JP7116566B2 - ステアリングシステムおよびこれを備えた車両 - Google Patents

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Description

この発明は、ステアリングシステムおよびこれを備えた車両に関し、燃費の改善、車両の走行性の安定と安全性の向上を図る技術に関する。
一般的な自動車等の車両は、ハンドルとステアリング装置が機械的に接続され、また、ステアリング装置の両端はタイロッドによってそれぞれの左右輪につながっている。そのため、ハンドルの動きによる左右輪の切れ角度は初期の設定によって決まる。
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
車両のジオメトリは、走行性の安定と安全性に影響する。
走行状況に応じてステアリングジオメトリを可変とした機構に関しては、例えば特許文献1,2が提案されている。特許文献1では、ナックルアームとジョイント位置を相対的に変化させて、ステアリングジオメトリを変化させる。特許文献2では、モータ2個を使い、トー角とキャンバー角の両方を任意の角度に傾けることを可能にしている。また、4輪独立転舵の機構につき、特許文献3で提案されている。
アッカーマンジオメトリは、車両に作用する遠心力を無視できるような低速域での旋回において、車両をスムーズに旋回させるために、各輪が共通の一点を中心として旋回するように左右輪の舵角差を設定している。しかし、遠心力を無視できない高速域の旋回においては、車輪は遠心力とつり合う方向にコーナリングフォースを発生させることが望ましいため、アッカーマンジオメトリよりもパラレルジオメトリとすることが好ましい。
前述したように一般的な車両の操舵装置は機械的に車輪と接続されているため、一般的には固定された単一のステアリングジオメトリしか取ることができず、アッカーマンジオメトリとパラレルジオメトリとの中間的なジオメトリに設定されることが多い。また、車体側に固定された懸架装置が機械的に車輪と接続されているため、例えば、旋回走行時に車両が傾くか、または乗車人数(搭載重量)の違いで車体側の沈み込み量(車輪一輪毎の沈み込み量も異なる)が変化することで、車輪の角度に変化が生じる。
通常、高速直進時に直進性を安定させるために、車輪に若干のトーインを付けている。しかし、同時にハンドリング性能が若干低下するため、コーナリング時には操作しにくくなる傾向がある。また、この車輪のトーインの状態は車輪の抵抗が増すため、高速直進時のように直進安定性を必要としない低速度域では燃料消費量を悪化させる。
特許文献1,2の提案によると、ステアリングジオメトリを変更させることができるが次の課題がある。
特許文献1では、ナックルアームとジョイント位置を相対的に変化させてステアリングジオメトリを変化させているが、このような部分で車両のジオメトリを変化させるほどの大きな力を得るモータアクチュエータを備えることは、空間の制約上、非常に困難である。また、この位置での変化による車輪角の変化が小さく、大きな効果を得るためには、大きく変化させる、つまり大きく動かす必要がある。
特許文献2では、モータを2個使っているため、モータ個数の増大によるコスト増が生じるだけでなく、制御が複雑になる。
特許文献3は、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行横力の発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また、転舵軸上に減速機を設けた場合、モータを含めてサイズが大きくなる。サイズが大きくなると車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
特開2009-226972号公報 独国特許出願公開第102012206337号明細書 特開2014-061744号公報
車輪とステアリング装置とが機械的に連結されている車両においては、車輪のトー角を走行中に変更することができない。したがって、ある限定された条件(例えば、直進安定性の向上を求める場合はトーインにする)を想定して、初期のトー角を設定するため、状況においては走行の安定性を悪化させるか、または燃費を悪化させる場合がある。
従来の補助的な転舵機能を備えた機構では、車両において車輪のトー角またはキャンバー角度を自由に変更することを目的にしているため、複雑な構成となっている。また、構成部品数が多く剛性を確保することが難しく、剛性を確保するため機構全体が大型化し重量増となる。
この発明の目的は、簡単な構造で、車両の直進安定性を向上させ、また燃費の向上を図ることができるステアリングシステムおよびこれを備えた車両を提供することである。
この発明のステアリングシステム101は、車両100が備えるステアリングシステムであって、
操舵指令装置200,200Aが出力する操舵量の指令に従い前記車両100の車輪9を転舵させる第1のステアリング装置11と、
前記車両100のタイヤハウジング105内に設けられた転舵用アクチュエータ5の駆動により左右の車輪9,9を個別に転舵させる機構部150a、および前記転舵用アクチュエータ5を制御する制御部150bを有する第2のステアリング装置150と、
前記車両100の速度および操舵角を含む車両情報を検出する車両情報検出部110と、を備え、
前記制御部150bは、前記操舵角から前記車両100が直進状態か否かを判定する判定手段33と、この判定手段33により前記車両100が直進状態と判定されたとき、前記車両100の速度に応じて前記転舵用アクチュエータ5を制御することで前記左右の車輪9,9のトー角を制御する車速対応トー角制御手段34と、を有する。
この構成によると、第1のステアリング装置11は、操舵指令装置200が出力する操舵量の指令に従い車輪を転舵させる。操舵指令装置200,200Aとして、例えば、運転者のハンドルまたは自動の操舵指令装置等を適用し得る。このような操舵指令装置等による車両100の向きの調整が、従来の車両と同様に行える。
第2のステアリング装置150は、タイヤハウジング105内に設けられた転舵用アクチュエータ5を駆動することで、左右の車輪9,9を個別に転舵させる。この第2のステアリング装置150の制御部150bのうち、判定手段33は操舵角から車両100が直進状態か否かを判定する。前記直進状態であるとの判定で、制御部150bにおける車速対応トー角制御手段34は、車両100の速度に応じて転舵用アクチュエータ5を制御することで前記左右の車輪9,9のトー角を制御する。例えば、高速直進時には、左右の車輪9,9を車速に応じた角度にトーイン状態にすることによって、直進安定性を向上させることができる。低速直進時には、車輪9,9を直進状態にすることで、走行抵抗を低減させ燃費を向上させることができる。前記車輪9,9を直進状態にするとは、車両100の平面視において、車両前後方向に対してなす車輪角度の絶対値を定められた角度より小さくすることを意味する。前記定められた角度は、設計等によって任意に定める角度であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な角度を求めて定められる。したがって、構造を複雑化することなく車両100の直進安定性を向上させ、また燃費の向上を図ることができる。
前記車速対応トー角制御手段34は、前記車両100の速度が定められた車速域のとき、車速が上昇するに従って前記左右の車輪9,9のトー角を大きく制御するものであってもよい。
前記定められた車速域は、設計等によって任意に定める車速域であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な車速域を求めて定められる。
この構成によると、車速が上昇するに従って左右の車輪9,9のトー角を大きく制御することで、直進安定性を向上することができる。
記車速対応トー角制御手段34は、前記車両100の速度が定められた速度以下のとき、前記左右の車輪9,9のトー角を零に制御するものであってもよい。
前記定められた速度は、設計等によって任意に定める速度であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な速度を求めて定められる。
この場合、車速が定められた速度以下のとき、車輪9,9を直進状態にすることで、走行抵抗を低減させ燃費を向上させることができる。
前記第2のステアリング装置150の前記機構部150aは、
車輪9を支持するハブベアリング15を有するハブユニット本体2と、
懸架装置12の足回りフレーム部品6に設けられ、前記ハブユニット本体2を上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在に支持するユニット支持部材3と、
前記ハブユニット本体2を前記転舵軸心A回りに回転駆動させる前記転舵用アクチュエータ5と、を備えるものであってもよい。
この構成によると、車輪9を支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、転動用アクチュエータ5の駆動により、前記転舵軸心A回りに一定の範囲で自由に回転させることができる。このため、車輪毎に独立して転舵が行え、また車両100の走行状況に応じて、車輪9のトー角を任意に変更することができる。
また、旋回走行時に、走行速度に応じて左右輪9,9の舵角差を変えることができる。例えば高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を任意に変更することができるため、車両100の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の操舵輪の転舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両100の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。
前記第2のステアリング装置150の前記制御部150bは、与えられた転舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する補助転舵制御部151と、この補助転舵制御部151から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記転動用アクチュエータ5を駆動制御するアクチュエータ駆動制御部31R,31Lとを有するものであってもよい。
この構成によると、補助転舵制御部151は、与えられた転舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する。アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、補助転舵制御部151から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して転動用アクチュエータ5を駆動制御する。したがって、運転者のハンドル操作等による転舵に付加して車輪角度を任意に変更することができる。
前記第2のステアリング装置150の前記機構部150aは、左右の前輪9,9および左右の後輪9,9のいずれか一方または両方を転舵させるものであってもよい。前記機構部150aを左右の前輪9,9に適用した場合、運転者のハンドル操作等で車輪9の方向がハブユニット全体と共に転舵されるが、この転舵に付加する形で僅かな角度の補助転舵を車輪毎に独立して行うことができる。
前記機構部150aを左右の後輪9,9に適用した場合は、ハブユニット全体は転舵しないが、補助転舵機能により、前輪と同様に僅かな角度の転舵を車輪毎に独立して行える。
この発明の車両は、この発明の上記の構成のステアリングシステムを備えている。そのため、この発明のステアリングシステムにつき前述した各効果が得られる。
この発明のステアリングシステムは、車両が備えるステアリングシステムであって、操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い前記車両の車輪を転舵させる第1のステアリング装置と、前記車両のタイヤハウジング内に設けられた転舵用アクチュエータの駆動により左右の車輪を個別に転舵させる機構部、および前記転舵用アクチュエータを制御する制御部を有する第2のステアリング装置と、前記車両の速度および操舵角を含む車両情報を検出する車両情報検出部と、を備え、前記制御部は、前記操舵角から前記車両が直進状態か否かを判定する判定手段と、この判定手段により前記車両が直進状態と判定されたとき、前記車両の速度に応じて前記転舵用アクチュエータを制御することで前記左右の車輪のトー角を制御する車速対応トー角制御手段と、を有する。このため、簡単な構造で、車両の直進安定性を向上させ、また燃費の向上を図ることができる。
この発明の車両は、前記第2のステアリング装置の前記機構部が、左右の前輪および左右の後輪のいずれか一方または両方を転舵させるステアリングシステムを備えているため、簡単な構造で、車両の直進安定性を向上させ、また燃費の向上を図ることができる。
この発明の第1の実施形態に係るステアリングシステムの概念構成を概略示す図である。 同ステアリングシステムにおける第2のステアリング装置の機構部およびその周辺の構成を示す縦断面図である。 同第2のステアリング装置の機構部等の構成を示す水平断面図である。 同第2のステアリング装置の機構部の外観を示す斜視図である。 同第2のステアリング装置の機構部の分解正面図である。 同第2のステアリング装置の機構部の側面図である。 同第2のステアリング装置の機構部の平面図である。 図6のVIII - VIII線断面図である。 同ステアリングシステムの概念構成を示すブロック図である。 車速とトー角との関係を示す図である。 同トー角を制御する処理を段階的に示すフローチャートである。 同第2のステアリング装置の補助転舵制御部の構成を示すブロック図である。 実横加速度/規範横加速度およびタイヤ角度と摩擦係数の関係例を示すグラフである。 この発明の第2の実施形態に係るステアリングシステムの概念構成を概略示す図である。 この発明の第3の実施形態に係るステアリングシステムの概念構成を概略示す図である。
[第1の実施形態]
この発明の第1の実施形態を図1ないし図13と共に説明する。
図1は、この実施形態に係るステアリングシステム101を搭載した自動車等の車両100の概念構成を概略示す図である。車両100は、前輪となる左右の車輪9,9と、後輪となる左右の車輪9,9とを有する4輪車両であり、駆動方式は、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動のいずれであってもよい。
このステアリングシステム101は、車両100の転舵を行うためのシステムであり、第1のステアリング装置11と、第2のステアリング装置150と、車両情報検出部110とを備える。
第1のステアリング装置11は、ハンドル200等の操舵指令装置に対する運転者の操作により車両100の転舵輪となる左右の車輪9,9を転舵させる装置であり、この実施形態では前輪操舵形式とされている。
第2のステアリング装置150は、車両100の状態に応じた制御によって補助的な転舵を行う装置であり、機構部150aと、制御部150bとを有する。機構部150aは、補助転舵の対象となる車輪9,9毎に設けられる機構である。この機構部150aは、車両100のタイヤハウジング105内に設けられて転舵用アクチュエータ5(図2)の駆動により車輪9を個別に転舵させる。制御部150bは、車両情報検出部110により検出された車両100の状態を表す車両情報に基づいて制御する。
換言すれば、ステアリングシステム101は、
車両100の前輪となる左右の車輪9,9が機械的に連動し、前記操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い車両100の前輪となる左右の車輪9,9を、これら左右の車輪9,9が設置される懸架装置12の左右の足回りフレーム部品であるナックル6,6の角度変更によって操舵する第1のステアリング装置11と、
左右の車輪9,9に対してそれぞれ設けられた補助操舵用のアクチュエータ(転舵用アクチュエータ5(図2))を駆動することで前記足回りフレーム部品であるナックル6,6に対する車輪9,9の角度を変えて左右の車輪9,9を個別に操舵させる第2のステアリング装置150と、
後述する車両情報検出部110と、を備える。
車両情報検出部110は、車両100の状態を検出する手段であり、各種のセンサ類の群を称している。車両情報検出部110の検出した車両情報は、メインのECU130を介して第2のステアリング装置150の制御部150bに転送される。
ECU130は、車両100の全体の協調制御または統括制御を行う制御装置であり、VCUとも称される。
<第1のステアリング装置11の構成>
第1のステアリング装置11は、運転者によるハンドル200に対する入力に応じて、車両100の前輪となる左右の車輪9,9を連動して転舵させるシステムであり、ステアリングシャフト32、ラックアンドピニオン(図示せず)、タイロッド14等、周知の機械的な構成を備える。運転者がハンドル200に対して回転入力を行うと、ステアリングシャフト32も連動して回転する。ステアリングシャフト32が回転すると、ラックアンドピニオンによってステアリングシャフト32と連結されているタイロッド14が車幅方向に移動することで、車輪9の向きが変わり、左右の車輪9,9を連動して転舵することが可能である。
<第2のステアリング装置150の概略構成>
図1および図9に示すように、第2のステアリング装置150は、左右の車輪9,9を独立して転舵可能である。この第2のステアリング装置150の機構部150aとして右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lを備える。これら右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lは、タイヤハウジング105内に設けられた転舵用アクチュエータ5(図2)により車輪9,9の転舵を行う。
<第2のステアリング装置150の機構部150aの具体的構成例>
第2のステアリング装置150の機構部150aは、前述のように右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lを備えるが、これら右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lは、いずれも図2に示す転舵機能付ハブユニット1として構成されている。
同図2に示すように、このハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、転舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。
図5に示すように、このユニット支持部材3のインボード側に、転舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。ハブユニット1(図2)を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。
図3および図4に示すように、ハブユニット本体2とアクチュエータ本体7とはジョイント部8により連結されている。通常、このジョイント部8は、防水、防塵のために図示外のブーツが取り付けられている。
図2に示すように、ハブユニット本体2は、上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在なように、上下二箇所で回転許容支持部品4,4を介してユニット支持部材3に支持されている。転舵軸心Aは、車輪9の回転軸心Oとは異なる軸心であり、主な転舵を行うキングピン軸とも異なっている。通常の車両は、車両走行の直進安定性の向上を目的としてキングピン角度が10~20度で設定されているが、この実施形態のハブユニット1は、前記キングピン角度とは別の角度(軸)の転舵軸を有する。車輪9は、ホイール9aとタイヤ9bとを備える。
図1に示すように、この実施形態のハブユニット1(図2)は、第1のステアリング装置11による前輪となる左右の車輪9,9の転舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を転舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。第1のステアリング装置11は、ラックアンドピニオン式とされるが、どのタイプのステアリング装置でも構わない。懸架装置12は、例えば、ショックアブソーバーをナックル6に直接固定するストラット式サスペンション機構を適用しているが、マルチリンク式サスペンション機構、その他のサスペンション機構を適用してもよい。
<ハブユニット本体2について>
図2に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の転舵力受け部であるアーム部17(図4)とを備える。
図8に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図2)とを繋ぐ役目をしている。
このハブベアリング15は、図示の例では、外輪19が固定輪、内輪18が回転輪となり、転動体20が複列とされたアンギュラ玉軸受とされている。内輪18は、ハブフランジ18aaを有しアウトボード側の軌道面を構成するハブ輪部18aと、インボード側の軌道面を構成する内輪部18bとを有する。図2に示すように、ハブフランジ18aaに、車輪9のホイール9aがブレーキロータ21aと重なり状態でボルト固定されている。内輪18は、回転軸心O回りに回転する。
図8に示すように、アウターリング16は、外輪19の外周面に嵌合された円環部16aと、この円環部16aの外周から上下に突出して設けられたトラニオン軸状の取付軸部16b,16bとを有する。各取付軸部16bは、転舵軸心Aに同軸に設けられる。
図3に示すように、ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(図6)に取付けられる。
<回転許容支持部品およびユニット支持部材について>
図8に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、テーパころ軸受が適用されている。転がり軸受は、取付軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
ユニット支持部材3は、ユニット支持部材本体3Aと、ユニット支持部材結合体3Bとを有する。ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端に、略リング形状のユニット支持部材結合体3Bが着脱自在に固定されている。ユニット支持部材結合体3Bのインボード側側面のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3aがそれぞれ形成されている。
図7および図8に示すように、ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3Aaがそれぞれ形成されている。図4に示すように、ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端にユニット支持部材結合体3Bが固定され、各上下の部分につき、嵌合孔形成部3a,3Aa(図7)が互いに組み合わされることにより、全周に連なる嵌合孔が形成される。この嵌合孔に外輪4bが嵌合されている。なお図4において、ユニット支持部材3を一点鎖線で表す。
図8に示すように、アウターリング16における各取付軸部16bには、雌ねじ部が径方向に延びるように形成され、この雌ねじ部に螺合するボルト23が設けられている。内輪4aの端面に円板状の押圧部材24を介在させ、前記雌ねじ部に螺合するボルト23により、内輪4aの端面に押圧力を付与することで、各回転許容支持部品4にそれぞれ予圧を与えている。これにより各回転許容支持部品4の剛性を高め得る。車両の重量がこのハブユニットに作用した場合でも初期予圧が抜けないように設定される。なお、回転許容支持部品4の転がり軸受は、テーパころ軸受に限るものではなく、最大負荷等の使用条件によってはアンギュラ玉軸受を用いることも可能である。その場合も、上記と同様に予圧を与えることができる。
図3に示すように、アーム部17は、ハブベアリング15の外輪19に転舵力を与える作用点となる部位であり、円環部16aの外周の一部または外輪19の外周の一部に一体に突出する。このアーム部17は、ジョイント部8を介して、転舵用アクチュエータ5の直動出力部25aに回転自在に連結されている。これにより、転舵用アクチュエータ5の直動出力部25aが進退することで、ハブユニット本体2が転舵軸心A(図2)回りに回転、つまり転舵させられる。
<転舵用アクチュエータ5について>
図4に示すように、転舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図2)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図3に示すように、アクチュエータ本体7は、モータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
減速機27は、ベルト伝達機構等の巻き掛け式伝達機構またはギヤ列等を用いることができ、図3の例ではベルト伝達機構が用いられている。減速機27は、ドライブプーリ27aと、ドリブンプーリ27bと、ベルト27cとを有する。モータ26のモータ軸にドライブプーリ27aが結合され、直動機構25にドリブンプーリ27bが設けられている。このドリブンプーリ27bは、前記モータ軸に平行に配置されている。モータ26の駆動力は、ドライブプーリ27aからベルト27cを介してドリブンプーリ27bに伝達される。前記各ドライブプーリ27aとドリブンプーリ27bとベルト27cとで、巻き掛け式の減速機27が構成される。
直動機構25は、滑りねじまたはボールねじ等の送りねじ機構、またはラック・ピニオン機構等を用いることができ、この例では台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構が用いられている。直動機構25は、前記台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構を備えるため、タイヤ9bからの逆入力の防止効果を高め得る。モータ26、減速機27および直動機構25を備えたアクチュエータ本体7は、準組立品として組み立てられてケース6bにボルト等により着脱自在に取り付けられる。なおモータ26の駆動力を、減速機を介さず直接直動機構25へ伝達する機構も可能である。
ケース6bは、ユニット支持部材3の一部として、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ケース6bは、有底筒状に形成され、モータ26を支持するモータ収容部と、直動機構25を支持する直動機構収容部が設けられている。前記モータ収容部には、モータ26をケース内所定位置に支持する嵌合孔が形成されている。前記直動機構収容部には、直動機構25をケース内所定位置に支持する嵌合孔、および、直動出力部25aの進退を許す貫通孔等が形成されている。
図4に示すように、ユニット支持部材本体3Aは、前記ケース6b、ショックアブソーバの取り付け部となるショックアブソーバ取り付け部6c、および第1のステアリング装置11(図3)の結合部となるステアリング装置結合部6dを有する。これらショックアブソーバ取り付け部6cおよびステアリング装置結合部6dも、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における上部に、ショックアブソーバ取り付け部6cが突出するように形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における側面部には、ステアリング装置結合部6dが突出するように形成されている。
<車両情報検出部110の構成>
図9に示すように、車両情報検出部110は、車両情報を検出しECU130へ出力する。車両情報検出部110は、車速検出部111、操舵角検出部112、車高検出部113、実ヨーレート検出部114、実横加速度検出部115、アクセルペダルセンサ116、およびブレーキペダルセンサ117を備える。
車速検出部111は、例えば車両が備えるトランスミッションの内部に取り付けたスピードセンサ等のセンサ(図示せず)の出力に基づいて、この車両の速度(車速)を検出し、ECU130へ車速情報(単に「車速」とも言う)を出力する。
操舵角検出部112は、例えば第1のステアリング装置11が備えるモータ部に取り付けられたレゾルバ等のセンサ(図示せず)の出力に基づいて操舵角を検出し、ECU130へ操舵角情報(単に「操舵角」とも言う)を出力する。
車高検出部113は、車両100(図1)のシャーシと地面との距離をレーザ変位計により測定する方法、あるいは車両100の懸架装置12(図1)における図示外のアッパーアームまたはロアアームの角度を角度センサにより検出する方法等により、第2のステアリング装置150により転舵される各車輪9(図1)の車高を検出する。そして、車高検出部113は、検出した車高を車高情報としてECU130へ出力する。
実ヨーレート検出部114は、例えば車両100(図1)に取り付けられたジャイロセンサ等のセンサの出力に基づいて、実ヨーレートを検出し、ECU130へ実ヨーレート情報を出力する。
実横加速度検出部115は、例えば車両100(図1)に取り付けられたジャイロセンサ等のセンサの出力に基づいて、実横加速度を検出し、ECU130へ実横加速度情報を出力する。アクセルペダルセンサ116は、運転者によるアクセルペダル210への入力を検出し、検出した値をアクセル指令値としてECU130へ出力する。ブレーキペダルセンサ117は、運転者によるブレーキペダル220への入力を検出し、検出した値をブレーキ指令値としてECU130へ出力する。ECU130は、転舵角指令信号を含む車両情報を第2のステアリング装置150の制御部150bに出力する。
<第2のステアリング装置150の制御部150b>
第2のステアリング装置150の制御部150bは、ECU130から、車速情報、操舵角情報、車高情報、実ヨーレート情報、実横加速度情報、アクセル指令値、およびブレーキ指令値を含む車両情報を取得し、取得した車両情報に基づいて、補助転舵制御部151が右輪用のアクチュエータ駆動制御部31R、左輪用のアクチュエータ駆動制御部31Lを制御することで、右輪ハブユニット1R、および左輪ハブユニット1Lが備えるモータ26を駆動し、左右の車輪を独立して転舵可能である。
制御部150bにおいて、前記車両情報である操舵角情報等の各情報と前記モータ26を駆動する指令値との関係は、例えばマップまたは演算式等を用いて制御規則として定められており、その制御規則を用いて制御を行う。
制御部150bは、例えば専用のECUとして設けられるが、メインのECU130の一部として設けてもよい。
制御部150bにおける補助転舵制御部151は、判定手段33と車速対応トー角制御手段34とを有する。判定手段33は、ECU130から取得した操舵角から車両100(図1)が直進状態か否かを判定する。車速対応トー角制御手段34は、判定手段33により車両100(図1)が直進状態と判定されたとき、車速に応じて各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lを制御し、各モータ26を駆動制御することで左右の車輪のトー角を制御する。
具体的には、判定手段33は、ハンドル200と連結される第1のステアリング装置11により転舵される車輪角度(操舵角)θTを、操舵角検出部112からECU130を介して得る。判定手段33は、この車輪角度θTの絶対値が定められた角度Aより小さいか(|θT|<Adegであるか)否かを判定する。車速対応トー角制御手段34は、判定手段33により|θT|<Adegと判定された場合、図10に示すように車速によってトー角を調整する。前記Aは、微小な角度(10deg以下)としているが、車両情報によって数値は異なる。図10におけるトーイン角度Xdegは、車速が定められた速度以下(例えば、低速直進時)のときの設定角度であり、例えば、零度である。なお、トーイン角度Xdegは僅かにトーイン状態となる角度であってもよい。
図9および図10に示すように、車速対応トー角制御手段34は、車速が定められた車速域(例えば、高速直進時)のとき、車速が上昇するに従って左右の車輪のトー角を大きく制御する(換言すれば、車速に応じた角度にトーイン状態にする)ことによって直進安定性を向上させることができる。また車速対応トー角制御手段34は、車速が定められた速度以下(例えば、低速直進時)のとき、左右の車輪のトー角を設定された前記トーイン角度Xdegに制御する(換言すれば、左右の車輪を直進状態にする)ことで、走行抵抗を低減させ燃費を向上させることが可能となる。
図11は、トー角を制御する処理を段階的に示すフローチャートである。図9および図10も参照しつつ説明する。本処理開始後、車速検出部111からECU130を介して得られた車速からこの車両が走行状態であると制御部150bが判断すると、判定手段33は、車輪角度θTの絶対値が定められた角度より小さいか(|θT|<Adegであるか)否かを判定する(ステップS1)。車輪角度θTの絶対値が定められた角度以上であるとの判定(ステップS1:No)で、ステップS1に戻る。
車輪角度θTの絶対値が定められた角度より小さい、つまり車両が直進状態であるとの判定(ステップS1:Yes)で、車速対応トー角制御手段34は、車速Vが低速度域(VLkm/h以下(ステップS2:Yes))では、トー角をX+0deg(直進状態)とし(ステップS3)、車速がVLkm/hから車速の上昇に合わせ(ステップS4:Yes)徐々にトー角を増加させ(ステップS5)、高速度域(VHkm/h以上(ステップS6:Yes))では最大のトー角(X+Bdeg)で一定とする(ステップS7)。Xdeg、Bdeg、VLkm/h、VHkm/hは、車両情報によって異なる値である。
トー角をある角度Bdeg超えて与えると、走行抵抗が増加しすぎて、車輪にすべりが生じる等安定して走行することができなくなる。車速VLkm/h以下では、走行抵抗を小さくするために、トー角は約0degが好ましい。
車速に応じてトー角を算出した後、制御部150bは各転舵用アクチュエータの駆動条件(モータ26に流す電流等)を算出し(ステップS8)、各転舵用アクチュエータを駆動する(ステップS9)。その後ステップS1に戻る。
補助転舵制御部151は、前記車両の直進状態のトー角制御に加えて以下のように左右の車輪を独立して転舵する制御を行う。
図12に示すように、補助転舵制御部151は、規範横加速度計算部152、右輪タイヤ角度計算部153、左輪タイヤ角度計算部154、右輪路面摩擦係数計算部155、目標ヨーレート計算部156、左輪路面摩擦係数計算部157、目標ヨーレート補正部158、目標左右輪タイヤ角度計算部159、右輪指令値計算部160、および左輪指令値計算部161を備える。
右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154は、所定の周期で、ECU130から操舵角情報および車高情報を取得する。右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154は、取得した操舵角情報および車高情報に基づいて、第2のステアリング装置150(図9)が転舵を行うタイヤの現在の角度を算出し、算出したタイヤ角度情報を規範横加速度計算部152に出力する。
規範横加速度計算部152は、ECU130から取得した車速情報および前記タイヤ角度情報に基づいて、規範横加速度の計算を行う。規範横加速度計算部152は、算出した規範横加速度を規範横加速度情報として右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157に出力する。
図13は路面摩擦係数を算出するためのマップを表す図であり、このマップは、図12に示す右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157に記憶されている。
右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、ECU130から取得する実横加速度情報および規範横加速度計算部152から入力される規範横加速度情報に基づいて、路面摩擦係数の計算を行う。具体的には、右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、規範横加速度計算部152から規範横加速度情報が入力されると、右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154からタイヤ角度情報を取得する。右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、前記マップ(図13)に基づいて、実横加速度/規範横加速度とタイヤ角度とから、路面摩擦係数を算出する。右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、算出した右輪の路面摩擦係数である右輪路面摩擦係数情報と、左輪の路面摩擦係数である左輪路面摩擦係数情報とを、目標ヨーレート補正部158に出力する。
目標ヨーレート計算部156は、ECU130から所定の周期で取得する車速情報および操舵角情報に基づいて、目標ヨーレートを計算し、算出した目標ヨーレートを目標ヨーレート情報として目標ヨーレート補正部158に出力する。
目標ヨーレート補正部158は、右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157から、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報が入力されると、目標ヨーレート計算部156から目標ヨーレート情報を取得し、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報で表される路面摩擦係数に応じて目標ヨーレートの補正を行う。目標ヨーレート補正部158は、補正後の目標ヨーレートを補正後ヨーレート情報として目標左右輪タイヤ角度計算部159へ出力する。
目標左右輪タイヤ角度計算部159は、前記補正後ヨーレート情報が入力されると、ECU130から実ヨーレート情報、アクセル指令値およびブレーキ指令値を取得し、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報を取得し、左右輪のタイヤ角度の目標値である目標左右輪タイヤ角度を計算する。具体的には、目標左右輪タイヤ角度計算部159は、下記式(1)に基づいて、左右それぞれのタイヤの目標の角度を算出する。
Figure 0007116566000001
式(1)において、θは実ヨーレート情報で表される実際の車両のヨーレート量、Xはアクセル指令値、Xはブレーキ指令値、μは右輪路面摩擦係数、μは左輪路面摩擦係数、θtR1は右輪の目標タイヤ角度、θtL1は左輪の目標タイヤ角度である。
目標左右輪タイヤ角度計算部159は、計算した左右輪それぞれの目標タイヤ角度を目標タイヤ角度情報として、右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161へ出力する。
右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161は、前記各目標タイヤ角度情報が入力されると、右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154から、現在のタイヤ角度を表すタイヤ角度情報を取得し、目標タイヤ角度情報で表される目標タイヤ角度と、現在のタイヤ角度とを比較する。目標タイヤ角度と現在のタイヤ角度とを比較した結果、偏差がある場合には、右輪ハブユニット1R(図9)および左輪ハブユニット1L(図9)のそれぞれを転舵させる量を表す右輪転舵量情報および左輪転舵量情報を生成する。右輪指令値計算部160は、生成した右輪転舵量情報(電流指令信号)を右輪用のアクチュエータ駆動制御部31Rへ出力し、左輪指令値計算部161は、生成した左輪転舵量情報(電流指令信号)を左輪用のアクチュエータ駆動制御部31Lへ出力する。
各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lはインバータを備える。各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、前記右輪転舵量情報および前記左輪転舵量情報に基づいて、各転舵用アクチュエータのモータ26(図9)への電流を制御する。
具体的には、図9および図12に示すように、各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161から右輪転舵量情報および左輪転舵量情報が入力されると、現在の右輪ハブユニット1R、および左輪ハブユニット1Lの転舵角を表す各モータ26の位置情報を取得し、右輪転舵量情報および左輪転舵量情報に基づいてモータ26の目標位置を決定し、各モータ26へ流す電流の制御を行う。
すなわち、図4に示すように、各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、補助転舵制御部151から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して転舵用アクチュエータ5を駆動制御する。アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、モータ26のコイルに供給する電力を制御する。このアクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、例えば、図示外のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を構成し、前記スイッチ素子のON-OFFデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う。これにより、運転者のハンドル操作による転舵に付加して、車輪を微小に角度変化することができる。直線走行時にも、車速に応じてトー角の量を調整し得る。
<作用効果>
以上説明したステアリングシステム101によれば、第1のステアリング装置11は、操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い車輪9,9を転舵させる。操舵指令装置として、例えば、運転者のハンドル200または自動の操舵指令装置等を適用し得る。このような操舵指令装置等による車両100の向きの調整が、従来の車両と同様に行える。
第2のステアリング装置150は、タイヤハウジング105内に設けられた転舵用アクチュエータ5を駆動することで、左右の車輪9,9を個別に転舵させる。この第2のステアリング装置150の制御部150bのうち、判定手段33は操舵角から車両100が直進状態か否かを判定する。前記直進状態であるとの判定で、車速対応トー角制御手段34は、車両100の速度に応じて転舵用アクチュエータ5を制御することで左右の車輪9,9のトー角を制御する。
高速直進時には、左右の車輪9,9を車速に応じた角度にトーイン状態(図1の点線で表示する左右の車輪9,9の状態)にすることによって、直進安定性を向上させることができる。低速直進時には、車輪9,9を直進状態にすることで、走行抵抗を低減させ燃費を向上させることができる。したがって、構造を複雑化することなく車両100の直進安定性を向上させ、また燃費の向上を図ることができる。
第2のステアリング装置150の機構部150aにおいて、ハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、転動用アクチュエータ5の駆動により、前記転舵軸心A回りに一定の範囲で自由に回転させることができる。このため、車輪毎に独立して転舵が行え、また車両100の走行状況に応じて、車輪9のトー角を任意に変更することができる。
また、旋回走行時に、走行速度に応じて左右輪9,9の舵角差を変えることができる。例えば高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を任意に変更することができるため、車両100の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の操舵輪の転舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両100の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
[第2の実施形態]
図14に示すように、この第2の実施形態に係るステアリングシステム101は、第1のステアリング装置11と第2のステアリング装置150とが互いに異なる車輪9を転舵する点で、第1の実施形態とは異なる。すなわち、このステアリングシステム101は、第1のステアリング装置11が車両100の左右の前輪9,9の転舵を行い、第2のステアリング装置150が車両100の左右の後輪9,9の転舵を行う。第2のステアリング装置150の機構部150bは、後輪のタイヤハウジング105内に設置されている。
[第3の実施形態]
図15に示すように、この第3の実施形態に係るステアリングシステム101は、二つの第2のステアリング装置150、150を備えている点で、第1の実施形態とは異なる。
一方の第2のステアリング装置150は、第1のステアリング装置11と同じ車輪9,9の転舵を行い、他方の第2のステアリング装置150は、第2のステアリング装置150とは異なる車輪9,9の転舵を行う。すなわち、一方の第2のステアリング装置150は、第1の実施形態に係る第2のステアリング装置150と同様の動作を行い、他方の第2のステアリング装置150は、第2の実施形態に係る第2のステアリング装置150と同様の動作を行う。
このステアリングシステム101によれば、複数(この例では二つ)の第2のステアリング装置150、150を備えていることにより、より複雑に4輪を独立して転舵することが可能となり、車両100の走行安定性の向上および燃費の低減を図ることが可能となる。
さらに他の実施形態に係るステアリングシステムを備える車両として、左右の各車輪がそれぞれ独立して操舵可能なステアリング装置である第2のステアリング装置を備え、各車輪が操舵用アクチュエータにより各々独立して駆動可能とされ、これらのステアリング装置は、例えば、操舵指令装置と機械的に連結されていないステアバイワイヤ形式であってもよい。
なお、前記各実施形態は、操舵指令装置がハンドル200である場合につき説明したが、ハンドル200以外の手動の操舵指令装置、例えばジョイスティックであってもよく、また例えば図9に示すような自動の操舵指令装置200Aであってもよい。この自動の操舵指令装置200Aは、車両周辺状況検出手段230から車両周辺状況等を認識し、操舵指令を自動生成する装置である。車両周辺状況検出手段230は、例えば、カメラまたはミリ波のレーダ等のセンサ類である。
自動の操舵指令装置200Aは、例えば道路上の白線および障害物を認識し、操舵指令を生成して出力する。自動の操舵指令装置200Aは、車両の自動運転を行う装置の一部であっても、手動運転による操舵の支援を行う装置であってもよい。このような自動で操舵指令を生成する操舵指令装置200Aを備えた車両においても、第2のステアリング装置150を備えることで、トー角制御等の第1のステアリング装置11では行えない動作が行え、また車両の走行方向の主な操舵を第1のステアリング装置11で行い、その補正を第2のステアリング装置150で行うようにすることもでき、操舵量指令に対して車両の向きの補正を可能とし、車両の走行安定性を維持することが可能となる。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2…ハブユニット本体、3…ユニット支持部材、5…転舵用アクチュエータ、6…ナックル(足回りフレーム部品)、9…車輪、11…第1のステアリング装置、12…懸架装置、15…ハブベアリング、31R,31L…アクチュエータ駆動制御部、33…判定手段、34…車速対応トー角制御手段、100…車両、101…ステアリングシステム、105…タイヤハウジング、110…車両情報検出部、150…第2のステアリング装置、150a…機構部、150b…制御部、151…補助転舵制御部、200…ハンドル(操舵指令装置)、200A…自動の操舵指令装置

Claims (6)

  1. 車両が備えるステアリングシステムであって、
    操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い前記車両の車輪を転舵させる第1のステアリング装置と、
    前記車両のタイヤハウジング内に設けられた転舵用アクチュエータの駆動により左右の車輪を個別に転舵させる機構部、および前記転舵用アクチュエータを制御する制御部を有する第2のステアリング装置と、
    前記車両の速度および操舵角を含む車両情報を検出する車両情報検出部と、を備え、
    前記第2のステアリング装置の前記機構部は、前記車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
    懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
    前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる前記転舵用アクチュエータと、を備え
    前記ユニット支持部材は、上下に突出して設けられたトラニオン軸状の取付け軸部を有し、
    前記取付け軸部は、前記転舵軸心と同軸であり、
    前記制御部は、前記操舵角から前記車両が直進状態か否かを判定する判定手段と、この判定手段により前記車両が直進状態と判定されたとき、前記車両の速度に応じて前記転舵用アクチュエータを制御することで前記左右の車輪のトー角を制御する車速対応トー角制御手段と、を有するステアリングシステム。
  2. 請求項1に記載のステアリングシステムにおいて、前記車速対応トー角制御手段は、前記車両の速度が定められた車速域のとき、車速が上昇するに従って前記左右の車輪のトー角を大きく制御するステアリングシステム。
  3. 請求項1または請求項2に記載のステアリングシステムにおいて、前記車速対応トー角制御手段は、前記車両の速度が定められた速度以下のとき、前記左右の車輪のトー角を零に制御するステアリングシステム。
  4. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のステアリングシステムにおいて、前記第2のステアリング装置の前記制御部は、与えられた転舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する補助転舵制御部と、この補助転舵制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記転動用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有するステアリングシステム。
  5. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のステアリングシステムにおいて、前記第2のステアリング装置の前記機構部は、左右の前輪および左右の後輪のいずれか一方または両方を転舵させるステアリングシステム。
  6. 請求項に記載のステアリングシステムを備えた車両。
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