JP7068882B2 - ステアリングシステムおよびこれを備えた車両 - Google Patents
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Description
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
また、高速域では、レーンチェンジまたは危険回避等で急ハンドルを切った場合に、前輪のみの操舵では、大きなヨーが発生して横滑りしてしまうといった課題がある。
特許文献1,2,3,4の提案によると、ステアリングジオメトリを変更させることができるが次の課題がある。
操舵指令装置200,200Aが出力する操舵量の指令に従い前記車両100の前輪9F,9Fを転舵させる第1のステアリング装置11と、
前記車両100の車輪毎に設けられた転舵用アクチュエータ5の駆動により前後左右の各車輪をそれぞれ個別に転舵させる第2のステアリング装置1501、1502と、
車速およびステアリング角度を含む車両情報を検出する車両情報検出部110と、を備え、
前記第2のステアリング装置1501、1502は、前記車両情報および他の車輪の転舵角に基づいて、対象とする車輪の前記転舵用アクチュエータ5を個別に制御する制御部150bを備え、この制御部150bは、前記車速およびステアリング角度に応じて、前後左右の各車輪のトー角を調整するように前記各転舵用アクチュエータ5を制御する。
・例えば低速域では、制御部150bは、前輪それぞれの左右輪9F,9Fの角度を変更して、アッカーマンジオメトリに設定することで、走行抵抗を増大させることがなく、スムーズな旋回をさせることができる。さらに制御部150bは、前輪9F,9Fの転舵角に応じて、後輪の左右輪9R,9Rを逆位相に転舵させることにより、前輪のみで転舵する場合より最小回転半径を小さくすることが可能となる。これにより車両100の小回り性の向上を図れる。
・例えば第2のステアリング装置等に異常が発生した場合、運転者のハンドル操作によって第1のステアリング装置11を作動させて車両100を確実に停止できる状態まで移動させることができ、安全性の向上を図れる。
前記各車輪を支持するハブベアリング15を有するハブユニット本体2と、
懸架装置12の足回りフレーム部品6に設けられ、前記ハブユニット本体2を上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在に支持するユニット支持部材3と、
前記ハブユニット本体2を前記転舵軸心A回りに回転駆動させる前記転舵用アクチュエータ5と、を備えるものであってもよい。
前記定められた条件は、設計等によって任意に定める条件であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な条件を求めて定められる。
この構成によると、第2のステアリング装置1501、1502に異常が発生したとき、各転舵用アクチュエータ5の制御を中断し、運転者のハンドル操作により第1のステアリング装置11を駆動させて前輪9F,9Fを転舵させて車両100を路肩等の退避位置まで移動させることができ、安全を確保することができる。
この発明の第1の実施形態を図1ないし図16と共に説明する。
図1は、この実施形態に係るステアリングシステム101を搭載した自動車等の車両100の概念構成を概略示す図である。車両100は、前輪となる左右の車輪9F,9Fと、後輪となる左右の車輪9R,9Rとを有する4輪車両であり、駆動方式は、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動のいずれであってもよい。以下の説明において、前後左右の車輪を総称して「各車輪」と言う場合がある。
第1のステアリング装置11は、ハンドル200等の操舵指令装置に対する運転者の操作により車両100の前輪となる左右の車輪9F,9Fを転舵させる装置である。
車両100の前輪となる左右の車輪9,9が機械的に連動し、前記操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い車両100の前輪となる左右の車輪9,9を、これら左右の車輪9,9が設置される懸架装置12の左右の足回りフレーム部品であるナックル6,6の角度変更によって操舵する第1のステアリング装置11と、
左右の車輪9,9に対してそれぞれ設けられた補助操舵用のアクチュエータ(転舵用アクチュエータ5(図2))を駆動することで前記足回りフレーム部品であるナックル6,6に対する車輪9,9の角度を変えて左右の車輪9,9を個別に操舵させる第2のステアリング装置150と、
後述する車両情報検出部110と、を備える。
ECU130は、車両100の全体の協調制御または統括制御を行う制御装置であり、VCUとも称される。
第1のステアリング装置11は、運転者によるハンドル200に対する入力に応じて、車両100の前輪となる左右の車輪9F,9Fを連動して転舵させるシステムであり、ステアリングシャフト32、ラックアンドピニオン(図示せず)、タイロッド14等、周知の機械的な構成を備える。運転者がハンドル200に対して回転入力を行うと、ステアリングシャフト32も連動して回転する。ステアリングシャフト32が回転すると、ラックアンドピニオンによってステアリングシャフト32と連結されているタイロッド14が車幅方向に移動することで、車輪9Fの向きが変わり、左右の車輪9F,9Fを連動して転舵することが可能である。
図1および図9に示すように、第2のステアリング装置1501、1502は、各車輪を独立して転舵可能である。この第2のステアリング装置1501、1502の各機構部150aとして右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lを備える。これら右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lは、タイヤハウジング105内に設けられた転舵用アクチュエータ5(図2)により各車輪の転舵を行う。
第2のステアリング装置1501、1502の機構部150aは、前述のように右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lを備えるが、これら右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lは、いずれも図2に示す転舵機能付ハブユニット1として構成されている。
同図2に示すように、このハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、転舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。
図3および図4に示すように、ハブユニット本体2とアクチュエータ本体7とはジョイント部8により連結されている。通常、このジョイント部8は、防水、防塵のために図示外のブーツが取り付けられている。
図2に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の転舵力受け部であるアーム部17(図4)とを備える。
図8に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図2)とを繋ぐ役目をしている。
図3に示すように、各車輪9には、車両を制動するブレーキ装置であるブレーキ21が設けられている。ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、アウターリング16または外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(図6)に取付けられる。
図8に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、テーパころ軸受が適用されている。転がり軸受は、取付軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
図4に示すように、転舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図2)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図3に示すように、アクチュエータ本体7は、モータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
図9に示すように、車両情報検出部110は、車両情報を検出しECU130へ出力する。車両情報検出部110は、車速検出部111、操舵角検出部112、車高検出部113、実ヨーレート検出部114、実横加速度検出部115、アクセルペダルセンサ116、およびブレーキペダルセンサ117を備える。
操舵角検出部112は、例えば第1のステアリング装置11が備えるモータ部に取り付けられたレゾルバ等のセンサ(図示せず)の出力に基づいてステアリング角度(操舵角)を検出し、ECU130へ操舵角情報(単に「ステアリング角度」または「車輪角度」とも言う)を出力する。
実横加速度検出部115は、例えば車両100(図1)に取り付けられたジャイロセンサ等のセンサの出力に基づいて、実横加速度を検出し、ECU130へ実横加速度情報を出力する。アクセルペダルセンサ116は、運転者によるアクセルペダル210への入力を検出し、検出した値をアクセル指令値としてECU130へ出力する。ブレーキセンサ117は、運転者によるブレーキペダル220への入力をブレーキ踏力として検出し、検出した値をブレーキ指令値としてECU130へ出力する。ECU130は、転舵角指令信号を含む車両情報を第2のステアリング装置1501、1502の制御部150bに出力する。
第2のステアリング装置の制御部150bは、ECU130から、車速情報(車速)、操舵角情報(ステアリング角度)、車高情報、実ヨーレート情報、実横加速度情報、アクセル指令値、およびブレーキ指令値を含む車両情報を取得し、取得した車両情報および他の車輪の転舵角に基づいて、補助転舵制御部151が右輪用のアクチュエータ駆動制御部31R、左輪用のアクチュエータ駆動制御部31Lを制御することで、右輪ハブユニット1R、および左輪ハブユニット1Lが備えるモータ26を駆動し、左右の車輪を独立して転舵可能である。
制御部150bは、例えば専用のECUとして設けられるが、メインのECU130の一部として設けてもよい。
θf=αθf・θfmax
θr=αθr・θrmax
低速度域(0~VLFkm/h以下)では前輪の補正舵角係数αθfを「1.0」とし、VLFkm/hから車速の上昇に合わせ徐々に補正舵角係数αθfを減少させ、高速度域(VHFkm/h以上)では「A」とする。係数A、車速VLFkm/h、VHFkm/hは、車両情報によって異なる値である。
低速度域(0~VLRkm/h以下)では後輪の補正舵角係数αθrを「-1.0」とし、VLRkm/hから車速の上昇に合わせ徐々に補正舵角係数αθrを増加させ、高速度域(VHRkm/h以上)では「B」とする。係数B、車速VLRkm/h、VHRkm/hは、車両情報によって異なる値である。
高速域では、制御部150bは、第1のステアリング装置11による前輪の転舵角に対し、前輪および後輪共に同位相の転舵角となるように各転舵用アクチュエータを制御することで、横滑りを抑えて、車両の操縦安定性を向上させ得る。
これらの流れについて図14にフローチャートで示す。図9も適宜参照しつつ説明する。
車両の旋回開始後、制御部150bは、車速が低速度域であるか否かを判定する(ステップa1(前輪),ステップb1(後輪))。低速度域であるとの判定で(ステップa1:Yes,ステップb1:Yes)、制御部150bは、前輪の補正舵角係数αθfを「1.0」とし(ステップa2)、後輪の補正舵角係数αθrを「-1.0」とし(ステップb2),前後輪につきそれぞれステップa7,b7へ移行する。
図15に示すように、補助転舵制御部151は、規範横加速度計算部152、右輪タイヤ角度計算部153、左輪タイヤ角度計算部154、右輪路面摩擦係数計算部155、目標ヨーレート計算部156、左輪路面摩擦係数計算部157、目標ヨーレート補正部158、目標左右輪タイヤ角度計算部159、右輪指令値計算部160、および左輪指令値計算部161を備える。
右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、ECU130から取得する実横加速度情報および規範横加速度計算部152から入力される規範横加速度情報に基づいて、路面摩擦係数の計算を行う。具体的には、右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、規範横加速度計算部152から規範横加速度情報が入力されると、右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154からタイヤ角度情報を取得する。右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、前記マップ(図16)に基づいて、実横加速度/規範横加速度とタイヤ角度とから、路面摩擦係数を算出する。右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、算出した右輪の路面摩擦係数である右輪路面摩擦係数情報と、左輪の路面摩擦係数である左輪路面摩擦係数情報とを、目標ヨーレート補正部158に出力する。
目標ヨーレート補正部158は、右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157から、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報が入力されると、目標ヨーレート計算部156から目標ヨーレート情報を取得し、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報で表される路面摩擦係数に応じて目標ヨーレートの補正を行う。目標ヨーレート補正部158は、補正後の目標ヨーレートを補正後ヨーレート情報として目標左右輪タイヤ角度計算部159へ出力する。
目標左右輪タイヤ角度計算部159は、計算した左右輪それぞれの目標タイヤ角度を目標タイヤ角度情報として、右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161へ出力する。
具体的には、図9および図15に示すように、各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161から右輪転舵量情報および左輪転舵量情報が入力されると、現在の右輪ハブユニット1R、および左輪ハブユニット1Lの転舵角を表す各モータ26の位置情報を取得し、右輪転舵量情報および左輪転舵量情報に基づいてモータ26の目標位置を決定し、各モータ26へ流す電流の制御を行う。
以上説明したステアリングシステム101によれば、第1のステアリング装置11は、操舵量の指令に従い前輪9F,9Fを転舵させる。第2のステアリング装置1501、1502の制御部150bは、車速およびステアリング角度に応じて、前後左右の各車輪のトー角を調整するように各転舵用アクチュエータ5を制御する。例えば、制御部150bの電源等に異常が発生しても、運転者のハンドル操作により第1のステアリング装置11を駆動させて車両100を路肩等の安全な場所に移動させることができる。したがって、システム異常時の安全対策のための機構を省略または簡略化できる。このようなステアリングシステムにより、安全性を確保したまま、車両走行の状況(車速およびステアリング角度など)に応じて、全ての車輪の角度を独立して調整することが可能であり、ステアリングジオメトリを自由に変更できるため、以下のように車両100の運動性能を向上させる。
・例えば低速域では、制御部150bは、前輪それぞれの左右輪9F,9Fの角度を変更して、アッカーマンジオメトリに設定することで、走行抵抗を増大させることがなく、スムーズな旋回をさせることができる。さらに制御部150bは、前輪9F,9Fの転舵角に応じて、後輪の左右輪9R,9Rを逆位相に転舵させることにより、前輪のみで転舵する場合より最小回転半径を小さくすることが可能となる。これにより車両100の小回り性の向上を図れる。
Claims (5)
- 車両が備えるステアリングシステムであって、
操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い前記車両の前輪を転舵させる第1のステアリング装置と、
前記車両の車輪毎に設けられた転舵用アクチュエータの駆動により前後左右の各車輪をそれぞれ個別に転舵させる第2のステアリング装置と、
車速およびステアリング角度を含む車両情報を検出する車両情報検出部と、を備え、
前記第2のステアリング装置は、前記車両情報および他の車輪の転舵角に基づいて、対象とする車輪の前記転舵用アクチュエータを個別に制御する制御部を備え、この制御部は、前記車速およびステアリング角度に応じて、前後左右の各車輪のトー角を調整するように前記各転舵用アクチュエータを制御し、
前記第2のステアリング装置は、
前記各車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる前記転舵用アクチュエータと、を備え、
前記ハブユニット本体は、前記ユニット支持部材に、上下二箇所の予圧が付与されている回転許容支持部品を介して、前記転舵軸心回りに回転自在に支持されているステアリングシステム。 - 請求項1に記載のステアリングシステムにおいて、前記制御部は、与えられた転舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する補助転舵制御部と、この補助転舵制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記転舵用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有するステアリングシステム。
- 請求項1または請求項2に記載のステアリングシステムにおいて、前記転舵用アクチュエータは、前記車輪からの逆入力を防止する逆入力防止機構を備えるステアリングシステム。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のステアリングシステムにおいて、前記制御部は、定められた条件に従って前記第2のステアリング装置の異常を判定する判定手段を有し、前記制御部は、前記判定手段により前記第2のステアリング装置に異常が発生したと判定されたとき、前記各転舵用アクチュエータの制御を中断するステアリングシステム。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のステアリングシステムを備えた車両。
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