JP7224110B2 - ステアリングシステムおよびこれを備えた車両 - Google Patents
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Description
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
走行状況に応じてステアリングジオメトリを可変とした機構に関しては、例えば特許文献1,2が提案されている。特許文献1では、ナックルアームとジョイント位置を相対的に変化させて、ステアリングジオメトリを変化させる。特許文献2では、モータ2個を使い、トー角とキャンバー角の両方を任意の角度に傾けることを可能にしている。
最小半径を小さくするためには、ハンドルの操作量を増加し車輪を大きく転舵させる必要があるが、エンジンまたはトランスミッションとの場所の取り合いによって、ホイールハウジングの大きさには限りがあり干渉してしまうため、車輪の最大転舵角度には限界がある。
特許文献1,2の提案によると、ステアリングジオメトリを変更させることができるが次の課題がある。
操舵指令装置200,200Aが出力する操舵量の指令に従い前記車両100の車輪9を転舵させる第1のステアリング装置11と、
前記車両100のタイヤハウジング105内に設けられた転舵用アクチュエータ5の駆動により左右の車輪9,9を個別に転舵させる機構部150a、および前記転舵用アクチュエータ5を制御する制御部150bを有する第2のステアリング装置150と、
車速および前記第1のステアリング装置のステアリング角度を含む車両情報を検出する車両情報検出部110と、を備え、
前記制御部150bは、前記車速および前記ステアリング角度に応じて、定められた規則に従って前記転舵用アクチュエータ5を制御することで前記左右の車輪9,9の転舵角度を制御する転舵角度制御手段37を有する。
前記定められた規則は、例えば、車速およびステアリング角度と転舵用アクチュエータの駆動量(例えば駆動電流)との関係を設定するマップまたは演算式等を用いて制御規則として定められている。
車輪9を支持するハブベアリング15を有するハブユニット本体2と、
懸架装置12の足回りフレーム部品6に設けられ、前記ハブユニット本体2を上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在に支持するユニット支持部材3と、
前記ハブユニット本体2を前記転舵軸心A回りに回転駆動させる前記転舵用アクチュエータ5と、を備えるものであってもよい。
また、旋回走行時に、走行速度に応じて左右輪9,9の舵角差を変えることができる。例えば高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を任意に変更することができるため、車両100の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の操舵輪の転舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両100の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。
前記機構部150aを左右の後輪9,9に適用した場合は、ハブユニット全体は転舵しないが、補助転舵機能により、前輪と同様に僅かな角度の転舵を車輪毎に独立して行える。
この発明の実施形態に係る第1の実施形態を図1ないし図14と共に説明する。
図1は、この実施形態に係るステアリングシステム101を搭載した自動車等の車両100の概念構成を概略示す図である。車両100は、前輪となる左右の車輪9,9と、後輪となる左右の車輪9,9とを有する4輪車両であり、駆動方式は、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動のいずれであってもよい。
第1のステアリング装置11は、ハンドル200等の操舵指令装置に対する運転者の操作により車両100の転舵輪となる左右の車輪9,9を転舵させる装置であり、この実施形態では前輪操舵形式とされている。
車両100の前輪となる左右の車輪9,9が機械的に連動し、前記操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い車両100の前輪となる左右の車輪9,9を、これら左右の車輪9,9が設置される懸架装置12の左右の足回りフレーム部品であるナックル6,6の角度変更によって操舵する第1のステアリング装置11と、
左右の車輪9,9に対してそれぞれ設けられた補助操舵用のアクチュエータ(転舵用アクチュエータ5(図2))を駆動することで前記足回りフレーム部品であるナックル6,6に対する車輪9,9の角度を変えて左右の車輪9,9を個別に操舵させる第2のステアリング装置150と、
後述する車両情報検出部110と、を備える。
ECU130は、車両100の全体の協調制御または統括制御を行う制御装置であり、VCUとも称される。
第1のステアリング装置11は、運転者によるハンドル200に対する入力に応じて、車両100の前輪となる左右の車輪9,9を連動して転舵させるシステムであり、ステアリングシャフト32、ラックアンドピニオン(図示せず)、タイロッド14等、周知の機械的な構成を備える。運転者がハンドル200に対して回転入力を行うと、ステアリングシャフト32も連動して回転する。ステアリングシャフト32が回転すると、ラックアンドピニオンによってステアリングシャフト32と連結されているタイロッド14が車幅方向に移動することで、車輪9の向きが変わり、左右の車輪9,9を連動して転舵することが可能である。
図1および図9に示すように、第2のステアリング装置150は、左右の車輪9,9を独立して転舵可能である。この第2のステアリング装置150の機構部150aとして右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lを備える。これら右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lは、タイヤハウジング105内に設けられた転舵用アクチュエータ5(図2)により車輪9,9の転舵を行う。
第2のステアリング装置150の機構部150aは、前述のように右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lを備えるが、これら右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lは、いずれも図2に示す転舵機能付ハブユニット1として構成されている。
同図2に示すように、このハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、転舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。
図3および図4に示すように、ハブユニット本体2とアクチュエータ本体7とはジョイント部8により連結されている。通常、このジョイント部8は、防水、防塵のために図示外のブーツが取り付けられている。
図2に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の転舵力受け部であるアーム部17(図4)とを備える。
図8に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図2)とを繋ぐ役目をしている。
図3に示すように、各車輪9には、車両を制動するブレーキ装置であるブレーキ21が設けられている。ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(図6)に取付けられる。
図8に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、テーパころ軸受が適用されている。転がり軸受は、取付軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
図4に示すように、転舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図2)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図3に示すように、アクチュエータ本体7は、モータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
図9に示すように、車両情報検出部110は、車両情報を検出しECU130へ出力する。車両情報検出部110は、車速検出部111、操舵角検出部112、車高検出部113、実ヨーレート検出部114、実横加速度検出部115、アクセルペダルセンサ116、およびブレーキペダルセンサ117を備える。
操舵角検出部112は、例えば第1のステアリング装置11が備えるモータ部に取り付けられたレゾルバ等のセンサ(図示せず)の出力に基づいてステアリング角度(操舵角)を検出し、ECU130へ操舵角情報(単に「ステアリング角度」または「車輪角度」とも言う)を出力する。
実横加速度検出部115は、例えば車両100(図1)に取り付けられたジャイロセンサ等のセンサの出力に基づいて、実横加速度を検出し、ECU130へ実横加速度情報を出力する。アクセルペダルセンサ116は、運転者によるアクセルペダル210への入力を検出し、検出した値をアクセル指令値としてECU130へ出力する。ブレーキペダルセンサ117は、運転者によるブレーキペダル220への入力をブレーキ踏力として検出し、検出した値をブレーキ指令値としてECU130へ出力する。ECU130は、転舵角指令信号を含む車両情報を第2のステアリング装置150の制御部150bに出力する。
第2のステアリング装置150の制御部150bは、ECU130から、車速情報、操舵角情報、車高情報、実ヨーレート情報、実横加速度情報、アクセル指令値、およびブレーキ指令値を含む車両情報を取得し、取得した車両情報に基づいて、補助転舵制御部151が右輪用のアクチュエータ駆動制御部31R、左輪用のアクチュエータ駆動制御部31Lを制御することで、右輪ハブユニット1R、および左輪ハブユニット1Lが備えるモータ26を駆動し、左右の車輪を独立して転舵可能である。
制御部150bは、例えば専用のECUとして設けられるが、メインのECU130の一部として設けてもよい。
θs=αθ・θsmax
このように左右の車輪9,9の転舵角度を制御することで安定して車両を走行することができると共に、旋回半径を小さくすることが可能となる。
図12は、転舵角度を制御する処理を段階的に示すフローチャートである。図9~図11も適宜参照しつつ説明する。
車両走行中において、転舵角度制御手段37は、車速が低速度域(V≦VLkm/h)のとき(ステップS1:Yes)、車輪角度の切り増し角度の上限値θsmaxを最大のBdegとし(ステップS2)、ステップS3に移行する。転舵角度制御手段37は、車速VがVL~VHkm/hのとき(ステップS4:Yes)、車速の上昇に合わせた切り増し角度の上限値とし(ステップS5)、ステップS3に移行する。転舵角度制御手段37は、車速が高速度域(VHkm/h以上)では(ステップS6:Yes)、切り増し角度の上限値θsmaxを0degとする(ステップS7)。車速が高速度域ではないとの判定で(ステップS6:No)、ステップS1に戻る。
図13に示すように、補助転舵制御部151は、規範横加速度計算部152、右輪タイヤ角度計算部153、左輪タイヤ角度計算部154、右輪路面摩擦係数計算部155、目標ヨーレート計算部156、左輪路面摩擦係数計算部157、目標ヨーレート補正部158、目標左右輪タイヤ角度計算部159、右輪指令値計算部160、および左輪指令値計算部161を備える。
右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、ECU130から取得する実横加速度情報および規範横加速度計算部152から入力される規範横加速度情報に基づいて、路面摩擦係数の計算を行う。具体的には、右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、規範横加速度計算部152から規範横加速度情報が入力されると、右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154からタイヤ角度情報を取得する。右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、前記マップ(図14)に基づいて、実横加速度/規範横加速度とタイヤ角度とから、路面摩擦係数を算出する。右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、算出した右輪の路面摩擦係数である右輪路面摩擦係数情報と、左輪の路面摩擦係数である左輪路面摩擦係数情報とを、目標ヨーレート補正部158に出力する。
目標ヨーレート補正部158は、右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157から、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報が入力されると、目標ヨーレート計算部156から目標ヨーレート情報を取得し、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報で表される路面摩擦係数に応じて目標ヨーレートの補正を行う。目標ヨーレート補正部158は、補正後の目標ヨーレートを補正後ヨーレート情報として目標左右輪タイヤ角度計算部159へ出力する。
目標左右輪タイヤ角度計算部159は、計算した左右輪それぞれの目標タイヤ角度を目標タイヤ角度情報として、右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161へ出力する。
具体的には、図9および図13に示すように、各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161から右輪転舵量情報および左輪転舵量情報が入力されると、現在の右輪ハブユニット1R、および左輪ハブユニット1Lの転舵角を表す各モータ26の位置情報を取得し、右輪転舵量情報および左輪転舵量情報に基づいてモータ26の目標位置を決定し、各モータ26へ流す電流の制御を行う。
以上説明したステアリングシステム101によれば、第1のステアリング装置11は、操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い車輪9,9を転舵させる。操舵指令装置として、例えば、運転者のハンドル200または自動の操舵指令装置等を適用し得る。このような操舵指令装置等による車両100の向きの調整が、従来の車両と同様に行える。
また、旋回走行時に、走行速度に応じて左右輪9,9の舵角差を変えることができる。例えば高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を任意に変更することができるため、車両100の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の操舵輪の転舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両100の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
図15に示すように、この第2の実施形態に係るステアリングシステム101は、第1のステアリング装置11と第2のステアリング装置150とが互いに異なる車輪9を転舵する点で、第1の実施形態とは異なる。すなわち、このステアリングシステム101は、第1のステアリング装置11が車両100の左右の前輪9,9の転舵を行い、第2のステアリング装置150が車両100の左右の後輪9,9の転舵を行う。第2のステアリング装置150の機構部150bは、後輪のタイヤハウジング105内に設置されている。
図16に示すように、この第3の実施形態に係るステアリングシステム101は、二つの第2のステアリング装置1501、1502を備えている点で、第1の実施形態とは異なる。
一方の第2のステアリング装置1501は、第1のステアリング装置11と同じ車輪9,9の転舵を行い、他方の第2のステアリング装置1502は、第2のステアリング装置150とは異なる車輪9,9の転舵を行う。すなわち、一方の第2のステアリング装置1502は、第1の実施形態に係る第2のステアリング装置150と同様の動作を行い、他方の第2のステアリング装置1502は、第2の実施形態に係る第2のステアリング装置150と同様の動作を行う。
Claims (6)
- 車両が備えるステアリングシステムであって、
操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い前記車両の車輪を転舵させる第1のステアリング装置と、
前記車両のタイヤハウジング内に設けられた転舵用アクチュエータの駆動により、回転許容支持部品に予圧が与えられた状態でキングピン軸と異なる転舵軸心回りに左右の車輪を個別に転舵させる機構部、および前記転舵用アクチュエータを制御する制御部を有する第2のステアリング装置と、
車速および前記第1のステアリング装置のステアリング角度を含む車両情報を検出する車両情報検出部と、を備え、
前記制御部は、前記車速および前記ステアリング角度に応じて、定められた規則に従って前記転舵用アクチュエータを制御することで前記左右の車輪の転舵角度を制御する転舵角度制御手段を有するステアリングシステム。 - 請求項1に記載のステアリングシステムにおいて、前記転舵角度制御手段は、前記車両の旋回時に前記左右の車輪のうち旋回外輪のみを切り増すように前記転舵用アクチュエータを制御するステアリングシステム。
- 請求項1または請求項2に記載のステアリングシステムにおいて、
前記第2のステアリング装置の前記機構部は、
車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる前記転舵用アクチュエータと、を備えるステアリングシステム。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のステアリングシステムにおいて、前記第2のステアリング装置の前記制御部は、与えられた転舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する補助転舵制御部と、この補助転舵制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記転舵用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有するステアリングシステム。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のステアリングシステムにおいて、前記第2のステアリング装置の前記機構部は、左右の前輪および左右の後輪のいずれか一方または両方を転舵させるステアリングシステム。
- 請求項5に記載のステアリングシステムを備えた車両。
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