JP7079656B2 - 車両システムおよびそれを備えた車両 - Google Patents

車両システムおよびそれを備えた車両 Download PDF

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Description

この発明は、ハンドル操作および車速などの情報によって車両の運動を制御する車両システムおよびそれを備えた車両に関する。
一般的な自動車等の車両は、ハンドルとステアリング装置が機械的に接続され、また、ステアリング装置の両端はタイロッドによってそれぞれの左右輪につながっている。そのため、ハンドルの動きによる左右輪の切れ角度は初期の設定によって決まる。
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
アッカーマンジオメトリは、車両に作用する遠心力を無視できるような低速域での旋回において、車両をスムーズに旋回させるために、各輪が共通の一点を中心として旋回するように左右輪の舵角差を設定している。しかし、遠心力を無視できない高速域の旋回においては、車輪は遠心力とつり合う方向にコーナリングフォースを発生させることが望ましいため、アッカーマンジオメトリよりもパラレルジオメトリとすることが好ましい。
前述したように一般的な車両の操舵装置は機械的に車輪と接続されているため、一般的には固定された単一のステアリングジオメトリしか取ることができず、アッカーマンジオメトリとパラレルジオメトリとの中間的なジオメトリに設定されることが多い。また、車体側に固定された懸架装置が機械的に車輪と接続されているため、例えば、旋回走行時に車両が傾く、または乗車人数(搭載重量)の違いで車体側の沈み込み量(車輪一輪毎の沈み込み量も異なる)が変化することで、車輪の角度に変化が生じる。
通常、車両の高速直進時に直進性を安定させるために、車輪に若干のトーインを付けている。しかし、同時にハンドリング性能が若干低下するため、コーナリング時には操作しにくくなる傾向がある。また、この車輪のトーインの状態は車輪の抵抗が増すため、高速直進時のように直進安定性を必要としない低速度域では燃料消費量を悪化させる。
[特許文献1]
特許文献1には、車両の四輪に制動力を別々に付与して、車両の挙動の安定化を図る車両挙動安定化制御について開示されている。
[特許文献2]
特許文献2のように、ヨーモーメントを制御して車両の旋回制御を行う技術についても知られている。また、車両の操舵角などに応じて、車両のヨーモーメントをフィードフォワード制御およびフィードバック制御する技術について開示されている。
特許第5988560号公報 特許第4380307号公報 特開平9-58515号公報 特開2001-322557号公報
車輪とステアリング装置が機械的に連結されている従来の車両においては、車輪のトー角を走行中に変更することができない。したがって、低速域では前輪の左右輪の舵角差が不足して内外輪のタイヤ横力配分に不要な偏りがあると、走行抵抗の悪化による燃費悪化およびタイヤの早期摩耗の原因となる。また内外輪を効率的に利用できないことによって、コーナリングのスムーズさが損なわれ、最小回転半径が大きくなるといった課題がある。
また、高速域では、レーンチェンジまたは危険回避等で急ハンドルを切った場合に、前輪のみの操舵では、大きなヨーが発生して横滑りしてしまうといった課題があった。
これらの課題の解決のために、補助転舵機能付ハブベアリングを前輪となる左右の車輪に備え、これら左右の車輪の操舵角度を制御することで、車両の運動性能を大幅に改善させることが可能となる(特願2017-186441、特願2017-185695)。しかし、車両の運動性能が改善されるため旋回時の進入速度を上げることが可能となるが、前輪駆動車の場合は後輪(従動輪)に滑りが発生し、車両の挙動が不安定になる可能性がある。
この発明の目的は、車両の安全性を確保したまま、車両走行の状況に応じて、車両の運動性能を向上することができる車両システムおよびそれを備えた車両を提供することである。
この発明の車両システムSSは、
操舵指令装置200,200Aが出力する操舵量の指令に従い車両100の左右の前輪9F,9Fを操舵する第1のステアリング装置11と、
前記左右の前輪9F,9Fを支持する支持部材にそれぞれ設けられた操舵用アクチュエータ5の駆動により前記左右の前輪9F,9Fを個別に操舵する第2のステアリング装置150と、
車速およびステアリング角度を含む車両情報を検出する車両情報検出部110と、
左右の後輪9R,9Rを独立に駆動する左右独立駆動装置162,162Aと、を備え、
少なくとも前記車速およびステアリング角度のいずれか一方の情報に応じて、前記左右の前輪9F,9Fの角度を調整するように前記各操舵用アクチュエータ5を制御すると共に前記左右の後輪9R,9Rを個別に駆動または回生制動するように前記左右独立駆動装置162,162Aを制御する制御装置CUを備えた。
制御装置CUは、車速およびステアリング角度のいずれか一方または両方と、他の変数も含めて各制御対象を制御してもよい。
この構成によると、第1のステアリング装置11は、操舵指令装置200,200Aが出力する操舵量の指令に従い左右の前輪9F,9Fを操舵する。第2のステアリング装置150は、第1のステアリング装置11による左右の前輪9F,9Fの操舵に付加して左右輪9F,9F個別に微小な角度を操舵させる機構である。第1のステアリング装置11のタイロッド等に連結される支持部材に、第2のステアリング装置150が設けられる。制御装置CUは、少なくとも車速およびステアリング角度のいずれか一方の情報に応じて、左右の前輪9F,9Fの角度を調整するように各操舵用アクチュエータ5を制御すると共に左右の後輪9R,9Rを個別に駆動または回生制動するように左右独立駆動装置162,162Aを制御する。運転者のハンドル操作等による車両運動の挙動につき、前輪9F,9Fを第2のステアリング装置150で左右別々に修正操舵し、さらに後輪9R,9Rの駆動力または回生制動力を制御することで、車両100の姿勢制御を適切に行うことが可能となる。
例えば低速域では、制御装置CUは、左右の前輪9F,9Fの角度をそれぞれ別々に切り増し、アッカーマンジオメトリに近づくように設定することで、走行抵抗を増大させることがなく、スムーズな旋回をさせることができる。さらに制御装置CUは、前輪9F,9Fの操舵角に応じて、後輪9R,9Rの旋回内輪側を逆駆動(回生制動)、後輪9R,9Rの旋回外輪側を正駆動とすることにより、前輪9F,9Fのみで操舵する場合より最小回転半径を小さくできる。
例えば高速域では、制御装置CUは、左右の前輪9F,9Fの角度をそれぞれ別々に操舵することにより、パラレルジオメトリに近づくように設定することで、スムーズな旋回をさせることができる。さらに制御装置CUは、前輪9F,9Fの操舵角に応じて、旋回開始時には後輪9R,9Rの旋回内輪側を逆駆動(回生制動)、後輪9R,9Rの旋回外輪側を正駆動とすることにより、旋回力を増やし、旋回がし易くなる。また、後輪9Rの横滑り発生時には後輪9R,9Rの旋回内輪側を正駆動、後輪9R,9Rの旋回外輪側を逆駆動とすることにより、横滑りを抑えることが可能となるため、車線変更などでの車両100の走行安定性を向上することが可能となる。
その他第2のステアリング装置150等に異常が発生した場合、運転者のハンドル操作によって第1のステアリング装置11を作動させて車両100を確実に停止できる状態まで移動させることができ、安全性の向上を図れる。
前記第2のステアリング装置150は、
前記各前輪9Fを支持するハブベアリング15を有するハブユニット本体2と、
懸架装置12の前記支持部材である足回りフレーム部品6に設けられ、前記ハブユニット本体2を上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在に支持するユニット支持部材3と、
前記ハブユニット本体2を前記転舵軸心A回りに回転駆動する前記操舵用アクチュエータ5と、を備えるものであってもよい。
この構成によると、各前輪9Fを支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、操舵用アクチュエータ5の駆動により、前記転舵軸心A回りに一定の範囲で自由に回転させることができる。このため、既存の車両の基本構造を変更することなく簡単な構造で前輪毎に独立して操舵が行え、また車速およびステアリング角度などに応じて、各前輪9Fの角度を独立して調整することができる。
前記制御装置CUは、与えられた操舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する補助操舵制御部151と、この補助操舵制御部151から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記操舵用アクチュエータ5を駆動制御するアクチュエータ駆動制御部31R,31Lとを有するものであってもよい。
この構成によると、補助操舵制御部151は、与えられた操舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する。アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、補助操舵制御部151から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して操舵用アクチュエータ5を駆動制御する。したがって、運転者のハンドル操作等による操舵に付加して左右の前輪9F,9Fの角度を任意に変更することができる。
前記操舵用アクチュエータ5は、前記前輪9Fからの逆入力を防止する逆入力防止機構25bを備えるものであってもよい。この構成によると、操舵用アクチュエータ5の制御を停止した状態で前輪9Fを支持するハブベアリング15のふらつきを抑えることが可能となる。
前記左右独立駆動装置162は、インホイールモータ162aを有するものであってもよい。
前記インホイールモータ162aは、前記車両100のブレーキロータ21aの内径よりも半径方向内方にステータ173が配置されたものであってよい。この場合、ブレーキロータ21a内にインホイールモータ162aを設置するスペースを確保してこのインホイールモータ162aをコンパクトに収めることができる。
前記インホイールモータ162aは、ロータ172がステータ173の半径方向外方に位置するアウターロータ型であってもよい。この場合、インナーロータ型のモータよりもロータ172とステータ173とが対向する面積を増やすことができる。これにより、限られた空間内で出力トルクを最大化することが可能となる。
前記左右独立駆動装置162Aは、二モータ式オンボードモータ162cを有するものであってもよい。
前記制御装置CUは、定められた条件に従って前記第2のステアリング装置150および前記左右独立駆動装置162,162Aの少なくともいずれか一方の異常を判定する判定手段33を有し、前記制御装置CUは、前記判定手段33により前記第2のステアリング装置150および前記左右独立駆動装置162,162Aの少なくともいずれか一方の異常を判定したとき、前記各操舵用アクチュエータ5および前記左右独立駆動装置162,162Aの制御を中断するものであってもよい。
前記定められた条件は、設計等によって任意に定める条件であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な条件を求めて定められる。
この構成によると、第2のステアリング装置150および前記左右独立駆動装置162,162Aの少なくともいずれか一方の異常が発生したとき、各操舵用アクチュエータ5および左右独立駆動装置162,162Aの制御を中断し、運転者のハンドル操作により第1のステアリング装置11を駆動させて前輪9F,9Fを操舵させて車両100を路肩等の退避位置まで移動させることができ、安全を確保することができる。
この発明の車両100は、この発明の上記の構成の車両システムSSを備えている。そのため、この発明の車両システムSSにつき前述した各効果が得られる。
この発明の車両システムは、操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い車両の左右の前輪を操舵する第1のステアリング装置と、前記左右の前輪を支持する支持部材にそれぞれ設けられた操舵用アクチュエータの駆動により前記左右の前輪を個別に操舵する第2のステアリング装置と、車速およびステアリング角度を含む車両情報を検出する車両情報検出部と、左右の後輪を独立に駆動する左右独立駆動装置と、を備え、少なくとも前記車速およびステアリング角度のいずれか一方の情報に応じて、前記左右の前輪の角度を調整するように前記各操舵用アクチュエータを制御すると共に前記左右の後輪を個別に駆動または回生制動するように前記左右独立駆動装置を制御する制御装置を備えたため、車両の安全性を確保したまま、車両走行の状況に応じて、車両の運動性能を向上することができる。
この発明の車両は、この発明の上記の構成の車両システムを備えているため、車両の安全性を確保したまま、車両走行の状況に応じて、車両の運動性能を向上することができる。
この発明の第1の実施形態に係る車両システムの概念構成を概略示す図である。 同車両システムにおける第2のステアリング装置の機構部およびその周辺の構成を示す縦断面図である。 同第2のステアリング装置の機構部等の構成を示す水平断面図である。 同第2のステアリング装置の機構部の外観を示す斜視図である。 同第2のステアリング装置の機構部の分解正面図である。 同第2のステアリング装置の機構部の正面図である。 同第2のステアリング装置の機構部の平面図である。 図6のVIII - VIII線断面図である。 同車両システムの概念構成を示すブロック図である。 同第2のステアリング装置により操舵可能な前輪の作動範囲とステアリング角度との関係を示す図である。 車速と前輪の補正舵角係数との関係を示す図である。 同車両システムにおけるインホイールモータの断面図である。 図12のXIII- XIII線断面図である。 同車両システムにおける左右独立駆動装置のブロック図である。 低速左旋回時の車両システムの動作を概略示す概念図である。 高速レーンチェンジ時の車両システムの動作を概略示す概念図である。 同第2のステアリング装置の補助操舵制御部の構成を示すブロック図である。 実横加速度/規範横加速度およびタイヤ角度と摩擦係数の関係例を示すグラフである。 この発明の他の実施形態に係る車両システムの概念構成を概略示す図である。 この発明のさらに他の実施形態に係る車両システムの概念構成を概略示す図である。
[第1の実施形態]
この発明の第1の実施形態を図1ないし図18と共に説明する。
図1は、この実施形態に係る車両システムSSを搭載した自動車等の車両100の概念構成を概略示す図である。車両100は、前輪となる左右の車輪9F,9Fと、後輪となる左右の車輪9R,9Rとを有する4輪車両であり、駆動方式は前輪駆動である。この前輪駆動の駆動源として、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関ENG、または図示外の電動モータ、または両者を組み合わせたハイブリッド型の駆動源が適用される。
この車両システムSSは、操舵機能付ハブユニット1(図2)を含む第2のステアリング装置150を前輪に、左右独立駆動装置162を後輪に適用している。
この車両システムSSは、車両100の前輪の操舵を行うステアリングシステム101と、左右の後輪を独立に駆動する左右独立駆動装置162と、ECU130とを備える。ステアリングシステム101は、車両100の操舵を行うための第1,第2のステアリング装置11,150と、車両情報検出部110とを備える。
第1のステアリング装置11は、ハンドル200等の操舵指令装置に対する運転者の操作により車両100の前輪となる左右の車輪9F,9Fを転舵させる装置であり、この実施形態では前輪操舵形式とされている。
第2のステアリング装置150は、車両100の状態に応じた制御によって補助的な操舵を行う装置である。第2のステアリング装置150は、各車輪9Fの向きの補正を目的とするため、操舵の範囲は±数度に制限されている。この第2のステアリング装置150は、機構部150aと、制御部150bとを有する。
機構部150aは、補助操舵の対象となる車輪9F,9F毎に設けられる機構である。この機構部150aは、車両100のタイヤハウジング105内に設けられて操舵用アクチュエータ5(図2)の駆動により車輪9F,9Fを個別に操舵させる。制御部150bは、車両情報検出部110により検出された車両100の状態を表す車両情報に基づいて、前輪となる左右の車輪9F,9Fを個別に転舵させる。
換言すれば、ステアリングシステムSSは、
車両100の前輪となる左右の車輪9F,9Fが機械的に連動し、前記操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い車両100の前輪となる左右の車輪9F,9Fを、これら左右の車輪9F,9Fが設置される懸架装置12の左右の足回りフレーム部品であるナックル6,6の角度変更によって操舵する第1のステアリング装置11と、
左右の車輪9F,9Fを支持する支持部材であるナックル6,6にそれぞれ設けられた操舵補助用アクチュエータ5(図2)を駆動することで前記足回りフレーム部品であるナックル6,6に対する車輪9F,9Fの角度を変えて左右の車輪9F,9Fを個別に操舵させる第2のステアリング装置150と、
後述する車両情報検出部110と、を備える。
車両情報検出部110は、車両100の状態を検出する手段であり、各種のセンサ類の群を称している。車両情報検出部110の検出した車両情報は、メインのECU130を介して第2のステアリング装置150の制御部150bに転送される。
ECU130は、車両100の全体の協調制御または統括制御を行う制御装置であり、VCUとも称される。
<第1のステアリング装置11の構成>
第1のステアリング装置11は、運転者によるハンドル200に対する入力に応じて、車両100の前輪となる左右の車輪9F,9Fを連動して操舵するシステムであり、ステアリングシャフト32、ラックアンドピニオン(図示せず)、タイロッド14等、周知の機械的な構成を備える。運転者がハンドル200に対して回転入力を行うと、ステアリングシャフト32も連動して回転する。ステアリングシャフト32が回転すると、ラックアンドピニオンによってステアリングシャフト32と連結されているタイロッド14が車幅方向に移動することで、車輪9Fの向きが変わり、左右の車輪9F,9Fを連動して操舵することが可能である。
<第2のステアリング装置150の概略構成>
図1および図9に示すように、第2のステアリング装置150は、左右の車輪9F,9Fを独立して操舵可能である。この第2のステアリング装置150の機構部150aとして右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lを備える。これら右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lは、タイヤハウジング105内に設けられた操舵用アクチュエータ5(図2)により車輪9F,9Fの操舵を行う。
<第2のステアリング装置150の機構部150aの具体的構成例>
第2のステアリング装置150の機構部150aは、前述のように右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lを備えるが、これら右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lは、いずれも図2に示す操舵機能付ハブユニット1として構成されている。
同図2に示すように、このハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、操舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。
図5に示すように、このユニット支持部材3のインボード側に、操舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。ハブユニット1(図2)を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。
図3および図4に示すように、ハブユニット本体2とアクチュエータ本体7とはジョイント部8により連結されている。通常、このジョイント部8は、防水、防塵のために図示外のブーツが取り付けられている。
図2に示すように、ハブユニット本体2は、上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在なように、上下二箇所で回転許容支持部品4,4を介してユニット支持部材3に支持されている。転舵軸心Aは、車輪9Fの回転軸心Oとは異なる軸心であり、主な操舵を行うキングピン軸とも異なっている。通常の車両は、車両走行の直進安定性の向上を目的としてキングピン角度が10~20度で設定されているが、この実施形態のハブユニット1は、前記キングピン角度とは別の角度(軸)の転舵軸を有する。車輪9Fは、ホイール9aとタイヤ9bとを備える。
図1に示すように、この実施形態のハブユニット1(図2)は、第1のステアリング装置11による前輪となる左右の車輪9F,9Fの操舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を操舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。第1のステアリング装置11は、ラックアンドピニオン式とされるが、どのタイプのステアリング装置でも構わない。懸架装置12は、例えば、ショックアブソーバーをナックル6に直接固定するストラット式サスペンション機構を適用しているが、マルチリンク式サスペンション機構、その他のサスペンション機構を適用してもよい。
<ハブユニット本体2について>
図2に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9Fの支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の操舵力受け部であるアーム部17(図4)とを備える。
図8に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9F(図2)とを繋ぐ役目をしている。
このハブベアリング15は、図示の例では、外輪19が固定輪、内輪18が回転輪となり、転動体20が複列とされたアンギュラ玉軸受とされている。内輪18は、ハブフランジ18aaを有しアウトボード側の軌道面を構成するハブ輪部18aと、インボード側の軌道面を構成する内輪部18bとを有する。図2に示すように、ハブフランジ18aaに、車輪9Fのホイール9aがブレーキロータ21aと重なり状態でボルト固定されている。内輪18は、回転軸心O回りに回転する。
図8に示すように、アウターリング16は、外輪19の外周面に嵌合された円環部16aと、この円環部16aの外周から上下に突出して設けられたトラニオン軸状の取付軸部16b,16bとを有する。各取付軸部16bは、転舵軸心Aに同軸に設けられる。
図3に示すように、各車輪9Fには、車両を制動するブレーキ装置であるブレーキ21が設けられている。ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、アウターリング16または外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(図6)に取付けられる。
<回転許容支持部品およびユニット支持部材について>
図8に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、テーパころ軸受が適用されている。転がり軸受は、取付軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
ユニット支持部材3は、ユニット支持部材本体3Aと、ユニット支持部材結合体3Bとを有する。ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端に、略リング形状のユニット支持部材結合体3Bが着脱自在に固定されている。ユニット支持部材結合体3Bのインボード側側面のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3aがそれぞれ形成されている。
図7および図8に示すように、ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3Aaがそれぞれ形成されている。図4に示すように、ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端にユニット支持部材結合体3Bが固定され、各上下の部分につき、嵌合孔形成部3a,3Aa(図7)が互いに組み合わされることにより、全周に連なる嵌合孔が形成される。この嵌合孔に外輪4b(図8)が嵌合されている。なお図4において、ユニット支持部材3を一点鎖線で表す。
図8に示すように、アウターリング16における各取付軸部16bには、雌ねじ部が径方向に延びるように形成され、この雌ねじ部に螺合するボルト23が設けられている。内輪4aの端面に円板状の押圧部材24を介在させ、前記雌ねじ部に螺合するボルト23により、内輪4aの端面に押圧力を付与することで、各回転許容支持部品4にそれぞれ予圧を与えている。これにより各回転許容支持部品4の剛性を高め得る。車両の重量がこのハブユニットに作用した場合でも初期予圧が抜けないように設定される。なお、回転許容支持部品4の転がり軸受は、テーパころ軸受に限るものではなく、最大負荷等の使用条件によってはアンギュラ玉軸受を用いることも可能である。その場合も、上記と同様に予圧を与えることができる。
図3に示すように、アーム部17は、ハブベアリング15の外輪19に操舵力を与える作用点となる部位であり、円環部16aの外周の一部または外輪19の外周の一部に一体に突出する。このアーム部17は、ジョイント部8を介して、操舵用アクチュエータ5の直動出力部25aに回転自在に連結されている。これにより、操舵用アクチュエータ5の直動出力部25aが進退することで、ハブユニット本体2が転舵軸心A(図2)回りに回転、つまり操舵させられる。
<操舵用アクチュエータ5について>
図4に示すように、操舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図2)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図3に示すように、アクチュエータ本体7は、モータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
減速機27は、ベルト伝達機構等の巻き掛け式伝達機構またはギヤ列等を用いることができ、図3の例ではベルト伝達機構が用いられている。減速機27は、ドライブプーリ27aと、ドリブンプーリ27bと、ベルト27cとを有する。モータ26のモータ軸にドライブプーリ27aが結合され、直動機構25にドリブンプーリ27bが設けられている。このドリブンプーリ27bは、前記モータ軸に平行に配置されている。モータ26の駆動力は、ドライブプーリ27aからベルト27cを介してドリブンプーリ27bに伝達される。前記各ドライブプーリ27aとドリブンプーリ27bとベルト27cとで、巻き掛け式の減速機27が構成される。
直動機構25は、滑りねじまたはボールねじ等の送りねじ機構、またはラック・ピニオン機構等を用いることができ、この例では台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構(逆入力防止機構)25bが用いられている。直動機構25は、前記台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構25bを備えるため、タイヤ9bからの逆入力の防止効果を高め得る。なお、前記台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構25bの代わりに、ウォームギヤ等の逆入力防止機構を採用してもよい。この場合にもタイヤ9bからの逆入力の防止効果を高め得る。モータ26、減速機27および直動機構25を備えたアクチュエータ本体7は、準組立品として組み立てられてケース6bにボルト等により着脱自在に取り付けられる。なおモータ26の駆動力を、減速機を介さず直接直動機構25へ伝達する機構も可能である。
ケース6bは、ユニット支持部材3の一部として、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ケース6bは、有底筒状に形成され、モータ26を支持するモータ収容部と、直動機構25を支持する直動機構収容部が設けられている。前記モータ収容部には、モータ26をケース内所定位置に支持する嵌合孔が形成されている。前記直動機構収容部には、直動機構25をケース内所定位置に支持する嵌合孔、および、直動出力部25aの進退を許す貫通孔等が形成されている。
図4に示すように、ユニット支持部材本体3Aは、前記ケース6b、ショックアブソーバの取り付け部となるショックアブソーバ取り付け部6c、および第1のステアリング装置11(図3)の結合部となるステアリング装置結合部6dを有する。これらショックアブソーバ取り付け部6cおよびステアリング装置結合部6dも、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における上部に、ショックアブソーバ取り付け部6cが突出するように形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における側面部には、ステアリング装置結合部6dが突出するように形成されている。
<車両情報検出部110の構成>
図9に示すように、車両情報検出部110は、車両情報を検出しECU130へ出力する。車両情報検出部110は、車速検出部111、操舵角検出部112、車高検出部113、実ヨーレート検出部114、実横加速度検出部115、アクセルペダルセンサ116、およびブレーキペダルセンサ117を備える。
車速検出部111は、例えば車両が備えるトランスミッションの内部に取り付けたスピードセンサ等のセンサ(図示せず)の出力に基づいて、この車両の速度(車速)を検出し、ECU130へ車速情報(単に「車速」とも言う)を出力する。
操舵角検出部112は、例えば第1のステアリング装置11が備えるモータ部に取り付けられたレゾルバ等のセンサ(図示せず)の出力に基づいてステアリング角度(操舵角)を検出し、ECU130へ操舵角情報(単に「ステアリング角度」または「車輪角度」とも言う)を出力する。
車高検出部113は、車両100(図1)のシャーシと地面との距離をレーザ変位計により測定する方法、あるいは車両100の懸架装置12(図1)における図示外のアッパーアームまたはロアアームの角度を角度センサにより検出する方法等により、第2のステアリング装置150により操舵される各車輪9F(図1)の車高を検出する。そして、車高検出部113は、検出した車高を車高情報としてECU130へ出力する。
実ヨーレート検出部114は、例えば車両100(図1)に取り付けられたジャイロセンサ等のセンサの出力に基づいて、実ヨーレートを検出し、ECU130へ実ヨーレート情報を出力する。
実横加速度検出部115は、例えば車両100(図1)に取り付けられたジャイロセンサ等のセンサの出力に基づいて、実横加速度を検出し、ECU130へ実横加速度情報を出力する。
アクセルペダルセンサ116は、運転者によるアクセルペダル210への入力を検出し、検出した値をアクセル指令値としてECU130へ出力する。ブレーキペダルセンサ117は、運転者によるブレーキペダル220への入力をブレーキ踏力として検出し、検出した値をブレーキ指令値としてECU130へ出力する。ECU130は、操舵角指令信号を含む車両情報を第2のステアリング装置150の制御部150bに出力する。
またECU130はトルク指令生成手段130aを備え、このトルク指令生成手段130aは、取得したアクセル指令値およびブレーキ指令値に従ってトルク指令を生成し、このトルク指令を定められた規則に従って内燃機関ENG(図1)、左右独立駆動装置162に分配して出力する。内燃機関ENG(図1)に対するトルク指令は図示外の内燃機関制御手段に伝達され、同内燃機関制御手段によるバルブ開度制御等に用いられる。左右独立駆動装置162に対するトルク指令は、制御部162b(図14)に伝達されこの制御部162b(図14)により左右の後輪を個別に駆動または回生制動可能である。
<第2のステアリング装置150の制御部150b>
第2のステアリング装置150の制御部150bは、ECU130から、車速情報(車速)、操舵角情報(ステアリング角度)、車高情報、実ヨーレート情報、実横加速度情報、アクセル指令値、およびブレーキ指令値を含む車両情報を取得し、取得した車両情報に基づいて、補助操舵制御部151が右輪用のアクチュエータ駆動制御部31R、左輪用のアクチュエータ駆動制御部31Lを制御することで、右輪ハブユニット1R、および左輪ハブユニット1Lが備えるモータ26を駆動し、左右の車輪を独立して操舵可能である。
制御部150bにおいて、前記車両情報である操舵角情報等の各情報と前記モータ26を駆動する指令値との関係は、例えばマップまたは演算式等を用いて制御規則として定められており、その制御規則を用いて制御を行う。
制御部150bは、例えば専用のECUとして設けられるが、メインのECU130の一部として設けてもよい。
制御部150bは、前記車速およびステアリング角度に応じて、左右の前輪の角度を調整するように各操舵用アクチュエータ5(図4)を制御する。これと共に、後述の制御部162b(図14)は、ECU130から取得した前記車速およびステアリング角度に応じて、左右の後輪9R,9R(図1)を個別に駆動または回生制動するように左右独立駆動装置162(図14)を制御する。これら制御部150b、制御部162b(図14)およびECU130により制御装置CU(図1)が構成される。
制御部150bは、具体的には、ハンドル200と連結される第1のステアリング装置11により操舵される車輪角度(ステアリング角度)θTを、操舵角検出部112からECU130を介して取得する。
図10に示すように、第2のステアリング装置150により操舵可能な前輪の作動範囲を±θfmaxとする。また、図11に示すように、車速によって前輪の補正舵角係数(切り増し係数)αθfを決定する。この前輪の補正舵角係数αθfを使って、前輪の補正舵角量θfは次式で表現され、制御部150b(図9)は、車速によって車輪角度の補正舵角量を決定する。
θf=αθf・θfmax
前輪の補正舵角係数αθfについて図11で説明する。
低速度域(0~VLFkm/h以下)では前輪の補正舵角係数αθfを「1.0」とし、VLFkm/hから車速の上昇に合わせ徐々に補正舵角係数αθfを減少させ、高速度域(VHFkm/h以上)では「A」とする。係数A、車速VLFkm/h、VHFkm/hは、車両情報によって異なる値であり、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により定められる。
<左右独立駆動装置の具体的構成例>
図12および図13に示すように、左右独立駆動装置162は、左右の後輪の駆動・回生トルクを左右別々に制御し、車両の横滑りなどを抑制して安定してスムーズに操作するための装置である。この左右独立駆動装置162は、インホイールモータ162aと、このインホイールモータ162aを制御する制御部162b(後述する)とを有する。
インホイールモータ162aは、車輪用軸受163と、モータを兼用する発電機である電動発電機164とを備える。このインホイールモータ162aは、後輪となる左右の車輪9R,9R(図1)に駆動力を補助的に与えるものとして小型のインホイールモータを採用しているが、左右の車輪9R,9R(図1)を別々に駆動制御できるものであれば、後述するオンボード式でもよい。
<車輪用軸受163について>
車輪用軸受163は、固定輪である外輪165と、複列の転動体166と、回転輪であるハブ輪167とを有する。外輪165とハブ輪167との間の軸受空間には、グリースが封入されている。外輪165は、複列の軌道面が形成された外輪本体165aと、この外輪本体165aのアウトボード側の外周面に設けられた外輪外周体165bとを有し、この例では、これら外輪本体165aと外輪外周体165bとは同一材料から一体形成されている。
ハブ輪167は、ハブ輪本体167aと、このハブ輪本体167aのインボード側の外周面に嵌合された部分内輪167bとを有する。ハブ輪本体167aは、外輪165よりも軸方向のアウトボード側に突出した箇所にハブフランジ168を有する。ハブフランジ168のアウトボード側の側面には、ブレーキロータ21aと図示外の車輪のリムとが軸方向に重なった状態で、ハブボルト169により取り付けられている。前記リムの外周に図示外のタイヤが取付けられている。
車両の足回りフレーム部品であるナックル6に、車輪用軸受163を固定するための車輪用軸受固定部材170が複数のボルト(図示せず)により着脱可能に固定されている。車輪用軸受固定部材170は、大径円筒部170aと、この大径円筒部170aよりもインボード側に位置する小径円筒部170bとを有する略円筒形状である。
大径円筒部170aは、車輪用軸受163の軸心と同軸でナックル6のアウトボード側に設けられる。大径円筒部170aのインボード側の外周面には、車体取付フランジ170aaが設けられている。ナックル6に対し、車体取付フランジ170aaが前記複数のボルトにより着脱可能に固定されている。大径円筒部170aのアウトボード側の内周面には、段差部が形成されている。外輪本体165aにおけるインボード側端が、前記段差部に嵌まり込み外輪165が軸方向に位置決めされる。
小径円筒部170bは、大径円筒部170aと同軸で且つ一体に設けられる。この小径円筒部170bの外周面は、大径円筒部170aの外周面よりも小径に形成されている。ナックル6には、小径円筒部170bの挿通を許す貫通孔が形成されている。ナックル6の貫通孔に小径円筒部170bが挿通された状態で、ナックル6のアウトボード側面6aに車体取付フランジ170aaが固定される。前記大径円筒部170aおよび小径円筒部170bを有する車輪用軸受固定部材170に対し、外輪165が着脱可能に固定されている。
外輪本体165aにおけるインボード側の外周面に大径円筒部170aがすきま嵌めで挿入され、この大径円筒部170aは、外輪本体165aにおけるインボード側の外周面と、外輪外周体165bのインボード側端との環状凹みに嵌まり込む。また外輪外周体165bには、軸方向に延びる雌ねじから成るねじ孔165baが円周方向所定間隔おきに複数形成されている。
大径円筒部170aには、複数のねじ孔165baに対応する複数のボルト孔が形成されている。各ボルト孔は、各ボルト171の雄ねじを通す貫通孔と、この貫通孔に連通する座繰り孔とを有する。大径円筒部170aの各ボルト孔にボルト171が挿入され、同ボルト171が外輪外周体165bのねじ孔165baに着脱可能に螺合されている。
<ブレーキ21について>
図12に示すように、ブレーキ21は、ディスク状のブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ(図示せず)とを備える摩擦ブレーキである。ブレーキロータ21aは、平板状部21aaと、外周部21abとを有する。平板状部21aaは、ハブフランジ168に重なる環状で且つ平板状の部材である。外周部21abは、平板状部21aaの外周縁部からインボード側に円筒状に延びる円筒状部と、この円筒状部のインボード側端から外径側に平板状に延びる平板部とを有する。
前記ブレーキキャリパは、ナックル6に取付けられ、前記平板部を挟み付ける摩擦パッド(図示せず)を有する。前記ブレーキキャリパは、油圧式および機械式のいずれであってもよく、また電動モータ式であってもよい。
<電動発電機164について>
図12および図13に示すように、この例の電動発電機164は、車輪の回転で発電を行い、給電されることによって車輪を回転駆動可能な走行補助用の電動発電機である。電動発電機164は、ロータ172がステータ173の半径方向外方に位置するアウターロータ型である。つまりステータ173は外輪165の外周に位置し、ロータ172はステータ173の外周に位置する。また、電動発電機164は、ロータ172がハブ輪167に取付けられたダイレクトドライブ形式である。
この電動発電機164は、ブレーキロータ21aの内径よりも半径方向内方に設置され、且つ、ハブフランジ168と、ナックル6のアウトボード側面6aとの間の軸方向範囲に設置されている。電動発電機164は、アウターロータ型の例えば表面磁石型永久磁石モータ、すなわちSPM(Surface Permanent Magnet)同期モータ(もしくはSPMSM(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)と標記)である。
もしくは電動発電機164は、IPM(Interior Permanent Magnet)同期モータ(もしくはIPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)と標記)でもよい。その他、電動発電機164は、スイッチトリラクタンスモータ(Switched reluctance motor;略称:SRモータ)、インダクションモータ(Induction Motor;略称:IM)等各種形式が採用できる。各モータ形式において、ステータ173の巻き線形式として分布巻、集中巻の各形式が採用できる。
ロータ172は、ハブフランジ168の外周部にボルト174により着脱可能に固定された円筒形状の回転ケース172aと、この回転ケース172aの内周面に設けられる複数の永久磁石172bとを備える。回転ケース172aは、例えば、軟磁性材料から成り、ハブ輪167と同心の円筒形状である。ハブフランジ168の外周部におけるインボード側面に環状凹みが形成され、この環状凹みに回転ケース172aのアウトボード側端部がインロー嵌合される。また回転ケース172aのアウトボード側端部には、軸方向に延びる雌ねじから成るねじ孔が円周方向所定間隔おきに複数形成されている。ハブフランジ168の外周部には、複数の前記ねじ孔に対応する複数のボルト孔が形成されている。前記ねじ孔にボルト174が螺合される。
回転ケース172aの内周面に円周方向一定間隔おきに複数の凹み部が形成され、各凹み部に永久磁石172bが嵌り込んで接着等により固定されている。回転ケース172aは、一体の金属部品で切削または鋳造等を用いて製作してもよく、もしくは、複数の分割構造体で製作後、これら分割構造体を、例えば、溶接、接着等で固定してもよい。
ステータ173は、環状のステータコア173aと、このステータコア173aに巻回されたステータコイル173bとを有する。ステータコア173aは、例えば、電磁鋼板、圧粉磁心、またはアモルファス合金等から構成される。ステータコア173aは、外輪165における外輪外周体165bの外周面、および、車輪用軸受固定部材170における大径円筒部170aの外周面に、絶縁層175を介して取付けられている。ステータコア173aおよび絶縁層175は、大径円筒部170aの外周面にしまり嵌めにより嵌合固定されている。
絶縁層175は、車輪用軸受163の電食を防止する絶縁層であって、例えば、樹脂材料またはゴム材料などの絶縁性を有する軟材料、あるいはセラミックスなどの絶縁材料等から成る。絶縁層175は、ステータコア173aの内周面の幅寸法と略同一でステータコア173aの内周面を全て覆うように形成されている。絶縁層175の径方向の厚みは、この電動発電機164の駆動電圧に応じて適宜に設定されている。このような絶縁層175により、転動体166への通電を遮断することにより、車輪用軸受163の電食を防止し得る。なおステータコア173aの内周面に、絶縁材料を塗布または溶射することにより絶縁層175を形成してもよい。
<シール構造について>
図12に示すように、回転ケース172aのインボード側の内周面と、車体取付フランジ170aaの外周面との間には、電動発電機164および車輪用軸受163内部への水および異物の侵入を防ぐ環状のシール部材176が配置されている。
<回転検出器について>
このインホイールモータ162aには、回転検出器177が設けられている。この回転検出器177は、走行補助用の電動発電機164の回転を制御するために、外輪165に対するハブ輪167の回転角度または回転速度を検出する。回転検出器177は、被検出部177aと、この被検出部177aを検出するセンサ部177bとを有する。
ハブ輪167のインボード側端に螺合された被検出部保持部材等に、被検出部177aが取付けられている。車輪用軸受固定部材170における小径円筒部170bの内周面に、センサ固定部材を介してセンサ部177bが固定されている。この回転検出器177として例えばレゾルバが適用される。なお回転検出器177としては、レゾルバに限定されるものではなく、例えば、エンコーダ、パルサーリングあるいはホールセンサなど形式を問わず採用可能である。
<左右独立駆動装置の制御部>
図14に示すように、左右独立駆動装置162の制御部162bは、ECU130から、車速およびステアリング角度を含む車両情報を取得し、取得した車速およびステアリング角度に応じて、駆動制御部178が右後輪用のモータ制御装置179R、左後輪用のモータ制御装置179Lを制御することで、右後輪用のインホイールモータ162a、および左後輪用のインホイールモータ162が備える電動発電機164(図12)を駆動し、左右の後輪を個別に駆動または回生制動可能である。
前記制御部162bにおいて、車速およびステアリング角度と各電動発電機164(図12)を駆動する指令値との関係は、例えばマップまたは演算式等を用いて制御規則として定められており、その制御規則を用いて制御を行う。前記制御部162bは、例えば専用のECUとして設けられるが、メインのECU130の一部として設けてもよい。
各モータ制御装置179R,179Lは例えばインバータ装置であり、図示外のバッテリの直流電力を三相の交流電圧に変換するインバータと、前記指令値(トルク指令)により前記インバータの出力をPWM制御等で制御するインバータ制御部とを有する。前記インバータは、半導体スイッチング素子等によるブリッジ回路(図示せず)と、電動発電機の回生電力を前記バッテリに充電する充電回路(図示せず)とを備える。
ECU130は、第2のステアリング装置150および左右独立駆動装置162の少なくともいずれか一方の異常を判定する判定手段33と、この判定手段33により第2のステアリング装置150および左右独立駆動装置162の少なくともいずれか一方の異常を判定したとき、各操舵用アクチュエータ5(図2)および左右輪独立駆動装置162の制御を中断する駆動停止手段34とを有する。
第2のステアリング装置150の異常としては、図9に示すアクチュエータ駆動制御部31R,31Lの異常、例えば、与えられた電流指令信号に対して所望の駆動電流が出力されない等の異常、またはアクチュエータ駆動制御部31R,31Lの電源の異常等が挙げられる。前記駆動電流はモータ電流を検出する図示外の電流検出手段等から取得可能である。
図14に示すように、左右独立駆動装置162の異常としては、モータ制御装置179R、179Lの異常、例えば、与えられた電流指令信号に対して所望の駆動電流が出力されない等の異常、または前記バッテリの異常等が挙げられる。前記駆動電流はモータ電流を検出する図示外の電流検出手段等から取得可能である。
<車両システムの動作例>
図15は、低速左旋回時の車両システムの動作を概略示す概念図である。
左右の前輪9F,9Fは、第2のステアリング装置150によって、矢印Y1のように切り増し操作が行われる。また、後輪9R,9Rは旋回外輪側が正駆動、旋回内輪側を逆駆動(回生制動)とすることにより、前輪9Fのみで操舵する場合より最小回転半径を小さくできる。
図16は、高速レーンチェンジ時の車両システムの動作を概略示す概念図である。
左右の前輪9F,9Fは、第2のステアリング装置150によって、矢印Y2のように切り増し操作が行われる。また、後輪9R,9Rは旋回外輪側が正駆動、旋回内輪側を逆駆動(回生制動)とすることで旋回力を大きくし、旋回し易くする。
このとき、後輪9Rに横滑りが発生した場合、スピンする方向とは逆向きに旋回トルクが作用するように後輪9Rの駆動方向を変更する。つまり、後輪9R,9Rの旋回内輪側を正駆動、後輪9R,9Rの旋回外輪側を逆駆動とすることにより、横滑りを抑えることが可能となるため、車線変更などでの車両の走行安定性を向上することが可能となる。
図9に示すように、補助操舵制御部151は、車両情報検出部110の車速、操舵角、車高、実ヨーレート、実横加速度、アクセル開度、ブレーキ開度の情報のいずれかを用いて制御してもよい。
補助操舵制御部151は、前記車速およびステアリング角度に応じて、左右の前輪の角度を調整する制御に加えて以下の図17に示すように左右の前輪を独立して操舵する制御を行ってもよい。前記車速およびステアリング角度に応じた制御と、図17に示す制御とを、運転者の操作または車両状況等に応じて切替えてもよいし、並行して実行してもよい。
補助操舵制御部151は、規範横加速度計算部152、右輪タイヤ角度計算部153、左輪タイヤ角度計算部154、右輪路面摩擦係数計算部155、目標ヨーレート計算部156、左輪路面摩擦係数計算部157、目標ヨーレート補正部158、目標左右輪タイヤ角度計算部159、右輪指令値計算部160、および左輪指令値計算部161を備える。
右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154は、所定の周期で、ECU130から操舵角情報および車高情報を取得する。右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154は、取得した操舵角情報および車高情報に基づいて、第2のステアリング装置150(図9)が操舵を行うタイヤの現在の角度を算出し、算出したタイヤ角度情報を規範横加速度計算部152に出力する。
規範横加速度計算部152は、ECU130から取得した車速情報および前記タイヤ角度情報に基づいて、規範横加速度の計算を行う。規範横加速度計算部152は、算出した規範横加速度を規範横加速度情報として右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157に出力する。
図18は路面摩擦係数を算出するためのマップを表す図であり、このマップは、図17に示す右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157に記憶されている。
右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、ECU130から取得する実横加速度情報および規範横加速度計算部152から入力される規範横加速度情報に基づいて、路面摩擦係数の計算を行う。具体的には、右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、規範横加速度計算部152から規範横加速度情報が入力されると、右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154からタイヤ角度情報を取得する。右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、前記マップ(図18)に基づいて、実横加速度/規範横加速度とタイヤ角度とから、路面摩擦係数を算出する。右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、算出した右輪の路面摩擦係数である右輪路面摩擦係数情報と、左輪の路面摩擦係数である左輪路面摩擦係数情報とを、目標ヨーレート補正部158に出力する。
目標ヨーレート計算部156は、ECU130から所定の周期で取得する車速情報および操舵角情報に基づいて、目標ヨーレートを計算し、算出した目標ヨーレートを目標ヨーレート情報として目標ヨーレート補正部158に出力する。
目標ヨーレート補正部158は、右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157から、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報が入力されると、目標ヨーレート計算部156から目標ヨーレート情報を取得し、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報で表される路面摩擦係数に応じて目標ヨーレートの補正を行う。目標ヨーレート補正部158は、補正後の目標ヨーレートを補正後ヨーレート情報として目標左右輪タイヤ角度計算部159へ出力する。
目標左右輪タイヤ角度計算部159は、前記補正後ヨーレート情報が入力されると、ECU130から実ヨーレート情報、アクセル指令値およびブレーキ指令値を取得し、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報を取得し、左右輪のタイヤ角度の目標値である目標左右輪タイヤ角度を計算する。具体的には、目標左右輪タイヤ角度計算部159は、下記式(1)に基づいて、左右それぞれのタイヤの目標の角度を算出する。
Figure 0007079656000001

式(1)において、θは実ヨーレート情報で表される実際の車両のヨーレート量、Xはアクセル指令値、Xはブレーキ指令値、μは右輪路面摩擦係数、μは左輪路面摩擦係数、β,γは他の変数、θtR1は右輪の目標タイヤ角度、θtL1は左輪の目標タイヤ角度である。
目標左右輪タイヤ角度計算部159は、計算した左右輪それぞれの目標タイヤ角度を目標タイヤ角度情報として、右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161へ出力する。
右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161は、前記各目標タイヤ角度情報が入力されると、右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154から、現在のタイヤ角度を表すタイヤ角度情報を取得し、目標タイヤ角度情報で表される目標タイヤ角度と、現在のタイヤ角度とを比較する。目標タイヤ角度と現在のタイヤ角度とを比較した結果、偏差がある場合には、右輪ハブユニット1R(図9)および左輪ハブユニット1L(図9)のそれぞれを転舵させる量を表す右輪転舵量情報および左輪転舵量情報を生成する。右輪指令値計算部160は、生成した右輪転舵量情報(電流指令信号)を右輪用のアクチュエータ駆動制御部31Rへ出力し、左輪指令値計算部161は、生成した左輪転舵量情報(電流指令信号)を左輪用のアクチュエータ駆動制御部31Lへ出力する。
各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lはインバータを備える。各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、前記右輪転舵量情報および前記左輪転舵量情報に基づいて、各転舵用アクチュエータのモータ26(図9)への電流を制御する。
具体的には、図9および図17に示すように、各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161から右輪転舵量情報および左輪転舵量情報が入力されると、現在の右輪ハブユニット1R、および左輪ハブユニット1Lの転舵角を表す各モータ26の位置情報を取得し、右輪転舵量情報および左輪転舵量情報に基づいてモータ26の目標位置を決定し、各モータ26へ流す電流の制御を行う。
すなわち、図4に示すように、各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、補助操舵制御部151から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して操舵用アクチュエータ5を駆動制御する。アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、モータ26のコイルに供給する電力を制御する。このアクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、例えば、図示外のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を構成し、前記スイッチ素子のON-OFFデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う。これにより、運転者のハンドル操作による操舵に付加して、車輪を角度変化することができる。
<作用効果>
以上説明した車両システムSSによれば、第1のステアリング装置11は、操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い左右の前輪9F,9Fを操舵する。制御装置CUは、車速およびステアリング角度に応じて、左右の前輪9F,9Fの角度を調整するように各操舵用アクチュエータ5を制御すると共に左右の後輪9R,9Rを個別に駆動または回生制動するように左右独立駆動装置162を制御する。運転者のハンドル操作等による車両運動の挙動につき、前輪9F,9Fを第2のステアリング装置150で左右別々に修正操舵し、さらに後輪9R,9Rの駆動力または回生制動力を制御することで、車両100の姿勢制御を適切に行うことが可能となる。
・例えば低速域では、制御装置CUは、左右の前輪9F,9Fの角度をそれぞれ別々に切り増し、アッカーマンジオメトリに近づくように設定することで、走行抵抗を増大させることがなく、スムーズな旋回をさせることができる。さらに制御装置CUは、前輪9F,9Fの操舵角に応じて、後輪9R,9Rの旋回内輪側を逆駆動(回生制動)、後輪9R,9Rの旋回外輪側を正駆動とすることにより、前輪のみで操舵する場合より最小回転半径を小さくできる。
・例えば高速域では、制御装置CUは、左右の前輪9F,9Fの角度をそれぞれ別々に操舵することにより、パラレルジオメトリに近づくように設定することで、スムーズな旋回をさせることができる。さらに制御装置CUは、前輪9F,9Fの操舵角に応じて、旋回開始時には後輪9R,9Rの旋回内輪側を逆駆動(回生制動)、後輪9R,9Rの旋回外輪側を正駆動とすることにより、旋回力を増やし、旋回がし易くなる。また、後輪9R,9Rの横滑り発生時には後輪9R,9Rの旋回内輪側を正駆動、後輪9R,9Rの旋回外輪側を逆駆動とすることにより、横滑りを抑えることが可能となるため、車線変更などでの車両の走行安定性を向上することが可能となる。
・その他第2のステアリング装置等に異常が発生した場合、運転者のハンドル操作によって第1のステアリング装置11を作動させて車両を確実に停止できる状態まで移動させることができ、安全性の向上を図れる。
第2のステアリング装置150は、ハブユニット本体2と、ハブユニット本体2を上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在に支持するユニット支持部材3と、ハブユニット本体2を転舵軸心A回りに回転駆動する操舵用アクチュエータ5とを備えるため、各前輪9Fを支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、操舵用アクチュエータ5の駆動により、転舵軸心A回りに一定の範囲で自由に回転させることができる。このため、既存の車両の基本構造を変更することなく簡単な構造で前輪毎に独立して操舵が行え、また車速およびステアリング角度などに応じて、各前輪9Fの角度を独立して調整することができる。
直動機構25は、前輪からの逆入力を防止する、台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構25bを備えるため、前輪9Fを支持するハブベアリング15のふらつきを抑えることが可能となる。操舵用アクチュエータ5が前述のような逆入力防止機構である送りねじ機構25bを備え、且つハブユニット1R,1Lの最大転舵角は修正動作に必要な±数度に制限されているので、一方のアクチュエータ駆動制御部31R(31L)の電源異常が発生した場合、制御装置CUが他方のアクチュエータ駆動制御部31L(31R)の制御を停止することで、ハブユニット1R,1Lの転舵角は固定され、運転者は安全にハンドル200を使って、車両100を路肩等の安全な場所に移動させることができる。
制御装置CUは、判定手段33により第2のステアリング装置150および左右独立駆動装置162の少なくともいずれか一方の異常を判定したとき、各操舵用アクチュエータ5および左右独立駆動装置162の制御を中断する。この場合、運転者のハンドル操作により第1のステアリング装置11を駆動させて前輪9F,9Fを操舵させて車両100を路肩等の退避位置まで移動させることができ、安全を確保することができる。
<他の実施形態>
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
図19に示す車両システムでは、駆動方式が後輪駆動でこの後輪駆動の駆動源として、左右の車輪9R,9Rに駆動力を与えるインホイールモータ162a,162aを採用している。この場合、図1の車両システムよりもインホイールモータ162aの出力を大きくする必要があるものの、内燃機関を省略することができるため、車両の全体構造を簡単化し得る。
図20に示すように、左右独立駆動装置162Aは、二モータ式オンボードモータ162c,162cを有するものであってもよい。この例は、二つのモータ162c,162cが車両の車体に搭載されたものである。
なお、前記各実施形態は、操舵指令装置がハンドル200である場合につき説明したが、ハンドル200以外の手動の操舵指令装置、例えばジョイスティックであってもよく、また例えば図9に示すような自動の操舵指令装置200Aであってもよい。この自動の操舵指令装置200Aは、車両周辺状況検出手段230から車両周辺状況等を認識し、操舵指令を自動生成する装置である。車両周辺状況検出手段230は、例えば、カメラまたはミリ波のレーダ等のセンサ類である。
自動の操舵指令装置200Aは、例えば道路上の白線および障害物を認識し、操舵指令を生成して出力する。自動の操舵指令装置200Aは、車両の自動運転を行う装置の一部であっても、手動運転による操舵の支援を行う装置であってもよい。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2…ハブユニット本体、3…ユニット支持部材、5…操舵用アクチュエータ、6…ナックル(支持部材、足回りフレーム部品)、9F…前輪、9R…後輪、11…第1のステアリング装置、12…懸架装置、15…ハブベアリング、21a…ブレーキロータ、25b…送りねじ機構(逆入力防止機構)、31R,31L…アクチュエータ駆動制御部、33…判定手段、100…車両、110…車両情報検出部、150…第2のステアリング装置、151…補助操舵制御部、162,162A…左右独立駆動装置、162a…インホイールモータ、162c…二モータ式オンボードモータ、172…ロータ、173…ステータ、200…ハンドル(操舵指令装置)、200A…自動の操舵指令装置、CU…制御装置、SS…車両システム

Claims (10)

  1. 操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い車両の左右の前輪を操舵する第1のステアリング装置と、
    前記左右の前輪を支持する支持部材にそれぞれ設けられた操舵用アクチュエータの駆動により前記左右の前輪を個別に操舵する第2のステアリング装置と、
    車速およびステアリング角度を含む車両情報を検出する車両情報検出部と、
    左右の後輪を独立に駆動する左右独立駆動装置と、を備え、
    少なくとも前記車速およびステアリング角度のいずれか一方の情報に応じて、前記左右の前輪の角度を調整するように前記各操舵用アクチュエータを制御すると共に前記左右の後輪を個別に駆動または回生制動するように前記左右独立駆動装置を制御する制御装置を備えた車両システム。
  2. 請求項1に記載の車両システムにおいて、前記第2のステアリング装置は、
    前記各前輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
    懸架装置の前記支持部材である足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
    前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動する前記操舵用アクチュエータと、を備える車両システム。
  3. 請求項1または請求項2に記載の車両システムにおいて、前記制御装置は、与えられた操舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する補助操舵制御部と、この補助操舵制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記操舵用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有する車両システム。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両システムにおいて、前記操舵用アクチュエータは、前記前輪からの逆入力を防止する逆入力防止機構を備える車両システム。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両システムにおいて、前記左右独立駆動装置は、インホイールモータを有する車両システム。
  6. 請求項5に記載の車両システムにおいて、前記インホイールモータは、前記車両のブレーキロータの内径よりも半径方向内方にステータが配置された車両システム。
  7. 請求項5または請求項6に記載の車両システムにおいて、前記インホイールモータは、ロータがステータの半径方向外方に位置するアウターロータ型である車両システム。
  8. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両システムにおいて、前記左右独立駆動装置は、2モータ式オンボードモータを有する車両システム。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両システムにおいて、前記制御装置は、定められた条件に従って前記第2のステアリング装置および前記左右独立駆動装置の少なくともいずれか一方の異常を判定する判定手段を有し、前記制御装置は、前記判定手段により前記第2のステアリング装置および前記左右独立駆動装置の少なくともいずれか一方の異常を判定したとき、前記各操舵用アクチュエータおよび前記左右独立駆動装置の制御を中断する車両システム。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の車両システムを備えた車両。
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