JP7060984B2 - 転舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両 - Google Patents
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Description
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
走行状況に応じてステアリングジオメトリを可変とした機構に関しては、例えば特許文献1,2が提案されている。特許文献1では、ナックルアームとジョイント位置を相対的に変化させて、ステアリングジオメトリを変化させる。特許文献2では、モータ2個を使い、トー角とキャンバー角の両方を任意の角度に傾けることを可能にしている。また、4輪独立転舵の機構につき、特許文献3で提案されている。
特許文献1では、前述のようにナックルアームとジョイント位置を相対的に変化させてステアリングジオメトリを変化させているが、このような部分で車両のジオメトリを変化させるほどの大きな力を得るモータアクチュエータを備えることは、空間の制約上、非常に困難である。また、この位置での変化による車輪角の変化が小さく、大きな効果を得るためには、大きく変化させる、つまり大きく動かす必要がある。
特許文献3は、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また、転舵軸上に減速機を設けた場合、モータを含めてサイズが大きくなる。サイズが大きくなると車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
転舵機能を備えた機構を車輪内の限られたスペースに収容するためには、小型化が必要である。しかし、アクチュエータが異常に動作した場合に、過大に動くことを防ぐために、直動機構の両端部にストッパーを設けると、ストッパー分だけ直動機構部が長くなり、転舵機能付ハブユニットの小型化が難しい。
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる転舵用アクチュエータと、を備え、
前記ユニット支持部材は、このユニット支持部材に対し前記ハブユニット本体の一部が当接して前記転舵軸心回りの相対運動の範囲を制限するストッパーを有する。
そのため、前輪等の転舵輪および後輪等の非転舵輪のいずれに用いてもよい。転舵輪に用いる場合は、ステアリング装置により方向が変化させられる部材に設置されることにより、運転者のハンドル操作で、車輪は足回りフレーム部品およびユニット支持部材とともに転舵されるがこの転舵に付加して、左右の車輪個別の、または左右輪連動した車輪の微小な角度変化を行わせる機構となる。この構成を後輪等の非転舵輪に適用する場合は、ハブユニット全体は転舵しないが、補助転舵機能により、前輪等の転舵輪と同様に僅かな角度の転舵を車輪毎に独立して行える。
この構成を後輪等の非転舵輪に適用した場合は、舵角を前輪等の転舵輪と同じ位相にすると、転舵時に発生するヨーを抑え、車両の安定性を高めることができる。さらに、直線走行時にも左右独立でトー角度を調整することで、走行安定性を確保することができる。
そこで、この構成では、ハブ輪を除くハブユニット本体の一部が、ユニット支持部材に備えたストッパーと先に当接することで、前記ハブ輪とユニット支持部材が直接当接せず、車輪のロックおよびハブベアリングの干渉または異常を防止することができる。
そのため、この発明の転舵機能付ハブユニットにつき前述した各効果が得られる。前輪は一般的に転舵輪とされるが、転舵輪にこの発明の転舵機能付ハブユニットを適用した場合は、走行中におけるトー角調整に効果的である。また、後輪は一般的に非転舵輪とされるが、非転舵輪に適用した場合は、非転舵輪の若干の転舵によって低速走行時における最小回転半径の低減を図ることができる。
この発明の第1の実施形態に係る転舵機能付ハブユニットを図1ないし図11と共に説明する。
<転舵機能付ハブユニットの概略構造>
図1に示すように、この転舵機能付ハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、転舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。図4に示すように、このユニット支持部材3のインボード側に、転舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。転舵機能付ハブユニット1(図1)を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。
この転舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では転舵輪、具体的には図11に示すように、車両10の前輪9Fのステアリング装置11による転舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を転舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。
図1に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の転舵力受け部であるアーム部17(図3)とを備える。
図7に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図1)とを繋ぐ役目をしている。
図2に示すように、ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(図5)に取付けられる。
図7に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、テーパころ軸受が適用されている。転がり軸受は、取付軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
図3に示すように、転舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図1)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、モータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
図2に示すように、ユニット支持部材3はストッパー(「ストッパープレート」とも言う)34を有する。このストッパー34は、ユニット支持部材3に対するハブユニット本体2の転舵軸心A(図1)回りの相対運動の範囲を制限する部材である。ストッパー34は、ユニット支持部材3に対しハブユニット本体2のインボード側の一部が当接することで、前記相対運動の範囲を制限する。
なお、ストッパー34は、ナックル6およびユニット支持部材3に一体に設けられてもよい。換言すれば、ストッパー34が、ユニット支持部材3と同一材料からこのユニット支持部材3の一部として構成されてもよい。ハブベアリング15における、車輪9と共に回転しない部分の他の例として、アウターリング16の円環部16aそのものをインボード側端に延在してもよいし、外輪19のインボード側端をさらにインボード側端に延在してもよい。
図9および図10に示すように、転舵用アクチュエータ5が異常な動作をした場合等、規定の転舵角度以上に転舵した場合、車輪回転軸まわりに回転するハブ輪部18aおよびハブボルトBt等がユニット支持部材3に接触することなくハブベアリング15における、車輪9と共に回転しない部分が、ストッパー34に当接する。
また、タイヤ9bからの過大な外力がハブユニット本体2に作用し、ジョイント部8または直動機構25に異常が生じると、ハブベアリング15を任意の転舵角度で制御できなくなる。この場合にも、ジョイント部8または直動機構25に異常が生じる前に、ストッパー34の当接面34aが前記円環状部材35等に接触して力を受けることにより、前記と同様の作用効果を奏する。
ハブ輪部を除くハブユニット本体2とユニット支持部材3が接触する転舵角度:±Bdeg
車輪回転軸で回転するハブ輪部18aとユニット支持部材3が接触する転舵角度:±Cdeg
|±Adeg|<|±Bdeg|<|±Cdeg|
上記の式を満足すれば、異常時でも、車輪9のロックもしくはハブユニット本体3が脱落することはないため、通常のステアリング装置11によって安全に車両を停止する位置まで誘導することができる。
以上説明した転舵機能付ハブユニット1によれば、車輪9を支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、アクチュエータ本体7の駆動により、転舵軸心A回りに自由に回転させることができる。つまり、ハブユニット本体2は、転舵用アクチュエータ5の直動出力部25aをモータ26の駆動により進退させることで、直動出力部25aに連結されたアーム部17を介して回転させられる。
車両の走行条件に応じて、左右の車輪角度を独立して任意に変更することができるため、車両の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。また、適切な車輪角度を設定することで燃費を改善することも可能となる。
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
第1の実施形態では、図2に示すように、アクチュエータ本体7の略全体がケース6bに覆われているが、この例に限定されるものではない。他の実施形態として、例えば、アクチュエータ本体7のうちモータ26が、ケース6bから露出して同ケース6bの外表面に取り付けられる所謂外付け構造であってもよい。この場合、既製品のモータを用いることができるうえ、モータを容易に交換することができる等、メンテナンス性を高めることが可能となる。
その他の実施形態として、ユニット支持部材3を、足回りフレーム部品に別体に構成し、この足回りフレーム部品にユニット支持部材3を着脱自在に設けてもよい。
この転舵機能付ハブユニット1は、非転舵輪に対して用いてもよい。例えば、図12に示すように、前輪転舵の車両において、後輪9Rを支持する懸架装置12Rの車輪用軸受設置部となる足回りフレーム部品6Rに設定し、後輪転舵に用いてもよい。
図3に示すように、この転舵システムは、いずれかの実施形態に係る転舵機能付ハブユニット1と、この転舵機能付ハブユニット1の転舵用アクチュエータ5を制御する制御装置29とを備える。制御装置29は、制御部30と、アクチュエータ駆動制御部31とを有する。制御部30は、上位制御部32から与えられた補助転舵角指令信号(転舵角指令信号)に応じた電流指令信号を出力する。
2…ハブユニット本体
3…ユニット支持部材
5…転舵用アクチュエータ
6…ナックル(足回りフレーム部品)
6b…ケース
9…車輪,9F…前輪,9R…後輪
10…車両
12,12R…懸架装置
15…ハブベアリング
29…制御装置
30…制御部
31…アクチュエータ駆動制御部
34…ストッパー
Claims (4)
- 車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる転舵用アクチュエータと、を備え、
前記ユニット支持部材は、このユニット支持部材に対し前記ハブユニット本体の一部が当接して前記転舵軸心回りの相対運動の範囲を制限するストッパーを有し、前記ストッパーは、前記転舵用アクチュエータを支持するケースに取り付けられ、このケースのうち、前記転舵用アクチュエータの回転駆動源であるモータとの隔壁を成すアウトボード側側面に、板状の前記ストッパーが取り付けられている転舵機能付ハブユニット。 - 請求項1に記載の転舵機能付ハブユニットにおいて、前記ストッパーは、前記足回りフレーム部品に一体に設けられている転舵機能付ハブユニット。
- 請求項1または請求項2に記載の転舵機能付ハブユニットと、この転舵機能付ハブユニットの転舵用アクチュエータを制御する制御装置とを備えた転舵システムであって、前記制御装置は、与えられた転舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する制御部と、この制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記転舵用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有する転舵システム。
- 請求項1または請求項2に記載の転舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持された車両。
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