JP7255836B2 - 磁性体 - Google Patents
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(1)磁性体の製造方法
磁性体の製造方法について、一例を挙げて説明する。
Ni-Znフェライト粉末と、Fe-Ni合金粉末とを混合することにより、磁性体原料粉末を調製する。Ni-Znフェライト粉末としては、仮焼されてフェライト化(Ni0.25Zn0.65Cu0.12Fe2O4)され、更に粉砕及び粒度調整が施された粉末(平均粒子径1.75μm。)を利用する。Fe-Ni合金粉末としては、Ni含有量が49.5~50.5質量%で、残部がFeとされた粉末(平均粒子径10μm。)を利用する。磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比は0.5質量%とし、残部をNi-Znフェライト粉末とする。
磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を上記実施例1とは変更する。具体的には、磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を1質量%とし、残部をNi-Znフェライト粉末とする。その他の点は上記実施例1と同様にして、環状の磁性体を得る。得られた磁性体の破断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;以下、SEMと略称する。)で観察した。破断面のSEM画像(倍率200倍)を図1Aに示す。また、破断面のSEM画像(倍率500倍)を図1Bに示す。
磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を上記実施例1,2とは変更する。具体的には、磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を3質量%とし、残部をNi-Znフェライト粉末とする。その他の点は上記実施例1と同様にして、環状の磁性体を得る。
磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を上記実施例1~3とは変更する。具体的には、磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を5質量%とし、残部をNi-Znフェライト粉末とする。その他の点は上記実施例1と同様にして、環状の磁性体を得る。
磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を上記実施例1~4とは変更する。具体的には、磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を7質量%とし、残部をNi-Znフェライト粉末とする。その他の点は上記実施例1と同様にして、環状の磁性体を得る。
磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を上記実施例1~5とは変更する。具体的には、磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を10質量%とし、残部をNi-Znフェライト粉末とする。その他の点は上記実施例1と同様にして、環状の磁性体を得る。磁性体の破断面のSEM画像(倍率200倍)を図2Aに示す。また、同磁性体の破断面のSEM画像(倍率500倍)を図2Bに示す。これらのSEM画像からは、実施例2と同様に、焼結体が海島構造を形成していることを観察することができる。図2A及び図2Bに示すSEM画像においても、海部はフェライト粉末によって構成され、島部はFe-Ni合金粉末によって構成されている。
実施例1において例示したNi-Znフェライト粉末のみで構成される磁性体原料粉末(すなわち、Fe-Ni合金粉末の配合比0質量%。)を用い、その他の点は上記実施例1と同様にして、環状の磁性体を得る。
磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を上記実施例1~6とは変更する。具体的には、磁性体原料粉末におけるFe-Ni合金粉末の配合比を20質量%とし、残部をNi-Znフェライト粉末とする。その他の点は上記実施例1と同様にして、環状の磁性体を得る。
実施例1において例示したNi-Znフェライト粉末に代えて、Mn-Znフェライト粉末を用いる場合について検討する。具体的には、1質量%のFe-Ni合金粉末と、99質量%のMn-Znフェライト粉末とを混合することにより、磁性体原料粉末を調製する。Mn-Znフェライト粉末としては、仮焼されてフェライト化(Mn0.45Zn0.47Fe2O4)され、更に粉砕及び粒度調整が施された粉末(平均粒子径1.26μm。)を利用する。その他の点は上記実施例1と同様にして、環状の磁性体を得る。
実施例7において例示したMn-Znフェライト粉末のみで構成される磁性体原料粉末(すなわち、Fe-Ni合金粉末の配合比0質量%。)を用い、その他の点は上記実施例7と同様にして、環状の磁性体を得る。
実施例1において例示したFe-Ni合金に代えて、Fe-Ni合金以外の金属磁性材を用いる場合について検討する。具体的には、1質量%のFe-Si-Al合金粉末と、99質量%のNi-Znフェライト粉末とを混合することにより、磁性体原料粉末を調製する。その他の点は上記実施例1と同様にして、環状の磁性体を得る。
Fe-Ni合金以外の金属磁性材として、Fe-Cr合金粉末を用いる場合について検討する。具体的には、1質量%のFe-Cr合金粉末と、99質量%のNi-Znフェライト粉末とを混合することにより、磁性体原料粉末を調製する。その他の点は上記実施例1と同様にして、環状の磁性体を得る。
Fe-Ni合金以外の金属磁性材として、Fe-Si合金粉末を用いる場合について検討する。具体的には、1質量%のFe-Si合金粉末と、99質量%のNi-Znフェライト粉末とを混合することにより、磁性体原料粉末を調製する。その他の点は上記実施例1と同様にして、環状の磁性体を得る。
[性能試験1]
上記実施例2及び比較例1に相当する磁性体を測定対象として、JIS C 2560-2(2006)に準拠して、複素透磁率を測定した。測定には、市販のRFインピーダンス/マテリアル・アナライザ(アジレントテクノロジー社製、E4991A)を使用する。測定環境の雰囲気温度は、恒温槽(エスペック株式会社製、小型環境試験器、SU)を使用して制御する。恒温槽のチャンバー内に試料を収めた冶具を設置し、冶具とRFインピーダンス/マテリアル・アナライザをケーブルで接続する。複素透磁率を測定する際の測定条件は、測定周波数を1MHzとし、雰囲気温度は25℃,65℃,85℃,100℃,110℃,120℃,130℃及び140℃の各温度に設定する。
測定周波数を150kHzに変更して、複素透磁率を測定した。測定には、市販のB-Hアナライザ(岩通計測株式会社製、SY-8218)を使用する。他の条件は、上記性能試験1と同様の条件とする。測定結果を図4A及び図4Bに示す。図4A及び図4Bに示す測定結果からは、測定対象とされた磁性体の複素比透磁率は、実数部μ'r及び虚数部μ"rともに、雰囲気温度110℃~140℃の温度域では、実施例2の方が比較例1よりも高い値を示すことがわかる。すなわち、測定周波数を150kHzに変更した場合でも、フェライトにFe-Niを添加すると、110℃~140℃の範囲で透磁率特性が改善される。
測定周波数を30MHzに変更し、それ以外は上記性能試験1と同様の条件として、複素透磁率を測定した。測定結果を図5A及び図5Bに示す。図5A及び図5Bに示す測定結果からは、測定対象とされた磁性体の複素比透磁率の実数部μ'rは、25℃~140℃の温度域全てにおいて、実施例2の方が比較例1よりも高い値を示すことがわかる。また、測定対象とされた磁性体の複素比透磁率の虚数部μ"rは、雰囲気温度100℃~140℃の温度域において、実施例2の方が比較例1よりも高い値を示すことがわかる。すなわち、測定周波数を30MHzに変更した場合でも、フェライトにFe-Niを添加すると、110℃~140℃の範囲で透磁率特性が改善される。
上記実施例2,比較例1,比較例4,比較例5及び比較例6に相当する磁性体を測定対象として、上記性能試験1と同様の条件で、複素透磁率を測定した。測定結果を図6A及び図6Bに示す。図6A及び図6Bに示す測定結果からは、測定対象とされた磁性体の複素比透磁率は、実数部μ'r及び虚数部μ"rともに、雰囲気温度110℃~140℃の温度域では、実施例2が最も高い値を示すことがわかる。この結果から、Fe-Ni以外の金属磁性材(Fe-Si-Al,Fe-Si,Fe-Cr)を添加しても、耐熱性の改善に寄与しないことがわかる。
上記実施例1~実施例6,比較例1及び比較例2に相当する磁性体を測定対象として、上記性能試験1と同様の条件で、複素透磁率を測定した。測定結果を図7A,図7B,図8A及び図8Bに示す。なお、図7Aのグラフは図8Aのグラフの一部を横軸方向へ拡大したグラフに相当する。図7Bのグラフは図8Bのグラフの一部を横軸方向へ拡大したグラフに相当する。図7A,図7B,図8A及び図8Bに示す測定結果からは、測定対象とされた磁性体の複素比透磁率の実数部μ'rは、雰囲気温度110℃~140℃の温度域では、実施例1~実施例6のいずれであっても、比較例1よりも高い値を示すことがわかる。
上記実施例7及び比較例3に相当する磁性体を測定対象として、上記性能試験1と同様の条件で、複素透磁率を測定した。測定結果を図9A及び図9Bに示す。図9A及び図9Bに示す測定結果からは、測定対象とされた磁性体の複素比透磁率は、実数部μ'r及び虚数部μ"rともに、雰囲気温度110℃~140℃の温度域において、実施例7は比較例3よりも高い値を示すことがわかる。
上記実施例2及び比較例1に相当する磁性体を測定対象として、起磁力0.001AT~300ATとなる直流を重畳し、その状態での複素透磁率を測定した。測定結果を図10A及び図10Bに示す。図10A及び図10Bに示す測定結果から、測定対象とされた磁性体の複素比透磁率の実数部μ'rは、直流重畳が3AT~50ATの範囲内にある場合に、実施例2の方が比較例1よりも高い値を示すことがわかる。測定対象とされた磁性体の複素比透磁率の虚数部μ"rは、直流重畳が1.5AT~90ATの範囲内となる場合に、実施例2の方が比較例1よりも高い値を示すことがわかる。したがって、上述のような直流重畳が想定される環境下で磁性体が使用される場合には、実施例2の磁性体を用いることにより、直流重畳に起因する透磁率の低下を抑制することができる。
良好な性能を示した実施例1から実施例6までの各磁性体を対象にして、次のような方法で島部の平均粒径を算出した。まず、SEMによって焼結体の断面を撮影する。撮影されたSEM画像において、焼結体中に存在する島部を任意に20個選択する。選択された島部の長径をそれぞれ測定する。測定された島部の長径の全てを積算して島部の個数で除す。これにより、本開示でいう島部の平均粒径が算出される。各磁性体ともに複数回にわたって異なる範囲を撮影対象として測定を繰り返し、それぞれで平均粒径を算出した。その結果、島部の平均粒径は、最小値が約0.5μm、最大値が約50μmであった。。
以上説明した通り、上記実施例1~実施例6として例示した磁性体によれば、比較例1に比べ、110℃~140℃程度の高温環境で使用される場合でも、透磁率の低下を抑制することができる。また、上記実施例7として例示した磁性体によれば、比較例3に比べ、110℃~140℃程度の高温環境で使用される場合でも、透磁率の低下を抑制することができる。すなわち、上記実施例1~実施例7として例示した磁性体であれば、Fe-Ni合金が配合されているので、高い耐熱性と高い透磁率とを兼ね備えた磁性体となる。
以上、磁性体について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
なお、以上説明した例示的な実施形態から明らかなように、本開示の磁性体は、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
本開示の一態様では、測定周波数1MHz、温度110℃の条件下で測定される複素比透磁率の実数部μ'rが357.8-579.9の範囲内となってもよい。
本開示の一態様では、フェライト粉末が、Mn-Znフェライト粉末であってもよい。
Claims (5)
- 90-99.5質量%のフェライトの粉末と0.5-10質量%のFe-Ni合金の粉末とを含有する磁性体原料粉末の焼結体によって構成され、
前記焼結体は、前記フェライトの連続相によって海部が構成されて前記Fe-Ni合金の非連続相によって粒子状の島部が構成される海島構造を形成しており、
前記島部の平均粒径が0.5μm以上50μm以下である
磁性体。 - 請求項1に記載の磁性体であって、
前記フェライトの粉末が、Ni-Znフェライトの粉末である
磁性体。 - 請求項2に記載の磁性体であって、
測定周波数1MHz、温度110℃の条件下で測定される複素比透磁率の実数部μ'rが357.8-579.9の範囲内となる
磁性体。 - 請求項2又は請求項3に記載の磁性体であって、
測定周波数1MHz、温度140℃の条件下で測定される複素比透磁率の実数部μ'rが3.1-515.5の範囲内となる
磁性体。 - 請求項1に記載の磁性体であって、
前記フェライトの粉末が、Mn-Znフェライトの粉末である
磁性体。
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