JP2020097255A - 操舵機能付ハブユニットおよび操舵システム並びにこれを備えた車両 - Google Patents
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車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
特許文献2に記載の技術は、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また、転舵軸上に減速機を設けた場合、モータを含めてサイズが大きくなる。サイズが大きくなると車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
また、キングピン軸と転舵軸が一致する場合は、構成要素部品がハブユニットの後方(車体側)に配置されるために全体のサイズが大きくなり重くなる。
操舵機能を備えた機構、例えば操舵機能付ハブユニット機構を車輪内の限られたスペースに収容するためには、小型化が必要であるが、センサ部品などが外径側につくことでサイズが大きくなる。
インクリメンタル式の回転センサでは、移動量は検出できるが、電源投入時の絶対位置の検出が行えない。アブソリュート式の回転センサによると、絶対位置の検出が可能であるが、回転センサが大型化し、またコスト高となる。
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記操舵用アクチュエータは、出力ロッドが進退する直動機構とを有し、
前記直動機構の前記出力ロッドの中空部内に、前記出力ロッドの移動量または進退位置を検出する位置センサが配置されている。
また、この構成を非転舵輪である後輪に適用した場合は、操舵機能付ハブユニットの全体は転舵しないが、補助操舵機能により、前輪と同様に僅かな角度の転舵を車輪毎に独立して行える。
前記操舵用アクチュエータにより、ハブベアリングを有するハブユニット本体を転舵軸心回りに一定の範囲で自由に回転させることができ、車両の走行状況に応じて、例えば車輪のトー角を任意に変更することができる。
また、旋回走行時に、走行速度に応じて左右輪の舵角差を変えることができる。例えば高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を自由に変更することができるため、車両の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の車輪の操舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。
後輪に適用した場合は、舵角を前輪と同じ位相にすると、転舵時に発生するヨーを抑え、車両の安定性を高めることができる。さらに、直線走行時にも左右独立でトー角度を調整することで、走行安定性を確保することができる。
このように車両の挙動を制御するためには、正確に車輪の舵角を制御する必要があり、この発明では、直動機構の出力ロッドの移動量を監視する位置センサを、直動機構の出力ロッドの中空部内に配置している。この出力ロッドの中空部内に位置センサを配置する構成を採用することで、操舵機能付ハブユニットを小型化することができ、タイヤハウス内に収まるようにできる。また、アッベの原理からの乖離が小さくなるため、位置の測定誤差が小さくなる。
この操舵機能付ハブユニットは、このように通常のステアリング装置による操舵に付加して補助的な操舵を左右輪独立で行う機能を備え、走行状況に合わせ左右の車輪を適切な転舵角に制御することで、燃費の改善および走行性の安定と安全性の向上を図れ、かつタイヤハウス内に収まるコンパクトな構造で、直動機構の出力ロッドの移動量を正確に監視することができて、補助的な操舵を精度良く制御できる。
磁気センサであると、光源が不要で構成が簡素となり、また走行に伴い振動を受ける環境下での耐久性に優れる。
この構成の操舵システムによると、この発明の操舵機能付ハブユニットを簡単な構成で制御して、この操舵機能付ハブユニットの上記利点を効果的に得ることができる。
この構成の車両によると、この発明の操舵機能付ハブユニットを前輪に装備した場合の前記各効果を得ることができる。
この構成の車両によると、この発明の操舵機能付ハブユニットを効率に装備した場合の前記各効果を得ることができる。
この発明の第1の実施形態に係る操舵機能付ハブユニットを図1ないし図8と共に説明する。 <操舵機能付ハブユニットの概略構造>
図1に示すように、この操舵機能付ハブユニット1は、ハブベアリング15を有するハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、操舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体に前記ユニット支持部材3が設けられている。このユニット支持部材3のインボード側に、操舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。操舵機能付ハブユニット1を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。なお、操舵機能付ハブユニット1を単に、ハブユニット1と言う場合がある。
この操舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では操舵輪、具体的には図8に示すように、車両10の前輪9Fの通常の操舵を行うステアリング装置11による操舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を操舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。
図1に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、このアウターリング16に設けられた後述の補助操舵用の操舵力受け部であるアーム部17(図3)とを備える。
図6に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図1)とを繋ぐ役目をしている。
図6に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、円すいころ軸受が適用されている。転がり軸受は、転舵軸部16bの外周における一定径部16baに嵌合した内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合した外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
図3に示すように、操舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図1)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、駆動源であるモータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部である出力ロッド25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
直動機構25は、滑りねじまたはボールねじ等の送りねじ機構、またはラック・ピニオン機構等を用いることができ、この例では台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構が用いられている。この直動機構25は、具体的には、外周部に前記ドリブンプーリ27bが設けられて軸方向両側の軸受42,42によりユニット支持部材3に回転自在に設置されたナット部材25bと、このナット部材25bに噛み合う雄ねじ部25aaが外周に設けられた直動出力部である出力ロッド25aとでなる。出力ロッド25aは、ピン状の回り止め部材40(図7参照)によってユニット支持部材3に対して回り止めされている。
直動機構25は、前記台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構を備えるため、タイヤ9bからの逆入力の防止効果を高め得る。モータ26、減速機27および直動機構25を備えたアクチュエータ本体7は、準組立品として組み立てられてケース6bにボルト等により着脱自在に取り付けられる。なおモータ26の駆動力を、減速機を介さず直接直動機構25へ伝達する機構も可能である。
図6に拡大して示すように、出力ロッド25aは、断面形状が円形の中空軸であって、その内径孔における後部が、前部よりも大径の中空部25aaとされている。前記出力ロッド25aの中空部25aa内に、この出力ロッド25aの移動量または進退位置を検出する位置センサ44が配置されている。位置センサ44は、各種の形式の位置センサを用いることができるが、この例では磁気センサが用いられている。
出力ロッド25aにはセンサターゲットとなる2個の永久磁石46,47が、互いに出力ロッド25aの軸方向に離れて固定されている。前記位置センサ44は、出力ロッド25aの進退運動によりその中空部25aa内で相対的に前後に進退することで、前記永久磁石46,47の移動による磁場の変化を読み取る。位置センサ44は、例えばアナログ式の磁気センサであり、出力ロッド25aの進退により例えば正弦波状の検出信号を出力する。
なお、前記2個の永久磁石46,47は、具体的には、出力ロッド25aの中空部25aaに嵌合した有底筒状の磁石取り付け部材47の内周に開口する取付孔に込め込まれ、スリーブ48によって脱出防止されることにより、出力ロッド25aに取付けられている。
位置センサ44およびセンサ取付部材45は、センサハウジング49によって覆われている。
図2において、前記ケース6bは、ユニット支持部材3の一部として、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ケース6bは、有底筒状に形成され、モータ26を支持するモータ収容部と、直動機構25を支持する直動機構収容部が設けられている。前記モータ収容部には、モータ26をケース内所定位置に支持する嵌合孔が形成されている。前記直動機構収容部には、直動機構25をケース内所定位置に支持する嵌合孔、および、出力ロッド25aの進退を許す貫通孔等が形成されている。
図3に示すように、この操舵システムは、第1の実施形態に係る操舵機能付ハブユニット1と、この操舵機能付ハブユニット1の操舵用アクチュエータ5を制御する制御装置29とを備える。制御装置29は、操舵制御部30と、アクチュエータ駆動制御部31とを有する。
上位制御部32は操舵制御部30の上位の制御手段であり、この上位制御部32として、例えば、車両全般を制御する電気制御ユニット(Vehicle Control Unit, 略称VCU)が適用される。
アクチュエータ駆動制御部31は、例えば、図示外のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を構成し、前記スイッチ素子のON−OFFデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う。
また、アクチュエータ駆動制御部31は、前記位置センサ44(図7参照)により検出される出力ロッド25aの進退位置の進退位置を用いてフィードバック制御を行う。
操舵機能付ハブユニット1は、非操舵輪に対して用いてもよい。例えば、図9に示すように、前輪操舵の車両において、後輪9Rを支持する懸架装置12Rの車輪用軸受設置部となる足回りフレーム部品6Rに設定し、後輪操舵に用いてもよい。
その他図10に示すように、操舵機能付ハブユニット1を、操舵輪である左右の前輪9F,9Fおよび非操舵輪である左右の後輪9R,9Rにそれぞれ用いてもよい。
上記構成の操舵機能付ハブユニット1によれば、通常の操舵を行うステアリング装置11(図8参照)のキングピン軸とは異なる転舵軸心Aを持ち、ハブベアリング15を有するハブユニット本体2が前記転舵軸心A回りに上下両端部で回転可能に保持されている。また、ハブユニット1内に配置される操舵用アクチュエータ5によって、ハブユニット本体2を転舵軸心Aを中心として回転作動させることが可能である。これによって、簡単な構造でハブユニット本体2に取り付けられた車輪9のトー角度を走行中に自由に変更することができる。
具体例を挙げると、高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を自由に変更することができるため、車両10の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の操舵輪の転舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両10の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角度の量を調整することで、低速時にはタイヤをまっすぐに向け抵抗を小さくし燃費を悪化させることなく、高速時にはタイヤ角度をトーインとし走行安定性を確保するなど調整が可能である。
このように直線方向の移動量または進退位置を検出する位置センサ44を用いるため、モータ回転位置を検出する回転センサと異なり、直動機構25の遊びによる誤差を伴わずに直接に検出できて、精度良く検出することができる。また、アブソリュート式の回転センサに比べ、コンパクトな構成で絶対位置を検出することができる。しかも、位置センサ44は直動機構25の出力ロッド25aの中空部25aaに配置しているため、出力ロッド25aの中空部25aaを効果的に利用し、別途に設置場所を要することなく位置センサ44が設置でき、操舵機能付ハブユニット1を小型化することができる。
Claims (6)
- 車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記操舵用アクチュエータは、出力ロッドが進退する直動機構とを有し、
前記直動機構の前記出力ロッドの中空部内に、前記出力ロッドの移動量または進退位置を検出する位置センサが配置された操舵機能付ハブユニット。 - 請求項1に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記位置センサが磁気センサである操舵機能付ハブユニット。
- 請求項2に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記出力ロッドにセンサターゲットとなる磁石が固定され、前記位置センサは、前記ユニット支持部材に固定されて前記出力ロッドの前記進退運動により前記中空部内で相対的に進退するセンサ支持部材に取付けられた操舵機能付ハブユニット。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の操舵機能付ハブユニットと、制御装置とを備え、前記制御装置は、上位制御部の指令信号を受け、前記直動機構の駆動源となるモータに対する電流指令信号を出力する操舵制御部、および前記電流指令信号に応じた電流を出力して前記モータに印加し前記操舵用アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動制御部を有する操舵システム。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の操舵機能付ハブユニット、または請求項4に記載の操舵システムを備え、前記操舵機能付ハブユニットを、左右の前輪に装備した車両。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の操舵機能付ハブユニット、または請求項4に記載の操舵システムを備え、前記操舵機能付ハブユニットを、左右の後輪に装備した車両。
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