JP2019171909A - 転舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両 - Google Patents
転舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】転舵機能付ハブユニットの小型化を図ると共に、直進運動を回転運動にスムーズに変換することができる転舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両を提供する。【解決手段】この転舵機能付ハブユニット1は、車輪9を支持するハブベアリング15を有するハブユニット本体2と、懸架装置のナックルに設けられ、ハブユニット本体2を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材3と、ハブユニット本体2を転舵軸心回りに回転運動させる転舵用アクチュエータ5とを備える。転舵用アクチュエータ5は、モータ26と、ハブユニット本体2に設けられたアーム部17に連結されモータ26の回転出力を直進運動に変換する直動機構25とを有する。直動機構25とアーム部17との連結部の、直進運動と回転運動の軌跡に生じるずれを吸収する連結部差吸収手段Rkを備えた。【選択図】図2
Description
この発明は、ステアリング装置による転舵に付加する転舵、または後輪転舵等の補助的な転舵を行う機能を備えた転舵機能付ハブユニットおよびそれを備えた車両に関し、燃費の改善、車両の走行性の安定と安全性の向上の技術に関する。
一般的な自動車等の車両は、ハンドルとステアリング装置が機械的に接続され、また、ステアリング装置の両端はタイロッドによってそれぞれの左右輪につながっている。そのため、ハンドルの動きによる左右輪の切れ角度は初期の設定によって決まる。
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
車両のジオメトリは、走行性の安定と安全性に影響する。
走行状況に応じてステアリングジオメトリを可変とした機構に関しては、例えば特許文献1,2が提案されている。特許文献1では、ナックルアームとジョイント位置を相対的に変化させて、ステアリングジオメトリを変化させる。特許文献2では、モータ2個を使い、トー角とキャンバー角の両方を任意の角度に傾けることを可能にしている。また、4輪独立転舵の機構につき、特許文献3で提案されている。
走行状況に応じてステアリングジオメトリを可変とした機構に関しては、例えば特許文献1,2が提案されている。特許文献1では、ナックルアームとジョイント位置を相対的に変化させて、ステアリングジオメトリを変化させる。特許文献2では、モータ2個を使い、トー角とキャンバー角の両方を任意の角度に傾けることを可能にしている。また、4輪独立転舵の機構につき、特許文献3で提案されている。
アッカーマンジオメトリは、車両に作用する遠心力を無視できるような低速域での旋回において、車両をスムーズに旋回させるために、各輪が共通の一点を中心として旋回するように左右輪の舵角差を設定している。しかし、遠心力を無視できない高速域の旋回においては、車輪は遠心力とつり合う方向にコーナリングフォースを発生させることが望ましいため、アッカーマンジオメトリよりもパラレルジオメトリとすることが好ましい。
前述したように一般的な車両の操舵装置は機械的に車輪と接続されているため、一般的には固定された単一のステアリングジオメトリしか取ることができず、アッカーマンジオメトリとパラレルジオメトリとの中間的なジオメトリに設定されることが多い。しかし、この場合、低速域では左右輪の舵角差が不足して外輪の舵角が過大となり、高速域では内輪の舵角が過大となる。このように内外輪の車輪横力配分に不要な偏りがあると、走行抵抗の悪化による燃費悪化及びタイヤの早期摩耗の原因となり、また内外輪を効率的に利用できないので、コーナリングのスムーズさが損なわれるといった課題がある。
特許文献1,2の提案によると、ステアリングジオメトリを変更させることができるが次の課題がある。
特許文献1では、前述のようにナックルアームとジョイント位置を相対的に変化させてステアリングジオメトリを変化させているが、このような部分で車両のジオメトリを変化させるほどの大きな力を得るモータアクチュエータを備えることは、空間の制約上、非常に困難である。また、この位置での変化による車輪角の変化が小さく、大きな効果を得るためには、大きく変化させる、つまり大きく動かす必要がある。
特許文献1では、前述のようにナックルアームとジョイント位置を相対的に変化させてステアリングジオメトリを変化させているが、このような部分で車両のジオメトリを変化させるほどの大きな力を得るモータアクチュエータを備えることは、空間の制約上、非常に困難である。また、この位置での変化による車輪角の変化が小さく、大きな効果を得るためには、大きく変化させる、つまり大きく動かす必要がある。
特許文献2では、モータを2個使っているため、モータ個数の増大によるコスト増が生じるだけでなく、制御が複雑になる。
特許文献3は、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また、転舵軸上に減速機を設けた場合、モータを含めてサイズが大きくなる。サイズが大きくなると車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
特許文献3は、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また、転舵軸上に減速機を設けた場合、モータを含めてサイズが大きくなる。サイズが大きくなると車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
上記のように従来の補助的な転舵機能を備えた機構は、車両において車輪のトー角またはキャンバー角を任意に変更することを目的としているため、複雑な構成となっている。また、剛性を確保することが困難となり、剛性を確保するためには大型化する必要があり重量増となる。
車両において、車輪のトー角またはキャンバー角を任意に変更するためには、複雑な構成が必要であり、構成部品が多くなる。
転舵機能を備えた機構を車輪内の限られたスペースに収容するためには、小型化が必要である。
従来の基本構造では、補助転舵を行うにあたっては、ハブベアリングから一体に延びるアーム部を、転舵用アクチュエータの直動機構で押し引きすることで、ハブベアリングを転舵軸心回りに転舵する。この基本構造では、転舵用アクチュエータの直動機構が直進運動するのに対して、アーム部は転舵軸心回りに回転運動するため、転舵角が増すにつれて、アーム部の連結点が直動機構の直進運動上からずれてしまう。
転舵機能を備えた機構を車輪内の限られたスペースに収容するためには、小型化が必要である。
従来の基本構造では、補助転舵を行うにあたっては、ハブベアリングから一体に延びるアーム部を、転舵用アクチュエータの直動機構で押し引きすることで、ハブベアリングを転舵軸心回りに転舵する。この基本構造では、転舵用アクチュエータの直動機構が直進運動するのに対して、アーム部は転舵軸心回りに回転運動するため、転舵角が増すにつれて、アーム部の連結点が直動機構の直進運動上からずれてしまう。
この発明の目的は、転舵機能付ハブユニットの小型化を図ると共に、直進運動を回転運動にスムーズに変換することができる転舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両を提供することである。
この発明の転舵機能付ハブユニットは、車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転運動させる転舵用アクチュエータと、を備え、
前記転舵用アクチュエータは、モータと、前記ハブユニット本体におけるアーム部に連結され前記モータの回転出力を直進運動に変換する直動機構とを有し、この直動機構と前記アーム部との連結部の、前記直進運動と前記回転運動の軌跡に生じるずれを吸収する連結部差吸収手段を備えた。
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転運動させる転舵用アクチュエータと、を備え、
前記転舵用アクチュエータは、モータと、前記ハブユニット本体におけるアーム部に連結され前記モータの回転出力を直進運動に変換する直動機構とを有し、この直動機構と前記アーム部との連結部の、前記直進運動と前記回転運動の軌跡に生じるずれを吸収する連結部差吸収手段を備えた。
この構成によると、車輪を支持するハブベアリングを含むハブユニット本体を、転動用アクチュエータの駆動により、前記転舵軸心回りに一定の範囲で自由に回転させることができる。このため、車輪毎に独立して転舵が行え、また車両の走行状況に応じて、車輪のトー角を任意に変更することができる。
そのため、前輪等の転舵輪および後輪等の非転舵輪のいずれに用いてもよい。転舵輪に用いる場合は、ステアリング装置により方向が変化させられる部材に設置されることにより、運転者のハンドル操作で、車輪は足回りフレーム部品およびユニット支持部材とともに転舵されるがこの転舵に付加して、左右の車輪個別の、または左右輪連動した車輪の角度変化を行わせる機構となる。この構成を後輪等の非転舵輪に適用する場合は、ハブユニット全体は転舵しないが、補助転舵機能により、前輪等の転舵輪と同様に転舵を車輪毎に独立して行える。
そのため、前輪等の転舵輪および後輪等の非転舵輪のいずれに用いてもよい。転舵輪に用いる場合は、ステアリング装置により方向が変化させられる部材に設置されることにより、運転者のハンドル操作で、車輪は足回りフレーム部品およびユニット支持部材とともに転舵されるがこの転舵に付加して、左右の車輪個別の、または左右輪連動した車輪の角度変化を行わせる機構となる。この構成を後輪等の非転舵輪に適用する場合は、ハブユニット全体は転舵しないが、補助転舵機能により、前輪等の転舵輪と同様に転舵を車輪毎に独立して行える。
また、旋回走行時に、走行速度に応じて左右輪の舵角差を変えることができる。例えば高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を任意に変更することができるため、車両の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の操舵輪の転舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。
さらに直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角の量を調整することで、低速時には燃費を悪化させることなく、高速時には走行安定性を確保する等調整が可能である。
この構成を後輪等の非転舵輪に適用した場合は、舵角を前輪等の転舵輪と同じ位相にすると、転舵時に発生するヨーを抑え、車両の安定性を高めることができる。さらに、直線走行時にも左右独立でトー角を調整することで、走行安定性を確保することができる。
この構成を後輪等の非転舵輪に適用した場合は、舵角を前輪等の転舵輪と同じ位相にすると、転舵時に発生するヨーを抑え、車両の安定性を高めることができる。さらに、直線走行時にも左右独立でトー角を調整することで、走行安定性を確保することができる。
転舵用アクチュエータの直動機構がハブユニット本体のアーム部を押し引きすることで転舵されるが、特に、直進運動する前記直動機構と、前記転舵軸心回りに回転運動する前記アーム部との連結部の、前記直進運動と前記回転運動の軌跡に生じるずれを連結部差吸収手段が吸収する。このため、転舵用アクチュエータの駆動源であるモータを大型化することなく、ハブユニット本体を所望の角度にスムーズに回転駆動することができる。したがって、転舵機能付ハブユニットの小型化を図ると共に、直動機構の直進運動を、アーム部の回転運動にスムーズに変換することができる。
前記連結部差吸収手段は、前記直動機構および前記アーム部のいずれか一方に前記転舵軸心と平行に設けられる連結ピンと、他方に設けられ前記連結ピンに嵌まり前記直進運動と前記回転運動の軌跡に生じるずれを許容する長孔を有する連結ピン嵌合孔部とを有するものであってもよい。この場合、例えば直動機構の先端部とアーム部との間に連結部材を介在させる構造等よりも、より簡素な構造で直進運動と回転運動の軌跡のずれを吸収し、直進運動を回転運動にスムーズに変換する機能が実現できる。
前記長孔の長径は、直動機構の直進運動の軌跡とアーム部の回転運動の軌跡のずれを吸収可能な長さに設定することで、直動機構およびアーム部の互いのスムーズな動きが実現できる。これと共に、前記長孔の短径は、例えば、連結ピンの直径に対して極めて小さなすきまを持たせることで、転舵角方向のバックラッシを最小限にすることができる。これにより、転舵の精度および応答性の向上を図ることができる。
前記連結ピンが前記アーム部に設けられ、且つ、前記連結ピン嵌合孔部が前記直動機構の先端部に設けられ、前記連結ピン嵌合孔部の前記長孔は、前記直動機構の直進方向および前記転舵軸にそれぞれ直交する方向に延びるものであってもよい。この場合、転舵すると、アーム部の連結部(連結点)は直動機構の直進方向からずれるが、連結ピンが直動機構の長孔内を移動することでずれを吸収することができる。
前記連結ピンが前記直動機構の先端部に設けられ、且つ、前記連結ピン嵌合孔部が前記アーム部に設けられ、前記連結ピン嵌合孔部の前記長孔は、前記アーム部の延在方向と平行且つ前記転舵軸に直交する方向に延びるものであってもよい。この場合、転舵すると、アーム部の連結部(連結点)はアーム部の径方向へずれるが、連結ピンがアーム部の長孔内を移動することでずれを吸収することができる。
前記連結部差吸収手段は、前記直動機構に対し、転舵軸と平行な第一の連結軸を中心に角変位可能に連結されたジョイント部を備え、前記アーム部は、前記ジョイント部に対し、転舵軸と平行な第二の連結軸を中心に回転自在に連結されていてもよい。このように、関節可動部であるジョイント部を設け、いわゆる屈曲点を追加することで、連結部のずれを吸収することができる。
この発明の転舵システムは、この発明の上記いずれかの構成の転舵機能付ハブユニットと、この転舵機能付ハブユニットの転動用アクチュエータを制御する制御装置とを備えた転舵システムであって、前記制御装置は、与えられた転舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する制御部と、この制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記転動用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有する。
この構成によると、制御部は、与えられた転舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する。アクチュエータ駆動制御部は、制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して転動用アクチュエータを駆動制御する。したがって、運転者のハンドル操作等による転舵に付加して車輪角度を任意に変更することができる。
この発明の車両は、この発明の上記いずれかの構成の転舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持される。
そのため、この発明の転舵機能付ハブユニットにつき前述した各効果が得られる。前輪は一般的に転舵輪とされるが、転舵輪にこの発明の転舵機能付ハブユニットを適用した場合は、走行中におけるトー角調整に効果的である。また、後輪は一般的に非転舵輪とされるが、非転舵輪に適用した場合は、非転舵輪の若干の転舵によって低速走行時における最小回転半径の低減を図ることができる。
そのため、この発明の転舵機能付ハブユニットにつき前述した各効果が得られる。前輪は一般的に転舵輪とされるが、転舵輪にこの発明の転舵機能付ハブユニットを適用した場合は、走行中におけるトー角調整に効果的である。また、後輪は一般的に非転舵輪とされるが、非転舵輪に適用した場合は、非転舵輪の若干の転舵によって低速走行時における最小回転半径の低減を図ることができる。
この発明の転舵機能付ハブユニットは、車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転運動させる転舵用アクチュエータと、を備え、前記転舵用アクチュエータは、モータと、前記ハブユニット本体に設けられたアーム部に連結され前記モータの回転出力を直進運動に変換する直動機構とを有し、この直動機構と前記アーム部との連結部の、前記直進運動と前記回転運動の軌跡に生じるずれを吸収する連結部差吸収手段を備えた。このため、転舵機能付ハブユニットの小型化を図ると共に、直進運動を回転運動にスムーズに変換することができる。
この発明の転舵システムは、この発明におけるいずれかの構成の転舵機能付ハブユニットと、この転舵機能付ハブユニットの転動用アクチュエータを制御する制御装置とを備えた転舵システムであって、前記制御装置は、与えられた転舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する制御部と、この制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記転動用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有する。このため、転舵機能付ハブユニットの小型化を図ると共に、直進運動を回転運動にスムーズに変換することができる。
この発明の車両は、この発明におけるいずれかの構成の転舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持されたため、転舵機能付ハブユニットの小型化を図ると共に、直進運動を回転運動にスムーズに変換することができる。
<第1の実施形態>
この発明の第1の実施形態に係る転舵機能付ハブユニットを図1ないし図10と共に説明する。
<転舵機能付ハブユニットの概略構造>
図1に示すように、この転舵機能付ハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、転舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。図4に示すように、このユニット支持部材3のインボード側に、転舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。転舵機能付ハブユニット1(図1)を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。
図2に示すように、ハブユニット本体2とアクチュエータ本体7とは、後述する連結部差吸収手段Rkを介して連結されている。
この発明の第1の実施形態に係る転舵機能付ハブユニットを図1ないし図10と共に説明する。
<転舵機能付ハブユニットの概略構造>
図1に示すように、この転舵機能付ハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、転舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。図4に示すように、このユニット支持部材3のインボード側に、転舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。転舵機能付ハブユニット1(図1)を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。
図2に示すように、ハブユニット本体2とアクチュエータ本体7とは、後述する連結部差吸収手段Rkを介して連結されている。
図1に示すように、ハブユニット本体2は、上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在なように、上下二箇所で回転許容支持部品4,4を介してユニット支持部材3に支持されている。転舵軸心(転舵軸)Aは、車輪9の回転軸心Oとは異なる軸心であり、主な転舵を行うキングピン軸とも異なっている。通常の車両は、車両走行の直進安定性の向上を目的としてキングピン角度が10〜20度で設定されているが、この実施形態の転舵機能付ハブユニット1は、前記キングピン角度とは別の角度(軸)の転舵軸を有する。車輪9は、ホイール9aとタイヤ9bとを備える。
<転舵機能付ハブユニット1の設置箇所>
この転舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では転舵輪、具体的には図10に示すように、車両10の前輪9Fのステアリング装置11による転舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を転舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。
この転舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では転舵輪、具体的には図10に示すように、車両10の前輪9Fのステアリング装置11による転舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を転舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。
図2および図10に示すように、ステアリング装置11は、車体に取り付けられ、運転者のハンドル11aの操作、または図示外の自動運転装置、運転支援装置の指令等によって動作し、その進退するタイロッド14が、ユニット支持部材3のステアリング結合部6d(後述する)に連結されている。ステアリング装置11は、ラック・ピニオン式等とされるが、どのタイプのステアリング装置でも構わない。懸架装置12は、例えば、ショックアブソーバーをナックル6に直接固定するストラット式サスペンション機構を適用しているが、マルチリンク式サスペンション機構、その他のサスペンション機構を適用してもよい。
<ハブユニット本体2について>
図1に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の転舵力受け部であるアーム部17(図3)とを備える。
図7に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図1)とを繋ぐ役目をしている。
図1に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の転舵力受け部であるアーム部17(図3)とを備える。
図7に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図1)とを繋ぐ役目をしている。
このハブベアリング15は、図示の例では、外輪19が固定輪、内輪18が回転輪となり、転動体20が複列とされたアンギュラ玉軸受とされている。内輪18は、ハブフランジ18aaを有しアウトボード側の軌道面を構成するハブ輪部18aと、インボード側の軌道面を構成する内輪部18bとを有する。図1に示すように、ハブフランジ18aaに、車輪9のホイール9aがブレーキロータ21aと重なり状態でボルト固定されている。内輪18は、回転軸心O回りに回転する。
図7に示すように、アウターリング16は、外輪19の外周面に嵌合された円環部16aと、この円環部16aの外周から上下に突出して設けられたトラニオン軸状の取付軸部16b,16bとを有する。各取付軸部16bは、転舵軸心Aに同軸に設けられる。
図2に示すように、ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、アウターリング16または外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(図5)に取付けられる。
図2に示すように、ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、アウターリング16または外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(図5)に取付けられる。
<回転許容支持部品およびユニット支持部材について>
図7に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、テーパころ軸受が適用されている。転がり軸受は、取付軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
図7に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、テーパころ軸受が適用されている。転がり軸受は、取付軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
ユニット支持部材3は、ユニット支持部材本体3Aと、ユニット支持部材結合体3Bとを有する。ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端に、略リング形状のユニット支持部材結合体3Bが着脱自在に固定されている。ユニット支持部材結合体3Bのインボード側側面のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3aがそれぞれ形成されている。
図6および図7に示すように、ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3Aaがそれぞれ形成されている。図3に示すように、ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端にユニット支持部材結合体3Bが固定され、各上下の部分につき、嵌合孔形成部3a,3Aa(図6)が互いに組み合わされることにより、全周に連なる嵌合孔が形成される。この嵌合孔に外輪4b(図7)が嵌合されている。なお図3において、ユニット支持部材3を一点鎖線で表す。
図7に示すように、アウターリング16における各取付軸部16bには、雌ねじ部が径方向に延びるように形成され、この雌ねじ部に螺合するボルト23が設けられている。内輪4aの端面に円板状の押圧部材24を介在させ、前記雌ねじ部に螺合するボルト23により、内輪4aの端面に押圧力を付与することで、各回転許容支持部品4にそれぞれ予圧を与えている。これにより各回転許容支持部品4の剛性を高め得る。車両の重量がこのハブユニットに作用した場合でも初期予圧が抜けないように設定される。なお、回転許容支持部品4の転がり軸受は、テーパころ軸受に限るものではなく、最大負荷等の使用条件によってはアンギュラ玉軸受を用いることも可能である。その場合も、上記と同様に予圧を与えることができる。
図2に示すように、アーム部17は、ハブベアリング15の外輪19に転舵力を与える作用点となる部位であり、アウターリング16または外輪19の外周の一部に一体に突出する。このアーム部17は、連結部差吸収手段Rkを介して、転舵用アクチュエータ5の直動出力部25aに連結されている。これにより、転舵用アクチュエータ5の直動出力部25aが進退(直進運動)することで、ハブユニット本体2が転舵軸心A(図1)回りに回転、つまり転舵させられる。なお連結部差吸収手段Rkにおける後述するジョイント部8の周辺は、通常、防水、防塵のために図示外のブーツが取り付けられている。
<転舵用アクチュエータ5>
図3に示すように、転舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図1)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、モータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作(つまり往復の直進運動)に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
図3に示すように、転舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図1)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、モータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作(つまり往復の直進運動)に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
減速機27は、ベルト伝達機構等の巻き掛け式伝達機構またはギヤ列等を用いることができ、図2の例ではベルト伝達機構が用いられている。減速機27は、ドライブプーリ27aと、ドリブンプーリ27bと、ベルト27cとを有する。モータ26のモータ軸にドライブプーリ27aが結合され、直動機構25にドリブンプーリ27bが設けられている。このドリブンプーリ27bは、前記モータ軸に平行に配置されている。モータ26の駆動力は、ドライブプーリ27aからベルト27cを介してドリブンプーリ27bに伝達される。前記各ドライブプーリ27aとドリブンプーリ27bとベルト27cとで、巻き掛け式の減速機27が構成される。
直動機構25は、滑りねじまたはボールねじ等の送りねじ機構、またはラック・ピニオン機構等を用いることができ、この例では台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構が用いられている。直動機構25は、前記台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構を備えるため、タイヤ9bからの逆入力の防止効果を高め得る。モータ26、減速機27および直動機構25を備えたアクチュエータ本体7は、準組立品として組み立てられてケース6bにボルト等により着脱自在に取り付けられる。なおモータ26の駆動力を、減速機を介さず直接直動機構25へ伝達する機構も可能である。
ケース6bは、ユニット支持部材3の一部として、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ケース6bは、有底筒状に形成され、モータ26を支持するモータ収容部と、直動機構25を支持する直動機構収容部が設けられている。前記モータ収容部には、モータ26をケース内所定位置に支持する嵌合孔が形成されている。前記直動機構収容部には、直動機構25をケース内所定位置に支持する嵌合孔、および、直動出力部25aの進退を許す貫通孔等が形成されている。
図3に示すように、ユニット支持部材本体3Aは、前記ケース6b、ショックアブソーバの取り付け部となるショックアブソーバ取り付け部6c、およびステアリング装置11(図2)の結合部となるステアリング装置結合部6dを有する。これらショックアブソーバ取り付け部6cおよびステアリング装置結合部6dも、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における上部に、ショックアブソーバ取り付け部6cが突出するように形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における側面部には、ステアリング装置結合部6dが突出するように形成されている。
<連結部差吸収手段Rkについて>
図8に示すように、連結部差吸収手段Rkは、直進運動する直動機構25の直動出力部25aと、転舵軸心A(図1)回りに回転運動するアーム部17との連結部のずれを吸収する。図9に示すように、このずれδは、ハブユニット本体を微小な角度(約±5deg)を転舵する場合、例えば0.1mm〜0.2mm程度である。
図8に示すように、連結部差吸収手段Rkは、直進運動する直動機構25の直動出力部25aと、転舵軸心A(図1)回りに回転運動するアーム部17との連結部のずれを吸収する。図9に示すように、このずれδは、ハブユニット本体を微小な角度(約±5deg)を転舵する場合、例えば0.1mm〜0.2mm程度である。
図8に示すように、連結部差吸収手段Rkは、直動機構25の直動出力部25aに対し、第1の連結ピンPaを介して角変位可能に連結されたジョイント部8を備える。第1の連結ピンPaの軸中心(第一の連結軸)P1は、転舵軸と平行である。アーム部17は、ジョイント部8に対し、第2の連結ピンPbを介して回転自在に連結されている。第2の連結ピンPbの軸中心(第二の連結軸)P2も転舵軸と平行である。
ジョイント部8は、それぞれ円筒形状の大径部8aと、この大径部8aの軸方向一端に同軸に繋がる小径部8bとを有し、これらは一体に成形されている。大径部8aには、直動出力部25aの先端部がこの大径部8aの軸方向他端からすきま嵌めで嵌まり込む嵌合孔8aaが形成されている。大径部8aには第1の連結ピンPaが支持され、この第1の連結ピンPaに、嵌合孔8aaに嵌まり込む直動出力部25aの先端部が連結されている。摩耗防止のために、第1の連結ピンPaと摺動する孔部に、耐摩耗性のある円筒部材(図示せず)を圧入してもよい。
アーム部17には、ジョイント部8の小径部8bがすきま嵌めで嵌合される貫通孔17aが形成されている。アーム部17に第2の連結ピンPbが支持され、この第2の連結ピンPbに、貫通孔17aに嵌まり込む小径部8bが連結されている。摩耗防止のために、第2の連結ピンPbと摺動する孔部に、耐摩耗性のある円筒部材(図示せず)を圧入してもよい。第1,第2の連結ピンPa,Pbは、互いに連結する二つの部材に対して、いずれか一方または両方をすきま嵌めとし、それぞれの連結部が互いに屈曲可能となっている。
よって、ジョイント部8は、すきま嵌めの範囲内において直動出力部25aに対し、転舵軸と平行な第一の連結軸P1を中心に角変位可能に構成される。またアーム部17は、すきま嵌めの範囲内において小径部8bに対し、転舵軸と平行な第二の連結軸P2を中心に回転自在に構成される。本実施形態では、各連結ピンPa,Pbの両端に止め輪Twを設けて、軸方向に抜け止めしているが、連結ピンPa,Pbといずれか一方の連結部材を圧入して抜け止めしてもよい。
<作用効果>
以上説明した転舵機能付ハブユニット1によれば、車輪9を支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、アクチュエータ本体7の駆動により、転舵軸心A回りに自由に回転させることができる。つまり、ハブユニット本体2は、転舵用アクチュエータ5の直動出力部25aをモータ26の駆動により進退させることで、直動出力部25aに連結されたアーム部17を介して回転させられる。
以上説明した転舵機能付ハブユニット1によれば、車輪9を支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、アクチュエータ本体7の駆動により、転舵軸心A回りに自由に回転させることができる。つまり、ハブユニット本体2は、転舵用アクチュエータ5の直動出力部25aをモータ26の駆動により進退させることで、直動出力部25aに連結されたアーム部17を介して回転させられる。
この回転は、運転者のハンドル操作による転舵に付加して、すなわちステアリング装置11によるキングピン軸回りのナックル6の回転に付加して、補助的な転舵として行われ、また1輪の独立転舵が行える。左右の車輪9,9の補助転舵の角度を異ならせることで、左右の車輪9,9間のトー角を任意に変更することができる。
車両の走行条件に応じて、左右の車輪角度を独立して任意に変更することができるため、車両の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。また、適切な車輪角度を設定することで燃費を改善することも可能となる。
車両の走行条件に応じて、左右の車輪角度を独立して任意に変更することができるため、車両の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。また、適切な車輪角度を設定することで燃費を改善することも可能となる。
この転舵機能付ハブユニット1によると、直動機構25がアーム部17を押し引きすることで転舵されるが、特に、直進運動する直動機構25と、転舵軸心A回りに回転運動するアーム部17との連結部のずれδを連結部差吸収手段Rkが吸収する。つまり、直動機構25とジョイント部8およびジョイント部8とアーム部17は、それぞれ転舵軸と平行に配置された第1,第2の連結ピンPa,Pbで連結されており、それぞれの連結部は互いに屈曲可能となっている。二箇所の屈曲点があることで、転舵用アクチュエータ5の直進運動とハブユニット本体2の回転運動の軌跡のずれδを吸収することが可能となる。
このため、転舵用アクチュエータ5の駆動源であるモータ26を大型化することなく、ハブユニット本体2を所望の角度にスムーズに回転駆動することができる。したがって、転舵機能付ハブユニット1の小型化を図ると共に、直動機構25の直進運動を、アーム部17の回転運動にスムーズに変換することができる。
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
<第2の実施形態>
図11は第2の実施形態に係る転舵機能付ハブユニットの外観を示す斜視図であり、図12はこの転舵機能付ハブユニットの平面図である。さらに図13はこの転舵機能付ハブユニットの水平断面図である。
図11〜図13に示すように、第2の実施形態では、前述の第1の実施形態と異なり、転舵用アクチュエータ5の直動機構25がジョイント部を介することなく、アーム部17に直接連結されている。直動機構25とアーム部17をジョイント部などの連結部材を介さずに連結することで以下のメリットが生じる。
図11は第2の実施形態に係る転舵機能付ハブユニットの外観を示す斜視図であり、図12はこの転舵機能付ハブユニットの平面図である。さらに図13はこの転舵機能付ハブユニットの水平断面図である。
図11〜図13に示すように、第2の実施形態では、前述の第1の実施形態と異なり、転舵用アクチュエータ5の直動機構25がジョイント部を介することなく、アーム部17に直接連結されている。直動機構25とアーム部17をジョイント部などの連結部材を介さずに連結することで以下のメリットが生じる。
・構造が簡素化し、部品点数の減少、組立工数の削減ができる。
・ジョイント部を省略できる分、重量が減少する。ジョイント部のスペースが不要となり、更なる小型化が可能。
・連結箇所が減ることで、防水、防塵のためのカバーまたはブーツが設け易くなる。
・連結箇所が減ることで、転舵角方向のバックラッシが減少し、転舵の精度または応答性の向上が期待できる。
・ジョイント部を省略できる分、重量が減少する。ジョイント部のスペースが不要となり、更なる小型化が可能。
・連結箇所が減ることで、防水、防塵のためのカバーまたはブーツが設け易くなる。
・連結箇所が減ることで、転舵角方向のバックラッシが減少し、転舵の精度または応答性の向上が期待できる。
図14(A)は、第2の実施形態に係る転舵機能付ハブユニットの直動機構25とアーム部17の連結部分を拡大して示している。同図に示す連結部差吸収手段Rkは、連結ピンPcと、連結ピン嵌合孔部Kaとを有する。この例の連結ピンPcは、アーム部17に支持され、この連結ピンPcの軸方向PLが転舵軸と平行に設けられる。連結ピン嵌合孔部Kaは、直動出力部25aの先端部に設けられ連結ピンPcに嵌まりアーム部17の回転運動を許容する長孔Kaaを有する。
この長孔Kaaは、直動機構25の直進方向および転舵軸にそれぞれ直交する方向に延びる。直動機構25は、連結ピンPcを介して、アーム部17を押し引きすると共に、連結ピンPcが長孔Kaa内を移動することで、直動機構25の直進運動とアーム部17の回転運動の軌跡のずれを吸収し、直動機構25をアーム部17に直接連結することを可能としている。
図14(B)は、第2の実施形態の直動機構25とアーム部17の連結部分における鉛直方向の断面を示している。連結ピンPcは、アーム部17の孔(真円)に対してすきま嵌めで位置決めされ、両端が止め輪Twで軸方向に抜け止めされている。一方、直動機構25の先端部には前記直進方向および転舵軸にそれぞれ直交する方向(紙面の奥行方向)に延伸する前記長孔Kaa(図14(A))が設けられ、連結ピンPcを延伸方向に移動可能なように貫通させている。なお摩耗防止のために、連結ピンPcと摺動する孔部に、耐摩耗性のある円筒部材(図示せず)を圧入してもよい。
図14(A)に示すように、長孔Kaaの長径は、直動機構25の直進運動の軌跡と、アーム部17の回転運動の軌跡のずれを十分に吸収可能な長さに設定することで、直動機構25およびアーム部17の互いのスムーズな動きを実現し得る。これと共に、長孔Kaaの短径は、連結ピンPcの直径に対して極めて小さなすきまを持たせることで、転舵角方向のバックラッシを最小限にすることができる。
これにより、転舵の精度および応答性の向上を図ることができる。また、連結ピンPcとアーム部17の孔のはめあいは圧入でもよく、組立性は悪くなるものの、止め輪が不要となる、バックラッシが減少するなどのメリットがある。なお図14(A),(C)および後述する図15(B),(C)の長孔Kaaは、分かり易くするために、実際の長孔よりも、短径に対し長径を強調して長く表している。
図14(C)の左側の図は、第2の実施形態の直動機構25とアーム部17の連結部分を模式的に示した図であり、連結ピンPcをアーム部17に固定し、直動機構25の直動出力部25aの先端部の長孔Kaaに係り止めしている。
一方、第2の実施形態を部分的に変更した変形例として、図14(C)の右側の図に示すように、第2の実施形態とは逆に、連結ピンPcを直動出力部25aの先端部に固定すると共に、アーム部17の延在方向と平行且つ転舵軸に直交する方向に延びる長孔Kaaをアーム部17に設け、連結ピンPcを長孔内に移動可能なように係り止めしてもよい。本案でも直動機構25の直進運動とアーム部17の回転運動の軌跡のずれを吸収することが可能である。
一方、第2の実施形態を部分的に変更した変形例として、図14(C)の右側の図に示すように、第2の実施形態とは逆に、連結ピンPcを直動出力部25aの先端部に固定すると共に、アーム部17の延在方向と平行且つ転舵軸に直交する方向に延びる長孔Kaaをアーム部17に設け、連結ピンPcを長孔内に移動可能なように係り止めしてもよい。本案でも直動機構25の直進運動とアーム部17の回転運動の軌跡のずれを吸収することが可能である。
図15は、第1および第2の実施形態の連結構造を模式的に表した図である。
図15(A)は第1の実施形態の連結構造を示しているが、同図左側のアーム部17が中立位置にある状態に対して、同図右側の転舵した状態ではアーム部17の連結点が直動機構25の直進方向の延長線上から内側(回転中心側)にずれることがわかる。第1の実施形態では、直動機構25とアーム部17の間にジョイント部8を設け、それぞれを転舵軸と平行に屈曲可能とする連結ピンPa,Pbで連結することで、前述の連結点のずれを吸収することが可能となっている。
図15(A)は第1の実施形態の連結構造を示しているが、同図左側のアーム部17が中立位置にある状態に対して、同図右側の転舵した状態ではアーム部17の連結点が直動機構25の直進方向の延長線上から内側(回転中心側)にずれることがわかる。第1の実施形態では、直動機構25とアーム部17の間にジョイント部8を設け、それぞれを転舵軸と平行に屈曲可能とする連結ピンPa,Pbで連結することで、前述の連結点のずれを吸収することが可能となっている。
図15(B)は第2の実施形態の連結構造を示しており、連結ピンPcはアーム部17に固定される一方で直動機構25の直動出力部25aの先端部に設けられた長孔に係り止めされている。同図右側に示すように、転舵するとアーム部17の連結点は直動機構25の直進方向から内側(回転中心側)へずれるが、連結ピンPcが直動機構25の長孔内を移動することでずれを吸収する。
図15(C)は第2の実施形態の変形例を示しており、連結ピンPcは直動機構25に固定される一方でアーム部17に設けられた長孔に係り止めされている。同図右側に示すように、転舵するとアーム部17の連結点はアーム部17の径方向外側へずれるが、連結ピンPcがアーム部17の長孔内を移動することでずれを吸収する。
<非転舵輪への適用について>
この転舵機能付ハブユニット1は、非転舵輪に対して用いてもよい。例えば、図16に示すように、前輪転舵の車両において、後輪9Rを支持する懸架装置12Rの車輪用軸受設置部となる足回りフレーム部品6Rに設定し、後輪転舵に用いてもよい。図17に示すように、、転舵機能付ハブユニット1を、転舵輪である左右の前輪9F,9Fおよび非転舵輪である左右の後輪9R,9Rにそれぞれ用いてもよい。
この転舵機能付ハブユニット1は、非転舵輪に対して用いてもよい。例えば、図16に示すように、前輪転舵の車両において、後輪9Rを支持する懸架装置12Rの車輪用軸受設置部となる足回りフレーム部品6Rに設定し、後輪転舵に用いてもよい。図17に示すように、、転舵機能付ハブユニット1を、転舵輪である左右の前輪9F,9Fおよび非転舵輪である左右の後輪9R,9Rにそれぞれ用いてもよい。
<転舵システムについて>
図3または図11に示すように、この転舵システムは、いずれかの実施形態に係る転舵機能付ハブユニット1と、この転舵機能付ハブユニット1の転舵用アクチュエータ5を制御する制御装置29とを備える。制御装置29は、制御部30と、アクチュエータ駆動制御部31とを有する。制御部30は、上位制御部32から与えられた補助転舵角指令信号(転舵角指令信号)に応じた電流指令信号を出力する。
図3または図11に示すように、この転舵システムは、いずれかの実施形態に係る転舵機能付ハブユニット1と、この転舵機能付ハブユニット1の転舵用アクチュエータ5を制御する制御装置29とを備える。制御装置29は、制御部30と、アクチュエータ駆動制御部31とを有する。制御部30は、上位制御部32から与えられた補助転舵角指令信号(転舵角指令信号)に応じた電流指令信号を出力する。
前記上位制御部32は制御部30の上位の制御手段であり、この上位制御部32として、例えば、車両全般を制御する電気制御ユニット(Vehicle Control Unit,略称VCU)が適用される。アクチュエータ駆動制御部31は、制御部30から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して転舵用アクチュエータ5を駆動制御する。アクチュエータ駆動制御部31は、モータ26のコイルに供給する電力を制御する。このアクチュエータ駆動制御部31は、例えば、図示外のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を構成し、前記スイッチ素子のON−OFFデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う。これにより、運転者のハンドル操作による転舵に付加して、車輪を微小に角度変化することができる。直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角の量を調整し得る。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2…ハブユニット本体、3…ユニット支持部材、5…転舵用アクチュエータ、6…ナックル(足回りフレーム部品)、8…ジョイント部、9…車輪、9F…前輪、9R…後輪、12,12R…懸架装置、15…ハブベアリング、17…アーム部、25…直動機構、26…モータ、29…制御装置、30…制御部、31アクチュエータ駆動制御部、Ka…連結ピン嵌合孔部、Kaa…長孔、Pa,Pb…第1,第2の連結ピン、Pc…連結ピン、Rk…連結部差吸収手段
Claims (7)
- 車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転運動させる転舵用アクチュエータと、を備え、
前記転舵用アクチュエータは、モータと、前記ハブユニット本体に設けられたアーム部に連結され前記モータの回転出力を直進運動に変換する直動機構とを有し、この前記直動機構と前記アーム部との連結部の、前記直進運動と前記回転運動の軌跡に生じるずれを吸収する連結部差吸収手段を備えた転舵機能付ハブユニット。 - 請求項1に記載の転舵機能付ハブユニットにおいて、前記連結部差吸収手段は、前記直動機構および前記アーム部のいずれか一方に前記転舵軸心と平行に設けられる連結ピンと、他方に設けられ前記連結ピンに嵌まり前記直進運動と前記回転運動の軌跡に生じるずれを許容する長孔を有する連結ピン嵌合孔部とを有する転舵機能付ハブユニット。
- 請求項2に記載の転舵機能付ハブユニットにおいて、前記連結ピンが前記アーム部に設けられ、且つ、前記連結ピン嵌合孔部が前記直動機構の先端部に設けられ、前記連結ピン嵌合孔部の前記長孔は、前記直動機構の直進方向および前記転舵軸にそれぞれ直交する方向に延びる転舵機能付ハブユニット。
- 請求項2に記載の転舵機能付ハブユニットにおいて、前記連結ピンが前記直動機構の先端部に設けられ、且つ、前記連結ピン嵌合孔部が前記アーム部に設けられ、前記連結ピン嵌合孔部の前記長孔は、前記アーム部の延在方向と平行且つ前記転舵軸に直交する方向に延びる転舵機能付ハブユニット。
- 請求項1に記載の転舵機能付ハブユニットにおいて、前記連結部差吸収手段は、前記直動機構に対し、転舵軸と平行な第一の連結軸を中心に角変位可能に連結されたジョイント部を備え、前記アーム部は、前記ジョイント部に対し、転舵軸と平行な第二の連結軸を中心に回転自在に連結されている転舵機能付ハブユニット。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の転舵機能付ハブユニットと、この転舵機能付ハブユニットの転動用アクチュエータを制御する制御装置とを備えた転舵システムであって、前記制御装置は、与えられた転舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する制御部と、この制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記転動用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有する転舵システム。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の転舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持された車両。
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