JP2012183668A - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】 高いガスバリア性を要求するFPD向けを含む分野でも好適に使用する。
【解決手段】 透明なプラスチックフィルムからなる基材層1の一方の表面上に、プライマー層2、ガスバリア層3、ガスバリア被膜層4、ガスバリア層5及びガスバリア被膜層6を順次積層してなるガスバリア性積層フィルムであって、プライマー層2は、アクリルポリオール、イソシアネート及びシランカップリング剤を含み、前記ガスバリア層3,5は、酸化珪素からなり、ガスバリア被膜層4,6は、一般式Si(OR1)4…(1)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つと、一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つと、水酸基を有する水溶性高分子を含む塗布液を塗布して乾燥させることにより得るガスバリア性積層フィルム。
【選択図】図1
【解決手段】 透明なプラスチックフィルムからなる基材層1の一方の表面上に、プライマー層2、ガスバリア層3、ガスバリア被膜層4、ガスバリア層5及びガスバリア被膜層6を順次積層してなるガスバリア性積層フィルムであって、プライマー層2は、アクリルポリオール、イソシアネート及びシランカップリング剤を含み、前記ガスバリア層3,5は、酸化珪素からなり、ガスバリア被膜層4,6は、一般式Si(OR1)4…(1)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つと、一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つと、水酸基を有する水溶性高分子を含む塗布液を塗布して乾燥させることにより得るガスバリア性積層フィルム。
【選択図】図1
Description
本発明は、食品、日用品、医薬品などの包装分野や太陽電池関連部材、電子機器関連部材などの分野のごとく、特に高いガスバリア性が必要とされる場合に好適に用いられる透明なガスバリア性積層フィルムに関する。
食品、日用品、医薬品などの包装に用いられる包装材料は、収容物の変質を抑制し、包装中においてもその機能や性質を保持できるようにするためには、包装材料を透過する酸素、水蒸気など、収容物を変質させる気体による影響を防止する必要がある。そのため、包装材料は、これら気体を遮断するガスバリア性を備えていることが求められている。
従来、比較的ガスバリア性に優れている包装材料としては、塩化ビニリデン樹脂フィルムまたは塩化ビニリデン樹脂をコーティングしたフィルムなどがよく用いられてきたが、これらの包装材料は、高度なガスバリア性が要求される包装に用いることはできない。
従って、高度なガスバリア性を要求される場合には、アルミニウムなどの金属箔をガスバリア層として積層した包装材料として用いざるを得なかった。アルミニウムなどの金属箔を積層した包装材料は、温度や湿度の影響を殆ど受けないことから、高度なガスバリア性を有している。
しかしながら、以上のようなアルミニウムなどの金属箔などの包装材料では、幾つかの問題が指摘されている。すなわち、外部から透視して収容物を確認することができないこと、使用後に不燃物として廃棄処理しなければならないこと、さらに収容物の検査に金属探知器が使用できないこと、などの多くの問題を併存している。
そこで、上記問題点を克服するための包装材料として、透明なプラスチックフィルムからなる基材層に、ガスバリア層として透明な酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの無機酸化物の蒸着薄膜層を施し、その上に適宜なガスバリア性被膜層を積層してなる積層フィルムが提案されている(特許文献1)。
ところで、近年、地球温暖化の問題に関心が高まるなか、太陽電池市場が急速に拡大する傾向にある。太陽電池の構造は、太陽電池素子単体をそのままの状態で使用することはなく、一般的には数枚から数十枚の素子を直列、並列に配線し、素子を長期間保護するためにパッケージが行なわれ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットは、太陽電池モジュールと呼び、通常,太陽光が当たる面をガラスで覆い、熱可塑性プラスチックからなる充填材で隙間を埋め、裏面を耐熱、耐候性プラスチック材料などからなるシートで保護する構成になっている。
これら太陽電池モジュールは、屋外で使用されることから、その使用材料およびその構成などに関して、十分な耐久性、耐候性が要求される。特に、裏面側の保護シートは、水分の透過によるユニット内の充填材が剥離すると、配線系統に腐食が生じ、モジュールの出力そのものに悪影響を及ぼすことから、耐候性とともに高いガスバリア性が要求される。
従来、太陽電池用裏面保護シートとしては、白色のフッ素系フィルムでアルミニウム箔の両側をサンドイッチした積層構成が多く用いられている。
しかし、フッ素系フィルムは、機械的強度が弱いため太陽電池素子とアルミニウム箔が短絡して電池性能に悪影響を及ぼす欠点があり、さらに価格が高いために、太陽電池モジュールを低価格化する際の障害となっている。これらの問題点を改善すべく、アルミニウム箔を用いずに、耐候性と高いガスバリア性を兼ね備えたガスバリアフィルムの要求が高まっている。
また、太陽電池モジュールをフレキシブル化する開発も進められており、これを達成するためには太陽光が当たる表面のガラス基板をプラスチック材料などからなるシートに置き換える必要があり、表面保護シートについても裏面保護シートと同様に、耐候性および高いガスバリア性が要求されている。
さらに、近年、次世代のFPD(Flat Panel Display)として期待されている電子ペーパー、有機ELなどの開発が進んでおり、これらFPDのフレキシブル化を実現するためには、ガラス基板をプラスチックフィルムに置き換えたいという要求が高まっている。
ガラス基板は環境由来の酸素や水蒸気による内部素子の劣化を抑制するために必要とされるガスバリア性が備わっている。しかし、上述した包装材料用のガスバリアフィルムはそのバリアレベルには達しておらず、プラスチックフィルムが適用され得る電子ペーパー、有機ELなどでは、食品包材用バリアフィルムの100倍から1万倍のガスバリア性が必要とも言われている。
このような高いガスバリア性を有するプラスチックフィルムを実現するために、電子ビーム蒸着や誘導加熱蒸着を用いた反応性蒸着法、スパッタリング法、プラズマ化学蒸着(CVD)法などのドライコーティング法で成膜された無機酸化物薄膜が高いガスバリア性を有するとして期待され、検討されている。
その中でも、有機シラン化合物を用いたプラズマCVD法による酸化珪素薄膜は、高いガスバリア性を有するバリア層として検討されており、食品包装分野で実用化されている。特許文献2には炭素濃度及び酸化珪素薄膜の組成を制御することで、密着性と透明性が改善できるとする報告がなされている
しかしながら、特許文献1に記載された積層フィルムでは、印刷、ラミネート、製袋などのように通常の加工を施した包装材料として使用する場合、酸素透過度や水蒸気透過度などのガスバリア性が劣化してしまうといった欠点を有している。
そこで、高いガスバリア性を有するプラスチックフィルムを実現するためには、前述するドライコーティング法を用い、かつ、高いガスバリア性を目指すために緻密な膜を得ようとすると、高温プロセスが必要であったり、緻密であるために膜中の応力が大きくなったりする傾向がある。その結果、プラスチックフィルムの使用可能な温度範囲では緻密な膜を得ることが困難であったり、プラスチックフィルムと無機酸化物薄膜との熱膨張係数の差が大きいために密着不良やクラックが発生するなどの問題が生じ、高いガスバリア性の発現は容易でない。
また、特許文献2に記載された透明バリア性フィルムは、水蒸気バリア性が若干劣ると記載されており、高いガスバリア性を必要とする電子ペーパーや有機ELなどのFPD向けには不十分である。
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、通常の加工を施した場合でもガスバリア性が劣化せず、一般的な包装分野だけでなく、高いガスバリア性を要求する包装分野でも好適に使用可能な透明なガスバリア性積層フィルムを提供することを目的とする。
特に、本発明の目的は、前述した太陽電池モジュールの裏面保護シート、表面保護シート、電子ペーパーや有機ELなどのFPD向けに使用して、酸素及び水蒸気などに対するバリア性に優れた透明なガスバリア性積層フィルムを提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、透明なプラスチックフィルムからなる基材層の一方の表面上に、プライマー層、第1のガスバリア層、第1のガスバリア被膜層、第2のガスバリア層及び第2のガスバリア被膜層を順次積層してなるガスバリア性積層フィルムであって、
前記プライマー層は、アクリルポリオール、イソシアネート及びシランカップリング剤を含むことにより両面に配置される部材層との密着性を高め、
前記第1及び第2のガスバリア層は、酸化珪素からなり、
前記第1及び第2のガスバリア被膜層は、一般式Si(OR1)4…(1)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つの成分と、一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ(但し、前記一般式(1)および(2)中、R1、R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3、R2は有機官能基を表す)の成分と、水酸基を有する水溶性高分子を含有する塗布液を塗布して乾燥させることを含むことにより、前記第1及び第2のガスバリア層のガスバリア性及び前記耐水性を上げるようにしたことを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
前記プライマー層は、アクリルポリオール、イソシアネート及びシランカップリング剤を含むことにより両面に配置される部材層との密着性を高め、
前記第1及び第2のガスバリア層は、酸化珪素からなり、
前記第1及び第2のガスバリア被膜層は、一般式Si(OR1)4…(1)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つの成分と、一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ(但し、前記一般式(1)および(2)中、R1、R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3、R2は有機官能基を表す)の成分と、水酸基を有する水溶性高分子を含有する塗布液を塗布して乾燥させることを含むことにより、前記第1及び第2のガスバリア層のガスバリア性及び前記耐水性を上げるようにしたことを特徴とするガスバリア性積層フィルムである。
請求項2に対応する発明は、前記プライマー層の膜厚が、0.005μm以上1μm以下であり、前記第1のガスバリア層の膜厚(厚さXa)及び前記第2のガスバリア層の膜厚(厚さXb)が、0.005μm以上2μm以下であり、前記第1のガスバリア被膜層の膜厚(厚さYa)及び前記第2のガスバリア被膜層の膜厚(厚さYb)が、0.05μm以上3μm以下であり、
前記Xa、Xb、YaおよびYbの関係が、下記3つの式を満たすことを特徴とする請求項1に対応する発明に記載のガスバリア性積層フィルムである。
前記Xa、Xb、YaおよびYbの関係が、下記3つの式を満たすことを特徴とする請求項1に対応する発明に記載のガスバリア性積層フィルムである。
0.001≦XaYa
0.001≦XbYb
XaYa+(Xa+Xb)Yb≦2.0
(式中のXa、Xb、Ya、Ybの厚さの単位はμmである)
請求項3に対応する発明は、前記プライマー層及び前記第1のガスバリア被膜層の各面上に積層される前記第1のガスバリア層および前記第2のガスバリア層が、プラズマ化学蒸着(CVD)法により形成することを特徴とする請求項1に対応する発明に記載のガスバリア性積層フィルムである。
0.001≦XbYb
XaYa+(Xa+Xb)Yb≦2.0
(式中のXa、Xb、Ya、Ybの厚さの単位はμmである)
請求項3に対応する発明は、前記プライマー層及び前記第1のガスバリア被膜層の各面上に積層される前記第1のガスバリア層および前記第2のガスバリア層が、プラズマ化学蒸着(CVD)法により形成することを特徴とする請求項1に対応する発明に記載のガスバリア性積層フィルムである。
請求項4に対応する発明は、前記第1のガスバリア層の膜厚(厚さXa)および前記第2のガスバリア層の膜厚(厚さXb)が、0.2μm以上2μm以下であることを特徴とする請求項1ないし3に対応する発明の何れか一項の発明に記載のガスバリア性積層フィルムである。
また、請求項5に対応する発明は、前記一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)は、式(NCO−R4Si(OR3)3)3(但し、式中、R4は(CH2)n、nは1以上)で表される三量体1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートであることを特徴とする請求項1ないし4に対応する発明の何れか一項の発明に記載のガスバリア性積層フィルムである。
また、請求項6に対応する発明は、前記一般式Si(OR1)4…(1)は、その加水分解性基(R1)がC2H5であることを特徴とする請求項1ないし4に対応する発明の何れか一項の発明に記載のガスバリア性積層フィルムである。
さらに、請求項7に対応する発明は、前記一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)は、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートであることを特徴とする請求項1ないし4に対応する発明の何れか一項の発明に記載のガスバリア性積層フィルムである。
本発明によれば、食品、日用品、医薬品などの包装分野で使用する包装材料としての通常の加工を施してもガスバリア性が劣化せず、また外部から包装材料を透視して内部の収容物を確認することができ、また、太陽電池モジュール向けやFPD向けとして特に高いガスバリア性が必要とされる場合に好適に用いることができる透明なガスバリア性積層フィルムを提供できる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るガスバリア性積層フィルムの一例を示す断面図である。
図1は本発明に係るガスバリア性積層フィルムの一例を示す断面図である。
ガスバリア性積層フィルムは、基材層1の一方面部(表面)に、プライマー層2、酸化珪素からなるガスバリア層3、ガスバリア被膜層4、酸化珪素からなるガスバリア層5及びガスバリア被膜層6の順序で積層された構造である。
プライマー層2は、アクリルポリオール、イソシアネートおよびシランカップリング剤からなる。
また、ガスバリア被膜層4及びガスバリア被膜層6においては、
一般式Si(OR1)4 ……(1)
で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つである、
一般式(R2Si(OR3)3)n ……(2)
で表される珪素化合物、及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ、
(但し、一般式(1)および(2)中の、R1、R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3を表し、R2は有機官能基を表し、nは1以上の数を表す)及び水酸基を有する水溶性高分子を含有する塗布液を塗布、加熱、および乾燥することで得られる。
一般式Si(OR1)4 ……(1)
で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つである、
一般式(R2Si(OR3)3)n ……(2)
で表される珪素化合物、及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ、
(但し、一般式(1)および(2)中の、R1、R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3を表し、R2は有機官能基を表し、nは1以上の数を表す)及び水酸基を有する水溶性高分子を含有する塗布液を塗布、加熱、および乾燥することで得られる。
以下、構成部材について詳細に説明する。
ガスバリア性積層フィルムの構成層となる基材層1は透明なプラスチックフィルムからなる。透明なプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックフィルムなどが用いられる。
これら透明なプラスチックフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械的強度や寸法安定性などが優れたものが好ましい。特に、耐熱性や寸法安定性などの面から、二軸方向に延伸したポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、透明なプラスチックフィルムは、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤等などの添加剤を含有してもよい。さらに、透明なプラスチックフィルムにおいて、他の層を積層する側の表面には、密着性をよくするために、コロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などを施してもよい。
これら透明なプラスチックフィルムからなる基材層1の厚さは、特に制限を受けるものでないが、包装材料としての適性や他の層を積層する場合の加工適性などを考慮すると、実用的には3μm以上200μm以下の範囲、特に6μm以上30μm以下の範囲であることが好ましい。特に、太陽電池、もしくは電子ペーパーや有機ELなどのFPD向けの場合には、加工適正などを考慮すると、実用的には12μm以上200μm以下の範囲であることが好ましい。
ガスバリア性積層フィルムの構成層となるプライマー層2は、基材層1とガスバリア層3との間で安定した高い密着性を保持することを役割とするものであり、後述するように高いガスバリア性の発現を狙って、ガスバリア層3、ガスバリア被膜層4、ガスバリア層5およびガスバリア被膜層6の膜厚を厚くしたときに、特に重要な働きを持っている。
プライマー層2としては、例えばアクリルポリオール、ポリビニルアセタール、ポリ−スチルポリオール、及びポリウレタンポリオール等から選択されるポリオール類と、イソシアネート化合物との2液反応によって得られる有機高分子、またはポリイソシアネート化合物と水との反応によりウレア結合を有する有機化合物、ポリエチレンイミンまたはその誘導体、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン、フェノール、また有機変性コロイダルシリカのような無機シリカ、シランカップリング剤およびその加水分解物のような有機シラン化合物を主剤とするものなどが挙げられる。
特に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物、シランカップリング剤の組み合わせが好ましい。この組み合わせからなるプライマー層2を用いると、基材層1とガスバリア層3の間に、安定したさらに高い密着性を得ることができる。
プライマー層2の厚さは、一般的には乾燥後の厚さで、0.005μm以上1μm以下であることが望ましく、より好ましくは0.01μm以上0.5μm以下である。0.01μm未満の場合は塗工技術の点から均一な塗膜が得られ難く、逆に0.5μmより大きい場合はコストが高くなり、経済的にデメリットとなる。
ガスバリア性積層フィルムの構成層となるガスバリア層3及びガスバリア層5の形成方法については特に限定されるものではないが、プライマー層2及びガスバリア被膜層4の各表面にそれぞれ、酸化珪素からなるガスバリア層3、ガスバリア層5を真空中で成膜した際、高いガスバリア性を発現させる必要から、現時点ではプラズマCVD法が好ましい。また、プラスチックフィルムからなる基材層1の特徴を活かした巻取式による連続蒸着を行うことができ、巻取式の真空蒸着成膜装置を用いることが好ましい。また、プラズマ発生装置としては、直流(DC)プラズマ、低周波プラズマ、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、3極構造プラズマ、マイクロ波プラズマなどの低温プラズマ発生装置が用いられる。
プラズマCVD法により積層される酸化珪素からなるガスバリア層3およびガスバリア層5は、分子内に炭素を有するシラン化合物と酸素ガスとを原料として成膜することができ、さらに、この原料に不活性ガスを加えて成膜することもできる。
分子内に炭素を有するシラン化合物としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラメチルシラン(TMS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン。メチルトリメトキシシランなどの比較的低分子量のシラン化合物を選択し、これらシラン化合物の1つまたは複数を選択しても良い。これらシラン化合物のうち、成膜圧力と蒸気圧を考えると、TEOS、TMOS、TMS、HMDSO、テトラメチルシランなどが好ましい。
プラズマCVD法による成膜では、上記シラン化合物を気化させ酸素ガスと混合したものを電極間に導入し、低温プラズマ発生装置にて電力を印加してプラズマ化し、プライマー層2の表面上及びガスバリア被膜層4の表面上に積層することができる。
また、プラズマCVD法では、酸化珪素からなるガスバリア層3及びガスバリア層5の膜質を様々な方法で変えることが可能である。例えば、シラン化合物やガス種の変更、シラン化合物と酸素ガスの混合比や、印加電力の増減などが考えられる。
また、プラズマCVD法以外のガスバリア層3及びガスバリア層5の形成方法としては、真空蒸着法が好ましい。現時点の真空蒸着法では、真空蒸着装置内での蒸発源材料の加熱手段としては、電子線加熱方式や抵抗加熱方式や誘導加熱方式などが好ましい。また、プライマー層2及びガスバリア被膜層4との密着性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法などを用いることも可能である。さらに、蒸着薄膜層の透明性を上げるために、酸素ガスなど吹き込んで反応性蒸着を行ってもよい。
ガスバリア層3及びガスバリア層5は、プライマー層2及びガスバリア被膜層4の表面上にそれぞれ積層され、透明であり、かつ酸素、水蒸気などの収容物を変質させる気体を遮断する特性を備えた優れたガスバリア性を有している。これらガスバリア層3の厚さXa[μm]及びガスバリア層5の厚さXb[μm]は、各々が0.005μm以上2μm以下、より好ましくは0.2μm以上2μm以下である。ここで、膜厚が0.005μm未満であると、均一な蒸着薄膜層が得られないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない。また、本発明の重要なポイントの1つでもあり、膜厚を0.2μm以上に厚くすることで、高いガスバリア性を発現することが可能になる。
しかし、後述するように密着性が低下する原因になりうるため、前述するように基材層1とガスバリア層3との間にプライマー層2を形成して安定した高い密着性を発現させたり、後述するようにガスバリア層3、ガスバリア被膜層4、ガスバリア層5及びガスバリア被膜層6、それぞれの膜厚のバランスを制御して、密着性が低下しないようにするなど、十分に注意を払う必要がある。
一方、膜厚が2μmを越えると、蒸着薄膜層にフレキシビリティを保持させることが難しく、折り曲げや引っ張りなどの外部応力が加わると、蒸着薄膜層に亀裂を生じるおそれがある。
ガスバリア性積層フィルムの構成層となるガスバリア被膜層4およびガスバリア被膜層6は、
1) 前記一般式(1)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ、
2) 前記一般式(2)で表される珪素化合物、その加水分解物のうちの少なくとも1つ(但し、R1、R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3、R2は有機官能基)、及び
3) 水酸基を有する水溶性高分子を含有する塗布液を塗布、加熱、および乾燥して得るものである。
1) 前記一般式(1)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ、
2) 前記一般式(2)で表される珪素化合物、その加水分解物のうちの少なくとも1つ(但し、R1、R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3、R2は有機官能基)、及び
3) 水酸基を有する水溶性高分子を含有する塗布液を塗布、加熱、および乾燥して得るものである。
従って、前述した実施形態によれば、ガスバリア被膜層4,6は、上記3つの成分を含むことにより、十分に不溶化される。一般式(2)のR2Si(OR3)3は加水分解により、一般式(1)のSi(OR1)4及び水溶性高分子と水素結合を形成されることから、バリアの孔になり難く、しかも、有機官能基はネットワークをつくることで、水酸基を有する水溶性高分子が、その水素結合に水が付加することにより膨潤することを防ぎ、耐水性を著しく向上させる。
なお、バリアの孔とは、膜の中の緻密なネットワークを作らず気体の透過を容易にする部分をいう。
また、基材層1上に形成されるガスバリア層3、ガスバリア層5にそれぞれガスバリア被膜層4、ガスバリア被膜層6を被覆し組合せるように設けることにより、高いガスバリア性が得られる。
なお、一般式(1)中のR1は、CH3、C2H5またはC2H4OCH3等で表せるものであればいずれも使用することができる。なかでも、R1がC2H5であるテトラエトキシシランが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるため好ましい。
ガスバリア被膜層4、6の成膜に用いられる金属アルコキシドは、加水分解後に縮合し、セラミック膜を形成する。しかし、金属酸化物は硬く、縮合時の体積縮小による歪みによってクラックが入りやすいため、フィルム上に薄く透明で均一な縮合体被膜を形成することは非常に困難である。
通常,高分子を添加して構造体に柔軟性を付与することで、クラックの生じ難い造膜とすることができる。しかし、高分子の添加は、目視では均一に見えても、微視的には珪素または金属酸化物と高分子部分とに分離していることが多く、バリアの孔になり易く、ガスバリア性が低下しやすい。
そこで、ガスバリア被膜層4、6としては、水酸基を有する水溶性高分子を添加することにより、高分子の水酸基と金属アルコキシドの加水分解物の水酸基との強い水素結合を利用して、金属酸化物が縮合に際し高分子との間にうまく分散してセラミックに近い高いガスバリア性を発現する。また、ガスバリア被膜層4、6が酸化珪素からなるガスバリア層3,5の上に堆積することで、それぞれ単層によって得られる効果よりも、非常に高いガスバリア性、耐水性、耐湿性を発現できる。
しかし、金属アルコキシドあるいはその加水分解物と水酸基を有する水溶性高分子の混合からなる被膜層は、水素結合からなるため、水により膨潤して溶解する。ガスバリア層との積層構造による相乗効果があってもボイルやレトルト処理等の過酷な条件下ではガスバリア性が劣化しやすい。
これに対して、本発明に係るガスバリア性積層フィルムでは、前記一般式(2)の化合物を添加することにより、この膨潤を防ぐことができる。
前記一般式(2)は、その有機官能基(R2)が、ビニル、エポキシ、メタクリロキシ、ウレイド及びイソシアネート等の非水性官能基であることが好ましい。非水官能基は、官能基が疎水性であるため、さらに耐水性が向上する。
一般式(2)で表される化合物が多量体である場合は、三量体が好ましい。より好ましくは、一般式(NCO−R4Si(O3)3)3(式中、R4は(CH2)n、nは1以上)で表される1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートである。これは、3−イソシアネートアルキルアルコキシシランの縮合体である。
この1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、イソシアヌレート部には化学的反応性がなくなるが、ヌレート部の極性により反応と同様の性能を示すことが知られている。一般的には、3−イソシアネートアルキルアルコキシシランと同様に接着剤などに添加され、接着性向上剤として知られている。よって、1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートを、Si(OR1)と水酸基を有する水溶性高分子とに添加することにより、水素結合に基づくガスバリア性積層フィルムが水による膨潤することを防ぎ、耐水性を向上させることができる。
また、3−イソシアネートアルキルアルコキシシランは、反応性が高く、液安定性が低いのに対し、ヌレート部はその極性により水溶性ではないが、水系液中に分散しやすく、液粘度を安定に保つことができ、その耐水性性能は3−イソシアネートアルキルアルコキシシランと同等である。さらに、ヌレート部は、耐水性があるのみでなく、その極性によりSi(OR1)4と、水酸基を有する水溶性高分子はバリアの孔になり難い。
1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、3−イソシアネートプロピルアルコキシシランの熱重合により製造されるものもあり、原料の3−イソシアネートプロピルアルコキシシランが含まれる場合もあるが、特に問題はない。さらに、好ましくは、1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートであり、さらにまた好ましくは、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートである。
このメトキシ基は、加水分解速度が早く、プロピル基を含むものは比較的安価に入手できることから、実用上のメリットが大きい。
また、一般式(2)の有機官能基R2としては、3−グリシドキシプロピル基、あるいは2−(3,4エポキシシクロヘキシル)基の使用が好ましい。これらの有機官能基は、加水分解により、一般式(1)のSi(OR1)4及び水溶性高分子と水素結合を形成するために、バリアの孔になり難く、ガスバリア性を損なうことなく耐水性を向上させることができる。
しかしながら、前述したエポキシ系シラン化合物の一部は、変異原性を有する場合がある。また、有機官能基(R2)が、ビニル及びメタクリロキシの場合、製造過程で紫外線または電子線等の照射が必要となり、設備及び工程の増加によってコスト高を招く傾向がある。有機官能基(R2)がウレイドの場合は、特有の臭気があり、また、イソシアネートの場合は、反応性が高く、ポットライフが短い。
従って、以上の点を考慮すると、本発明に使用される前記2)の成分としては、1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートがより好ましいと考えられる。
よって、ガスバリア性積層フィルムにおけるガスバリア被膜層4,6中の水酸基を有する水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、でんぷん、セルロース類が好ましい。特に本発明のコーティング剤としては、ポリビニルアルコール(以下、PVA)を用いた場合にガスバリア性が最も優れたものとなる。それは、PVAは、モノマー単位中に最も多く水酸基を含む高分子であるため、加水分解後の金属アルコキシドの水酸基と非常に強固な水素結合を保つことができるためである。ここで、PVAとは、一般にポリ酢酸ビニルをケン化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分ケン化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全ケン化PVAまでを含む。PVAの分子量は重合度が300〜数千まで多種あるが、どの分子量のものを用いても効果には問題はない。しかし、一般的にケン化度が高く、また重合度が高い高分子量のPVAは耐水性が高いため好ましい。
なお、Si(OR1)4の加水分解法は、一般的に知られているように、酸またはアルカリ触媒とアルコール、水を用いて行なわれる。好ましくは、酸による加水分解が制御しやすく好ましい。このとき、加水分解をさらに制御するために一般的に知られている触媒、塩化錫やアセチルアセトナートなどを添加しても問題はない。
塗布液の混合方法では、加水分解したSi(OR1)4、水酸基をもつ水溶性高分子及び(R2Si(OR3)3)nの何れを、どの順番で混合したとしても効果は発現できる。(R2Si(OR3)3)nは、混合して、コーティング溶液中で分散せずに油滴状に存在するような場合は、前述したように加水分解を行い、微分散させることが好ましい。特に、Si(OR1)4と(R2Si(OR3)3)nを別々に加水分解してから水溶性高分子に添加すれば、SiO2の微分散およびSi(OR1)4の加水分解効率を考慮すると望ましい。
ガスバリア被膜層4,6を形成するための塗布液には、インキ、接着剤との密着性、濡れ性、収縮によるクラック発生防止を考慮し、イソシアネート化合物、コロイダルシリカやスメクタイトなどの粘土鉱物や、安定化剤、着色剤、粘度調整剤などの公知の添加物などを、ガスバリア性や耐水性を阻害しない範囲で添加することができる。
ガスバリア被膜層4,6の形成方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等を用いることができる。これら塗工方式を用いてガスバリア層3,5の上に塗布する。
ガスバリア被膜層4,6の乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など被膜層に熱をかけて、水分を飛ばす方法であれば、これらのいずれでも、またこれらを2つ以上組み合わせても構わない。
本発明のガスバリア性積層フィルムを構成するガスバリア被膜層4,6の役割は、優れたガスバリア性を有するガスバリア層3,5に対して、印刷、ラミネート、製袋などの通常の加工を施した場合の保護機能、及び折り曲げ、引っ張りなどの外部応力が加わった場合の保護機能を有する。さらに、ガスバリア被膜層4,6の役割は、前述したガスバリア被膜層4,6それ自体の高いガスバリア性の発現、ガスバリア層3,5の表面に形成することでガスバリア層の欠陥などを穴埋めしてガスバリア性を向上する機能及びガスバリア被膜層4,6形成時の硬化収縮による内部応力によりガスバリア層を引き締めることで発現するガスバリア性向上機能などが挙げられる。
前記ガスバリア被膜層4の厚さYa及び前記ガスバリア被膜層6の厚さYbは0.05μm以上3μm以下であることが好ましい。膜厚が0.05μm未満であると、均一な被膜層を形成することが難しく十分な保護機能およびガスバリア性が発現しなくなり、また、ガスバリア被膜層4,6形成時の硬化収縮による内部応力が僅かに生じるだけで、ガスバリア層3をガスバリア被膜層4が十分に引き締めることができず、かつ、ガスバリア層5をガスバリア被膜層6が十分に引き締めることができなくなり、ガスバリア性の向上機能があまり期待できない。
また、膜厚が3μmを超えると、ガスバリア被膜層4,6形成時にクラックが発生し易くなり、さらに硬化収縮による内部応力が過度に働き、ガスバリア層3,5との密着性が低下する可能性が高くなる。
また、前記ガスバリア被膜層4,6が前述した硬化収縮によるガスバリア性の向上機能を発揮し、かつ密着性も低下させないためには、その被膜層4,6の厚さと酸化珪素からなる前記ガスバリア層3,5の厚さとのバランスも考慮する必要がある。すなわち、前述したように、ガスバリア被膜層4,6の役割の1つに、ガスバリア被膜層4,6形成時の硬化収縮による内部応力によりガスバリア層を引き締めることでガスバリア性を向上させる機能があるが、内部応力はガスバリア被膜層4,6の厚さが厚くなるほどガスバリア層3,5に大きく働く。
また、内部応力に対するガスバリア層3,5の抵抗力は、ガスバリア層3,55の厚さが厚くなるほど小さくなり、例えば、同程度の内部応力がガスバリア層3,55に作用したとしても、ガスバリア層3,5の厚さが厚くなるに伴い、内部応力に耐え切れず、密着性は低下する傾向がある。
また、ガスバリア被膜層4,6は、前述した塗布液を塗布し熱をかけて乾燥することで、硬化して形成することができるが、このときプラスチックフィルムからなる基材層1は軟化する傾向があり、そこに前述した硬化収縮による内部応力がかかると密着性が低下する原因となる。
すなわち、本発明のように、基材層1の一方の表面上に、プライマー層2、ガスバリア層3、ガスバリア被膜層4、ガスバリア層5及びガスバリア被膜層6を積層する場合、基材層1を2度にわたり熱をかけて乾燥してガスバリア被膜層4,6を硬化する必要があるため、乾燥による基材層1の軟化および前述した密着性の低下に起因する硬化収縮による内部応力の発生が2度起きることとなる。その結果、基材層1にプライマー層2、ガスバリア層3、ガスバリア被膜層4を積層した場合よりも、密着性が低下する可能性が高く、例えば、同じ厚さのガスバリア層と同じ厚さのガスバリア被膜層とを、基材層1の一方の表面上に、プライマー層2を形成した後、ガスバリア層3とガスバリア被膜層4のみを積層する場合と、さらにガスバリア層5とガスバリア被膜層6とを積層する場合とでは、後者の場合の方が密着性は低下する。
すなわち、密着性良好なガスバリア性積層フィルムを作成するためには、ガスバリア層3,5の厚さの上限値とガスバリア被膜層4,6の厚さの上限値とに反比例する関係が成り立つことになる。まず、基材層1の一方の表面上に、プライマー層2を形成せずに、ガスバリア層3とガスバリア被膜層4のみを積層する場合、ガスバリア被膜層4形成時の硬化収縮による内部応力はガスバリア層5には働かず、ガスバリア層3にのみ働くため、ガスバリア層3の厚さXa[μm]の上限値とガスバリア被膜層4の厚さYa[μm]の上限値とに反比例の関係が成り立ち、それぞれの厚さXaおよびYaは不等式XaYa≦α1(正数)を満たす必要がある。
また、基材層1の一方の表面上に、プライマー層2を形成せずに、ガスバリア層3とガスバリア被膜層4を積層した後、ガスバリア層5とガスバリア被膜層6とを積層する場合には、被膜層6形成時の硬化収縮による内部応力はガスバリア層3とガスバリア層5の両方に働くため、ガスバリア層3の厚さXa[μm]とガスバリア層5の厚さXb[μm]とを合わせた上限値と被膜層6の厚さYbとに反比例の関係が成り立ち、それぞれの厚さXa、XbおよびYbは不等式(Xa+Xb)Yb≦α2(正数)を満たす必要がある。
従って、基材層1の一方の表面上に、プライマー層2を形成せずに、ガスバリア層3、ガスバリア被膜層4、ガスバリア層5及びガスバリア被膜層6を順次積層する場合には、ガスバリア被膜層4,6形成時の両方において硬化収縮による内部応力を考慮しなければならないため、前述した2つの不等式を合わせたXaYa+(Xa+Xb)Yb≦α1+α2=α(正数)を満たす必要がある。
また、αの値は、酸化珪素からなるガスバリア層3,5の形成方法、ガスバリア被膜層4,6を形成する前述した塗布液の種類および硬化条件などにより異なるが、基材層1の表面上にプライマー層2を形成せず、直接、ガスバリア層3、ガスバリア被膜層4、ガスバリア層5及びガスバリア被膜層6を順次積層した場合は、αは0.4以下で、ガスバリア性積層フィルムの密着性は概ね良好になる。
さらに、本発明のガスバリア性積層フィルムのように、安定した高い密着性を得るために基材層1の表面上にプライマー層2を形成した後、ガスバリア層3、ガスバリア被膜層4、ガスバリア層5及びガスバリア被膜層6を順次積層した場合は、αの値を更に大きくすることが可能になり、αは2.0以下で、ガスバリア性積層フィルムの密着性は概ね良好になる。従って、厚さXa、Xb、Ya及びYbは、不等式XaYa+(Xa+Xb)≦2.0を満たすことが好ましい。
さらにまた、ガスバリア被膜層4形成時の硬化収縮による内部応力は、ガスバリア被膜層4の厚さが厚くなるほど大きくなり、ガスバリア層3の抵抗力は、ガスバリア層3の厚さが厚くなるほど小さくなる。すなわち、ガスバリア層3の厚さXa[μm]は(0.005≦Xa≦2)、ガスバリア被膜層4の厚さYa[μm](0.05≦Ya≦3)の範囲において、ガスバリア層3の厚さXaが厚くなるに伴い、さらにガスバリア被膜層4の厚さYaが厚くなるに伴い、ガスバリア層3を引き締めることにより発現するガスバリア性の向上機能の効果は大きくなる。しかし、言い換えれば、ガスバリア層3の厚さXaが薄い場合には、ガスバリア被膜層4の厚さYaを厚く、ガスバリア被膜層4の厚さYaが薄い場合には、ガスバリア層3の厚さXaを厚くしなければ、ガスバリア性の向上機能は十分に発現しないこととなる。つまり、ガスバリア性の向上機能を十分に発現するためには、酸化珪素からなるガスバリア層3の厚さXaの下限値とガスバリア被膜層4の厚さYaの下限値とに反比例の関係が成り立ち、それぞれの厚さXa、Yaは不等式XaYa≧β1(正数)を満たす必要がある。
さらにまた、ガスバリア層3とガスバリア被膜層4の関係と同様に、ガスバリア被膜層6形成時の硬化収縮による内部応力は、ガスバリア被膜層6の厚さが厚くなるほど大きくなり、ガスバリア層5の抵抗力は、ガスバリア層5の厚さが厚くなるほど小さくなる。すなわち、ガスバリア層5の厚さXb[μm]は(0.005≦Xb≦2)、ガスバリア被膜層6の厚さYb[μm](0.05≦Yb≦3)の範囲において、ガスバリア層5の厚さXaが厚くなるに伴い、さらにガスバリア被膜層6の厚さYaが厚くなるに伴い、ガスバリア層5を引き締めることにより、発現するガスバリア性向上機能の効果は大きくなる。
しかし、言い換えれば、ガスバリア層5の厚さXbが薄い場合には、ガスバリア被膜層6の厚さYbを厚く、ガスバリア被膜層6の厚さYbが薄い場合には、ガスバリア層5の厚さXbを厚くしなければ、上記ガスバリア性向上機能は十分には発現しないこととなる。つまり、ガスバリア性の向上機能を十分に発現するためには、酸化珪素からなるガスバリア層5の厚さXbの下限値とガスバリア被膜層6の厚さYbの下限値とに反比例の関係が成り立ち、それぞれの厚さXb、Ybは不等式XbYb≧β2(正数)を満たす必要がある。
さらにまた、前記β1およびβ2の値は、酸化珪素からなるガスバリア層3,5の形成方法、ガスバリア被膜層4,6を形成する前述した塗布液の種類および硬化条件などにより異なるが、β1およびβ2は0.001以上で、ガスバリア性向上機能が十分に働くようになる。従って、厚さXa、Yaは不等式XaYa≧0.001を満たし、厚さXb、Ybも不等式XbYb≧0.001を満たすことが好ましい。
すなわち、ガスバリア被膜層3,5がガスバリア性の向上機能を発揮し、かつ密着性も低下させないためには、酸化珪素からなるガスバリア層3の厚さXa[μm]及びガスバリア層5の厚さXb[μm](0.005≦Xa(もしくはXb)≦2)とガスバリア被膜層4の厚さYa[μm]及びガスバリア被膜層6の厚さYb[μm](0.05≦Ya(もしくはYb)≦3)とが、下記3つの不等式を満たすことが好ましい。
0.001≦XaYa
0.001≦XbYb
XaYa+(Xa+Xb)Yb≦2.0
なお、式中のXa、Xb、Ya、Ybの単位はμmである。
0.001≦XaYa
0.001≦XbYb
XaYa+(Xa+Xb)Yb≦2.0
なお、式中のXa、Xb、Ya、Ybの単位はμmである。
本発明のガスバリア積層フィルムは、プライマー層2が、アクリルポリオール、イソシアネート及びシランカップリング剤からなり、かつ、ガスバリア被膜層4,6が、一般式Si(OR1)4で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ、一般式(R2Si(OR3)3)nで表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ(但し、R1、R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3を表し、R2は有機官能基を表し、nは1以上の数を表す)、水酸基を有する水溶性高分子とを含有する塗布液を塗布、加熱及び乾燥して得られ、かつ、Xa、Xb、Ya、Yb、が前記特定の不等式を満たすことにより、密着性と高いバリア性を両立することができる。特に、本発明のガスバリア性積層フィルムのようにガスバリア層3,5とガスバリア被膜層4,6の4層構造を有する場合や、前述するように高いガスバリア性を発現させるためにガスバリア層3,5の膜厚を厚くして、0.2μm以上とする場合や、後述するような複雑な積層構造を有する場合であっても、基材層1とガスバリア層との密着やガスバリア層3,5とガスバリア被膜層4,6との密着を保持しつつ高いバリア性を有することができる。
本発明のガスバリア性積層フィルムは、基材層1の一方の面に、少なくともアクリルポリオール、イソシアネート、およびシランカップリング剤からなるプライマー層2と、酸化珪素からなるガスバリア層3と、ガスバリア被膜層4と、酸化珪素からなるガスバリア層5と、ガスバリア被膜層6とが厚み方向に順次積層されており、かつ、これらガスバリア被膜層4およびガスバリア被膜層6は、前記一般式(1)で表される珪素化合物およびその加水分解物のうちの少なくとも1つ、前記一般式(2)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ、但し、R1、R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3、R2は有機官能基)及び水酸基を有する水溶性高(分子を含有する塗布液を、塗布、加熱及び乾燥して得られていればよく、さらに複雑な積層構造をとっていてもよい。
例えば、プライマー層2とガスバリア層3とガスバリア被膜層4とガスバリア層5とガスバリア被膜層6の積層体の上にガスバリア層とガスバリア被膜層との積層体を積層してもよい。さらに、基材層1のプライマー層2とガスバリア層3とガスバリア被膜層4とガスバリア層5とガスバリア被膜層6とが積層されていないもう基材層1の面に、ガスバリア層3とガスバリア被膜層4とをそれぞれ順次積層してもよい。さらにまた、ガスバリア被膜層6の表面に印刷層を積層してもよい。この場合、従来から用いられている通常の印刷インキを用い、周知の印刷方式や塗布方式などによって、厚さ0.1〜2.0μmの印刷層を特に制約なく積層することができる。
本発明のガスバリア性積層フィルムとしては、他のフィルムと積層して、食品、日用品、医薬品などの包装分野や太陽電池関連部材や電子機器関連部材などの分野で用いることもできる。例えば、本発明のガスバリア性積層フィルムを最外層として使用し、接着剤を介して中間フィルム層やヒートシール層などを積層した構成にしてもよい。また、本発明のガスバリア性積層フィルムを中間層として使用し、その片面側に接着剤を介して外側フィルム層などを積層し、そのもう一方の面側に接着剤を介してヒートシール層などを積層した構成にしてもよい。
前記中間フィルム層または外側フィルム層としては透明なフィルム層が用いられる。こうした透明なフィルム層としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアクリルニトリル系フィルム、ポリイミド系フィルムなどが挙げられる。
なお、前述するヒートシール層としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体及びこれらの金属架橋物などの合成樹脂が用いられる。中間フィルム層、外側フィルム層、ヒートシール層の厚さは、目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。上記の接着剤としては、1液硬化型または2液硬化型のポリウレタン系接着剤などが用いられる。接着剤を介してこれらの層を積層するには、ドライラミネート法などが用いることができる。また、ヒートシール層の他の積層方法としては、ヒートシール層の合成樹脂を、熱溶融押出する方法(エクストルージョンラミ)を用いることもできる。
以下、本発明について、実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
実施例1、2、3では、図1に示したように、基材層1の一方の表面上にプライマー層2、ガスバリア層3、ガスバリア被膜層4、ガスバリア層5及びガスバリア被膜層6の順序で順次積層したガスバリア性積層フィルムを作製した。
基材層1として厚さ25μmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、基材層1の一方の表面上に、下記方法により調液した溶液(I)を塗布し、120℃で1分間乾燥させ、0.2μmのプライマー層2を形成した。
次に、プライマー層2を形成したPETフィルムを真空蒸着装置内に設置した。ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)5sccm/酸素100sccmの混合ガスを電極間に導入し、13.56MHzの高周波を0.5kWで印加してプラズマ化し、プライマー層2の表面上に厚さ0.03μmの酸化珪素からなるガスバリア層3を積層した。
引き続き、下記方法にて調液した溶液(A)から(C)をA/B/C=100/20/10(固形分重量比)の割合で混合し、この塗布液をバーコーターにより上記ガスバリア層3の表面上に塗布し、120℃で1分間乾燥させ、0.3μmのガスバリア被膜層4を形成した。
≪プライマー層用の溶液≫
(I):希釈溶媒(酢酸エチル)中、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン1重量部に対し、アクリルポリオールを5重量部量りとり混合し、撹拌する。次にイソシアネート化合物としてTDIをアクリルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を2%の濃度に希釈した溶液。
(I):希釈溶媒(酢酸エチル)中、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン1重量部に対し、アクリルポリオールを5重量部量りとり混合し、撹拌する。次にイソシアネート化合物としてTDIをアクリルポリオールのOH基に対しNCO基が等量となるように加えた混合溶液を2%の濃度に希釈した溶液。
≪ガスバリア被膜層用の溶液≫
(A):テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4、以下、TEOSと称す)17.9gと、メタノール10gに塩酸(0.1N)72.1gを加え、30分間撹拌し、加水分解させた固形分5%(重量比SiO2換算)の加水分解溶液。
(B):ポリビニルアルコールの5%(重量比)、水/メタノール=95/5(重量比)水溶液。
(C):1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを、水/IPA=1/1溶液で、固形分5%(重量比R2Si(OH)3換算)。
(A):テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4、以下、TEOSと称す)17.9gと、メタノール10gに塩酸(0.1N)72.1gを加え、30分間撹拌し、加水分解させた固形分5%(重量比SiO2換算)の加水分解溶液。
(B):ポリビニルアルコールの5%(重量比)、水/メタノール=95/5(重量比)水溶液。
(C):1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを、水/IPA=1/1溶液で、固形分5%(重量比R2Si(OH)3換算)。
次に、真空蒸着装置内に再び設置し、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)5sccm/酸素100sccmの混合ガスを電極間に導入し、13.56MHzの高周波を0.5kWで印加してプラズマ化し、ガスバリア被膜層4の表面上に厚さ0.03μmの酸化珪素からなるガスバリア層5を積層した。
さらに、上記方法にて調液した溶液(A)から(C)をA/B/C=100/20/10(固形分重量比)の割合で混合し、この塗布液をバーコーターにより上記ガスバリア層5の表面上に塗布し、120℃で1分間乾燥させ、0.3μmのガスバリア被膜層6を形成した。こうして実施例1のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、プライマー層2の表面上およびガスバリア被膜層4の表面上に積層した酸化珪素からなるガスバリア層3およびガスバリア層5の厚さを共に0.3μmにし、さらにガスバリア層3の表面およびガスバリア層5の表面に積層したガスバリア被膜層4およびガスバリア被膜層6の厚さを共に0.5μmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして実施例2のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、プライマー層2の表面上及びガスバリア被膜層4の表面上に積層したガスバリア層3及びガスバリア層5を電子線加熱方式で酸化珪素を蒸発させて、共に厚さ0.03μmのガスバリア層にした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして実施例3のガスバリア性積層フィルムを作成した。
次に、比較例1〜3について説明する。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、プライマー層2の一方の表面上に酸化珪素からなるガスバリア層3及びガスバリア層5のみを積層し、ガスバリア被膜層4及びガスバリア被膜層6は積層しなかった。こうして比較例1のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例2のガスバリア性積層フィルムにおいて、基材層1の表面にプライマー層2を積層せず、ガスバリア層3、ガスバリア被膜層4、ガスバリア層5及びガスバリア被膜層6を積層した。こうして比較例2のガスバリア性積層フィルムを作製した。
実施例1のガスバリア性積層フィルムにおいて、プライマー層2の表面上及びガスバリア被膜層4の表面上に積層した酸化珪素からなるガスバリア層3及びガスバリア層5の厚さを1μmにし、さらにガスバリア層3の表面及びガスバリア層5の表面に積層したガスバリア被膜層4及びガスバリア被膜層6の厚さを1μmにした。その他の条件は実施例1と同様であった。こうして比較例3のガスバリア性積層フィルムを作製した。
そこで、以上のようにして作製した実施例1、2、3および比較例1、2、3のそれぞれのガスバリア性積層フィルムを単体フィルムと呼ぶ。
次に、実施例1、2、3および比較例2、比較例3のそれぞれの単体フィルムの被膜層6の表面及び比較例1の単体フィルムのガスバリア層5の表面に、厚さ1.2μmの印刷層を積層した。以下、これらを印刷フィルムと呼ぶ。
次に、実施例1、2、3及び比較例1、2、3のそれぞれの印刷フィルムの印刷層の表面に、5g/m2のポリウレタン系接着剤を介して厚さ50μmのポリプロピレンのヒートシール層を積層した。以下、これらを積層フィルムと呼ぶ。
<比較評価>
1.酸素透過度
実施例1、2、3および比較例1、2、3の単体フィルム、印刷フィルムおよび積層フィルムについて、モダンコントロール社製の酸素透過度計(MOCON OX−TRAN 2/21)により、30℃−70%RH雰囲気下での酸素透過度(cc/m2・24h・MPa)を測定した。
1.酸素透過度
実施例1、2、3および比較例1、2、3の単体フィルム、印刷フィルムおよび積層フィルムについて、モダンコントロール社製の酸素透過度計(MOCON OX−TRAN 2/21)により、30℃−70%RH雰囲気下での酸素透過度(cc/m2・24h・MPa)を測定した。
2.水蒸気透過度
実施例1、2、3および比較例1、2、3の単体フィルムについて、モダンコントロール社製の水蒸気透過度計(MOCON PERMATRAN−W 3/31)により、40℃−90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m2・24h)を測定した。
実施例1、2、3および比較例1、2、3の単体フィルムについて、モダンコントロール社製の水蒸気透過度計(MOCON PERMATRAN−W 3/31)により、40℃−90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m2・24h)を測定した。
3.ラミネート強度
実施例1、2、3および比較例1、2、3の積層フィルムから15mm幅にスリットした試験片について、通常のテンシロン型万能試験機により、ラミネート強度(N/15mm)を測定した。
実施例1、2、3および比較例1、2、3の積層フィルムから15mm幅にスリットした試験片について、通常のテンシロン型万能試験機により、ラミネート強度(N/15mm)を測定した。
この表1から判るように、実施例1、実施例2および実施例3のガスバリア性積層フィルム(単体フィルム、印刷フィルムおよび積層フィルム)は、低い酸素透過度および水蒸気透過度と、高いラミネート強度を兼ね備えている。
一方、ガスバリア被膜層が積層されていない比較例1のガスバリア性積層フィルムからなる印刷フィルム及び積層フィルムは、実施例1、実施例2及び実施例3のガスバリア性積層フィルムと比較して、酸素透過度が高くガスバリア性に劣っていた。
また、プライマー層が積層されていない比較例2のガスバリア性積層フィルムは、実施例1、実施例2及び実施例3のガスバリア性積層フィルムと比較して、積層フィルムのラミネート強度が劣っていた。
さらにまた、ガスバリア層3及びガスバリア層5をプラズマCVD法により形成し、ガスバリア層3の厚さXa[μm]、ガスバリア層5の厚さXb[μm]、ガスバリア被膜層4の厚さYa[μm]、ガスバリア被膜層6の厚さYb[μm]がXaYa+(Xa+Xb)Yb>2.0となる比較例3のガスバリア性積層フィルムは、実施例1および実施例3のガスバリア性積層フィルムと比較して、単体フィルムのガスバリア性は高いが、積層フィルムのラミネート強度が若干劣っていた。
1…基材層、2…プライマー層、3…ガスバリア層、4…ガスバリア被膜層、5…ガスバリア層、6…ガスバリア被膜層。
Claims (7)
- 透明なプラスチックフィルムからなる基材層の一方の表面上に、プライマー層、第1のガスバリア層、第1のガスバリア被膜層、第2のガスバリア層及び第2のガスバリア被膜層を順次積層してなるガスバリア性積層フィルムであって、
前記プライマー層は、アクリルポリオール、イソシアネート及びシランカップリング剤を含むことにより両面に配置される部材層との密着性を高め、
前記第1及び第2のガスバリア層は、酸化珪素からなり、
前記第1及び第2のガスバリア被膜層は、一般式Si(OR1)4…(1)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つの成分と、一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)で表される珪素化合物及びその加水分解物のうちの少なくとも1つ(但し、前記一般式(1)および(2)中、R1、R3はCH3、C2H5、またはC2H4OCH3、R2は有機官能基を表す)の成分と、水酸基を有する水溶性高分子を含有する塗布液を塗布して乾燥させることを含むことにより、前記第1及び第2のガスバリア層のガスバリア性及び前記耐水性を上げるようにしたことを特徴とするガスバリア性積層フィルム。 - 前記プライマー層の膜厚が、0.005μm以上1μm以下であり、
前記第1のガスバリア層の膜厚(厚さXa)及び前記第2のガスバリア層の膜厚(厚さXb)が、0.005μm以上2μm以下であり、
前記第1のガスバリア被膜層の膜厚(厚さYa)及び前記第2のガスバリア被膜層の膜厚(厚さYb)が、0.05μm以上3μm以下であり、
前記Xa、Xb、YaおよびYbの関係が、下記3つの式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルム。
0.001≦XaYa
0.001≦XbYb
XaYa+(Xa+Xb)Yb≦2.0
(式中のXa、Xb、Ya、Ybの厚さの単位はμmである) - 前記プライマー層及び前記第1のガスバリア被膜層の各面上に積層される前記第1のガスバリア層および前記第2のガスバリア層が、プラズマ化学蒸着(CVD)法により形成することを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記第1のガスバリア層の膜厚(厚さXa)および前記第2のガスバリア層の膜厚(厚さXb)が、0.2μm以上2μm以下であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)は、式(NCO−R4Si(OR3)3)3(但し、式中、R4は(CH2)n、nは1以上)で表される三量体1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートであることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記一般式Si(OR1)4…(1)は、その加水分解性基(R1)がC2H5であることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記一般式(R2Si(OR3)3)n…(2)は、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートであることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載のガスバリア性積層フィルム。
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-
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