JP7221735B2 - ポリオレフィン系樹脂発泡体シート及びそれを用いた粘着テープ - Google Patents
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Description
発泡体基材に耐熱性能を持たせる単純な手法の一つとして、融点の高い樹脂を原料として用いることが考えられる。一方で、高融点樹脂を用いた発泡体は、その樹脂特性上、硬くなることが一般的であり、その結果、基材の曲げ弾性率が増大し、テープ用途を想定した際の曲面追従性低下(テープ浮き)が問題点として考えられている。
そこで、本発明は、耐熱性が高く曲面追従性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡体シート、及びそれを用いた粘着テープを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]を提供する。
[1]曲げ弾性率が150kPa以下であり、かつ120℃の温度で1時間養生したときの面方向の収縮率が5%以下であるポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[2]MD及びTDの平均気泡径が400μm以下である上記[1]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[3]プロピレン由来の構成単位を有する樹脂(A)を含む樹脂組成物を発泡させてなり、前記樹脂組成物における前記樹脂(A)の含有量が、前記樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、25~95質量部である上記[1]又は[2]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[4]前記樹脂(A)が、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-プロピレンランダム共重合ゴム及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種のプロピレン由来の構成単位を有する樹脂を含む上記[3]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体樹脂シート。
[5]前記樹脂(A)が前記ポリプロピレン系樹脂及び前記オレフィン系熱可塑性エラストマーを含む上記[4]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[6]前記ポリプロピレン系樹脂がランダムポリプロピレンである上記[4]又は[5]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[7]厚さが0.03~1.5mmである上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[8]見掛け密度が0.05~0.6g/cm3である上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
[9]上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シートと、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面に設けた粘着剤層とを備える粘着テープ。
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体シート(以下、単に「発泡体シート」と呼ぶ場合がある)は、曲げ弾性率が150kPa以下であり、かつ120℃の温度で1時間養生したときの面方向の収縮率が5%以下である。これにより、耐熱性が高く曲面追従性に優れた発泡体シートを提供することができる。以下、本発明の発泡体シートを詳細に説明する。
本発明の発泡体シートの曲げ弾性率は150kPa以下である。本発明の発泡体シートの曲げ弾性率が150kPaよりも大きいと、発泡体シートの曲面追従性が不十分になる場合がある。曲面追従性の観点から、発泡体シートの曲げ弾性率は、好ましくは100kPa以下であり、より好ましくは50kPa以下である。なお、発泡体シートの曲げ弾性率の下限値はとくに限定されないが、例えば、5kPa以上である。曲げ弾性率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の発泡体シートの120℃の温度で1時間養生したときの面方向の収縮率は5%以下である。発泡体シートの120℃の温度で1時間養生したときの面方向の収縮率が5%よりも大きいと、車両内の高温環境下での使用に対して十分な耐熱性を有する発泡体シートが得られない場合がある。耐熱性の観点から、発泡体シートの120℃の温度で1時間養生したときの面方向の収縮率は、好ましくは4.5%以下であり、より好ましくは3.5%以下であり、さらに好ましくは3%以下である。発泡体シートの120℃の温度で1時間養生したときの面方向の収縮率の範囲の下限値は特に限定されないが、例えば0.1%である。なお、JIS K6767に準拠して、発泡体シートの120℃での寸法変化を測定し、加熱収縮率(%)を算出して、その値を発泡体シートの120℃の温度で1時間養生したときの面方向の収縮率とした。
また、高い耐熱性及び優れた曲面追従性の両立という観点から、曲げ弾性率が上述の範囲内であり、かつ120℃の温度で1時間養生したときの面方向の収縮率が上述の範囲内であることがより好ましい。
本発明の発泡体シートにおけるMD及びTDの平均気泡径は、好ましくは400μm以下である。MD及びTDの平均気泡径が400μm以下であると、発泡体シートの機械的強度が改善される。これにより、発泡体シートを備える粘着テープを貼り付けた後、貼り直すために剥がすとき、発泡体シートを壊すことなく(層間破壊せずに)剥がすことができる。すなわち、リワーク性が良好となる。なお、本発明において「MD」は、Machine Directionを意味し、シートの押出方向等と一致する方向である。また、「TD」は、Transverse Directionを意味し、MDに直交しかつシートの表面に平行な方向である。リワーク性、機械的強度及び曲面追従性の観点から、MD及びTDの平均気泡径は、より好ましくは350μm以下であり、さらに好ましくは300μm以下である。また、曲面追従性の観点から、MD及びTDの平均気泡径は、好ましくは150μm以上であり、より好ましくは200μm以上である。なお、MD及びTDの平均気泡径は実施例の記載の方法にしたがって測定することができる。また、発泡体シートを作製するときの樹脂組成物のゲル分率を調節することにより、MD及びTDの平均気泡径を調整できる。
本発明の発泡体シートにおける気泡のZDの平均気泡径は、好ましくは40μm以上である。ZDの平均気泡径が40μm以上であると、曲面追従性が良好になる。曲面追従性の観点から、ZDの平均気泡径は、より好ましくは50μm以上であり、さらに好ましくは80μm以上である。また、リワーク性の観点から、ZDの平均気泡径は、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは200μm以下である。なお、「ZD」は厚さ方向を意味する。また、ZDの平均気泡径は実施例の記載の方法にしたがって測定することができる。発泡体シートのZDの平均気泡径は、発泡体シートを作製するときの樹脂組成物のゲル分率を調節することにより、調整できる。
本発明の発泡体シートの厚さは、好ましくは0.03~1.5mmである。発泡体シートの厚さが0.03mm以上であると、発泡体シートが熱収縮しにくくなる。また、電子機器等に適用した場合に十分なシール性を保つことができる。発泡体シートの厚さが1.5mm以下であると、発泡体シートが厚すぎないので、電子機器への使用もしくは車載用電子機器への使用に適する。上述の観点から、発泡体シートの厚さは、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上、よりさらに好ましくは0.15mm以上であり、そして、より好ましくは1.3mm以下、さらに好ましくは1.1mm以下、よりさらに好ましくは1.0mm以下である。
本発明の発泡体シートの見掛け密度は、好ましくは0.05~0.6g/cm3である。発泡体シートの見掛け密度が0.05~0.6g/cm3であると、発泡体シートの耐熱性を向上させ、かつ柔軟性と機械的強度とをバランスよく向上させることができる。上述の観点から、発泡体シートの見掛け密度は、より好ましくは0.07~0.4g/cm3であり、さらに好ましくは0.1~0.3g/cm3である。
本発明の発泡体シートのゲル分率は、好ましくは15~60質量%である。発泡シートのゲル分率が15~60質量%であると、発泡体シートの気孔のMD及びTDの平均気孔径を所望の範囲に調整しやすくなる。このような観点から、発泡シートのゲル分率は、より好ましくは20~45質量%である。なお、ゲル分率は後述する実施例に記載の方法にしたがって測定されるものである。
本発明の発泡体シートは、プロピレン由来の構成単位を有する樹脂(A)(以下、単に「樹脂(A)」という場合がある)を含む樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(B)」という場合がある)を発泡させてなるものであることが好ましい。さらに、本発明の発泡体シートは、樹脂組成物(B)を架橋させ、かつ発泡させてなるものであることがより好ましい。
樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂を含むことにより、発泡体シートの耐熱性がより改善される。また、樹脂(A)がプロピレン系樹脂を含むことにより、発泡体の機械的強度が改善され、リワーク性が改善される。
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体が挙げられる。プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体の何れであってもよいが、プロピレンのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)であることが好ましい。ランダムポリプロピレンを使用することで、発泡体シートの曲面追従性が良好となりやすい。
プロピレンと他のオレフィンとの共重合体において、プロピレンと共重合される他のオレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等のα-オレフィンが挙げられ、これらの中ではエチレンが特に好ましい。すなわち、プロピレンのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)としてはエチレン-プロピレンランダム共重合体がより好ましい。
樹脂(A)がエチレン-プロピレンランダム共重合ゴムを含むことにより、発泡体シートの柔軟性が改善され、これにより曲面追従性が改善される。エチレン-プロピレンランダム共重合ゴムは、エチレン及びプロピレンが実質的にランダムに共重合した非晶質又は低結晶性のゴム状物質である。
エチレン-プロピレンランダム共重合ゴムは、エチレン単位及びプロピレン単位に加え、他のモノマー単位を有していてもよい。他のモノマー単位を形成するモノマーとしては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等の炭素数4~8の共役ジエン;ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ジシクロオクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン等の炭素数5~15の非共役ジエン;酢酸ビニル等のビニルエステル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では炭素数5~15の非共役ジエンが好ましく、入手容易性の観点から、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)がより好ましい。
これらのエチレン-プロピレンランダム共重合ゴムは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このように、樹脂組成物(B)の樹脂成分におけるエチレン-プロピレンランダム共重合ゴムの含有量が、樹脂成分100質量部に対して5~40質量部であることで、発泡体シートが良好な柔軟性を有することが可能になる。
オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、一般的には、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂をハードセグメントとし、EPR、EPDM等のポリオレフィン系ゴムをソフトセグメントとしたものである。TPOは、ブレンド型、動的架橋型、重合型のいずれも使用可能である。
本発明の発泡体シートに使用されるTPOは、上述のポリオレフィン系樹脂及びポリオレフィン系ゴムのうちの少なくとも一方のポリオレフィン系化合物がプロピレン由来の構成単位を有する。樹脂(A)がこのようなTPOを含むことにより、発泡体シートの耐熱性及び曲面追従性をバランスよく改善することができる。本発明の発泡体シートに使用されるTPOでは、ポリオレフィン系樹脂及びポリオレフィン系ゴムの両方がプロピレン由来の構成単位を有することがより好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂はポリプロピレン系樹脂であることがより好ましい。
本発明の発泡体シートに使用されるTPOの市販品には、例えば、LyondellBASEll社製の製品名「Softell CA 02 A」が挙げられる。
このように、樹脂組成物(B)の樹脂成分におけるTPOの含有量が、樹脂成分100質量部に対して1~35質量部であることで、発泡体シートが良好な耐熱性及び曲面追従性を有することが可能になる。
樹脂組成物(B)はポリエチレン系樹脂をさらに含んでもよい。これにより、樹脂組成物(B)における樹脂成分の相溶性がさらに良好になる。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂が挙げられるが、これらの中では直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)が好ましい。
また、ポリエチレン系樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
このように、樹脂組成物(B)の樹脂成分におけるポリエチレン系樹脂の含有量が、樹脂成分100質量部に対して5~75質量部であることで、樹脂組成物(B)における樹脂成分の相溶性がさらに良好になる。
本発明の目的を阻害しない範囲であれば、樹脂組成物(B)は、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-プロピレンランダム共重合ゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びポリエチレン系樹脂以外の樹脂成分を含んでもよい。かかる樹脂成分としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アルキルアクリレ-ト共重合体、又はこれらに無水マレイン酸を共重合した変性共重合体等が挙げられる。
樹脂組成物(B)は、上記オレフィン系樹脂以外に添加剤として、通常、発泡剤を含有する。また、樹脂組成物(B)は、分解温度調整剤をさらに含んでもよい。さらに、樹脂組成物(B)は架橋助剤及び酸化防止剤の一方又は両方を含有することが好ましい。
樹脂組成物(B)を発泡させる方法としては、化学的発泡法、物理的発泡法がある。化学的発泡法は、樹脂組成物(B)に添加した化合物の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法であり、物理的発泡法は、低沸点液体(発泡剤)を樹脂組成物(B)に含浸させた後、発泡剤を揮発させてセルを形成させる方法である。発泡法は特に限定されないが、均一な独立気泡発泡体シートを得る観点から、化学的発泡法が好ましい。
発泡剤としては、熱分解型発泡剤が使用され、例えば分解温度が160~270℃程度の有機系又は無機系の化学発泡剤を用いることができる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物、ニトロソ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンがより好ましく、アゾジカルボンアミドが特に好ましい。
発泡剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱分解型発泡剤の添加量は、発泡体シートの気泡が破裂せずに適切に発泡させる観点から、樹脂成分100質量部に対して1~25質量部が好ましく、1.5~15質量部がより好ましく2~10質量部がさらに好ましい。
分解温度調整剤には、例えば、塩基性マグネシウム塩、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等が挙げられる。これらの分解温度調整剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの分解温度調整剤の中で、塩基性マグネシウム塩が好ましい。さらに、分解温度調整剤として好ましい塩基性マグネシウムは、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種のマグネシウム化合物である。樹脂組成物(B)は、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムのいずれか一方のみを含有してもよいし、両方を含有してもよい。樹脂組成物(B)に、分解温度発泡剤を配合することにより、熱分解型発泡剤の分解温度を調節することができ、これにより、発泡体シートの気泡径を調整することができる。
発泡剤、特にアゾジカルボンアミドが加熱により分解されると、その一部が昇華物になり、フォギングが発生する。しかし、樹脂組成物(B)が塩基性マグネシウムを含有することでそのような昇華物によるフォギングの発生が防止される。したがって、本発明においては、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを使用する場合には、樹脂組成物(B)は塩基性マグネシウムを含有することが好ましい。
架橋助剤としては、多官能モノマーを使用することができる。例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能(メタ)アクリレート系化合物;トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物;1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリレート系化合物、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物;フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。これらの中では、3官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましい。
架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて用いることができる。
架橋助剤を樹脂組成物(B)に添加することによって、少ない電離性放射線量で樹脂組成物(B)を架橋することが可能になる。そのため、電離性放射線の照射に伴う各樹脂分子の切断、劣化を防止することができる。
架橋助剤の含有量は、樹脂組成物(B)を発泡する際に、ゲル分率の調整、制御の容易さの観点から、樹脂成分100質量部に対して0.2~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中では、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用することがより好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、単独で又は2以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
また、樹脂組成物(B)は、必要に応じて、難燃剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、顔料等の上記以外の添加剤を含有してもよい。
発泡体シートは、例えば、樹脂組成物(B)を溶融混練して所望形状に成形した後、電離性放射線を照射して樹脂組成物(B)を加熱発泡することにより製造することができる。
具体的には、以下の工程1~3を有する製造方法がより好ましい。
工程1:樹脂組成物(B)を構成する各成分を溶融混練した後、シート状の樹脂組成物(B)を得る工程
工程2:工程1で得られた樹脂組成物(B)に電離性放射線を照射して、架橋する工程
工程3:工程2で架橋した樹脂組成物(B)を、熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させて、発泡体シートを得る工程
ここで使用される混練装置としては、例えば、射出成形機、押出機(単軸押出機、二軸押出機等)、バンバリーミキサー、ロール等の汎用混練装置等が挙げられるが、射出成形機や押出機が好ましく、射出成形機を用いれば、生産性よく製造することができる。
射出成形機又は押出機の内部の樹脂温度は、好ましくは120~220℃、より好ましくは140~200℃、さらに好ましくは150~195℃である。
電離性放射線としては、例えば、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中では、生産性及び照射を均一に行う観点から、電子線が好ましい。
電離性放射線の照射は、シート状に成形した樹脂組成物(B)の片面のみに照射してもよいし、両面に照射してもよい。
電離性放射線の加速電圧は、照射する発泡性樹脂組成物の厚さにもよるが、例えば、厚さが0.05~3mmの場合、400~1200kVであることが好ましく、500~1100kVであることがより好ましく、600~1000kVであることがより好ましい。
電離性放射線の照射線量は、照射する発泡性樹脂組成物の厚さ等を考慮し、表面荒れやひび割れ等生じることなく、所望のゲル分率を得ることができる量であれがよいが、通常、0.1~10Mradが好ましく、0.2~5Mradがより好ましく、0.3~3Mradがより好ましい。
ここで、樹脂組成物(B)を加熱発泡させる温度は、発泡剤として使用される熱分解型発泡剤の分解温度によるが、通常140~300℃、好ましくは150~280℃、より好ましくは160~260℃である。
本発明の発泡体シートは、独立気泡構造であることが好ましいが、連続気泡を含む独立気泡構造であってもよい。
本発明の粘着テープは、上記した発泡体シートを基材として用いた粘着テープであり、具体的には、発泡体シートと、発泡体シートの少なくとも一方の面に設けた粘着剤層とを備える。
粘着テープを構成する粘着剤層の厚さは、5~200μmが好ましく、7~150μmがより好ましく、10~100μmがさらに好ましい。
本発明の粘着テープは、好ましくは発泡体シートの両面に粘着剤層が設けられている。すなわち、本発明の粘着テープは、好ましくは両面テープである。
また、本発明の粘着テープは、曲面を有する隙間であっても隙間を密閉することができるので、曲面を有する電子機器の外部から内部への埃や水分等の侵入を、より確実に防止するために使用される、電子機器のシール材として好適に用いることができ、特に車載用電子機器のシール材として好適に用いることができる。
発泡体シートに粘着剤を塗布して、粘着剤層を発泡体シート上に積層する方法としては、例えば、離形紙に塗布してある粘着剤を発泡体シートに対して転写する方法、発泡体シートの少なくとも一方の面にコーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法、発泡体シートの少なくとも一方の面にスプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、発泡体シートの一方の面に刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法、両面に粘着剤層を備えた両面テープを発泡体シートに貼る方法等が挙げられる。
なお、各物性の測定方法、及び発泡体シートの評価方法は以下のとおりである。
発泡体シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の質量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の質量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式によりゲル分率(質量%)を算出した。
ゲル分率(質量%)=100×(B/A)
(2)発泡体シートの密度
発泡体シートの密度(見かけ密度)はJIS K7222に準拠して測定した。
(3)発泡体シートの厚さ
発泡体シートの厚さはダイヤルゲージを用いて計測した。
(4)加熱収縮(120℃×1hr)
JIS K6767に準拠して、発泡体シートの120℃での寸法変化を測定し、加熱収縮率(%)を算出して、その値を発泡体シートの120℃の温度で1時間養生したときの面方向の収縮率とした。
(5)曲げ弾性率
発泡体シートを幅25mm、長さ30mmにカットし、厚みが30mmとなる様にシートを重ね、その他の試験方法は(JIS 7171、7221-2)を参考にし、テンシロン(ORIENTEC社製、製品名:RTC-1310A)を用いて曲げ弾性率を測定した。
算出法としては、上記方法で測定した伸び量mmを横軸、荷重Nを縦軸としてプロットし、伸び量0.5mm~5mm範囲内のプロットの傾きが最大となる時の傾き値を曲げ弾性率とした。
(6)平均気泡径
発泡体シートを50mm四方にカットし、液体窒素に1分間浸した後にMD及びTDそれぞれに沿って切断して、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、製品名VHX-900)を用いて200倍の拡大写真を撮影した。その撮影画像の発泡体シートにおいて、MD、TDそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてMDもしくはTD及びZDの気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、MD及びTDの気泡径の平均値(平均気泡径)及びZDの気泡径の平均値(平均気泡径)を算出した。
(7)曲面追従性
発泡体シートに粘着層を持たせ、R=0.095を持つアクリル板に対して貼り付け、90℃で24h静置させる。その後、貼り合わせ部分を確認し、テープ浮きやシワの発生の有無によって曲面追従性を評価した。テープ浮き及びシワの発生がない場合は、「○」と評価し、テープ浮きのシワの発生の少なくとも一方が発生した場合は、「×」と評価した。
(8)リワーク性
発泡体シートの両面に粘着層を持たせ、両面に対してアクリル板を張り付け、23℃で24h静置させる。その後、張り合わせたアクリル板を剥がし、粘着層界面で破壊されたものをリワーク性を有するものとして「○」と評価し、粘着層界面で破壊されなかったものをリワーク性を有さないものとして「×」と評価した。
<実施例1>
40質量部のランダムPP、20質量部のEPDM、15質量部のTPO、25質量部のLLDPE、3質量部の熱分解型発泡剤、1質量部の分解温度調整剤、0.5質量部の酸化防止剤、及び3質量部の架橋助剤を単軸押出機に投入した。そして、樹脂温度180℃にて上述の原料を溶融混練して押し出し、厚さ0.36mmのシート状の樹脂組成物を得た。このシート状の樹脂組成物の両面に、電子線を照射することにより樹脂組成物を、30質量%のゲル分率になるように架橋した。その後、架橋した樹脂組成物をMD及びTDに引き延ばしながら熱風オーブンにより250℃で5分間加熱し、その加熱により発泡させて、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである実施例1の発泡体シートを得た。
シート状の樹脂組成物の厚みを0.26mmに調整した以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.2mmである実施例2の発泡体シートを得た。
熱分解型発泡剤の配合量を3質量部から6質量部に変更した以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.075g/cm3であり、厚さが1.0mmである実施例3の発泡体シートを得た。
熱分解型発泡剤の配合量を3質量部から2質量部に変更した以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.3g/cm3であり、厚さが0.35mmである実施例4の発泡体シートを得た。
ランダムPPの配合量を40質量部から50質量部に変更し、TPOの配合量を15質量部から5質量部に変更し、熱分解型発泡剤の配合量を3質量部から6質量部に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.075g/cm3であり、厚さが1.0mmである実施例5の発泡体シートを得た。
熱分解型発泡剤の配合量を3質量部から2.5質量部に変更し、電子線の照射線量を変えて樹脂組成物のゲル分率を30質量%から20質量%にした。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである実施例6の発泡体シートを得た。
熱分解型発泡剤の配合量を3質量部から2.5質量部に変更し、電子線の照射線量を変えて樹脂組成物のゲル分率を30質量%から15質量%にした。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである実施例7の発泡体シートを得た。
熱分解型発泡剤の配合量を3質量部から5.5質量部に変更し、電子線の照射線量を変えて樹脂組成物のゲル分率を30質量%から20質量%にした。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.075g/cm3であり、厚さが1.0mmである実施例8の発泡体シートを得た。
ランダムPPの配合量を40質量部から55質量部に変更し、TPOを配合せず、熱分解型発泡剤の配合量を3質量部から5.5質量部に変更した。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.075g/cm3であり、厚さが1.0mmである比較例1の発泡体シートを得た。
ランダムPP、EPDM及びTPOを配合せず、LLDPEの配合量を25質量部から100質量部に変更し、架橋助剤を配合しなかった。それ以外は、実施例1の発泡体シートと同様の作製方法で、見掛け密度が0.2g/cm3であり、厚さが0.3mmである比較例1の発泡体シートを得た。
ランダムPP:エチレン-プロピレンランダム共重合体、日本ポリプロ株式会社製、製品名:ノバテックEG7F、MFR:1.3g/10分、エチレン含有量:3質量%
EPDM:エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、住友化学株式会社製、製品名:エスプレン301、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)=55、エチレン含有量:62質量%、プロピレン含有量:35質量%、ジシクロペンタジエン(DCPD)含有量:3質量%
TPO:オレフィン系熱可塑性エラストマー、LyondellBASEll社製、製品名:Softell CA 02 A、MFR:0.6g/10分、
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン、ダウケミカル社製、製品名:2036P、MFR:2.5g/10分
熱分解型発泡剤:アゾジカルボンアミド
分解温度調整剤:酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム
酸化防止剤:2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ジラウリルチオジプロピオネート
架橋助剤:トリメチロールプロパントリメタクリレート
Claims (6)
- 曲げ弾性率が150kPa以下であり、かつ
120℃の温度で1時間養生したときの面方向の収縮率が5%以下であり、
プロピレン由来の構成単位を有する樹脂(A)を含む樹脂組成物を発泡させてなり、
前記樹脂組成物における前記樹脂(A)の含有量が、前記樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、25~95質量部であり、
前記樹脂(A)が、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-プロピレンランダム共重合ゴム及びオレフィン系熱可塑性エラストマーを含むポリオレフィン系樹脂発泡体シート。 - MD及びTDの平均気泡径が400μm以下である請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
- 前記ポリプロピレン系樹脂がランダムポリプロピレンである請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
- 厚さが0.03~1.5mmである請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
- 見掛け密度が0.05~0.6g/cm3である請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シートと、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体シートの少なくとも一方の面に設けた粘着剤層とを備える粘着テープ。
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