JP2018051911A - 樹脂組成物、及び樹脂成形体 - Google Patents

樹脂組成物、及び樹脂成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物を提供すること。【解決手段】熱可塑性樹脂と、炭素繊維と、ポリアミドと、相溶化剤と、を含み、ISO3167(2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度で作製したISO多目的ダンベル試験片中の炭素繊維が射出方向に配向している樹脂組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂組成物、及び樹脂成形体に関する。
従来、樹脂組成物としては種々のものが提供され、各種用途に使用されている。
特に、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は、家電製品や自動車の各種部品、筐体等、また事務機器、電子電気機器の筐体などの部品に使用される。
例えば、特許文献1には、「(a)0.1〜90重量%の少なくとも1種類のポリオレフィン、(b)0.1〜50重量%の少なくとも1種類のポリアミド、(c)0.1〜15重量%の少なくとも1種類の修飾ポリオレフィン、(d)5.0〜75重量%の少なくとも1種類の強化用繊維、(e)0.1〜10重量%の少なくとも1種類の硫黄含有添加剤を含む、3mm以上の長さを有する長繊維強化ポリオレフィン構造体」が開示されている。
また、特許文献2には、「酸変性ポリオレフィン(A)ブロックおよびポリアミド(B)ブロックを有し、13C−NMRによるアミド基由来の炭素と、メチル基、メチレン基およびメチン基由来の炭素との比(α)が、0.5/99.5〜12/88であるポリマー(X)を含有してなるポリオレフィン樹脂用改質剤」が開示されている。さらに、特許文献2には、「このポリオレフィン樹脂用改質剤(K)、ポリオレフィン樹脂(D)および無機繊維(E)を含有してなる無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物。」が開示されている。
特許文献3には、「炭素繊維を含む熱可塑性樹脂成形品において、成形品中に含まれる炭素繊維は、その全含有量が0.5〜30wt%であり、更に1.5mmを超える長さの炭素繊維が0.1〜4.7wt%であることを特徴とする炭素繊維含有熱可塑性樹脂成形品。」が開示されている。
特表2003−528956号公報 特開2014−181307号公報 特開2000−071245号公報
本発明の課題は、熱可塑性樹脂と炭素繊維とポリアミドと相溶化剤とを含む樹脂組成物において、ISO 3167(2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度で作製したISO多目的ダンベル試験片中の炭素繊維が無作為な方向に配置されている場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物を提供することにある。
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
請求項1に係る発明は、
熱可塑性樹脂と、
炭素繊維と、
ポリアミドと、
相溶化剤と、
を含み、ISO 3167(2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度とで作製したISO多目的ダンベル試験片中の炭素繊維が射出方向に配向している樹脂組成物。
請求項2に係る発明は、
前記ポリアミドが、ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位、又はラクタムが開環した構造単位であって、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と、芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドである請求項1に記載の樹脂組成物。
請求項3に係る発明は、
前記芳香環を含む構造単位が、下記構造単位(1)及び(2)の少なくとも一方であり、
前記芳香環を含まない構造単位が、下記構造単位(3)及び(4)の少なくとも一方である請求項2に記載の樹脂組成物。
・構造単位(1):−(−NH−Ar−NH−CO−R−CO−)−
(構造単位(1)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(2):−(−NH−R−NH−CO−Ar−CO−)−
(構造単位(2)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(3):−(−NH−R31−NH−CO−R32−CO−)−
(構造単位(3)中、R31は芳香環を含まない2価の有機基を示す。R32は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(4):−(−NH−R−CO−)−
(構造単位(4)中、Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す)
請求項4に係る発明は、
前記ポリアミドが、前記芳香環を含む構造単位を有する第1ポリアミドと、前記芳香環を含まない構造単位を有する第2ポリアミドと、を共重合した共重合ポリアミドである請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
請求項5に係る発明は、
前記ポリアミドが、前記芳香環を含む構造単位を有する第1ポリアミドと、前記芳香環を含まない構造単位を有する第2ポリアミドと、を含む混合ポリアミドである請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
請求項6に係る発明は、
前記ポリアミドの芳香環の割合が、10質量%以上40質量%以下である請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項7に係る発明は、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項8に係る発明は、
前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項9に係る発明は、
前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項10に係る発明は、
前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項11に係る発明は、
前記ポリアミドの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項12に係る発明は、
前記相溶化剤の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項13に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、1質量%以上200質量%以下である請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項14に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上100質量%以下である請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
請求項15に係る発明は、
熱可塑性樹脂と、
炭素繊維と、
ポリアミドと、
相溶化剤と、
を含み、ISO 3167(2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度とで作製したISO多目的ダンベル試験片中の炭素繊維が射出方向に配向している樹脂成形体。
請求項16に係る発明は、
前記ポリアミドが、ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位、又はラクタムが開環した構造単位であって、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と、芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドである請求項15に記載の樹脂成形体。
請求項17に係る発明は、
前記芳香環を含む構造単位が、下記構造単位(1)及び(2)の少なくとも一方であり、
前記芳香環を含まない構造単位が、下記構造単位(3)及び(4)の少なくとも一方である請求項16に記載の樹脂成形体。
・構造単位(1):−(−NH−Ar−NH−CO−R−CO−)−
(構造単位(1)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(2):−(−NH−R−NH−CO−Ar−CO−)−
(構造単位(2)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(3):−(−NH−R31−NH−CO−R32−CO−)−
(構造単位(3)中、R31は芳香環を含まない2価の有機基を示す。R32は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(4):−(−NH−R−CO−)−
(構造単位(4)中、Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す)
請求項18に係る発明は、
前記ポリアミドが、前記芳香環を含む構造単位を有する第1ポリアミドと、前記芳香環を含まない構造単位を有する第2ポリアミドと、を共重合した共重合ポリアミドである請求項16又は請求項17に記載の樹脂成形体。
請求項19に係る発明は、
前記ポリアミドが、芳香環を有する第1ポリアミドと、芳香環を有さない第2ポリアミドと、を含む混合ポリアミドである請求項16又は請求項17に記載の樹脂成形体。
請求項20に係る発明は、
前記ポリアミドの芳香環の割合が、10質量%以上40質量%以下である請求項15〜請求項19のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項21に係る発明は、
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項15〜請求項20のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項22に係る発明は、
前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである請求項15〜請求項21のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項23に係る発明は、
前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項15〜請求項22のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項24に係る発明は、
前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項15〜請求項23のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項25に係る発明は、
前記ポリアミドの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項15〜請求項24のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項26に係る発明は、
前記相溶化剤の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項15〜請求項25のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項27に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、1質量%以上200質量%以下である請求項15〜請求項26のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項28に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上100質量%以下である請求項15〜請求項27のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
請求項1に係る発明によれば、熱可塑性樹脂と炭素繊維とポリアミドと相溶化剤とを含む樹脂組成物において、ISO 3167(2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度とで作製したISO多目的ダンベル試験片中の炭素繊維が、無作為な方向に配置されている場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項2、3、4又は5に係る発明によれば、熱可塑性樹脂と炭素繊維とポリアミドと相溶化剤とを含む樹脂組成物において、ポリアミドとして芳香環を有さないポリアミドのみを含む場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項6に係る発明によれば、ポリアミドの芳香環の割合が10質量%未満又は40質量%超えの場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項7に係る発明によれば、熱可塑性樹脂としてアクロリニトリルブタジエンスチレンコポリマー又はスチレンポリマーの汎用樹脂を用いた場合に比べ、安価な樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項8に係る発明によれば、相溶化剤としてエポキシコポリマーを用いた場合と比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項9に係る発明によれば、炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下であっても、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項10に係る発明によれば、炭素繊維の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超えである場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項11に係る発明によれば、ポリアミドの含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は100質量部超えである場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項12に係る発明によれば、相溶化剤の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し1質量部未満又は50質量部超えである場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項13に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するポリアミドの含有量が1質量%未満又は200質量%超えである場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項14に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量が1質量%未満又は100質量%超えである場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
請求項15に係る発明によれば、熱可塑性樹脂と炭素繊維とポリアミドと相溶化剤とを含む樹脂組成物において、ISO 3167(2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度とで作製したISO多目的ダンベル試験片中の炭素繊維が無作為な方向に配置されている場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が提供される。
請求項16、17、18又は19に係る発明によれば、熱可塑性樹脂と炭素繊維とポリアミドと相溶化剤とを含む樹脂成形体において、ポリアミドとして芳香環を有さないポリアミドのみを含む場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が提供される。
請求項20に係る発明によれば、ポリアミドの芳香環の割合が10質量%未満又は40質量%超えの場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が提供される。
請求項21に係る発明によれば、熱可塑性樹脂としてアクロリニトリルブタジエンスチレンコポリマー又はスチレンポリマーの汎用樹脂を用いた場合に比べ、安価な樹脂成形体が提供される。
請求項22に係る発明によれば、相溶化剤としてエポキシコポリマーを用いた場合と比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が提供される。
請求項23に係る発明によれば、炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下であっても、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が提供される。
請求項24に係る発明によれば、炭素繊維の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超えである場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が提供される。
請求項25に係る発明によれば、ポリアミドの含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部未満又は100質量部超えである場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が提供される。
請求項26に係る発明によれば、相溶化剤の含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対し1質量部未満又は50質量部超えである場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が提供される。
請求項27に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対するポリアミドの含有量が1質量%未満又は200質量%超えである場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が提供される。
請求項28に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量が1質量%未満又は100質量%超えである場合に比べ、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が提供される。
本実施形態に係る樹脂成形体の要部を示すモデル図である。 本実施形態に係る樹脂成形体の要部の一例を説明するための模式図である。 マイクロドロップレット法を用いられる試験の模式図である。
以下、本発明の樹脂組成物及び樹脂成形体の一例である実施形態について説明する。
[樹脂組成物]
本実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、炭素繊維と、ポリアミドと、相溶化剤と、を含む。
近年では、機械的強度に優れた樹脂成形体を得るために、母材(マトリックス)としての熱可塑性樹脂と強化繊維とを含む樹脂組成物が用いられている。
このような樹脂組成物では、強化繊維と熱可塑性樹脂との親和性が低いと、この両者の界面に空間が生じ、かかる界面における密着性が低下することがある。
特に、樹脂組成物中の強化繊維として炭素繊維を用いた場合には、ガラス繊維等に比べ高い機械的強度を求められるが、炭素繊維表面の水酸基、カルボキシル基など熱可塑性樹脂との接着に寄与する極性基が、ガラス繊維に比べて少ないため、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面における密着性は低下する。その結果、熱寸法安定性の低下が大きくなる傾向がある。
そこで、本実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、炭素繊維と、ポリアミドと、相溶化剤と、の4成分を含む構成とする。それに加え、ISO 3167(2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度とで作製したISO多目的ダンベル試験片中の炭素繊維が射出方向に配向している。
この構成とすることで、熱寸法安定性に優れる樹脂成形体が得られる。このような効果が得られる作用については明確ではないが、以下のように推測される。
本実施形態に係る樹脂組成物から樹脂成形体を得る際、かかる樹脂組成物を熱溶融混合すると、母材としての熱可塑性樹脂と相溶化剤とが溶融し、また、相溶化剤の分子内の一部とポリアミドの分子内に含まれるアミド結合とで両者が相溶して、ポリアミドが樹脂組成物中で分散することとなる。
この状態の中で、ポリアミドが炭素繊維と接触すると、ポリアミドの分子鎖に沿って多数含まれるアミド結合と、炭素繊維の表面に僅かながら存在する極性基と、が親和力(引力及び水素結合)にて複数の箇所で物理的に接着する。また、一般的に熱可塑性樹脂とポリアミドとは相溶性が低いため、熱可塑性樹脂とポリアミドとの間の斥力により、ポリアミドと炭素繊維との接触頻度が上がり、その結果として、ポリアミドの炭素繊維に対する接着量や接着面積が上がる。このように、炭素繊維の周囲にポリアミドによる被覆層が形成される(図1参照)。なお、図1中、PPは熱可塑性樹脂を示し、CFが炭素繊維を示し、CLは被覆層を示している。
そして、被覆層を形成するポリアミドも相溶化剤の分子内の一部の反応基と化学反応、極性基同士で静電的相互作用を行うことで相溶されるため、この相溶化剤が熱可塑性樹脂とも相溶することで、引力と斥力とが平衡状態が形成され、ポリアミドによる被覆層は、薄く、かつ均一に近い状態で形成されることとなる。特に、炭素繊維の表面に存在するカルボキシ基とポリアミドの分子内に含まれるアミド結合との親和性は高いため、炭素繊維の周囲にはポリアミドによる被覆層が形成され易く、薄膜で且つ均一性に優れる被覆層になると考えられる。
なお、被覆層は炭素繊維の周囲全体を被覆していることが好ましいが、一部被覆されていない部分があってもよい。
一方で、被覆層の形成に寄与せず、遊離しているポリアミドが熱可塑性樹脂中で細かく分散していると、それにつれて、炭素繊維の分散性も良化する。そして、本実施形態に係る樹脂組成物を熱溶融混合して得られた樹脂成形体では、ポリアミドがさらに細かく分散するとともに、炭素繊維の分散もさらに良化することで、樹脂の流動方向に沿って、炭素繊維が配向した状態となる。
また、本実施形態に係る樹脂組成物を熱溶融混合して得られた樹脂成形体は、炭素繊維の周囲に形成されたポリアミドによる被覆層を有する構造が変化しにくい状態となる。
そのため、樹脂成形体は、炭素繊維の周囲に形成されたポリアミドの被覆層を有する構造が変化しにくい点、及び炭素繊維の配向が揃っている点から、炭素繊維が配向している方向だけでなく、繊維が配向している方向と交差する方向も、熱線膨張率が低くなるため、熱寸法安定性が良好になると考えられる。
以上のことから、本実施形態に係る樹脂組成物は、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面の密着性が高まり、かつ、炭素繊維がISO 3167(2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度とで作製したISO多目的ダンベル試験片中の炭素繊維が射出方向に配向していることから、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られると推測される。
なお、射出成形温度(シリンダ温度)は、ポリアミドを2種類以上併用する場合、融点の高いほうを基準として決定する。
なお、樹脂組成物を用いた試験片は炭素繊維が配向しているとともに、炭素繊維の周囲に形成されたポリアミドの被覆層を有する構造が変化しにくい。また、ポリアミドが熱可塑性樹脂中で細かく分散していることで、熱可塑性樹脂中に分散したポリアミドのドメインが機械的負荷を分散する役割を担うと共に、ポリアミドのドメインが細かいため、ポリアミドのドメインと熱可塑性樹脂との界面への応力集中が緩和される。そのため、本実施形態に係る樹脂組成物を用いて得られた樹脂成形体態は、曲げ弾性率にも優れたものとなると考えられる。
ここで、ISO 3167(2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度で作製したISO多目的ダンベル試験片中の炭素繊維が射出方向に配向しているとは、試験片中の炭素繊維が、次の状態であることを示す。試験片をX線CT(X線Computed Tomography)装置で観察したときに、試験片の射出方向(MD方向)と、試験片中の炭素繊維の長さ方向とのなす角が、試験片中の全炭素繊維の平均で20度以下となる。
つまり、試験片中の炭素繊維が、配向していない場合は、試験片中で、炭素繊維が無作為な方向に配置されていることになる。
ここで、本実施形態に係る樹脂組成物及びそれにより得られる樹脂成形体は、樹脂組成物(例えばペレット)の製造のときの熱溶融混練、及び射出成型により、炭素繊維の周囲にポリアミドによる被覆層が形成され、当該被覆層の厚さが5nm以上700nm以下となる構造を有することが好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物において、ポリアミドによる被覆層の厚さは、5nm以上700nm以下であり、熱寸法安定性の更なる向上の点から、10nm以上650nm以下が好ましい。被覆層の厚みを10nm以上とすると、熱寸法安定性が向上し、被覆層の厚みを700nm以下とすると、被覆層を介した炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面が脆弱となることを抑え、熱寸法安定性の低下が抑制される。
被覆層の厚さは、次の方法により測定された値である。測定対象物を液体窒素中で破断させ、電子顕微鏡(Keyence社製VE−9800)を用いて、その断面を観察する。その断面において、炭素繊維の周囲に被覆する被覆層の厚みを100箇所計測し、その平均値として算出する。
なお、被覆層の確認は、上記断面観察により実施する。
本実施形態に係る樹脂組成物及びそれにより得られる樹脂成形体において、熱可塑性樹脂中でのポリアミドのドメイン径は、曲げ弾性率の更なる向上の観点から、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。
ポリアミドのドメイン径は、次の方法により測定された値である。
即ち、測定対象物の試料片をエポキシ樹脂に包埋し、自動研磨機(BUEHLER製Vector)で精密研磨断面を作製する。
次に、SEM(日立製S−3400N,加速電圧15KV)を用いて、試料片の研磨断面を倍率1500倍でランダムに3視野撮影し、画像解析ソフト(ImageProPlus)を用いて、ポリアミドの炭素繊維の被覆層成分と遊離成分(ポリアミドのドメインに相当)を全て抽出するように輝度レンジを設定する。
その後、被覆層成分を手動で選択除外し、遊離成分(ポリアミドのドメインに相当)のみを測定項目として、直径・オブジェクト数を選択、計算し、個々のドメインの大きさ(直径=円相当径)及び個数を求め、ここから、ドメインの大きさ(直径)の平均値を求める。
なお、本実施形態に係る樹脂組成物(及びその樹脂成形体)では、例えば、かかる被覆層と熱可塑性樹脂との間を相溶化剤が一部相溶する構成をとる。
具体的には、例えば、ポリアミドによる被覆層と母材である熱可塑性樹脂との間には、相溶化剤の層が介在していることがよい(図2参照)。つまり、被覆層の表面に相溶化剤の層が形成され、この相溶化剤の層を介して、被覆層と熱可塑性樹脂が隣接していることがよい。相溶化剤の層は被覆層に比べ薄く形成されるが、相溶化剤の層の介在により、被覆層と熱可塑性樹脂との密着性(接着性)が高まり、機械的強度、特に熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られ易くなる。なお、図2中、PPは熱可塑性樹脂を示し、CFが炭素繊維を示し、CLは被覆層、CAは相溶化剤の層を示している。
特に、相溶化剤の層は、被覆層とは結合(水素結合、相溶化剤とポリアミドとの官能基の反応による共有結合等)し、熱可塑性樹脂とは相溶した状態で、被覆層と熱可塑性樹脂の間に介在していることがよい。この構成は、例えば、相溶化剤として、母材である熱可塑性樹脂と同じ構造又は相溶する構造を有し、且つ、分子内の一部に前述したポリアミドの官能基と反応する部位を含む相溶化剤を適用すると実現され易い。
具体的には、例えば、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン、ポリアミド、及び相溶化剤として無水マレイン酸修飾ポリオレフィンを適用した場合、無水マレイン酸修飾ポリオレフィンの層(相溶化剤の層)は、その無水マレイン酸部位が開環して生成したカルボキシ基がポリアミドの層(被覆層)のアミン残基と反応して結合し、そのポリオレフィン部位がポリオレフィンと相溶した状態で介在していることがよい。
ここで、相溶化剤の層が、被覆層と熱可塑性樹脂との間に介在していることを確認する方法は、次の通りである。
解析装置として赤外分光分析装置(サーモフィッシャー社製NICOLET6700FT−IR)を用いる。例えば、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン(以下PP)、ポリアミドとしてPA66と修飾ポリオレフィンとしてマレイン酸変性ポリプロピレン(以下MA−PP)との樹脂組成物(又は樹脂成形体)の場合、その混合物、PPとPA66との混合物、PPとMA−PPとの混合物、参照としてPP単体、PA66単体、MA−PP単体のIRスペクトルをKBr錠剤法で取得し、混合物における酸無水物由来(MA−PPに特徴的なピーク)の波数1820cm−1以上1750cm−1以下の範囲のピーク面積を比較解析する。PPとPA66とMA−PPとの混合物において、酸無水物ピーク面積の減少を確認し、MA−PPとPA66とが反応していることを確認する。これにより、被覆層と熱可塑性樹脂との間に相溶化剤の層(結合層)が介在していることが確認できる。詳しくは、MA−PPとPA66とが反応していると、MA−PPの環状マレイン化部分が開環してPA66のアミン残基が化学結合することで環状マレイン化部分が減るので、被覆層と熱可塑性樹脂との間に相溶化剤の層(結合層)が介在していると確認できる。
以下、本実施形態に係る樹脂組成物の各成分の詳細について説明する。
−熱可塑性樹脂(A)−
熱可塑性樹脂は、樹脂組成物の母材であり、炭素繊維により強化される樹脂成分をいう(マトリックス樹脂とも呼ばれる)。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではなく、例えば、ポリオレフィン(PO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(ABS)、アクリロニトリルスチレン(AS)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、熱寸法安定性の更なる向上、並びにコストの点から、ポリオレフィン(PO)が好ましい。
ポリオレフィンとしては、オレフィンに由来する繰り返し単位を含む樹脂であって、樹脂全体に対し30質量%)以下であれば、オレフィン以外の単量体に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
ポリオレフィンは、オレフィン(必要に応じて、オレフィン以外の単量体)の付加重合によって得られる。
また、ポリオレフィンを得るための、オレフィン及びオレフィン以外の単量体は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
なお、ポリオレフィンは、コポリマーであってもよいし、ホモポリマーであってよい。また、ポリオレフィンは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
ここで、オレフィンとしては、直鎖状又は分岐状の脂肪族オレフィン、脂環式オレフィンが挙げられる。
脂肪族オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等のα−オレフィンが挙げられる。
また、脂環式オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
中でも、コストの点から、α−オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレンがより好ましく、特にプロピレンが好ましい。
また、オレフィン以外の単量体としては、公知の付加重合性化合物から選択される。
付加重合性化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類;(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン類;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類;等が挙げられる。
好適なポリオレフィンとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリブテン、ポリイソブチレン、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等が挙げられる。
中でも、オレフィンに由来する繰り返し単位のみを含む樹脂であることが好ましく、特に、コストの点から、ポリプロピレンが好ましい。
熱可塑性樹脂の分子量は、特に限定されず、樹脂の種類、成形条件や樹脂成形体に用途等に応じて決定すればよい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィンであれば、その重量平均分子量(Mw)は、1万以上30万以下の範囲が好ましく、1万以上20万以下の範囲がより好ましい。
また、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)又は融点(Tm)は、上記分子量と同様、特に限定されず、樹脂の種類、成形条件や樹脂成形体に用途等に応じて決定すればよい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィンであれば、その融点(Tm)は、100℃以上300℃以下の範囲が好ましく、150℃以上250℃以下の範囲がより好ましい。
なお、ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)及び融点(Tm)は、以下のようにして測定された値を示す。
即ち、ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、以下の条件で行う。GPC装置としては高温GPCシステム「HLC−8321GPC/HT」、溶離液としてo−ジクロロベンゼンを用いる。ポリオレフィンを一旦高温(140℃以上150℃以下の温度)でo−ジクロロベンゼンに溶融・ろ過し、ろ液を測定試料とする。測定条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、RI検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作成する。
また、ポリオレフィンの融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂成形体の用途等に応じて、決定すればよいが、例えば、樹脂組成物の全質量に対して、5質量%以上95質量%以下が好ましく、10質量%以上95質量%以下がより好ましく、20質量%以上95質量%以下が更に好ましい。
なお、熱可塑性樹脂としてポリオレフィンを用いる場合、熱可塑性樹脂の全質量に対して20質量%以上をポリオレフィンとすることが好ましい。
−炭素繊維−
炭素繊維としては、公知の炭素繊維が用いられ、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維のいずれもが用いられる。
炭素繊維は、公知の表面処理が施されたものであってもよい。
炭素繊維の表面処理としては、例えば、酸化処理、サイジング処理が挙げられる。
炭素繊維の形態は、特に限定されず、樹脂成形体の用途等に応じて選択すればよい。炭素繊維の形態としては、例えば、多数の単繊維から構成される繊維束、繊維束を集束したもの、繊維を二次元又は三次元に織った織物等が挙げられる。
炭素繊維の繊維径、繊維長等は、特に限定されず、樹脂成形体の用途等に応じて選択すればよい。
ただし、炭素繊維の繊維長が短くても、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られため、炭素繊維の平均繊維長は、0.1mm以上5.0mm以下(好ましくは0.2mm以上2.0mm以下)であってもよい。
また、炭素繊維の平均直径は、例えば、5.0μm以上10.0μm以下(好ましくは6.0μm以上8.0μm以下)であってもよい。
ここで、炭素繊維の平均繊維長の測定方法は、次の通りである。炭素繊維を光学顕微鏡によって倍率100で観察し、炭素繊維の長さを測定する。そして、この測定を炭素繊維200個について行い、その平均値を炭素繊維の平均繊維長とする。
一方、炭素繊維の平均直径の測定方法は、次の通りである。炭素繊維の長さ方向に直交する断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)によって倍率1000倍で観察し、炭素繊維の直径を測定する。そして、この測定を炭素繊維100個について行い、その平均値を炭素繊維の平均直径とする。
なお、炭素繊維の繊維長が短くなると、炭素繊維の樹脂強化能が低下する傾向がある。特に、近年のリサイクル化の要望により、炭素繊維で強化された樹脂成形体を粉砕して再利用することも進められており、樹脂成形体の粉砕時に炭素繊維の繊維長が短くなることが多い。また、樹脂組成物を製造するときの熱溶融混練時に炭素繊維の繊維長が短くなることもある。そのため、繊維長が短くなった炭素繊維を含む樹脂組成物により樹脂成形体を成形すると、熱寸法安定性が低下する傾向が高くなる。
しかし、炭素繊維を含む樹脂成形体を粉砕し、炭素繊維が短繊維化されたリサイクル品を原料として使用したり、熱溶融混練時に炭素繊維が短繊維化しても、本実施形態に係る樹脂組成物は、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られるため有用である。
炭素繊維としては、市販品を用いてもよい。
PAN系炭素繊維の市販品としては、東レ(株)製の「トレカ(登録商標)」、東邦テナックス(株)製の「テナックス」、三菱レイヨン(株)製の「パイロフィル(登録商標)」等が挙げられる。その他、PAN系炭素繊維の市販品としては、Hexcel社製、Cytec社製,Dow−Aksa社製、台湾プラスチック社製,SGL社製の市販品も挙げられる。
ピッチ系炭素繊維の市販品としては、三菱レイヨン(株)製の「ダイリアード(登録商標)」、日本グラファイトファイバー(株)製の「GRANOC」、(株)クレハ製の「クレカ」等が挙げられる。その他、ピッチ系炭素繊維の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製、Cytec社製の市販品も挙げられる。
なお、炭素繊維は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
炭素繊維の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、1質量部以上180質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上150質量部以下であることが更に好ましい。
炭素繊維が熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上含まれることで、樹脂組成物の強化が図られ、また、炭素繊維の含有量を、熱可塑性樹脂100質量部に対し200質量部以下とすることで、樹脂成形体を得る際の成形性が良好になる。
なお、炭素繊維以外の強化繊維を用いる場合、強化繊維の全質量に対して80質量%以上を炭素繊維とすることが好ましい。
ここで、以降、熱可塑性樹脂100質量部に対する含有量(質量部)は、「phr(per hundred resin)と略記することがある。
この略記を使用した場合、上記炭素繊維の含有量は、0.1phr以上200phr以下となる。
−ポリアミド−
ポリアミドとしては、ジカルボン酸とジアミンとを共縮重合したポリアミド、ラクタムを開環重縮合したポリアミド、ジカルボン酸とジアミンとラクタムとを縮合したポリアミドが挙げられる。つまり、ポリアミドとしては、ポリアミドは、ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位、及びラクタムが開環した構造単位の少なくも一方を有するポリアミドが挙げられる。
ポリアミドは、ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位、又はラクタムが開環した構造単位であって、アラミドを除く芳香環を含む構造単位を有するポリアミド、芳香環を含まない構成単位を有するポリアミド、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドのいずれであってもよいが、熱寸法安定性向上の観点から、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドであることが好ましい。
特に、ポリアミドとして、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドを適用すると、炭素繊維と熱可塑性樹脂との親和性が共に良好となる。ここで、芳香環を含む構造単位のみ有するポリアミドは、芳香環を含まない構造単位のみを有するポリアミドに比べ、炭素繊維と親和性が高く、熱可塑性樹脂とは親和性が低い傾向がある。芳香環を含まない構造単位のみを有するポリアミドは、芳香環を含む構造単位のみ有するポリアミドに比べ、炭素繊維と親和性が低く、熱可塑性樹脂とは親和性が高い傾向がある。そのため、両構造単位を有するポリアミドを適用することで、炭素繊維と熱可塑性樹脂との親和性が共に良好となり、ポリアミドの被覆層によって炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面の密着性がさらに高まることになる。そのため、熱寸法安定性に優れた樹脂成形体が得られやすくなる。
また、ポリアミドとして、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドを適用すると、溶融粘度が低下し、成形性(例えば射出成形性)も向上する。そのため、外観品質の高い樹脂成形体が得られ易くなる。
なお、ポリアミドとして、アラミド構造単位のみを有するポリアミドを適用すると、ポリアミドが溶融し得る高い温度では、熱可塑性樹脂の熱劣化を引き起こす。また、熱可塑性樹脂の熱劣化が引き起こされる温度では、ポリアミドが十分に溶融できず、成形性(例えば射出成形性)が悪化し、得られる樹脂成形体の外観品質及び機械的性能が低下する。
なお、芳香環とは、5員環以上の単環の芳香環(シクロペンタジエン、ベンゼン)、及び5員環以上の複数の単環の芳香環が縮合した縮合環(ナフタレン等)を示す。芳香環は複素環(ピリジン環等)も含む。
また、アラミド構造単位とは、芳香環を含むジカルボン酸と芳香環を含むジアミンとの縮重合反応した構造単位を示す。
ここで、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位としては、例えば、下記構造単位(1)及び(2)の少なくとも一方が挙げられる。
・構造単位(1):−(−NH−Ar−NH−CO−R−CO−)−
(構造単位(1)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(2):−(−NH−R−NH−CO−Ar−CO−)−
(構造単位(2)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
一方、芳香環を含まない構造単位としては、例えば、下記構造単位(3)及び(4)の少なくとも一方が挙げられる。
・構造単位(3):−(−NH−R31−NH−CO−R32−CO−)−
(構造単位(3)中、R31は芳香環を含まない2価の有機基を示す。R32は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
・構造単位(4):−(−NH−R−CO−)−
(構造単位(4)中、Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す)
なお、構造式(1)〜(3)において、各符号が示す「2価の有機基」は、ジカルボン酸、ジアミン、又はラクタムが有する2価の有機基に由来する有機基である。具体的には、例えば、構造単位(1)において、Arが示す「芳香環を含む2価の有機基」は、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基を示し、Rが示す「芳香環を含まない2価の有機基」は、ジカルボン酸から2つのカルボキシ基を除いた残基を示す。また、例えば、構造単位(4)において、Rが示す「芳香環を含まない2価の有機基」は、ラクタムが開環したとき「NH基」と「CO基」とで挟まれている有機基を示す。
ポリアミドとしては、共重合ポリアミド、混合ポリアミドが挙げられる。ポリアミドは、共重合ポリアミドと混合ポリアミドとを併用しもよい。これらの中でも、ポリアミドとしては、熱寸法安定性の更なる向上の点から、混合ポリアミドが好ましい。
共重合ポリアミドは、例えば、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位を有する第1ポリアミドと、芳香環を含まない構造単位を有する第2ポリアミドと、を共重合した共重合ポリアミドである。
混合ポリアミドは、例えば、芳香環を有する第1ポリアミドと、芳香環を有さない第2ポリアミドと、を含む混合ポリアミドである。
なお、以下、便宜上、第1ポリアミドを「芳香族ポリアミド」、第2ポリアミドを「脂肪族ポリアミド」と称することがある。
共重合ポリアミドにおいて、芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミドとの割合(芳香族ポリアミド/脂肪族ポリアミド)は、熱寸法安定性の更なる向上の点から、質量比で20/80以上99/1以下(好ましくは50/50以上96/4以下)がよい。
一方、混合ポリアミドにおいて、芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミド(芳香族ポリアミド/脂肪族ポリアミド)との割合は、熱寸法安定性の更なる向上の点から、質量比で20/80以上99/1以下(好ましくは50/50以上96/4以下)がよい。
芳香族ポリアミドにおいて、芳香環を含む構造単位の割合は、全構造単位に対して80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%以上)がよい。
一方、脂肪族ポリアミドにおいて、芳香環を含まない構造単位の割合は、全構造単位に対して80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%以上)がよい。
芳香族ポリアミドは、芳香環を含むジカルボン酸と芳香環を含まないジアミンとの縮重合体、芳香環を含まないジカルボン酸と芳香環を含むジアミンとの縮重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリアミドは、芳香環を含まないジカルボン酸と芳香環を含まないジアミンとの縮重合体、芳香環を含まないラクタムの開環重縮合体等が挙げられる。
ここで、芳香環を含むジカルボン酸としては、フタル酸(テレフタル酸、イソフタル酸等)、ビフェニルジカルボン酸等が例示される。
芳香環を含まないジカルボン酸としては、シュウ酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸等が例示される。
芳香環を含むジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル等が例示される。
芳香環を含まないジアミンとしては、エチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、デカメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が例示される。
芳香環を含まないラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム等が例示される。
なお、各ジカルボン酸、各ジアミン、各ラクタムは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
芳香族ポリアミドとしては、MXD6(アジピン酸とメタキシレンジアミンとの縮重合体)、ナイロン6T(テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの縮重合体)、ナイロン6I(イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの重縮合体)、ナイロン9T(テレフタル酸とナンジアミンとの重縮合体)、ナイロンM5T(テレフタル酸とメチルペンタジアミンとの重縮合体)等が例示される。
芳香族ポリアミドの市販品としては、三菱ガス化学社製「MXD6」、クラレ社製「GENESTAR(登録商標):PA6T」、クラレ社製「GENESTAR(登録商標):PA9T」、東洋紡社製「TY−502NZ:PA6T」等が例示される。
脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン6(ε−カプロラクタムの開環重縮合体)、ナイロン11(ウンデカンラクタムの開環重縮合体)、ナイロン12(ラウリルラクタムの開環重縮合体)、ナイロン66(アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの縮重合体)、ナイロン610(セバシン酸とヘキサメチレンジアミンとの縮重合体)等が例示される。
脂肪族ポリアミドの市販品としては、Dupont社製「ザイテル(登録商標):7331J(PA6)」、Dupont社製「ザイテル(登録商標):101L(PA66)」
ポリアミドの物性について説明する。
ポリアミド(共重合ポリアミド、混合ポリアミド)の芳香環の割合は、熱寸法安定性の更なる向上の点から、1質量%以上55質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
なお、混合ポリアミドの芳香環の割合は、芳香族ポリアミド及び脂肪族ポリアミド全体に対する芳香環の割合とする、
ここで、ポリアミドの芳香環の割合は、ポリアミドに含まれる「単環の芳香環、単環の芳香環が縮合した縮合環」の合計の割合を意味する。なお、ポリアミドの芳香環の割合の算出において、単環の芳香環、単環の芳香環が縮合した縮合環に置換した置換基は除かれる。
つまり、ポリアミドの芳香環の割合は、ポリアミドの「ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位」、又は「ラクタムが開環した構造単位」の分子量から、この構造単位中に含まれる芳香環(置換基を有する場合、置換基を除く芳香環)の分子量の割合(質量%)で算出する。
まず、以下に、代表的なポリアミドの芳香環の割合を示す。芳香環を有さないナイロン6及びナイロン66の芳香環の割合はともに0質量%となる。一方、芳香環を有するMXD6は、構造単位中の芳香環「−C−(分子量76.10)」を持つため、芳香環の割合は30.9質量%となる。また、同様にナイロン9Tの芳香環の割合は、26.49質量%となる。
・ナイロン6:構造単位の構造「−NH−(CH−CO−」、構造単位の分子量=113.16、芳香環の割合=0質量%
・ナイロン66:構造単位の構造「−NH−(CH−NH−CO−(CH−CO−」、構造単位の分子量=226.32、芳香環の割合=0質量%
・MXD6:構造単位の構造「−NH−CH−C−CH−NH−CO−(CH−CO−」、構造単位の分子量=246.34、芳香環の割合=30.9質量%
・ナイロン9T:構造単位の構造「−NH−(CH−NH−CO−C−CO−」、構造単位の分子量=288.43、芳香環の割合=26.4質量%
そして、共重合ポリアミド、混合ポリアミドの芳香環の割合は、次のように求める。
−例1:ナイロン6とMXD6との共重合ポリアミド又は混合ポリアミドの場合(ナイロン6とMXD6との質量比=50/50)−
芳香環の割合=(ナイロン6の割合×ナイロン6中の芳香環の割合)+MXD6の割合×MXD6中の芳香環の割合)=(0.5×0)+(0.5×30.9)=15.5(質量%)
−例2:ナイロン66とMXD6とナイロン9Tとの共重合ポリアミド又は混合ポリアミドの場合(ナイロン66とMXD6とナイロン9Tとの質量比=50/25/25)−
芳香環の割合=(ナイロン66の割合×ナイロン66中の芳香環の割合)+MXD6の割合×MXD6中の芳香環の割合)+(ナイロン9Tの割合×ナイロン9T中の芳香環の割合)=(0.5×0.5×0)+(0.25×30.9)+(0.25×26.4)=14.3(質量%)
ポリアミド(共重合ポリアミド、混合ポリアミドの各ポリアミド)の分子量は、特に限定されず、樹脂組成物中に併存する熱可塑性樹脂よりも熱溶融し易ければよい。例えば、ポリアミドの重量平均分子量は、1万以上30万以下の範囲が好ましく、1万以上10万以下の範囲がより好ましい。
また、ポリアミド(共重合ポリアミド、混合ポリアミドの各ポリアミド)のガラス転移温度又は溶融温度(融点)は、上記分子量と同様、特に限定されず、樹脂組成物中に併存する熱可塑性樹脂よりも熱溶融し易ければよい。例えば、ポリアミド(共重合ポリアミド、混合ポリアミドの各ポリアミド)の融点(Tm)は、100℃以上400℃以下の範囲が好ましく、150℃以上300℃以下の範囲がより好ましい。
ポリアミド(共重合ポリアミド、混合ポリアミドの各ポリアミド)は、熱可塑性樹脂とは相溶性が低い樹脂、具体的には熱可塑性樹脂とは溶解度パラメータ(SP値)が異なる樹脂であることが好ましい。
ここで、熱可塑性樹脂とポリアミドとのSP値の差としては、両者間の相溶性、両者間の斥力の点から、3以上が好ましく、3以上6以下がより好ましい。
ここでいうSP値とは、Fedorの方法により算出された値である、具体的には、溶解度パラメータ(SP値)は、例えば、Polym.Eng.Sci.,vol.14,p.147(1974)の記載に準拠し、下記式によりSP値を算出する。
式:SP値=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi)
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm/mol)、Δei:それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:それぞれの原子又は原子団のモル体積)
なお、溶解度パラメータ(SP値)は、単位として(cal/cm1/2を採用するが、慣行に従い単位を省略し、無次元で表記する。
ポリアミドの含有量は、熱寸法安定性の更なる向上の点から、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、30質量部以上90質量部以下であることがより好ましく、40質量部以上80質量部以下であることが更に好ましい。
ポリアミドの含有量が上記の範囲であることで、炭素繊維との親和性が高まり、熱寸法安定性の向上が図られる。
ポリアミドの含有量は、炭素繊維との親和性を効果的に発現させる点から、前述した炭素繊維の含有量と比例させることが好ましい。
炭素繊維の質量に対するポリアミドの含有量としては、1質量%以上200質量%以下であることが好ましく、10質量%以上150質量%以下であることがより好ましく、12質量%以上120質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対するポリアミドの含有量が、1質量%以上であると炭素繊維とポリアミドとの親和性が高まり易くなり、200質量%以下であると樹脂流動性が向上する。
ここで、ポリアミドと炭素繊維との密着性は、例えば、界面せん断強度といった指標にて評価される。
界面せん断強度は、マイクロドロップレット法を用いて測定される。ここで、図3に示す試験の模式図を用いて、マイクロドロップレット法について説明する。
マイクロドロップレット法とは、単繊維fに液体樹脂を塗布し、ドロップレットD(樹脂粒、樹脂玉とも呼ばれる)をつけ、このドロップレットDを固定した後に、矢印方向に単繊維fの引き抜き試験を行うことで、両者の界面接着性を評価する方法である。
そして、この試験を元に、下記式を用いて、界面せん断強度(τ)が算出される。
式中、τは界面せん断強度を表し、Fは引抜荷重を表し、dは単繊維の繊維径を表し、Lはドロップレット長を表す。
算出された界面せん断強度(τ)の値が大きいほど、炭素繊維とポリアミドとの密着性が高いことを示し、この値が大きな炭素繊維及びポリアミドの組み合わせを選択することにより、より高い熱寸法安定性を有する樹脂成形体が形成される、といった指標ともなる。
−相溶化剤−
相溶化剤は、熱可塑性樹脂とポリアミドとの親和性を高める樹脂である。
相溶化剤としては、熱可塑性樹脂に応じて決定すればよい。
相溶化剤としては、熱可塑性樹脂と同じ構造を有し、且つ、分子内の一部にポリアミドと親和性を有する部位を含むものが好ましい。
例えば、熱可塑性樹脂としてポリオレフィンを用いる場合、相溶化剤としては、修飾ポリオレフィンを用いればよい。
ここで、熱可塑性樹脂がポリプロピレン(PP)であれば修飾ポリオレフィンとしては修飾ポリプロピレン(PP)が好ましく、同様に、熱可塑性樹脂がエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)であれば修飾ポリオレフィンとしては修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)が好ましい。
修飾ポリオレフィンとしては、カルボキシ基、カルボン酸無水物残基、カルボン酸エステル残基、イミノ基、アミノ基、エポキシ基等を含む修飾部位が導入されたポリオレフィンが挙げられる。
ポリオレフィンに導入される修飾部位としては、ポリオレフィンとポリアミドとの親和性の更なる向上の点、成形加工時の上限温度の点から、カルボン酸無水物残基を含むことが好ましく、特に、無水マレイン酸残基を含むことが好ましい。
修飾ポリオレフィンは、上述した修飾部位を含む化合物をポリオレフィンに反応させて直接化学結合する方法や、上述した修飾部位を含む化合物を用いてグラフト鎖を形成し、このグラフト鎖をポリオレフィンに結合させる方法などがある。
上述した修飾部位を含む化合物としては、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水クエン酸、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルベンゾエート、N−〔4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル〕アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレート、及びこれらの誘導体が挙げられる。
なお、上記の中でも、不飽和カルボン酸である無水マレイン酸をポリオレフィンと反応させてなる修飾ポリオレフィンが好ましい。
修飾ポリオレフィンとして具体的には、無水マレイン酸修飾ポリプロピレン、無水マレイン酸修飾ポリエチレン、無水マレイン酸修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、これらの付加体又は共重合等の酸修飾ポリオレフィンが挙げられる。
修飾ポリオレフィンとしては、市販品を用いてもよい。
修飾プロピレンとしては、三洋化成工業(株)製のユーメックス(登録商標)シリーズ(100TS、110TS、1001、1010)等が挙げられる。
修飾ポリエチレンとしては、三洋化成工業(株)製のユーメックス(登録商標)シリーズ(2000)、三菱化学(株)製のモディック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)としては、三菱化学(株)のモディック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
なお、相溶化剤の分子量は、特に限定されないが、加工性の点から、0.5万以上10万以下の範囲が好ましく、0.5万以上8万以下の範囲がより好ましい。
相溶化剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、2質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上30質量部以下であることが更に好ましい。
相溶化剤の含有量は、ポリアミド100質量部に対し1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、5質量部以上70質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上50質量部以下であることが更に好ましい。
相溶化剤の含有量が上記の範囲であることで、熱可塑性樹脂とポリアミドとの親和性が高められ、熱寸法安定性の向上が図られる。
相溶化剤の含有量は、熱可塑性樹脂とポリアミドとの親和性を高める点から、ポリアミドの含有量と比例させる(炭素繊維の含有量に間接的に比例させる)ことが好ましい。
炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量としては、1質量%以上100質量%以下であることが好ましく、5質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上50質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量が、1質量%以上であると炭素繊維とポリアミドとの親和性が得られ易く、100質量%以下であると変色や劣化の原因となる未反応官能基の残存が抑制される。
−その他の成分−
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分の他、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、難燃剤、難燃助剤、加熱された際の垂れ(ドリップ)防止剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、炭素繊維以外の補強剤(タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)等の周知の添加剤が挙げられる。
その他の成分は、例えば、熱可塑性樹脂100質量部に対し0質量部以上10質量部以下がよく、0質量部以上5質量部以下がより好ましい。ここで、「0質量部」とはその他の成分を含まない形態を意味する。
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分を溶融混練することにより製造される。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段が用いられ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
溶融混練の際の温度(シリンダ温度)としては、樹脂組成物を構成する樹脂成分の融点等に応じて、決定すればよい。
特に、本実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、炭素繊維と、ポリアミド(ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位、又はラクタムが開環した構造単位であって、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と、芳香環を含まない構造単位と、を有するポリアミド)と、相溶化剤と、を溶融混練する工程を含む製造方法により得られることが好ましい。熱可塑性樹脂と、炭素繊維と、ポリアミドと、相溶化剤と、を一括して溶融混練すると、炭素繊維の周囲にポリアミドによる被覆層が薄く且つ均一に近い状態で形成され易くなり、熱寸法安定性が高まる。
[樹脂成形体]
本実施形態に係る樹脂成形体は、熱可塑性樹脂と、炭素繊維と、ポリアミド(ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位、又はラクタムが開環した構造単位であって、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と、芳香環を含まない構造単位と、を有するポリアミド)と、相溶化剤と、を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
なお、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を調製しておき、この樹脂組成物を成形して得られたものであってもよいし、炭素繊維以外の成分を含む組成物を調製し、成形時に、かかる組成物と炭素繊維とを混合して得られたものであってもよい。
成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
本実施形態に係る樹脂成形体の成形方法は、形状の自由度が高い点で、射出成形が好ましい。
射出成形のシリンダ温度は、例えば180℃以上300℃以下であり、好ましくは200℃以上280℃以下である。射出成形の金型温度は、例えば30℃以上100℃以下であり、30℃以上60℃以下がより好ましい。
射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX300、住友機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、事務機器、家電製品、自動車内装材、容器などの用途に好適に用いられる。より具体的には、電子・電気機器や家電製品の筐体;電子・電気機器や家電製品の各種部品;自動車の内装部品;CD−ROMやDVD等の収納ケース;食器;飲料ボトル;食品トレイ;ラップ材;フィルム;シート;などである。
特に、本実施形態に係る樹脂成形体は、強化繊維として炭素繊維を適用しているため、より機械的強度に優れた樹脂成形体となることから、金属部品への代替用途に好適となる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
[実施例1〜11、比較例1〜7]
表1〜表3に従った成分(表中の数値は部数を示す)を、2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)にて、下記の混練条件、および表1〜表3に示す溶融混練温度(シリンダ温度)で混練し、樹脂組成物のペレットを得た。なお、得られたペレットを600℃で2時間焼成し、残留した炭素繊維の平均繊維長を前述の方法で測定した。測定結果を表1〜表3に示す。
−混練条件−
・スクリュー径:φ58mm
・回転数:300rpm
・吐出ノズル径:1mm
得られたペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製、NEX150)にて、表1〜表3に示す射出成形温度、金型温度100℃で、ISO多目的ダンベル試験片(ISO527引張試験、ISO178曲げ試験に対応)(試験部厚さ4mm、幅10mm)と、D2試験片(長さ60mm、幅60mm、厚み2mm)と、を成形した。
[評価]
得られた2種の試験片を用いて、以下のような評価を行った。
評価結果を表1〜表3に示す。
−曲げ弾性率−
得られたISO多目的ダンベル試験片について、万能試験装置(島津製作所社製、オートグラフAG−Xplus)を用いて、ISO178に準拠する方法で、曲げ弾性率を測定した。
−外観品質−
得られたD2試験片を観察し、次のようにして外観品質を評価した。
試験片の表面を目視にて観察し、成型体平坦部の凹みの有無、表面性状を評価した。評価基準は以下の通りである。
A:表面部にドメイン状の欠陥がなく、表面全体が均一である。
B:表面部に1mm未満のドメイン状のムラが観察されるが、触診では均一に近いと感じる。
C:表面部に1mm以上のドメイン状のムラがあり、ドメイン部を指で触ると他の場所と異なる触感を感じる。
D:成型体平坦部に凹みが発生する。
−被覆層の有無−
得られたD2試験片を用いて、既述の方法に従って、ポリアミドによる被覆層の有無を確認した。
−炭素繊維の配向性評価−
既述の方法に従って、ISO 3167(2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度とで作製したISO多目的ダンベル試験片において、試験片中の炭素繊維の配向をX線CTで観察し、試験片の射出方向(MD方向)と試験片中の炭素繊維の長さ方向とのなす角度(°)を測定して、配向性の評価を行った。
−寸法変化率−
得られたD2試験片を、25℃、65%RHの条件下で24hr放置し、試験片のTD方向及びMD方向のそれぞれについて、放置前後での試験片の寸法変化率(%)を測定した。
なお、寸法変化は、顕微測長装置(オリンパス製、STM6−LM)により測定した。
−熱線膨張率−
JIS K7197(1991)に準じた方法で行った。具体的には、試験装置として、TMA SS6100(日立ハイテクサイエンス社製)を用い、昇温速度2℃/分、温度範囲25℃以上180℃以下の条件で行った。
なお、表1〜表3の材料種の詳細は、以下の通りである。
−熱可塑性樹脂−
・ポリプロピレン(ノバテック(登録商標)PP MA3、日本ポリプロ(株)製)
・ポリエチレン(ウルトゼックス20100J、(株)プライムポリマー製)
−強化繊維−
・炭素繊維(表面処理有、チョップド炭素繊維トレカ(登録商標)、東レ(株)製、平均繊維長20mm、平均直径7μm)
−脂肪族PA(脂肪族ポリアミド)−
・PA6(ナイロン6、ザイテル(登録商標)7331J、Dupont社製、融点225℃)
・PA66(ナイロン66、101L、Dupont社製、融点265℃)
−芳香族PA(芳香族ポリアミド)−
・MXD6(MXD6、三菱ガス化学社製、融点237℃)
・PA9T(ナイロン9T、GENESTAR PA9T、クラレ製、融点304℃)
−相溶化剤−
・無水マレイン酸修飾ポリプロピレン(ユーメックス(登録商標)110TS、三洋化成工業(株)製
・無水マレイン酸修飾ポリエチレン(モディックM142、三菱化学(株)製)
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、熱膨張率に優れることがわかる。すなわち、本実施例では、比較例に比べ、寸法安定性が優れた樹脂成形体が得られることがわかる。
また、本実施例では、曲げ弾性率、及び外観品質にも優れた樹脂成形体が得られることもわかる。
なお、各実施例で作製した成形体を既述方法により分析したところ、被覆層と熱可塑性樹脂との間に、使用した相溶化剤の層(無水マレイン酸修飾ポリプロピレンの層、無水マレイン酸修飾ポリエチレン層の層)が介在していること(被覆層の表面に相溶化剤の層が形成されていること)が確認された。

Claims (28)

  1. 熱可塑性樹脂と、
    炭素繊維と、
    ポリアミドと、
    相溶化剤と、
    を含み、ISO 3167(2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度とで作製したISO多目的ダンベル試験片中の炭素繊維が射出方向に配向している樹脂組成物。
  2. 前記ポリアミドが、ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位、又はラクタムが開環した構造単位であって、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と、芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドである請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記芳香環を含む構造単位が、下記構造単位(1)及び(2)の少なくとも一方であり、
    前記芳香環を含まない構造単位が、下記構造単位(3)及び(4)の少なくとも一方である請求項2に記載の樹脂組成物。
    ・構造単位(1):−(−NH−Ar−NH−CO−R−CO−)−
    (構造単位(1)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
    ・構造単位(2):−(−NH−R−NH−CO−Ar−CO−)−
    (構造単位(2)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
    ・構造単位(3):−(−NH−R31−NH−CO−R32−CO−)−
    (構造単位(3)中、R31は芳香環を含まない2価の有機基を示す。R32は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
    ・構造単位(4):−(−NH−R−CO−)−
    (構造単位(4)中、Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す)
  4. 前記ポリアミドが、前記芳香環を含む構造単位を有する第1ポリアミドと、前記芳香環を含まない構造単位を有する第2ポリアミドと、を共重合した共重合ポリアミドである請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. 前記ポリアミドが、前記芳香環を含む構造単位を有する第1ポリアミドと、前記芳香環を含まない構造単位を有する第2ポリアミドと、を含む混合ポリアミドである請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミドの芳香環の割合が、10質量%以上40質量%以下である請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. 前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  10. 前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11. 前記ポリアミドの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  12. 前記相溶化剤の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  13. 前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、1質量%以上200質量%以下である請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  14. 前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上100質量%以下である請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  15. 熱可塑性樹脂と、
    炭素繊維と、
    ポリアミドと、
    相溶化剤と、
    を含み、ISO 3167( 2002)に準拠し、前記ポリアミドの融点より20℃高い射出成形温度と、100℃の金型温度とで作製したISO多目的ダンベル試験片中の炭素繊維が射出方向に配向している樹脂組成物からなる樹脂成形体。
  16. 前記ポリアミドが、ジカルボン酸とジアミンとが縮重合した構造単位、又はラクタムが開環した構造単位であって、アラミド構造単位を除く芳香環を含む構造単位と、芳香環を含まない構造単位とを有するポリアミドである請求項15に記載の樹脂成形体。
  17. 前記芳香環を含む構造単位が、下記構造単位(1)及び(2)の少なくとも一方であり、
    前記芳香環を含まない構造単位が、下記構造単位(3)及び(4)の少なくとも一方である請求項16に記載の樹脂成形体。
    ・構造単位(1):−(−NH−Ar−NH−CO−R−CO−)−
    (構造単位(1)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
    ・構造単位(2):−(−NH−R−NH−CO−Ar−CO−)−
    (構造単位(2)中、Arは芳香環を含む2価の有機基を示す。Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
    ・構造単位(3):−(−NH−R31−NH−CO−R32−CO−)−
    (構造単位(3)中、R31は芳香環を含まない2価の有機基を示す。R32は芳香環を含まない2価の有機基を示す。)
    ・構造単位(4):−(−NH−R−CO−)−
    (構造単位(4)中、Rは芳香環を含まない2価の有機基を示す)
  18. 前記ポリアミドが、前記芳香環を含む構造単位を有する第1ポリアミドと、前記芳香環を含まない構造単位を有する第2ポリアミドと、を共重合した共重合ポリアミドである請求項16又は請求項17に記載の樹脂成形体。
  19. 前記ポリアミドが、芳香環を有する第1ポリアミドと、芳香環を有さない第2ポリアミドと、を含む混合ポリアミドである請求項16又は請求項17に記載の樹脂成形体。
  20. 前記ポリアミドの芳香環の割合が、10質量%以上40質量%以下である請求項15〜請求項19のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  21. 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項15〜請求項20のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  22. 前記相溶化剤が、修飾ポリオレフィンである請求項15〜請求項21のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  23. 前記炭素繊維の平均繊維長が0.1mm以上5.0mm以下である請求項15〜請求項22のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  24. 前記炭素繊維の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下である請求項15〜請求項23のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  25. 前記ポリアミドの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以上100質量部以下である請求項15〜請求項24のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  26. 前記相溶化剤の含有量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である請求項15〜請求項25のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  27. 前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、1質量%以上200質量%以下である請求項15〜請求項26のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  28. 前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上100質量%以下である請求項15〜請求項27のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
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