JP3720589B2 - 炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂成形品に関する。更に詳しくは、外観、機械的特性、電気特性に優れた炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の急速な普及に伴い、電子機器の誤操作防止、人体への影響防止等のために、例えばパーソナルコンピューター、携帯電話、自動車部品等に使用するハウジング等に導電性機能を付与し、電磁波シールドすることが要求されている。また、ICの搬送用に使用されるICトレーには、成形加工が容易な熱可塑性樹脂の成形品が使用されつつあるが、ICを静電気から保護するために、熱可塑性樹脂製のICトレーに導電性を持たせ、帯電防止機能を付与することが要求されている。更には、磁気テープのカセットリール、複写機の紙送りローラー等は従来金属が使用されていたが、成形加工が容易な熱可塑性樹脂の成形品に置き換わりつつあり、これに伴って、熱可塑性樹脂製のカセットリールや紙送りローラー等に導電性機能を持たせ、帯電を防止することが要求されている。
【0003】
熱可塑性樹脂成形品に導電性機能を付与する方法としては、導電性樹脂を使用する方法もあるが、使用する導電性樹脂そのものが高価であることから、実用性に乏しい。このため、現在上市されている一般的な熱可塑性樹脂を用いつつ、成形品に導電性機能を持たせる方法が一般的である。一般的な熱可塑性樹脂製の成形品に導電性機能を付与する方法としては、大きく分けて次の2つの方法がある。一つは、熱可塑性樹脂で成形加工した後、メッキあるいは蒸着等の表面処理によって成形品表面に導電性皮膜を形成し、導電性の成形品とする方法である。もう一つは、カーボンブラック、金属等の粉末状の導電材料あるいは金属繊維、炭素繊維等の繊維状の導電材料を熱可塑性樹脂にブレンドし、これを成形加工して導電性の成形品とする方法である。
【0004】
この内、前者である導電性皮膜を形成する方法は、熱可塑性樹脂による成形と、メッキあるいは蒸着等による表面処理という2段階での加工となってしまい、製造上の経済性に劣る問題がある。これに対して後者である熱可塑性樹脂に導電材料をブレンドする方法は、成形のみの1段での加工で済む利点がある。
【0005】
ところで、熱可塑性樹脂に導電材料をブレンドして導電性機能を付与する場合、粉末状の導電材料あるいは繊維状の導電材料が使用されるが、同一添加量では、粉末状の導電材料より繊維状の導電材料の方が優れた導電性を示す。この理由は、熱可塑性樹脂中に分散している導電材料が相互に接触していることにより導電性機能が発現されるが、粉末状の導電材料より繊維状の導電材料の方がより相互に接触しやすいことに基づく。従って、同じ繊維状の導電材料であっても、より長い方が高度な導電性機能を付与できることも理解できる。繊維状の導電材料としては、上記の如く、金属繊維あるいは炭素繊維等が利用できるが、優れた導電性機能を付与するためには、この中でも特に樹脂との親和性に優れる炭素繊維、特に長繊維状炭素繊維が最も好ましい。
【0006】
長繊維状炭素繊維を利用し、導電性機能を付与する方法は、大きく分けて次の2つの方法がある。
【0007】
(1)炭素繊維のロービングをカットしたチョップド繊維を熱可塑性樹脂と溶融混練して、一旦炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂ペレットを得、これを再び溶融して成形する方法。
【0008】
(2)プルトルージョン法、即ち炭素繊維のロービングを張力下で引き揃えながら熱可塑性樹脂を押出被覆し、切断してペレット化する等によりペレットサイズの長さの炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂ペレットを溶融して成形する方法。この方法による成形品は、特公平5−26828号公報に開示されており、成形品中に1.5〜15mmの長さの炭素繊維が成形品100重量部に対し5〜35重量部(成形品中の炭素繊維の量は4.8〜26重量%)存在することを特徴としている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)によって得られる成形品においては、チョップド繊維が、ペレット化時と成形時との2度に亙って熱可塑性樹脂との混練を受けたものとなり、長繊維状炭素繊維を使用しているにもかかわらず、混練中に炭素繊維が破断し、成形品中の繊維長が短くなって、成形品の導電性が低下する問題がある。熱可塑性樹脂中に高濃度の炭素繊維を含有させれば導電性を上げることができるが、このようにすると、成形加工性が低下する同時に、得られる成形品の表面状態が悪化してしまう。
【0010】
上記(2)の成形品は、長い炭素繊維が存在するため、成形品の表面状態が悪く、例えば電磁波シールドを持った電子・電気機器のハウジングとして使用する場合使用に耐えない等の問題がある。
【0011】
本発明の目的は、前記の如き状況に鑑み、優れた機械的特性、電気特性及び表面状態に優れた成形品を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記特性を有する成形品を得るべく、鋭意検討を重ねた結果、意外にも、成形品中の長い繊維を一定量以下とすることによって、優れた機械的特性、電気的特性、特に表面外観に優れた成形品と出来ることを見出し本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品において、成形品中に含まれる炭素繊維がマトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂で付着被覆され、且つその全含有量が0.5〜30wt%であり、更に1.5mmを超える長さの炭素繊維が0.1〜4.7wt%、0.5〜1.5mmの長さの炭素繊維が0.2〜10.7wt%、0.5mm未満の長さの炭素繊維が、0.2〜14.6wt%であり、それぞれの比率が重量比で1/0.5〜2.5/0.5〜3.0であることを特徴とする炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
本発明で使用する炭素繊維は、特に原料に制限があるものではないが、例えばポリアクリロニトリル、ピッチ等を原料として製造されたものを使用することができる。また、炭素繊維としては、表面に導電性金属皮膜を形成したものも使用できる。導電性金属皮膜の形成はメッキ等によって施すことができ、得られる成形品の導電性機能を向上させることができる。炭素繊維径としては、2〜10μmが好ましい。2μm未満の場合、熱可塑性樹脂中の分散性が悪くなりやすく、10μmを超える場合、成形加工中に折れやすくなって、成形品中に所定の長さで含有させにくくなる。
【0016】
本発明で使用するマトッリクスである熱可塑性樹脂は、特に制限はなく、従来成形材料として使用されているものから任意に選択して使用することができる。例えば、スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0017】
スチレン系樹脂としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン等の単独重合体又はこれらの共重合体、あるいはこれらと共重合可能な不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。具体的には、一般用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、耐熱性ポリスチレン(例えば、α−メチルスチレン重合体あるいは共重合体等)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−α−メチルスチレン共重合体(α−メチルスチレン系耐熱ABS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−フェニルマレイミド共重合体(フェニルマレイミド系耐熱ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−塩素化ポリスチレン−スチレン系共重合体(ACS)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES)、アクリルゴム−アクリロニトリル−スチレン共重合体(AAS)あるいはシンディオタクティクポリスチレン(SPS)等が挙げられる。また、スチレン系樹脂は、ポリマーブレンドしたものであっても良い。
【0018】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)としては、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモポリマーが挙げられ、これをスチレン系樹脂で変性したものを用いることもできる。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂としては、代表的には、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンの単独重合体又はこれらの共重合体、あるいはこれらと他の共重合可能な不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。代表例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等のメタロセン系エチレン−αオレフィン共重合体等のポリエチレン類、アタクチックポリプロピレン、シンディオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレンあるいはプロピレン−エチレンブロック共重合体又はランダム共重合体等ポリプロピレン類、ポリメチルペンテン−1等を挙げることができる。
【0020】
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば塩化ビニル単独重合体や塩化ビニルと共重合可能な不飽和単量体との共重合体が挙げられる。具体的には、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、これらのポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化して塩素含有量を高めたものも使用できる。
【0021】
ポリアミド系樹脂(PA)としては、例えば6−ナイロンあるいは12−ナイロン等に代表される環状脂肪族ラクタムを開環重合したもの、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン等の脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とを重縮合したものあるいは場合により芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸を共重縮合したもの等を挙げることができる。
【0022】
ポリエステル系樹脂としては、例えば芳香族ジカルボン酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコールとを重縮合させたものが挙げられる。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0023】
ポリアセタール樹脂(POM)としては、例えば単独重合体ポリオキシメチレンあるいはトリオキサンとエチレンオキシドから得られるホルムアルデヒド−エチレンオキシド共重合体等が挙げられる。
【0024】
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば4,4’−ジヒドロキシジアリールアルカン系ポリカーボネート等が挙げられる。具体例としては、ビスフェノールA系ポリカーボネート(PC)、変性ビスフェノールA系ポリカーボネート、難燃化ビスフェノールA系ポリカーボネート等を挙げることができる。
【0025】
アクリル系樹脂としては、例えばメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル単独重合体又はこれらの共重合体、あるいはこれらと他の共重合可能な不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル単量体としては、メタクリル酸あるいはアクリル酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチルエステル等が挙げられる。代表的には、メタクリル樹脂(PMMA)が挙げられる。
【0026】
これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。また、これらの熱可塑性樹脂には、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、離型剤、滑剤、難燃剤、着色剤(染料、顔料)等を添加することも可能である。更に、本発明の導電性を調整する為に、他の導電材料等を併用することも可能である。
【0027】
炭素繊維は、マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂で付着被覆されたものであることが好ましい。ここで付着被覆とは、例えば炭素繊維としてロービングを使用した場合、炭素繊維一本一本或いは複数の本数の表面への被覆、或いはロービングの表面への被覆等を含むが、特に炭素繊維一本一本に被覆することがマトリックスである熱可塑性樹脂への分散性が良く好ましい。マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂は、一般にマトリックスである熱可塑性樹脂と親和性を持つものであれば特に限定されない。このような樹脂で付着被覆する目的は、炭素繊維を熱可塑性樹脂中に均一に分散させることにある。即ち、通常、表面処理を全くしていない炭素繊維と熱可塑性樹脂とを混合した場合は両者が混ざり難く、炭素繊維が熱可塑性樹脂中に均一に分散し難いが、マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂を付着被覆する表面処理を施した炭素繊維を使用した場合、熱可塑性樹脂と混合した際、炭素繊維一本一本がほぐれ易くなり、熱可塑性樹脂中に均一に分散しやすくなる。
【0028】
マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂としては、エポキシあるいはウレタン系の熱硬化性樹脂あるいはスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の一般の熱可塑性樹脂の何れも使用することができる。これらの中でも炭素繊維に付着被覆する表面処理を施し易い材料が工業的実施の面で最も好ましい。表面処理は、熱硬化性樹脂の場合、モノマーを表面処理剤として塗布した後硬化させることで行うことができる。熱可塑性樹脂の場合、溶媒の溶解液あるいは水分散液等の表面処理剤を塗布した後乾燥させるあるいは熱可塑性樹脂を溶融押出被覆する等の方法で行うことができる。これらの中でも、特に水を媒体とした樹脂エマルジョンを表面処理剤として使用する方法あるいは熱可塑性樹脂を溶融押出被覆する方法が環境にも優しく、硬化処理等の後処理工程も不要な為簡略な方法として最も好ましい。
【0029】
上記樹脂エマルジョンの具体例としては、スチレン−ブタジエン樹脂エマルジョン(SBラテックス)、アクリルニトリル−スチレン樹脂エマルジョンあるいはスチレン−アクリル酸樹脂等のスチレン系エマルジョン、メチルメタクリレート−2−エチルヘキシルアクリレート−ブチルアクリレート樹脂エマルジョン等のアクリル系エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョンあるいはエチレン−メタクリル酸樹脂エマルジョン等のエチレン系エマルジョンの他、酢酸ビニル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン等が挙げられる。
【0030】
炭素繊維を、マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂で付着被覆するために用いる樹脂エマルジョンは、マトリックスである熱可塑性樹脂の種類によって選定することが好ましい。その例としては、特にこれに限定はされないが、マトリックスである熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂の場合は、スチレン−ブダジエン樹脂エマルジョン、マトリックスである熱可塑性樹脂がAS、ABS、PMMA、PET、PC樹脂の場合は、アクリルニトリル−スチレン樹脂エマルジョン、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂、POMの場合は、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン、マトリックスである熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂の場合は、ウレタン系エマルジョン等が好ましい。なお、エマルジョンは、一般に市販されている固形濃度が30〜70%のものをそのままあるいは稀釈して使用することができる。
【0031】
炭素繊維にマトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂の付着被覆を施す方法としては、例えばマトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂の溶解液又はエマルジョンを使用する場合、炭素繊維ロービングに溶解液又はエマルジョンを噴霧するスプレー法、溶解液又はエマルジョンに炭素繊維を浸漬する浸漬法等が採用できる。
【0032】
マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂による炭素繊維の付着被覆は、複数とすることもできる。即ち、例えば上記のような樹脂エマルジョンによる処理あるいは熱可塑性樹脂の溶融押出被覆を複数回行って複数層の付着被覆を行うこともできる。また、エポキシやウレタン系等の熱硬化性樹脂を付着被覆した後、樹脂エマルジョンによる処理あるいは熱可塑性樹脂の溶融押出被覆をする等、各層異なる樹脂で複数層の付着被覆を行うこともできる。
【0033】
マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂のエマルジョン等を炭素繊維に付着させる量は、固形分で0.5〜50wt%が好ましく、更に好ましくは固形分で5〜20wt%である。0.5wt%未満では良好な分散性が得にくく、50wt%を超えると経済的に不利となりやすい。
【0034】
本発明の成形品は、大きく分けて次の2つの方法で成形することができる。一つは、炭素繊維を含有する樹脂ペレットを用いる方法で、もう一つは、炭素繊維と熱可塑性樹脂ペレットとをブレンドして用いる方法である。
【0035】
前者の方法は、炭素繊維ロービングに、マトリックスである熱可塑性樹脂を被覆、好ましくは押出被覆してからカッティングした炭素繊維を含有する樹脂ペレットを用い成形する。更に好ましくは、マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂を予め炭素繊維ロービングに付着させ、必要に応じて乾燥させ、更にマトリックスである熱可塑性樹脂で被覆、好ましくは押出被覆してからカッティングした炭素繊維を含有する樹脂ペレットを用いて成形する。この際、炭素繊維を含有する樹脂ペレットを、炭素繊維を含有しない、マトリックスである熱可塑性樹脂ペレットで稀釈して成形することも可能である。稀釈に用いるマトリックスである熱可塑性樹脂のペレツトは、炭素繊維に被覆された熱可塑性樹脂と同じであっても良いし、異なっていても良い。異なっている場合、炭素繊維に被覆された熱可塑性樹脂と層剥離分離しないものが好ましく、できるだけ相溶性のあるものを用いることが好ましい。
【0036】
後者の方法は、炭素繊維ロービングをカッティングした炭素繊維と、マトリックスである熱可塑性樹脂とをブレンドし、このブレンド品を成形する。好ましくは、マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂を予め炭素繊維ロービングに付着被覆させ、必要に応じて乾燥させてからカッティングした炭素繊維と、マトリックスである熱可塑性樹脂ペレットとをブレンドし、そのブレンド品を成形する。この際、炭素繊維にブレンドするマトリックスである熱可塑性樹脂は、一種であっても良いし、数種の混合物であっても良い。
【0037】
上記の成形に使用するマトリックスである熱可塑性樹脂と炭素繊維を含有する樹脂ペレットカット品のペレット長さあるいは熱可塑性樹脂と炭素繊維カット品の繊維の長さ(カット品のペレット長さあるいは炭素繊維カット品の繊維の長さは成形前の繊維長に相当する)は、成形品中の炭素繊維の長さを決定する一つの要因であり、この長さは2〜10mmであることが好ましく、更に好ましくは3〜7mmである。2mm未満では導電性付与効果が小さくなりやすく、10mmを超えると成形時にホッパー等でブリッジを生じやすく、成形加工性が低下しやすい。
【0038】
本発明の成形品の成形方法は、特に限定はされないが、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形等を用いることができる。
【0039】
このようにして得られる本発明の成形品の中の炭素繊維は、全含有量が0.5〜30wt%、好ましくは0.5〜25wt%、更に好ましくは0.5〜20wt%であり、更に1.5mmを超える長さの該炭素繊維が0.1〜4.7wt%であることが必要である。炭素繊維の全含有量が0.5wt%未満では、導電性機能を持たせることが困難であり、30wt%を超えると、成形加工時の流動加工性が低下したり、表面状態の良好な成形品が得られなくなる等の問題を生じる。1.5mmを超える長さの該炭素繊維が、0.1wt%未満では、導電性機能が低く、4.7wt%を超えると、成形品の表面状態が悪くなって、実用的な商品価値が低下すると同時に、樹脂中の炭素繊維含有量が同一であっても導電性機能が低下する。即ち、成形時に長い炭素繊維を残す方向の成形加工を採ろうとするとどうしてもシェアーをかけない方向になるため、結果的には、炭素繊維が熱可塑性樹脂に分散し難くなり、局在化(炭素繊維の分散状態が樹脂中で不均一化し、バラツキを生ずる)し、毛羽立ちや炭素繊維の凝集による凹凸が生じ、表面状態が悪くなると共に、局在化によって炭素繊維が相互に接しない部分が生じ、樹脂中の炭素繊維の含有量が同一であつても導電性機能が低くなる。
【0040】
本発明の大きな特徴は、上記の如く、1.5mmを超える長さの炭素繊維が0.1〜4.7wt%であること、好ましくは、1.5mmを超える長さの炭素繊維が0.1〜4.7wt%、0.5〜1.5mmの長さの炭素繊維が0.2〜10.7wt%、0.5mm未満の長さの該炭素繊維が、0.2〜14.6wt%であることである。1.5mmを超える長さの炭素繊維と0.5〜1.5mmの長さの炭素繊維と0.5mm未満の長さの炭素繊維との比率が、好ましくは、重量比で1/0.5〜2.5/0.5〜3.0であり、更に好ましくは、1/1.0〜2.5/0.8〜3.0である。成形品中にこのような炭素繊維の分布を持たせることによって始めて機械的強度、導電性機能、表面状態等に最もバランスのとれた成形品とすることができる。これは、マトリックスである熱可塑性樹脂中の長い炭素繊維と短い炭素繊維との微妙な絡み合いがその効果を発揮しているものと考えられる。
【0041】
成形品中の炭素繊維の長さをコントロールする因子としては種々の因子があるが、主な因子としては、成形前の炭素繊維の長さ、成形時のシェアーのかかり方等が挙げられる。従って、例えば樹脂ペレットカット品のペレット長さあるいは炭素繊維カット品の長さ、使用するマトリックスである熱可塑性樹脂の溶融粘度、成形加工条件(成形温度、背圧、スクリューの構造、スクリューの回転数、射出スピード、先端ノズルの形状、ゲートの形状・径等)等によって、成形品中の炭素繊維の長さをコントロールできる。
【0042】
本発明に係る炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品は、導電性機能に優れ且つ表面状態に優れていることから、種々の用途に使用できる。以下に具体例を列挙する。
【0043】
(1)電磁波遮蔽成形品
成形品に導電機能を持たせることにより、例えばパーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、CDプレーヤー、ヘットホンステレオ、携帯電話、トランシーバー、カメラ等の電子・電気機器のハウジング又は内装部品あるいはパチンコ台の内装部品等の電磁波遮蔽成形品に使用できる。これらの用途に使用する場形品中に含まれる炭素繊維は、その全含有量が、好ましくは2〜30wt%、更に好ましくは5〜25wt%、特に好ましくは10〜20wt%である。また、1.5mmを超える長さの炭素繊維は、好ましくは0.1〜4.7wt%、更に好ましくは0.5〜4.7wt%である。成形品の体積固有抵抗値は、好ましくは10-4〜103 Ω・cm、更に好ましくは10-4〜10Ω・cm、更により好ましくは10-4〜1Ω・cmである。
【0044】
(2)樹脂抵抗体
成形品に導電機能を持たせることにより、電気的な樹脂抵抗体として用いることができる。例えば可変抵抗器の電気的抵抗体や電気回路に用いられる電気的抵抗体等、特に高抵抗の抵抗体に使用できる。これらの用途に使用する場合、成形品中に含まれる炭素繊維は、その全含有量が、好ましくは0.5〜5wt%、更に好ましくは1.0〜5wt%である。また、1.5mmを超える長さの該炭素繊維は、好ましくは0.1〜4.7wt%、更に好ましくは0.5〜2.5wt%である。成形品の体積固有抵抗値は、好ましくは102 〜1013Ω・cmである。
【0045】
(3)帯電防止性を有する摺動部品
成形品に導電機能及び耐磨耗性機能を持たせることにより、例えば磁気テープのカセットリール、複写機の紙送りローラ、各種回転部材の軸受け等のように、他の部品や部材との接触を伴って動く摺動部品に使用できる。本発明の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品は、耐磨耗性に優れる。また、これらの用途では、帯電防止性が必要であり、これらの用途に使用する場合、成形品中に含まれる炭素繊維は、その全含有量が、好ましくは0.5〜10wt%であり、更に好ましくは1.0〜10wt%である。また、1.5mmを超える長さの該炭素繊維は、0.1〜4.7wt%、更に好ましくは0.5〜4.0wt%である。成形品の体積固有抵抗値は、好ましくは100 〜109 Ω・cmである。
【0046】
(4)ICトレー
成形品に導電機能を持たせることにより、ICの搬送用に使用されるICトレーに使用できる。この用途では、ICを静電気から保護するために帯電防止性が必要であり、この用途に使用する場合、成形品中に含まれる炭素繊維は、その全含有量が、好ましくは0.5〜5.0wt%であり、更に好ましくは1.0〜5.0wt%である。また、1.5mmを超える長さの該炭素繊維は、好ましくは0.1〜4.7wt%、更に好ましくは0.5〜2.5wt%である。成形品の表面抵抗値は、好ましくは102 〜1010Ωである。
【0047】
なお、本発明の成形品は、成形品の導電性を更にアップするために、成形品にメッキすることもできる。また、表面状態の光沢改良、着色等を目的として、静電塗装することも可能である。
【0048】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
実施例、比較例において使用した、装置、材料及び測定・評価方法は、下記に示す通りである。
【0050】
1.ペレット製造装置
・タンブラー:日榮電気(株)製ツインコーン型、回転数20〜40rpm
・単軸押出機:田辺プラスチック(株)製「VS−30」
・2軸押出機:東芝機械(株)「TEM−35B」
【0051】
2.成形品製造装置
・射出成形機−1:東芝機械(株)「IS55EPN」
・射出成形機−2:小松製作所(株)「IP1050」
【0052】
3.熱可塑性樹脂
・HIPS:旭化成工業(株)製「スタイロンEXG11」
・PMMA:旭化成工業(株)製「デルペット80N」
・AS :旭化成工業(株)製「スタイラックAS783」
・ABS▲1▼:旭化成工業(株)製「スタイラックABS100」
・ABS▲2▼:旭化成工業(株)製「スタイラックID32F」
・PPE▲1▼:旭化成工業(株)製「ザイロン100Z」
・PPE▲2▼:旭化成工業(株)製「ザイロンX9830」
・PE ▲1▼:旭化成工業(株)製「サンテツクHD・J340」
・PE ▲2▼:旭化成工業(株)製「サンテツクHD・J751」
・PP :日本ポリオレフィン(株)製「ジェーアロマーM1700」
・P0M :旭化成工業(株)製「テナック−C4510」
・PA :旭化成工業(株)製「レオナ1300S」
【0053】
4.熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂(炭素繊維表面処理剤)
・SBエマルジョン:スチレン−ブタジエン樹脂ラテックス(固形分40wt%)
・ASエマルジョン:アクリロニトリル−スチレン樹脂ラテックス(AN25%、固形分50wt%)
・EVAエマルジョン:エチレン−酢酸ビニル樹脂ラテックス(酢酸ビニル20wt%、固形分50wt%)
・ウレタンエマルジョン:ウレタン樹脂ラテックス(固形分40wt%)
【0054】
5.導電材料(炭素繊維)
・炭素繊維ロービング(CF−R):東邦レーヨン(株)製「HTA−12K」
・チョップド繊維(C−CF):三菱レイヨン(株)製「A6000」
【0055】
6.測定・評価方法
(a)光沢度の測定
射出成形機−1を用いて、シリンダー温度を使用する熱可塑性樹脂に適した成形温度にし、乾燥が必要な樹脂は、乾燥ペレットとし、通常の成形サイクルに従い、金型温度60℃にて、鏡面プレート(幅50mm×長さ90mm×厚み2.5mm)を成形した。このプレートの表面光沢度をスガ試験器(株)製の携帯光沢計「HG−268」を用いて、測定角60度で測定した。
【0056】
(b)体積固有抵抗値の測定
前記プレートの長さ方向(成形時の樹脂の流れ方向)の両端に銀ペーストを全面塗布し、乾燥後に、テスターで抵抗値(RL )を測定し、R1 =RL ×AL /L(AL :断面積、L:長さ)から体積固有抵抗値R1 (Ω・cm)を計算した。
【0057】
(c−1)表面抵抗値の測定(表面抵抗値が107 Ω以下の場合)
前記プレートの長さ方向(成形時の樹脂の流れ方向)の両端に銀ペーストを幅2mmで平行に2本塗布し、乾燥後に、テスターで抵抗値(RS )を測定し、R2 =RS ×Y/Z2 (Y:塗布銀ペーストの長さ、Z2 :2本の塗布銀ペースト間の距離)から表面抵抗値R2 (Ω)を計算した。
【0058】
(c−2)表面抵抗値の測定(表面抵抗値が107Ωを超える場合)
前記プレートを用いて、東亜電波工業(株)製の導電性測定装置「SME−8310」で500Vの電圧をかけて1分充放電後に測定した。
【0059】
(d)炭素繊維の分散性評価
射出成形機−1を用いて、成形温度、乾燥に関しては前記と同様にし、評価を容易にするために、樹脂100重量部に対して二酸化チタンを1重量部添加し、グレー色に着色したプレートを成形し、炭素繊維凝集の有無を目視にて判断し、発生なしを○、少々発生を△、多数発生有りを×とした。
【0060】
(e)表面状態評価
光沢度を測定したプレートの外観を目視評価した。外観上問題が無く、商品価値のあるものを○、毛羽立ち、炭素繊維凝集による凹凸等の外観不良が一部発生しているものを△、毛羽立ち、炭素繊維凝集による凹凸等の外観不良発生の著しいものを×とした。
【0061】
(f)成形品中の炭素繊維長
射出成形機−1を用いて、成形温度、乾燥に関しては前記と同様にし、成形品を得た。成形品をエアー中、500〜600℃、30分間焼成し、この焼成品を電顕観察し、成形品中に含まれる炭素繊維の長さ及びその分布を測定した。
【0062】
(g)曲げ強度、曲げ弾性率の測定
ASTM・D790準拠法により行った。
【0063】
(h)電磁波遮蔽効果の測定
射出成形機−2を用いて、シリンダー温度を使用する熱可塑性樹脂に適した成形温度にし、乾燥が必要な樹脂は、乾燥ペレットとし、通常の成形サイクルに従い、プレート(幅100mm×長さ100mm×厚み2mm)を成形した。このプレートをアンリツ(株)製のネットワークアナライザー「MS4661A」を用いて、電磁暗箱で周波数100〜1000MHzの範囲で測定し、500MHzの減衰値で表した。
【0064】
(i)動摩擦係数と磨耗量の測定
表面光沢測定用のプレートを往復摩擦磨耗試験機(東測精密工業(株)製「AFT−15MS」)の試料台に取り付け、上部より相手部材として直径5mmのSUS304製の精密球を圧着した状態で試料台を往復運動させ、100回目の往復運動時の摩擦力を測定し、動摩擦係数に換算した。磨耗量は、1000回往復運動終了後に試料であるプレートを外し、表面粗さ計((株)東京精密製「サーフコム575A−3D」)にて、試料表面にできた磨耗痕の窪みを測定する。この時の条件は、圧着荷重を3kg、往復距離を20mm、移動速度を30mm/秒とした。
【0065】
実施例1
径が7μmの炭素繊維ロービング(CF−R)をASエマルジョンに浸漬し、エマルジョン固形分が乾燥基準で20wt%付着するようにエマルジョンを絞り、付着量を調整して乾燥した。その後、ABS▲1▼を単軸押出機で押し出し、ペレット中の炭素繊維濃度が15wt%になるようにABS▲1▼を炭素繊維ロービングに押出被覆し、長さが5.5mmとなるようにストランドをカッターで切断し、炭素繊維を含有する樹脂ペレットを作成した。このストランド切断時に、炭素繊維の毛羽立ちやペレットからの抜け落ちがなく、順調に樹脂ペレットを作成することができた。
【0066】
射出成形機−1を、樹脂温度:220℃、背圧:20kg/cm2 G、スクリュー回転数:100rpm、射出スピード:設備仕様の80%、ゲートの形状:1mmφのピンゲートに設定し、上記樹脂ペレットを用いて成形を行い、成形品を得た。成形品中の炭素繊維の分散性は極めて良好で、成形品中において、1.5mmを超える(マックス5.5mm)長さの炭素繊維は3.3wt%であった。また、0.5〜1.5mmの長さの炭素繊維は、5.0wt%、0.5mm未満の長さの炭素繊維は、6.7wt%(各長さの炭素繊維重量比:1/1.5/2.0)であった。
【0067】
この成形品の表面状態は良く、表面光沢は75%、曲げ強度は17kg/mm2 、曲げ弾性率は、1100kg/mm2 であった。また、この成形品の電気的測定をした結果、体積固有抵抗値は0.5Ω・cmであった。
【0068】
結果を表1に示す。
【0069】
比較例1
実施例1で得られた炭素含有樹脂ペレットを、成形時の樹脂温度270℃、背圧、スクリュー回転数、射出スピード等も極限状態まで落とし、実施例1と異なり、シェアーがかかり難い条件で成形を実施した。得られた成形品中の炭素繊維は、1.5mmを超える長さの炭素繊維が8.2wt%であった。表面状態は、毛羽立ちや炭素繊維凝集に基づく凹凸等により極めて悪く(×)、外観は使用に耐えないものであった。また、この成形品の電気的測定をした結果、体積固有抵抗値は、5Ω・cmであった。
【0070】
実施例2〜6、比較例2〜4
実施例2、4、5及び比較例2は、樹脂ペレット中の炭素繊維濃度を変えた以外、実施例1と同様にして成形品を得た。実施例3、6及び比較例3は、熱可塑性樹脂としてABS▲2▼を用い、樹脂ペレット中の炭素繊維濃度を変えた以外、実施例1と同様にして成形品を得た。比較例4は、C−CFと熱可塑性樹脂であるABS▲1▼とをタンブラーで混合し、2軸押出機で押し出し、樹脂ペレットを作成し、この樹脂ペレットを実施例1と同様にして成形品を得た。
【0071】
結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例7
実施例1で得られた炭素繊維濃度が15wt%のABS▲1▼の炭素繊維含有樹脂ペレットと炭素繊維を含まないピュアーなABS▲1▼のペレットとを1:2の比率で混合した。このブレンド品を用いて実施例1と同様にして成形品を得た。得られた成形品中の炭素繊維の分散性は極めて良好で、1.5mmを超える長さの炭素繊維は1.2wt%、0.5〜1.5mmの長さの炭素繊維は1.7wt%、0.5mm未満の長さの炭素繊維は、2.1wt%(各長さの炭素繊維重量比:1/1.4/1.8)であった。
【0074】
この成形品の表面状態は良く、表面光沢は90%、曲げ強度は11kg/mm2 、曲げ弾性率は1100kg/mm2 であった。また、この成形品の電気的測定をした結果、体積固有抵抗値は9×102 Ω・cmであった。
【0075】
実施例8〜23
炭素繊維ロービング(CF−R)を使用し、表2、表3に示す熱可塑性樹脂、表面処理剤を使用し、炭素繊維含有樹脂ペレットを作成し、この樹脂ペレットを原料として成形を行った。なお、成形時の樹脂温度は、各樹脂に合った条件設定をした。
【0076】
結果を表2と表3に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
比較例5
エポキシ系のサイジング剤で表面処理した長さ6mmのチョップド繊維(C−CF)25wt%を高密度PE(密度0.95、MFR7g/10分のPE▲1▼と密度0.95、MFR1.3g/10分のPE▲2▼をブレンド押出した密度0.95、MFR3.0g/10分の高密度PE品)のペレット75wt%と混合し、実施例1と同様にして成形品を得た。成形品中の1.5mmを超える長さの炭素繊維は3.0wt%、0.5〜1.5mmの長さの炭素繊維は9.2wt%、0.5mm未満の長さの炭素繊維は12.8wt%(各長さの炭素繊維重量比:1/3.1/4.3)であった。この成形品の表面状態は、毛羽立ちや炭素繊維凝集に基づく凹凸等により悪く、外観は劣るものであった。又、成形品の電気的特性をした結果、体積固有抵抗値は、10Ω・cmであった。本発明の実施例12の、炭素繊維の全含有量15wt%成形品の体積固有抵抗値が、0.3Ω・cm示すのに比較して、この比較例の方法では、炭素繊維の全含有量25wt%であるにも関わらず低い値であった。この表面外観の悪さ及び電気的特性が好ましくない理由は、炭素繊維の長さ分布の差によると推定される。
【0080】
実施例24
炭素繊維ロービング(CF−R)をASエマルジョンに浸漬し、エマルジョン固形分が乾燥基準で20wt%付着するようにエマルジョンを絞り、付着量を調整して乾燥した。その後、連続して長さが5.5mmとなるようにカットした。このASエマルジョンで表面処理した炭素繊維15重量部と、炭素繊維を含まないピュアーなABS▲1▼のペレット85重量部とを混合した。この混合物を用いて、実施例1と同様に成形を行って成形品を得た。成形品中の炭素繊維の分散性は良好で、成形品において、1.5mmを超える長さの炭素繊維は3.0wt%、0.5〜1.5mmの長さの炭素繊維は4.9wt%、0.5mm未満の長さの炭素繊維は、7.1wt%(各長さの炭素繊維重量比:1/1.6/2.4)であった。
【0081】
この成形品の表面状態は良く、表面光沢は75%、曲げ強度は16kg/mm2 、曲げ弾性率は1050kg/mm2 であった。また、この成形品の電気的測定をした結果、体積固有抵抗値は0.3Ω・cmであった。
【0082】
実施例25
ニッケル金属メッキを施した炭素繊維ロービング(CF−R)をASエマルジョンに浸漬し、エマルジョン固形分が乾燥基準で20wt%付着するようにエマルジョンを絞り、付着量を調整して乾燥した。その後、ABS▲1▼を単軸押出機で押し出し、樹脂ペレット中の炭素繊維濃度が15wt%になるようにABS▲1▼を押出被覆し、長さが5.5mmとなるようにストランドをカッターで切断し、炭素繊維を含有する樹脂ペレットを作成した。
【0083】
このペレットを用い、実施例1と同様に成形して成形品を得た。成形品中の炭素繊維の分散性は極めて良好で、成形品において、1.5mmを超える長さの炭素繊維は3.5wt%、0.5〜1.5mmの長さの炭素繊維は5.2wt%、0.5mm未満の長さの炭素繊維は6.3wt%(各長さの炭素繊維重量比:1/1.5/1.8)であった。
【0084】
この成形品の表面状態は良く、表面光沢は76%、曲げ強度は16kg/mm2 、曲げ弾性率は1050kg/mm2 であった。また、この成形品の電気的測定をした結果、体積固有抵抗値は、0.08Ω・cmであった。
【0087】
実施例26
上記一部の実施例で得られた成形品の電磁波遮蔽効果測定結果を表4に示す。一般に電磁波シールドの効果発現のためには、電磁波遮蔽効果は20dB以上であることが好ましく、そのためには体積固有抵抗値が10-4〜103Ω・cmである成形品を使用することができる。
【0088】
【表4】
【0089】
実施例27
上記一部の実施例と比較例で得られた成形品の摺動部品としての適正を評価した結果を表5に示す。摺動部品として使用する場合の磨耗量は32μm以下であることが好ましく、帯電防止性を付与させるためには、体積固有抵抗値が109以下、好ましくは100〜109Ω・cmである。このような体積固有抵抗値の成形品を室内に放置しても埃の付着は少なかった。
【0090】
【表5】
【0091】
実施例28
上記一部の実施例で得られた成形品のICトレーとしての適正を評価した結果を表6に示す。一般にICトレーとしての適正基準は表面抵抗値で表すことが多く、体積固有抵抗値と共に表面抵抗値を測定した。表面抵抗値が102〜1010Ωのものは、室内に放置しても埃の付着は少なかった。
【0092】
【表6】
【0093】
【発明の効果】
本発明は、炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品において、成形品中に含まれる炭素繊維は、その全含有量が0.5〜30wt%であり、更に1.5mmを超える長さの該炭素繊維が、0.1〜4.7wt%であることを特徴とする炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品に関するもので、この成形品は、優れた機械的特性、電気特性及び特に表面状態に優れたもので、例えば電磁波遮蔽性成形品、樹脂抵抗体、帯電防止性を有する樹脂抵抗体、ICトレー等に使用できるものである。
Claims (12)
- 炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品において、成形品中に含まれる炭素繊維がマトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂で付着被覆され、且つその全含有量が0.5〜30wt%であり、更に1.5mmを超える長さの炭素繊維が0.1〜4.7wt%、0.5〜1.5mmの長さの炭素繊維が0.2〜10.7wt%、0.5mm未満の長さの炭素繊維が、0.2〜14.6wt%であり、それぞれの比率が重量比で1/0.5〜2.5/0.5〜3.0であることを特徴とする炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。
- マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂を予め炭素繊維ロービングに付着被覆させた後、マトリックスである熱可塑性樹脂で押出被覆し、更にカッティングした炭素繊維を含有する樹脂ペレットを用いて成形されたものであることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。
- マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂を予め炭素繊維ロービングに付着被覆させた後、マトリックスである熱可塑性樹脂で押出被覆し、更にカッティングした炭素繊維を含有する樹脂ペレットとマトリックスである熱可塑性樹脂ペレットとのブレンド品を用いて成形されたものであることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。
- マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂を予め炭素繊維ロービングに付着被覆させた後カッティングした炭素繊維と、マトリックスである熱可塑性樹脂ペレットとのブレンド品を用いて成形されたものであることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。
- マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂の炭素繊維への付着被覆が、エマルジョンを炭素繊維に付着させることによるものであることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。
- マトリックスである熱可塑性樹脂と相溶性のある樹脂の炭素繊維への付着被覆が、熱可塑性樹脂を溶融押出被覆により炭素繊維に付着させることによるものであることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。
- 炭素繊維が表面に導電性皮膜を形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。
- 導電性皮膜がメッキによって形成されたものであることを特徴とする請求項7記載の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。
- 請求項1〜8いずれかに記載の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品であって、体積固有抵抗値が10-4〜103Ω・cmであることを特徴とする電磁波遮蔽成形品。
- 請求項1〜8いずれかに記載の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品であって、体積固有抵抗値が102〜1013Ω・cmであることを特徴とする樹脂抵抗体。
- 請求項1〜8いずれかに記載の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品であって、体積固有抵抗値が100〜109Ω・cmであることを特徴とする帯電防止性を有する摺動部品。
- 請求項1〜8いずれかに記載の炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品であって、表面抵抗値が102〜1010Ωであることを特徴とするICトレー。
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