JP2018104516A - 樹脂組成物、及び樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は、家電製品や自動車の各種部品、筐体等、また事務機器、電子電気機器の筐体などの部品に使用される。
特許文献3には、「炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品において、成形品中に含まれる炭素繊維は、その全含有量が0.5〜30wt%であり、更に1.5mmを超える長さの炭素繊維が0.1〜4.7wt%であることを特徴とする炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。」が開示されている。
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、
炭素繊維と、
アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、
エポキシ基を有するグラフトポリマーと、
を含む樹脂組成物である。
前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項1に記載の樹脂組成物である。
前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が、ポリアミドである請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物である。
前記炭素繊維の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
前記炭素繊維の質量に対する、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
前記炭素繊維の質量に対する、前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、1質量%以上50質量%以下である請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、
炭素繊維と、
アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、
エポキシ基を有するグラフトポリマーと、
を含む樹脂成形体である。
前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項10に記載の樹脂成形体である。
前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が、ポリアミドである請請求項10又は請求項11に記載の樹脂成形体である。
前記炭素繊維の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
前記炭素繊維の質量に対する、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項10乃至請求項16のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
前記炭素繊維の質量に対する、前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、1質量%以上50質量%以下である請求項10乃至請求項17のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
請求項2に係る発明によれば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と炭素繊維とアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂とエポキシ基を有するグラフトポリマーとを含み、炭素繊維の平均繊維長が0.1mm未満又は5.0mm超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項3に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂としてイミダゾールを用いた場合と比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項4に係る発明によれば、炭素繊維の含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項5に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は100質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項6に係る発明によれば、エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は50質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項7に係る発明によれば、エポキシ基を有するグラフトポリマーを含み、かつエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部未満又は50質量部超えの場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項8に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が0.1質量%未満又は200質量%超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項9に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が1質量%未満又は50質量%超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項11に係る発明によれば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と炭素繊維とアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂とエポキシ基を有するグラフトポリマーとを含み、炭素繊維の平均繊維長が0.1mm未満又は5.0mm超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項12に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂としてイミダゾールを用いた場合と比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項13に係る発明によれば、炭素繊維の含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項14に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は100質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項15に係る発明によれば、エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部未満又は50質量部超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項16に係る発明によれば、エポキシ基を有するグラフトポリマーを含み、かつエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部未満又は50質量部超えの場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項17に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するアミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が0.1質量%未満又は200質量%超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
請求項18に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が1質量%未満又は50質量%超えである場合に比べ、耐衝撃性により優れた樹脂成形体が提供される。
本実施形態に係る樹脂組成物は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、炭素繊維と、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、エポキシ基を有するグラフトポリマーと、を含む。
以下、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂を、「特定樹脂」と称することがある。
また、本実施形態において、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、並びに、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂は、エポキシ基を有しない樹脂である。
このような樹脂組成物では、強化繊維と熱可塑性樹脂との親和性が低いと、この両者の界面に空間が生じ、かかる界面における密着性が低下することがある。
特に、樹脂組成物中の強化繊維として炭素繊維を用いた場合には、ガラス繊維等に比べ高い機械的強度を求められるため、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面における密着性の低下は、機械的強度、特に耐衝撃性の低下を招くことがある。
特に、樹脂組成物中の強化繊維として炭素繊維を用いた場合には、ガラス繊維等に比べ高い機械的強度を求められるが、炭素繊維表面の水酸基、カルボキシル基など熱可塑性樹脂との接着に寄与する極性基が、ガラス繊維に比べて少ないため、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面における密着性は低下する。その結果、機械的強度、特に耐衝撃性は、炭素繊維の配合の割に高まり難い。特に、短時間に大きな変位をもたらす衝撃荷重を加えた場合、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面での剥離が進行しやすいため、耐衝撃性の低下は大きくなる傾向がある。
この構成とすることで、耐衝撃性に優れる樹脂成形体が得られる。このような効果が得られる作用については明確ではないが、以下のように推測される。
この状態の中で、特定樹脂が炭素繊維と接触すると、特定樹脂の分子鎖に沿って多数含まれるアミド結合又はイミド結合と、炭素繊維の表面に僅かながら存在する極性基と、が親和力(引力及び水素結合)にて複数の箇所で物理的に接着する。また、一般的にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と特定樹脂とは相溶性が低いため、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と特定樹脂との間の斥力により、特定樹脂と炭素繊維との接触頻度が上がり、その結果として、特定樹脂の炭素繊維に対する接着量や接着面積が上がる。このように、炭素繊維の周囲に特定樹脂による被覆層が形成される。
そして、被覆層を形成する特定樹脂もエポキシ基を有するグラフトポリマーの分子内の一部のエポキシ基と化学反応、極性基同士で静電的相互作用を行うことで相溶されるため、このエポキシ基を有するグラフトポリマーがアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とも相溶することで、引力と斥力とが平衡状態が形成され、特定樹脂による被覆層は、薄く、かつ均一に近い状態で形成されることとなる。特に、炭素繊維の表面に存在するカルボキシ基と特定樹脂の分子内に含まれるアミド結合又はイミド結合との親和性は高いため、炭素繊維の周囲には特定樹脂による被覆層が形成され易く、薄膜で且つ均一性に優れる被覆層になると考えられる。
なお、被覆層の確認は、上記断面観察により実施する。
具体的には、例えば、特定樹脂による被覆層と母材であるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との間には、相溶化剤の層が介在していることがよい(図1参照)。つまり、被覆層の表面に相溶化剤の層が形成され、この相溶化剤の層を介して、被覆層とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が隣接していることがよい。相溶化剤の層は被覆層に比べ薄く形成されるが、相溶化剤の層の介在により、被覆層とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体との密着性(接着性)が高まり、機械的強度、特に耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られ易くなる。なお、図1中、ABSはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を示し、CFが炭素繊維を示し、CLは被覆層、CAはエポキシ基を有するグラフトポリマーの層を示している。
解析装置として顕微赤外分光分析装置(日本分光(株)製IRT−5200)を用いる。例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(以下、「ABS」とも称す。)、特定樹脂としてPA66、エポキシ基を有するグラフトポリマー(以下、「EPP」とも称す。)からなる樹脂成型体よりスライス片を切り出し、その断面を観察する。炭素繊維断面の周りの被覆層部についてIRマッピングを行い、EPPのエポキシ基由来ピーク(925cm−1乃至900cm−1)、及び、エポキシ基と特定樹脂のカルボニル基との反応により生成する水酸基由来ピーク(3300cm−1)を確認することにより、被覆層とABSとの間にエポキシ基を有するグラフトポリマーの層(結合層)が介在していることが確認できる。
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂とも称す)は、樹脂組成物の母材であり、炭素繊維により強化される樹脂成分をいう(マトリックス樹脂とも呼ばれる)。
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体としては、特に制限されるものではなく、例えば、グラフト法で製造されたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体でも、ポリマーブレンド法で製造されたアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体でもよい。
また、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体のガラス転移温度(Tg)又は融点(Tm)は、上記分子量と同様、特に限定されず、組成、成形条件や樹脂成形体に用途等に応じて決定すればよい。例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の融点(Tm)は、90℃以上150℃以下の範囲が好ましく、100℃以上125℃以下の範囲がより好ましい。
即ち、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、以下の条件で行う。GPC装置としては高温GPCシステム「HLC−8321GPC/HT」、溶離液としてo−ジクロロベンゼンを用いる。ポリオレフィンを一旦高温(140℃以上150℃以下の温度)でo−ジクロロベンゼンに溶融・ろ過し、ろ液を測定試料とする。測定条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、RI検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作成する。
また、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
炭素繊維としては、公知の炭素繊維が用いられ、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維のいずれもが用いられる。
炭素繊維の表面処理としては、例えば、酸化処理、サイジング処理が挙げられる。
炭素繊維の形態は、特に限定されず、樹脂成形体の用途等に応じて選択すればよい。炭素繊維の形態としては、例えば、多数の単繊維から構成される繊維束、繊維束を集束したもの、繊維を二次元又は三次元に織った織物等が挙げられる。
ただし、炭素繊維の繊維長が短くても、耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られるため、炭素繊維の平均繊維長は、0.1mm以上5.0mm以下(好ましくは0.2mm以上2.0mm以下)であってもよい。
また、炭素繊維の平均直径は、例えば、5.0μm以上10.0μm以下(好ましくは6.0μm以上8.0μm以下)であってもよい。
一方、炭素繊維の平均直径の測定方法は、次の通りである。炭素繊維の長さ方向に直交する断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)によって倍率1000倍で観察し、炭素繊維の直径を測定する。そして、この測定を炭素繊維100個について行い、その平均値を炭素繊維の平均直径とする。
しかし、炭素繊維を含む樹脂成形体を粉砕し、炭素繊維が短繊維化されたリサイクル品を原料として使用したり、熱溶融混練時に炭素繊維が短繊維化しても、本実施形態に係る樹脂組成物は、耐衝撃性に優れた樹脂成形体が得られるため有用である。
PAN系炭素繊維の市販品としては、東レ(株)製の「トレカ(登録商標)」、東邦テナックス(株)製の「テナックス」、三菱レイヨン(株)製の「パイロフィル(登録商標)」等が挙げられる。その他、PAN系炭素繊維の市販品としては、Hexcel社製、Cytec社製,Dow−Aksa社製、台湾プラスチック社製,SGL社製の市販品も挙げられる。
ピッチ系炭素繊維の市販品としては、三菱レイヨン(株)製の「ダイリアード(登録商標)」、日本グラファイトファイバー(株)製の「GRANOC」、(株)クレハ製の「クレカ」等が挙げられる。その他、ピッチ系炭素繊維の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製、Cytec社製の市販品も挙げられる。
炭素繊維がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上含まれることで、樹脂組成物の強化が図られ、また、炭素繊維の含有量を、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し200質量部以下とすることで、樹脂成形体を得る際の成形性が良好になる。
なお、炭素繊維以外の強化繊維を用いる場合、強化繊維の全質量に対して80質量%以上を炭素繊維とすることが好ましい。
この略記を使用した場合、上記炭素繊維の含有量は、0.1phr以上200phr以下となる。
特定樹脂は、特定の部分構造を含み、前述したように、炭素繊維の周囲を被覆しうる樹脂である。
この特定樹脂について、詳細に説明する。
ここで、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と特定樹脂とのSP値の差としては、両者間の相溶性、両者間の斥力の点から、3以上が好ましく、3以上6以下がより好ましい。
ここでいうSP値とは、Fedorの方法により算出された値である、具体的には、溶解度パラメータ(SP値)は、例えば、Polym.Eng.Sci.,vol.14,p.147(1974)の記載に準拠し、下記式によりSP値を算出する。
式:SP値=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi)
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm3/mol)、Δei:それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:それぞれの原子又は原子団のモル体積)
なお、溶解度パラメータ(SP値)は、単位として(cal/cm3)1/2を採用するが、慣行に従い単位を省略し、無次元で表記する。
イミド結合又はアミド結合を含むことで、炭素繊維の表面に存在する極性基との間で親和性が発現する。
特定樹脂の具体的な種類としては、イミド結合及びアミド結合の少なくとも一方を主鎖に含むアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が挙げられ、具体的には、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミノ酸等が挙げられる。
中でも、耐衝撃性の更なる向上の点、炭素繊維との密着性に優れる点から、ポリアミド(PA)が好ましい。
なお、ポリアミドとして、アラミド構造単位のみを有するポリアミドを適用すると、ポリアミドが溶融し得る高い温度では、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の熱劣化を引き起こす。また、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の熱劣化が引き起こされる温度では、ポリアミドが十分に溶融できず、成形性(例えば射出成形性)が悪化し、得られる樹脂成形体の外観品質及び機械的性能が低下する。
また、アラミド構造単位とは、芳香環を含むジカルボン酸と芳香環を含むジアミンとの縮重合反応した構造単位を示す。
・構造単位(1):−(−NH−Ar1−NH−CO−R1−CO−)−
(構造単位(1)中、Ar1は芳香環を含む2価の有機基を示す。R1は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(2):−(−NH−R2−NH−CO−Ar2−CO−)−
(構造単位(2)中、Ar2は芳香環を含む2価の有機基を示す。R2は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(3):−(−NH−R31−NH−CO−R32−CO−)−
(構造単位(3)中、R31は芳香環を含まない2価の有機基を示す。R32は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(4):−(−NH−R4−CO−)−
(構造単位(4)中、R4は芳香環を含まない2価の有機基を示す)
混合ポリアミドは、例えば、芳香環を有する第1ポリアミドと、芳香環を有さない第2ポリアミドと、を含む混合ポリアミドである。
なお、以下、便宜上、第1ポリアミドを「芳香族ポリアミド」、第2ポリアミドを「脂肪族ポリアミド」と称することがある。
一方、混合ポリアミドにおいて、芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミド(芳香族ポリアミド/脂肪族ポリアミド)との割合は、耐衝撃性の更なる向上の点から、質量比で20/80以上99/1以下(好ましくは50/50以上96/4以下)がよい。
一方、脂肪族ポリアミドにおいて、芳香環を含まない構造単位の割合は、全構造単位に対して80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%以上)がよい。
芳香環を含まないジカルボン酸としては、シュウ酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸等が例示される。
芳香環を含むジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル等が例示される。
芳香環を含まないジアミンとしては、エチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、デカメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が例示される。
芳香族ポリアミドの市販品としては、三菱ガス化学社製「MXD6」、クラレ社製「GENESTAR(登録商標):PA6T」、クラレ社製「GENESTAR(登録商標):PA9T」、東洋紡社製「TY−502NZ:PA6T」等が例示される。
脂肪族ポリアミドの市販品としては、Dupont社製「ザイテル(登録商標):7331J(PA6)」、Dupont社製「ザイテル(登録商標):101L(PA66)」
なお、混合ポリアミドの芳香環の割合は、芳香族ポリアミド及び脂肪族ポリアミド全体に対する芳香環の割合とする、
特定樹脂の分子量は、特に限定されず、樹脂組成物中に併存するアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体よりも熱溶融し易ければよい。特定樹脂がポリアミドであれば、例えば、ポリアミドの重量平均分子量は、1万以上30万以下の範囲が好ましく、1万以上10万以下の範囲がより好ましい。
また、特定樹脂のガラス転移温度又は溶融温度(融点)は、上記分子量と同様、特に限定されず、樹脂組成物中に併存するアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体よりも熱溶融し易ければよい。特定樹脂がポリアミドであれば、例えば、ポリアミド(共重合ポリアミド、混合ポリアミドの各ポリアミド)の融点(Tm)は、100℃以上400℃以下の範囲が好ましく、150℃以上350℃以下の範囲がより好ましい。
特定樹脂の含有量が上記の範囲であることで、炭素繊維との親和性が高まり、耐衝撃性の向上が図られる。
炭素繊維の質量に対する特定樹脂の含有量としては、0.1質量%以上1,000質量%以下であることが好ましく、1質量%以上150質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上120質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対する特定樹脂の含有量が、0.1質量%以上であると炭素繊維と特定樹脂との親和性が高まり易くなり、1,000質量%以下であると樹脂流動性が向上する。
エポキシ基を有するグラフトポリマーとしては、エポキシ基を有し、かつグラフト鎖を有する高分子化合物であればよいが、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と同じ構造を有し、かつ、分子内の一部に特定樹脂と親和性を有する部位を含むものが好ましい。
また、得られる樹脂成形体の耐衝撃性の観点から、前記アクリル樹脂鎖として、少なくともポリメチルメタクリレート鎖を有することが好ましい。
樹脂にエポキシ基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応によりエポキシ基を導入する方法、エポキシ基を有するモノマーを共重合する方法、エポキシ基を有するプレポリマーをグラフト鎖として導入する方法等が挙げられる。
エポキシ基を有するグラフトポリマーとしては、東亞合成(株)製のレゼダ(登録商標)シリーズ(GP−301、GP−310S)等が挙げられる。
また、エポキシ基を有するグラフトポリマーのエポキシ価(樹脂1gあたりのエポキシ基当量)は、10mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることがより好ましい。
なお、エポキシ価は、JIS K 7236:2001に準拠して測定するものとする。
エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量は、特定樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上50質量部以下であることが更に好ましい。
エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が上記の範囲であることで、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と特定樹脂との親和性が高められ、耐衝撃性の向上が図られる。
炭素繊維の質量に対するエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量としては、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対するエポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、1質量%以上であると炭素繊維と特定樹脂との親和性が得られ易く、50質量%以下(特に30質量%以下)であると変色や劣化の原因となる未反応官能基の残存が抑制される。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分の他、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、難燃剤、難燃助剤、加熱された際の垂れ(ドリップ)防止剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、炭素繊維以外の補強剤(タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)等の周知の添加剤が挙げられる。
その他の成分は、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0質量部以上10質量部以下がよく、0質量部以上5質量部以下がより好ましい。ここで、「0質量部」とはその他の成分を含まない形態を意味する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分を溶融混練することにより製造される。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段が用いられ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
溶融混練の際の温度(シリンダ温度)としては、樹脂組成物を構成する樹脂成分の融点等に応じて、決定すればよい。
本実施形態に係る樹脂成形体は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、炭素繊維と、特定樹脂と、エポキシ基を有するグラフトポリマーと、を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
射出成形のシリンダ温度は、例えば180℃以上300℃以下であり、好ましくは200℃以上280℃以下である。射出成形の金型温度は、例えば30℃以上100℃以下であり、30℃以上60℃以下がより好ましい。
射出成形は、例えば、日精樹脂工業(株)製NEX150、日精樹脂工業(株)製NEX300、住友重機械工業(株)製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
特に、本実施形態に係る樹脂成形体は、強化繊維として炭素繊維を適用しているため、より機械的強度に優れた樹脂成形体となることから、金属部品への代替用途に好適となる。
表1又は表2に従った成分(表中の数値は部数を示す)を、2軸混練装置(東芝機械(株)製、TEM58SS)にて、下記の混練条件、及び、表1又は表2に示す溶融混練温度(シリンダ温度)で混練し、樹脂組成物のペレットを得た。なお、得られたペレットを600℃で2時間焼成し、残留した炭素繊維の平均繊維長を前述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
・スクリュー径:φ58mm
・回転数:300rpm
・吐出ノズル径:1mm
得られた2種の試験片を用いて、以下のような評価を行った。
評価結果を表1及び表2に示す。
得られたISO多目的ダンベル試験片について、万能試験装置((株)島津製作所製、オートグラフAG−Xplus)を用いて、ISO178に準拠する方法で、曲げ弾性率を測定した。
得られたISO多目的ダンベル試験片をノッチ加工したもの(板厚4mm)を用い、ISO179に規定の方法に従って衝撃試験装置(東洋精機社製、DG−5)によりシャルピー衝撃強度(kJ/m2)を測定した。測定値が大きい程、耐衝撃強度が高く、耐衝撃性に優れる。
得られたD2試験片を用いて、既述の方法に従って、特定樹脂による被覆層の有無を確認した。
−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)−
・トヨラック700−314(ABS樹脂、トヨラック(登録商標)700−314、東レ(株)製、融点120℃)
・ASHT−18T(短繊維である炭素繊維18質量%配合ABS樹脂、東レ(株)製)
・炭素繊維A(表面処理有、チョップド炭素繊維トレカ(登録商標)、東レ(株)製、平均繊維長20mm、平均直径7μm)
・炭素繊維B(表面処理無、前記チョップド炭素繊維トレカ(登録商標)(東レ(株)製)を溶媒浸漬し、サイジング剤を除去したもの)
・PA6(ナイロン6、ザイテル(登録商標)7331J、Dupont社製)
・PA66(ナイロン66、101L、Dupont社製)
−特定樹脂:芳香族PA(芳香族ポリアミド)−
・MXD6(MXD6、三菱ガス化学(株)製)
・PA9T(ナイロン9T、GENESTAR PA9T、(株)クラレ製)
・エポキシグラフトポリマー(レゼダ(登録商標)GP−301、東亞合成(株)製、ポリメチルメタクリレート(PMMA)主鎖、エポキシ価:34mgKOH/g樹脂)
Claims (18)
- アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、
炭素繊維と、
アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、
エポキシ基を有するグラフトポリマーと、
を含む樹脂組成物。 - 前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が、ポリアミドである請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- 前記炭素繊維の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記炭素繊維の質量に対する、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記炭素繊維の質量に対する、前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、1質量%以上50質量%以下である請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、
炭素繊維と、
アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、
エポキシ基を有するグラフトポリマーと、
を含む樹脂成形体。 - 前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項10に記載の樹脂成形体。
- 前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が、ポリアミドである請請求項10又は請求項11に記載の樹脂成形体。
- 前記炭素繊維の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体100質量部に対し0.1質量部以上50質量部以下である請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記炭素繊維の質量に対する、前記アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、0.1質量%以上200質量%以下である請求項10乃至請求項16のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
- 前記炭素繊維の質量に対する、前記エポキシ基を有するグラフトポリマーの含有量が、1質量%以上50質量%以下である請求項10乃至請求項17のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
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