JP2018100377A - 樹脂組成物、及び樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性樹脂と、炭素繊維と、末端にカルボキシ基およびアミノ基の少なくとも一方を有し、末端カルボキシ基よりも末端アミノ基の存在割合が高いポリアミドと、相溶化剤と、を含む樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
特に、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は、家電製品や自動車の各種部品、筐体等、また事務機器、電子電気機器の筐体などの部品に使用される。
特許文献3には、「炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品において、成形品中に含まれる炭素繊維は、その全含有量が0.5〜30wt%であり、更に1.5mmを超える長さの炭素繊維が0.1〜4.7wt%であることを特徴とする炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。」が開示されている。
熱可塑性樹脂と、
炭素繊維と、
末端にカルボキシ基およびアミノ基の少なくとも一方を有し、末端カルボキシ基よりも末端アミノ基の存在割合が高いポリアミドと、
相溶化剤と、
を含む樹脂組成物。
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項1に記載の樹脂組成物。
請求項3に係る発明は、
前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項5に係る発明は、
前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記相溶化剤の含有量が、前記ポリアミド100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項7に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
熱可塑性樹脂と、
炭素繊維と、
末端にカルボキシ基およびアミノ基の少なくとも一方を有し、末端カルボキシ基よりも末端アミノ基の存在割合が高いポリアミドと、
相溶化剤と、
を含む樹脂成形体。
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項8に記載の樹脂成形体。
請求項10に係る発明は、
前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである請求項8又は請求項9に記載の樹脂成形体。
前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項12に係る発明は、
前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
前記相溶化剤の含有量が、前記ポリアミド100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項8〜請求項12のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項14に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項8〜請求項13のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項3に係る発明によれば、相溶化剤としてエポキシコポリマーを用いた場合と比べ、曲げ弾性率に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項5に係る発明によれば、炭素繊維の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超えである場合に比べ、曲げ弾性率に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項7に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するポリアミドの含有量が0.1質量%未満又は200質量%超えである場合に比べ、曲げ弾性率に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項10に係る発明によれば、相溶化剤としてエポキシコポリマーを用いた場合と比べ、曲げ弾性率に優れた樹脂成形体が提供される。
請求項12に係る発明によれば、炭素繊維の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超えである場合に比べ、曲げ弾性率に優れた樹脂成形体が提供される。
。
請求項14に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するポリアミドの含有量が0.1質量%未満又は200質量%超えである場合に比べ、曲げ弾性率に優れた樹脂成形体が提供される。
本実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、炭素繊維と、ポリアミドと、相溶化剤と、を含む。
このような樹脂組成物では、強化繊維と熱可塑性樹脂との親和性が低いと、この両者の界面に空間が生じ、かかる界面における密着性が低下することがある。
特に、樹脂組成物中の強化繊維として炭素繊維を用いた場合には、ガラス繊維等に比べ高い機械的強度を求められるが、炭素繊維表面の水酸基、カルボキシ基など熱可塑性樹脂との接着に寄与する極性基が、ガラス繊維に比べて少ないため、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面における密着性は低下する。その結果、機械的強度、特に曲げ弾性率は、炭素繊維の配合の割に高まり難い。特に、繰り返し衝撃を加えた場合、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面での剥離が進行しやすいため、曲げ弾性率の低下は大きくなる傾向がある。
なお、本明細書中において、末端アミノ基はポリアミドの末端に存在するアミノ基、末端カルボキシ基はポリアミドの末端に存在するカルボキシ基のことを表す。
この構成とすることで、曲げ弾性率に優れる樹脂成形体が得られる。このような効果が得られる作用については明確ではないが、以下のように推測される。
この状態の中で、ポリアミドが炭素繊維と接触すると、ポリアミドの分子鎖に沿って多数含まれるアミド結合と、炭素繊維の表面に僅かながら存在する極性基と、が親和力(引力及び水素結合)にて複数の箇所で物理的に接着する。また、一般的に熱可塑性樹脂とポリアミドとは相溶性が低いため、熱可塑性樹脂とポリアミドとの間の斥力により、ポリアミドと炭素繊維との接触頻度が上がり、その結果として、ポリアミドの炭素繊維に対する接着量や接着面積が上がる。このように、炭素繊維の周囲にポリアミドによる被覆層が形成される(図1参照)。なお、図1中、PPは熱可塑性樹脂を示し、CFが炭素繊維を示し、CLは被覆層を示している。
なお、被覆層の確認は、上記断面観察により実施する。
具体的には、例えば、ポリアミドによる被覆層と母材である熱可塑性樹脂との間には、相溶化剤の層が介在していることがよい(図2参照)。つまり、被覆層の表面に相溶化剤の層が形成され、この相溶化剤の層を介して、被覆層と熱可塑性樹脂が隣接していることがよい。相溶化剤の層は被覆層に比べ薄く形成されるが、相溶化剤の層の介在により、被覆層と熱可塑性樹脂との密着性(接着性)が高まり、機械的強度、特に曲げ弾性率に優れた樹脂成形体が得られ易くなる。なお、図2中、PPは熱可塑性樹脂を示し、CFが炭素繊維を示し、CLは被覆層、CAは相溶化剤の層を示している。
具体的には、例えば、ポリオレフィンの熱可塑性樹脂、ポリアミド、及び無水マレイン酸修飾ポリオレフィンの相溶化剤を適用した場合、無水マレイン酸修飾ポリオレフィンの層(相溶化剤の層)は、その無水マレイン酸部位が開環して生成したカルボキシ基がポリアミドの層(被覆層)のアミン残基と反応して結合し、そのポリオレフィン部位がポリオレフィンと相溶した状態で介在していることがよい。
解析装置として顕微赤外分光分析装置(日本分光IRT−5200)を用いる。例えば、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン(以下PP)、特定樹脂として末端アミノ基の存在割合が高いPA66、修飾ポリオレフィンとしてマレイン酸変性ポリプロピレン(以下MA−PP)と、からなる樹脂成形体よりスライス片を切り出し、その断面を観察する。炭素繊維断面の周りの被覆層部をIRマッピングを行い、被覆層−相溶化層由来のマレイン酸無水物(1820cm−1以上1750cm−1)を確認する。これにより、被覆層と熱可塑性樹脂との間に相溶化剤の層(結合層)が介在していることが確認できる。
詳しくは、MA−PPと末端アミノ基の存在割合が高いPA66とが反応していると、MA−PPの環状マレイン化部分が開環して末端アミノ基の存在割合が高いPA66のアミン残基が化学結合することで環状マレイン化部分が減るので、被覆層と熱可塑性樹脂との間に相溶化剤の層(結合層)が介在していると確認できる。
熱可塑性樹脂は、樹脂組成物の母材であり、炭素繊維により強化される樹脂成分をいう(マトリックス樹脂とも呼ばれる)。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではなく、例えば、ポリオレフィン(PO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(ABS)、アクリロニトリルスチレン(AS)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィンとしては、オレフィンに由来する繰り返し単位を含む樹脂であって、樹脂全体に対し30質量%以下であれば、オレフィン以外の単量体に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
ポリオレフィンは、オレフィン(必要に応じて、オレフィン以外の単量体)の付加重合によって得られる。
また、ポリオレフィンを得るための、オレフィン及びオレフィン以外の単量体は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
なお、ポリオレフィンは、コポリマーであってもよいし、ホモポリマーであってよい。また、ポリオレフィンは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
脂肪族オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等のα−オレフィンが挙げられる。
また、脂環式オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
中でも、コストの点から、α−オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレンがより好ましく、特にプロピレンが好ましい。
付加重合性化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類;(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン類;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類;等が挙げられる。
中でも、オレフィンに由来する繰り返し単位のみを含む樹脂であることが好ましく、特に、コストの点から、ポリプロピレンが好ましい。
また、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)又は融点(Tm)は、上記分子量と同様、特に限定されず、樹脂の種類、成形条件や樹脂成形体に用途等に応じて決定すればよい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィンであれば、その融点(Tm)は、100℃以上300℃以下の範囲が好ましく、150℃以上250℃以下の範囲がより好ましい。
即ち、ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、以下の条件で行う。GPC装置としては高温GPCシステム「HLC−8321GPC/HT」、溶離液としてo−ジクロロベンゼンを用いる。ポリオレフィンを一旦高温(140℃以上150℃以下の温度)でo−ジクロロベンゼンに溶融・ろ過し、ろ液を測定試料とする。測定条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、RI検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作成する。
また、ポリオレフィンの融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
なお、熱可塑性樹脂としてポリオレフィンを用いる場合、熱可塑性樹脂の全質量に対して20質量%以上をポリオレフィンとすることが好ましい。
炭素繊維としては、公知の炭素繊維が用いられ、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維のいずれもが用いられる。
炭素繊維の表面処理としては、例えば、酸化処理、サイジング処理が挙げられる。
炭素繊維の形態は、特に限定されず、樹脂成形体の用途等に応じて選択すればよい。炭素繊維の形態としては、例えば、多数の単繊維から構成される繊維束、繊維束を集束したもの、繊維を二次元又は三次元に織った織物等が挙げられる。
ただし、炭素繊維の繊維長が短くても、曲げ弾性率に優れた樹脂成形体が得られるため、炭素繊維の平均繊維長は、0.1mm以上5.0mm以下(好ましくは0.2mm以上2.0mm以下)であってもよい。
また、炭素繊維の平均直径は、例えば、5.0μm以上10.0μm以下(好ましくは6.0μm以上8.0μm以下)であってもよい。
一方、炭素繊維の平均直径の測定方法は、次の通りである。炭素繊維の長さ方向に直交する断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)によって倍率1000倍で観察し、炭素繊維の直径を測定する。そして、この測定を炭素繊維100個について行い、その平均値を炭素繊維の平均直径とする。
しかし、炭素繊維を含む樹脂成形体を粉砕し、炭素繊維が短繊維化されたリサイクル品を原料として使用したり、熱溶融混練時に炭素繊維が短繊維化しても、本実施形態に係る樹脂組成物は、曲げ弾性率に優れた樹脂成形体が得られるため有用である。
PAN系炭素繊維の市販品としては、東レ(株)製の「トレカ(登録商標)」、東邦テナックス(株)製の「テナックス」、三菱レイヨン(株)製の「パイロフィル(登録商標)」等が挙げられる。その他、PAN系炭素繊維の市販品としては、Hexcel社製、Cytec社製,Dow−Aksa社製、台湾プラスチック社製,SGL社製の市販品も挙げられる。
ピッチ系炭素繊維の市販品としては、三菱レイヨン(株)製の「ダイリアード(登録商標)」、日本グラファイトファイバー(株)製の「GRANOC」、(株)クレハ製の「クレカ」等が挙げられる。その他、ピッチ系炭素繊維の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製、Cytec社製の市販品も挙げられる。
炭素繊維が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上含まれることで、樹脂組成物の強化が図られ、また、炭素繊維の含有量を、熱可塑性樹脂100質量部に対し200質量部以下とすることで、樹脂成形体を得る際の成形性が良好になる。
なお、炭素繊維以外の強化繊維を用いる場合、強化繊維の全質量に対して80質量%以上を炭素繊維とすることが好ましい。
この略記を使用した場合、上記炭素繊維の含有量は、0.1phr以上200phr以下となる。
ポリアミドは、特定の部分構造を含み、前述したように、炭素繊維の周囲を被覆しうる樹脂である。また、ポリアミドは、末端にカルボキシ基およびアミノ基の少なくとも一方を有し、末端カルボキシ基よりも末端アミノ基の割合が高い(以下、単に、「末端アミノ基の存在割合が高い」とも称する)。
このポリアミドについて、詳細に説明する。
ここで、熱可塑性樹脂とポリアミドとのSP値の差としては、両者間の相溶性、両者間の斥力の点から、3以上が好ましく、3以上6以下がより好ましい。
ここでいうSP値とは、Fedorの方法により算出された値である、具体的には、溶解度パラメータ(SP値)は、例えば、Polym.Eng.Sci.,vol.14,p.147(1974)の記載に準拠し、下記式によりSP値を算出する。
式:SP値=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi)
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm3/mol)、Δei:それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:それぞれの原子又は原子団のモル体積)
なお、溶解度パラメータ(SP値)は、単位として(cal/cm3)1/2を採用するが、慣行に従い単位を省略し、無次元で表記する。
アミド結合を含むことで、炭素繊維の表面に存在する極性基との間で親和性が発現する。
さらに、ポリアミドは、末端アミノ基の存在割合が高いことで、炭素繊維の表面に存在する極性基との間で親和性がより高まる。
なお、ポリアミドが、例えば、末端アミノ基の濃度が異なる2種以上併用されている場合、ポリアミド全体として、末端アミノ基の存在割合が高くなっていればよい。
0.5<[A]/([A]+[B])≦1.0
[A]:ポリアミド1kg当たりの末端アミノ基濃度(mol/kg)
[B]:ポリアミド1kg当たりの末端カルボキシ基濃度(mol/kg)
末端アミノ基濃度(mol/kg)は、樹脂をN−メチル−2−ピロリドン溶媒に溶解させた後、過剰量のトリフロオロ酢酸無水物をトリエチルアミン触媒とともに末端アミノ基に作用させる。樹脂を再沈殿により取り出した後、F-NMRにて樹脂中に存在するフッ素原子量を定量し、末端アミノ基量を算出し、末端アミノ基濃度を決定する。
末端カルボキシ基濃度(mol/kg)は、樹脂をN−メチル−2−ピロリドン溶媒に溶解させた後、過剰量のトリフロオロエタノールと、ジ−t−ブチルカルボジイミドをピリジン触媒とともに末端カルボキシルキ基に作用させる。樹脂を再沈殿により取り出した後、F-NMRにて樹脂中に存在するフッ素原子量を定量し、末端カルボキシルキ基量を算出し、末端カルボキシ基濃度を決定する。
なお、ポリアミドを2種類以上併用する場合は、併用した全ポリアミドの1kg当たりの末端アミノ基濃度と末端カルボキシ基濃度との総和に対する末端アミノ基濃度の割合として求める。
なお、上記ポリアミドとして、アラミド構造単位のみを有するポリアミドを適用すると、ポリアミドが溶融し得る高い温度では、熱可塑性樹脂の熱劣化を引き起こす。また、熱可塑性樹脂の熱劣化が引き起こされる温度では、ポリアミドが十分に溶融できず、成形性(例えば射出成形性)が悪化し、得られる樹脂成形体の外観品質及び機械的性能が低下する。
また、アラミド構造単位とは、芳香環を含むジカルボン酸と芳香環を含むジアミンとの縮重合反応した構造単位を示す。
・構造単位(1):−(−NH−Ar1−NH−CO−R1−CO−)−
(構造単位(1)中、Ar1は芳香環を含む2価の有機基を示す。R1は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(2):−(−NH−R2−NH−CO−Ar2−CO−)−
(構造単位(2)中、Ar2は芳香環を含む2価の有機基を示す。R2は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(3):−(−NH−R31−NH−CO−R32−CO−)−
(構造単位(3)中、R31は芳香環を含まない2価の有機基を示す。R32は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(4):−(−NH−R4−CO−)−
(構造単位(4)中、R4は芳香環を含まない2価の有機基を示す)
混合ポリアミドは、例えば、芳香環を有する第1ポリアミドと、芳香環を有さない第2ポリアミドと、を含む混合ポリアミドである。
なお、以下、便宜上、第1ポリアミドを「芳香族ポリアミド」、第2ポリアミドを「脂肪族ポリアミド」と称することがある。
芳香環を含まないジカルボン酸としては、シュウ酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸等が例示される。
芳香環を含むジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル等が例示される。
芳香環を含まないジアミンとしては、エチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、デカメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が例示される。
ポリアミドの分子量は、特に限定されず、樹脂組成物中に併存する熱可塑性樹脂よりも熱溶融し易ければよい。例えば、ポリアミドの重量平均分子量は、1万以上30万以下の範囲が好ましく、1万以上10万以下の範囲がより好ましい。
また、ポリアミドのガラス転移温度又は溶融温度(融点)は、上記分子量と同様、特に限定されず、樹脂組成物中に併存する熱可塑性樹脂よりも熱溶融し易ければよい。例えば、ポリアミド(共重合ポリアミド、混合ポリアミドの各ポリアミド)の融点(Tm)は、100℃以上400℃以下の範囲が好ましく、150℃以上350℃以下の範囲がより好ましい。
ポリアミドの含有量が上記の範囲であることで、炭素繊維との親和性が高まり、曲げ弾性率の向上が図られる。
炭素繊維の質量に対するポリアミドの含有量としては、0.1質量%以上200質量%以下であることが好ましく、1質量%以上150質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上120質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対するポリアミドの含有量が、0.1質量%以上であると炭素繊維とポリアミドとの親和性が高まり易くなり、200質量%以下であると樹脂流動性が向上する。
相溶化剤は、熱可塑性樹脂とポリアミドとの親和性を高める樹脂である。
相溶化剤としては、熱可塑性樹脂に応じて決定すればよい。
相溶化剤としては、熱可塑性樹脂と同じ構造を有し、且つ、分子内の一部にポリアミドと親和性を有する部位を含むものが好ましい。
ここで、熱可塑性樹脂がポリプロピレン(PP)であれば修飾ポリオレフィンとしては修飾ポリプロピレン(PP)が好ましく、同様に、熱可塑性樹脂がエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)であれば修飾ポリオレフィンとしては修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)が好ましい。
ポリオレフィンに導入される修飾部位としては、ポリオレフィンとポリアミドとの親和性の更なる向上の点、成形加工時の上限温度の点から、カルボン酸無水物残基を含むことが好ましく、特に、無水マレイン酸残基を含むことが好ましい。
上述した修飾部位を含む化合物としては、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水クエン酸、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルベンゾエート、N−〔4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル〕アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレート、及びこれらの誘導体が挙げられる。
なお、上記の中でも、不飽和カルボン酸である無水マレイン酸をポリオレフィンと反応させてなる修飾ポリオレフィンが好ましい。
修飾プロピレンとしては、三洋化成工業(株)製のユーメックス(登録商標)シリーズ(100TS、110TS、1001、1010)等が挙げられる。
修飾ポリエチレンとしては、三洋化成工業(株)製のユーメックス(登録商標)シリーズ(2000)、三菱化学(株)製のモディック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)としては、三菱化学(株)のモディック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
相溶化剤の含有量は、ポリアミド100質量部に対し1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上50質量部以下であることが更に好ましい。
相溶化剤の含有量が上記の範囲であることで、熱可塑性樹脂とポリアミドとの親和性が高められ、曲げ弾性率の向上が図られる。
炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量としては、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量が、1質量%以上であると炭素繊維とポリアミドとの親和性が得られ易く、50質量%以下(特に30質量%以下)であると変色や劣化の原因となる未反応官能基の残存が抑制される。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分の他、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、難燃剤、難燃助剤、加熱された際の垂れ(ドリップ)防止剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、炭素繊維以外の補強剤(タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)等の周知の添加剤が挙げられる。
その他の成分は、例えば、熱可塑性樹脂100質量部に対し0質量部以上10質量部以下がよく、0質量部以上5質量部以下がより好ましい。ここで、「0質量部」とはその他の成分を含まない形態を意味する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分を溶融混練することにより製造される。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段が用いられ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
溶融混練の際の温度(シリンダ温度)としては、樹脂組成物を構成する樹脂成分の融点等に応じて、決定すればよい。
本実施形態に係る樹脂成形体は、熱可塑性樹脂と、炭素繊維と、ポリアミドと、相溶化剤と、を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
射出成形のシリンダ温度は、例えば180℃以上300℃以下であり、好ましくは200℃以上280℃以下である。射出成形の金型温度は、例えば30℃以上100℃以下であり、30℃以上60℃以下がより好ましい。
射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX300、住友機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
特に、本実施形態に係る樹脂成形体は、強化繊維として炭素繊維を適用しているため、より機械的強度に優れた樹脂成形体となることから、金属部品への代替用途に好適となる。
−PA−Aの合成−
ジアミン成分として、ヘキサメチレンジアミン11.62kg(100mol)、ジカルボン酸成分として、アジピン酸14.18kg(97mol)(ジカルボン酸成分/ジアミン成分=0.97(モル比))、触媒として、ジ亜リン酸ナトリウム10g、及び、イオン交換水18kgを50リットルのオートクレーブに仕込み、常圧から0.05MPaまでN2で加圧し、放圧させ、常圧に戻した。この操作を3回行い、N2置換を行った後、攪拌下135℃、0.3MPaにて均一溶解させた。その後、溶解液を送液ポンプにより、連続的に供給し、加熱配管で240℃まで昇温させ、1時間、熱を加えた。その後、加圧反応缶に反応混合物が供給され、300℃に加熱され、缶内圧を3MPaで維持するように、水の一部を留出させ、縮合物を得た。その後、この縮合物を、熱水中に添加して洗浄した後、液体窒素で凍結してハンマーにて粉砕した。得られた樹脂粉末を120℃で12時間乾燥させ、末端にアミノ基を有するポリアミド樹脂PA−Aを得た。
既述の方法により、末端アミノ基濃度[A]を測定したところ、0.27mol/kgであった。また、末端カルボキシ基濃度[B]を測定し、[A]/([A]+[B])を算出したところ、1.0であった。
−PA−Bの合成−
アジピン酸を13.88kg(95mol)(ジカルボン酸成分/ジアミン成分=0.95(モル比))とした以外、合成例1と同様にしてポリアミドPA−Bを得た。
既述の方法により、末端アミノ基濃度[A]を測定したところ、0.44mol/kgであった。また、末端カルボキシ基濃度[B]を測定し、[A]/([A]+[B])を算出したところ、1.0であった。
−PA−Cの合成−
アジピン酸を14.47kg(99mol)(ジカルボン酸成分/ジアミン成分=0.99(モル比))とした以外、合成例1と同様にしてポリアミドPA−Cを得た。
既述の方法により、末端アミノ基濃度[A]を測定したところ、0.09mol/kgであった。また、末端カルボキシ基濃度[B]を測定し、[A]/([A]+[B])を算出したところ、1.0であった。
−PA−Dの合成−
アジピン酸を15.05kg(103mol)(ジカルボン酸成分/ジアミン成分=1.03(モル比))とした以外、合成例1と同様にしてポリアミドPA−Dを得た。
既述の方法により、末端アミノ基濃度[A]を測定したところ、0mol/kgであった。また、末端カルボキシ基濃度[B]を測定し、[A]/([A]+[B])を算出したところ、0.0であった。
−PA−Eの合成−
ジカルボン酸成分を、アジピン酸14.18kg(97mol)、ジアミン成分を、メタキシレンジアミン13.62kg(100mol)(ジカルボン酸成分/ジアミン成分=0.97(モル比))とした以外、合成例1と同様にしてポリアミドPA−Eを得た。
既述の方法により、末端アミノ基濃度[A]を測定したところ、0.24mol/kgであった。また、末端カルボキシ基濃度[B]を測定し、[A]/([A]+[B])を算出したところ、1.0であった。
表1〜表2に従った成分(表中の数値は部数を示す)を、2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)にて、下記の混練条件、および表1〜表2に示す溶融混練温度(シリンダ温度)で混練し、樹脂組成物のペレットを得た。なお、得られたペレットを600℃で2時間焼成し、残留した炭素繊維の平均繊維長を前述の方法で測定した。測定結果を表1〜表2に示す。
・スクリュー径:φ58mm
・回転数:300rpm
・吐出ノズル径:1mm
得られた2種の試験片を用いて、以下のような評価を行った。
評価結果を表1〜表2に示す。
得られたISO多目的ダンベル試験片について、万能試験装置(島津製作所社製、オートグラフAG−Xplus)を用いて、ISO178に準拠する方法で、曲げ弾性率を測定した。
得られたD2試験片を用いて、既述の方法に従って、ポリアミドによる被覆層の有無を確認した。
−熱可塑性樹脂−
・ポリプロピレン(ノバテック(登録商標)PP MA3、日本ポリプロ(株)製)
・ポリエチレン(ウルトゼックス20100J、(株)プライムポリマー製)
・EVA:エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(41X 三井デユポン(株)製)
・炭素繊維A(表面処理有、チョップド炭素繊維トレカ(登録商標)、東レ(株)、平均繊維長20mm、平均直径7μm)
・炭素繊維B(表面処理無、上記チョップド炭素繊維トレカ(登録商標)、東レ(株)を溶媒浸漬し、サイジング剤を除去したもの)
・PA−A(上記で合成したPA−A)
・PA−B(上記で合成したPA−B)
・PA−C(上記で合成したPA−C)
・PA−D(上記で合成したPA−D)
・PA−E(上記で合成したPA−E)
・無水マレイン酸修飾ポリプロピレン(ユーメックス(登録商標)110TS、三洋化成工業(株)製
・無水マレイン酸修飾ポリエチレン(モディックM142、三菱化学(株)製)
・無水マレイン酸修飾EVA:無水マレイン酸修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(モディックA543、三菱化学(株)製)
Claims (14)
- 熱可塑性樹脂と、
炭素繊維と、
末端にカルボキシ基およびアミノ基の少なくとも一方を有し、末端カルボキシ基よりも末端アミノ基の存在割合が高いポリアミドと、
相溶化剤と、
を含む樹脂組成物。 - 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- 前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記相溶化剤の含有量が、前記ポリアミド100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂と、
炭素繊維と、
末端にカルボキシ基およびアミノ基の少なくとも一方を有し、末端カルボキシ基よりも末端アミノ基の存在割合が高いポリアミドと、
相溶化剤と、
を含む樹脂成形体。 - 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項8に記載の樹脂成形体。
- 前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである請求項8又は請求項9に記載の樹脂成形体。
- 前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記相溶化剤の含有量が、前記ポリアミド100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項8〜請求項12のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項8〜請求項13のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
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