JP6876909B2 - 樹脂組成物、及び樹脂成形体 - Google Patents
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Description
特に、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は、家電製品や自動車の各種部品、筐体等、また事務機器、電子電気機器の筐体などの部品に使用される。
特許文献3には、「炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品において、成形品中に含まれる炭素繊維は、その全含有量が0.5〜30wt%であり、更に1.5mmを超える長さの炭素繊維が0.1〜4.7wt%であることを特徴とする炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。」が開示されている。
熱可塑性樹脂と、
炭素繊維と、
アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含みかつ前記主鎖の少なくとも一方の末端が炭素数8以上のアルキル基で変性された末端長鎖アルキル変性樹脂と、
を含む樹脂組成物。
前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である<1>に記載の樹脂組成物。
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
前記末端長鎖アルキル変性樹脂が、主鎖に前記アミド結合を含むポリアミドである<1>〜<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
前記末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
前記炭素繊維の質量に対する、前記末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
相溶化剤を含む<1>〜<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである<8>に記載の樹脂組成物。
前記相溶化剤の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である<8>又は<9>に記載の樹脂組成物。
前記相溶化剤の含有量が、前記末端長鎖アルキル変性樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である<8>〜<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上50質量%以下である<8>〜<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
熱可塑性樹脂と、
炭素繊維と、
アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含みかつ前記主鎖の少なくとも一方の末端が炭素数8以上のアルキル基で変性された末端長鎖アルキル変性樹脂と、
を含む樹脂成形体。
前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である<13>に記載の樹脂成形体。
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである<13>又は<14>に記載の樹脂成形体。
前記末端長鎖アルキル変性樹脂が、主鎖に前記アミド結合を含むポリアミドである<13>〜<15>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である<13>〜<16>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
前記末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である<13>〜<17>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
前記炭素繊維の質量に対する、前記末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である<13>〜<18>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
相溶化剤を含む<13>〜<19>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである<20>に記載の樹脂成形体。
前記相溶化剤の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である<20>又は<21>に記載の樹脂成形体。
前記相溶化剤の含有量が、前記末端長鎖アルキル変性樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である<20>〜<22>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上50質量%以下である<20>〜<23>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
<2>に係る発明によれば、熱可塑性樹脂と炭素繊維とアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含む樹脂とを含み、炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である樹脂組成物において、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含む樹脂として末端未変性のポリアミドのみを含む場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
<5>に係る発明によれば、炭素繊維の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超えである場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
<6>に係る発明によれば、末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は100質量部超えである場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
<7>に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対する末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が0.1質量%未満又は200質量%超えである場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
<8>に係る発明によれば、熱可塑性樹脂と炭素繊維と末端長鎖アルキル変性樹脂とを含み、かつ相溶化剤を含まない場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
<9>に係る発明によれば、相溶化剤としてエポキシコポリマーを用いた場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
<10>に係る発明によれば、相溶化剤の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は50質量部超えである場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
<11>に係る発明によれば、相溶化剤の含有量が、末端長鎖アルキル変性樹脂100質量部に対し1質量部未満又は50質量部超えの場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
<12>に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量が1質量%未満又は50質量%超えである場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
<14>に係る発明によれば、熱可塑性樹脂と炭素繊維とアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含む樹脂とを含み、炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である樹脂成形体において、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含む樹脂として末端未変性のポリアミドのみを含む場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が提供される。
<17>に係る発明によれば、炭素繊維の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超えである場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が提供される。
<18>に係る発明によれば、末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は100質量部超えである場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が提供される。
<19>に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対する末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が0.1質量%未満又は200質量%超えである場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が提供される。
<20>に係る発明によれば、熱可塑性樹脂と炭素繊維と末端長鎖アルキル変性樹脂とを含み、かつ相溶化剤を含まない場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が提供される。
<21>に係る発明によれば、相溶化剤としてエポキシコポリマーを用いた場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が提供される。
<22>に係る発明によれば、相溶化剤の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は50質量部超えである場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が提供される。
<23>に係る発明によれば、相溶化剤の含有量が、末端長鎖アルキル変性樹脂100質量部に対し1質量部未満又は50質量部超えの場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が提供される。
<24>に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量が1質量%未満又は50質量%超えである場合に比べ、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が提供される。
本実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、炭素繊維と、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含みかつ前記主鎖の少なくとも一方の末端が炭素数8以上のアルキル基で変性された末端長鎖アルキル変性樹脂と、を含む。
なお、本明細書では、末端長鎖アルキル変性樹脂において主鎖の少なくとも一方の末端に変性する炭素数8以上のアルキル基を、「長鎖アルキル基」と称する。
このような樹脂組成物では、強化繊維と熱可塑性樹脂との親和性が低いと、この両者の界面に空間が生じ、かかる界面における密着性が低下することがある。
特に、樹脂組成物中の強化繊維として炭素繊維を用いた場合には、ガラス繊維等に比べ高い機械的強度を求められるため、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面における密着性の低下は、機械的強度、特に曲げ弾性率の低下を招くことがある。
特に、樹脂組成物中の強化繊維として炭素繊維を用いた場合には、ガラス繊維等に比べ高い機械的強度を求められるが、炭素繊維表面の水酸基、カルボキシル基など熱可塑性樹脂との接着に寄与する極性基が、ガラス繊維に比べて少ないため、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面における密着性は低下する。その結果、機械的強度、特に曲げ弾性率は、炭素繊維の配合の割に高まり難い。特に、繰り返し曲げる負荷を加えた場合、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面での剥離が進行しやすいため、初期からの曲げ弾性率の低下は大きくなる傾向がある。
この構成とすることで、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られる。このような効果が得られる作用については明確ではないが、以下のように推測される。
この状態の中で、末端長鎖アルキル変性樹脂が炭素繊維と接触すると、末端長鎖アルキル変性樹脂の分子鎖に沿って多数含まれるアミド結合又はイミド結合と、炭素繊維の表面に僅かながら存在する極性基と、が親和力(引力及び水素結合)にて複数の箇所で物理的に接着する。なお、長鎖アルキル基はアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む主鎖に比べて動き易い。そのため、末端の長鎖アルキル基は、主鎖が炭素繊維の表面に物理的に接着した状態であっても、炭素繊維の表面から外側方向に向かって伸びた状態を維持し、つまり炭素繊維表面から母材としての熱可塑性樹脂中に向かって配向した状態で存在する。このように、炭素繊維の周囲に末端長鎖アルキル変性樹脂による被覆層が形成される(図1参照)。なお、図1中、PPは熱可塑性樹脂を示し、CFが炭素繊維を示し、CLは被覆層を示している。
そして、被覆層を形成する末端長鎖アルキル変性樹脂から外側方向(つまり母材としての熱可塑性樹脂中)に向かって長鎖アルキル基が配向した状態となり、この長鎖アルキル基が熱可塑性樹脂とも相溶することで、引力と斥力との平衡状態が形成され、末端長鎖アルキル変性樹脂による被覆層は、薄く、かつ均一に近い状態で形成されることとなる。特に、炭素繊維の表面に存在するカルボキシ基と末端長鎖アルキル変性樹脂の分子内に含まれるアミド結合又はイミド結合との親和性は高いため、炭素繊維の周囲には末端長鎖アルキル変性樹脂による被覆層が形成され易く、薄膜で且つ均一性に優れる被覆層になると考えられる。
一方、本実施形態にかかる樹脂組成物では、末端長鎖アルキル変性樹脂における末端の長鎖アルキル基が熱可塑性樹脂との間に比較的弱い結合力で混和(親和)している。そのため、瞬時に加えられる衝撃に対しても、内部構造を組み替える緩和によって衝撃力を拡散することができるため、高い弾性率(特に高い曲げ弾性率)を得つつも、耐衝撃性も高められるものと考えられる。
なお、被覆層の確認は、上記断面観察により実施する。
なお、本実施形態に係る樹脂組成物(及びその樹脂成形体)では、例えば、かかる被覆層と熱可塑性樹脂との間を相溶化剤が一部相溶する構成としてもよい。
具体的には、例えば、末端長鎖アルキル変性樹脂による被覆層と母材である熱可塑性樹脂との間に、相溶化剤の層が介在した構成としてもよい(図2参照)。つまり、被覆層の表面に相溶化剤の層が形成され、この相溶化剤の層を介して、被覆層と熱可塑性樹脂が隣接した構成であってもよい。相溶化剤の層は被覆層に比べ薄く形成されるが、相溶化剤の層の介在により、被覆層と熱可塑性樹脂との密着性(接着性)が高まり、機械的強度、特に曲げ弾性率に優れた樹脂成形体が得られ易くなる。なお、図2中、PPは熱可塑性樹脂を示し、CFが炭素繊維を示し、CLは被覆層、CAは相溶化剤の層を示している。
具体的には、例えば、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン、末端長鎖アルキル変性樹脂として主鎖の少なくとも一方の末端が長鎖アルキル基で変性されたポリアミド、及び相溶化剤として無水マレイン酸修飾ポリオレフィンを適用した場合、無水マレイン酸修飾ポリオレフィンの層(相溶化剤の層)は、その無水マレイン酸部位が開環して生成したカルボキシ基がポリアミドの層(被覆層)のアミン残基と反応して結合し、そのポリオレフィン部位がポリオレフィンと相溶した状態で介在していることがよい。
解析装置として赤外分光分析装置(サーモフィッシャー社製NICOLET6700FT−IR)を用いる。例えば、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン(以下PP)と、末端長鎖アルキル変性樹脂として末端長鎖アルキル変性PA66と、修飾ポリオレフィンとしてマレイン酸変性ポリプロピレン(以下MA−PP)との樹脂組成物(又は樹脂成形体)の場合、その混合物、PPと末端長鎖アルキル変性PA66との混合物、PPとMA−PPとの混合物、参照としてPP単体、末端長鎖アルキル変性PA66単体、MA−PP単体のIRスペクトルをKBr錠剤法で取得し、混合物における酸無水物由来(MA−PPに特徴的なピーク)の波数1820cm−1以上1750cm−1以下の範囲のピーク面積を比較解析する。PPと末端長鎖アルキル変性PA66とMA−PPとの混合物において、酸無水物ピーク面積の減少を確認し、MA−PPと末端長鎖アルキル変性PA66とが反応していることを確認する。これにより、被覆層と熱可塑性樹脂との間に相溶化剤の層(結合層)が介在していることが確認できる。詳しくは、MA−PPと末端長鎖アルキル変性PA66とが反応していると、MA−PPの環状マレイン化部分が開環して末端長鎖アルキル変性PA66のアミン残基が化学結合することで環状マレイン化部分が減るので、被覆層と熱可塑性樹脂との間に相溶化剤の層(結合層)が介在していると確認できる。
熱可塑性樹脂は、樹脂組成物の母材であり、炭素繊維により強化される樹脂成分をいう(マトリックス樹脂とも呼ばれる)。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではなく、例えば、ポリオレフィン(PO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(ABS)、アクリロニトリルスチレン(AS)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィンとしては、オレフィンに由来する繰り返し単位を含む樹脂であって、樹脂全体に対し30質量%)以下であれば、オレフィン以外の単量体に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
ポリオレフィンは、オレフィン(必要に応じて、オレフィン以外の単量体)の付加重合によって得られる。
また、ポリオレフィンを得るための、オレフィン及びオレフィン以外の単量体は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
なお、ポリオレフィンは、コポリマーであってもよいし、ホモポリマーであってよい。また、ポリオレフィンは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
脂肪族オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等のα−オレフィンが挙げられる。
また、脂環式オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
中でも、コストの点から、α−オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレンがより好ましく、特にプロピレンが好ましい。
付加重合性化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類;(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン類;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類;等が挙げられる。
中でも、オレフィンに由来する繰り返し単位のみを含む樹脂であることが好ましく、特に、コストの点から、ポリプロピレンが好ましい。
また、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)又は融点(Tm)は、上記分子量と同様、特に限定されず、樹脂の種類、成形条件や樹脂成形体に用途等に応じて決定すればよい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィンであれば、その融点(Tm)は、100℃以上300℃以下の範囲が好ましく、150℃以上250℃以下の範囲がより好ましい。
即ち、ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、以下の条件で行う。GPC装置としては高温GPCシステム「HLC−8321GPC/HT」、溶離液としてo−ジクロロベンゼンを用いる。ポリオレフィンを一旦高温(140℃以上150℃以下の温度)でo−ジクロロベンゼンに溶融・ろ過し、ろ液を測定試料とする。測定条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、RI検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作成する。
また、ポリオレフィンの融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
なお、熱可塑性樹脂としてポリオレフィンを用いる場合、熱可塑性樹脂の全質量に対して20質量%以上をポリオレフィンとすることが好ましい。
炭素繊維としては、公知の炭素繊維が用いられ、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維のいずれもが用いられる。
炭素繊維の表面処理としては、例えば、酸化処理、サイジング処理が挙げられる。
炭素繊維の形態は、特に限定されず、樹脂成形体の用途等に応じて選択すればよい。炭素繊維の形態としては、例えば、多数の単繊維から構成される繊維束、繊維束を集束したもの、繊維を二次元又は三次元に織った織物等が挙げられる。
ただし、炭素繊維の繊維長が短くても、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られるため、炭素繊維の平均繊維長は、0.1mm以上5.0mm以下(好ましくは0.2mm以上2.0mm以下)であってもよい。
また、炭素繊維の平均直径は、例えば、5.0μm以上10.0μm以下(好ましくは6.0μm以上8.0μm以下)であってもよい。
一方、炭素繊維の平均直径の測定方法は、次の通りである。炭素繊維の長さ方向に直交する断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)によって倍率1000倍で観察し、炭素繊維の直径を測定する。そして、この測定を炭素繊維100個について行い、その平均値を炭素繊維の平均直径とする。
しかし、炭素繊維を含む樹脂成形体を粉砕し、炭素繊維が短繊維化されたリサイクル品を原料として使用したり、熱溶融混練時に炭素繊維が短繊維化しても、本実施形態に係る樹脂組成物は、高い曲げ弾性率を有する樹脂成形体が得られるため有用である。
PAN系炭素繊維の市販品としては、東レ(株)製の「トレカ(登録商標)」、東邦テナックス(株)製の「テナックス」、三菱レイヨン(株)製の「パイロフィル(登録商標)」等が挙げられる。その他、PAN系炭素繊維の市販品としては、Hexcel社製、Cytec社製,Dow−Aksa社製、台湾プラスチック社製,SGL社製の市販品も挙げられる。
ピッチ系炭素繊維の市販品としては、三菱レイヨン(株)製の「ダイリアード(登録商標)」、日本グラファイトファイバー(株)製の「GRANOC」、(株)クレハ製の「クレカ」等が挙げられる。その他、ピッチ系炭素繊維の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製、Cytec社製の市販品も挙げられる。
炭素繊維が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上含まれることで、樹脂組成物の強化が図られ、また、炭素繊維の含有量を、熱可塑性樹脂100質量部に対し200質量部以下とすることで、樹脂成形体を得る際の成形性が良好になる。
なお、炭素繊維以外の強化繊維を用いる場合、強化繊維の全質量に対して80質量%以上を炭素繊維とすることが好ましい。
この略記を使用した場合、上記炭素繊維の含有量は、0.1phr以上200phr以下となる。
末端長鎖アルキル変性樹脂は、主鎖がアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂であって、かつこの主鎖の少なくとも一方の末端が長鎖アルキル基で変性された樹脂である。この末端長鎖アルキル変性樹脂は、前述したように、炭素繊維の周囲を被覆しうる樹脂である。
この末端長鎖アルキル変性樹脂について、詳細に説明する。
末端長鎖アルキル変性樹脂は、主鎖の少なくとも一方の末端が炭素数8以上のアルキル基で変性されてなる。この末端を変性するアルキル基の炭素数は、曲げ弾性率の向上の観点から、さらに12以上30以下の範囲が好ましく、14以上28以下の範囲がより好ましい。
これらの中でも、曲げ弾性率の向上の観点から、パルミチル基(炭素数16)、ステアリル基(炭素数18)、又はイコシル基(炭素数20)が好ましい。
例えば、主鎖となる樹脂の未変性物が末端にカルボキシ基(−COOH)及びアミノ基(−NH)を有するポリアミドである場合であれば、カルボン酸やアミンが末端変性用の化合物として用いられる。
末端変性率が10%以上(より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上)であることで、曲げ弾性率がより向上し易くなる。一方、末端変性率が100%以下(より好ましくは80%以下)であることで、炭素繊維との接着力向上、及び溶融粘度の低減との利点が得られる。
末端長鎖アルキル変性樹脂を加水分解し、ジカルボン酸、ジアミン、末端変性化合物(末端変性に用いられる化合物)に分離し定量化することで、末端長鎖アルキル変性樹脂を構成する組成比を求める。ジカルボン酸とジアミンとの当量比により全末端数を、末端変性化合物の量により封止末端(変性された末端)の数を算出する。
次いで、末端長鎖アルキル変性樹脂の主鎖について説明する。
末端長鎖アルキル変性樹脂は、主鎖にアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む。
イミド結合又はアミド結合を含むことで、炭素繊維の表面に存在する極性基との間で親和性が発現する。
末端長鎖アルキル変性樹脂の主鎖となる樹脂(未変性物)の具体的な種類としては、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含む熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミノ酸等が挙げられる。
ここで、熱可塑性樹脂と末端長鎖アルキル変性樹脂とのSP値の差としては、両者間の相溶性、両者間の斥力の点から、3以上が好ましく、3以上6以下がより好ましい。
ここでいうSP値とは、Fedorの方法により算出された値である、具体的には、溶解度パラメータ(SP値)は、例えば、Polym.Eng.Sci.,vol.14,p.147(1974)の記載に準拠し、下記式によりSP値を算出する。
式:SP値=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi)
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm3/mol)、Δei:それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:それぞれの原子又は原子団のモル体積)
なお、溶解度パラメータ(SP値)は、単位として(cal/cm3)1/2を採用するが、慣行に従い単位を省略し、無次元で表記する。
中でも、曲げ弾性率の更なる向上の点、炭素繊維との密着性に優れる点から、末端長鎖アルキル変性樹脂の主鎖となる樹脂(未変性物)としては、ポリアミド(PA)が好ましい。
なお、ポリアミドとして、アラミド構造単位のみを有するポリアミドを適用すると、ポリアミドが溶融し得る高い温度では、熱可塑性樹脂の熱劣化を引き起こす。また、熱可塑性樹脂の熱劣化が引き起こされる温度では、ポリアミドが十分に溶融できず、成形性(例えば射出成形性)が悪化し、得られる樹脂成形体の外観品質及び機械的性能が低下する。
また、アラミド構造単位とは、芳香環を含むジカルボン酸と芳香環を含むジアミンとの縮重合反応した構造単位を示す。
・構造単位(1):−(−NH−Ar1−NH−CO−R1−CO−)−
(構造単位(1)中、Ar1は芳香環を含む2価の有機基を示す。R1は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(2):−(−NH−R2−NH−CO−Ar2−CO−)−
(構造単位(2)中、Ar2は芳香環を含む2価の有機基を示す。R2は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(3):−(−NH−R31−NH−CO−R32−CO−)−
(構造単位(3)中、R31は芳香環を含まない2価の有機基を示す。R32は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(4):−(−NH−R4−CO−)−
(構造単位(4)中、R4は芳香環を含まない2価の有機基を示す)
混合ポリアミドは、例えば、芳香環を有する第1ポリアミドと、芳香環を有さない第2ポリアミドと、を含む混合ポリアミドである。
なお、以下、便宜上、第1ポリアミドを「芳香族ポリアミド」、第2ポリアミドを「脂肪族ポリアミド」と称することがある。
一方、混合ポリアミドにおいて、芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミド(芳香族ポリアミド/脂肪族ポリアミド)との割合は、曲げ弾性率の更なる向上の点から、質量比で20/80以上99/1以下(好ましくは50/50以上96/4以下)がよい。
一方、脂肪族ポリアミドにおいて、芳香環を含まない構造単位の割合は、全構造単位に対して80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%以上)がよい。
芳香環を含まないジカルボン酸としては、シュウ酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸等が例示される。
芳香環を含むジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル等が例示される。
芳香環を含まないジアミンとしては、エチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、デカメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が例示される。
芳香族ポリアミドの市販品としては、三菱ガス化学社製「MXD6」、クラレ社製「GENESTAR(登録商標):PA6T」、クラレ社製「GENESTAR(登録商標):PA9T」、東洋紡社製「TY−502NZ:PA6T」等が例示される。
脂肪族ポリアミドの市販品としては、Dupont社製「ザイテル(登録商標):7331J(PA6)」、Dupont社製「ザイテル(登録商標):101L(PA66)」
末端長鎖アルキル変性樹脂の物性について説明する。
末端長鎖アルキル変性樹脂の分子量は、特に限定されず、樹脂組成物中に併存する熱可塑性樹脂よりも熱溶融し易ければよい。末端長鎖アルキル変性樹脂がポリアミドであれば、例えば、その末端長鎖アルキル変性樹脂の重量平均分子量は、1万以上30万以下の範囲が好ましく、1万以上10万以下の範囲がより好ましい。
また、末端長鎖アルキル変性樹脂のガラス転移温度又は溶融温度(融点)は、上記分子量と同様、特に限定されず、樹脂組成物中に併存する熱可塑性樹脂よりも熱溶融し易ければよい。末端長鎖アルキル変性樹脂がポリアミドであれば、例えば、その末端長鎖アルキル変性樹脂(共重合ポリアミド、混合ポリアミドの各ポリアミド)の融点(Tm)は、100℃以上400℃以下の範囲が好ましく、150℃以上350℃以下の範囲がより好ましい。
末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が上記の範囲であることで、炭素繊維との親和性が高まり、曲げ弾性率の向上が図られる。
炭素繊維の質量に対する末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量としては、0.1質量%以上200質量%以下であることが好ましく、1質量%以上150質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上120質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対する末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が、0.1質量%以上であると炭素繊維と末端長鎖アルキル変性樹脂との親和性が高まり易くなり、200質量%以下であると樹脂流動性が向上する。
本実施形態では、熱可塑性樹脂、炭素繊維、及び末端長鎖アルキル変性樹脂の3成分に加えて、さらに相溶化剤を併用してもよい。
相溶化剤は、熱可塑性樹脂と末端長鎖アルキル変性樹脂との親和性を高める樹脂である。
相溶化剤としては、熱可塑性樹脂に応じて決定すればよい。
相溶化剤としては、熱可塑性樹脂と同じ構造を有し、且つ、分子内の一部に末端長鎖アルキル変性樹脂と親和性を有する部位を含むものが好ましい。
ここで、熱可塑性樹脂がポリプロピレン(PP)であれば修飾ポリオレフィンとしては修飾ポリプロピレン(PP)が好ましく、同様に、熱可塑性樹脂がエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)であれば修飾ポリオレフィンとしては修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)が好ましい。
ポリオレフィンに導入される修飾部位としては、ポリオレフィンと末端長鎖アルキル変性樹脂との親和性の更なる向上の点、成形加工時の上限温度の点から、カルボン酸無水物残基を含むことが好ましく、特に、無水マレイン酸残基を含むことが好ましい。
上述した修飾部位を含む化合物としては、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水クエン酸、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルベンゾエート、N−〔4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル〕アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレート、及びこれらの誘導体が挙げられる。
なお、上記の中でも、不飽和カルボン酸である無水マレイン酸をポリオレフィンと反応させてなる修飾ポリオレフィンが好ましい。
修飾プロピレンとしては、三洋化成工業(株)製のユーメックス(登録商標)シリーズ(100TS、110TS、1001、1010)等が挙げられる。
修飾ポリエチレンとしては、三洋化成工業(株)製のユーメックス(登録商標)シリーズ(2000)、三菱化学(株)製のモディック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)としては、三菱化学(株)のモディック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
相溶化剤の含有量は、末端長鎖アルキル変性樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上50質量部以下であることが更に好ましい。
相溶化剤の含有量が上記の範囲であることで、熱可塑性樹脂と末端長鎖アルキル変性樹脂との親和性が高められ、曲げ弾性率の向上が図られる。
炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量としては、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量が、1質量%以上であると炭素繊維と末端長鎖アルキル変性樹脂との親和性が得られ易く、50質量%以下(特に30質量%以下)であると変色や劣化の原因となる未反応官能基の残存が抑制される。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分の他、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、難燃剤、難燃助剤、加熱された際の垂れ(ドリップ)防止剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、炭素繊維以外の補強剤(タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)等の周知の添加剤が挙げられる。
その他の成分は、例えば、熱可塑性樹脂100質量部に対し0質量部以上10質量部以下がよく、0質量部以上5質量部以下がより好ましい。ここで、「0質量部」とはその他の成分を含まない形態を意味する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分を溶融混練することにより製造される。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段が用いられ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
溶融混練の際の温度(シリンダ温度)としては、樹脂組成物を構成する樹脂成分の融点等に応じて、決定すればよい。
本実施形態に係る樹脂成形体は、熱可塑性樹脂と、炭素繊維と、末端長鎖アルキル変性樹脂と、を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
射出成形のシリンダ温度は、例えば180℃以上300℃以下であり、好ましくは200℃以上280℃以下である。射出成形の金型温度は、例えば30℃以上100℃以下であり、30℃以上60℃以下がより好ましい。
射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX300、住友機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
特に、本実施形態に係る樹脂成形体は、強化繊維として炭素繊維を適用しているため、より機械的強度に優れた樹脂成形体となることから、金属部品への代替用途に好適となる。
ヘキサメチレンジアミン(ジアミン成分)11.62kg(100mol)、アジピン酸(ジカルボン酸成分)14.18kg(97mol)、ステアリン酸(末端変性化合物)1.37kg(4.8mol)、触媒としてジ亜リン酸ナトリウム10g、及びイオン交換水18kgを50リットルのオートクレーブに仕込み、常圧から0.05MPaまでN2で加圧し、その後放圧させて常圧に戻した。この操作を3回行い、N2置換を行った後、攪拌下135℃、0.3MPaにて溶解させた。その後、溶解液を送液ポンプにより連続的に供給し、加熱配管で240℃まで昇温させ、1時間熱を加えた。その後、加圧反応缶に反応混合物が供給され、300℃に加熱され、缶内圧を3MPaで維持するように、水の一部を留出させ、縮合物を得た。その後、この縮合物を、熱水中に添加して洗浄した後、液体窒素で凍結してハンマーにて粉砕した。得られた樹脂粉末を120℃で12時間乾燥させ、末端に長鎖アルキル基を有する末端長鎖アルキル変性樹脂1(末端長鎖アルキル変性PA66)を得た。
得られた末端長鎖アルキル変性樹脂1の末端変性率を前述の方法にて測定したところ、80%であった。
ジカルボン酸成分をアジピン酸14.18kg(97mol)に、ジアミン成分をメタキシレンジアミン13.62kg(100mol)に、末端変性化合物をステアリン酸1.37kg(4.8mol)に、変更した以外、合成例1と同様にして末端に長鎖アルキル基を有する末端長鎖アルキル変性樹脂2(末端長鎖アルキル変性MXD6)を得た。
得られた末端長鎖アルキル変性樹脂2の末端変性率を前述の方法にて測定したところ、80%であった。
ジカルボン酸成分をアジピン酸14.18kg(97mol)に、ジアミン成分をメタキシレンジアミン13.62kg(100mol)に、末端変性化合物をデカン酸0.83kg(4.8mol)に、変更した以外、合成例1と同様にして末端に長鎖アルキル基を有する末端長鎖アルキル変性樹脂3(末端長鎖アルキル変性PA66)を得た。
得られた末端長鎖アルキル変性樹脂3の末端変性率を前述の方法にて測定したところ、80%であった。
ジカルボン酸成分をアジピン酸14.18kg(97mol)に、ジアミン成分をメタキシレンジアミン13.62kg(100mol)に、末端変性化合物をカプロン酸0.56kg(4.8mol)に、変更した以外、合成例1と同様にして末端に炭素数6のアルキル基を有する末端アルキル変性樹脂4(末端アルキル変性PA66)を得た。
得られた末端アルキル変性樹脂4の末端変性率を前述の方法にて測定したところ、80%であった。
表1〜表7に従った成分(表中の数値は部数を示す)を、2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)にて、下記の混練条件、および表1〜表7に示す溶融混練温度(シリンダ温度)で混練し、樹脂組成物のペレットを得た。なお、得られたペレットを600℃で2時間焼成し、残留した炭素繊維の平均繊維長を前述の方法で測定した。測定結果を表1〜表7に示す。
・スクリュー径:φ58mm
・回転数:300rpm
・吐出ノズル径:1mm
得られた2種の試験片を用いて、以下のような評価を行った。
評価結果を表1〜表7に示す。
得られたISO多目的ダンベル試験片について、万能試験装置(島津製作所社製、オートグラフAG−Xplus)を用いて、ISO178に準拠する方法で、曲げ弾性率を測定した。
得られたISO多目的ダンベル試験片を用い、JIS−K7111(2006年)に準拠して、評価装置(東洋精機(株)製DG−UB2)にて、23℃で、シャルピー衝撃試験よりノッチなしシャルピー衝撃強さ(kJ/m2)を測定した。
得られたD2試験片を用いて、既述の方法に従って、末端長鎖アルキル変性樹脂による被覆層の有無を確認した。
−熱可塑性樹脂−
・ポリプロピレン(ノバテック(登録商標)PP MA3、日本ポリプロ(株)製)
・ポリエチレン(ウルトゼックス20100J、(株)プライムポリマー製)
・炭素繊維A(表面処理有、チョップド炭素繊維トレカ(登録商標)、東レ(株)、平均繊維長20mm、平均直径7μm)
・炭素繊維B(表面処理無、上記チョップド炭素繊維トレカ(登録商標)、東レ(株)を溶媒浸漬し、サイジング剤を除去したもの)
・PA66(デュポン社製、101L)
・MXD6(三菱ガス化学社製、S6007)
・無水マレイン酸修飾ポリプロピレン(ユーメックス(登録商標)110TS、三洋化成工業(株)製
また、本実施例では、比較例に比べ、耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られることがわかる。
Claims (24)
- 熱可塑性樹脂と、
炭素繊維と、
アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含みかつ前記主鎖の少なくとも一方の末端が炭素数8以上のアルキル基で変性された末端長鎖アルキル変性樹脂と、
を含み、
前記炭素繊維の含有量が、樹脂組成物の全質量に対して10質量%以上40質量%以下であり、
前記熱可塑性樹脂が、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含みかつ前記主鎖の少なくとも一方の末端が炭素数8以上のアルキル基で変性された末端長鎖アルキル変性樹脂以外の熱可塑性樹脂である、樹脂組成物。 - 前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- 前記末端長鎖アルキル変性樹脂が、主鎖に前記アミド結合を含むポリアミドである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記炭素繊維の質量に対する、前記末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 相溶化剤を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである請求項8に記載の樹脂組成物。
- 前記相溶化剤の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である請求項8又は請求項9に記載の樹脂組成物。
- 前記相溶化剤の含有量が、前記末端長鎖アルキル変性樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上50質量%以下である請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂と、
炭素繊維と、
アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含みかつ前記主鎖の少なくとも一方の末端が炭素数8以上のアルキル基で変性された末端長鎖アルキル変性樹脂と、
を含み、
前記炭素繊維の含有量が、樹脂組成物の全質量に対して10質量%以上40質量%以下であり、
前記熱可塑性樹脂が、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を主鎖に含みかつ前記主鎖の少なくとも一方の末端が炭素数8以上のアルキル基で変性された末端長鎖アルキル変性樹脂以外の熱可塑性樹脂である、樹脂成形体。 - 前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項13に記載の樹脂成形体。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項13又は請求項14に記載の樹脂成形体。
- 前記末端長鎖アルキル変性樹脂が、主鎖に前記アミド結合を含むポリアミドである請求項13〜請求項15のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項13〜請求項16のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項13〜請求項17のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記炭素繊維の質量に対する、前記末端長鎖アルキル変性樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項13〜請求項18のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 相溶化剤を含む請求項13〜請求項19のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである請求項20に記載の樹脂成形体。
- 前記相溶化剤の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である請求項20又は請求項21に記載の樹脂成形体。
- 前記相溶化剤の含有量が、前記末端長鎖アルキル変性樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項20〜請求項22のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上50質量%以下である請求項20〜請求項23のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
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