などが優れたものが好ましい。特に、耐熱性や寸法安定性などの面から、二軸方向に延伸したポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。また、透明なプラスチックフィルムは、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤等などの添加剤を含有してもよい。さらに、透明なプラスチックフィルムにおいて、他の層を積層する側の表面には、密着性をよくするために、コロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などを施してもよい。
これらの透明なプラスチックフィルムからなる基材層1の厚さは、特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性や他の層を積層する場合の加工適性などを考慮すると、実用的には3μm以上200μm以下の範囲、特に6μm以上30μm以下の範囲であることが好ましい。
また、ガスバリア性積層フィルム10において、ガスバリア層2を積層する基材層1の表面の平滑性は、高いガスバリア性を発現するための最も重要な特性の1つである。これは、基材層1の表面が平滑であればあるほど表面近傍からより緻密なガスバリア層を形成することができ、かつ均一な膜厚も得られやすいためであり、一般的には、表面の平滑性を示す算術平均粗さRaが5nm以下であることが、高いガスバリア性を発現させるための必要条件と考えられている。
ガスバリア性積層フィルム10において、ガスバリア層2の厚さX[nm]は、後述するように、生産性を考慮して3nm以上30nm以下と薄くしていることが特徴である。このようにガスバリア層2の膜厚を薄くする場合には、上述した算術平均粗さ5nm以下よりも更なる表面平滑性が求められ、算術平均粗さRaをZ[nm]、ガスバリア層2の厚さX[nm]とした場合、後述するように、Z≦X/10の式を満たす必要がある。
また、ガスバリア性積層フィルム10において、ガスバリア層2の形成方法は特に限定されるものではないが、基材層1の表面に、酸化珪素からなるガスバリア層2を真空中において成膜して、高いガスバリア性を発現させるためには、現時点ではプラズマCVD(化学的気相成長)法が好ましい。また、プラスチックフィルムからなる基材層1の特徴を活かした巻取式による連続蒸着を行うことができ、巻取式の真空蒸着成膜装置を用いることが好ましい。また、プラズマ発生装置としては、直流(DC)プラズマ、低周波プラズマ、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、3極構造プラズマ、マイクロ波プラズマなどの低温プラズマ発生装置が用いられる。
プラズマCVD法により積層される酸化珪素からなるガスバリア層2は、分子内に炭素を有するシラン化合物と酸素ガスを原料として成膜することができ、この原料に不活性ガスを加えて成膜することもできる。分子内に炭素を有するシラン化合物としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラメチルシラン(TMS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン。メチルトリメトキシシランなどの比較的低分子量のシラン化合物を選択し、これらシラン化合物の1つまたは、複数を選択しても良い。これらシラン化合物のうち、成膜圧力と蒸気圧を考えると、TEOS、TMOS、TMS、HMDSO、テトラメチルシランなどが好ましい。
プラズマCVD法による成膜では、上記シラン化合物を気化させ酸素ガスと混合したものを電極間に導入し、低温プラズマ発生装置にて電力を印加してプラズマ化し、上記基材層1の表面上に積層することができる。また、プラズマCVD法では、酸化珪素からなる上記ガスバリア層2の膜質を様々な方法で変えることが可能であり、例えば、シラン化合物やガス種の変更、シラン化合物と酸素ガスの混合比や、印加電力の増減などが考えられる。
また、ガスバリア層2の形成方法としてはプラズマCVD法に限らず、プラズマCVD法以外の真空蒸着法が好ましい。現時点の真空蒸着法において、真空蒸着装置内での蒸発源材料の加熱手段としては、電子線加熱方式や抵抗加熱方式や誘導加熱方式などが好ましい。また基材層1との密着性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法などを用いることも可能である。さらに、蒸着薄膜層の透明性を上げるために、酸素ガスなど吹き込んで反応性蒸着を行ってもよい。
ガスバリア性積層フィルム10において基材層1の表面上に積層したガスバリア層2は、透明であり、かつ酸素、水蒸気などの収容物を変質させる気体を遮断する優れたガスバリア性を有している。これらガスバリア層2の厚さX[nm]は3nm以上30nm以下、より好ましくは3nm以上15nm以下である。
ここで、膜厚が3nm未満であると、後述するように、ガスバリア層2を積層する基材層1の表面をいくら平滑にしても厚さが均一な薄膜層が得られないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない。
一方、膜厚を厚くすることで、高いガスバリア性を発現することが可能になるが、生産性の視点からは、できるだけ薄い膜厚で高いガスバリア性を発現することが好ましく、その点を考慮して、ガスバリア層2の厚さを30nm以下、より好ましくは15nm以下としたことが、本発明の重要なポイントである。
ガスバリア性積層フィルム10において、前述するように、ガスバリア層2を積層する基材層1の表面の平滑性は、高いガスバリア性を発現するための最も重要な特性の1つである。これは、基材層1の表面が平滑であればあるほど表面近傍からより緻密なガスバリア層を形成することができ、かつ、均一な膜厚も得られやすいため、高いガスバリア性を発現しやすくなる。この場合、ガスバリア層2の膜厚を薄くしても高いガスバリア性を発現することができるようになる。また逆に、基材層1の表面が平滑でなければないほど表面近傍に緻密なガスバリア層を形成することができず、かつ、均一な膜厚も得られにくいため、高いガスバリア性を発現しにくくなる。この場合は、ガスバリア性を発現させるため、ガスバリア層2の膜厚を厚くしなければならず、また、平滑性の悪い状態では、ガスバリア層の膜厚をどれだけ厚くしてもバリア性が発現しないこともある。
すなわち、ガスバリア層2の膜厚をX[nm]、基材層1の表面平滑性を示す算術平均粗さRaをZ[nm]とした場合、X[nm]は(3≦X≦30)の範囲において、高いガスバリア性を発現するためには、ガスバリア層2の厚さX[nm]が薄ければ薄いほど、算術平均粗さZ「nm」を小さくする必要があり、つまりXとZには正比例の関係が成り立ち、不等式Z≦αX(正数)を満たす必要がある。
さらにまた、上記αの値は、酸化珪素からなるガスバリア層2の形成方法、後述するようなガスバリア被膜層3を形成する塗布液の種類および硬化条件などにより異なるが、αを1/10以下にすることで、高いガスバリア性を発現することができるようになる。従って、上記のガスバリア層2の厚さX[nm]と算術平均粗さZ[nm]は不等式Z≦X/10を満たすことが好ましい。
本発明のガスバリア性積層フィルムにおいて、ガスバリア被膜層3は、
i)一般式Si(OR…(1)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つと、
ii)一般式(RSi(OR…(2)で表される珪素化合物、およびその加水分解物のうちの少なくとも1つと、
(但し、一般式(1)および(2)中、R、RはCH、C、またはCOCHを表し、Rは有機官能基を表し、nは1以上の整数を表す。)
及び
iii)水酸基を有する水溶性高分子と、
を含有する塗布液を塗布して乾燥させて得られる。
本発明によれば、ガスバリア被膜層3は、この3つの成分を含むことにより、十分に不溶化される。一般式(2)のRSi(ORは加水分解により、一般式(1)のSi(OR及び水酸基を有する水溶性高分子と水素結合を形成するため、バリアの孔になり難く、また一方で、有機官能基はネットワークをつくることで、水酸基を有する水溶性高分子が、その水素結合に水が付加することにより膨潤することを防ぎ、耐水性を著しく向上させる。
また、基材層1上に、上記ガスバリア被膜層3を、上記ガスバリア層2と組み合わせて設けることにより、より高いガスバリア性が得られる。
なお、ここで、バリアの孔とは、膜の中の緻密なネットワークを作らず気体の透過を容易にする部分をいう。
一般式(1)中、Rは、CH、C、またはCOCH等で表せるものであればいずれも使用することができる。なかでも、RがCであるテトラエトキシシランが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるため好ましい。
金属アルコキシドは加水分解後に縮合し、セラミック膜を形成する。しかし、金属酸化物は硬く、さらに縮合時の体積縮小による歪みによりクラックが入りやすいため、フィルム上に薄く透明で均一な縮合体被膜を形成することは非常に困難である。そこで、高分子を添加することによって構造体に柔軟性を付与しクラックを防止して造膜することができる。しかし高分子の添加は目視では均一でも、微視的には珪素または金属酸化物と高分子部分とに分離していることが多く、バリアの孔になりやすく、ガスバリア性が低下しやすい。
そこで、水酸基を有する水溶性高分子を添加することにより、高分子の水酸基と金属アルコキシドの加水分解物の水酸基との強い水素結合を利用して、金属酸化物が縮合に際し高分子との間にうまく分散してセラミックに近い高いガスバリア性を発現する。また、この被膜を酸化珪素からなるガスバリア層の上に堆積することで、それぞれ単層によって得られる効果よりも、非常に高いガスバリア性、耐水性、耐湿性を発現する。しかし、金属アルコキシドあるいはその加水分解物と水酸基を有する水溶性高分子の混合からなる被膜層は、水素結合からなるため、水により膨潤して溶解する。ガスバリア層との積層構造による相乗効果があってもボイルやレトルト処理等の過酷な条件下ではガスバリア性が劣化しやすい。
これに対し本発明では、上記一般式(2)の化合物を添加することにより、この膨潤を防ぐことができる。
一般式(2)の有機官能基(R)が、ビニル、エポキシ、メタクリロキシ、ウレイド及びイソシアネート等の非水性官能基であることが好ましい。非水官能基は、官能基が疎水性であるため、耐水性はさらに向上する。
一般式(2)で表される化合物が多量体である場合は、三量体が好ましく、より好ましくは、一般式(NCO−RSi(OR(式中、Rは(CH、nは1以上)で表される1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートである。これは、3−イソシアネートアルキルアルコキシシランの縮合体である。
この1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、イソシアヌレート部には化学的反応性はなくなるが、ヌレート部の極性により反応と同様の性能を示すことが知られている。一般的には、3−イソシアネートアルキルアルコキシシランと同様に接着剤などに添加され、接着性向上剤として知られている。よって、1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートをSi(OR)と、水酸基を有する水溶性高分子に添加することにより、水素結合に基づくガスバリア性積層フィルムが水による膨潤することを防ぎ、耐水性を向上させることができる。また、3−イソシアネートアルキルアルコキシシランは、反応性が高く、液安定性が低いのに対し、ヌレート部はその極性により水溶性ではないが、水系液中に分散しやすく、液粘度を安定に保つことができ、その耐水性性能は3−イソシアネートアルキルアルコキシシランと同等である。さらに、ヌレート部は耐水性があるのみでなく、その極性によりSi(ORと、水酸基を有する水溶性高分子はバリアの孔になりにくい。
1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、3−イソシアネートプロピルアルコキシシランの熱重合により製造されるものもあり、原料の3−イソシアネートプロピルアルコキシシランが含まれる場合もあるが、特に問題はない。さらに好ましくは、1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートであり、さらにまた好ましくは、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートである。
このメトキシ基は、加水分解速度が早く、また、プロピル基を含むものは比較的安価に入手しえることから、実用上のメリットが大きい。
また、一般式(2)の有機官能基Rとして、3−グリシドキシプロピル基、あるいは2−(3,4エポキシシクロヘキシル)基が好ましく使用できる。これらの有機官能基は、加水分解により、一般式(1)のSi(OR及び水溶性高分子と水素結合を形成するために、バリアの孔になり難く、ガスバリア性を損なうことなく耐水性を向上することができる。
しかしながら、上述のようなエポキシ系シラン化合物の一部は、変異原性を有する場合がある。また、有機官能基(R)が、ビニル及びメタクリロキシの場合、製造過程で紫外線または電子線等の照射が必要となり設備及び工程の増加によりコスト高を招く傾向がある。有機官能基(R)が、ウレイドの場合は、特有の臭気があり、また、イソシアネートの場合は、反応性が高く、ポットライフが短い。このようなことなどから、本発明に使用されるii)の成分としては、1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートがより好ましいと考えられる。
本発明でのガスバリア性積層フィルムにおけるガスバリア被膜層3中の水酸基を有する水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、でんぷん、セルロース類が好ましい。特に、ポリビニルアルコール(以下、PVAと呼ぶ)を本発明のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れる。それは、PVAはモノマー単位中に最も多く水酸基を含む高分子であるため加水分解後の金属アルコキシドの水酸基と非常に強固な水素結合を持つことができるためである。ここで言うPVAとは、一般にポリ酢酸ビニルをケン化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分ケン化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全ケン化PVAまでを含む。PVAの分子量は重合度が300〜数千まで多種あるが、どの分子量のものを用いても効果に問題はない。しかし、一般的にケン化度が高く、また重合度が高い高分子量のPVAは耐水性が高いため好ましい。
Si(ORの加水分解方法は、一般的に知られているように、酸またはアルカリ触媒とアルコール、水を用いて行なわれる。好ましくは、酸による加水分解が制御しやすく好ましい。このとき、加水分解をさらに制御するために一般的に知られている触媒、塩化錫やアセチルアセトナートなどを添加しても問題ない。
塗布液の混合方法では、加水分解したSi(OR、水酸基を有する水溶性高分子、及び(RSi(ORを、どの順番で混合しても効果は発現する。(RSi(ORは、混合して、塗布液中で分散せずに油滴状に存在するような場合は、上述のように加水分解を行い、微分散させることが好ましい。特にSi(ORと(RSi(ORを別々に加水分解してから水溶性高分子に添加すれば、SiOの微分散およびSi(ORの加水分解効率を考慮すると望ましい。
ガスバリア被膜層を形成するための塗布液へは、インキ、接着剤との密着性、濡れ性、収縮によるクラック発生防止を考慮して、イソシアネート化合物、コロイダルシリカやスメクタイトなどの粘土鉱物や、安定化剤、着色剤、粘度調整剤などの公知の添加物などを、ガスバリア性や耐水性を阻害しない範囲で添加することができる。
上記ガスバリア被膜層3の形成方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等を用いることができる。これらの塗工方式を用いてガスバリア層の上に塗布し、乾燥させる。
このガスバリア被膜層3の乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など被膜層に熱をかけて、水分を飛ばす方法のいずれでも、またこれらを2つ以上組み合わせても構わない。
本発明のガスバリア性積層フィルム10におけるガスバリア被膜層3の役割は、優れたガスバリア性を有するガスバリア層2に対して、印刷、ラミネート、製袋などの通常の加工を施した場合の保護機能、および折り曲げや引っ張りなどの外部応力が加わった場合の保護機能、上述してきたガスバリア被膜層3それ自体の高いガスバリア性の発現、ガスバリア層2の表面に形成することでガスバリア層の欠陥などを穴埋めしてガスバリア性を向上する機能、さらにはガスバリア被膜層形成時の硬化収縮による内部応力によりガスバリア層を引き締めることで発現するガスバリア性を向上する機能である。
上記ガスバリア被膜層3の厚さYは50nm以上3000nm以下であることが好ましい。膜厚が50nm未満であると、均一な被膜層を形成することが難しく十分な保護機能およびガスバリア性が発現しなく、また、ガスバリア被膜層3形成時の硬化収縮による内部応力が僅かに生じるだけで、ガスバリア層2を被膜層3が十分に引き締めることができないため、上記ガスバリア性向上機能もあまり期待できない。また、膜厚が3000nmを超えると、ガスバリア被膜層3形成時にクラックが発生しやすくなり、さらに硬化収縮による内部応力が過度に働き、ガスバリア層2との密着性が低下する可能性が高くなる。
また、上記ガスバリア被膜層3が上述した硬化収縮によるガスバリア性向上機能を発揮し、かつ密着性も低下させないためには、上記ガスバリア被膜層3の厚さと酸化珪素からなる上記ガスバリア層2の厚さとのバランスも考慮する必要がある。すなわち、上述したように、ガスバリア被膜層3の役割の1つに、ガスバリア被膜層3形成時の硬化収縮による内部応力によりガスバリア層を引き締めることでガスバリア性を向上させる機能があるが、上記内部応力はガスバリア被膜層3の厚さが厚くなるほどガスバリア層2に大きく働き、また、上記内部応力に対するガスバリア層2の抵抗力は、ガスバリア層2の厚さが厚くなるほど小さくなり、例えば、同程度の内部応力がガスバリア層2に働いたとしても、ガスバリア層2の厚さが厚くなるに伴い、内部応力に耐え切れず、密着性は低下する傾向がある。
また、上記ガスバリア被膜層3は、上述した塗布液を塗布し、熱をかけて乾燥することで、硬化して形成することができるが、このときプラスチックフィルムからなる基材層1は軟化する傾向があり、そこに上述した硬化収縮による内部応力がかかると密着性が低下する原因となる。
つまり、密着性良好なガスバリア性積層フィルムを作成するためには、ガスバリア層の厚さXの上限値とガスバリア被膜層の厚さYの上限値とに反比例の関係が成り立ち、それぞれの厚さXおよびYは不等式XY≦β1(正数)を満たす必要がある。また、上記β1の値は、酸化珪素からなるガスバリア層2の形成方法、ガスバリア被膜層3の硬化条件などにより異なるが、基材層1の表面上にガスバリア層2、およびガスバリア被膜層3を順次積層した場合は、β1は500,000以下で、ガスバリア性積層フィルムの密着性は概ね良好になる。しかしながら、本発明のガスバリア性積層フィルムでは、ガスバリア層2の厚さXを30nm以下に薄くすることが特徴であり、更にガスバリア性被膜層3の厚さYを3000nm以下としているため、この範囲においては、不等式XY≦500,000を常に満たしており、上述した密着性に関しては特に心配する必要はない。
さらに、上述したように、ガスバリア被膜層3形成時の硬化収縮による内部応力は、ガスバリア被膜層3の厚さが厚くなるほど大きくなり、ガスバリア層2の抵抗力は、ガスバリア層2の厚さが厚くなるほど小さくなる。すなわち、上述したガスバリア層2の厚さX[nm]は(3≦X≦30)、ガスバリア被膜層3の厚さY[nm](50≦Y≦3000)の範囲において、ガスバリア層2の厚さXが厚くなるに伴い、さらにガスバリア被膜層3の厚さYが厚くなるに伴い、上述したガスバリア層2を引き締めることにより発現するガスバリア性向上機能の効果は大きくなる。しかし、言い換えれば、ガスバリア層2の厚さXが薄い場合には、ガスバリア被膜層3の厚さYを厚く、ガスバリア被膜層3の厚さYが薄い場合には、ガスバリア層2の厚さXを厚くしなければ、上記ガスバリア性向上機能は十分には発現しないこととなる。つまり、上記ガスバリア性向上機能を十分に発現するためには、酸化珪素からなる上記ガスバリア層2の厚さXの下限値と上記ガスバリア被膜層3の厚さYの下限値とに反比例の関係が成り立ち、それぞれの厚さX、Yは不等式XY≧β2(正数)を満たす必要がある。
さらにまた、上記β2の値は、酸化珪素からなるガスバリア層2の形成方法、ガスバリア被膜層3を形成する上述した塗布液の種類および硬化条件などにより異なるが、β2は1000以上で、ガスバリア性向上機能が十分に働くようになる。従って、上記厚さX、Yは不等式XY≧1000を満たすことが好ましい。
すなわち、本発明のガスバリア性積層フィルムにおいて、上述したようにガスバリア層2の厚さが薄い場合でも、基材層1の平滑性により高いガスバリア性を発現することができ、かつ上記ガスバリア被膜層3が上述したガスバリア性向上機能を発揮し、かつ密着性も低下させないためには、酸化珪素からなる上記ガスバリア層2の厚さX[nm](3≦X≦30)と、上記ガスバリア被膜層3の厚さY[nm](50≦Y≦3000)と、基材層1の表面平滑性を示す算術平均粗さZ[nm]とが、下記2つの不等式を満たすことが好ましい。
XY≧1000
Z≦X/10
なお、式中のX、Yの単位はnmである。
本発明のガスバリア積層フィルムは、
ガスバリア被膜層3が、一般式Si(ORで表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ、一般式(RSi(ORで表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ(但し、R、RはCH、C、またはCOCHを表し、Rは有機官能基を表し、nは1以上の数を表す)、水酸基を有する水溶性高分子と、を含有する塗布液を塗布、加熱、および乾燥して得られ、かつ、X、Y、Zが上記特定の不等式を満たすことにより、ガスバリア層2の膜厚が薄い場合でも高いバリア性を発現することができる。特に、前述するように、生産性を高めるためガスバリア層2の膜厚を薄くして15nm以下とする場合や、後述するような複雑な積層構造を有する場合であっても、基材層とガスバリア層との密着やガスバリア層とガスバリア被膜層との密着を保持しつつ高いバリア性を有することができる。
本発明のガスバリア性積層フィルムは、基材層1の一方の面に、酸化珪素からなるガスバリア層2と、ガスバリア被膜層3、が厚み方向に順次積層されており、かつガスバリア被膜層3は、
一般式Si(OR…(1)で表される珪素化合物およびその加水分解物のうちの少なくとも1つと、
一般式(RSi(OR…(2)で表される珪素化合物、およびその加水分解物のうちの少なくとも1つと、
(但し、R、RはCH、C、またはCOCH、Rは有機官能基)
および
水酸基を有する水溶性高分子とを含有する塗布液を塗布、加熱および乾燥して得られていればよく、さらに複雑な積層構造をとっていてもよい。
たとえば、ガスバリア被膜層3の上にガスバリア層とガスバリア被膜層との積層体を積層してもよい。さらに、ガスバリア被膜層3の表面に印刷層を積層してもよい。この場合、従来から用いられている通常の印刷インキを用い、周知の印刷方式や塗布方式などによって、厚さ0.1μm以上2.0μm以下の印刷層を特に制約なく積層することができる。
本発明のガスバリア性積層フィルムを他のフィルムと積層して、食品、日用品、医薬品などの包装分野や太陽電池関連部材や電子機器関連部材などの分野において用いることもできる。たとえば、包装分野では、本発明のガスバリア性積層フィルムを最外層として使用し、接着剤を介して中間フィルム層やヒートシール層などを積層した構成にしてもよい。また、本発明のガスバリア性積層フィルムを中間層として使用し、その片面側に接着剤を介して外側フィルム層などを積層し、そのもう一方の面側に接着剤を介してヒートシール層などを積層した構成にしてもよい。
上記の中間フィルム層または外側フィルム層としては透明なフィルム層が用いられる。こうした透明なフィルム層としては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアクリルニトリル系フィルム、ポリイミド系フィルムなどが挙げられる。上記のヒートシール層としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、およびこれらの金属架橋物、などの合成樹脂が用いられる。中間フィルム層、外側フィルム層、ヒートシール層の厚さは、目的に応じて決められるが、一般的には15μm以上200μm以下の範囲である。上記の接着剤としては、1液硬化型または2液硬化型のポリウレタン系接着剤などが用いられる。接着剤を介してこれらの層を積層するには、ドライラミネート法などが用いることができる。また、ヒートシール層の他の積層方法として、ヒートシール層の合成樹脂を、熱溶融押出する方法(エクストルージョンラミ)を用いることもできる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。以下の実施例1、2、3、4においては、図1に示したように、基材層1の一方の表面上に、ガスバリア層2と、ガスバリア被膜層3を順次積層したガスバリア性積層フィルムを作製した。
基材層1として、厚さ25μm、ガスバリア層2を積層する表面の算術平均粗さRaが1nmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、真空蒸着装置内に設置した。ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)5sccm/酸素100sccmの混合ガスを電極間に導入し、13.56MHzの高周波を0.5kW印加してプラズマ化し、基材層1の表面上(Ra=1nm)に厚さ20nmの酸化珪素からなるガスバリア層2を積層した。
次に、下記方法にて調液した溶液(A)から(C)をA/B/C=100/20/10(固形分重量比)の割合で混合し、この塗布液をバーコーターにより上記ガスバリア層2の表面上に塗布し、120℃で1分間乾燥させ、300nmのガスバリア被膜層3を形成した。こうして実施例1のガスバリア性積層フィルムを作製した。
≪ガスバリア被膜層用の溶液≫
(A):テトラエトキシシラン(Si(OC、以下、TEOSと称す)17.9gと、メタノール10gに塩酸(0.1N)72.1gを加え、30分間撹拌し、加水分解させた固形分5%(重量比SiO換算)の加水分解溶液
(B):ポリビニルアルコールの5%(重量比)、水/メタノール=95/5(重量比)水溶液
(C):1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを、水/IPA=1/1溶液で、固形分5%(重量比RSi(OH)換算)
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、ガスバリア層2を積層する表面の算術平均粗さRaを0.3nmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして実施例2のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、ガスバリア層2を積層する表面の算術平均粗さRaを0.3nm、酸化珪素からなるガスバリア層3の厚さを10nmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして実施例3のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、基材層1の表面に積層したガスバリア層2を電子線加熱方式で酸化珪素を蒸発させて、厚さ20nmのガスバリア層にした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして実施例4のガスバリア性積層フィルムを作製した。
比較例1
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、基材層1の表面上に酸化珪素からなるガスバリア層2を積層し、ガスバリア被膜層3は積層しなかった。こうして比較例1のガスバリア性積層フィルムを作製した。
比較例2
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、ガスバリア層2を積層する表面の算術平均粗さRaを8nmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして比較例2のガスバリア性積層フィルムを作製した。
比較例3
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、ガスバリア層2を積層する表面の算術平均粗さRaを2nm、酸化珪素からなるガスバリア層3の厚さを10nmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして比較例3のガスバリア性積層フィルムを作製した。
比較例4
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、ガスバリア層2の表面に積層したガスバリア被膜層3の厚さを30nmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして比較例4のガスバリア性積層フィルムを作製した。
以下、上記のようにして作製した実施例1、2、3、4および比較例1、2、3、4のそれぞれのガスバリア性積層フィルムを単体フィルムという。
次に、実施例1、2、3、4および比較例2、3、4のそれぞれの単体フィルムの被膜層3の表面および比較例1の単体フィルムのガスバリア層2の表面に、厚さ1.2μmの印刷層を積層した。以下、これらを印刷フィルムという。
次に、実施例1、2、3、4および比較例1、2、3、4のそれぞれの印刷フィルムの印刷層の表面に、5g/m2のポリウレタン系接着剤を介して厚さ50μmのポリプロピレンのヒートシール層を積層した。以下、これらを積層フィルムという。
<比較評価>
1.酸素透過度
実施例1、2、3、4および比較例1、2、3、4の単体フィルム、印刷フィルムおよび積層フィルムについて、モダンコントロール社製の酸素透過度計(MOCON OX−TRAN 2/21)により、30℃−70%RH雰囲気下での酸素透過度(cc/m・24h・MPa)を測定した。
2.水蒸気透過度
実施例1、2、3、4および比較例1、2、3、4の単体フィルムについて、モダンコントロール社製の水蒸気透過度計(MOCON PERMATRAN−W 3/31)により、40℃−90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m・24h)を測定した。
3.ラミネート強度
実施例1、2、3、4および比較例1、2、3、4の積層フィルムから15mm幅にスリットした試験片について、通常のテンシロン型万能試験機により、ラミネート強度(N/15mm)を測定した。
これらの測定結果を表1に示す。
Figure 2013202822
この表1からわかるように、実施例1、実施例2、実施例3および実施例4のガスバリア性積層フィルム(単体フィルム、印刷フィルムおよび積層フィルム)は、低い酸素透過度および水蒸気透過度と、高いラミネート強度を兼ね備えている。
一方、ガスバリア被膜層が積層されていない比較例1のガスバリア性積層フィルムからなる印刷フィルムおよび積層フィルムは、実施例1、実施例2および実施例3のガスバリア性積層フィルムと比較して、酸素透過度が高くガスバリア性に劣っていた。
また、ガスバリア層2をプラズマCVD法により形成し、ガスバリア層2の厚さX[nm]、ガスバリア層2を積層する基材層1の表面の算術平均粗さZ[nm]がZ>X/10となる比較例2、比較例3のガスバリア性積層フィルム(単体フィルム、印刷フィルムおよび積層フィルム)は、実施例1、実施例2および実施例3のガスバリア性積層フィルムと比較して、酸素透過度および水蒸気透過度がともに高く、ガスバリア性に劣っていた。
更に、ガスバリア層2をプラズマCVD法により形成し、ガスバリア層2の厚さX[nm]、ガスバリア被膜層3の厚さY[nm]がXY<1000となる比較例4のガスバリア性積層フィルムは、実施例1、実施例2および実施例3のガスバリア性積層フィルムと比較して、酸素透過度が高くガスバリア性に劣っていた。
本発明のガスバリア性積層フィルムは、食品、日用品、医薬品などの包装分野、および太陽電池関連部材や電子機器関連部材などの分野において、特に高いガスバリア性が必要とされる場合に好適に用いられる。
1…基材層
2…ガスバリア層
3…ガスバリア被膜層
10…ガスバリア性積層フィルム

Claims (6)

  1. 透明なプラスチックフィルムからなる基材層1の一方の表面上に、ガスバリア層2、ガスバリア被膜層3を順次積層してなるガスバリア性積層フィルムにおいて、
    前記ガスバリア層2は、酸化珪素からなり、
    前記ガスバリア被膜層3は、
    一般式Si(OR…(1)で表される珪素化合物およびその加水分解物のうちの少なくとも1つと、
    一般式(RSi(OR…(2)で表される珪素化合物、およびその加水分解物のうちの少なくとも1つと、
    (但し、一般式(1)および(2)中、R、RはCH、C、またはCOCH、Rは有機官能基を表し、nは1以上の整数を表す。)
    水酸基を有する水溶性高分子と
    を含有する塗布液を、塗布して乾燥させてなり、
    前記ガスバリア層2の厚さ(X)が、3nm以上30nm以下であり、
    前記ガスバリア被膜層3の厚さ(Y)が、50nm以上3000nm以下であり、
    前記ガスバリア層2を積層する前記基材層1の表面の算術平均粗さRaがZ[nm]であり、
    X、YおよびZの関係が、下記2つの式を満たすことを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
    XY≧1000
    Z≦X/10
    (式中の厚さX、Yおよび算術平均粗さZの単位はnmである。)
  2. 前記基材層の表面上に積層した前記ガスバリア層2の厚さ(X)が、3nm以上15nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルム。
  3. 前記基材層の表面上に積層した前記ガスバリア層2が、プラズマ化学的気相成長法により形成されたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガスバリア性積層フィルム。
  4. 前記一般式(RSi(OR…(2)が、
    式(NCO−RSi(OR(但し、式中、Rは(CHを表し、nは1以上の数を表す)で表される三量体の1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートであることを特徴とする請求項1から3のいずれかの請求項に記載のガスバリア性積層フィルム。
  5. 前記一般式Si(OR…(1)の(R)が、Cであることを特徴とする請求項1から4のいずれかの請求項に記載のガスバリア性積層フィルム。
  6. 前記一般式(RSi(OR…(2)が、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
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