JP2007088316A - 磁性粉末および電波吸収体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粒径100μm以下、アスペクト比5以上の軟磁性鉄合金粒子1の表面周囲に平均粒径5μm以下のソフトフェライト粒子2が有機質または無機質の結合材3を介して付着した複合粒子で構成される粉末であって、当該粉末中には軟磁性鉄合金100質量部に対しソフトフェライトが40〜80質量部の割合で含まれている磁性粉末。軟磁性鉄合金としては、Si:4〜13質量%、Al:4〜7質量%、残部実質的にFeの組成、またはSi:3〜7質量%、残部実質的にFeの組成を有するものが好適に使用できる。
【選択図】図1
Description
i) 球状ではなく扁平形状の軟磁性鉄合金粒子を基材粒子として使用すること、
ii) 磁性粉末を構成する粒子は、基材粒子の表面をとり囲むようにしてソフトフェライト粒子が基材粒子に付着している「複合粒子」であること、
が極めて有効であることを見出した。
ここで、粒径は粒子の長軸長(長径)である。アスペクト比は「長径/厚さ」である。
「残部実質的にFe」とは、残部として本発明の効果を阻害しない範囲でFe以外の元素の混入を許容する趣旨であり、「残部Feおよび不可避的不純物」の場合が含まれる。
図1に、その複合粒子の断面構造を模式的に示す。平たい形状の軟磁性鉄合金からなる基材粒子1の表面周囲には、ソフトフェライト粒子2が存在する。ソフトフェライト粒子2は結合材3を介して基材粒子1の表面に付着している。結合材3は非磁性かつ絶縁性の物質、例えば熱可塑性樹脂などである。なお、図1は断面構造の概念を説明するための模式図であるからソフトフェライト粒子2のサイズや結合材3の厚みなどはかなり誇張して描いてある。
〔基材粒子〕
本発明の磁性粉末を構成する複合粒子は、その基材として扁平形状を有する軟磁性鉄合金を採用する。基材粒子のサイズは粒径が100μm以下であることが望ましい。100μmを超えるような大きい粒子が含まれると電波吸収体シートに使用したときにシートの表面平滑性が損なわれ、粗表面から粉の剥離が生じて電子機器のトラブルを招く恐れがある。一方、粒径が小さい粒子があまり多くなると電波吸収体を作るとき高分子マトリクスとの混練に多大なトルクが必要となり、混練機器の部品消耗を早める。したがって、基材粒子の平均粒径は3〜50μmの範囲にあることが望ましく、5〜20μmが一層好ましい。また、基材粒子の平均粒径は後述のソフトフェライトの平均粒径よりも大きくなければならない。
本発明では従来から電波吸収体に使用されている一般的なソフトフェライト粉末が使用できる。特に数百MHz〜数GHz帯域で電波吸収性能を呈するものが好ましく、例えばMg−Zn系、Mn−Zn系、Ni−Zn系等のフェライトが使用できる。本発明に適用するソフトフェライト粒子は、基材粒子の周囲を取り囲むようにして存在させるものであるため、その平均粒径は少なくとも基材粒子の平均粒径より小さくなければならない。具体的にはソフトフェライト粒子の平均粒径は5μm以下である必要があり、平均粒径1μm以下(例えば平均粒径0.05〜1μm)であることが一層好ましい。基材粒子とのサイズ比としては、「ソフトフェライトの平均粒径/基材粒子の平均粒径」の値が0.001〜0.35であることが望ましく、例えば0.01〜0.3とすることができる。
このようなソフトフェライト粉末は従来一般的な製法を利用して製造できる。
本発明の磁性粉末を構成する複合粒子は、ソフトフェライト粒子が基材粒子の表面を取り囲むようにして存在することによって、電波吸収体の絶縁性を確保するものである。発明者らの詳細な検討によれば、サイズが前述のように適正化された基材粒子とソフトフェライト粒子を使用する場合、本発明の磁性粉末中には基材粒子を構成する軟磁性鉄合金100質量部に対しソフトフェライトが40〜80質量部の割合で含まれていることが望ましい。このとき、電波吸収体の絶縁性が十分確保されるとともに、平たい粒子形状に起因する複素透磁率μ''の向上作用も維持される。軟磁性鉄合金100質量部に対しソフトフェライトが45〜70質量部の範囲で含まれていることが一層好ましい。
結合材はソフトフェライト粒子を基材粒子の表面に付着する役割を担う。その物質は、複合粒子が電波吸収体の高分子マトリクスに混ぜ込まれて電波吸収体を構築するまでの間、ソフトフェライト粒子の脱落を防止する機能が発揮され、非磁性かつ絶縁性を有するものであれば特に制限はない。具体的には例えば、シリコーン等の樹脂が好適に使用できる。
前記の基材粒子の粉末とソフトフェライト粒子の粉末を、結合材とともに所定の割合で混ぜ合わせることにより、基材粒子の表面周囲にソフトフェライト粒子を付着させる。結合材として高分子樹脂を使用する場合、その樹脂の溶剤となる物質を加えて樹脂に流動性を付与した状態で、溶剤が揮発しやすい温度域に加熱しながら攪拌機等により十分に攪拌混合する。攪拌を行いながら溶剤を揮発させていき、溶剤を十分に揮発させると、図1に示したような構造の複合粒子が得られる。結合材として例えばシリコーンを使用する場合、溶剤としてはトルエン等の揮発性有機溶剤が使用でき、攪拌時の加熱温度は120℃前後とすればよい。
上記のようにして得た複合粒子で構成される磁性粉末と電波吸収体のマトリクスとなる高分子材料とを所定割合で混合し、混練機で混練する。混練温度は高分子にある程度の流動性が付与され、磁性粉末を十分に分散混合することができる温度域とする。磁性粉末の配合量はできるだけ多い方が電波吸収特性の向上に繋がり効果的であるが、あまり多すぎると混練物の成形性が維持できなくなったり、電波吸収体の機械的特性が劣化したりするので、電波吸収体に含まれる磁性粉末の配合量は60〜95質量%程度とすることが望ましい。この混練物をロールでシート状に成形することにより電波吸収体が得られる。高分子マトリクスの材料は、例えば合成ゴム、熱可塑性エラストマー、プラスチック等の非磁性かつ絶縁性の物質が選択される。
軟磁性鉄合金として、Si:9質量%、Al:6質量%、残部Feおよび不可避的不純物の組成を有するセンダスト粉末を使用した。これは粉砕により扁平化されたもので、長軸長による平均粒径9.0μm、平均アスペクト比18である。
ソフトフェライトとして、Mg0.5Zn0.5O・Fe2O3組成のスピネル型フェライトを使用した。これは平均粒径約0.8μmの粉末である。
銅板の上に25.4mm径のリング状の軟質塩ビパイプを置き、その塩ビパイプの中に試料粉末を入れたのち塩ビパイプの上部に別の銅板を乗せて、試料粉末が入った塩ビパイプを2枚の銅板で挟むようにする。銅板の上下からアクリル板を介して圧縮試験器により1.3MPaで加圧する。この加圧により塩ビパイプは容易に潰れ、試料粉末に1.3MPaの圧力が付与された状態となる。この加圧状態において上下2枚の銅板間の電気抵抗を測定する。この試験後に潰れた塩ビパイプの寸法を測定して、試験中の粉末の体積を算出するそして、前記の電気抵抗値と粉末体積から、試料粉末の体積固有抵抗を求める。
その結果、体積固有抵抗は24.5Ω・mであった。粉体特性について表1にまとめて示してある(以下の比較例において同じ)。このような圧粉状態で体積固有抵抗がゼロにならないということは、導電性をもつ基材粒子の直接的な接触が周囲の絶縁粒子(フェライト粒子)によって顕著に防止されていることを意味し、電波吸収体に使用した際には良好な絶縁性が確保される。
磁性粉末85質量%とNBR15質量%をラボプラストミル(東洋精機株式会社製、R−60)により80℃で10min混練し、一旦排出後、再度同条件で混練した。得られた混練物を6インチ径の電熱圧延ロールにより圧延し、厚さ2mmの電波吸収体シートを得た。
軟磁性鉄合金として、Si:9質量%、Al:6質量%、残部Feおよび不可避的不純物の組成を有するセンダスト粉末を使用した。ただしこの粉末はアトマイズ法により製造されたものであり、平均粒径30.7μm、平均アスペクト比1.02である。
ソフトフェライトは実施例1と同じものを使用した。
実施例1で使用した薄片状粒子からなるセンダスト粉末のみによって磁性粉末を構成した。この磁性粉末について体積固有抵抗を前記の方法で測定した結果、体積固有抵抗は0Ω・mであった。
2 ソフトフェライト粒子
3 結合材
Claims (3)
- 粒径100μm以下、アスペクト比5以上の軟磁性鉄合金粒子の表面周囲に平均粒径5μm以下のソフトフェライト粒子が有機質または無機質の結合材を介して付着している複合粒子で構成される粉末であって、当該粉末中には軟磁性鉄合金100質量部に対しソフトフェライトが40〜80質量部の割合で含まれている磁性粉末。
- 軟磁性鉄合金は、Si:4〜13質量%、Al:4〜7質量%、残部実質的にFeの組成、またはSi:3〜7質量%、残部実質的にFeの組成を有するものである請求項1に記載の磁性粉末。
- 請求項1または2に記載の磁性粉末が高分子マトリクス中に分散配合されている電波吸収体。
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