JP6679305B2 - 磁性コンパウンドとその製造方法並びに電子部品、アンテナ - Google Patents

磁性コンパウンドとその製造方法並びに電子部品、アンテナ Download PDF

Info

Publication number
JP6679305B2
JP6679305B2 JP2015255961A JP2015255961A JP6679305B2 JP 6679305 B2 JP6679305 B2 JP 6679305B2 JP 2015255961 A JP2015255961 A JP 2015255961A JP 2015255961 A JP2015255961 A JP 2015255961A JP 6679305 B2 JP6679305 B2 JP 6679305B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
magnetic
magnetic powder
metal magnetic
metal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015255961A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017120808A (ja
Inventor
拓行 馬場
拓行 馬場
後藤 昌大
昌大 後藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dowa Electronics Materials Co Ltd
Original Assignee
Dowa Electronics Materials Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dowa Electronics Materials Co Ltd filed Critical Dowa Electronics Materials Co Ltd
Priority to JP2015255961A priority Critical patent/JP6679305B2/ja
Publication of JP2017120808A publication Critical patent/JP2017120808A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6679305B2 publication Critical patent/JP6679305B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Description

本発明は、アンテナを初めとする電子部品に用いられる磁性コンパウンドとその製造方法、並びに当該磁性コンパウンドを用いた電子部品、アンテナに係る。
近年、携帯電話やノートPCなどの電子機器に使用される信号は高周波化が進められており、既にGHz帯の使用が実用化されている。将来的には10GHzを超える周波数領域の利用も予想されている。このような機器の高周波化に伴い、使用される電子部品についても高周波領域での高性能化が求められている。また、電子機器は高機能化が進んでおり、複数の電子部品を搭載することになるため、電子部品の小型化も望まれている。
ここで、本出願人は、平均粒子径100nm以下で、保磁力500〜2500Oeに調整され、飽和磁化が100Am/kg以上である金属磁性粉と、その金属磁性粉を使用して形成されたアンテナを、特許文献1において開示している。
特開2013−236021号公報
上述した電子部品の中でもアンテナへの高周波対応、小型化対応に対しては、金属磁性粉を樹脂中に混合した磁性コンパウンドを用いた複合アンテナが考えられる。当該複合アンテナを実現する為には、ギガヘルツ帯域での磁気損失および誘電損失を低く保ったまま、比透磁率と比誘電率との積の値を高くする必要がある。
そこで、例えば特許文献1に開示した金属磁性粉を、誘電損失の低い樹脂中に分散させて磁気コンパウンドとすることが考えられた。
しかしながら上述した金属磁性粉は、誘電損失の低い樹脂との相溶性が悪くコンパウンド作製が出来ないため、磁気損失および誘電損失を低く保ったまま、比透磁率と比誘電率との積の値の高い磁気コンパウンドを得ることは出来なかった。
その上、小型化されたアンテナを実用化するには当該磁気損失および誘電損失を低く保ったまま、比透磁率と比誘電率との積の値が高いだけでなく、機械的強度特性の向上も必要であった。
本発明は、上述の状況の下で成されたものである。
即ち、本発明が解決しようとする課題は、磁気損失および誘電損失が低く、かつ比透磁率と比誘電率との積の値が高く、さらには機械的強度特性に優れた磁性コンパウンドと、その製造方法、並びに当該磁性コンパウンドを使用するアンテナを初めとする電子部品を提供することである。
上述の課題を解決する為、本発明者らは研究を行った。
そして、例えば特許文献1に開示した金属磁性粉の表面へ、所定の被覆体を存在させる表面処理を行って、金属磁性粉末複合体を得る構成に想到した。当該金属磁性粉末複合体は誘電損失の低い樹脂への相溶性が高いことから、当該樹脂中に相当量の金属磁性粉末複合体を安定して分散させて充填することにより、電磁気的特性に優れた磁性コンパウンドを製造することが期待された。
しかしながら、当該相当量の金属磁性粉末複合体が充填された磁性コンパウンドは曲げ強度が低く、現実のアンテナに使用出来るものではなかった。そこで、当該曲げ強度を担保する為に磁性コンパウンドへ補強材などを添加すると、今度は、作製されたアンテナの靱性が低下してしまった(即ち、曲げ弾性率が上昇した。)。この結果、当該磁性コンパウンドは、機械的強度の問題点から現実のアンテナに使用することは困難であった。
ここで、本発明者らはさらに研究を行った。
そして、上述した金属磁性粉末複合体が充填された樹脂中へ、さらに炭素繊維を含有させる構成に想到した。さらに、当該構成に対する研究の結果、磁性コンパウンドに対する炭素繊維添加は、機械的特性の向上のみならず、金属磁性粉末複合体の充填量を下げた場合であっても高い電磁気特性(例えば、比透磁率と比誘電率との積の値)を担保出来る効果もある、との画期的な知見を得た。
即ち、磁性コンパウンド作製時に、炭素繊維を含有させることにより、当該磁性コンパウンドを使用するアンテナを初めとする電子部品において、小型化への要請と機械的強度への要請との両方を満たすことが出来ることに想到し本発明を完成した。
即ち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
1MHzにおける誘電損失tanδεの値が0.01以下の熱可塑性樹脂と、金属磁性粉と、炭素繊維とを含む磁性コンパウンドの製造方法であって、
金属磁性粉を、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物およびその誘導体から選択される1種以上の有機化合物により表面処理して金属磁性粉末複合体を得る工程と、
前記金属磁性粉末複合体と、樹脂と、炭素繊維とを混合する工程を有し、
前記炭素繊維を、1質量%以上5質量%以下含有させることを特徴とする磁性コンパウンドの製造方法である。
第2の発明は、
前記金属磁性粉として、保磁力Hcが50.0kA/m以上80.0kA/m以下、飽和磁化σsが160Am/kg以上であるFe−Co合金粉末を用いることを特徴とする第1の発明に記載の磁性コンパウンドの製造方法である。
第3の発明は、
前記金属磁性粉として、平均粒子径100nm以下の金属磁性粉を用いることを特徴とする第1または第2の発明に記載の磁性コンパウンドの製造方法である。
第4の発明は、
前記金属磁性粉末複合体を、40質量%以上70質量%以下含有させることを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法である。
第5の発明は、
前記有機化合物が、フタル酸であることを特徴とする第1から第4の発明のいずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法である。
第6の発明は、
前記熱可塑性樹脂として、PPS、SPS、m−PPEから選択されるいずれか1種以上を用いることを特徴とする第1から第5の発明のいずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法である。
第7の発明は、
前記炭素繊維として、表面が前記樹脂で被覆された炭素繊維を混合することを特徴とする第1から第6の発明のいずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法である。
第8の発明は、
前記熱可塑性樹脂を、25質量%以上含有させることを特徴とする第1から第7の発明のいずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法である。
第9の発明は、
前記金属磁性粉末複合体と前記樹脂とを混合して混練処理した後に、前記炭素繊維を混合してさらに混練処理することを特徴とする第1から第8の発明のいずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法である。
第10の発明は、
熱可塑性樹脂と、金属磁性粉と、炭素繊維とを含み、
前記炭素繊維が、1質量%以上5質量%以下含有され、曲げ強度が50MPa以上であり、
前記金属磁性粉の保磁力Hcが50.0kA/m以上80.0kA/m以下、飽和磁化σsが160Am/kg以上であることを特徴とする磁性コンパウンドである。
第11の発明は、
熱可塑性樹脂と、金属磁性粉と、炭素繊維とを含み、
前記炭素繊維が、1質量%以上5質量%以下含有され、曲げ強度が50MPa以上であり、
前記金属磁性粉は、平均粒子径100nm以下の金属磁性粉であることを特徴とする磁性コンパウンドである。
第12の発明は、
熱可塑性樹脂と、金属磁性粉と、炭素繊維とを含み、
前記炭素繊維が、1質量%以上5質量%以下含有され、曲げ強度が50MPa以上であり、
前記金属磁性粉が、40質量%以上70質量%以下含有されていることを特徴とする磁性コンパウンドである。
第13の発明は、
熱可塑性樹脂と、金属磁性粉と、炭素繊維とを含み、
前記炭素繊維が、1質量%以上5質量%以下含有され、曲げ強度が50MPa以上であり、
2GHz帯域での比透磁率の実数部(μ’)と比誘電率の実数部(ε’)との積の値(μ’×ε’)が10.0以上であり、かつ、磁気損失tanδμと誘電損失tanδεとの和の値(tanδμ+tanδε)と、前記積の値(μ’×ε’)との比の値((tanδμ+tanδε)/(μ’×ε’))が0.0038以下であり、曲げ弾性率が8000MPa以下であることを特徴とする磁性コンパウンドである。
第14の発明は、
前記熱可塑性樹脂が、1MHzにおける誘電損失tanδεの値が0.01以下であることを特徴とする第10から第13の発明のいずれかに記載の磁性コンパウンドである。
第15の発明は、
前記熱可塑性樹脂は、PPS、SPS、m−PPEから選択される1種以上であることを特徴とする第10から第14の発明のいずれかに記載の磁性コンパウンドである。
第16の発明は、
第10から第15の発明のいずれかに記載の磁性コンパウンドを用いたことを特徴とする電子部品である。
第17の発明は、
第10から第15の発明のいずれかに記載の磁性コンパウンドを用いたことを特徴とするアンテナである。
本発明に係る磁性コンパウンドは、比透磁率の実数部と比誘電率の実数部との積が大きく、曲げ強度が大きく、かつ曲げ弾性率が低い為、当該磁性コンパウンドを使用するアンテナを初めとする電子部品の小型化、機械的強度の向上が実現した。
磁性コンパウンドを製造する第1の製造方法を示すフロー図である。 磁性コンパウンドを製造する第2の製造方法を示すフロー図である。
本発明を実施するための形態について[1]金属磁性粉末複合体、[2]樹脂、[3]炭素繊維、[4]磁性コンパウンド、[5]磁性コンパウンドの製造方法、の順に説明する。
[1]金属磁性粉末複合体
本発明に係る磁性コンパウンドに充填される金属磁性粉末複合体は、金属磁性粉末の表面に被覆体が存在するものである。当該金属磁性粉末複合体について(1)金属磁性粉、(2)被覆体、の順で説明する。
(1)金属磁性粉
本発明に係る金属磁性粉は、磁性特性、粒径などを適宜設計したものを用いることが出来る。
磁性特性としては、保磁力(Hc)と飽和磁化(σs)とにより磁性コンパウンドの比透磁率を設定できる。ほかには、角形比(SQ)等、また粉体特性として、粒径、形状、BET(比表面積)、TAP(タップ)密度を調整すればよい。
本発明に係る金属磁性粉には、Fe(鉄)若しくは、FeとCo(コバルト)に加えて、Y(イットリウム)を含む希土類元素(本発明において、単に「希土類元素」と記載する場合がある。)と、Al(アルミニウム)ならびにSi(ケイ素)ならびにMg(マグネシウム)のうち少なくとも1種(以後「Al等」と呼ぶ。)が、含まれることが好ましい。
金属磁性粉の原材料となる元素を含む水溶液中において、上述した希土類元素の量を変化させることで、最終的に得られる金属粒子の軸比(=長軸長/短軸長)を変更することができる。
希土類元素が少ない場合は軸比が大きくなり、より磁気損失を低減した金属粉末を得ることができる。一方、希土類元素が含有されていることにより、比透磁率が担保される。尤も、希土類元素の含有量が過剰の場合は、金属粒子の軸比が小さくなり磁気損失はやや大きくなるが、希土類元素を含まない場合と比べれば、比透磁率が大きくなる。
つまり、適切な希土類含有量とすることで、より低い磁気損失と高い比透磁率を有するようになるため、kHzからGHz帯域といった広い範囲において利用できうる金属粉末を得ることが出来る。
ここで、上述のように特性のバランスを維持するために適切な元素の含有範囲は、FeとCoの総和に対する希土類元素含有量で0at%以上(好適には0at%を超え)10at%以下とすることが望ましく、0at%を超え5at%以下がより好ましい。また、使用する希土類元素種としてはYやLaが好ましい。
金属磁性粉がCoを含む場合、Co含有量に関しては、原子割合でFeに対するCoの割合(以下「Co/Fe原子比」という)で0at%以上60at%以下を含有させたFe−Co合金粉末とする。Co/Fe原子比が5at%以上55at%以下のものがより好ましく、10at%以上50at%以下のものが一層好ましい。このような範囲において金属粉末は、飽和磁化が高く、かつ安定した磁気特性が得られやすい。
また、Al等は焼結抑制効果も有しており、熱処理時の焼結による粒子の粗大化を抑制している。本明細書ではAl等は「焼結抑制元素」の1つとして扱っている。ただし、Al等は非磁性成分である。そこで、磁気特性希釈回避の観点から、FeとCoの総和に対するAl等含有量は1at%以上20at%以下とすることが望ましく、3at%以上18at%以下がより好ましく、5at%以上15at%以下が一層好ましい。
さらに本発明に係る金属磁性粉粒子は、金属成分からなるコアと主として酸化物成分からなるシェルとから構成される、コア/シェル構造を有することが好ましい。コア/シェル構造を有しているか否かは、例えば、金属磁性粉粒子のTEM写真により確認することができる。また金属磁性粉粒子の組成分析は、例えばICP発光分析、ESCA(別名XPS)、TEM−EDX、SIMSなどの方法を採用することができる。
金属磁性粉の磁気特性としては、保磁力が50.0kA/m以上80.0kA/m以下、飽和磁化が160Am/kg以上であることが好ましい。磁気特性をこの範囲とすることで、金属磁性粉の比透磁率の実数部μ’を高め、磁性コンパウンドの比透磁率の実数部μ’も高めることが出来る。
なお、金属磁性粉粒子の平均粒子径は10nm以上500nm以下(好ましくは100nm以下)であるのが好ましい。マイクロレベル(μm)の大きさの金属磁性粉であっても用いることができるが、電子部品となった際の通信特性の向上、小型化、磁気損失低減および誘電損失低減の観点から、より小さい粒径であることが望ましい。
(金属磁性粉の平均粒子径)
金属磁性粉を構成する金属磁性粉粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めることができる。具体的には、TEM画像上において、ある粒子を取り囲む最小円を設定し、当該最小円の直径をその粒子の径(長径)と定める。その径は、金属コアの周囲を覆う酸化保護層を含めた金属磁性粉粒子の径を意味する。そして、ランダムに選択した300個の金属磁性粉粒子について径を測定し、その平均値を当該金属磁性粉の平均粒子径とすれば良い。
(2)被覆体
本発明に係る被覆体は、後述する表面処理工程において、金属磁性粉粒子表面の少なくとも一部または全部に付着し、当該金属磁性粉粒子を被覆していると考えられる。当該被覆体は、ジカルボン酸、ジカルボン酸分子内の脱水作用によって生成した無水物、ジカルボン酸の誘導体から選択される1種以上の有機化合物により構成される。尚、「誘導体」とは、官能基の導入、酸化、還元、原子の置き換えなど、母体の構造や性質を大幅に変えない程度の改変がなされた化合物をさし、「原子の置き換え」には、末端がアルカリ金属で置換がなされ、可溶性とされたものも含む概念である。
本発明に係る金属磁性粉粒子が、ジカルボン酸、ジカルボン酸分子内の脱水作用によって生成した無水物、ジカルボン酸の誘導体から選択される1種以上の有機化合物により被覆され、金属磁性粉末複合体を形成することで、後述する樹脂との相溶性が向上する。
本発明者らが検討したところ、上述した有機化合物は、樹脂のように分子量が何万もある高分子であっても良いが、分子量が500以下のジカルボン酸がより好ましい。さらに、ジカルボン酸およびその誘導体のなかでも、フタル酸、無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸もしくはマレイン酸の誘導体、あるいは無水フタル酸もしくは無水マレイン酸の誘導体であることが好ましく、フタル酸もしくはマレイン酸を主骨格として、炭素数が4以上20以下である構造とするのがさらに良い。尚、これらジカルボン酸、ジカルボン酸無水物又はその誘導体は、1種の有機化合物だけで構成される必要は無く、それらの混合物であっても良い。有機化合物の炭素数が上述の範囲内にあると、被覆体分子の嵩が適度な大きさとなり、当該被覆体が付着した金属磁性粉末複合体を、後述する樹脂の中へ添加し易くなるからである。
上述した被覆体が、金属磁性粉と樹脂との間の「ぬれ性」を向上させるメカニズムについての詳細は不明であるので、推測にとどまるが、被覆体である有機化合物の構造式から鑑みて、カルボキシル基側が金属磁性粉の表面に引き寄せられる一方、反対側(カルボキシル基が存在しない側)が疎水性の樹脂側になじむようになり、結果として金属磁性粉末複合体が樹脂によくなじむようになると考えられる。また、他の推測として、金属磁性粉と、所定量の被覆体とを混合することにより、被覆体を金属磁性粉に被覆させるが、「被覆に利用されていない」フリーな状態の被覆体をあえて除去することなく金属磁性粉末複合体中に残存させていることによって、上述した「ぬれ性」作用以外に、何らかの分散作用をも生じさせているのではないか、とも考えられる。
尚、金属磁性粉末粒子を被覆する被覆体の量としては、金属磁性粉の表面が被覆体で被覆された金属磁性粉末複合体において、高周波燃焼法での炭素計測値が0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。尤も、磁性コンパウンド中において、被覆体は、金属磁性粉末粒子表面に存在するもの以外に、樹脂中へ分散したり、または樹脂と化合したりするものがあると考えられる。従って、磁性コンパウンドの全体量と、金属磁性粉の量と、樹脂量との間において、配合比を設定することにより所望の各特性を発揮する磁性コンパウンドを得ることができる。
磁性コンパウンド中における金属磁性粉末複合体の含有量は、磁性コンパウンドに対して40質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。金属磁性粉末複合体の含有量を40質量%以上とすることで磁性コンパウンドの比透磁率と比誘電率との積の値を十分に高めることができ、70質量%以下とすることで磁性コンパウンドの十分な機械的強度特性を得ることができる。
[2]樹脂
本発明における好適な樹脂として、例えば、IEC60250またはJISC2138:2007に規定された1MHzにおける誘電損失tanδεの値が0.01以下の、低誘電損失材料である熱可塑性樹脂が挙げられる。IEC60250またはJISC2138:2007に規定された1MHzにおける誘電損失の値を0.01以下とすることで、磁性コンパウンドにおける誘電損失の特性が担保される。
なかでも、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)樹脂、および、m−PPE(変性ポリフェニレンエーテル)樹脂を好ましい熱可塑性樹脂として挙げることが出来る。そして、これらの樹脂を単独または2種以上を混合して使用することが出来る。
磁性コンパウンドにおいて、IEC60250またはJISC2138:2007に規定された1MHzにおける誘電損失tanδεの値が0.01以下である熱可塑性樹脂の含有量が、25質量%以上であれば良好な機械的特性と誘電損失特性とを発揮する磁性コンパウンドを得ることができる。一方、磁性コンパウンド中の樹脂の含有量が70質量%以下、好ましくは60質量%以下であれば、電子部品の電磁気的特性への悪影響を生じさせない。
[3]炭素繊維
炭素繊維は、比重が小さく、高強度、高弾性率であり、樹脂の強化材料として用いられている。しかし、本発明者らは、当該炭素繊維を磁性コンパウンド中に含有させることにより、当該磁性コンパウンドの機械的特性を向上させるのみならず、上述した金属磁性粉の充填量を減量しても、当該磁性コンパウンドは比透磁率の実数部(μ’)と比誘電率の実数部(ε’)との積の値(μ’×ε’)を担保出来ることを知見したものである。
この結果、本発明に係る磁性コンパウンドは、その磁気的特性を担保したまま、炭素繊維添加および金属磁性粉の充填量の減量による効果を享受して、曲げ弾性率を低く担保しながら曲げ強度を上げる効果を実現したものである。
炭素繊維の含有量としては、磁性コンパウンドに対して1質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。炭素繊維の含有量を1質量%以上とすることで、十分な曲げ強度を担保でき、5質量%以下とすることで十分に低い誘電損失特性を担保できる。
一方、炭素繊維を添加する際、作業性の観点から、炭素繊維を単独で添加するのではなく、予め、炭素繊維を樹脂に分散させたものを添加することが好ましい。特に、樹脂の機械的特性を向上させる目的で、予めフィラーとして炭素繊維が添加された樹脂が市販されており、これらの炭素繊維が添加された樹脂を用いることが出来る。この場合、「[2]樹脂」欄にて説明した樹脂であって、予め、当該樹脂中へ炭素繊維が添加されたものを用いることが好ましい。
[4]磁性コンパウンド
本発明に係る磁性コンパウンドは、磁気損失および誘電損失が低く、比透磁率の実数部と比誘電率の実数部との積の値が大きく、曲げ強度が大きく、かつ曲げ弾性率が低い磁性コンパウンドである。
具体的には、2GHz帯域での比透磁率の実数部(μ’)と比誘電率の実数部(ε’)との積の値(μ’×ε’)が10.0以上であり、かつ磁気損失tanδμと誘電損失tanδεとの和の値(tanδμ+tanδε)と、前記積の値(μ’×ε’)との比の値((tanδμ+tanδε)/(μ’×ε’))が0.0038以下であり、曲げ強度が50MPa以上、かつ曲げ弾性率が8000MPa以下であることが好ましい。
磁性コンパウンドの曲げ強度が50MPa以上、かつ曲げ弾性率が8000MPa以下であることで、本発明に係る磁性コンパウンドを用いたアンテナの製造時、並びに当該アンテナが電子機器に組み込まれる際、また電子機器として使用された際において、アンテナ本体が破損することを回避することができる。曲げ強度が高いことは、外部からの荷重に対して破断し難いことを示し、曲げ弾性率が低いことは外部からの荷重に対して変位し易い、すなわちしなり易いことを意味する。よって、磁性コンパウンドの曲げ強度が50MPa以上、かつ曲げ弾性率が8000MPa以下であることで、耐荷重性と柔軟性とを兼ね備えることができ、本発明に係る磁性コンパウンドを用いたアンテナの製造時、並びにアンテナが電子機器に組み込まれる際、また電子機器として使用された際において、アンテナ本体が破損することのない、強度特性に優れたアンテナを作成することができる。
さらに、2GHz帯域での比透磁率の実数部(μ’)と比誘電率の実数部(ε’)との積の値(μ’×ε’)が10.0以上であることで、当該アンテナの小型化を達成可能となる。
次に、磁気損失tanδμと誘電損失tanδεとの和の値(tanδμ+tanδε)と、比透磁率の実数部と比誘電率の実数部との積の値(μ’×ε’)との、比の値((tanδμ+tanδε)/(μ’×ε’))について説明する。
一般的に、比透磁率および比誘電率が増加するほど、磁気損失ならびに誘電損失も増加してしまう傾向がある。従って(磁気損失+誘電損失)/(比透磁率×比誘電率)の値が低いほど、損失特性が優れているということが出来る。本発明では、2GHzにおける磁気損失tanδμと誘電損失tanδεとの和の値(tanδμ+tanδε)と、前記積の値(μ’×ε’)との比の値における((tanδμ+tanδε)/(μ’×ε’))の値が、従来技術では達成することの出来なかった0.0038以下であることにより、磁気損失ならびに誘電損失特性の低いアンテナを作製可能としたものである。
さらに、当該磁性コンパウンドの2GHzにおける誘電損失tanδεの値は、0.050以下であることが好ましく、0.020以下であることがより好ましい。誘電損失tanδεの値が上記の範囲であることで、当該磁性コンパウンドをアンテナとして使用した際に、信号エネルギーの減衰を抑制することが出来る。
当該磁性コンパウンドは、金属磁性粉を充填した誘電損失が低い樹脂へ炭素繊維を含有させることにより、炭素繊維添加による機械的特性の向上のみならず、金属磁性粉の充填量を下げても、比透磁率の実数部(μ’)と比誘電率の実数部(ε’)との積の値(μ’×ε’)を担保出来るとの知見を基に製造されたものである。
即ち、当該磁性コンパウンドにおいては、金属磁性粉と炭素繊維とを併用する構成により、金属磁性粉の充填量を低減することが出来、当該磁性コンパウンドを用いて作製した電子部品において、曲げ弾性率を低く担保しながら曲げ強度を上げることが出来るという画期的な知見を基に成されたものである。
この結果、当該磁性コンパウンドを用いて作製したアンテナ部品においては、下記式1で示される波長短縮効果により磁性コンパウンドを通過する電磁波の波長λが短くなるため、アンテナ部品を小型化することができる。
Figure 0006679305
[5]磁性コンパウンドの製造方法
以上、[1]〜[3]にて説明した材料を用い、[4]にて説明した本発明に係る磁性コンパウンドを製造する方法について、図1、2を参照しながら説明する。
尚、図1、2はともに、本発明に係る磁性コンパウンドを製造する方法を示すフロー図であるが、図1は工程を簡素化したい場合に適する第1の製造方法であり、図2は高い機械的特性や電磁気的特性を重視する場合に適する第2の製造方法である。
まず、図1を参照しながら工程を簡素化する場合に適する第1の製造方法について、(1)表面処理工程、(2)強混練工程の順に説明する。
(1)表面処理工程
金属磁性粉に対し、被覆体として有機化合物(ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物およびその誘導体のうち少なくともいずれか)を添加して混合し、金属磁性粉末複合体を得る工程である。
得られた金属磁性粉末複合体において、炭素量が0.1質量%より多ければ、被覆体の添加量が十分であり樹脂への分散が好適に行える。一方、金属磁性粉末複合体において炭素量が10質量%以下であれば、磁性粒子の分散性向上に寄与しない非磁性成分の発生を回避出来るので好ましい。
以上のことから、金属磁性粉100重量部にする被覆体の添加量は2〜15重量部、より好ましくは2.5〜10重量部、さらに好ましくは5〜10重量部である。
金属磁性粉100重量部にする被覆体の添加量が2重量部以上あれば、生成する金属磁性粉末複合体と樹脂とがなじむため、生産した時の製品の性質安定性が向上する。一方、被覆体の添加量が15重量部以下であると、金属磁性粉末複合体における非磁性成分量が過剰とならず、当該金属磁性粉末複合体の電磁気特性低下を回避できる。この結果、当該金属磁性粉末複合体を樹脂と混ぜて磁性コンパウンドとしたときの、電磁気的特性を高く維持することができ、最終的に形成される電子部品の電磁気的特性についても同様に高く維持することができる。
尚、表面処理の際に添加する溶媒(金属磁性粉と被覆体とのなじみを向上させるために添加する溶媒である。)は、必ずしも、被覆体を完全に溶解するものでなくてもよい。
そして、当該溶媒と被覆体との混合液へ金属磁性粉を加え、金属磁性粉を当該溶媒に含浸させた後、当該溶媒を除去する構成を採用することが好ましい。
また、上述した当該溶媒と被覆体との混合液へ金属磁性粉を加え、自転公転併用式攪拌機で攪拌、もしくは剪断力を加えながら攪拌することでペースト化させる方法を採用してもよい。
ペースト化の工程を経ることにより、被覆体と金属磁性粉とが良くなじむように混合される為、金属磁性粉の表面に被覆体が吸着し易くなり、金属磁性粉末複合体が形成され易くなる。尤も、添加した被覆体が、金属磁性粉粒子に対して満遍なく行き渡れば、問題はない。また、撹拌を行う際、溶媒の除去操作、乾燥操作を行うために、ミキサーなどを使用しても差し支えない。
尚、当該溶媒の除去操作、乾燥の操作において、被覆体を金属磁性粉の粒子表面に残存させることが肝要である。
金属磁性粉と被覆体との間の接触を、効率的に生じさせつつ金属磁性粉末複合体を生成させる必要があるので、高い剪断力を有した分散/混練機を用いてもよい。そして、溶媒に対して強い剪断力を加えながら、金属磁性粉を当該溶媒に対して分散させるのも好ましい。
金属磁性粉末複合体のペースト作製後に、これを乾燥して粉末状態にする方法を採用する場合に用いられる、強い剪断力を有する分散機の好ましい例としては、タービン・ステータ型攪拌機として知られるプライミクス株式会社のT.K.ホモミクサー(登録商標)、IKA社のUltra−Turrax(登録商標)などが例示でき、コロイドミルとしては、プライミクス株式会社のT.K.マイコロイダー(登録商標)、T.K.ホモミックラインミル(登録商標)、T.K.ハイラインミル(登録商標)や、株式会社ノリタケカンパニーリミテドのスタティックミキサー(登録商標)、高圧マイクロリアクター(登録商標)、高圧ホモジナイザー(登録商標)等が例示できる。
上述した剪断力の強弱は、攪拌翼を有する装置であれば、攪拌翼の翼周速度で評価することができる。本発明において、「強い剪断力」とは、翼周速度が3.0(m/s)以上、好ましくは5.0(m/s)以上のものを指す。翼周速度を当該値以上として強混練を行うと、剪断力が適度に高く、ペースト化の時間を短縮化でき、生産効率が適度に良い。
尚、翼周速度は、円周率×タービン翼の直径(m)×1秒あたりの攪拌回転数(回転数)で算出することができる。例えば、タービン翼の直径が3.0cm(0.03m)で、攪拌回転数が8000rpmであれば、1秒あたりの回転数は133.3(rps)となり、翼周速度は12.57(m/s)となる。
得られたペースト状の金属磁性粉末複合体は、乾燥して溶媒を除くとよい。このときは、当該ペーストをバット上に広げ、周囲の温度を溶媒の乾燥温度以上、被覆体の分解温度未満に設定して乾燥することができる。このとき、金属磁性粉末複合体が酸化し易い物質である場合は、不活性雰囲気下、コスト面を考えると窒素雰囲気下にて乾燥処理を行うことが好ましい。
一方、金属磁性粉に対し強固に被着する被覆体を用いて金属磁性粉末複合体を生成させる場合には、金属磁性粉末複合体と溶媒との混合物に対し、予め、ろ過を行ってある程度の溶媒を除いた後に、乾燥を行うという手法を採用してもよい。当該構成により、予め溶媒の含有量を減ずることができるので、乾燥時間を短縮することができる。なお、当該金属磁性粉に対する被覆体の被着強度を確認するには、上述のろ過操作を行ってろ液を採取し、これを蒸発させて、どの程度の量の被覆体を含有しているかで評価することもできる。
以上、説明した方法に対し、ペーストにすることなく、溶媒と被着されうる有機化合物を混合後に、金属磁性粉を添加し、攪拌混合を行いながら表面処理を行う方法を採用することも出来る。
当該方法を採る場合には、日本コークス株式会社のFMミキサー、株式会社カワタのスーパーミキサーといったものが使用できる。また、こうした装置に、溶媒を蒸発させるための加熱装置が付属したものを用いれば、処理後の粉末を取り出して乾燥に付す操作が必要なくなるので好ましい。
当該方法を行う際には、金属磁性粉の酸化による特性低下を抑制する目的で、不活性雰囲気下で処理を施すのが好ましい。さらに、一旦溶媒と有機化合物を混合した液に不活性ガス(コスト的には窒素が好ましい。)を通気させる操作を施すのがより好ましい。処理容器内を不活性ガスで置換した後、金属磁性粉を酸化しないように添加して、溶媒、有機化合物、金属磁性粉を混合して混合体を作製した後、加熱処理を行って溶媒の乾燥温度以上、被覆体の分解温度未満に設定して乾燥することができる。より短時間で乾燥するには、ミキサーを運転し、混合体を転動させながら乾燥させることが好ましい。
以上説明した方法により得られた金属磁性粉末複合体の凝集体に対し、分級機やふるいなどを用いて粗粒子を除くのがよい。あまりにも大きな粗粒子が存在することにより、アンテナを作製する際に粗粒子のある部分に力がかかってしまい、機械的特性が悪化するのを回避する為である。篩を用いて分級する時には、500メッシュ以下の目開きのものを用いるのが適当である。
上述の操作により得られた金属磁性粉末複合体の物性値および磁気特性は、以下の方法により確認できる。
(BET比表面積)
BET比表面積は、ユアサアイオニクス株式会社製の4ソーブUSを用いて、BET一点法により求められる。
(金属磁性粉末複合体の磁気特性評価)
得られた金属磁性粉末複合体(または金属磁性粉)の磁気特性(バルク特性)として、外部磁場10kOe(795.8kA/m)において、保磁力Hc(OeまたはkA/m)、飽和磁化σs(Am/kg)、角形比SQを、東英工業株式会社製のVSM装置(VSM−P7)を用いて測定できる。Δσsは、金属磁性粉を温度60℃、相対湿度90%の空気環境下に一週間放置した時の飽和磁化の低下割合を百分率(%)で示したものである。
(2)強混練工程
得られた金属磁性粉末複合体と、樹脂と、炭素繊維とを混練し、磁性コンパウンドを得る。強混練工程により樹脂中に、金属磁性粉粒子と炭素繊維とが分散して混ざっている状態となる。混練後の状態は、樹脂中に金属磁性粉末粒子と炭素繊維とが、均一濃度に分散されているのが望ましい。
樹脂へ炭素繊維を添加する際、単独の炭素繊維を添加することも可能であるが、作業性の観点からは、予め、炭素繊維を含有している樹脂を添加する方法も好ましい。例えば、予め、PPS樹脂中に炭素繊維が含有されているものが「強化樹脂」として市販されており、便宜である。
次に、図2を参照しながら高い機械的特性、磁気的特性を重視する場合に適する第2の製造方法について(1)表面処理工程、(2)強混練工程、(3)弱混練工程の順に説明する
(1)表面処理工程
図1を用いて説明した「(1)表面処理工程」と同様である。そして、同様の操作により金属磁性粉末複合体を得る。
(2)強混練工程
撹拌方法は、図1を用いて説明した「(2)強混練工程」と同様である。但し、当該工程では、炭素繊維または炭素繊維を含有している強化樹脂を添加しない点で、図1と異なる。
(3)弱混練工程
「(2)強混練工程」が完了したら、撹拌装置の混練強度を下げて「弱混練工程」に入る。
弱混練工程においては、樹脂と金属磁性粉末複合体との混練物へ、炭素繊維または炭素繊維を含有している強化樹脂を混錬して磁性コンパウンドを得る。
ここで、樹脂と金属磁性粉末複合体との混練時の強度を下げ、「弱い剪断力」に調整して弱混練を行うのは、炭素繊維への機械的ダメージを低減する為である。炭素繊維へ与える機械的ダメージを低減することは、磁性コンパウンドの機械的特性を担保する観点から好ましい。
上述したように、作業性の観点からは第1の製造方法が優れる。一方、炭素繊維を添加する際に混練強度を下げる第2の製造方法は、炭素繊維の形状が混練によって壊される割合が第1の製造方法より少ない結果、得られる磁性コンパウンドにおいて、高い機械的特性を実現できると考えられる。
(実施例1)
まず、フタル酸(和光純薬工業株式会社製:特級試薬)25gへ溶媒としてエタノール(和光純薬工業株式会社製:特級試薬)を添加して全量を500gとし、フタル酸のエタノール溶液を得た。この溶液へ、金属磁性粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製:鉄−コバルト金属粒子、平均粒子径:43nm、BET比表面積:36.9m/g、保磁力:756kA/m、飽和磁化σs:181.1Am/kg、炭素含有量(高周波燃焼法):0.01質量%)500gを不活性雰囲気下で添加し、溶液中にて金属磁性粉を沈降させた混合物を得た。この混合物を、高速攪拌機(プライミクス株式会社製:TKホモミキサーMarkII)へ設置し、大気中において8000rpm2分間の撹拌により混合して、金属磁性粉のペーストを得た。
なお、当該金属磁性粉は、特開2015−200018号公報における実施例13に開示した製造方法により、製造したものである。
得られたペーストをアルミのバット上に広げ、エタノールの揮発温度近傍(78℃)で1時間、その後120℃に昇温して1.5時間加熱し、ペーストからエタノールを除き、フタル酸と金属磁性粉とが混在した凝集体を得た。当該凝集体において、金属磁性粉の表面の一部または全体がフタル酸により被覆された。
得られた凝集体を500メッシュのふるいにかけて粗大粒子を除き、実施例1に係る金属磁性粉末複合体を得た。
得られた金属磁性粉末複合体は、BET:34.9m/g、σs:173.5Am/kg、炭素含有量(高周波燃焼法):2.82質量%の特性を有したものだった。なお、得られた金属磁性粉末複合体の真密度を気相(Heガス)置換法で求めたところ、5.58g/cmであった。尚、当該真密度の値は、磁性コンパウンド中における金属磁性粉末複合体の含有量を所望の割合に設定する為、金属磁性粉末複合体の配合比を算出する際に使用する。
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が63.7質量%、樹脂の質量割合が34.5質量%、炭素繊維の質量割合が1.8質量%となるように、DURAFIDE0220A9(ポリフェニレンサルファイド/ポリプラスチックス株式会社製、比重1.35g/cm)と、DURAFIDE2130A1(炭素繊維含有率30質量% ポリフェニレンサルファイド含有率70質量%/ポリプラスチックス株式会社製、比重1.44g/cm)との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした。なお、DURAFIDE0220A9およびDURAFIDE2130A1に含有されるポリフェニレンサルファイドは熱可塑性樹脂であり、1MHzにおける誘電損失tanδεの値は0.001であった。
まず金属磁性粉末複合体とDURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1とを、小型混練機(DSM Xplore(登録商標) MC15、Xplore Instruments社製)に設置した。そして、窒素雰囲気中において、設定温度320℃混練攪拌速度100rpm(強混練)にて15分間混練(但し、樹脂および金属磁性粉の投入時間を含む。)し、実施例1に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例1に係る磁性コンパウンドを、小型混練機のオプション装置である射出成形機(DSM Xplore(登録商標) IM12、Xplore Instruments社製)へ、シリンダ温度300℃金型温度150℃の条件下で投入し、実施例1に係る曲げ試験用の成形体(但し、サイズは80mm×10mm×4mmである。)を作製した。
作製された実施例1に係る曲げ試験用の成形体へ、デジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製 ZTA−500N)および電動測定スタンド(株式会社イマダ製 MX2−500N−FA)を用い、支点間距離を64mmとして三点曲げ試験を実施し、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。強度の測定については全てISO178の規格に準拠した方法で実施した。当該測定結果を、表1に記載する。
次に、実施例1に係る磁性コンパウンド0.2gを、ドーナツ形冶具中へ投入した後、小型ホットプレス機(アズワン社製)にて250℃で20分間加熱した。そして、磁性コンパウンド中の樹脂を溶融させた後、加圧しながら、外径7mm、内径3mmのトロイダル形状の成形体へと成形して冷却し、実施例1に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
アジレント・テクノロジー株式会社製のネットワーク・アナライザー(E8362C)と株式会社関東電子応用開発製の同軸型Sパラメーター法サンプルホルダーキット(製品型番:CSH2−APC7、試料寸法:φ7.0mm−φ3.04mm×5mm)を用い、得られた実施例1に係る高周波特性測定用成形体の高周波特性測定を、2GHzで行った。
そして、比透磁率の実数部(μ’)、比透磁率の虚数部(μ”)、比誘電率の実数部(ε’)、比誘電率の虚数部(ε”)を測定し、高周波特性を確認した。ここで、磁気損失tanδμの算出式は、tanδμ=μ”/μ’であり、誘電損失tanδεの算出式は、tanδε=ε”/ε’である。当該測定結果を、表1に記載する。
(実施例2)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が50.5質量%、樹脂の質量割合が47.0質量%、炭素繊維の質量割合が2.5質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例2に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例2に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例2に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例2に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例3)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が63.8質量%、樹脂の質量割合が35.1質量%、炭素繊維の質量割合が質量1.1%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例3に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例3に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例3に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例3に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例3に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例3に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例4)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が50.7質量%、樹脂の質量割合が47.9質量%、炭素繊維の質量割合が1.5質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例4に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例4に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例4に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例4に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例4に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例4に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例4に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例5)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が63.6質量%、樹脂の質量割合が33.9質量%、炭素繊維の質量割合が2.6質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした。
まず金属磁性粉末複合体とDURAFIDE0220A9とを、小型混練機(DSM Xplore(登録商標) MC15、Xplore Instruments社製)に設置した。そして、窒素雰囲気中において、設定温度320℃混練攪拌速度100rpm(強混練)にて15分間混練(但し、樹脂および金属磁性粉の投入時間を含む。)した。
その後、混練撹拌速度を20rpmに下げた後、DURAFIDE2130A1を加え、6分間混練(但し、樹脂の投入時間を含む。)して混練物とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例5に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例5に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例5に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例5に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例5に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例5に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例5に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例6)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が57.6質量%、樹脂の質量割合が39.5質量%、炭素繊維の質量割合が3.0質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例5と同様の操作を行って、実施例6に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例6に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例6に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例6に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例6に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例6に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例6に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例7)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が50.4質量%、樹脂の質量割合が46.1質量%、炭素繊維の質量割合が3.5質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例5と同様の操作を行って、実施例7に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例7に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例7に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例7に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例7に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例7に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例7に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例8)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が41.8質量%、樹脂の質量割合が54.1質量%、炭素繊維の質量割合が4.1質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例5と同様の操作を行って、実施例8に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例8に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例8に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例8に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例8に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例8に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例8に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例9)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が63.7質量%、樹脂の質量割合が34.5質量%、炭素繊維の質量割合が1.8質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例5と同様の操作を行って、実施例9に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例9に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例9に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例9係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例9に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例9に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例9に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例10)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が57.7質量%、樹脂の質量割合が40.2質量%、炭素繊維の質量割合が2.1質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例5と同様の操作を行って、実施例10係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例10に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例10に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例10に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例10に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例10に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例10に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例11)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末の質量割合が50.5質量%、樹脂の質量割合が47.0質量%、炭素繊維の質量割合が2.5質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例5と同様の操作を行って、実施例11に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例11に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例11に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例11に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例11に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例11に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例11に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例12)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が63.8質量%、樹脂の質量割合が35.1質量%、炭素繊維の質量割合が1.1質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例5と同様の操作を行って、実施例12に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例12に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例12に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例12に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例12に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例12に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例12に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例13)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末の質量割合が57.8質量%、樹脂の質量割合が41.0質量%、炭素繊維の質量割合が1.3質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例5と同様の操作を行って、実施例13に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例13に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例13に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例13に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例13に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例13に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例13に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(実施例14)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が50.7質量%、樹脂の質量割合が47.9質量%、炭素繊維の質量割合が1.5質量%となるように、DURAFIDE0220A9と、DURAFIDE2130A1との配合量を算出し、各々の樹脂粉を窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした以外は、実施例5と同様の操作を行って、実施例14に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた実施例14に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例14に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された実施例14に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を表1に記載する。
次に、実施例14に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、実施例14に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された実施例14に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を表1に記載する。
(比較例1)
磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合が63.9質量%、樹脂の質量割合が36.1質量%となるようにDURAFIDE0220A9の配合量を算出し、当該樹脂粉のみを窒素中で秤量して瓶に入れてフタをした。
小型混練機を用い窒素雰囲気中において、金属磁性粉末複合体とDURAFIDE0220A9とを、設定温度320℃混練攪拌速度100rpm(強混練)にて21分間混練(但し、樹脂および金属磁性粉の投入時間を含む。)して混練物とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係る磁性コンパウンドを作製した。
得られた比較例1に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係る曲げ試験用の成形体を作製した。
作製された比較例1に係る曲げ試験用の成形体へ実施例1と同様の測定を行って、曲げ強度と曲げ弾性率(MPa)とを算出した。当該測定結果を、表1に記載する。
次に、比較例1に係る磁性コンパウンドへ実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。
作製された比較例1に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。当該測定結果を、表1に記載する。
(比較例2)
表面処理工程により金属磁性粉末複合体を得ることなく、強混練工程において金属磁性粉末複合体の代わりに実施例1と同様の金属磁性粉末を用い、磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末の質量割合を67.1質量%、樹脂の質量割合を32.9質量%とした以外は、比較例1と同様の操作を行って、比較例2に係る磁性コンパウンドを作製しようとした。しかしながら、金属磁性粉末と樹脂とは混じり合うことはなく、金属磁性粉末は樹脂中に分散しなかったので、比較例2に係る磁性コンパウンドを得ることは出来なかった。当該結果を、表1に記載する。
(比較例3)
樹脂としてエポキシ樹脂を用い、磁性コンパウンドにおける金属磁性粉末複合体の質量割合を66.6質量%、樹脂の質量割合を33.4質量%とした以外は、比較例1と同様の操作を行って、比較例3に係る高周波特性測定用の成形体を作製した。エポキシ樹脂は、誘電損失tanδεの値が高い樹脂の代表例である。作製された比較例3に係る高周波特性測定用の成形体へ、実施例1と同様の高周波特性測定を行った。すると、比較例3に係る磁性コンパウンドのtanδεは0.089であることが判明した。当該測定結果を、表1に記載する。
(比較例4)
表面処理工程により金属磁性粉末複合体を得ることなく、強混練工程において金属磁性粉末複合体の代わりに実施例1と同様の金属磁性粉末を用い、前記金属磁性粉末の質量割合を63.7質量%、樹脂の質量割合を34.5質量%、炭素繊維の質量割合を1.8質量%とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例4に係る磁性コンパウンドを作製しようとした。しかしながら、金属磁性粉末と樹脂とは混じり合うことはなく、金属磁性粉末は樹脂中に分散しなかったので、比較例4に係る磁性コンパウンドを得ることは出来なかった。当該結果を、表1に記載する。
Figure 0006679305

Claims (17)

  1. 1MHzにおける誘電損失tanδεの値が0.01以下の熱可塑性樹脂と、金属磁性粉と、炭素繊維とを含む磁性コンパウンドの製造方法であって、
    金属磁性粉を、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物およびその誘導体から選択される1種以上の有機化合物により表面処理して金属磁性粉末複合体を得る工程と、
    前記金属磁性粉末複合体と、樹脂と、炭素繊維とを混合する工程を有し、
    前記炭素繊維を、1質量%以上5質量%以下含有させることを特徴とする磁性コンパウンドの製造方法。
  2. 前記金属磁性粉として、保磁力Hcが50.0kA/m以上80.0kA/m以下、飽和磁化σsが160Am/kg以上であるFe−Co合金粉末を用いることを特徴とする請求項1に記載の磁性コンパウンドの製造方法。
  3. 前記金属磁性粉として、平均粒子径100nm以下の金属磁性粉を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性コンパウンドの製造方法。
  4. 前記金属磁性粉末複合体を、40質量%以上70質量%以下含有させることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法。
  5. 前記有機化合物が、フタル酸であることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法。
  6. 前記熱可塑性樹脂として、PPS、SPS、m−PPEから選択されるいずれか1種以上を用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法。
  7. 前記炭素繊維として、表面が前記樹脂で被覆された炭素繊維を混合することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法。
  8. 前記熱可塑性樹脂を、25質量%以上含有させることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法。
  9. 前記金属磁性粉末複合体と前記樹脂とを混合して混練処理した後に、前記炭素繊維を混合してさらに混練処理することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の磁性コンパウンドの製造方法。
  10. 熱可塑性樹脂と、金属磁性粉と、炭素繊維とを含み、
    前記炭素繊維が、1質量%以上5質量%以下含有され、曲げ強度が50MPa以上であり、
    前記金属磁性粉の保磁力Hcが50.0kA/m以上80.0kA/m以下、飽和磁化σsが160Am/kg以上であることを特徴とする磁性コンパウンド。
  11. 熱可塑性樹脂と、金属磁性粉と、炭素繊維とを含み、
    前記炭素繊維が、1質量%以上5質量%以下含有され、曲げ強度が50MPa以上であり、
    前記金属磁性粉は、平均粒子径100nm以下の金属磁性粉であることを特徴とする磁性コンパウンド。
  12. 熱可塑性樹脂と、金属磁性粉と、炭素繊維とを含み、
    前記炭素繊維が、1質量%以上5質量%以下含有され、曲げ強度が50MPa以上であり、
    前記金属磁性粉が、40質量%以上70質量%以下含有されていることを特徴とする磁性コンパウンド。
  13. 熱可塑性樹脂と、金属磁性粉と、炭素繊維とを含み、
    前記炭素繊維が、1質量%以上5質量%以下含有され、曲げ強度が50MPa以上であり、
    2GHz帯域での比透磁率の実数部(μ’)と比誘電率の実数部(ε’)との積の値(μ’×ε’)が10.0以上であり、かつ、磁気損失tanδμと誘電損失tanδεとの和の値(tanδμ+tanδε)と、前記積の値(μ’×ε’)との比の値((tanδμ+tanδε)/(μ’×ε’))が0.0038以下であり、曲げ弾性率が8000MPa以下であることを特徴とする磁性コンパウンド。
  14. 前記熱可塑性樹脂が、1MHzにおける誘電損失tanδεの値が0.01以下であることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の磁性コンパウンド。
  15. 前記熱可塑性樹脂は、PPS、SPS、m−PPEから選択される1種以上であることを特徴とする請求項10から14のいずれかに記載の磁性コンパウンド。
  16. 請求項10から15のいずれかに記載の磁性コンパウンドを用いたことを特徴とする電子部品。
  17. 請求項10から15のいずれかに記載の磁性コンパウンドを用いたことを特徴とするアンテナ。
JP2015255961A 2015-12-28 2015-12-28 磁性コンパウンドとその製造方法並びに電子部品、アンテナ Active JP6679305B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015255961A JP6679305B2 (ja) 2015-12-28 2015-12-28 磁性コンパウンドとその製造方法並びに電子部品、アンテナ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015255961A JP6679305B2 (ja) 2015-12-28 2015-12-28 磁性コンパウンドとその製造方法並びに電子部品、アンテナ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017120808A JP2017120808A (ja) 2017-07-06
JP6679305B2 true JP6679305B2 (ja) 2020-04-15

Family

ID=59272184

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015255961A Active JP6679305B2 (ja) 2015-12-28 2015-12-28 磁性コンパウンドとその製造方法並びに電子部品、アンテナ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6679305B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20240189903A1 (en) * 2021-04-07 2024-06-13 Asahi Kasei Kabushiki Kaisha Molded body, method of producing molded body, and method of producing sintered body

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06180838A (ja) * 1992-12-11 1994-06-28 Sony Corp 磁気記録媒体用強磁性金属微粒子及び磁気記録媒体
JP3720589B2 (ja) * 1997-07-30 2005-11-30 旭化成ケミカルズ株式会社 炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品
JP2001164124A (ja) * 1999-10-01 2001-06-19 Kyocera Corp 樹脂複合体及びこれを用いた電波吸収体並びにその製造方法
JP2005260016A (ja) * 2004-03-12 2005-09-22 Showa Highpolymer Co Ltd 繊維強化樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いてなる樹脂結合型磁石
JP4650073B2 (ja) * 2005-04-15 2011-03-16 住友電気工業株式会社 軟磁性材料の製造方法、軟磁性材料および圧粉磁心
JP2009155545A (ja) * 2007-12-27 2009-07-16 Nippon Zeon Co Ltd 磁性複合材料の製造方法及び成形体
JP5299223B2 (ja) * 2009-10-30 2013-09-25 Tdk株式会社 複合磁性材料、並びに、これを用いたアンテナ及び無線通信機器
US9196413B2 (en) * 2011-09-20 2015-11-24 Daido Steel Co., Ltd. Reactor and compound used in same
JP2013095908A (ja) * 2011-11-04 2013-05-20 Sunstar Engineering Inc 樹脂組成物
JP6471015B2 (ja) * 2014-03-31 2019-02-13 Dowaエレクトロニクス株式会社 Fe−Co合金粉末並びにアンテナ、インダクタおよびEMIフィルタ

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017120808A (ja) 2017-07-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6552283B2 (ja) 磁性コンパウンド、アンテナおよび電子機器
CN106816252B (zh) 一种高绝缘电阻FeSiCr金属软磁材料的制造方法
JP7033071B2 (ja) イプシロン型鉄酸化物磁性粒子及びその製造方法、磁性粒子から構成される磁性粉ならびに磁性塗料および磁気記録媒体
JP2009249673A (ja) 複合材料及びその製造方法
Hosseini et al. Nanocomposite based on epoxy and MWCNTs modified with NiFe2O4 nanoparticles as efficient microwave absorbing material
Darwish et al. Preparation and investigation of dc conductivity and relative permeability of epoxy/Li–Ni–Zn ferrite composites
EP2980811A1 (en) Noise-suppressing composite magnetic powder
JP6525742B2 (ja) 磁性コンパウンドおよびアンテナ
JP5994124B2 (ja) 複合磁性粉末及び前記複合磁性粉末を用いた圧粉磁心
TW201937516A (zh) 被覆有氧化矽之軟磁性粉末及其製造方法
TWI471876B (zh) A magnetic part, a soft magnetic metal powder for use, and a method for manufacturing the same
CN113450987B (zh) 流动性赋予颗粒和磁芯
JP6679305B2 (ja) 磁性コンパウンドとその製造方法並びに電子部品、アンテナ
JP6813941B2 (ja) 磁性コンパウンド、アンテナおよび電子機器
JP6778790B2 (ja) 磁性粉末複合体、アンテナおよび電子機器
Zhao et al. Investigations of physicochemical and microwave absorption performance of NiCo2S4/AgBr nanocomposite in X-band frequency
JP6515719B2 (ja) 磁性シート用扁平状軟磁性金属粉末、磁性シート、及び、アンテナコイル
JP7404912B2 (ja) 磁心用複合磁性材料前駆体、磁心用複合材料、磁心および電子部品
JP2007088316A (ja) 磁性粉末および電波吸収体
WO2016136785A1 (ja) 磁性コンパウンド、アンテナおよび電子機器
Hsiang et al. Titanate coupling agent surface modification effect on the magnetic properties of iron-based alloy powder coil prepared using screen printing
Park et al. Preparation and characteristics of a magnetic–dielectric (Fe3O4/BaTiO3) composite by ferrite plating with ultrasound irradiation
JP2015115482A (ja) 軟磁性金属微粒子および磁性体複合材料
JP7415340B2 (ja) 金属磁性複合材料の熱硬化体
JP2021011625A (ja) 磁性粉末、複合磁性体および磁性部品

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181026

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190718

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190723

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190912

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20191210

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191225

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200310

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200318

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6679305

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250