JP2018104516A - 樹脂組成物、及び樹脂成形体 - Google Patents

樹脂組成物、及び樹脂成形体 Download PDF

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中山 大輔
Daisuke Nakayama
大輔 中山
宮本 剛
Takeshi Miyamoto
宮本  剛
大越 雅之
Masayuki Ogoshi
雅之 大越
守屋 博之
Hiroyuki Moriya
博之 守屋
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Abstract

【課題】耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物を提供すること。【解決手段】アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、炭素繊維と、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、エポキシ基を有するグラフトポリマーと、を含む樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、及び樹脂成形体に関する。
従来、樹脂組成物としては種々のものが提供され、各種用途に使用されている。
特に、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は、家電製品や自動車の各種部品、筐体等、また事務機器、電子電気機器の筐体などの部品に使用される。
例えば、特許文献1には、「(a)0.1〜90重量%の少なくとも1種類のポリオレフィン、(b)0.1〜50重量%の少なくとも1種類のポリアミド、(c)0.1〜15重量%の少なくとも1種類の修飾ポリオレフィン、(d)5.0〜75重量%の少なくとも1種類の強化用繊維、(e)0.1〜10重量%の少なくとも1種類の硫黄含有添加剤を含む、3mm以上の長さを有する長繊維強化ポリオレフィン構造体」が開示されている。
また、特許文献2には、「酸変性ポリオレフィン(A)ブロックおよびポリアミド(B)ブロックを有し、13C−NMRによるアミド基由来の炭素と、メチル基、メチレン基およびメチン基由来の炭素との比(α)が、0.5/99.5〜12/88であるポリマー(X)を含有してなるポリオレフィン樹脂用改質剤」が開示されている。更に、特許文献2には、「このポリオレフィン樹脂用改質剤(K)、ポリオレフィン樹脂(D)および無機繊維(E)を含有してなる無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物。」が開示されている。
特許文献3には、「炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品において、成形品中に含まれる炭素繊維は、その全含有量が0.5〜30wt%であり、更に1.5mmを超える長さの炭素繊維が0.1〜4.7wt%であることを特徴とする炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。」が開示されている。
特表2003−528956号公報 特開2014−181307号公報 特開2000−071245号公報
本発明の課題は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、炭素繊維、並びに、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂のみを含む樹脂組成物に比べて、耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物を提供することにある。
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
請求項1に係る発明は、
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、
炭素繊維と、
アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、
エポキシ基を有するグラフトポリマーと、
を含む樹脂組成物である。
請求項2に係る発明は、
前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項1に記載の樹脂組成物である。
請求項3に係る発明は、
前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が、ポリアミドである請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物である。
請求項4に係る発明は、
前記炭素繊維の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項5に係る発明は、
前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項6に係る発明は、
前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項7に係る発明は、
前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項8に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項9に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、1質量%以上50質量%以下である請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項10に係る発明は、
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、
炭素繊維と、
アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、
エポキシ基を有するグラフトポリマーと、
を含む樹脂成形体である。
請求項11に係る発明は、
前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項10に記載の樹脂成形体である。
請求項12に係る発明は、
前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が、ポリアミドである請請求項10又は請求項11に記載の樹脂成形体である。
請求項13に係る発明は、
前記炭素繊維の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
請求項14に係る発明は、
前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
請求項15に係る発明は、
前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
請求項16に係る発明は、
前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
請求項17に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項10乃至請求項16のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
請求項18に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、1質量%以上50質量%以下である請求項10乃至請求項17のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
請求項1に係る発明によれば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、炭素繊維、並びに、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂のみを含む樹脂組成物に比べて、耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項2に係る発明によれば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と炭素繊維とアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂とエポキシ基を有するグラフトポリマーとを含み、炭素繊維の平均繊維長が0.1mm未満又は5.0mm超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項3に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂としてイミダゾールを用いた場合と比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項4に係る発明によれば、炭素繊維の含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項5に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は100質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項6に係る発明によれば、エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は50質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項7に係る発明によれば、エポキシ基を有するグラフトポリマーを含み、かつエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部未満又は50質量部超えの場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項8に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が0.1質量%未満又は200質量%超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項9に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が1質量%未満又は50質量%超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項10に係る発明によれば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、炭素繊維、並びに、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂のみを含む場合に比べて、耐衝撃性に優れた樹脂成形体が提供される。
請求項11に係る発明によれば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と炭素繊維とアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂とエポキシ基を有するグラフトポリマーとを含み、炭素繊維の平均繊維長が0.1mm未満又は5.0mm超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項12に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂としてイミダゾールを用いた場合と比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項13に係る発明によれば、炭素繊維の含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項14に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は100質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項15に係る発明によれば、エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は50質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項16に係る発明によれば、エポキシ基を有するグラフトポリマーを含み、かつエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部未満又は50質量部超えの場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項17に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が0.1質量%未満又は200質量%超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項18に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が1質量%未満又は50質量%超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
本実施形態に係る樹脂成形体の要部の一例を説明するための模式図である。
以下、本発明の樹脂組成物及び樹脂成形体の一例である実施形態について説明する。
[樹脂組成物]
本実施形態に係る樹脂組成物は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、炭素繊維と、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、エポキシ基を有するグラフトポリマーと、を含む。
以下、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂を、「特定樹脂」と称することがある。
また、本実施形態において、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、並びに、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂は、エポキシ基を有しない樹脂である。
近年では、機械的強度に優れた樹脂成形体を得るために、母材(マトリックス)としての熱可塑性樹脂と強化繊維とを含む樹脂組成物が用いられている。
このような樹脂組成物では、強化繊維と熱可塑性樹脂との親和性が低いと、この両者の界面に空間が生じ、かかる界面における密着性が低下することがある。
特に、樹脂組成物中の強化繊維として炭素繊維を用いた場合には、ガラス繊維等に比べ高い機械的強度を求められるため、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面における密着性の低下は、機械的強度、特に耐衝撃性の低下を招くことがある。
特に、樹脂組成物中の強化繊維として炭素繊維を用いた場合には、ガラス繊維等に比べ高い機械的強度を求められるが、炭素繊維表面の水酸基、カルボキシル基など熱可塑性樹脂との接着に寄与する極性基が、ガラス繊維に比べて少ないため、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面における密着性は低下する。その結果、機械的強度、特に耐衝撃性は、炭素繊維の配合の割に高まり難い。特に、短時間に大きな変位をもたらす衝撃荷重を加えた場合、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面での剥離が進行しやすいため、耐衝撃性の低下は大きくなる傾向がある。
そこで、本実施形態に係る樹脂組成物は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、炭素繊維と、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、エポキシ基を有するグラフトポリマーと、の4成分を含む。
この構成とすることで、耐衝撃性に優れる樹脂成形体が得られる。このような効果が得られる作用については明確ではないが、以下のように推測される。
本実施形態に係る樹脂組成物から樹脂成形体を得る際、かかる樹脂組成物を熱溶融すると、エポキシ基を有するグラフトポリマーと炭素繊維とが接触する。これにより、炭素繊維の表面に僅かながら存在する極性基(例えば、カルボキシ基及びヒドロキシ基)と、エポキシ基を有するグラフトポリマーのエポキシ基とが反応して共有結合を形成し、炭素繊維の表面の少なくとも一部をエポキシ基を有するグラフトポリマーが被覆した状態となる。エポキシ基を有するグラフトポリマーが表面の少なくとも一部に被覆した炭素繊維は、被覆していない炭素繊維に比べ、炭素繊維とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との界面における密着性が向上し、熱溶融混合により炭素繊維が分散した樹脂成形体が得られ、得られる樹脂成形体の耐衝撃性に優れる。
本実施形態に係る樹脂組成物から樹脂成形体を得る際、かかる樹脂組成物を熱溶融混合すると、エポキシ基を有するグラフトポリマーが相溶化剤として機能し、母材としての熱可塑性樹脂であるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とエポキシ基を有するグラフトポリマーとが溶融し、また、エポキシ基を有するグラフトポリマーの分子内の一部と特定樹脂の分子内に含まれるアミド結合又はイミド結合とで両者が相溶して、特定樹脂が樹脂組成物中で分散することとなる。
この状態の中で、特定樹脂が炭素繊維と接触すると、特定樹脂の分子鎖に沿って多数含まれるアミド結合又はイミド結合と、炭素繊維の表面に僅かながら存在する極性基と、が親和力(引力及び水素結合)にて複数の箇所で物理的に接着する。また、一般的にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と特定樹脂とは相溶性が低いため、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と特定樹脂との間の斥力により、特定樹脂と炭素繊維との接触頻度が上がり、その結果として、特定樹脂の炭素繊維に対する接着量や接着面積が上がる。このように、炭素繊維の周囲に特定樹脂による被覆層が形成される。
そして、被覆層を形成する特定樹脂もエポキシ基を有するグラフトポリマーの分子内の一部のエポキシ基と化学反応、極性基同士で静電的相互作用を行うことで相溶されるため、このエポキシ基を有するグラフトポリマーがアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とも相溶することで、引力と斥力とが平衡状態が形成され、特定樹脂による被覆層は、薄く、かつ均一に近い状態で形成されることとなる。特に、炭素繊維の表面に存在するカルボキシ基と特定樹脂の分子内に含まれるアミド結合又はイミド結合との親和性は高いため、炭素繊維の周囲には特定樹脂による被覆層が形成され易く、薄膜で且つ均一性に優れる被覆層になると考えられる。
なお、被覆層は炭素繊維の周囲全体を被覆していることが好ましいが、一部被覆されていない部分があってもよい。
以上のことから、本実施形態に係る樹脂組成物は、炭素繊維とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との界面の密着性が高まり、また、分散性にも優れ、機械的強度、特に耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られると推測される。
ここで、本実施形態に係る樹脂組成物及びそれにより得られる樹脂成形体は、樹脂組成物(例えばペレット)の製造のときの熱溶融混練、及び射出成形により、炭素繊維の周囲に特定樹脂による被覆層が形成され、当該被覆層の厚さが5nm以上700nm以下となる構造を有することが好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物において、特定樹脂による被覆層の厚さは、5nm以上700nm以下であり、耐衝撃性の更なる向上の点から、10nm以上650nm以下が好ましい。被覆層の厚みを5nm以上(特に10nm以上)とすると、耐衝撃性が向上し、被覆層の厚みを700nm以下とすると、被覆層を介した炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面が脆弱となることを抑え、耐衝撃性の低下が抑制される。
被覆層の厚さは、次の方法により測定された値である。測定対象物を液体窒素中で破断させ、電子顕微鏡(Keyence社製VE−9800)を用いて、その断面を観察する。その断面において、炭素繊維の周囲に被覆する被覆層の厚みを100箇所計測し、その平均値として算出する。
なお、被覆層の確認は、上記断面観察により実施する。
なお、本実施形態に係る樹脂組成物(及びその樹脂成形体)では、例えば、かかる被覆層とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との間を相溶化剤が一部相溶する構成をとる。
具体的には、例えば、特定樹脂による被覆層と母材であるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との間には、相溶化剤の層が介在していることがよい(図1参照)。つまり、被覆層の表面に相溶化剤の層が形成され、この相溶化剤の層を介して、被覆層とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が隣接していることがよい。相溶化剤の層は被覆層に比べ薄く形成されるが、相溶化剤の層の介在により、被覆層とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との密着性(接着性)が高まり、機械的強度、特に耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られ易くなる。なお、図1中、ABSはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を示し、CFが炭素繊維を示し、CLは被覆層、CAはエポキシ基を有するグラフトポリマーの層を示している。
特に、エポキシ基を有するグラフトポリマーの層は、被覆層とは結合(水素結合、エポキシ基を有するグラフトポリマーと特定樹脂との官能基の反応による共有結合等)し、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とは相溶した状態で、被覆層とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の間に介在していることがよい。
ここで、エポキシ基を有するグラフトポリマーの層が、被覆層とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との間に介在していることを確認する方法は、次の通りである。
解析装置として顕微赤外分光分析装置(日本分光(株)製IRT−5200)を用いる。例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(以下、「ABS」とも称す。)、特定樹脂としてPA66、エポキシ基を有するグラフトポリマー(以下、「EPP」とも称す。)からなる樹脂成型体よりスライス片を切り出し、その断面を観察する。炭素繊維断面の周りの被覆層部についてIRマッピングを行い、EPPのエポキシ基由来ピーク(925cm−1乃至900cm−1)、及び、エポキシ基と特定樹脂のカルボニル基との反応により生成する水酸基由来ピーク(3300cm−1)を確認することにより、被覆層とABSとの間にエポキシ基を有するグラフトポリマーの層(結合層)が介在していることが確認できる。
以下、本実施形態に係る樹脂組成物の各成分の詳細について説明する。
−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体−
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂とも称す)は、樹脂組成物の母材であり、炭素繊維により強化される樹脂成分をいう(マトリックス樹脂とも呼ばれる)。
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体としては、特に制限されるものではなく、例えば、グラフト法で製造されたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体でも、ポリマーブレンド法で製造されたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体でもよい。
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の分子量は、特に限定されず、組成、成形条件や樹脂成形体に用途等に応じて決定すればよい。例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万以上30万以下の範囲が好ましく、1万以上20万以下の範囲がより好ましい。
また、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体のガラス転移温度(Tg)又は融点(Tm)は、上記分子量と同様、特に限定されず、組成、成形条件や樹脂成形体に用途等に応じて決定すればよい。例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の融点(Tm)は、90℃以上150℃以下の範囲が好ましく、100℃以上125℃以下の範囲がより好ましい。
なお、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の重量平均分子量(Mw)及び融点(Tm)は、以下のようにして測定された値を示す。
即ち、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、以下の条件で行う。GPC装置としては高温GPCシステム「HLC−8321GPC/HT」、溶離液としてo−ジクロロベンゼンを用いる。ポリオレフィンを一旦高温(140℃以上150℃以下の温度)でo−ジクロロベンゼンに溶融・ろ過し、ろ液を測定試料とする。測定条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、RI検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作成する。
また、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の含有量は、樹脂成形体の用途等に応じて、決定すればよいが、例えば、樹脂組成物の全質量に対して、5質量%以上95質量%以下が好ましく、10質量%以上95質量%以下がより好ましく、20質量%以上95質量%以下が更に好ましい。
−炭素繊維−
炭素繊維としては、公知の炭素繊維が用いられ、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維のいずれもが用いられる。
炭素繊維は、公知の表面処理が施されたものであってもよい。
炭素繊維の表面処理としては、例えば、酸化処理、サイジング処理が挙げられる。
炭素繊維の形態は、特に限定されず、樹脂成形体の用途等に応じて選択すればよい。炭素繊維の形態としては、例えば、多数の単繊維から構成される繊維束、繊維束を集束したもの、繊維を二次元又は三次元に織った織物等が挙げられる。
炭素繊維の繊維径、繊維長等は、特に限定されず、樹脂成形体の用途等に応じて選択すればよい。
ただし、炭素繊維の繊維長が短くても、耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られるため、炭素繊維の平均繊維長は、0.1mm以上5.0mm以下(好ましくは0.2mm以上2.0mm以下)であってもよい。
また、炭素繊維の平均直径は、例えば、5.0μm以上10.0μm以下(好ましくは6.0μm以上8.0μm以下)であってもよい。
ここで、炭素繊維の平均繊維長の測定方法は、次の通りである。炭素繊維を光学顕微鏡によって倍率100で観察し、炭素繊維の長さを測定する。そして、この測定を炭素繊維200個について行い、その平均値を炭素繊維の平均繊維長とする。
一方、炭素繊維の平均直径の測定方法は、次の通りである。炭素繊維の長さ方向に直交する断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)によって倍率1000倍で観察し、炭素繊維の直径を測定する。そして、この測定を炭素繊維100個について行い、その平均値を炭素繊維の平均直径とする。
なお、炭素繊維の繊維長が短くなると、炭素繊維の樹脂強化能が低下する傾向がある。特に、近年のリサイクル化の要望により、炭素繊維で強化された樹脂成形体を粉砕して再利用することも進められており、樹脂成形体の粉砕時に炭素繊維の繊維長が短くなることが多い。また、樹脂組成物を製造するときの熱溶融混練時に炭素繊維の繊維長が短くなることもある。そのため、繊維長が短くなった炭素繊維を含む樹脂組成物により樹脂成形体を成形すると、機械的強度、特に耐衝撃性が低下する傾向が高くなる。
しかし、炭素繊維を含む樹脂成形体を粉砕し、炭素繊維が短繊維化されたリサイクル品を原料として使用したり、熱溶融混練時に炭素繊維が短繊維化しても、本実施形態に係る樹脂組成物は、耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られるため有用である。
炭素繊維としては、市販品を用いてもよい。
PAN系炭素繊維の市販品としては、東レ(株)製の「トレカ(登録商標)」、東邦テナックス(株)製の「テナックス」、三菱レイヨン(株)製の「パイロフィル(登録商標)」等が挙げられる。その他、PAN系炭素繊維の市販品としては、Hexcel社製、Cytec社製,Dow−Aksa社製、台湾プラスチック社製,SGL社製の市販品も挙げられる。
ピッチ系炭素繊維の市販品としては、三菱レイヨン(株)製の「ダイリアード(登録商標)」、日本グラファイトファイバー(株)製の「GRANOC」、(株)クレハ製の「クレカ」等が挙げられる。その他、ピッチ系炭素繊維の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製、Cytec社製の市販品も挙げられる。
なお、炭素繊維は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
炭素繊維の含有量は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、1質量部以上180質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上150質量部以下であることが更に好ましい。
炭素繊維がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上含まれることで、樹脂組成物の強化が図られ、また、炭素繊維の含有量を、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し200質量部以下とすることで、樹脂成形体を得る際の成形性が良好になる。
なお、炭素繊維以外の強化繊維を用いる場合、強化繊維の全質量に対して80質量%以上を炭素繊維とすることが好ましい。
ここで、以降、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対する含有量(質量部)は、「phr(per hundred resin)と略記することがある。
この略記を使用した場合、上記炭素繊維の含有量は、0.1phr以上200phr以下となる。
−イミド結合及びアミド結合の少なくとも一方を含む樹脂(特定樹脂)−
特定樹脂は、特定の部分構造を含み、前述したように、炭素繊維の周囲を被覆しうる樹脂である。
この特定樹脂について、詳細に説明する。
特定樹脂は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との相溶性が低い樹脂、具体的にはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とは溶解度パラメータ(SP値)が異なる樹脂であることが好ましい。
ここで、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と特定樹脂とのSP値の差としては、両者間の相溶性、両者間の斥力の点から、3以上が好ましく、3以上6以下がより好ましい。
ここでいうSP値とは、Fedorの方法により算出された値である、具体的には、溶解度パラメータ(SP値)は、例えば、Polym.Eng.Sci.,vol.14,p.147(1974)の記載に準拠し、下記式によりSP値を算出する。
式:SP値=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi)
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm/mol)、Δei:それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:それぞれの原子又は原子団のモル体積)
なお、溶解度パラメータ(SP値)は、単位として(cal/cm1/2を採用するが、慣行に従い単位を省略し、無次元で表記する。
また、特定樹脂は、分子内にイミド結合及びアミド結合の少なくとも一方を含む。
イミド結合又はアミド結合を含むことで、炭素繊維の表面に存在する極性基との間で親和性が発現する。
特定樹脂の具体的な種類としては、イミド結合及びアミド結合の少なくとも一方を主鎖に含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が挙げられ、具体的には、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミノ酸等が挙げられる。
特定樹脂としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との相溶性が低く、SP値が異なる方が好ましいため、母材であるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とは種類の異なるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を用いることが好ましい。
中でも、耐衝撃性の更なる向上の点、炭素繊維との密着性に優れる点から、ポリアミド(PA)が好ましい。
ポリアミドとしては、ジカルボン酸とジアミンとを共縮重合したポリアミド、ラクタムを開環重縮合したポリアミド、ジカルボン酸とジアミンとラクタムとを縮合したポリアミドが挙げられる。つまり、ポリアミドとしては、ポリアミドは、ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位、及びラクタムが開環した構造単位の少なくも一方を有するポリアミドが挙げられる。
ポリアミドは、ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位、又はラクタムが開環した構造単位であって、アラミドを除く芳香環を含む構造単位を有するポリアミド、芳香環を含まない構造単位を有するポリアミド、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドのいずれであってもよいが、耐衝撃性向上の観点から、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドであることが好ましい。
特に、ポリアミドとして、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドを適用すると、炭素繊維とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との親和性が共に良好となる。ここで、芳香環を含む構造単位のみ有するポリアミドは、芳香環を含まない構造単位のみを有するポリアミドに比べ、炭素繊維と親和性が高く、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とは親和性が低い傾向がある。芳香環を含まない構造単位のみを有するポリアミドは、芳香環を含む構造単位のみ有するポリアミドに比べ、炭素繊維と親和性が低く、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とは親和性が高い傾向がある。そのため、両構造単位を有するポリアミドを適用することで、炭素繊維とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との親和性が共に良好となり、ポリアミドの被覆層によって炭素繊維とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との界面の密着性がさらに高まることになる。そのため、機械的強度、特に耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られやすくなる。
また、ポリアミドとして、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドを適用すると、溶融粘度が低下し、成形性(例えば射出成形性)も向上する。そのため、外観品質の高い樹脂成形体が得られ易くなる。
なお、ポリアミドとして、アラミド構造単位のみを有するポリアミドを適用すると、ポリアミドが溶融し得る高い温度では、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の熱劣化を引き起こす。また、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の熱劣化が引き起こされる温度では、ポリアミドが十分に溶融できず、成形性(例えば射出成形性)が悪化し、得られる樹脂成形体の外観品質及び機械的性能が低下する。
なお、芳香環とは、5員環以上の単環の芳香環(シクロペンタジエン、ベンゼン)、及び5員環以上の複数の単環の芳香環が縮合した縮合環(ナフタレン等)を示す。芳香環は複素環(ピリジン等)も含む。
また、アラミド構造単位とは、芳香環を含むジカルボン酸と芳香環を含むジアミンとの縮重合反応した構造単位を示す。
ここで、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位としては、例えば、下記構造単位(1)及び(2)の少なくとも一方が挙げられる。
・構造単位(1):−(−NH−Ar−NH−CO−R−CO−)−
(構造単位(1)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(2):−(−NH−R−NH−CO−Ar−CO−)−
(構造単位(2)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
一方、芳香環を含まない構造単位としては、例えば、下記構造単位(3)及び(4)の少なくとも一方が挙げられる。
・構造単位(3):−(−NH−R31−NH−CO−R32−CO−)−
(構造単位(3)中、R31は芳香環を含まない2価の有機基を示す。R32は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(4):−(−NH−R−CO−)−
(構造単位(4)中、Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す)
なお、構造式(1)乃至(3)において、各符号が示す「2価の有機基」は、ジカルボン酸、ジアミン、又はラクタムが有する2価の有機基に由来する有機基である。具体的には、例えば、構造単位(1)において、Arが示す「芳香環を含む2価の有機基」は、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基を示し、Rが示す「芳香環を含まない2価の有機基」は、ジカルボン酸から2つのカルボキシ基を除いた残基を示す。また、例えば、構造単位(4)において、Rが示す「芳香環を含まない2価の有機基」は、ラクタムが開環したとき「NH基」と「CO基」とで挟まれている有機基を示す。
ポリアミドとしては、共重合ポリアミド、混合ポリアミドのいずれであってもよい。ポリアミドは、共重合ポリアミドと混合ポリアミドとを併用しもよい。これらの中でも、ポリアミドとしては、耐衝撃性の更なる向上の点から、混合ポリアミドが好ましい。
共重合ポリアミドは、例えば、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位を有する第1ポリアミドと、芳香環を含まない構造単位を有する第2ポリアミドと、を共重合した共重合ポリアミドである。
混合ポリアミドは、例えば、芳香環を有する第1ポリアミドと、芳香環を有さない第2ポリアミドと、を含む混合ポリアミドである。
なお、以下、便宜上、第1ポリアミドを「芳香族ポリアミド」、第2ポリアミドを「脂肪族ポリアミド」と称することがある。
共重合ポリアミドにおいて、芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミドとの割合(芳香族ポリアミド/脂肪族ポリアミド)は、耐衝撃性の更なる向上の点から、質量比で20/80以上99/1以下(好ましくは50/50以上96/4以下)がよい。
一方、混合ポリアミドにおいて、芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミド(芳香族ポリアミド/脂肪族ポリアミド)との割合は、耐衝撃性の更なる向上の点から、質量比で20/80以上99/1以下(好ましくは50/50以上96/4以下)がよい。
芳香族ポリアミドにおいて、芳香環を含む構造単位の割合は、全構造単位に対して80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%以上)がよい。
一方、脂肪族ポリアミドにおいて、芳香環を含まない構造単位の割合は、全構造単位に対して80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%以上)がよい。
芳香族ポリアミドは、芳香環を含むジカルボン酸と芳香環を含まないジアミンとの縮重合体、芳香環を含まないジカルボン酸と芳香環を含むジアミンとの縮重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリアミドは、芳香環を含まないジカルボン酸と芳香環を含まないジアミンとの縮重合体、芳香環を含まないラクタムの開環重縮合体等が挙げられる。
ここで、芳香環を含むジカルボン酸としては、フタル酸(テレフタル酸、イソフタル酸等)、ビフェニルジカルボン酸等が例示される。
芳香環を含まないジカルボン酸としては、シュウ酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸等が例示される。
芳香環を含むジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル等が例示される。
芳香環を含まないジアミンとしては、エチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、デカメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が例示される。
芳香環を含まないラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム等が例示される。
なお、各ジカルボン酸、各ジアミン、各ラクタムは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
芳香族ポリアミドとしては、MXD6(アジピン酸とメタキシレンジアミンとの縮重合体)、ナイロン6T(テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの縮重合体)、ナイロン6I(イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの重縮合体)、ナイロン9T(テレフタル酸とナンジアミンとの重縮合体)、ナイロンM5T(テレフタル酸とメチルペンタジアミンとの重縮合体)等が例示される。
芳香族ポリアミドの市販品としては、三菱ガス化学社製「MXD6」、クラレ社製「GENESTAR(登録商標):PA6T」、クラレ社製「GENESTAR(登録商標):PA9T」、東洋紡社製「TY−502NZ:PA6T」等が例示される。
脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン6(ε-カプロラクタムの開環重縮合体)、ナイロン11(ウンデカンラクタムの開環重縮合体)、ナイロン12(ラウリルラクタムの開環重縮合体)、ナイロン66(アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの縮重合体)、ナイロン610(セバシン酸とヘキサメチレンジアミンとの縮重合体)等が例示される。
脂肪族ポリアミドの市販品としては、Dupont社製「ザイテル(登録商標):7331J(PA6)」、Dupont社製「ザイテル(登録商標):101L(PA66)」
ポリアミド(共重合ポリアミド、混合ポリアミド)の芳香環の割合は、耐衝撃性の更なる向上の点から、1質量%以上55質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
なお、混合ポリアミドの芳香環の割合は、芳香族ポリアミド及び脂肪族ポリアミド全体に対する芳香環の割合とする、
ここで、ポリアミドの芳香環の割合は、ポリアミドに含まれる「単環の芳香環、単環の芳香環が縮合した縮合環」の合計の割合を意味する。なお、ポリアミドの芳香環の割合の算出において、単環の芳香環、単環の芳香環が縮合した縮合環に置換した置換基は除かれる。
つまり、ポリアミドの芳香環の割合は、ポリアミドの「ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位」、又は「ラクタムが開環した構造単位」の分子量から、この構造単位中に含まれる芳香環(置換基を有する場合、置換基を除く芳香環)の分子量の割合(質量%)で算出する。
特定樹脂の物性について説明する。
特定樹脂の分子量は、特に限定されず、樹脂組成物中に併存するアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体よりも熱溶融し易ければよい。特定樹脂がポリアミドであれば、例えば、ポリアミドの重量平均分子量は、1万以上30万以下の範囲が好ましく、1万以上10万以下の範囲がより好ましい。
また、特定樹脂のガラス転移温度又は溶融温度(融点)は、上記分子量と同様、特に限定されず、樹脂組成物中に併存するアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体よりも熱溶融し易ければよい。特定樹脂がポリアミドであれば、例えば、ポリアミド(共重合ポリアミド、混合ポリアミドの各ポリアミド)の融点(Tm)は、100℃以上400℃以下の範囲が好ましく、150℃以上350℃以下の範囲がより好ましい。
特定樹脂の含有量は、耐衝撃性の更なる向上の点から、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上90質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上80質量部以下であることが更に好ましい。
特定樹脂の含有量が上記の範囲であることで、炭素繊維との親和性が高まり、耐衝撃性の向上が図られる。
特に、特定樹脂をアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対して20質量部超え100質量部以下といった範囲で多く含ませると、特定樹脂量に対して相対的にエポキシ基を有するグラフトポリマー量が少なくなり、特定樹脂がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体中に広がり難くなり、炭素繊維の周囲に局在化する傾向が高まる。それにより、繊維長が短い炭素繊維の周囲全体にわたって、特定樹脂による被覆層がある程度厚膜化しつつ均一に近い状態で形成されると考えられる。そのため、炭素繊維とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との界面の密着性が高まり、機械的強度、特に耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られやすくなる。
特定樹脂の含有量は、炭素繊維との親和性を効果的に発現させる点から、前述した炭素繊維の含有量と比例させることが好ましい。
炭素繊維の質量に対する特定樹脂の含有量としては、0.1質量%以上1,000質量%以下であることが好ましく、1質量%以上150質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上120質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対する特定樹脂の含有量が、0.1質量%以上であると炭素繊維と特定樹脂との親和性が高まり易くなり、1,000質量%以下であると樹脂流動性が向上する。
−エポキシ基を有するグラフトポリマー−
エポキシ基を有するグラフトポリマーとしては、エポキシ基を有し、かつグラフト鎖を有する高分子化合物であればよいが、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と同じ構造を有し、かつ、分子内の一部に特定樹脂と親和性を有する部位を含むものが好ましい。
エポキシ基を有するグラフトポリマーは、得られる樹脂成形体の耐衝撃性の観点から、アクリル樹脂鎖及びスチレン樹脂鎖よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有する樹脂であることが好ましく、アクリル樹脂鎖及びスチレン樹脂鎖よりなる群から選ばれた構造を少なくとも有するグラフトポリマーであることがより好ましく、アクリル樹脂鎖を有するグラフトポリマーであることが更に好ましい。
また、得られる樹脂成形体の耐衝撃性の観点から、前記アクリル樹脂鎖として、少なくともポリメチルメタクリレート鎖を有することが好ましい。
エポキシ基を有するグラフトポリマーにおけるエポキシ基の位置は、特に制限はなく、例えば、主鎖であっても、側鎖であっても、グラフト鎖であってもよい。
樹脂にエポキシ基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応によりエポキシ基を導入する方法、エポキシ基を有するモノマーを共重合する方法、エポキシ基を有するプレポリマーをグラフト鎖として導入する方法等が挙げられる。
エポキシ基を有するグラフトポリマーとしては、市販品を用いてもよい。
エポキシ基を有するグラフトポリマーとしては、東亞合成(株)製のレゼダ(登録商標)シリーズ(GP−301、GP−310S)等が挙げられる。
エポキシ基を有するグラフトポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、加工性の点から、0.5万以上10万以下の範囲が好ましく、0.5万以上8万以下の範囲がより好ましい。
また、エポキシ基を有するグラフトポリマーのエポキシ価(樹脂1gあたりのエポキシ基当量)は、10mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることがより好ましい。
なお、エポキシ価は、JIS K 7236:2001に準拠して測定するものとする。
エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上30質量部以下であることが更に好ましい。
エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量は、特定樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上50質量部以下であることが更に好ましい。
エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が上記の範囲であることで、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と特定樹脂との親和性が高められ、耐衝撃性の向上が図られる。
エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と特定樹脂との親和性を高める点から、特定樹脂の含有量と比例させる(炭素繊維の含有量に間接的に比例させる)ことが好ましい。
炭素繊維の質量に対するエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量としては、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対するエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、1質量%以上であると炭素繊維と特定樹脂との親和性が得られ易く、50質量%以下(特に30質量%以下)であると変色や劣化の原因となる未反応官能基の残存が抑制される。
−その他の成分−
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分の他、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、難燃剤、難燃助剤、加熱された際の垂れ(ドリップ)防止剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、炭素繊維以外の補強剤(タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)等の周知の添加剤が挙げられる。
その他の成分は、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0質量部以上10質量部以下がよく、0質量部以上5質量部以下がより好ましい。ここで、「0質量部」とはその他の成分を含まない形態を意味する。
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分を溶融混練することにより製造される。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段が用いられ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
溶融混練の際の温度(シリンダ温度)としては、樹脂組成物を構成する樹脂成分の融点等に応じて、決定すればよい。
特に、本実施形態に係る樹脂組成物は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、炭素繊維と、特定樹脂と、エポキシ基を有するグラフトポリマーと、を溶融混練する工程を含む製造方法により得られることが好ましい。アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、炭素繊維と、特定樹脂と、エポキシ基を有するグラフトポリマーと、を一括して溶融混練すると、炭素繊維の周囲に特定樹脂による被覆層が薄く且つ均一に近い状態で形成され易くなり、耐衝撃性が高まる。
[樹脂成形体]
本実施形態に係る樹脂成形体は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、炭素繊維と、特定樹脂と、エポキシ基を有するグラフトポリマーと、を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
なお、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を調製しておき、この樹脂組成物を成形して得られたものであってもよいし、炭素繊維以外の成分を含む組成物を調製し、成形時に、かかる組成物と炭素繊維とを混合して得られたものであってもよい。
成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
本実施形態に係る樹脂成形体の成形方法は、形状の自由度が高い点で、射出成形が好ましい。
射出成形のシリンダ温度は、例えば180℃以上300℃以下であり、好ましくは200℃以上280℃以下である。射出成形の金型温度は、例えば30℃以上100℃以下であり、30℃以上60℃以下がより好ましい。
射出成形は、例えば、日精樹脂工業(株)製NEX150、日精樹脂工業(株)製NEX300、住友重機械工業(株)製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、事務機器、家電製品、自動車内装材、容器などの用途に好適に用いられる。より具体的には、電子・電気機器や家電製品の筐体;電子・電気機器や家電製品の各種部品;自動車の内装部品;CD−ROMやDVD等の収納ケース;食器;飲料ボトル;食品トレイ;ラップ材;フィルム;シート;などである。
特に、本実施形態に係る樹脂成形体は、強化繊維として炭素繊維を適用しているため、より機械的強度に優れた樹脂成形体となることから、金属部品への代替用途に好適となる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
[実施例1乃至13、及び、比較例1乃至7]
表1又は表2に従った成分(表中の数値は部数を示す)を、2軸混練装置(東芝機械(株)製、TEM58SS)にて、下記の混練条件、及び、表1又は表2に示す溶融混練温度(シリンダ温度)で混練し、樹脂組成物のペレットを得た。なお、得られたペレットを600℃で2時間焼成し、残留した炭素繊維の平均繊維長を前述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
−成形条件−
・スクリュー径:φ58mm
・回転数:300rpm
・吐出ノズル径:1mm
得られたペレットを、射出成形機(日精樹脂工業(株)製、NEX150)にて、表1又は表2に示す射出成形温度(シリンダ温度)、金型温度50℃で、ISO多目的ダンベル試験片(ISO527引張試験、ISO178曲げ試験に対応)(試験部厚さ4mm、幅10mm)と、D2試験片(長さ60mm、幅60mm、厚み2mm)と、を成形した。
[評価]
得られた2種の試験片を用いて、以下のような評価を行った。
評価結果を表1及び表2に示す。
−曲げ弾性率−
得られたISO多目的ダンベル試験片について、万能試験装置((株)島津製作所製、オートグラフAG−Xplus)を用いて、ISO178に準拠する方法で、曲げ弾性率を測定した。
−耐衝撃強度(耐衝撃性)−
得られたISO多目的ダンベル試験片をノッチ加工したもの(板厚4mm)を用い、ISO179に規定の方法に従って衝撃試験装置(東洋精機社製、DG−5)によりシャルピー衝撃強度(kJ/m)を測定した。測定値が大きい程、耐衝撃強度が高く、耐衝撃性に優れる。
−被覆層の有無−
得られたD2試験片を用いて、既述の方法に従って、特定樹脂による被覆層の有無を確認した。
なお、表1及び表2に記載の材料種の詳細は、以下の通りである。
−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)−
・トヨラック700−314(ABS樹脂、トヨラック(登録商標)700−314、東レ(株)製、融点120℃)
・ASHT−18T(短繊維である炭素繊維18質量%配合ABS樹脂、東レ(株)製)
−炭素繊維−
・炭素繊維A(表面処理有、チョップド炭素繊維トレカ(登録商標)、東レ(株)製、平均繊維長20mm、平均直径7μm)
・炭素繊維B(表面処理無、前記チョップド炭素繊維トレカ(登録商標)(東レ(株)製)を溶媒浸漬し、サイジング剤を除去したもの)
−特定樹脂:脂肪族PA(脂肪族ポリアミド)−
・PA6(ナイロン6、ザイテル(登録商標)7331J、Dupont社製)
・PA66(ナイロン66、101L、Dupont社製)
−特定樹脂:芳香族PA(芳香族ポリアミド)−
・MXD6(MXD6、三菱ガス化学(株)製)
・PA9T(ナイロン9T、GENESTAR PA9T、(株)クラレ製)
−エポキシ基を有するグラフトポリマー−
・エポキシグラフトポリマー(レゼダ(登録商標)GP−301、東亞合成(株)製、ポリメチルメタクリレート(PMMA)主鎖、エポキシ価:34mgKOH/g樹脂)
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られることがわかる。
なお、各実施例で作製した成形体を既述方法により分析したところ、被覆層とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との間に、使用したエポキシ基を有するグラフトポリマーの層が介在していること(被覆層の表面にエポキシ基を有するグラフトポリマーの層が形成されていること)が確認された。

Claims (18)

  1. アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、
    炭素繊維と、
    アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、
    エポキシ基を有するグラフトポリマーと、
    を含む樹脂組成物。
  2. 前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が、ポリアミドである請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記炭素繊維の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 前記炭素繊維の質量に対する、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. 前記炭素繊維の質量に対する、前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、1質量%以上50質量%以下である請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  10. アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、
    炭素繊維と、
    アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、
    エポキシ基を有するグラフトポリマーと、
    を含む樹脂成形体。
  11. 前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項10に記載の樹脂成形体。
  12. 前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が、ポリアミドである請請求項10又は請求項11に記載の樹脂成形体。
  13. 前記炭素繊維の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  14. 前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  15. 前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  16. 前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  17. 前記炭素繊維の質量に対する、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項10乃至請求項16のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  18. 前記炭素繊維の質量に対する、前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、1質量%以上50質量%以下である請求項10乃至請求項17のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
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