JP2020097964A - 直動機構、操舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】操舵輪の通常の操舵に加えて、操舵輪または非操舵輪に微小な角度の操舵が行えて、燃費の改善および走行安定性の向上等が図れると共に、動力を変換する機構における滑りねじのバックラッシを減少させることができる直動機構、操舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両を提供する。【解決手段】操舵機能付ハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ハブユニット本体2を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材3と、ハブユニット本体2を回転駆動させる操舵用アクチュエータ5とを備える。操舵用アクチュエータ5は、モータ26の回転出力を直進運動に変換する直動機構25を有する。直動機構25のナット部は、軸方向に並ぶ二分割された第1,第2の分割構造体45,47を有し、第1,第2の分割構造体45,47は、回転方向に相互に規制されかつ軸方向に相対移動可能に配置された。【選択図】図2
Description
この発明は、直動機構、操舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両に関し、走行状況に合わせ左右の車輪を適切な操舵角に制御することで、燃費の改善および走行性の安定と安全性の向上を図る技術に関する。
一般的な自動車等の車両は、ハンドルとステアリング装置が機械的に接続され、また、ステアリング装置の両端はタイロッドによってそれぞれの左右輪につながっている。そのため、ハンドルの動きによる左右輪の切れ角度は初期の設定によって決まる。
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
アッカーマンジオメトリは、車両に作用する遠心力を無視できるような低速域での旋回において、車両をスムーズに旋回させるために、各輪が共通の一点を中心として旋回するように左右輪の舵角差を設定している。しかし、遠心力を無視できない高速域の旋回においては、車輪は遠心力とつり合う方向にコーナリングフォースを発生させることが望ましいため、アッカーマンジオメトリよりもパラレルジオメトリとすることが好ましい。
前述したように一般的な車両の操舵装置は機械的に車輪と接続されているため、一般的には固定された単一のステアリングジオメトリしか取ることができず、アッカーマンジオメトリとパラレルジオメトリとの中間的なジオメトリに設定されることが多い。しかし、この場合、低速域では左右輪の舵角差が不足して外輪の舵角が過大となり、高速域では内輪の舵角が過大となる。このように内外輪の車輪横力配分に不要な偏りがあると、走行抵抗の悪化による燃費悪化及びタイヤの早期摩耗の原因となり、また内外輪を効率的に利用できないので、コーナリングのスムーズさが損なわれるといった課題がある。
特許文献1では、モータを2個使っているため、モータ個数の増大によるコストの上昇が生じるだけでなく、制御が複雑になる。
特許文献2は、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また転舵軸上に減速機を設けた場合、モータを含めてサイズが大きくなる。全体のサイズが大きくなると、車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
特許文献2は、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また転舵軸上に減速機を設けた場合、モータを含めてサイズが大きくなる。全体のサイズが大きくなると、車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
上記のように従来の補助的な操舵機能を備えた機構は、車両において車輪のトー角またはキャンバー角を任意に変更することを目的としているため、モータおよび減速機構が複数必要になり複雑な構成となっている。また、剛性を確保することが困難となり、剛性を確保するためには大型化する必要があり重くなる。
特許文献1,2のように電動モータの動力を各種機構によって変換し、補助操舵またはステアリングジオメトリを変化させる機構において、動力を変換する部分の隙間であるバックラッシは、補助操舵またはステアリングジオメトリの制御精度を悪化させる(指令値に対するずれを招く)原因となる。特に、動力変換機構として台形ねじを用いる場合は、その構成上、バックラッシを抑えることが難しい。
操舵機能付ハブユニットにおいて、補助操舵を制御するアクチュエータ部の直動機構には、路面からの逆入力に対する保持力に優れる台形ねじを採用することが望ましい。
しかし、台形ねじはその構成上、ねじ軸とナットの組合わせでバックラッシが決まってしまうため、バックラッシを小さくするには、それぞれの工作精度を極めて高くするしかなく、困難である。台形ねじは、ボールねじのようにボールの大小で隙間を調整することができないからである。
しかし、台形ねじはその構成上、ねじ軸とナットの組合わせでバックラッシが決まってしまうため、バックラッシを小さくするには、それぞれの工作精度を極めて高くするしかなく、困難である。台形ねじは、ボールねじのようにボールの大小で隙間を調整することができないからである。
直動機構部のバックラッシは、補助操舵角を微小にコントロールすることを難しくし、車両の安定性および安全性を損ねる原因となる。また、路面からの逆入力による振動が直動機構に作用した場合、隙間によりねじ軸とナットのねじ面が衝突し、歯打ち音等の異音の発生または長時間振動を受け続けるとねじ面に異常が発生する懸念がある。また、ねじ面が摩耗すると、摩擦係数が変化し、セルフロック機能による操舵角の保持が失陥する可能性がある。
この発明の目的は、操舵輪の通常の操舵に加えて、操舵輪または非操舵輪に微小な角度の操舵が行えて、燃費の改善および走行安定性の向上等が図れると共に、動力を変換する機構における滑りねじのバックラッシを減少させることができる直動機構、操舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両を提供することである。
この発明の直動機構は、回転運動を直進運動に変換する直動機構であって、ナット部およびねじ軸を含む滑りねじ式の送りねじ機構を有し、前記ナット部およびねじ軸のいずれか一方は、軸方向に並ぶように二分割された第1および第2の分割構造体を有し、これら第1および第2の分割構造体は、前記ナット部または前記ねじ軸の回転方向に相互に規制され、かつ軸方向に相対移動可能に配置されたものである。
この構成によると、直動機構における、ナット部およびねじ軸のいずれか一方は、軸方向に並ぶ第1および第2の分割構造体を有する。軸方向に並ぶ第1および第2の分割構造体は前記回転方向に相互に規制されたため、両分割構造体を同位相に維持することができる。これにより滑りねじの作動を円滑に保つことができる。
特に、第1および第2の分割構造体は軸方向に相対移動可能に配置されたため、二つの分割構造体の相対的な軸方向距離を微小に調整することが可能となる。これにより、ナット部とねじ軸との間の軸方向のバックラッシを減少させることができる。このバックラッシを減少させることで、例えば、操舵角を微小にコントロールすることが容易となる結果、車両の安定性および安全性の向上を図れる。路面からの逆入力による振動が直動機構に作用した場合にも、前記バックラッシを減少させることで、ねじ軸とナット部のねじ面が不所望に衝突することを未然に防止し得る。よって、歯打ち音等の異音の発生を防止し、ねじ面を正常に維持することができる。これによりねじ面の摩耗を抑制できるため、ねじ面の摩擦係数を維持し、セルフロック機能による前記操舵角の保持を行うことができる。
前記第1および第2の分割構造体を保持する保持部材を備え、この保持部材にスプラインまたはキーにより前記第1および第2の分割構造体をそれぞれ係止することで、前記第1および第2の分割構造体が前記回転方向に相互に規制されるものであってもよい。このように、第1および第2の分割構造体を、簡単かつ確実に回転方向に相互に規制することができる。
前記第1の分割構造体と前記第2の分割構造体との間に、両者の軸方向距離を調整可能とするシムが介在されてもよい。この場合、第1および第2の分割構造体の軸方向距離を微小に調整することが可能となり、よって、滑りねじのバックラッシを極小に調整することができる。
前記第1の分割構造体と前記第2の分割構造体との間に、弾性部材が介在されていてもよい。この場合、弾性部材により、第1の分割構造体と第2の分割構造体との間に軸力を発生させることで、ねじ面に予圧を与え、ナット部とねじ軸との間の軸方向の隙間を詰めてバックラッシを減少させることができる。
但し、ねじ面の過度の予圧は、台形ねじのフリクションを増大させ、回転駆動源の電力の増加および効率の悪化を招くおそれがある。
そこで、前記第1の分割構造体と前記第2の分割構造体との間に、前記弾性部材と共にこの弾性部材の変位量を調整するシムが介在されてもよい。この場合、シムにより弾性部材の変位量を調整することで、ねじ面に生じる軸力をコントロールし、ねじ面の予圧を最適化することができる。これにより、バックラッシを抑えることとフリクションを最小限に抑えることを両立することが可能となる。
前記弾性部材として、コイルばね、皿ばねまたは波形座金が用いられてもよい。
前記弾性部材として、ゴム材が用いられてもよい。
そこで、前記第1の分割構造体と前記第2の分割構造体との間に、前記弾性部材と共にこの弾性部材の変位量を調整するシムが介在されてもよい。この場合、シムにより弾性部材の変位量を調整することで、ねじ面に生じる軸力をコントロールし、ねじ面の予圧を最適化することができる。これにより、バックラッシを抑えることとフリクションを最小限に抑えることを両立することが可能となる。
前記弾性部材として、コイルばね、皿ばねまたは波形座金が用いられてもよい。
前記弾性部材として、ゴム材が用いられてもよい。
前記第1および第2の分割構造体は、互いに印籠嵌合され、且つ、前記軸方向に相対移動可能に配置されてもよい。第1および第2の分割構造体が互いに印籠嵌合されていることで、第1の分割構造体と第2の分割構造体の同軸度を向上することができる。これにより、滑りねじの作動を円滑に保つことができる。
この発明の操舵機能付ハブユニットは、車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を直進運動に変換するこの発明の上記いずれかの構成の直動機構とを有する。
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を直進運動に変換するこの発明の上記いずれかの構成の直動機構とを有する。
この構成によると、車輪を支持するハブベアリングを含むハブユニット本体を、操舵用アクチュエータの駆動により、転舵軸心回りに自由に回転させることができる。これにより操舵輪の通常の操舵に加えて、操舵輪または非操舵輪に微小な角度の操舵が行える。このため、旋回走行時にステアリングジオメトリを変化させることができ、これにより車両の走行安定性の向上を図れる。直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角度の量を調整することで、低速時には走行抵抗を下げ燃費を悪化させることなく、高速時には走行安定性を確保するなど調整が可能である。操舵用アクチュエータの直動機構は、回転駆動源の回転出力を直進運動に変換することでハブユニット本体を任意に回転させ得る。
この発明の操舵システムは、この発明の上記操舵機能付ハブユニットと、この操舵機能付ハブユニットの操舵用アクチュエータを制御する制御装置とを備えた操舵システムであって、前記制御装置は、与えられた操舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する操舵制御部と、この操舵制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記操舵用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有する。
この構成によると、操舵制御部は、与えられた操舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する。アクチュエータ駆動制御部は、操舵制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して操舵用アクチュエータを駆動制御する。したがって、運転者のハンドル操作による操舵に付加して車輪角度を任意に変更することができる。
この発明の車両は、この発明の上記構成の操舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持される。
そのため、この発明の上記いずれかの構成の直動機構につき前述した各効果が得られる。前輪は一般的に操舵輪とされるが、操舵輪にこの発明の操舵機能付ハブユニットを適用した場合は、走行中におけるトー角調整に効果的である。また、後輪は一般的に非操舵輪とされるが、非操舵輪に適用した場合は、非操舵輪の若干の転舵によって低速走行時における最小回転半径の低減を図ることができる。
そのため、この発明の上記いずれかの構成の直動機構につき前述した各効果が得られる。前輪は一般的に操舵輪とされるが、操舵輪にこの発明の操舵機能付ハブユニットを適用した場合は、走行中におけるトー角調整に効果的である。また、後輪は一般的に非操舵輪とされるが、非操舵輪に適用した場合は、非操舵輪の若干の転舵によって低速走行時における最小回転半径の低減を図ることができる。
この発明の直動機構は、回転運動を直進運動に変換する直動機構であって、ナット部およびねじ軸を含む滑りねじ式の送りねじ機構を有し、前記ナット部およびねじ軸のいずれか一方は、軸方向に並ぶように二分割された第1および第2の分割構造体を有し、これら第1および第2の分割構造体は、前記ナット部または前記ねじ軸の回転方向に相互に規制され、かつ軸方向に相対移動可能に配置されたため、操舵輪の通常の操舵に加えて、操舵輪または非操舵輪に微小な角度の操舵が行えて、燃費の改善および走行安定性の向上等が図れると共に、動力を変換する機構における滑りねじのバックラッシを減少させることができる。
この発明の操舵機能付ハブユニットは、車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を直進運動に変換するこの発明の上記いずれかの構成の直動機構とを有する。このため、操舵輪の通常の操舵に加えて、操舵輪または非操舵輪に微小な角度の操舵が行えて、燃費の改善および走行安定性の向上等が図れると共に、動力を変換する機構における滑りねじのバックラッシを減少させることができる。
この発明の操舵システムは、この発明の上記構成の操舵機能付ハブユニットと、この操舵機能付ハブユニットの操舵用アクチュエータを制御する制御装置とを備えた操舵システムであって、前記制御装置は、与えられた操舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する操舵制御部と、この操舵制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記操舵用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有するため、操舵輪の通常の操舵に加えて、操舵輪または非操舵輪に微小な角度の操舵が行えて、燃費の改善および走行安定性の向上等が図れると共に、動力を変換する機構における滑りねじのバックラッシを減少させることができる。
この発明の車両は、この発明の上記構成の操舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持されたため、操舵輪の通常の操舵に加えて、操舵輪または非操舵輪に微小な角度の操舵が行えて、燃費の改善および走行安定性の向上等が図れると共に、動力を変換する機構における滑りねじのバックラッシを減少させることができる。
[第1の実施形態]
この発明の実施形態に係る操舵機能付ハブユニットを図1ないし図8と共に説明する。
<操舵機能付ハブユニットの概略構造>
図1に示すように、この操舵機能付ハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、操舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。このユニット支持部材3のインボード側に、操舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。操舵機能付ハブユニット1を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。なお、操舵機能付ハブユニット1を単に、ハブユニット1と言う場合がある。
この発明の実施形態に係る操舵機能付ハブユニットを図1ないし図8と共に説明する。
<操舵機能付ハブユニットの概略構造>
図1に示すように、この操舵機能付ハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、操舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。このユニット支持部材3のインボード側に、操舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。操舵機能付ハブユニット1を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。なお、操舵機能付ハブユニット1を単に、ハブユニット1と言う場合がある。
図2および図3に示すように、ハブユニット本体2とアクチュエータ本体7とはジョイント部8により連結されている。通常、このジョイント部8は、防水、防塵のために図示外のブーツが取り付けられている。
図1に示すように、ハブユニット本体2は、上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在なように、上下二箇所で回転許容支持部品4,4を介してユニット支持部材3に支持されている。転舵軸心Aは、車輪9の回転軸心Oとは異なる軸心であり、主な操舵を行うキングピン軸とも異なっている。通常の車両は、車両走行の直進安定性の向上を目的としてキングピン角度が10〜20度で設定されているが、この実施形態の操舵機能付ハブユニット1は、前記キングピン角度とは別の角度(軸)の転舵軸を有する。車輪9は、ホイール9aとタイヤ9bとを備える。
<操舵機能付ハブユニット1の設置箇所>
この操舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では操舵輪、具体的には図12に示すように、車両10の前輪9Fのステアリング装置11による操舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を操舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。
この操舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では操舵輪、具体的には図12に示すように、車両10の前輪9Fのステアリング装置11による操舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を操舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。
図2および図12に示すように、ステアリング装置11は、車体に取り付けられ、運転者のハンドル11aの操作、または図示外の自動運転装置、運転支援装置の指令等によって動作し、その進退するタイロッド14が、ユニット支持部材3のステアリング結合部6d(後述する)に連結されている。ステアリング装置11は、ラック・ピニオン式等とされるが、どのタイプのステアリング装置でも構わない。懸架装置12は、例えば、ショックアブソーバーをナックル6に直接固定するストラット式サスペンション機構を適用しているが、ダブルウィッシュボーン式サスペンション機構、マルチリンク式サスペンション機構、その他のサスペンション機構を適用してもよい。
<ハブユニット本体2について>
図1に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の操舵力受け部であるアーム部17(図3)とを備える。
図6に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図1)とを繋ぐ役目をしている。
図1に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の操舵力受け部であるアーム部17(図3)とを備える。
図6に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図1)とを繋ぐ役目をしている。
このハブベアリング15は、図示の例では、外輪19が固定輪、内輪18が回転輪となり、転動体20が複列とされたアンギュラ玉軸受とされている。内輪18は、ハブフランジ18aaを有しアウトボード側の軌道面を構成するハブ輪部18aと、インボード側の軌道面を構成する内輪部18bとを有する。図1に示すように、ハブフランジ18aaに、車輪9のホイール9aがブレーキロータ21aと重なり状態でボルト固定されている。内輪18は、回転軸心O回りに回転する。
図6に示すように、アウターリング16は、外輪19の外周面に嵌合された円環部16aと、この円環部16aの外周から上下に突出して設けられたトラニオン軸状の転舵軸部16b,16bとを有する。上下の取付軸部である各転舵軸部16bは、転舵軸心Aに同軸に設けられる。
図2に示すように、ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(図4)に取付けられる。
<回転許容支持部品およびユニット支持部材について>
図6に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、円すいころ軸受が適用されている。転がり軸受は、転舵軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
図6に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、円すいころ軸受が適用されている。転がり軸受は、転舵軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
ユニット支持部材3は、ユニット支持部材本体3Aと、ユニット支持部材結合体3Bとを有する。ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端に、略リング形状のユニット支持部材結合体3Bが着脱自在に固定されている。ユニット支持部材結合体3Bのインボード側側面のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3Baがそれぞれ形成されている。
図5および図6に示すように、ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3Aaがそれぞれ形成されている。ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端にユニット支持部材結合体3Bが固定され、各上下の部分につき、嵌合孔形成部3Aa,3Baが互いに組み合わされることにより、全周に連なる嵌合孔が形成される。この嵌合孔に外輪4bが嵌合されている。なお図3において、ユニット支持部材3を一点鎖線で表す。
図6に示すように、各取付軸部16bには、雌ねじ部が径方向に延びるように形成され、この雌ねじ部に螺合するボルト23が設けられている。内輪4aの端面に円板状の押圧部材24を介在させ、前記雌ねじ部に螺合するボルト23により、内輪4aの端面に押圧力を付与することで、各回転許容支持部品4にそれぞれ予圧を与えている。これにより各回転許容支持部品4の剛性を高め得る。なお、回転許容支持部品4の転がり軸受は、円すいころ軸受に代えてアンギュラ玉軸受または四点接触玉軸受を用いてもよい。その場合も、上記と同様に予圧を与えることができる。
図1に示すように、上下の転舵軸部16b,16bは、それぞれ回転許容支持部品4,4を介してユニット支持部材3に支持され、各回転許容支持部品4が車輪9のホイール9a内に位置する。この例では、各回転許容支持部品4が、ホイール9a内でこのホイール9aの幅方向中間付近に配置される。
図2に示すように、アーム部17は、ハブベアリング15の外輪19に補助的な操舵力を与える作用点となる部位であり、アウターリング16の外周の一部に一体に突出する。アーム部17は、ジョイント部8を介して、操舵用アクチュエータ5の直動出力部25aに回転自在に連結されている。これにより、操舵用アクチュエータ5の直動出力部25aが進退することで、ハブユニット本体2が転舵軸心A(図1)回りに回転、つまり補助操舵させられる。
<操舵用アクチュエータ5>
図3に示すように、操舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図1)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、回転駆動源としてのモータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作(直進運動)に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
図3に示すように、操舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図1)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、回転駆動源としてのモータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作(直進運動)に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
<減速機27>
減速機27は、ベルト伝達機構等の巻き掛け式伝達機構またはギヤ列等を用いることができ、図2の例ではベルト伝達機構が用いられている。減速機27は、ドライブプーリ27a,ドリブンプーリ27bと、ベルト27cとを有する。モータ26のモータ軸にドライブプーリ27aが結合され、直動機構25にドリブンプーリ27bが設けられている。このドリブンプーリ27bは、前記モータ軸に平行に配置されている。モータ26の駆動力は、ドライブプーリ27aからベルト27cを介してドリブンプーリ27bに伝達される。前記各ドライブプーリ27a,ドリブンプーリ27bとベルト27cとで、巻き掛け式の減速機27が構成される。
減速機27は、ベルト伝達機構等の巻き掛け式伝達機構またはギヤ列等を用いることができ、図2の例ではベルト伝達機構が用いられている。減速機27は、ドライブプーリ27a,ドリブンプーリ27bと、ベルト27cとを有する。モータ26のモータ軸にドライブプーリ27aが結合され、直動機構25にドリブンプーリ27bが設けられている。このドリブンプーリ27bは、前記モータ軸に平行に配置されている。モータ26の駆動力は、ドライブプーリ27aからベルト27cを介してドリブンプーリ27bに伝達される。前記各ドライブプーリ27a,ドリブンプーリ27bとベルト27cとで、巻き掛け式の減速機27が構成される。
<直動機構25について>
図2およびこのVIII部の部分拡大図である図8に示すように、直動機構25は、台形ねじまたは三角ねじ等の滑りねじ式の送りねじ機構を用いることができ、この例では台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構33が用いられている。この直動機構25は、送りねじ機構33、回転支持軸受28、回転固定部材43(図7)、およびこれらの構成部品を覆うカバーであるアクチュエータケース34を備える。
図2およびこのVIII部の部分拡大図である図8に示すように、直動機構25は、台形ねじまたは三角ねじ等の滑りねじ式の送りねじ機構を用いることができ、この例では台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構33が用いられている。この直動機構25は、送りねじ機構33、回転支持軸受28、回転固定部材43(図7)、およびこれらの構成部品を覆うカバーであるアクチュエータケース34を備える。
送りねじ機構33は、ドリブンプーリ27bの内周に設けられた円筒状の保持部材44と、この保持部材44の内周に保持されたナット部35と、このナット部35の内周に螺合状態に配置されたねじ軸36と、すべり軸受37等とを有する。滑りねじ内部には、グリースが充填されている。ナット部35およびねじ軸36は、前記台形ねじのねじ部38を構成するねじ溝およびねじ山を有するため、タイヤ9bからの逆入力の防止効果を高め得る。
図8に示すように、ナット部35は、軸方向に並ぶように二分割された第1および第2の分割構造体45,47を有する。保持部材44の内周に、第1および第2の分割構造体45,47がそれぞれスプライン嵌合で係止つまり連結されている。第1および第2の分割構造体45,47は、ナット部35の回転方向に相互に規制され、かつ軸方向に相対移動可能に配置されている。
具体的には、第1および第2の分割構造体45,47は、ナットホルダである保持部材44に対して、スプラインSpにより前記回転方向に規制される一方で、第1の分割構造体45は保持部材44に対して軸方向に固定されるようにスプラインSpは締まり嵌めとし、第2の分割構造体47は保持部材44に対して軸方向に摺動可能なようにスプラインSpはすきま嵌めとすることで、第1および第2の分割構造体45,47は軸方向に相対的に移動可能としている。但し、第1および第2の分割構造体45,47は、保持部材44の内周における軸方向両端に設けられた止め輪48,48により軸方向に規制されている。
第1および第2の分割構造体45,47は、互いに印籠嵌合され、且つ、軸方向に相対移動可能に配置されている。第1の分割構造体45におけるアウトボード側端部には、この第1の分割構造体45の他の部分よりも小径円筒状で軸方向に所定距離突出する被嵌合部45aが形成されている。第2の分割構造体47におけるインボード側端部には、前記被嵌合部45aに対して印籠嵌合される嵌合部47aが形成されている。なお、この例の第1の分割構造体45は、保持部材44に対して、回転方向および軸方向の両方向に規制されるため、第1の分割構造体45および保持部材44は、同一材料から一体に形成してもよい。
第1(固定側)の分割構造体45のアウトボード側端部と、第2(自由側)の分割構造体47のインボード側端部との間には、軸方向隙間δ1が設けられている。この軸方向隙間δ1に、第1および第2の分割構造体45,47の軸方向距離を調整可能とするシム49が介在されている。シム49は薄肉円板状のスペーサであり、前記軸方向距離を調整するため、例えば、複数枚重ね合されて用いられる。前記シム49により、前記軸方向距離を微小に調整可能とし、台形ねじのバックラッシを極小に調整できる構造としている。
第2の分割構造体47におけるアウトボード端には、ねじ軸36が貫通するすべり軸受37が設けられている。すべり軸受37は、ねじ軸36の軸方向の移動をガイドすると共に、タイヤ側からの外力がねじ軸36に入力された場合に、ねじ部38にラジアル方向の力が負荷されることを防止する。すべり軸受37は、銅合金または多孔質の焼結合金等の金属製の他、フッ素樹脂等の樹脂製のものも適用できる。
回転支持軸受28は送りねじ機構33を回転支持する。この回転支持軸受28として、この例では、二個の円すいころ軸受が、ドリブンプーリ27bを介して、正面合わせで組み合わされている。これらの回転支持軸受28,28の配置は、背面合わせ、正面合わせのどちらでもよいが、組付け性やシム等による予圧調整の容易さより、正面合わせの配置が好ましい。
各回転支持軸受28は、固定輪である外輪28aと、回転輪である内輪28bと、内外輪28b,28a間に介在する複数の転動体28cと、これら転動体28cを保持する保持器28dとを有する。各内輪28bは、保持部材44の外周面に嵌合固定され、止め輪39,39により軸方向に規制されている。
図2および図8に示すように、右側(アウトボード側)の回転支持軸受28の外輪28aは、ケース6b内の嵌合孔に嵌合固定され、インボード側の回転支持軸受28の外輪28aは、アクチュエータケース34のアウトボード側の内周面に嵌合固定されている。これらの回転支持軸受28,28により、ドリブンプーリ27b、保持部材44および第1,第2の分割構造体45,47が共に回転自在である。なお、回転支持軸受28をアンギュラ玉軸受としてもよい。この場合にも、回転支持軸受28,28の配置は、背面合わせ、正面合わせのどちらでもよい。
図7および図8に示すように、回転固定部材43は、ねじ軸36を回り止めする。ねじ軸36の後端であるインボード側端には、このねじ軸36と同軸に出力ロッド40が連結されている。出力ロッド40は、ねじ軸36のインボード側端を覆う有底略円筒状のねじ軸支持部材40aを有する。このねじ軸支持部材40aは、アクチュエータケース34に対して、径方向に複数(この例では三つ)伸びる軸状の回転固定部材43によって、ねじ軸36と共に回り止めされている。これら回転固定部材43は、放射状に延び且つ円周等配に配置される。各回転固定部材43として例えばピン等が適用される。
各回転固定部材43の外周にすべり軸受46がそれぞれ嵌合されている。アクチュエータケース34の内周面には、各すべり軸受46を案内する軸方向に延びる案内溝34aがそれぞれ形成されている。よって回転固定部材43を、すべり軸受46を介してアクチュエータケース34の案内溝34aに沿って摺動させることで、滑りねじのねじ軸36を軸方向に往復運動させ得る。また回転固定部材43をすべり軸受46を介して摺動させるため、案内溝34aの摺動面の摩耗防止を行っている。すべり軸受46は、銅合金または多孔質の焼結合金等の金属製の他、フッ素樹脂等の樹脂製のものも適用できる。
図2に示すように、ねじ軸36の先端の直動出力部25aには、前記アーム部17がジョイント部8を介して連結されている。ジョイント部8は、二本のピン41,42でアーム部17および直動出力部25aにそれぞれ回転自在に連結されている。このため、ねじ軸36の前後移動によって、ナックル6に対して、ハブユニット本体2の全体が補助転舵軸心A(図1)を中心に回転し得る。
モータ26、減速機27および直動機構25を備えたアクチュエータ本体7は、準組立品として組み立てられてケース6bにボルト等により着脱自在に取り付けられる。なおモータ26の駆動力を、減速機を介さず直接直動機構25へ伝達する機構も可能である。
ケース6bは、ユニット支持部材3の一部として、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ケース6bは、有底筒状に形成され、モータ26を支持するモータ収容部と、直動機構25を支持する直動機構収容部が設けられている。前記モータ収容部には、モータ26をケース内所定位置に支持する嵌合孔が形成されている。前記直動機構収容部には、直動機構25をケース内所定位置に支持する嵌合孔、および、直動出力部25aの進退を許す貫通孔等が形成されている。
ケース6bは、ユニット支持部材3の一部として、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ケース6bは、有底筒状に形成され、モータ26を支持するモータ収容部と、直動機構25を支持する直動機構収容部が設けられている。前記モータ収容部には、モータ26をケース内所定位置に支持する嵌合孔が形成されている。前記直動機構収容部には、直動機構25をケース内所定位置に支持する嵌合孔、および、直動出力部25aの進退を許す貫通孔等が形成されている。
図3に示すように、ユニット支持部材本体3Aは、前記ケース6b、ショックアブソーバの取り付け部となるショックアブソーバ取り付け部6c、およびステアリング装置11(図2)の結合部となるステアリング装置結合部6dを有する。これらショックアブソーバ取り付け部6cおよびステアリング装置結合部6dも、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における上部に、ショックアブソーバ取り付け部6cが突出するように形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における側面部には、ステアリング装置結合部6dが突出するように形成されている。
<作用効果>
以上説明した操舵機能付ハブユニット1によれば、車輪9を支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、アクチュエータ本体7の駆動により、転舵軸心A回りに自由に回転させることができる。この回転は、運転者のハンドル操作による操舵に付加して、すなわちステアリング装置11によるキングピン軸回りのナックル6の回転に付加して、補助的な操舵として行われ、また1輪の独立操舵が行える。左右の車輪9,9の補助操舵の角度を異ならせることで、左右の車輪9,9間のトー角を任意に変更することができる。
以上説明した操舵機能付ハブユニット1によれば、車輪9を支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、アクチュエータ本体7の駆動により、転舵軸心A回りに自由に回転させることができる。この回転は、運転者のハンドル操作による操舵に付加して、すなわちステアリング装置11によるキングピン軸回りのナックル6の回転に付加して、補助的な操舵として行われ、また1輪の独立操舵が行える。左右の車輪9,9の補助操舵の角度を異ならせることで、左右の車輪9,9間のトー角を任意に変更することができる。
そのため、操舵機能付ハブユニット1を前輪等の操舵輪および後輪等の非操舵輪のいずれに用いてもよい。操舵輪に用いる場合は、ステアリング装置11により方向が変化させられる部材に設置されることにより、運転者のハンドル操作による操舵に付加して、左右の車輪個別の、または左右輪に連動した車輪9の微小な角度変化を行わせる機構となる。補助操舵の角度については、車両の運動性能の向上、走行の安定・安全性向上を図るにつき、僅かな角度で足り、補助操舵可能角度が±5度以下であっても十分に足りる。補助操舵の角度は操舵用アクチュエータ5の制御により行う。
また、旋回走行時に、走行速度に応じて左右輪の舵角差を変えることができる。例えば高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとするなど、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を任意に変更することができるため、車両の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。旋回走行時における左右の操舵輪の操舵角度を適切に変えることで、車両の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。
さらに直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角度の量を調整することで、低速時には走行抵抗を下げ燃費を悪化させることなく、高速時には走行安定性を確保するなど調整が可能である。
さらに直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角度の量を調整することで、低速時には走行抵抗を下げ燃費を悪化させることなく、高速時には走行安定性を確保するなど調整が可能である。
操舵機能付ハブユニット1を後輪9Rである非操舵輪に適用した場合は、旋回走行時に、舵角を前輪9Fと同じ位相にすると、操舵時に発生するヨーを抑え、車両の安定性を高めることができる。直線走行時にも左右独立でトー角度を調整することで、走行安定性を確保することができる。
操舵用アクチュエータ5の直動機構25は、モータ26の回転出力を直進運動に変換することでハブユニット本体2を任意に回転させ得る。直動機構25における、軸方向に並ぶ第1および第2の分割構造体45,47は回転方向に相互に規制されたため、両分割構造体45,47を同位相に維持することができる。これにより滑りねじの作動を円滑に保つことができる。
特に、第1および第2の分割構造体45,47は軸方向に相対移動可能に配置されたため、二つの分割構造体47,47の相対的に軸方向距離を微小に調整することが可能となる。この例では、シム49により、第1および第2の分割構造体45,47の軸方向距離を微小に調整することが可能となり、よって、ナット部35とねじ軸36との間の軸方向のバックラッシを極小に調整することができる。
このようにバックラッシを減少させることで、操舵角を微小にコントロールすることが容易となる結果、車両の安定性および安全性の向上を図れる。路面からの逆入力による振動が直動機構25に作用した場合にも、前記バックラッシを減少させることで、ねじ軸36とナット部35のねじ面が不所望に衝突することを未然に防止し得る。よって、歯打ち音等の異音の発生を防止し、ねじ面を正常に維持することができる。これによりねじ面の摩耗を抑制できるため、ねじ面の摩擦係数を維持し、セルフロック機能による操舵角の保持を行うことができる。
第1および第2の分割構造体45,47が互いに印籠嵌合されていることで、第1の分割構造体45と第2の分割構造体47の同軸度を向上することができる。これにより、滑りねじの作動を円滑に保つことができる。これにより、ハブユニット本体2を回転駆動させる力を過剰に必要とせず、操舵用アクチュエータ5の小型化を図ることが可能となる。したがって、ハブユニット全体の重量を確実に低減することができる。
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
図9に示すように、第1の分割構造体45のアウトボード側端部と、第2の分割構造体47のインボード側端部との間の軸方向隙間δ1に、弾性部材50が介在されてもよい。弾性部材50として、例えば、コイルばね、皿ばねまたは波形座金が用いられる。但し、前記コイルばねは、軸方向隙間δ1に円周等配に複数配置される。この場合に、第1の分割構造体45のアウトボード側端部と、第2の分割構造体47のインボード側端部のいずれか一方または両方に、複数のコイルばねの円周方向位置を規制する円周方向位置規制手段(図示せず)が設けられる。その他、弾性部材50として、Oリング等のゴム材を適用してもよい。
この構成によると、弾性部材50により、第1の分割構造体45と第2の分割構造体47との間に軸力を発生させることで、ねじ面に予圧を与え、ナット部35とねじ軸36との間の軸方向の隙間を詰めてバックラッシを減少させることができる。但し、ねじ面の過度の予圧は、台形ねじのフリクションを増大させ、モータ電力の増加および効率の悪化を招くおそれがある。
そこで、図10では、図9の構成に対して、軸方向隙間δ1における、弾性部材50の軸方向に隣接する位置に、前記弾性部材50の変位量を調整するシム49が介在されている。この構成によると、シム49により弾性部材50の変位量を調整することで、ねじ面に生じる軸力をコントロールし、ねじ面の予圧を最適化することができる。これにより、バックラッシを抑えることとフリクションを最小限に抑えることを両立することが可能となる。
前記スプラインSpに代えて、図11に示すように、保持部材44の内周に、第1および第2の分割構造体45,47がそれぞれキーKyにより連結されてもよい。この場合、スプラインよりも加工工数の低減を図り製造コストの低減を図ることが可能となる。この図11では、軸方向隙間δ1に、弾性部材50と共にシム49が介在されているが、弾性部材50のみまたはシム49のみが介在される構成であってもよい。
図8〜図11に示す各例ではナット部35を二分割としたが、これらの例に限定されるものではない。図示しないが、ねじ軸36を軸方向に並ぶ二分割としてこれらの間に弾性部材50またはシム49を介在させ、両者の間に軸力を発生させることで、ねじ面に予圧を与え、ナット部35とねじ軸36との間の軸方向の隙間を詰めてバックラッシを減少させることも可能である。
<非操舵輪への適用について>
操舵機能付ハブユニット1は、非操舵輪に対して用いてもよい。例えば、図13に示すように、前輪操舵の車両において、後輪9Rを支持する懸架装置12Rの車輪用軸受設置部となる足回りフレーム部品6Rに設定し、後輪操舵に用いてもよい。
その他図14に示すように、操舵機能付ハブユニット1を、操舵輪である左右の前輪9F,9Fおよび非操舵輪である左右の後輪9R,9Rにそれぞれ用いてもよい。
操舵機能付ハブユニット1は、非操舵輪に対して用いてもよい。例えば、図13に示すように、前輪操舵の車両において、後輪9Rを支持する懸架装置12Rの車輪用軸受設置部となる足回りフレーム部品6Rに設定し、後輪操舵に用いてもよい。
その他図14に示すように、操舵機能付ハブユニット1を、操舵輪である左右の前輪9F,9Fおよび非操舵輪である左右の後輪9R,9Rにそれぞれ用いてもよい。
<操舵システムについて>
図3に示すように、この操舵システムは、いずれかの実施形態に係る操舵機能付ハブユニット1と、この操舵機能付ハブユニット1の操舵用アクチュエータ5を制御する制御装置29とを備える。制御装置29は、操舵制御部30と、アクチュエータ駆動制御部31とを有する。操舵制御部30は、上位制御部32から与えられた補助操舵角指令信号(操舵角指令信号)に応じた電流指令信号を出力する。
図3に示すように、この操舵システムは、いずれかの実施形態に係る操舵機能付ハブユニット1と、この操舵機能付ハブユニット1の操舵用アクチュエータ5を制御する制御装置29とを備える。制御装置29は、操舵制御部30と、アクチュエータ駆動制御部31とを有する。操舵制御部30は、上位制御部32から与えられた補助操舵角指令信号(操舵角指令信号)に応じた電流指令信号を出力する。
上位制御部32は操舵制御部30の上位の制御手段であり、この上位制御部32として、例えば、車両全般を制御する電気制御ユニット(Vehicle Control Unit,略称VCU)が適用される。アクチュエータ駆動制御部31は、操舵制御部30から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して操舵用アクチュエータ5を駆動制御する。アクチュエータ駆動制御部31は、モータ26のコイルに供給する電力を制御する。このアクチュエータ駆動制御部31は、例えば、図示外のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を構成し、前記スイッチ素子のON−OFFデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う。これにより、運転者のハンドル操作による操舵に付加して、車輪を微小に角度変化することができる。直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角の量を調整し得る。
操舵システムは、運転者のハンドル操作に代えて、図示外の自動運転装置、運転支援装置の指令等によって操舵用アクチュエータ5,5を動作させてもよい。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1…操舵機能付ハブユニット、2…ハブユニット本体、3…ユニット支持部材、5…操舵用アクチュエータ、6…ナックル(足回りフレーム部品)、9…車輪、9a…ホイール、12,12R…懸架装置、15…ハブベアリング、25…直動機構、26…モータ(回転駆動源)、29…制御装置、30…操舵制御部、31…アクチュエータ駆動制御部、33…送りねじ機構、35…ナット部、36…ねじ軸、45,47…第1,第2の分割構造体、49…シム、50…弾性部材
Claims (11)
- 回転運動を直進運動に変換する直動機構であって、ナット部およびねじ軸を含む滑りねじ式の送りねじ機構を有し、前記ナット部およびねじ軸のいずれか一方は、軸方向に並ぶように二分割された第1および第2の分割構造体を有し、これら第1および第2の分割構造体は、前記ナット部または前記ねじ軸の回転方向に相互に規制され、かつ軸方向に相対移動可能に配置された直動機構。
- 請求項1に記載の直動機構において、前記第1および第2の分割構造体を保持する保持部材を備え、この保持部材にスプラインまたはキーにより前記第1および第2の分割構造体をそれぞれ係止することで、前記第1および第2の分割構造体が前記回転方向に相互に規制される直動機構。
- 請求項1または請求項2に記載の直動機構において、前記第1の分割構造体と前記第2の分割構造体との間に、両者の軸方向距離を調整可能とするシムが介在されている直動機構。
- 請求項1または請求項2に記載の直動機構において、前記第1の分割構造体と前記第2の分割構造体との間に、弾性部材が介在されている直動機構。
- 請求項4に記載の直動機構において、前記第1の分割構造体と前記第2の分割構造体との間に、前記弾性部材と共にこの弾性部材の変位量を調整するシムが介在されている直動機構。
- 請求項4または請求項5に記載の直動機構において、前記弾性部材として、コイルばね、皿ばねまたは波形座金が用いられた直動機構。
- 請求項4または請求項5に記載の直動機構において、前記弾性部材として、ゴム材が用いられた直動機構。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の直動機構において、前記第1および第2の分割構造体は、互いに印籠嵌合され、且つ、前記軸方向に相対移動可能に配置されている直動機構。
- 車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記操舵用アクチュエータは、回転駆動源と、この回転駆動源の回転出力を直進運動に変換する請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の直動機構とを有する操舵機能付ハブユニット。 - 請求項9に記載の操舵機能付ハブユニットと、この操舵機能付ハブユニットの操舵用アクチュエータを制御する制御装置とを備えた操舵システムであって、前記制御装置は、与えられた操舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する操舵制御部と、この操舵制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記操舵用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有する操舵システム。
- 請求項9に記載の操舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持された車両。
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