JP3781181B2 - ガスバリア用包装材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素、水蒸気などの気体の透過度が極めて小さい包装材料に関し、より詳しくは、成形体上に、ガスバリア層と金属層または金属酸化物層とが積層されてなるガスバリア用包装材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気などの気体の透過度が極めて小さいガスバリア用包装材料に対する需要が増大している。
【0003】
上記要望に応えるべく、本発明者らは、ガスバリア用コーティング剤およびこれを用いてポリシロキサン系重合体を含む膜を表面に形成した包装材料を既に提案している(特開平8−295848号公報など)。また、現在においては、包装、医療等の分野において、ガスバリア用包装材料に求められる水準が、さらに厳しい水準で求められてきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記事項に鑑み、本発明は、ガスバリア性、紫外線遮断性、密着性、透明性、可撓性などの各種パラメータに関して極めて優れた特性を有する包装材料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、ポリエステル等の成形体表面に、ガスバリア層および金属層もしくは金属酸化物層を積層させることによって、上記課題を好適に解決できることを見出した。かような知見に基づいて本発明は完成されたものであり、具体的には以下の構成を有するものである。
【0007】
本発明は、ポリエステル、ポリオレフィンまたはポリアミドからなる成形体(A)表面の少なくとも一部に、活性水素が結合した窒素原子を分子内に有する有機化合物(I)と、前記活性水素と反応しうる官能基を有する有機化合物(II)と、下記式(1):
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、R 2は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基である)
で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物(III)とを反応させて得られた組成物を用いたガスバリア層(B)、および、金属層または金属酸化物層(C)が形成されてなる包装材料であって、40℃90%RHでの水蒸気透過度が5g/(m2・24hrs)以下である包装材料である。
上記包装材料においては、活性水素と反応しうる前記官能基がエポキシ基であることが好ましい。
【0010】
上記包装材料においては、さらに、UV遮断性被覆層(D)が形成されてなることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
上記説明したように、本願記載の発明は、成形体(A)表面に、ガスバリア層(B)および金属層または金属酸化物層(C)(以下、便宜上「金属酸化物層(C)」との記載は、「金属層または金属酸化物層」を意味するものとする)が積層された構成を有する。
【0012】
まず、成形体(A)について説明する。使用される成形体は、透明性を有する各種公知の材料からなる成形体を用いることができ、PES(ポリエーテルサルフォン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、ポリアリレートなど比較的耐熱性が高い材料が好適に用いられる。成形体の形状も包装するために用いられる形状であれば特に限定されるものではなく、フィルム状、シート状、ボトル状、容器状などの形状の成形体を用いることができる。本発明は成形体の厚さが薄く、成形体自体のガスバリア性が低い場合に特に効果的であり、特に、成形体の厚さが200μm以下である場合が効果的といえ、20μm以下である場合により効果的であるといえる。
【0013】
この成形体(A)表面に、ガスバリア層(B)および金属酸化物層(C)が形成されるが、その積層順序は特に限定されるものではない。即ち、成形体(A)・ガスバリア層(B)・金属酸化物層(C)の順に積層されていてもよく、成形体(A)・金属酸化物層(C)・ガスバリア層(B)の順に積層されていてもよい。また、包装材料の特性向上のための他の層をさらに形成してもよい。以下の説明においては便宜上、成形体(A)・ガスバリア層(B)・金属酸化物層(C)の順に形成される実施形態について説明するが、上述の如く、本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
この成形体(A)表面には、有機化合物(I)と有機化合物(II)とを反応させて得られた組成物(以下、「ガスバリア層用組成物」とも記載)を用いたガスバリア層(B)が形成される。
【0015】
ガスバリア層用組成物の原料の一つである有機化合物(I)は、活性水素が結合した窒素原子を分子内に有する。本願において活性水素とは、反応性が強く各種の試薬と反応する水素原子をいい、具体的には、−NH−(式中、Nには他に水素原子が結合していない)や−NH2として存在する。有機化合物(I)をガスバリア用コーティング剤に含ませた場合、可撓性をガスバリア層に付与する上で特に効果がある。
【0016】
有機化合物(I)の分子量は特に限定されるものではないが、形成されるガスバリア層の製膜性や可撓性を考慮すると、高分子化合物であることが好ましい。有機化合物(I)として高分子化合物を用いた場合において、数平均分子量が小さすぎると成形体上に形成されたガスバリア層の可撓性が劣ったり、コーティングする際の製膜性が劣ったりする恐れがある。このため、有機化合物(I)の数平均分子量は250以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましい。一方、数平均分子量が大きすぎると形成されたガスバリア層の透明性や可撓性が不充分なものとなる恐れがある。このため、有機化合物(I)の数平均分子量は200000以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましく、10000以下であることが特に好ましい。ただし、数平均分子量では計測できない複雑な構造を持つものも有機化合物(I)として本発明で使用可能であり、本発明からこれらのものを排除するものではない。
【0017】
有機化合物(I)の具体例としては、エタノールアミンなどの低分子化合物や、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミンなどの高分子化合物が挙げられる。
【0018】
ポリアルキレンイミンとしては、ポリメチレンイミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリイソプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリイソブチレンイミンなどが挙げられる。ポリアルキレンイミンは各種公知の合成方法を用いて調製することができ、また、市販品を用いてもよい。例えば、株式会社日本触媒製のエポミンシリーズ;エポミンSP−003、エポミンSP−006、エポミンSP−012、エポミンSP−018、エポミンSP−103、エポミンSP−110、エポミンSP−200、エポミンSP−300、エポミンSP−1000、エポミンSP−1020(いずれも商品名)等のポリエチレンイミンを用いることができる。
【0019】
ポリアリルアミンとしては、各種公知の方法で合成したものを用いることができるほか、日東紡績株式会社製のPAA−L、PAA−H(いずれも商品名)などを用いることができる。
【0020】
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。上記列挙した有機化合物(I)のなかでは、ガスバリア層の透明性、耐熱性、可撓性、密着性を考慮すると、ポリアルキレンイミンが好ましい。特にポリエチレンイミンが好ましい。
【0021】
ガスバリア層用組成物の原料の一つである有機化合物(II)は、有機化合物(I)に含まれる活性水素と反応しうる官能基を有する。このような官能基としては、特に制限されるものではないが、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキサゾリニル基、(メタ)アクリル基、アルデヒド基、ケトン基、アルキルハライド基などが挙げられる。活性水素との反応容易性、耐熱水性を考慮すると、エポキシ基であることが好ましい。なお、有機化合物(II)をガスバリア層用組成物に含ませた場合、成形体にコーティングする際の製膜性を向上させる上で特に効果がある。
【0022】
活性水素が結合した窒素原子とエポキシ基との反応は、一般には下記式(2)および(3):
【0023】
【化3】
【0024】
(式中、RおよびR’は官能基を有していてもよいアルキル基を表す)
で示される。
【0025】
有機化合物(II)は、特に制限されるべきものではないが、活性水素と反応しうる官能基としてエポキシ基を含む化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル等の脂肪族モノ−、ジグリシジルエーテル類;グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類;アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、フェニルグリシジルエーテル等の脂肪族および芳香族モノ−、ジグリシジルエステル類;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、および次式で表される化合物類;
【0026】
【化4】
【0027】
などの芳香環またはその水素添加環(核置換誘導体も含む)を有するグリシジル類;グリシジル基を官能基として有するオリゴマー類(例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルオリゴマーの場合は下記式の様に表せる);
【0028】
【化5】
【0029】
などが挙げられる。
【0030】
活性水素と反応しうる官能基を含む化合物の他の具体例としては、γ−イソシアノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のイソシアネート類;酒石酸、アジピン酸等のジカルボン酸類;ポリアクリル酸等のカルボキシル基含有重合体;オキサゾリニル基含有重合体などが挙げられる。
【0031】
ガスバリア層用組成物には、上記式(1)で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物(III)がさらに含まれていてもよい。
【0032】
まず、有機ケイ素化合物(III−1)について説明する。式(1)において、R1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。このアルキル基は、有機化合物(I)に含まれる前記活性水素と反応しない官能基を有していても良い。有機化合物(I)に含まれる前記活性水素と反応しない官能基としては、特に限定されるものではないが、ビニル基が挙げられる。ビニル基を有する場合、耐熱性、耐煮沸性が向上する効果がある。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基といった直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基といった分岐アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基といった環状(脂環式)アルキル基のいずれであってもよい。このなかでは、緻密なガスバリア層を形成する上での反応容易性の観点から、メチル基またはエチル基が好ましい。なお、R1は、mが2以上の場合には、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
式(1)において、R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基といった直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基といった分岐アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基といった環状(脂環式)アルキル基のいずれであってもよい。このなかでは、緻密なガスバリア層を形成する上での反応容易性の観点から、メチル基またはエチル基が好ましい。なお、R2は、nが2以上の場合には、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
式(1)において、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数であり、m+n=4である。特に限定されるものではないが、形成されるガスバリア層の耐熱性、耐煮沸性、耐水性を考慮すると、m=0であり、n=4であることが好ましい。
【0035】
有機ケイ素化合物(III−1)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類およびこれらの錯体化合物、メチルトリアセトキシシラン、トリメチルシラノール、並びにこれらの化合物を含む高分子有機ケイ素化合物類が挙げられる。この中では、ガスバリア層の耐煮沸性、耐湿性、耐水性を考慮すると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
次に、有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(III−2)について説明する。有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(III−2)とは、上記式(1)で表される有機ケイ素化合物(III−1)の加水分解縮合物をいう。有機ケイ素化合物(III−1)の代わりに、または有機ケイ素化合物(III−1)に加えて、有機ケイ素化合物の加水分解縮合物を含んでもよいとしたのは、ガスバリア層を形成する際における有機化合物(II)および有機ケイ素化合物(III−1)の不本意な乾燥を防止するためには、これらを予め加水分解縮合させておくことが効果的であるからである。従って、ガスバリア層用組成物は、有機ケイ素化合物(III−1)を含むものであってもよく、有機ケイ素化合物(III−1)の加水分解縮合物(III−2)を含むものであってもよい。両者を含むものであってもよいことは勿論である。これらの加水分解縮合反応は、空気中に存在する水分によっても進行するが、酸または塩基等の公知の触媒を用いて反応効率を向上させてもよい。作業性を考慮すると、加水分解反応は溶媒(IV)中で行うことが好ましい。
【0037】
上述の有機ケイ素化合物(III-1)および/またはその加水分解縮合物(III−2)をガスバリア層用組成物に含ませた場合、ガスバリア層の耐湿性を向上させる効果があり、雰囲気の湿度が大きくなっても十分なガスバリア性を保持することができる。その他にも、耐水性を付与でき、成形体への密着性、ハードコート性、耐熱性を高める効果がある。また、過酷な保存環境下(例えば、20℃90%RH程度の高湿状態下)に晒された場合であっても、優れたガスバリア性を維持しうる。なお、この有機ケイ素化合物(III−1)およびその加水分解縮合物(III−2)は、有機化合物(I)が有する活性水素と反応し得る官能基を有さない点で、有機化合物(II)とは明確に異なるものである。
【0038】
上述の(I)および(II)、または、(I)〜(III)を反応させることによって、ガスバリア層用組成物を得ることができる。ガスバリア層用組成物の調製方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、以下の方法を用いることができる。
【0039】
(1) 有機化合物(I)および有機化合物(II)、並びに、必要に応じて有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物(III)を溶媒(IV)中に配合し(他の任意成分を含んでいても良い)、これらを反応させる方法、
(2) 溶媒(IV)中で、有機化合物(I)と有機化合物(II)とを反応させ、さらに必要に応じて有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物(III)を加える方法、
などが挙げられるが、これらに何ら制限されるべきものではない。
【0040】
溶媒(IV)は、有機化合物(I)、有機化合物(II)、有機ケイ素化合物および/または有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(III)やその他の添加剤を溶解しうるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トリエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類;メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート等のアセテート類;その他、エチルフェノールエーテル、プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、水などが挙げられる。この中では、加水分解反応時の安定性や保存安定性に優れている点で、メタノール、エタノールなどのアルコール類が好ましい。これらから1種または2種以上を組み合わせて溶媒(IV)として使用できるが、溶媒(IV)の選択に際しては、使用する有機化合物(I)、有機化合物(II)、有機ケイ素化合物(III−1)、有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(III−2)を考慮して決定するとよい。使用する成分(I)〜(III)と溶媒(IV)との相性によって、ガスバリア性に多少の差異が生じるケースがあるからである。また、溶媒(IV)は作業性の向上を図るため、ガスバリア層用組成物を調製した後、そのまま成形体にコーティングできる化合物を選択することが好ましい。
【0041】
ガスバリア用組成物を得る際の配合量は、使用する成分の種類や添加剤の有無など応じて決定されるべきものであり、一義的に規定することはできないが、有機化合物(I)および有機化合物(II)の配合比率を、100:5〜100:50程度とすることが一般的である。有機化合物(I)の配合量が少なすぎる場合には、ガスバリア層の可撓性、耐衝撃性が劣る恐れがある。一方、有機化合物(II)の配合量が少なすぎる場合には、ガスバリア層の耐水性、耐湿性、成形体への密着性が劣る恐れがある。有機化合物(I)および有機化合物(II)に加えて、有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物(III)を用いる場合には、有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物(III)の配合量は、有機化合物(I)および有機化合物(II)の配合量を100質量部としたときに、通常は10〜100質量部程度である。配合量が10質量部未満である場合には有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物(III)を加える効果が充分に得られない恐れがあり、一方、100質量部を越える場合には、ガスバリア層の可撓性が劣化する恐れがある。なお、「有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物(III)の配合量」とは、両者の合計の配合量を意味するものであり、いずれか一方のみがガスバリア層用組成物中に含まれる場合には、一方の配合量を意味するものである。
【0042】
有機化合物(I)、有機化合物(II)および有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物(III)を含む溶液を反応させる際の条件は、使用する化合物および配合量によって決定されるべきものであり、一義的に規定できないが、組成物中に有機化合物(I)の未反応物が実質的に残存しない条件とすることが好ましい。未反応の有機化合物(I)が残存していると、得られるガスバリア層の安定性が低下する恐れがあるからである。例えば、30〜80℃程度で、0.5〜5時間程度反応させればよい。
【0043】
溶媒(IV)の配合量は、特に限定されないが、ガスバリア層用組成物を含む溶液の全質量を100質量%としたときに、通常20〜97質量%、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは70〜95質量%、特に好ましくは75〜90質量%の範囲である。溶媒(IV)の配合量が20質量%未満の場合には、ガスバリア層用組成物を含む溶液の反応安定性が劣る恐れがあり、また塗工中に、ガスバリア層用組成物を含む溶液の粘度が上昇して均一塗工ができなくなる可能性がある。一方、97質量%を超える場合には、ガスバリア層用組成物を含む溶液を調製する際の生産性が劣ることがあるほか、有効成分が低濃度となり過ぎるため、必要なガスバリア層の厚さを確保できない場合がある。
【0044】
また、ガスバリア層用組成物には、必要に応じて、硬化触媒、濡れ性改良剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤などの無機系または有機系の各種添加剤を適量添加することもできる。すなわち、ガスバリア層用組成物には、必須成分に加えて、さらに硬化触媒等を加えても良く、このような実施形態も本発明の意図する技術的範囲に含まれるものである。
【0045】
上記手法によって得られたガスバリア層用組成物を用いて、成形体上にガスバリア層(B)を形成する。ガスバリア層用組成物を含む溶液の塗布方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の技術を適宜利用することができる。例えば、ロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ノズルコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、カーテンコーティング法、フローコーティング法、スクリーン印刷、グラビア印刷、曲面印刷などの各種印刷法など、あるいはこれらを組み合わせた方法を採用できる。なかでも、ダイコーティング法は、ガスバリア層用組成物を含む溶液の安定性を増す上で好ましい。また、塗布量は成形体上に形成するガスバリア層(B)の厚さに応じて調節される。
【0046】
ガスバリア層用組成物を含む溶液の塗布に際しては、成形体の表面を予めプラズマ処理またはコロナ放電処理した後、または、酸素を含む雰囲気中で200〜400nm付近の波長の紫外線を照射してもよい。また、成形体の表面に予めウレタン樹脂等の公知のアンカーコート層を設けてもよい。
【0047】
成形体に付着した汚れのため、ガスバリア層用組成物を含む溶液を均一に塗布できない場合には、成形体表面の洗浄や表面改質を行うことによって対処できる。洗浄方法としては、アルコール、アセトン、ヘキサンなどの有機溶媒による脱脂洗浄、アルカリや酸による洗浄、研磨剤で表面を研磨して洗浄する方法、超音波洗浄などの洗浄法が挙げられる。表面改質方法としては、紫外線照射処理、紫外線オゾン処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、熱処理などの表面改質法が挙げられる。
【0048】
ガスバリア層用組成物を含む溶液を塗布した後、硬化および乾燥を行う。かかる硬化および乾燥工程においては、加熱または必要に応じて加湿を加えることによって、ハードコート性に優れた緻密なガスバリア層を速やかに形成することができる。ただし、加熱を行う場合には、成形体の耐熱温度以下で加熱することが好ましい。ここで、成形体の耐熱温度とは、実質上成形体の特性が保持できる上限の温度のことを意味し、ガラス転移点、結晶化温度または分解点を意味する。なお、乾燥の際に有機ケイ素化合物(III−1)の蒸発を防ぐ観点からは、有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(III−2)を配合したガスバリア層用組成物を用いることが好ましい。この加水分解縮合反応は公知の触媒を用いることができ、溶媒(IV)中で反応させるのが有利である。また、硬化および乾燥の後は、他の構成成分と反応していない有機化合物(I)が存在しないように条件を設定することが、ガスバリア性を向上させるためには好ましい。
【0049】
高温多湿の環境下においても長期間に渡ってガスバリア性を持続させ、着色や気泡発生等の欠陥発生を防止するためには、硬化・乾燥を行った後に熟成(エージング)させることが好ましい。熟成は、加熱処理やコロナ処理によって行うことが好ましい。
【0050】
成形体にガスバリア層用組成物を含む溶液を塗布して得られるガスバリア層(B)の乾燥後の厚さは、使用用途により異なるため一義的に規定することはできないが、ガスバリア層(B)の乾燥後の厚さが0.01〜20μmであることが一般的であり、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることが好ましい。ガスバリア層の乾燥後の厚さが0.01μm未満の場合には、ガスバリア層が均一にならない恐れがあり、また、ガスバリア性、成形体との密着性、透明性、可撓性、印刷性、耐湿性、耐屈曲性が充分に発現しない恐れがある。一方、ガスバリア層の乾燥後の厚さが20μmを超える場合には、ガスバリア層にクラックが生じる可能性が高まる。
【0051】
なお、成形体上にガスバリア層用組成物を含む溶液を塗布するにあたっては、成形体に同一組成のガスバリア層用組成物を含む溶液を数回に分けて塗布してもよいし、異なる組成のもの複数回塗布して多層構造のガスバリア層(B)を形成してもよい。
【0052】
ガスバリア層(B)を形成した後、金属酸化物層(C)を形成する。金属酸化物層(C)を設けることによって、包装材料のガスバリア性をさらに高めることができる。金属酸化物層(C)を形成する材料としては、アルミニウム、ケイ素、チタン、亜鉛、ジルコニウム、マグネシウム、スズ、銅、鉄などの金属や、これらの金属の酸化物、チッ化物、硫化物、フッ化物など、例えばアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化スズ、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、ITOなどが用いられる。
【0053】
金属酸化物層(C)は、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどの蒸着法によって形成することが好ましい。この中では、真空蒸着、イオンプレーティングが生産効率の点から好ましい。蒸着装置内は、内部を2×10-6〜8×10-3Torr、好ましくは8×10-6〜8×10-5Torrまで真空に引いたのち、蒸着処理を行う。形成された金属酸化物層(C)は、酸素、水蒸気に対してバリア性を示すが、特にアルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどはガスバリア性に優れる。金属酸化物層(C)の膜厚は、10〜5,000Å程度が好ましく、30〜3,000Åの範囲がより好ましい。10Å未満では、ガスバリア性が充分でなくなる恐れがあり、一方、5,000Åを超えると、金属酸化物層(C)の柔軟性が損なわれ、クラックやピンホールが発生しやすくなり、いずれもガスバリア性が劣る。金属酸化物層(C)は、複数の蒸着材料を併用してもよく、また2層以上の複層としてもよい。金属酸化物層(C)の形成後、ヒートシール性を付与する目的や金属酸化物層(C)を保護する目的で、CPP等の熱可塑性フィルムをラミネートにより積層させてもよい。
【0054】
従来においては、ガスバリア層上に金属酸化物層を積層させた構成とした場合、ガスバリア性の向上は図れるが、金属酸化物層との密着性に劣る問題があった。この問題は、本願記載の構成を有する包装材料を用いることによって解決可能である。特に、金属酸化物として、シリカを含む材料を使用すると、高い密着性が得られる。また、ガスバリア層に上記式(I)で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物(III)を使用すると好ましい。理由は定かではないが、性質の類似する化合物を双方が共有することによって界面における親和力が向上するためではないかと推測される。また、本発明の構成とした場合、湿度が低い条件下においても、ガスバリア性が低下することがない包装材料を得ることができる。
【0055】
ガスバリア性に関しては、上記構成を有するガスバリア用包装材料の40℃90%RHでの水蒸気透過度を5g/(m2・24hrs)以下とするとよい。このような特性を有する包装材料であれば、極めて高いガスバリア性を必要とする場合や、長期間に渡って包装物を保護する必要がある場合に、特に有為である。
【0056】
水蒸気透過度とは、単位面積・単位時間あたりに透過する水蒸気量(g/(m2・24hrs))をいい、ガスバリア性の程度を表示するために一般に用いられる数値である。水蒸気透過度は、JIS Z0208(1976年)記載の方法に準拠して、測定することができる。具体的には、ガスバリア層と成形体との積層方向に関する酸素透過度を測定することとなる。
【0057】
また、包装材料の20℃90%RHでの酸素透過度が10ml/(m2・24hrs・atm)以下とすることが好ましい。本願記載の包装材料においては、蒸着によって金属酸化物層(C)を形成した場合であっても、酸素透過度および水蒸気透過度の双方において、極めて優れた包装材料を得ることができる。
【0058】
酸素透過度とは、単位気圧・単位面積・単位時間あたりに透過する酸素量(ml/(m2・24hrs・atm))をいい、ガスバリア性の程度を表示するために一般に用いられる数値である。酸素透過度は、市販の酸素透過度測定装置を用いて測定することができ、例えば、モダンコントロールズ社製MHを用いることができる。具体的には、ガスバリア層と成形体との積層方向に関する酸素透過度を測定することとなる。
【0059】
本発明の包装材料は、酸素や水蒸気と接触しないことが望ましい各種材料を包装するために用いることができ、食品、飲料物、エンジンオイルなどが一例として挙げられる。
【0060】
本発明の包装材料においては、ガスバリア層(B)および金属酸化物層(C)に加えて、さらに、UV遮断性被覆層(D)が形成されてなることが好ましい。
【0061】
UV遮断性被覆層(D)の積層順序は、特に限定されるものではなく、成形体(A)上に、ガスバリア層(B)、金属酸化物層(C)、UV遮断性被覆層(D)の順序で積層されてなる実施形態、成形体(A)、ガスバリア層(B)、UV遮断性被覆層(D)、金属酸化物層(C)の順序で積層されてなる実施形態など用途や、製造環境に応じて適宜決定すればよい。好ましくは、ガスバリア層(B)が膨潤するのを防止する観点から、成形体(A)側(下層部側)にガスバリア層(B)を設け、上層部側にUV遮断性被覆層(D)を設けるのが望ましい。
【0062】
UV遮断性被覆層(D)は、UV遮断性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、各種のUV遮断性材料を用いることができる。包装材料の品質を高める観点からは、高いUV遮断性を発現し、隣接する層との密着性、透明性、可撓性、耐候性、光沢、耐水性、耐溶剤性等の特性を有する被覆層が好ましく、具体的には、下記一般式(4):
【0063】
【化6】
【0064】
で表される紫外線吸収性単量体と、下記一般式(5):
【0065】
【化7】
【0066】
で表される不飽和単量体とを含む単量体組成物を共重合してなる高分子体を用いた層とすることができる。
【0067】
上記一般式(4)で表される紫外線吸収性単量体(以下、紫外線吸収性単量体(4)と記す)は、式中、R4で示される置換基が水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基で構成され、R5で示される置換基が炭素数1〜6の直鎖状または枝分れ鎖状のアルキレン基で構成され、R6で示される置換基が水素原子またはメチル基で構成され、Xで示される置換基が水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で構成されるベンゾトリアゾール類である。
【0068】
紫外線吸収性単量体(4)の具体例としては、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら紫外線吸収性単量体(4)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0069】
一般式(5)で表される不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(5)」と略す)は、式中、R7で示される置換基が水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基で構成され、Zで示される置換基が、置換基を有していてもよいシクロアルキル基で構成される化合物である。
【0070】
Zで示される置換基におけるシクロアルキル基とは、具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等の単環式飽和炭化水素残基である。そして、該シクロアルキル基は、炭素数1〜7のアルキル基を置換基として有していてもよい。該置換基とは、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等である。
【0071】
不飽和単量体(5)の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレートおよびこれらに対応するカルボン酸等が挙げられるが、特に限定されるものではない。不飽和単量体(5)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0072】
UV遮断性被覆層(D)を基材等の表面上に形成する形成方法は、特に限定されるものではない。例えば、▲1▼単量体組成物を共重合して得た重合体組成物に、架橋剤を添加してなる塗料用組成物を調製し、この塗料用組成物を塗布することによりUV遮断性被覆層を形成する方法、▲2▼該塗料用組成物を一旦フィルムに成形した後、このフィルムを基材等の表面上に融着、熱圧着または接着することによりUV遮断性被覆層を形成する方法、▲3▼型の成形面に一旦UV遮断性被覆層を形成した後、このUV遮断性被覆層を基材側に転写する方法などが挙げられる。
【0073】
前記塗料用組成物において、単量体組成物における上記各単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、紫外線吸収性単量体(4)は、0.1〜30質量%の範囲内が好ましく、1〜20質量%の範囲内がさらに好ましく、2〜15質量%の範囲内が特に好ましい。また、不飽和単量体(5)は、2〜95質量%の範囲内が好ましく、5〜85質量%の範囲内がさらに好ましく、10〜75質量%の範囲内が特に好ましい。
【0074】
UV遮断性被覆の効果は、波長360nmでの光線透過率が30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0075】
上記説明したUV遮断性被覆層(D)を設けた場合、UV光によって劣化や変質が生じる恐れのある被包装物の包装材料として有為なものとなる。例えば、酸化を受けやすく紫外線により風味が失われたり、変色(黄変)しやすいポテトチップスなどの揚げ物やアルコールを含む酒類などの食品や飲料品の容器や包装材、液晶表示装置、携帯端末ないしモバイル機器などに用いられる電子部品、血液保存バックなどの医療機器や医療器具などの用途に適用できるものである。
【0076】
【実施例】
続いて、本願発明の効果を実施例により実証する。しかしながら、本発明の技術的範囲が以下の実施例に限定されるものではないことは勿論である。
【0077】
<合成例1>
ポリエチレンイミン(12g、株式会社日本触媒製エポミンSP−018)、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(4g)、および、メタノール(100g)からなる混合液を準備し、60℃で3時間反応させた。これを室温まで冷却した後、水(1g)とメタノール(50g)との混合液を加えて30分間反応させ、ガスバリア層用組成物1を得た。
【0078】
<合成例2>
ポリエチレンイミン(12g、株式会社日本触媒製エポミンSP−018)、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(4g)、および、メタノール(100g)からなる混合液を準備し、60℃で3時間反応させた。これを室温まで冷却した後、水(1g)とメタノール(80g)との混合液を加えて30分間反応させ、さらにテトラメトキシシランの加水分解縮合物(15g、多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)とメタノール(50g)との混合液を加えて、室温で24時間反応させ、ガスバリア層用組成物2を得た。
【0079】
<比較例1>
合成例1で得られたガスバリア層用組成物1を、PETフィルム(厚さ12μm×150mm×200mm)の片面に、乾燥後の厚みが1μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、100℃で10秒間乾燥した。続いて、60℃で48時間熟成し、包装材料用フィルム1−Aを得た。
【0080】
次に、包装材料用フィルム1−Aを高周波誘導過熱方式の蒸着器にセットし、10-4Torrの真空下で、ケイ素酸化物の厚みが500Åになるように蒸着層を形成し、包装材料用フィルム1−Bを得た。包装材料用フィルム1−Bについて、可撓性、酸素透過度、水蒸気透過度を評価した。表1に示すように、可撓性に関しては問題なかった。酸素透過度は0.3ml/(m2・24hrs・atm)であり、水蒸気透過度は1.9g/(m2・24hrs)であった。
【0081】
なお、包装材料用フィルムの評価方法を以下に示す。
【0082】
1.可撓性評価
包装材料用フィルムの一端と他端とが接するように包装材料用フィルムを180°折り曲げた。クラックが生じれば「×」、生じなければ「○」と評価した。
【0083】
2.酸素透過度
酸素透過度は酸素透過度測定装置(モダンコントロールズ社製:形式MH)を用いて20℃90%RHで測定した。
【0084】
3.水蒸気透過度
JIS Z0208(1976年)記載の方法に準拠して、40℃90%RHでの水蒸気透過度を測定した。
【0085】
<実施例1>
合成例2で得られたガスバリア層用組成物2を、PETフィルム(厚さ12μm×150mm×200mm)の片面に、乾燥後の厚みが1μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、100℃で10秒間乾燥した。続いて、60℃で48時間熟成し、包装材料用フィルム2−Aを得た。
【0086】
次に、包装材料用フィルム2−Aを高周波誘導過熱方式の蒸着器にセットし、10−4Torrの真空下で、ケイ素酸化物の厚みが500Åになるように蒸着層を形成し、包装材料用フィルム2−Bを得た。包装材料用フィルム2−Bについて、比較例1と同様に可撓性、酸素透過度、水蒸気透過度を評価した。表1に示すように、可撓性に関しては問題なかった。酸素透過度は0.1ml/(m2・24hrs・atm)であり、水蒸気透過度は0.6g/(m2・24hrs)であった。
【0087】
<比較例2>
合成例1に記載の方法により製造された包装材料用フィルム1−Aについて、比較例1と同様に可撓性、酸素透過度、水蒸気透過度を評価した。表1に示すように可撓性に関しては問題なかった。しかしながら、酸素透過度は5.4ml/(m2・24hrs・atm)であり、水蒸気透過度は42g/(m2・24hrs)であった。
【0088】
<比較例3>
合成例2に記載の方法により製造された包装材料用フィルム2−Aについて、比較例1と同様に可撓性、酸素透過度、水蒸気透過度を評価した。表1に示すように可撓性に関しては問題なかった。しかしながら、酸素透過度は1.1ml/(m2・24hrs・atm)であり、水蒸気透過度は39g/(m2・24hrs)であった。
【0089】
【表1】
【0091】
<実施例2>
実施例1で得られた包装材料用フィルム2−Bに、ドライラミネート法を用いてCCP(無延伸ポリプロピレン;厚さ40μm)を積層し、包装材料用フィルム2−Cを得た。包装材料用フィルム2−Cを袋体に成形し、かつお節を入れて密封した後、75℃で10分殺菌した。この試料を40℃90%RHで3ヶ月放置した後、試食したが、味および匂いの変化は確認されなかった。
【0092】
<実施例3>
2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(2.5質量部)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート(20.0質量部)、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(1.2質量部)、(メタ)アクリル酸(0.3質量部)、ヒドロキシエチルアクリレート(6.0質量部)、ブチルアクリレート(10質量部)およびメチル(メタ)アクリレート(10質量部)を、トルエン(30.0質量部)と酢酸ブチル(19.0質量部)の混合溶媒中で2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(0.8質量部)を重合開始剤として、90℃で重合し、UV遮断用被覆剤(1)を得た。
【0093】
実施例1で得られた包装材料用フィルム2−Bの360nmでの光線透過率をまず測定したところ、96%であった。この包装材料用フィルム2−Bに、上記のUV遮断用被覆剤(1)を乾燥後の厚みが2μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、100℃で20秒乾燥後、50℃で5日間熟成して、UV遮断性被覆層が形成された包装用フィルム2−Dを得た。このフィルムの360nmでの光線透過率を再び測定したところ2%であった。フィルムの可撓性を調査したところ特に問題はなかった。また、酸素透過度は0.1ml/(m2・24hrs・atm)であり、水蒸気透過度は0.5g/(m2・24hrs)であった。
【0094】
【発明の効果】
ポリエステル等の成形体上に、ガスバリア層および金属層もしくは金属酸化物層を積層させることによって、特に、水蒸気バリア性をはじめ、酸素バリア性、可撓性などの各種パラメータに優れた包装材料を得ることができる。しかも、本発明の包装材料においては、一般に密着性が低下しがちな金属層もしくは金属酸化物層の密着性を高めることができ、高速で容易に金属層または金属酸化物層を製膜することが可能となる。
Claims (3)
- ポリエステル、ポリオレフィンまたはポリアミドからなる成形体(A)表面の少なくとも一部に、活性水素が結合した窒素原子を分子内に有する有機化合物(I)と、前記活性水素と反応しうる官能基を有する有機化合物(II)と、下記式(1):
で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物(III)とを反応させて得られた組成物を用いたガスバリア層(B)、および、金属層または金属酸化物層(C)が形成されてなる包装材料であって、
40℃90%RHでの水蒸気透過度が5g/(m2・24hrs)以下である包装材料。 - 活性水素と反応しうる前記官能基がエポキシ基である、請求項1に記載の包装材料
- さらに、UV遮断性被覆層(D)が形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の包装材料。
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