JP7161742B2 - 水性インク組成物 - Google Patents
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本実施の形態における無機黒色顔料としては、例えば、炭素系黒色顔料である。無機黒色顔料を用いることで、耐水性や耐光性が良好な水性インク組成物を得ることができる。無機黒色顔料は、用紙の繊維に入り込むことで、黒く発色する。炭素系黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、黒雲母、黒鉛粉末、グラファイト粉末等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、取扱い性の観点から、カーボンブラックを好適に用いることができる。カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等が挙げられる。
本実施の形態における水溶性黒色染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料等が挙げられる。中でも酸性染料は、黒色の発色性をより向上させることができる。水溶性黒色染料としては、例えば、ジスアゾ染料、金属含有アゾ染料、アントラキノン染料、モノアゾ染料、ヒドロオキシケトン染料、硫化染料等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、取扱い性の観点からジスアゾ染料を好適に用いることができる。
本実施の形態における樹脂エマルションは、樹脂粒子の水分散体である。樹脂エマルションの成分樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物等のモノマー成分の共重合体等であり、中でも、分散性の観点からアクリル酸エステル共重合体を好適に用いることができる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。また、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。また、ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
本実施の形態における水性インク組成物は、上記成分を溶解又は分散させる媒体として、水を含有する。本実施の形態における水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いることができる。水性インク組成物における水の含有量は、水性インク組成物の乾燥のし易さなどの必要な特性を考慮して適宜設定される。水性インク組成物における水の含有量は、例えば、50質量%~70質量%である。
本実施の形態における水性インク組成物は、さらに他の成分として、例えば、粘度調整剤、湿潤剤、潤滑剤、pH調整剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤等の慣用の添加剤を含んでいてもよい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
粘度調整剤は、水性インク組成物の粘度を適宜調整するために配合される。粘度調整剤としては、例えば、天然水溶性高分子多糖類や合成高分子等が挙げられる。天然水溶性高分子多糖類としては、例えばボールペンのインクとして水性インク組成物を用いた際に、ボールの回転により水性インク組成物の粘度が低下するものが好ましい。天然水溶性高分子多糖類としては、例えば、ラムザンガム、キサンタンガム、ウェランガム、ジェランガム、プルラン、ザンサンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、ペクチン等が挙げられる。中でも、キサンタンガムを好適に用いることができる。合成高分子としては、例えば、架橋型アクリル樹脂、アルカリ膨潤会合型増粘剤、ノニオン会合型増粘剤等が挙げられ、中でも架橋型アクリル樹脂を好適に用いることができる。粘度調整剤の含有量は、好ましくは0.01質量%~10質量%であり、より好ましくは0.01質量%~5質量%である。
湿潤剤は、水性インク組成物の乾燥を防止するために配合される。湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエスエル類等が挙げられる。中でも、グリセリン、またはジプロピレングリコールモノメチルエーテルを好適に用いることができる。
潤滑剤は、例えば、ボールペンのインクとして水性インク組成物を用いた際のボールペンの滑りを良くするために配合される。潤滑剤としては、例えば、リン酸エステル系化合物等が挙げられる。
pH調整剤は、水性インク組成物のpHの値を調整し、水性インク組成物のゲル化を防止するために配合される。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、炭酸ナトリウム等が挙げられる。中でも、水酸化ナトリウムを好適に用いることができる。
分散剤は、水性インク組成物における無機黒色顔料の分散性を向上させるために配合される。分散剤としては、例えば、スチレンアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
防カビ剤や防腐剤は、腐敗や、カビの発生を抑制するために配合される。防カビ剤や防腐剤としては、例えば、クロロアセトアミド、2-ピリジンチオール-1-オキサイド・ナトリウム塩、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメイト、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3(2H)-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンチアベンダゾール、フェノキシエタノール、フッ化ナトリウム、4-(2-ニトロブチル)モルホリン、1,3-ジモルホリノ-2-エチル-2-ニトリプロパン等が挙げられる。
実施例1に係る水性インク組成物の製造に際し、以下の材料を準備した。具体的には、無機黒色顔料としてカーボンブラック(商品名「三菱カーボンブラック♯25」、三菱ケミカル株式会社製)、水溶性黒色染料としてジスアゾ染料(商品名「Water Black 256-L」、オリエント化学工業製)、樹脂エマルションとしてアクリル酸エステル共重合体水性エマルション(商品名「モビニール790」、日本合成化学工業製、ガラス転位温度100℃)、粘度調整剤(1)としてキサンタンガム、粘度調整剤(2)としてカルボキシビニルポリマー(商品名「カーボポール934」、Lubrizol Advanced Materials社製)、湿潤剤として精製グリセリンおよびジプロピレングリコールメチルエーテルからなる混合溶液(グリセリンの混合割合50質量%、ジプロピレングリコールメチルエーテルの混合割合50質量%)、潤滑剤としてリン酸エステル系化合物(商品名「フォスファノールPE-510」、東邦化学工業株式会社製)
、分散剤としてアクリル酸系樹脂(商品名「ジョンクリル683」、BASF社製)、pH調整剤として水酸化ナトリウム、防腐剤としてベンゾイソチアゾール系化合物(商品名「プロクセルXL-2」、Lonza社製)、防カビ剤として有機ヨウ素化合物(商品名「コートサイドPH2」、大阪ガスケミカル社製)を準備した。まず、黒色顔料をビーズミルによって水に分散させて、顔料ベースを作製した。作製した顔料ベース、黒色染料、樹脂エマルションおよびその他の成分を表1に示す割合に従って配合し、攪拌機にてよく混ぜ合わせた。そして、メッシュによって濾過し、脱泡することで実施例1の水性インク組成物を作製した。
樹脂エマルションの含有割合を表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る水性インク組成物を作製した。
樹脂エマルションの含有割合を表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る水性インク組成物を作製した。
樹脂エマルションの含有割合を表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る水性インク組成物を作製した。
樹脂エマルションの含有割合を表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る水性インク組成物を作製した。
水溶性黒色染料の含有割合を表2に示す配合割合とした以外は、実施例2と同様にして実施例6に係る水性インク組成物を作製した。
水溶性黒色染料の含有割合を表2に示す配合割合とした以外は、実施例2と同様にして実施例7に係る水性インク組成物を作製した。
水溶性黒色染料の含有割合を表2に示す配合割合とした以外は、実施例3と同様にして実施例8に係る水性インク組成物を作製した。
無機黒色顔料の含有割合を表2に示す配合割合とした以外は、実施例7と同様にして実施例9に係る水性インク組成物を作製した。
無機黒色顔料の含有割合を表2に示す配合割合とした以外は、実施例7と同様にして実施例10に係る水性インク組成物を作製した。
水溶性黒色染料および樹脂エマルションを除いた以外は実施例1と同様にして、表3に示す配合に従って比較例1に係る水性インク組成物を作製した。
水溶性黒色染料を添加し、水溶性黒色染料の含有割合を表3に示す配合割合とした以外は、比較例1と同様にして比較例2に係る水性インク組成物を作製した。
水溶性黒色染料の含有割合を表3に示す配合割合とした以外は、比較例2と同様にして比較例3に係る水性インク組成物を作製した。
水溶性黒色染料の含有割合を表3に示す配合割合とした以外は、比較例2と同様にして比較例4に係る水性インク組成物を作製した。
樹脂エマルションを添加し、樹脂エマルションの含有割合を表3に示す配合割合とした以外は、比較例1と同様にして比較例5に係る水性インク組成物を作製した。
実施例、比較例で得られた水性インク組成物を用い、バーコータ―によって白色用紙に厚み約20μm程度の塗膜サンプルを作製し、下記方法により黒色度を測定した。塗膜サンプルについて、測色計(商品名「蛍光分光濃度計FD-5」、コニカミノルタジャパン株式会社製)でY値を測定し、以下の算出式により黒色度Myを算出した。なお、黒色度Myは、塗膜の色相に影響されない黒さの度合いを示す数値である。黒色度Myが145よりも大きい値である場合には、良好な発色性であると判断した。
[My]=100×Log(100/[Y])
実施例、比較例で得られた水性インク組成物を市販のボールペンのインクとして充填し、ボールペンサンプルを作製した。それぞれのボールペンサンプルについて、白紙の用紙(紀州上質紙 坪量64g/m2)に100m程度筆記して、その筆跡を目視にて確認した。そして、カスレの発生の有無を確認した。なお、カスレの発生が無い場合には「A」、カスレが発生した場合には「B」として評価した。
Claims (9)
- 無機黒色顔料と、
水溶性黒色染料と、
樹脂エマルションと、
水と、を備え、
前記無機黒色顔料の含有量は、2.5質量%以上9質量%以下であり、
前記水溶性黒色染料の含有量は、0.1質量%以上であり、
前記樹脂エマルションの含有量は、1質量%以上である、ボールペン用水性インク組成物。 - 粘度が500mPa・s~10000mPa・sである、請求項1に記載のボールペン用水性インク組成物。
- 前記水溶性黒色染料の含有量は、3質量%以下である、請求項1または2に記載のボールペン用水性インク組成物。
- 前記樹脂エマルションの含有量は、8質量%以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のボールペン用水性インク組成物。
- 前記水溶性黒色染料は、酸性染料である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のボールペン用水性インク組成物。
- 前記樹脂エマルションのガラス転移温度が、80℃以上である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のボールペン用水性インク組成物。
- 前記樹脂エマルションの構成樹脂は、アクリル酸エステル共重合体である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のボールペン用水性インク組成物。
- 前記無機黒色顔料は、カーボンブラックであり、
前記カーボンブラックの平均粒子径は、10μm以下である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のボールペン用水性インク組成物。 - 請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のボールペン用水性インク組成物が収容されたインク収容管を備える、ボールペン。
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