JP6778790B2 - 磁性粉末複合体、アンテナおよび電子機器 - Google Patents
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Description
当該構成により、GHz帯の高周波領域で使用する電子機器、通信機器に装備する高周波電子部品に好適に用いられ、しかも、所定の針状金属粒子を用いることにより、誘電体材料中で、金属粒子を配向させるか否かにかかわらず所定の磁気特性を備えることができる(特許文献1の[0024][0029]参照。)ことが記載されている。
特許文献1から4では、磁性コンパウンドにおいて、磁性粉末の含有比率が高いものが開示されている。しかし、出願人らの検討によって達成できた金属磁性粉末の性能の向上に伴い、磁性コンパウンド中の金属磁性粉末の含有量をある程度減じても十分な高周波特性が得られるようになってきた。しかし、かような金属磁性粉末を樹脂に分散させる場合、混練段階で発火したり、金属磁性粉末を添加しない場合と比較して、著しい強度の低下が生じたりすることがわかってきた。すなわち、機械的強度と高周波特性とを共に満足するような磁性コンパウンド用材料は未だ得られていない。
また、その混ぜ込みの手法としては、樹脂割合を高くすることで、金属磁性粉末を樹脂で封止し、発火を防止する方法も考えられるが、当然金属磁性粉末の含有割合が低下し、磁性コンパウンドそのものの透磁率が低下するため、アンテナとして十分に動作しない可能性が考えられる。
ここで、本発明者らは、磁性粉末を樹脂に混ぜ込む手法について検討したところ、金属磁性粉末を加工して磁性粉末複合体とすることで、所望の樹脂に対して混ぜ込むことができるようになることを見いだした。
金属磁性粉末と、
カルボン酸もしくはその無水物、芳香族カルボン酸エステル、およびそれらの誘導体、から選択される一種以上とを含む磁性粉末複合体であって、
IEC60250またはJISC2138:2007に規定された1MHzにおけるtanδεが0.05以下である熱可塑性樹脂に、前記金属磁性粉末の100質量部に対して、前記カルボン酸もしくはその無水物、芳香族カルボン酸エステル、およびそれらの誘導体から選択される一種以上の5質量部を添加して作製した磁性粉末複合体を30体積%含有させたとき、測定周波数2GHzにおいて、透磁率の実数部μ’が1.45以上、tanδμが0.1以下、tanδεが0.05以下の値を示す性質を有する、磁性粉末複合体である。
前記熱可塑性樹脂が、芳香環を含む熱可塑性樹脂である、磁性粉末複合体である。
金属磁性粉末と、
カルボン酸もしくはその無水物、芳香族カルボン酸エステル、およびそれらの誘導体、から選択される一種以上とを含む磁性粉末複合体であって、
SPS、m−PPE、PPS、から選択される一種以上とを含む材料に、前記金属磁性粉末の100質量部に対して、前記カルボン酸もしくはその無水物、芳香族カルボン酸エステル、およびそれらの誘導体から選択される一種以上の5質量部を添加して作製した磁性粉末複合体を30体積%含有させたとき、測定周波数2GHzにおいて、透磁率の実数部μ’が1.45以上、tanδμが0.1以下、tanδεが0.05以下の値を示す性質を有する、磁性粉末複合体である。
前記カルボン酸は、芳香族カルボン酸もしくは不飽和カルボン酸、ジカルボン酸、から選択される一種以上である、磁性粉末複合体である。
前記カルボン酸もしくはその無水物、芳香族カルボン酸エステル、およびそれらの誘導体のいずれかを構成する炭素数は4以上30以下である、磁性粉末複合体である。
前記カルボン酸もしくはその無水物、芳香族カルボン酸エステル、およびそれらの誘導体とは、フタル酸、無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸ジメチルおよびそれらの誘導体から選択される一種以上である、磁性粉末複合体である。
〈1.磁性コンパウンドを構成するための磁性粉末複合体〉
1−1.金属磁性粉末
1−2.被覆物と磁性粉末複合体
〈2.磁性コンパウンドの製造方法〉
2−1.使用される樹脂
2−2.準備工程
2−3.被覆工程(表面処理)
2−4.樹脂との混練工程
〈3.変形例等〉
本明細書において「〜」は所定の値以上かつ所定の値以下のことを指す。
本実施形態における磁性コンパウンドを構成するための磁性粉末複合体は、金属磁性粉末と、カルボン酸もしくは、その分子内における脱水、もしくは複数のカルボン酸の脱水作用によって生成した無水物、芳香族カルボン酸エステルおよびそれらの誘導体から選択される一種以上の被覆物とを含む。
以下、各構成について説明する。
本実施形態における金属磁性粉末は、一例としては、以下の構成を有する。
金属磁性粉末は、磁性特性、粒径などを適宜設計したものを用いれば良い。
磁性特性としては、飽和磁化(σs)により磁性コンパウンドの透磁率、誘電率を設定できる。ほかには、保磁力(Hc)、角形比(SQ)等、また粉体特性として、粒径、形状、BET(比表面積)、TAP(タップ)密度を調整すればよい。例えば、本実施形態における金属磁性粉末には、Fe(鉄)若しくは、FeとCo(コバルト)に、希土類元素(Y(イットリウム)を含む、以降同様。)、Al(アルミニウム)、Si(ケイ素)、Mg(マグネシウム)から選択される一種以上(以後「Al等」という。)が含まれる。
金属磁性粉末の原材料となる元素を含む水溶液中において、Yを含む希土類元素量を変化させることで、最終的に得られる金属粒子の軸比(=長軸長/短軸長)を変更することができる。
希土類元素が少ない場合は軸比が大きくなり、より損失を低減した金属粉末を得ることができるが、透磁率は低減する。その一方、希土類元素が多い場合は軸比が小さくなり損失はやや大きくなるが、希土類元素が少ない場合と比べると透磁率が大きくなる。
ただし、Al等は非磁性成分であるので、金属磁性粉末の磁気特性が担保できる範囲で含有させることが好ましい。具体的には、FeとCoとの総和に対するAl等の含有量は、1at%〜20at%とすることが好ましく、3at%〜18at%がより好ましく、5at%〜15at%が一層好ましい。
本実施形態における被覆物は、後述の表面処理工程により金属磁性粉末の表面に形成され、磁性粉末複合体となる。おそらく、当該被覆物は、金属磁性粉末の表面の少なくとも一部に付着して磁性粉末複合体を形成していると考えられる。当該被覆物は、カルボン酸もしくは、その分子内の脱水作用によって生成した無水物、芳香族カルボン酸エステルおよびそれらの誘導体から選択される一種以上である。ここで「誘導体」とは、官能基の導入、酸化、還元、原子の置き換えなど、母体の構造や性質を大幅に変えない程度の改変がなされた化合物をさし、「原子の置き換え」には、末端がアルカリ金属で置換がなされ、可溶性とされたものも含む概念である。
なお、これらカルボン酸又はその誘導体は必ずしも一種だけで使用する必要は無く、複数種のカルボン酸を使用することを妨げるものではない。
炭素数が上記の範囲内ならば、樹脂と磁性粉末複合体とのなじみが一層改善するので適当である。なお、ここでいう「無水物」とは、化合物から水分子が加熱等により除去(分子内脱水)されることで形成される化合物(フタル酸と無水フタル酸の関係)とともに、オキソ酸2分子が脱水縮合した化合物(安息香酸と無水安息香酸の関係)をも含む。
以下、磁性コンパウンドの製造方法について説明する。
本実施形態における樹脂として好適なのは、IEC60250またはJISC2138:2007に規定された1MHzにおけるtanδεが0.05以下の熱可塑性樹脂である。当該樹脂を用いることで本実施形態の効果を奏することができる。特に、芳香環を有する熱可塑性樹脂を使用するとtanδεが良好であるため好ましく、とりわけ、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、および、m−PPE(変性ポリフェニレンエーテル)から選択される一種以上を使用することが好ましい。
実施例の項目で後述するように、PPS、SPSおよびm−PPEから選択される一種以上を樹脂として採用し、当該樹脂と本発明に係る磁性粉末複合体とで混練し、本発明に係る磁性コンパウンドを製造することが可能である。
本工程においては、磁性コンパウンドの作製に係る諸々の準備を行う。例えば、上記の金属磁性粉末などの各種原材料や、被覆体の原材料、混ぜ入れる対象となる樹脂を用意する。
金属磁性粉末に対し、有機化合物(カルボン酸、カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸エステルおよびそれらの誘導体から選択される一種以上。)を添加して混合し、磁性粉末複合体を得る。カルボン酸のなかでも、樹脂のように分子量が何万もあるような高分子より、分子量が500以下のカルボン酸が好ましい。さらに、炭素数は4から30までのものとするのが良い。具体的には、カルボン酸、カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸エステル、およびそれらの誘導体のなかでも、フタル酸、無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸ジメチル、およびそれらの誘導体であることが好ましく、一層好ましくは、フタル酸、無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸ジメチルを主骨格としつつ、炭素数が4以上30以下である構造とするのが良い。
なお、これらカルボン酸、カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸エステル、およびそれらの誘導体は必ずしも一種だけで構成する必要は無く、複数種のカルボン酸、カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸エステル、およびそれらの誘導体を使用することを妨げるものではない。
また、磁性粉末複合体において、炭素量が0.1質量%以上あれば、磁性粉末複合体の樹脂への分散が好適に行え好ましい。一方、炭素量が10質量%以下であれば非磁性成分が過剰にならず、磁性粉末複合体あるいはその後に形成する磁性コンパウンドとしたときの透磁率が低下しないので好ましい。
当該質量比が2以上だと、金属磁性粉末と樹脂とがなじむため、生産した時の製品の性質安定性が向上する。15以下だと、金属磁性粉末における非磁性成分が適量となり、被覆体が被覆された金属磁性粉末により構成される磁性粉末複合体そのものの磁気特性の低下を抑制できる。ひいては、磁性粉末複合体を樹脂に混ぜ入れて磁性コンパウンドとしたときの高周波特性を比較的高く維持することができ、最終的に形成されるアンテナの特性についても同様に比較的高く維持することができる。
そこで、乾燥した磁性粉末複合体を得るには、上記の有機化合物と当該溶媒を加えたものに金属磁性粉末を加え、金属磁性粉末を当該溶媒に含浸させた後、溶媒を除去する方法を採用すると簡便である。
つまり、金属磁性粉末に対して添加した有機物が満遍なく行き渡るようであれば、問題はない。また、混練を行いながら溶媒の除去、乾燥を行うために、ミキサーなどを使用しても差し支えない。なお、当該除去、乾燥後において、有機化合物を金属磁性粉末の粒子表面に残存させることが肝要である。
BET比表面積は、ユアサアイオニクス株式会社製の4ソーブUSを用いて、BET一点法により求められる。
得られた磁性粉末複合体(または金属磁性粉末)の磁気特性(バルク特性)として、東英工業株式会社製のVSM装置(VSM−7P)を使用して、外部磁場10kOe(795.8kA/m)で、保磁力Hc(OeまたはkA/m)、飽和磁化σs(Am2/kg)、角形比SQ、保磁力分布SFDを測定可能である。Δσsは、磁性粉を60℃、90%の高温多湿環境下に一週間放置した時の飽和磁化の低下割合を百分率(%)で示したものである。
特開2007−263860号明細書に記載された方法で測定可能である。また、JISK−5101:1991の手法を採用しても測定可能である。
得られた磁性粉末複合体と上述の樹脂とを混練し、磁性コンパウンドを形成する。混練工程により樹脂中に金属磁性粉末が分散された状態となる。混練後の状態は、樹脂中に磁性粉末が均一濃度に分散されているのが好ましい。樹脂に混ぜ込むことのできる磁性粉末複合体の量が多い場合、高周波を加えた際の透磁率が高くなる一方、樹脂の有する機械的特性は低下することになる。そのため、磁性コンパウンドへの磁性粉末複合体の添加量は機械的特性と高周波特性との間のバランスを考慮して検討することが好ましい。
樹脂、金属磁性粉末、上記の有機化合物を含む混合物を加熱し、磁性コンパウンドを作製する方法を採用しても構わないし、樹脂を溶融させたところに磁性粉末複合体を添加する方法を採用しても構わない。
上述の方法により得られた磁性粉末複合体と特定の樹脂から構成される磁性コンパウンド0.2gをドーナッツ状の容器内に入れて、ハンドプレス機、もしくはホットプレス機を用い、外径7mm、内径3mmのトロイダル形状の磁性コンパウンドの成形体を形成する。その後、アジレント・テクノロジー株式会社製のネットワーク・アナライザー(E8362C)と株式会社関東電子応用開発製の同軸型Sパラメーター法サンプルホルダーキット(製品型番:CSH2−APC7、試料寸法:φ7.0mm−φ3.04mm×5mm)を用い、得られた磁性コンパウンドの成形体の高周波特性すなわち0.5〜5GHzの区間、測定幅は0.05GHz刻みで行い、透磁率の実数部(μ’)、透磁率の虚数部(μ”)、誘電率の実数部(ε’)、誘電率の虚数部(ε”)を測定し、高周波特性を確認した。ここで、tanδε=ε”/ε’であり、tanδμ=μ”/μ’で算出することができる。
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
本実施形態においては、金属磁性粒子、被覆体、磁性粉末複合体および樹脂に関し、主となる元素や化合物について詳述した。その一方、上記で列挙した元素や化合物以外のものを、金属磁性粒子、被覆体、磁性粉末複合体および樹脂が含有していても構わない。
本実施形態における得られた磁性粉末複合体と特定の樹脂から構成される磁性コンパウンドは、アンテナ、インダクタ、電波遮蔽材に用いることができる。特に、当該磁性コンパウンドにより構成されるアンテナ、更には当該アンテナを備えた電子通信機器(電子機器)においても、後述の実施例の項目で示すような比較的高い通信特性を享受することが可能である。つまり、本実施形態における磁性コンパウンドは、上記のような電子部品、アンテナ、電子機器等々へと加工可能なものである。
表1は、実施例1〜20、比較例1〜6に係る試料の原料について記載する。
表2は、実施例1〜20、比較例1〜6に係る試料の磁気的特性および機械的特性について記載する。
表3は、実施例1〜20、比較例1〜6に係る試料の高周波特性(750MHz〜1GHz、2GHz)について記載する。
表4は、実施例1〜20、比較例1〜6に係る試料の高周波特性(800MHz、1.5GHz)について記載する。
表5は、実施例1〜20、比較例1〜6に係る試料の高周波特性(2.5GHz、3.0GHz)について記載する。
以下、各例について説明する。
本例においては、少量サンプルを作製した。
まず、金属磁性粉末(DOWAエレクトロニクス株式会社製:鉄−コバルト金属粒子、長軸長:40nm、BET:37.3m2/g、σs:179.3Am2/kg、炭素含有量(高周波燃焼法):0.01質量%)を500メッシュ篩で篩わけし、篩下の金属磁性粉末(50g)に、フタル酸(和光純薬工業製特級試薬)を磁性粉に対して5%(2.5g)、エタノールを磁性粉に対して30重量%(15g)添加して、メノウ乳鉢中で5分間混合させた。乾燥は60℃で2時間行い、本例における磁性粉末複合体を得た。なお、得られた磁性粉末複合体の真密度を気相(Heガス)置換法で求めたところ、5.58g/cm3であった。求めた真密度の値は、コンパウンド中の磁性粉末複合体の含有量を所望の割合にするための配合比の算出に使用した。
本例では、実施例1において添加する処理剤を無水マレイン酸とした以外は実施例1と同様にした。
本例では、実施例1において添加する処理剤をマレイン酸とした以外は実施例1と同様にした。
本例では、実施例1において添加する処理剤をフタル酸ジメチルとした以外は実施例1と同様にした。
本例では、実施例1において添加する処理剤をコハク酸とした以外は実施例1と同様にした。
本例では、実施例1において添加する処理剤を無水コハク酸とした以外は実施例1と同様にした。
本例では、実施例1において添加する処理剤を無水フタル酸とした以外は実施例1と同様にした。
本例では、実施例1において添加する処理剤を安息香酸とした以外は実施例1と同様にした。
本例では、実施例1において添加する処理剤をマロン酸とした以外は実施例1と同様にした。
本例では、実施例1において添加する処理剤をフマル酸とした以外は実施例1と同様にした。
本例では、実施例1において添加する処理剤をグルタル酸とした以外は実施例1と同様にした。
本例では、実施例1において添加する処理剤をアゼライン酸とした以外は実施例1と同様にした。
本例では、実施例1において添加する処理剤をセバシン酸とした以外は実施例1と同様にした。
本例においては、中量サンプルを作製した。
まず、フタル酸(和光純薬工業株式会社製特級試薬)25gにエタノール(和光純薬工業株式会社製特級試薬)を500gになるように添加し、フタル酸をエタノールへと溶解させた。この溶液に対し、金属磁性粉末(DOWAエレクトロニクス株式会社製:鉄−コバルト金属粒子、長軸長:40nm、BET:37.3m2/g、σs:179.3Am2/kg、炭素含有量(高周波燃焼法):0.01質量%)500gを不活性雰囲気下で添加し、溶液中にて金属磁性粉末を沈降させた。これを大気中で高速攪拌機(プライミクス株式会社製TKホモミキサーMarkII)で8000rpmにおいて2分間攪拌して、金属磁性粉末のペースト態とした。
ここで、磁性粉末複合体の真密度を気相(Heガス)置換法で求め、求めた真密度の値を、コンパウンド中の磁性粉末複合体の含有量を所望の割合にするための配合比の算出に使用した。
以降は実施例1と同様にして評価した。
本例では、ガラス繊維が30%含有された比重1.57g/cm3のジュラファイド(登録商標)1130A64(PPS/ポリプラスチックス株式会社製 ポリフェニレンサルファイド)へと樹脂を変更した以外は実施例14と同様にした。
本例では、成形体形成時の体積充填率が20体積%に相当する磁性粉末複合体と、比重1.18g/cm3のXAREC(登録商標)SP105(SPS/出光興産株式会社製、シンジオタクチックポリスチレン)を11.5gそれぞれ窒素中で秤量して5号規格瓶に入れてフタをした。軽く手で振ってかき混ぜたあと、小型混練機(DSM Xplore(登録商標) MC15、Xplore Instruments社製)にて、窒素雰囲気中で、設定温度300℃、混練攪拌速度100rpmにて、10分間混練(樹脂および磁性粉の投入時間を含む)して、混練物すなわち磁性コンパウンドを作製した。その余は実施例1と同様にして評価した。
本例では、実施例16において、磁性粉末複合体の体積充填率が30体積%に相当するように、磁性粉末複合体とSPSの添加量を調整した以外は実施例16と同様にした。
本例では、実施例16において、磁性粉末複合体の体積充填率が40体積%に相当するように、磁性粉末複合体とSPSの添加量を調整した以外は実施例16と同様にした。
本例では、樹脂を比重1.06g/cm3のザイロン(登録商標)AH−40(PPE/旭化成ケミカルズ株式会社製 変性ポリフェニレンエーテル)に変更した以外は実施例16と同様にした。
本例では、ガラス繊維が30%含有された比重1.31g/cm3のザイロン(登録商標)GH−30(PPE/旭化成ケミカルズ株式会社製 変性ポリフェニレンエーテル)へと樹脂を変更した以外は実施例16と同様にした。
本例では、実施例1において、フタル酸で表面処理していない金属磁性粒子を用いた。更に、熱可塑性樹脂ではなく熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂(一液型エポキシ樹脂 テスク株式会社製)を、金属磁性粉末が30質量%になるように秤量し、株式会社EME社製真空攪拌・脱泡ミキサー(V−mini300)を用いて、当該金属磁性粉末をエポキシ樹脂に分散させペースト状にした。このペーストをホットプレート上で60℃、2時間乾燥させて、金属磁性粉末−樹脂の複合体を得た。この複合体を解粒して複合体の粉末を作製し、この複合体粉末0.2gをドーナッツ状の容器内に入れて、ハンドプレス機により1tの荷重をかけることにより、外径7mm、内径3mmのトロイダル形状の成形体とした。以降は実施例1と同様にして評価した。
本例では、比較例1に用いた金属磁性粉末を実施例14で使用した磁性粉末複合体に変更した以外は同様にした。
本例では、実施例14において、金属磁性粉末をフタル酸で表面処理しなかった以外は同様にした。
本例においては、混練物の作製の際、混練物を大気中に取り出した段階で金属磁性粉末が発火して発煙が生じ、そもそも混練物を作製することができなかった。
本例では、実施例17において、金属磁性粉末をフタル酸で表面処理しなかった以外は同様にした。
本例においては、混練物の作製の際、混練物を大気中に取り出した段階で金属磁性粉末が発火して発煙が生じ、そもそも混練物を作製することができなかった。
本例では、実施例19において、金属磁性粉末をフタル酸で表面処理しなかった以外は同様にした。
本例においては、混練物の作製の際、混練物を大気中に取り出した段階で金属磁性粉末が発火して発煙が生じ、そもそも混練物を作製することができなかった。
本例においては、既存の技術である熱可塑性樹脂と芳香族ナイロンの混合樹脂を用いて、磁性粉末複合体に同様の効果が見られるか確認した。具体的には、実施例1において、金属磁性粉末をフタル酸で表面処理せず、かつ、樹脂をジュラファイド(登録商標)(PPS/ポリフェニレンサルファイド樹脂 ポリプラスチックス株式会社製 A0220A9)と、芳香族ナイロン6T ベスタミド(登録商標)(ダイセル・エボニック株式会社製 HTplus M1000)を混合した以外は同様にした。
本例においては、混練物の作製の際、混練物を大気中に取り出した段階で金属磁性粉末が発火して発煙が生じ、そもそも混練物を作製することができなかった。
上記の内容をまとめたのが、先に挙げた表1〜5である。
上記の各表を見ると、いずれの実施例も、各表に記載した全ての周波数において、透磁率の実数部(μ’)、透磁率の虚数部(μ”)、誘電率の実数部(ε’)、誘電率の虚数部(ε”)、(tanδμ)および(tanδε)、更には750MHz〜1GHzにおけるμ’やε’の標準偏差も含め、全てが良好な値となっていた。それに加え、曲げ強度や弾性率についても良好であった。
比較例1、2においては、磁性コンパウンドを作製できた。しかし、高周波特性において実施例よりも劣る結果となっていた。
Claims (7)
- Fe、Coおよび希土類元素(Y(イットリウム)を含む)を含んでいる金属磁性粉末の表面が、フタル酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸ジメチルから選択される一種以上の被覆物により被覆されている磁性粉末複合体。
- 前記金属磁性粉末が、さらにAl、Si、Mgから選択される一種以上を含む請求項1に記載の磁性粉末複合体。
- 前記金属磁性粉末が、金属成分からなるコアと、酸化物成分からなるシェルから構成される、コア/シェル構造を有する請求項1または2に記載の磁性粉末複合体。
- 原子割合でFeに対するCoの割合が5at%以上55at%以下であり、
前記金属磁性粉末の表面の前記被覆物量は、高周波燃焼法での炭素計測値において、前記磁性粉末複合体中の0.1質量%以上10質量%以下である請求項1から3のいずれかに記載の磁性粉末複合体。 - Fe、Coおよび希土類元素(Y(イットリウム)を含む)を含んでいる金属磁性粉末の表面が、フタル酸、無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸ジメチルおよびそれらの誘導体から選択される一種以上の被覆物により被覆されている磁性粉末複合体が、PPS樹脂、SPS樹脂およびm−PPE樹脂から選択される一種以上の樹脂中に含まれている磁性コンパウンド。
但し、PPS樹脂中に、磁性粉末複合体が含まれている磁性コンパウンドであって、前記磁性粉末複合体は、FeまたはFeとCoとを含む合金に、希土類元素(Y(イットリウム)を含む)、Al、Si、Mgから選択される一種以上が含有される金属磁性粉末の表面が、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸およびそれらの誘導体から選択される一種以上により被覆されたものである磁性コンパウンド、
および、SPSおよびm−PPEから選択される一種以上の樹脂中に、磁性粉末複合体が含まれている磁性コンパウンドであって、前記磁性粉末複合体は、FeまたはFeとCoと含む合金に、希土類元素(Y(イットリウム)を含む)、Al、Si、Mgから選択される一種以上が含有される金属磁性粉末の表面が、フタル酸、無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸ジメチルおよびそれらの誘導体から選択される一種以上により被覆されたものである磁性コンパウンド、を除く。 - 請求項5に記載の磁性コンパウンドにより構成されたアンテナ。
- 請求項6に記載のアンテナを備えた電子機器。
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