本発明の一形態では、偏光フィルム、導電層及び粘着剤層がこの順番で積層されている。
本発明の一形態では、導電層による全光線透過率の損失が0.5%以下である。
本発明の一形態では、導電層による全光線透過率の損失が0.4%以下である。
本発明の一形態では、導電層の表面抵抗率が5.0×105Ω/□以下である。
本発明の一形態では、導電層の表面抵抗率が1.0×104Ω/□以下である。
本発明の一形態では、導電層の表面抵抗率が5.0×102Ω/□より大きい。
本発明の一形態では、(i)導電層による全光線透過率の損失が0.5%以下であり、かつ、導電層の表面抵抗率が1.0×106Ω/□以下である、及び、(ii)導電層による全光線透過率の損失が0.9%以下であり、かつ、導電層の表面抵抗率が1.0×104Ω/□以下である、の少なくとも1つが成立する。
本発明の一形態では、粘着剤層が導電材料を含む。
本発明の一形態では、粘着剤層付き偏光フィルムは、反射防止膜をさらに備え、反射防止膜、偏光フィルム及び粘着剤層が積層方向にこの順で並んでいる。
本発明の一形態では、反射防止膜を備えた粘着剤層付き偏光フィルムは、粘着剤層が無アルカリガラスと直接接するように無アルカリガラスと積層された状態で、CIE標準光源D65からの光が粘着剤層とは反対側の表面から入射したときに、視感反射率Yが1.1%以下である反射光を生じる。
本発明の一形態では、上記の反射光のL*a*b*表色系におけるa*値及びb*値が下記関係式(1)及び(2)を満たす。
-10≦a*≦10 (1)
-18≦b*≦5 (2)
本発明の一形態では、反射防止膜は、第1の高屈折率層、第1の低屈折率層、第2の高屈折率層及び第2の低屈折率層を積層方向にこの順で有する。
本発明の一形態では、第1の高屈折率層の光学膜厚が20nm~35nmであり、第1の低屈折率層の光学膜厚が38nm~50nmであり、第2の高屈折率層の光学膜厚が230nm~290nmであり、第2の低屈折率層の光学膜厚が100nm~128nmである。
さらに、本発明は、
粘着剤層付き偏光フィルムと、
液晶セルと、
を備え、
粘着剤層付き偏光フィルムと液晶セルとの間には導電層が設けられていない、液晶パネルを提供する。
以下、本発明の詳細を説明するが、以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
(粘着剤層付き偏光フィルムの実施形態)
図1に示すように、本実施形態の粘着剤層付き偏光フィルム10は、偏光フィルム1、導電層2及び粘着剤層3を備える。偏光フィルム1、導電層2及び粘着剤層3は、例えば、この順番で積層されており、導電層2が偏光フィルム1及び粘着剤層3のそれぞれに接している。導電層2が偏光フィルム1と粘着剤層3との間に配置されている場合、導電層2の劣化が抑制される傾向がある。ただし、導電層2は、偏光フィルム1と粘着剤層3との間以外に配置されていてもよく、例えば、偏光フィルム1が導電層2と粘着剤層3との間に配置されていてもよい。粘着剤層3の表面は、例えば、粘着剤層付き偏光フィルム10の外部に露出している。
粘着剤層付き偏光フィルム10において、導電層2による全光線透過率の損失Aは、0.9%以下である。本発明者らの検討によれば、損失Aがこの程度に抑制されている場合、液晶表示装置の視認性の悪化を十分に抑制することができる。損失Aは、次の方法によって特定することができる。まず、偏光フィルム1の全光線透過率T1と、偏光フィルム1及び導電層2からなる積層体Lの全光線透過率T2とを測定する。本明細書において、「全光線透過率」は、波長380nm~700nmの範囲の光の透過率を意味する。全光線透過率は、JIS K7361-1:1997の規定に準拠して測定することができる。全光線透過率の測定には、D65光源を使用する。積層体Lの全光線透過率T2は、偏光フィルム1側から光を入射させた場合の値である。全光線透過率T1と全光線透過率T2との差(T1-T2)を損失Aとして特定することができる。
全光線透過率T1及びT2を測定するにあたって、偏光フィルム1の表面には、損失Aの値に影響を及ぼさない層(例えば、ハードコート層)が配置されていてもよい。例えば、損失Aは、ハードコート層H及び偏光フィルム1からなる積層体L1の全光線透過率T3と、ハードコート層H、偏光フィルム1及び導電層2からなる積層体L2の全光線透過率T4との差(T3-T4)として特定されてもよい。積層体L2において、ハードコート層H、偏光フィルム1及び導電層2は、この順番で積層されている。積層体L1の全光線透過率T3及び積層体L2の全光線透過率T4は、いずれもハードコート層H側から光を入射させた場合の値である。
上記の損失Aは、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.6%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.4%以下であり、とりわけ好ましくは0.2%未満である。損失Aの下限値は、特に限定されず、例えば0.01%である。
粘着剤層付き偏光フィルム10において、導電層2の表面抵抗率は、1.0×106Ω/□以下である。この程度に低い表面抵抗率を有する導電層2は、静電気が生じやすい環境下であっても、粘着剤層付き偏光フィルム10を備える液晶表示装置の帯電による表示不良を防止することができる。導電層2の表面抵抗率は、次の方法によって特定することができる。まず、導電層2の表面が外部に露出している積層体を準備する。このような積層体としては、例えば、偏光フィルム1及び導電層2からなる積層体L、並びに、ハードコート層H、偏光フィルム1及び導電層2からなる積層体L2が挙げられる。次に、準備した積層体における導電層2の表面について、表面抵抗率を測定する。表面抵抗率の測定は、JIS K7194:1994又はJIS K6911:1995に規定された方法に準拠して行うことができる。一例として、導電層2の表面抵抗率が1.0×105Ω/□未満である場合、導電層2の表面抵抗率は、ロレスタ-GP MCP-T600(三菱ケミカルアナリテック社製)を用いて、JIS K7194:1994に規定された方法に準拠して測定することができる。導電層2の表面抵抗率が1.0×105Ω/□以上である場合、導電層2の表面抵抗率は、ハイレスタ-UP MCP-HT450(三菱ケミカルアナリテック社製)を用いて、JIS K6911:1995に規定された方法に準拠して測定することができる。上記の測定によって得られた測定値を粘着剤層付き偏光フィルム10における導電層2の表面抵抗率とみなすことができる。
導電層2の表面抵抗率は、好ましくは5.0×105Ω/□以下であり、より好ましくは1.0×105Ω/□以下であり、さらに好ましくは1.0×104Ω/□以下であり、特に好ましくは1.0×103Ω/□以下である。導電層2の表面抵抗率の下限値は、特に限定されず、例えば1.0×102Ω/□である。タッチセンサ又はタッチパネルを備える液晶表示装置に粘着剤層付き偏光フィルム10を用いる場合、液晶表示装置に設けられるタッチセンサ又はタッチパネルの感度を十分に確保する観点から、導電層2の表面抵抗率は、5.0×102Ω/□より大きくてもよい。
粘着剤層付き偏光フィルム10では、上記の損失Aが0.5%より大きい場合に、導電層2の表面抵抗率が特に低い値であってもよい。一例として、粘着剤層付き偏光フィルム10において、(i)上記の損失Aが0.5%以下であり、かつ、導電層2の表面抵抗率が1.0×106Ω/□以下である、及び、(ii)上記の損失Aが0.9%以下であり、かつ、導電層2の表面抵抗率が1.0×104Ω/□以下である、の少なくとも1つが成立していてもよい。
[偏光フィルム]
偏光フィルム1は、偏光子及び透明保護フィルムを含む積層体である。透明保護フィルムは、例えば、層状の偏光子の主面(最も広い面積を有する表面)に接して配置されている。偏光子は、2つの透明保護フィルムの間に配置されていてもよい。偏光子としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素、二色性染料などの二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの;ポリビニルアルコールの脱水処理物、ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルム、及び、ヨウ素等の二色性物質からなることが好ましい。
偏光子の厚さは、特に限定されず、例えば80μm以下である。偏光子の厚さは、10μm以下、好ましくは1~7μmであってもよい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性に優れている。薄型の偏光子は、寸法変化が抑制されており、耐久性に優れる。薄型の偏光子によれば、偏光フィルム1を薄型化できる。
透明保護フィルムの材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及び、これらの混合物が挙げられる。透明保護フィルムの材料は、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂であってもよい。偏光フィルム1が2つの透明保護フィルムを有する場合、2つの透明保護フィルムの材料は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、偏光子の一方の主面に対して、接着剤を介して、熱可塑性樹脂で構成された透明保護フィルムが貼り合わされ、偏光子の他方の主面に対して、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂で構成された透明保護フィルムが貼り合わされていてもよい。透明保護フィルムは、任意の添加剤を1種類以上含んでいてもよい。
透明保護フィルムは、防眩特性、反射防止特性などの光学特性を有していてもよい。透明保護フィルムは、位相差膜として機能するフィルムであってもよい。本明細書において、位相差膜は、面内方向又は厚み方向に複屈折を有する膜を意味する。位相差膜として機能するフィルムとしては、例えば、高分子フィルムを延伸させたもの、液晶材料を配向させ、固定化させたものなどが挙げられる。
偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせるための接着剤は、光学的に透明であれば特に限定されず、例えば、水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型、カチオン硬化型などの接着剤、好ましくは水系接着剤及びラジカル硬化型接着剤、が挙げられる。
偏光フィルム1の厚さは、例えば、10μm~500μmである。偏光フィルム1の全光線透過率は、特に限定されず、例えば30%~50%である。
偏光フィルム1に対してCIE標準光源D65からの光が入射したときの透過光のハンターLab表色系におけるa値は、-6.0~0が好ましく、-3.0~-0.5がより好ましく、-1.8~-1.2が特に好ましい。上記の透過光のハンターLab表色系におけるb値は、1.0~10が好ましく、1.5~5.0がより好ましく、2.2~4.0が特に好ましい。透過光のハンターLab表色系におけるa値及びb値は、次の方法によって特定できる。まず、分光光度計の積分球を用いて、偏光フィルム1におけるCIE標準光源D65からの光の透過率を測定する。得られた透過率について、JIS Z8701:1999に規定された2度視野XYZ系により視感度補正(780~380nm:5nm毎)を行うことによって、透過光のハンターLab表色系におけるa値及びb値を特定することができる。
[導電層]
導電層2は、表面抵抗率が1.0×106Ω/□以下であり、上記の損失Aが0.9%以下に調節される限り、特に限定されない。導電層2は、導電材料を含む層である。導電材料は、ITO以外の材料であってもよく、例えば、導電性ポリマー、導電性ポリマーとドーパントとの複合体、イオン性界面活性剤、導電性微粒子、イオン性化合物等である。導電層2は、透明性、全光線透過率、外観、帯電防止効果、及び、高温又は多湿環境下での帯電防止効果の安定性の観点から、導電性ポリマーを含むことが好ましい。導電層2が導電材料として導電性ポリマーを含む場合、導電性微粒子を含む場合に比べて、導電層2の厚さを比較的大きく調整してもヘイズが発生しにくい。そのため、導電層2が液晶セルと偏光子との間に配置されている場合であっても、導電性ポリマーを含む導電層2は、偏光解消を生じさせにくく、液晶表示装置が表示する画像のコントラストを低下させにくい。導電層2が導電材料として導電性ポリマーを含む場合、導電性微粒子を含む場合に比べて、導電層2の屈折率が低い傾向がある。そのため、導電性ポリマーを含む導電層2は、液晶パネルの光の反射率を低下させることに適している。
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリキノキサリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン及びこれらの誘導体が挙げられる。導電材料は、これらの導電性ポリマーを1種又は2種以上含んでいてもよい。導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリアニリン及びこれらの誘導体が好ましく、ポリチオフェン誘導体が特に好ましい。ポリチオフェン、ポリアニリン及びこれらの誘導体は、例えば、水溶性又は水分散性を有する導電性ポリマーとして機能する。導電性ポリマーが水溶性又は水分散性を有する場合、導電性ポリマーの水溶液又は水分散液を用いて導電層2を作製することができる。この場合、導電層2の作製に非水系の有機溶剤を用いる必要がないため、有機溶剤による偏光フィルム1などの変質を抑制できる。
導電性ポリマーは、親水性官能基を有していてもよい。親水性官能基としては、例えばスルホン基、アミノ基、アミド基、イミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、硫酸エステル基、リン酸エステル基及びこれらの塩(例えば、4級アンモニウム塩基)が挙げられる。導電性ポリマーが親水性官能基を有する場合、導電性ポリマーが水に溶けやすい、又は、微粒子状の導電性ポリマーが水に分散しやすい傾向がある。
導電性及び化学的安定性の観点から、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-二置換チオフェン)であることが好ましい。ポリ(3,4-二置換チオフェン)としては、例えばポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)及びポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)が挙げられ、好ましくはポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)である。ポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)は、例えば、以下の式(I)で表される構造単位を有する。
式(I)において、R1は、例えば、炭素数1~4のアルキレン基である。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1-エチル-1,2-エチレン基、1-メチル-1,3-プロピレン基及び2-メチル-1,3-プロピレン基が挙げられ、好ましくはメチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基であり、より好ましくは1,2-エチレン基である。導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)であることが好ましい。
ドーパントとしては、例えば、ポリアニオンが挙げられる。導電性ポリマーがポリチオフェン(又はその誘導体)である場合、ポリアニオンは、ポリチオフェン(又はその誘導体)とイオン対を形成し、ポリチオフェン(又はその誘導体)を水中に安定に分散させることができる。ポリアニオンとしては、特に限定されず、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等のカルボン酸ポリマー類;ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホン酸ポリマー類等が挙げられる。ポリアニオンは、ビニルカルボン酸類又はビニルスルホン酸類と、他のモノマー類との共重合体であってもよい。他のモノマー類としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物;スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。ポリアニオンは、ポリスチレンスルホン酸(PSS)であることが特に好ましい。導電性ポリマーとドーパントとの複合体としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体(PEDOT/PSS)が挙げられる。
イオン性界面活性剤としては、例えば、4級アンモニウム塩型、ホスホニウム塩型、スルホニウム塩型等のカチオン系界面活性剤;カルボン酸型、スルホネート型、サルフェート型、ホスフェート型、ホスファイト型等のアニオン系界面活性剤;スルホベタイン型、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリウムベタイン型等の両性イオン系界面活性剤;多価アルコール誘導体、β-シクロデキストリン包接化合物、ソルビタン脂肪酸モノエステル、ソルビタン脂肪酸ジエステル、ポリアルキレンオキシド誘導体、アミンオキシド等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。
導電性微粒子としては、例えば、酸化スズ系、酸化アンチモン系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系等の金属酸化物微粒子が挙げられ、酸化スズ系微粒子が好ましい。酸化スズ系微粒子の材料としては、例えば、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化スズ、タングステンドープ酸化スズ、酸化チタン-酸化セリウム-酸化スズの複合体、酸化チタン-酸化スズの複合体等が挙げられる。導電性微粒子の平均粒径は、例えば1~100nmであり、好ましくは2~50nmである。導電性微粒子の平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度計などによって測定される粒度分布において、体積累積50%に相当する粒径(d50)を意味する。
イオン性化合物としては、例えば、アルカリ金属塩及び/又は有機カチオン-アニオン塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、アルカリ金属の有機塩及び無機塩が挙げられる。本明細書において、有機カチオン-アニオン塩は、有機カチオンを含む有機塩を意味する。有機カチオン-アニオン塩に含まれるアニオンは、有機アニオンであってもよく、無機アニオンであってもよい。有機カチオン-アニオン塩は、イオン性液体又はイオン性固体と呼ばれることがある。
アルカリ金属塩に含まれるアルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンが挙げられ、リチウムイオンが好ましい。
アルカリ金属の有機塩に含まれるアニオンとしては、例えば、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、C4F9SO3
-、C3F7COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、-O3S(CF2)3SO3
-、(CN)2N-及び下記一般式(a)~(d)で表されるアニオンが挙げられる。
(a) (CnF2n+1SO2)2N- (ただし、nは1~10の整数)
(b) CF2(CmF2mSO2)2N- (ただし、mは1~10の整数)
(c) -O3S(CF2)lSO3
- (ただし、lは1~10の整数)
(d) (CpF2p+1SO2)N-(CqF2q+1SO2) (ただし、p及びqは、互いに独立して1~10の整数)
アルカリ金属の有機塩に含まれるアニオンは、フッ素原子を含むことが好ましい。フッ素原子を含むアニオンによれば、アルカリ金属の有機塩は、イオン解離性に優れたイオン化合物として機能する。
アルカリ金属の無機塩に含まれるアニオンとしては、例えば、Cl-、Br-、I-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、NO3
-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、(FSO2)2N-、CO3
2-等が挙げられる。
アルカリ金属塩に含まれるアニオンとしては、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-等の上記の一般式(1)で表わされる(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドが好ましく、特に(CF3SO2)2N-で表わされる(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
アルカリ金属の有機塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、KO3S(CF2)3SO3K、LiO3S(CF2)3SO3K等が挙げられ、好ましくはLiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2N、Li(CF3SO2)3Cであり、より好ましくはLi(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2Nである。アルカリ金属の有機塩は、フッ素含有リチウムイミド塩であることが好ましく、(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドリチウム塩であることが特に好ましい。
アルカリ金属の無機塩としては、例えば、過塩素酸リチウム及びヨウ化リチウムが挙げられる。
有機カチオン-アニオン塩に含まれる有機カチオンとしては、例えば、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
有機カチオン-アニオン塩に含まれるアニオンとしては、例えば、Cl-、Br-、I-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、NO3
-、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、(CN)2N-、C4F9SO3
-、C3F7COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、(FSO2)2N-、-O3S(CF2)3SO3
-及び上述した一般式(a)~(d)で表されるアニオンが挙げられる。有機カチオン-アニオン塩に含まれるアニオンは、フッ素原子を含むことが好ましい。フッ素原子を含むアニオンによれば、有機カチオン-アニオン塩は、イオン解離性に優れたイオン化合物として機能する。
イオン性化合物としては、上述したアルカリ金属塩及び有機カチオン-アニオン塩に限定されず、例えば、塩化アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム等の無機塩も挙げられる。導電材料は、上述したイオン性化合物を1種又は2種以上含んでいてもよい。
導電材料としては、上述した材料に限定されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然グラファイト、人造グラファイトなどの炭素材料;チタンブラック;4級アンモニウム塩等のカチオン型導電性基、ベタイン化合物等の両性イオン型導電性基、スルホン酸塩等のアニオン型導電性基若しくはグリセリン等のノニオン型導電性基を有する単量体の単独重合体、又は、当該単量体と他の単量体との共重合体(例えば、4級アンモニウム塩基を有するアクリレート又はメタクリレート由来の構造単位を有する重合体等のイオン導電性を有する重合体);エチレン及びメタクリレートの共重合体等の親水性ポリマーをアクリル系樹脂等にアロイ化させたもの(永久帯電防止剤)も挙げられる。
導電層2は、導電材料以外に、バインダーなどの他の材料をさらに含んでいてもよい。バインダーは、例えば、導電材料の皮膜形成性を向上させるとともに、偏光フィルム1に対する導電層2の密着性及び接着性(投錨力)を向上させる傾向がある。バインダーとしては、例えば、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等が挙げられ、好ましくはオキサゾリン基含有ポリマー、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂であり、特に好ましくはポリウレタン系樹脂である。導電層2は、これらのバインダーを1種又は2種以上含んでいてもよい。導電層2におけるバインダーの含有率は、例えば、1wt%~90wt%であり、好ましくは10wt%~80wt%である。
導電層2の厚さは、例えば、5nm~180nmであり、好ましくは150nmであり、より好ましくは120nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下であり、特に好ましくは80nm以下であり、とりわけ好ましくは50nm以下である。導電層2の厚さは、10nm以上であってもよく、20nm以上であってもよい。
導電層2と偏光フィルム1との投錨力は、例えば、10.0N/25mm以上であり、好ましくは12.0N/25mm以上であり、より好ましくは14.0N/25mm以上であり、さらに好ましくは18.0N/25mm以上である。上記の投錨力は、次の方法によって測定することができる。まず、評価対象である粘着剤層付き偏光フィルム10を幅25mm×長さ150mmに切り出して試験片とする。次に、両面テープを介して、試験片が備える偏光フィルム1の表面全体をステンレス製試験板に重ね合わせ、2kgのローラを1往復させて、これらを圧着させる。次に、試験片が備える粘着剤層3を評価用シートに重ね合わせ、2kgのローラを1往復させて、これらを圧着させる。評価用シートは、幅30mm×長さ150mmのサイズを有し、試験中に粘着剤層3から剥離しないものである限り特に限定されない。評価用シートとしては、例えば、ITOフィルム(125テトライトOES(尾池工業社製)など)を用いることができる。次に、市販の引張試験機を用いて、評価用シートを把持した状態で、剥離角度180°、引張速度300mm/minで粘着剤層3及び導電層2を偏光フィルム1から引き剥がした際の剥離力の平均値を導電層2と偏光フィルム1との投錨力として特定する。なお、上記の試験は、23℃の雰囲気下で行う。
導電層2の表面抵抗率及び上記の損失Aは、導電層2に含まれる導電材料の組成だけでなく、導電層2における導電材料の含有率、導電層2の厚さなどに応じて変化する。特許文献1及び2は、導電層の表面抵抗率を1.0×106Ω/□以下に維持しつつ、損失Aを0.9%以下に調整することについて記載も示唆もしていない。例えば、特許文献1には、透明保護フィルム上に導電層を形成するためのコーティング組成物を塗布した状態での全光線透過率の測定値が、いずれも98.5%程度以下であることが開示されている(実施例1-53)。この結果から、特許文献1の構成では、損失Aを1.5%よりも小さい値に調整することは難しいと予想される。
[粘着剤層]
粘着剤層3は、粘着剤を含む層である。粘着剤層3に含まれる粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。粘着剤層3に含まれる粘着剤としては、光学的透明性に優れ、適切な濡れ性、凝集性、接着性などの粘着特性を有し、耐候性、耐熱性等に優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分として含有する。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。「主成分」は、ポリマーに重量基準で最も多く含まれる構造単位を意味する。
(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を形成するための(メタ)アクリル酸エステルに含まれるエステル部分((メタ)アクリル酸基以外の部分)の炭素数は、特に限定されず、例えば1~18である。(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分は、フェニル基、フェノキシ基などの芳香族環を含んでいてもよく、アルキル基を含んでいてもよい。このアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を1種又は2種以上含んでいてもよい。(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位に含まれるエステル部分の炭素数の平均値は、3~9であることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着特性、耐久性、位相差の調整、屈折率の調整等の観点から、芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有することが好ましい。芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルにより粘着剤層3の位相差を調整することで、偏光フィルム1が熱収縮し、粘着剤層3が延伸されることによって生じる液晶表示装置の光漏れを抑制することができる。さらに、この(メタ)アクリル酸エステルは、粘着剤層3の屈折率を調整し、粘着剤層3と被着体(例えば、液晶セル)との屈折率の差を低減させることに適している。屈折率の差が低減すれば、粘着剤層3と被着体との界面での光の反射が抑制され、ディスプレイの視認性を向上させることができる。
芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、スチリル(メタ)アクリレートなどのベンゼン環を含む(メタ)アクリル酸エステル;ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのナフタレン環を含む(メタ)アクリル酸エステル;ビフェニル(メタ)アクリレートなどのビフェニル環を含む(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、粘着剤層3の粘着特性や耐久性を向上させる観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルにより粘着剤層3の屈折率を調整する場合、(メタ)アクリル系ポリマーの全構成単位における芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有率は、3重量%~25重量%であることが好ましい。この含有率は、22重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。この含有率は、8重量%以上がより好ましく、12重量%以上がさらに好ましい。芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有率が25重量%以下であれば、偏光フィルム1の収縮による液晶表示装置の光漏れを抑制できるとともに、粘着剤層3のリワーク性を向上できる傾向がある。この含有率が3重量%以上であれば、液晶表示装置の光漏れを十分に抑制できる傾向がある。
(メタ)アクリル系ポリマーは、接着性及び耐熱性を向上させる観点から、上述した芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位以外に、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を含む重合性官能基を有する共重合モノマーに由来する構造単位を1種類以上有していてもよい。この共重合モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー等が挙げられる。
上記の共重合モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;N-アクリロイルモルホリン等のモルホリン系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー等も挙げられる。
上記の共重合モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、2-メトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー等も挙げられる。さらに、共重合モノマーとしては、例えば、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィンモノマー;ビニルエーテル等のエーテル基含有ビニルモノマーも挙げられる。
上記の共重合モノマーとしては、例えば、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4-ビニルブチルトリメトキシシラン、4-ビニルブチルトリエトキシシラン、8-ビニルオクチルトリメトキシシラン、8-ビニルオクチルトリエトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン等のシラン系モノマーも挙げられる。
上記の共重合モノマーとしては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物((メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマー);ポリエステル、エポキシ、ウレタン等の骨格に(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を有する化合物が2個以上付加した化合物(例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレート)等を用いることもできる。
(メタ)アクリル系ポリマーにおける上述した共重合モノマーに由来する構造単位の含有率は、特に限定されず、例えば0wt%~20wt%であり、好ましくは0.1wt%~15wt%であり、より好ましくは0.1wt%~10wt%である。
共重合モノマーとしては、接着性及び耐久性の観点から、ヒドロキシル基含有モノマー及びカルボキシル基含有モノマーが好ましい。共重合モノマーとして、ヒドロキシル基含有モノマー及びカルボキシル基含有モノマーを併用してもよい。共重合モノマーは、例えば、粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物が架橋剤を含む場合に、架橋剤との反応点として機能する。ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー等は、分子間架橋剤との反応性に優れているため、得られる粘着剤層3の凝集性及び耐熱性を向上させることに適している。特に、ヒドロキシル基含有モノマーは、粘着剤層3のリワーク性を向上させることに適している。カルボキシル基含有モノマーは、粘着剤層3の耐久性とリワーク性とを両立させることに適している。
共重合モノマーとしてヒドロキシル基含有モノマーを用いる場合、(メタ)アクリル系ポリマーにおけるヒドロキシル基含有モノマーに由来する構造単位の含有率は、0.01wt%~15wt%であることが好ましく、0.03wt%~10wt%であることがより好ましく、0.05wt%~7wt%であることがさらに好ましい。共重合モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを用いる場合、(メタ)アクリル系ポリマーにおけるカルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位の含有率は、0.05wt%~10wt%であることが好ましく、0.1wt%~8wt%であることがより好ましく、0.2wt%~6wt%であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば50万~300万であり、耐久性、特に耐熱性の観点から、好ましくは70万~270万であり、より好ましくは80万~250万である。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が50万以上である場合、粘着剤層3は、実用上十分な耐熱性を有する傾向がある。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が300万以下である場合、粘着剤層3を作製するための塗工液の粘度を容易に調節できる傾向がある。塗工液の粘度を容易に調節できれば、塗工液に多量の希釈溶剤を添加する必要がないため、粘着剤層3の製造コストを抑えることができる。本明細書において、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)による測定結果をポリスチレン換算した値をいう。
(メタ)アクリル系ポリマーは、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合等の公知の重合反応によって作製できる。(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
粘着剤層3に含まれる粘着剤は、ベースポリマーが架橋剤によって架橋された構造を有していてもよい。例えば、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを用いる場合には、架橋剤として、有機系架橋剤又は多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤等が挙げられる。多官能性金属キレートとは、多価金属が有機化合物と共有結合又は配位結合しているものを意味する。多価金属を構成する原子としては、例えば、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。多官能性金属キレートに含まれる有機化合物は、例えば酸素原子等を含む。この有機化合物としては、例えば、アルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
粘着剤において、架橋剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、3重量部以下が好ましく、0.01~3重量部がより好ましく、0.02~2重量部がさらに好ましく、0.03~1重量部が特に好ましい。
粘着剤層3は、粘着剤以外の他の材料をさらに含んでいてもよい。他の材料としては、例えば、導電材料、シランカップリング剤及びその他の添加剤が挙げられる。導電材料は、粘着剤層3の表面抵抗率を低下させ、液晶表示装置の帯電による表示不良を防止することに適している。導電材料としては、導電層2で上述したものが挙げられる。粘着剤層3に含まれる導電材料は、ベースポリマーとの相溶性及び粘着剤層3の透明性の観点から、イオン性化合物であることが好ましい。特に、粘着剤層3が(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤を含む場合、導電材料としてイオン性化合物を用いることが好ましい。イオン性化合物は、帯電防止性能の観点からイオン性液体であることが好ましい。
粘着剤層3は、粘着剤のベースポリマー(例えば、(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対して、導電材料(例えば、イオン性化合物)を0.05~20重量部含むことが好ましい。粘着剤層3が導電材料を0.05重量部以上含むことによって、粘着剤層3の表面抵抗率が十分に低下し、粘着剤層3の帯電防止性能が十分に向上する傾向がある。粘着剤層3は、粘着剤のベースポリマー100重量部に対して、導電材料を0.1重量部以上含むことが好ましく、0.5重量部以上含むことがより好ましい。粘着剤層3に実用上十分な耐久性を付与する観点から、粘着剤層3は、粘着剤のベースポリマー100重量部に対して、導電材料を20重量部以下含むことが好ましく、10重量部以下含むことがより好ましい。
その他の添加剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリプロピレングリコール)等のポリエーテル化合物、着色剤、顔料、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉等を使用する用途に応じて適宜用いることができる。添加剤は、粉体であってもよく、粒子状であってもよく、箔状であってもよい。添加剤として、制御可能な範囲内で還元剤を用いることによってレドックス系を構成してもよい。粘着剤層3に着色剤などの色素を添加することによって、粘着剤層付き偏光フィルム10からの反射光の色相を調節できることがある。粘着剤層3は、粘着剤のベースポリマー(例えば、(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対して、その他の添加剤を5重量部以下含むことが好ましく、3重量部以下含むことがより好ましく、1重量部以下含むことがさらに好ましい。
粘着剤層3の厚さは、特に限定されず、例えば5~100μmであり、好ましくは10~50μmである。
粘着剤層付き偏光フィルム10において、粘着剤層3の表面抵抗率は、特に限定されないが、1.0×1014Ω/□未満であってもよく、1.0×1012Ω/□以下であることが好ましい。粘着剤層3の表面抵抗率の下限値は、特に限定されないが、耐久性の観点から、例えば1.0×108Ω/□である。粘着剤層3の表面抵抗率は、導電層2と同じ方法によって測定できる。
[他の層]
粘着剤層付き偏光フィルム10は、偏光フィルム1、導電層2及び粘着剤層3以外の他の層をさらに備えていてもよい。粘着剤層付き偏光フィルム10は、1つ又は2つ以上の他の層を含んでいてもよい。他の層は、例えば、偏光フィルム1よりも視認側に配置され、偏光フィルム1に接している。他の層としては、例えば、表面処理層、表面保護フィルム及び位相差膜が挙げられる。表面処理層としては、例えば、ハードコート層、防眩処理層、反射防止層、スティッキング防止層などが挙げられる。
ハードコート層の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱又は放射線により硬化する材料等を用いることができる。熱又は放射線により硬化する材料としては、例えば、熱硬化型樹脂;紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の放射線硬化型樹脂が挙げられる。紫外線硬化型樹脂によれば、紫外線照射による硬化処理によって、簡単な加工操作で効率良く硬化樹脂層を形成することができる。硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂等が挙げられる。硬化型樹脂は、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系、メラミン系等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等を含む。加工速度が速く、基材への熱のダメージが少ないことから、ハードコート層の材料としては、放射線硬化型樹脂が好ましく、特に紫外線硬化型樹脂が好ましい。紫外線硬化型樹脂は、例えば、紫外線重合性の官能基を有する化合物、特に、当該官能基を2個以上、好ましくは3~6個有するアクリル系のモノマー又はオリゴマーを含むことが好ましい。紫外線硬化型樹脂には、例えば、光重合開始剤が配合されている。
防眩処理層及び反射防止層は、液晶表示装置の視認性を向上させることに適している。表面処理層がハードコート層と、防眩処理層又は反射防止層とを有しており、防眩処理層又は反射防止層がハードコート層よりも視認側に配置されていてもよい。防眩処理層の材料は、特に限定されず、例えば放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。反射防止層の材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。表面処理層は、複数の反射防止層を有していてもよい。
表面処理層は、導電材料を含むことによって導電性を有していてもよい。導電材料としては、導電層2で上述したものが挙げられる。
表面保護フィルムは、上記の表面処理層の上に配置されていてもよく、偏光フィルム1の上に配置されていてもよい。表面保護フィルムは、例えば、支持フィルムと、支持フィルムの少なくとも片面に配置された粘着剤層とを有する。表面保護フィルムの粘着剤層は、軽剥離剤、導電材料等を含んでいてもよい。表面保護フィルムの粘着剤層が導電材料を含む場合、表面保護フィルムを表面処理層に貼り合わせて、その後、表面保護フィルムを剥離することによって、表面処理層に導電材料を含有させ、その表面に導電機能を付与することができる。導電材料としては、導電層2で上述したものが挙げられる。表面保護フィルムの剥離によって表面処理層の表面に導電機能を付与するためには、表面保護フィルムの粘着剤層が導電材料とともに、軽剥離剤を含むことが好ましい。軽剥離剤としては、例えば、ポリオルガノシロキサン等のシリコーン樹脂が挙げられる。表面処理層の表面に付与する導電機能は、導電材料及び軽剥離剤の使用量によって適宜調整できる。
他の層は、部材間の密着性を向上させるための易接着層を含んでいてもよい。他の層が易接着層である場合、当該易接着層は、偏光フィルム1及び導電層2の間に配置されていてもよい。なお、易接着層に代えて、偏光フィルム1の導電層2側の表面に、コロナ処理、プラズマ処理等の易接着処理が施されていてもよい。
[粘着剤層付き偏光フィルムの製造方法]
粘着剤層付き偏光フィルム10は、例えば、次の方法によって作製できる。まず、導電材料の溶液又は分散液を調製する。溶液又は分散液の溶媒は、例えば水であり、水溶性の有機溶媒をさらに含んでいてもよい。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられる。
次に、導電材料の溶液又は分散液を偏光フィルム1の表面に塗布する。得られた塗布膜を乾燥させることによって、偏光フィルム1の上に導電層2が形成される。これにより、偏光フィルム1及び導電層2からなる積層体Lが得られる。
次に、粘着剤を含む溶液を調製する。この溶液をセパレータの表面に塗布することによって塗布膜が得られる。セパレータは、特に限定されず、例えば、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることができる。次に、塗布膜を乾燥させることによって、セパレータの上に粘着剤層3が形成される。得られた粘着剤層3を積層体Lの導電層2の上に転写することによって、粘着剤層付き偏光フィルム10を作製することができる。
(粘着剤層付き偏光フィルムの変形例)
粘着剤層付き偏光フィルム10は、偏光フィルム1、導電層2及び粘着剤層3以外の他の部材をさらに備えていてもよい。図2に示すとおり、本変形例にかかる粘着剤層付き偏光フィルム11は、反射防止膜40をさらに備えている。粘着剤層付き偏光フィルム11において、反射防止膜40、偏光フィルム1及び粘着剤層3は、積層方向にこの順で並んでいる。反射防止膜40は、偏光フィルム1に接していてもよい。反射防止膜40を除き、粘着剤層付き偏光フィルム11の構造は、粘着剤層付き偏光フィルム10の構造と同じである。したがって、粘着剤層付き偏光フィルム10と変形例の粘着剤層付き偏光フィルム11とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。すなわち、以下の各実施形態に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、相互に適用される。以下の各実施形態は、技術的に矛盾しない限り、相互に組み合わされてもよい。
一例として、粘着剤層付き偏光フィルム11は、粘着剤層3が無アルカリガラスと直接接するように無アルカリガラスと積層された状態で、CIE標準光源D65からの光が粘着剤層3とは反対側の表面(典型的には、反射防止膜40の表面)から入射したときに、視感反射率Yが1.1%以下である反射光を生じる。このような反射光を生じる粘着剤層付き偏光フィルム11は、液晶パネルでの光の反射を抑制し、これにより液晶表示装置の視認性を向上することに適している。なお、視感反射率Yは、XYZ表色系(CIE1931)における三刺激値(X、Y及びZ)のY値を意味する。三刺激値は、JIS Z8701:1999に詳細に規定されている。
詳細には、上記の視感反射率Yは、次の方法によって特定することができる。まず、粘着剤層3によって、粘着剤層付き偏光フィルム11を無アルカリガラスに貼り付ける。無アルカリガラスは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)を実質的に含まないガラスであり、詳細には、ガラスにおけるアルカリ成分の重量比率が、例えば1000ppm以下であり、さらには500ppm以下である。無アルカリガラスは、例えば板状であり、0.5mm以上の厚さを有する。次に、粘着剤層付き偏光フィルム11と貼り合わされた表面とは反対側の無アルカリガラスの表面に黒色フィルムを貼り付ける。次に、反射防止膜40側の粘着剤層付き偏光フィルム11の表面に、5°の入射角でCIE標準光源D65からの光を入射させる。このときに生じた正反射光について、波長360nm~740nmの範囲における分光反射率を特定し、当該分光反射率からXYZ表色系(CIE1931)における視感反射率Yを特定することができる。
視感反射率Yは、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.9%以下であり、さらに好ましくは0.8%以下であり、特に好ましくは0.7%以下である。視感反射率Yの下限値は、特に限定されず、例えば0.1%である。
上記の反射光のL*a*b*表色系(CIE1976)におけるa*値及びb*値は、特に限定されないが、下記関係式(1)及び(2)を満たすことが好ましい。
-10≦a*≦10 (1)
-18≦b*≦5 (2)
上記のa
*値及びb
*値は、反射光のXYZ表色系における三刺激値(X、Y及びZ)を用いて、JIS Z8781-4:2013で規定された下記式(i)及び(ii)によって特定することができる。
上記のa*値は、好ましくは-6以上6以下であり、より好ましくは-3以上3以下である。上記のb*値は、好ましくは-15以上3以下であり、より好ましくは-10以上2以下であり、さらに好ましくは-6以上2以下であり、特に好ましくは-5以上2以下である。場合によっては、a*値及びb*値は、下記関係式(3)及び(4)を満たしていてもよい。
b*≧-1.5a*-15 (3)
b*≦-1.5a*+7.5 (4)
さらに、a*値及びb*値は、下記関係式(5)及び(6)を満たしていてもよい。
b*≧-1.5a*-5 (5)
b*≦-1.5a*+4.5 (6)
上記の反射光のL
*値は、例えば12以下であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは7以下である。L
*値の下限値は、特に限定されず、例えば3である。L
*値は、上記の三刺激値を用いて、JIS Z8781-4:2013で規定された下記式(iii)によって特定することができる。
L*値=0、a*値=0及びb*値=0を満たす光(色相が完全にニュートラルな光)と、上記の反射光との色差ΔEは、例えば22以下であり、好ましくは18以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下であり、特に好ましくは8以下である。色差ΔEの下限値は、特に限定されず、例えば3である。色差ΔEは、反射光のL*値、a*値及びb*値を用いて、下記式(iv)に基づいて算出することができる。
ΔE*={(L*)2+(a*)2+(b*)2}1/2 (iv)
[反射防止膜]
図3に示すように、反射防止膜40は、第1の高屈折率層41、第1の低屈折率層42、第2の高屈折率層43及び第2の低屈折率層44を積層方向にこの順で有する。第1の高屈折率層41は、例えば、偏光フィルム1に接している。第2の低屈折率層44は、例えば、これらの層のうち、最も視認側に位置する。
高屈折率層41及び43は、低屈折率層42及び44よりも高い屈折率を有する層であり、その屈折率は、例えば1.6~3.2の範囲にある。第1の高屈折率層41の屈折率は、第2の高屈折率層43と同じであってもよく、異なっていてもよい。本明細書において、「屈折率」は、特に言及しない限り、温度25℃で波長λ=550nmの光を用いて、JIS K0062:1992の規定に準拠して測定された値を意味する。
本発明の好ましい一形態では、高屈折率層41及び43は、例えば、バインダー樹脂と当該バインダー樹脂中に分散した無機微粒子とを含む。バインダー樹脂は、代表的には電離線硬化型樹脂の硬化物であり、より具体的には紫外線硬化型樹脂の硬化物である。紫外線硬化型樹脂としては、ラジカル重合が可能な置換基を有する重合体又はオリゴマーを含む樹脂、例えば(メタ)アクリレート樹脂、が挙げられる。紫外線硬化型樹脂としての(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、エーテル(メタ)アクリレートなどの重合体又はオリゴマーを含む。(メタ)アクリレート樹脂は、上記の重合体又はオリゴマーに加えて、ラジカル重合性モノマー(前駆体)をさらに含んでいてもよい。このモノマーの分子量は、例えば200~700である。このモノマーの具体例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA:分子量298)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA:分子量212)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:分子量632)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA:分子量578)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA:分子量296)が挙げられる。電離線硬化型樹脂は、必要に応じて、開始剤を含んでいてもよい。開始剤としては、例えば、UVラジカル発生剤(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製イルガキュア907、同127、同192など)や過酸化ベンゾイルが挙げられる。上記のバインダー樹脂は、電離線硬化型樹脂の硬化物以外に他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。他の樹脂としては、脂肪族系樹脂(例えば、ポリオレフィン)、ウレタン系樹脂などが挙げられる。
バインダー樹脂の屈折率は、例えば1.40~1.60である。バインダー樹脂の配合量は、形成される高屈折率層100重量部に対して、例えば10重量部~80重量部であり、好ましくは20重量部~70重量部である。
無機微粒子の材料は、例えば、金属酸化物である。金属酸化物の具体例としては、酸化ジルコニウム(ジルコニア)(屈折率:2.19)、酸化アルミニウム(屈折率:1.56~2.62)、酸化チタン(屈折率:2.49~2.74)、酸化ケイ素(屈折率:1.25~1.46)が挙げられる。これらの金属酸化物は、光の吸収が小さいだけでなく、電離線硬化型樹脂や熱可塑性樹脂などの有機材料よりも高い屈折率を有しているため、高屈折率層41及び43の屈折率の調整に適している。無機微粒子は、酸化ジルコニウム又は酸化チタンを含むことが好ましい。
無機微粒子の屈折率は、例えば1.60以上であり、好ましくは1.70~2.80であり、より好ましくは2.00~2.80である。1.60以上の屈折率を有する無機微粒子は、高屈折率層41及び43の屈折率を調整することに適している。無機微粒子の平均粒径は、例えば1nm~100nmであり、好ましくは10nm~80nmであり、より好ましくは20nm~70nmである。無機微粒子の平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度計などによって測定される粒度分布において、体積累積50%に相当する粒径(d50)を意味する。
無機微粒子は、表面改質されていなくてもよいが、表面改質されていることが好ましい。表面改質された無機微粒子は、バインダー樹脂中に良好に分散する傾向がある。表面改質は、例えば、無機微粒子の表面に表面改質剤を塗布して、表面改質剤層を形成することにより行われる。表面改質剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤;脂肪酸系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。このような表面改質剤を用いると、バインダー樹脂と無機微粒子との濡れ性が向上し、バインダー樹脂と無機微粒子との界面が安定化する傾向がある。
無機微粒子の配合量は、形成される高屈折率層100重量部に対して、例えば10重量部~90重量部であり、より好ましくは20重量部~80重量部である。無機微粒子の配合量が上記の範囲内であれば、反射防止膜は、十分な機械特性を有するとともに、反射光の視感反射率Yを十分に低減できる傾向がある。
バインダー樹脂と無機微粒子とを含む高屈折率層41及び43の屈折率は、例えば1.6~2.6であり、好ましくは1.7~2.2である。
本発明の別の好ましい一形態では、高屈折率層41及び43は、金属酸化物又は金属窒化物を含み、好ましくは、実質的に金属酸化物又は金属窒化物からなる。金属酸化物の具体例としては、酸化チタン(TiO2)、インジウム/スズ酸化物(ITO)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アンチモン(Sb2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)が挙げられる。金属窒化物の具体例としては、窒化ケイ素(Si3N4)が挙げられる。高屈折率層41及び43は、好ましくは、酸化ニオブ(Nb2O5)又は酸化チタン(TiO2)を含む。金属酸化物又は金属窒化物から構成される高屈折率層の屈折率は、例えば2.00~2.60であり、好ましくは2.10~2.45である。
第1の高屈折率層41の材料は、第2の高屈折率層43と同じであってもよく、異なっていてもよい。
第1の高屈折率層41の物理膜厚は、例えば9nm~15nmであり、好ましくは11nm~13nmである。第1の高屈折率層41の光学膜厚は、例えば20nm~35nmであり、好ましくは25nm~30nmである。なお、本明細書において、光学膜厚は、波長550nmの光の屈折率と物理膜厚との積で表される値である。
第2の高屈折率層43の物理膜厚は、例えば98nm~124nmであり、好ましくは111nm~120nmである。第2の高屈折率層43の光学膜厚は、例えば230nm~290nmであり、好ましくは260nm~280nmである。
低屈折率層42及び44は、高屈折率層41及び43よりも低い屈折率を有する層であり、その屈折率は、例えば1.35~1.55であり、好ましくは1.40~1.50である。低屈折率層42及び44と、高屈折率層41及び43との屈折率の差を適切に調節することによって、光の反射を抑制できる傾向がある。第1の低屈折率層42の屈折率は、第2の低屈折率層44と同じであってもよく、異なっていてもよい。
低屈折率層42及び44の材料としては、例えば、金属酸化物及び金属フッ化物が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化ケイ素(SiO2)が挙げられる。金属フッ化物の具体例としては、フッ化マグネシウム、フッ化ケイ素酸が挙げられる。低屈折率層42及び44の材料は、屈折率の観点からフッ化マグネシウム及びフッ化ケイ素酸が好ましく、製造容易性、機械的強度、耐湿性などの観点から酸化ケイ素が好ましく、各種特性を総合的に考慮すると酸化ケイ素が好ましい。第1の低屈折率層42の材料は、第2の低屈折率層44と同じであってもよく、異なっていてもよい。
低屈折率層42及び44の材料は、硬化性の含フッ素系樹脂の硬化物であってもよい。硬化性の含フッ素系樹脂は、例えば、含フッ素モノマー由来の構成単位と架橋性モノマー由来の構成単位とを有する。含フッ素モノマーの具体例としては、例えば、フルオロオレフィン類(フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールなど)、部分的に又は完全にフッ素化されたアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体類(ビスコート6FM(大阪有機化学社製)、M-2020(ダイキン社製)など)、完全に又は部分的にフッ素化されたビニルエーテル類などが挙げられる。架橋性モノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレートなどの分子内に架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー;カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基などの官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー((メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなど)が挙げられる。含フッ素系樹脂は、上述した化合物以外の他のモノマー(例えば、オレフィン系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー)由来の構成単位を有していてもよい。
第1の低屈折率層42の物理膜厚は、例えば26nm~34nmであり、好ましくは27nm~31nmである。第1の低屈折率層42の光学膜厚は、例えば38nm~50nmであり、好ましくは40nm~45nmである。
第2の低屈折率層44の物理膜厚は、例えば68nm~88nmであり、好ましくは72nm~79nmである。第2の低屈折率層44の光学膜厚は、例えば100nm~128nmであり、好ましくは105nm~115nmである。
高屈折率層及び低屈折率層の作製方法は、特に限定されない。これらの層が樹脂を含む場合、いわゆるウェットプロセス(樹脂組成物を塗布した後に硬化)によって、これらの層を形成できる。これらの層が金属酸化物、金属フッ化物、金属窒化物などから構成される場合、いわゆるドライプロセスによって、これらの層を形成できる。ドライプロセスの具体例としては、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法が挙げられる。PVD法としては、例えば、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が挙げられる。CVD法としては、例えばプラズマCVD法が挙げられる。反射光の色相のばらつきを低減する観点から、ドライプロセスとしては、スパッタリング法が好ましい。
図3の反射防止膜40は、高屈折率層及び低屈折率層以外の他の部材をさらに有していてもよい。図4は、反射防止膜の別の一例を示している。図4の反射防止膜47は、基材45及び粘着剤層46をさらに有する。基材45は、例えば、第1の高屈折率層41と偏光フィルム1との間に配置され、第1の高屈折率層41に接している。粘着剤層46は、例えば、基材45と偏光フィルム1との間に配置され、基材45及び偏光フィルム1のそれぞれに接している。
基材45は、例えば、透明性を有する樹脂フィルムを含む。このような樹脂フィルムの材料としては、例えば、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロースなど)、ポリアミド系樹脂(ナイロン-6、ナイロン-66など)、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなど)、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリロニトリル樹脂などが挙げられる。基材45は、単一の樹脂フィルムの層であってもよく、複数の樹脂フィルムの積層体であってもよく、樹脂フィルムと後述するハードコート層との積層体であってもよい。基材45は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤などが挙げられる。
本発明の好ましい一形態では、基材45は、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムである。トリアセチルセルロースフィルムは、偏光子の保護フィルムとしても機能しうる。そのため、トリアセチルセルロースフィルムからなる基材45を有する反射防止膜47を用いることによって、偏光フィルム1が視認側に有している透明保護フィルムを省略できることがある。
本発明の別の好ましい一形態では、基材45は、ハードコート層を含む。基材45は、ハードコート層で構成されていてもよく、樹脂フィルム及びハードコート層の積層体であってもよい。ハードコート層は、例えば、電離線硬化型樹脂の硬化層である。電離線としては、例えば、紫外線、可視光、赤外線、電子線が挙げられ、好ましくは紫外線である。すなわち、電離線硬化型樹脂は、好ましくは紫外線硬化型樹脂である。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む多官能性モノマーが紫外線により硬化した硬化物(重合物)が挙げられる。多官能性モノマーは、例えば、1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。多官能性モノマーは、例えば、光重合開始剤と混合して用いられる。
ハードコート層には、無機微粒子又は有機微粒子が分散していてもよい。微粒子の平均粒径(d50)は、例えば0.01μm~3μmである。ハードコート層に分散している微粒子としては、屈折率、安定性、耐熱性などの観点から、酸化ケイ素(SiO2)が好ましい。ハードコート層は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、レベリング剤、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チキソトロピー化剤が挙げられる。さらに、ハードコート層の表面には、凹凸形状が形成されていてもよい。表面に凹凸形状を有するハードコート層は、光拡散機能(アンチグレア)を有する。
基材45の物理膜厚は、特に限定されない。基材45が単一の樹脂フィルムの層又は複数の樹脂フィルムの積層体である場合、基材45の物理膜厚は、例えば10μm~200μmの範囲にある。基材45がハードコート層を含む場合、ハードコート層の物理膜厚は、例えば1μm~50μmの範囲にある。
基材45の屈折率(基材45が積層構造を有する場合は、最も第1の高屈折率層41側の層の屈折率)は、例えば1.3~1.8であり、好ましくは1.4~1.7である。
粘着剤層46は、粘着剤を含む層である。粘着剤層46に含まれる粘着剤としては、例えば、粘着性を有する樹脂が挙げられる。このような樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。粘着剤層46は、アクリル系樹脂から構成されたアクリル系粘着剤を含むことが好ましい。
粘着剤層46は、必要に応じて、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤などが挙げられる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、過酸化物系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。
粘着剤層46の物理膜厚は、例えば5μm~100μmであり、好ましくは10μm~50μmである。
反射防止膜47は、基材45及び粘着剤層46以外の他の部材をさらに有していてもよい。反射防止膜47は、例えば、基材45及び第1の高屈折率層41の間に配置されたアンチグレア層をさらに有していてもよい。反射防止膜47は、特定の部材間(例えば、基材45と第1の高屈折率層41との間、又は、アンチグレア層と第1の高屈折率層41との間)に配置された密着層をさらに有していてもよい。密着層は、部材同士の密着性を向上させる層であり、例えばシリコンやSiOx(x<2)を含む。密着層の物理膜厚は、例えば1nm~10nmであり、好ましくは2nm~5nmである。密着層の屈折率は、例えば1~2.5である。
反射防止膜40及び47は、第2の低屈折率層44よりも視認側に配置され、第2の低屈折率層44に接する防汚層をさらに有していてもよい。防汚層は、防汚効果を有する層であり、例えばフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂から選ばれる少なくとも1つを含む。防汚層の物理膜厚は、例えば5nm~13nmであり、好ましくは5nm~10nmである。防汚層の屈折率は、例えば、1~2である。
反射防止膜40及び47に対してCIE標準光源D65から光が入射したときに生じる反射光は、L*a*b*表色系におけるa1
*値及びb1
*値の絶対値が小さいことが好ましい。a1
*値は、例えば-6以上6以下であり、より好ましくは-3以上3以下である。b1
*値は、例えば-15以上3以下であり、好ましくは-10以上2以下であり、より好ましくは-5以上2以下である。a1
*値及びb1
*値は、次の方法によって特定することができる。まず、反射防止膜40の第1の高屈折率層41、第1の低屈折率層42、第2の高屈折率層43及び第2の低屈折率層44をこの順で黒色フィルムに積層させる、又は、反射防止膜47の粘着剤層46によって、反射防止膜47を黒色フィルムに貼り付ける。次に、第2の低屈折率層側の反射防止膜40又は47の表面に、5°の入射角でCIE標準光源D65からの光を入射させる。このときに生じた正反射光について、波長360nm~740nmの範囲における分光反射率を特定し、当該分光反射率からXYZ表色系における三刺激値を特定する。得られた三刺激値を用いて、上述した式(i)及び(ii)によってa1
*値及びb1
*値を特定する。
上記の反射光の視感反射率Y1は、例えば0.3%以下であり、好ましくは0.2%以下である。
(粘着剤層付き偏光フィルムの別の変形例)
粘着剤層付き偏光フィルム11は、上述した部材以外の他の部材をさらに備えていてもよい。図5に示すとおり、本変形例にかかる粘着剤層付き偏光フィルム12は、反射防止膜40と偏光フィルム1との間に配置された透明基板50及び粘着剤層55をさらに備えている。透明基板50及び粘着剤層55を除き、粘着剤層付き偏光フィルム12の構造は、粘着剤層付き偏光フィルム11の構造と同じである。
透明基板50は、例えば、反射防止膜40の第1の高屈折率層41に接している。ただし、粘着剤層付き偏光フィルム12は、反射防止膜40に代えて、図4で説明した反射防止膜47を有していてもよい。このとき、反射防止膜47の粘着剤層46が透明基板50に接している。粘着剤層46は、例えば、透明基板50と偏光フィルム1との間に配置され、透明基板50及び偏光フィルム1のそれぞれに接している。
透明基板50としては、後述する液晶セル20が備える第1透明基板6及び第2透明基板7として例示されるものを用いることができる。透明基板50は、好ましくはガラスで構成されている。本明細書では、ガラスで構成された透明基板50を「カバーガラス」と呼ぶことがある。
粘着剤層55としては、粘着剤層3について上述したものを用いることができる。特に、粘着剤層55は、市販の光学透明粘着剤(OCA:Optical Clear Adhesive)を含むことが好ましい。粘着剤層55は、例えば、LUCIACS(登録商標)CS9621Tなどの粘着テープを用いて形成することができる。
(液晶パネルの実施形態)
図6に示すように、液晶パネル100は、粘着剤層付き偏光フィルム10及び液晶セル20を備えている。液晶パネル100では、粘着剤層付き偏光フィルム10に代えて、粘着剤層付き偏光フィルム11又は12も使用可能である。粘着剤層付き偏光フィルム10は、液晶セル20に直接的又は間接的に接している。例えば、粘着剤層付き偏光フィルム10と液晶セル20との間にはさらなる導電層、例えばITO層、が設けられていない。粘着剤層付き偏光フィルム10と液晶セル20との間には、導電層以外の他の層が配置されていてもよい。液晶セル20は、粘着剤層付き偏光フィルム10の粘着剤層3と貼り合わされており、粘着剤層付き偏光フィルム10に直接接していてもよい。
液晶セル20は、例えば、液晶層5、第1透明基板6及び第2透明基板7を備えている。液晶層5は、例えば、第1透明基板6及び第2透明基板7の間に配置されており、第1透明基板6及び第2透明基板7のそれぞれに接している。第1透明基板6は、例えば、粘着剤層付き偏光フィルム10の粘着剤層3と接している。液晶セル20は、例えば、第1透明基板6と粘着剤層付き偏光フィルム10の粘着剤層3との間にITO層を有していない。言い換えると、液晶パネル100は、例えば、第1透明基板6と粘着剤層3との間にITO層を有していない。
液晶層5は、例えば、電界が存在しない状態でホモジニアス配向した液晶分子を含む。このような液晶分子を含む液晶層5は、IPS(In-Plane-Switching)方式に適している。ただし、液晶層5は、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、π型、VA(Vertical Alignment)型等に用いられてもよい。液晶層5の厚さは、例えば、1.5μm~4μmである。
第1透明基板6及び第2透明基板7の材料としては、例えば、ガラス及びポリマーが挙げられる。本明細書では、ポリマーで構成された透明基板をポリマーフィルムと呼ぶことがある。透明基板を構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート等が挙げられる。ガラスで構成された透明基板の厚さは、例えば、0.1mm~1mmである。ポリマーで構成された透明基板の厚さは、例えば、10μm~200μmである。
液晶セル20は、液晶層5、第1透明基板6及び第2透明基板7以外の他の層をさらに含んでいてもよい。他の層としては、例えば、カラーフィルタ、易接着層及びハードコート層が挙げられる。カラーフィルタは、例えば、液晶層5よりも視認側に配置されており、好ましくは第1透明基板6と粘着剤層付き偏光フィルム10の粘着剤層3との間に位置する。易接着層及びハードコート層は、例えば、第1透明基板6又は第2透明基板7の表面上に配置されている。
液晶パネル100は、導電層2の側面に電気的に接続している導通構造(図示せず)をさらに備えていてもよい。導通構造をアースに接続すれば、粘着剤層付き偏光フィルム10が静電気によって帯電することをより抑制することができる。導通構造は、導電層2の側面全体を覆っていてもよく、導電層2の側面を部分的に覆っていてもよい。導電層2の側面全体の面積に対する導通構造によって覆われた導電層2の側面の面積の比率は、例えば1%以上であり、好ましくは3%以上である。導通構造は、導電層2の側面だけでなく、偏光フィルム1及び粘着剤層3の側面にも電気的に接続していてもよい。
導通構造の材料としては、例えば銀、金等の金属で構成された導電性ペースト;導電性接着剤;他の導電材料が挙げられる。導通構造は、導電層2の側面から伸びる配線であってもよい。
液晶パネル100は、偏光フィルム1以外の他の光学フィルムをさらに備えていてもよい。他の光学フィルムとしては、例えば、偏光フィルム、反射板、反透過板、位相差フィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム等の液晶表示装置に用いられるフィルムが挙げられる。位相差フィルムは、例えば、1/2波長板、1/4波長板等を含む。液晶パネル100は、これらの1種又は2種以上の他の光学フィルムを備えていてもよい。
他の光学フィルムが偏光フィルムである場合、当該偏光フィルムは、例えば、粘着剤層を介して、液晶セル20の第2透明基板7と貼り合わされる。この偏光フィルムは、例えば、偏光フィルム1について上述した構成を有する。他の光学フィルムとしての偏光フィルムにおいて、偏光子の透過軸(又は吸収軸)は、例えば、偏光フィルム1における偏光子の透過軸(又は吸収軸)と直交している。偏光フィルムと第2透明基板7とを貼り合わせるための粘着剤層の材料としては、粘着剤層3について上述したものを用いることができる。この粘着剤層の厚さは、特に限定されず、例えば1~100μmであり、好ましくは2~50μmであり、より好ましくは2~40μmであり、さらに好ましくは5~35μmである。
粘着剤層付き偏光フィルム10を備えた液晶パネル100は、ESD(Electro-Static Discharge)試験を行った場合に良好な結果を示す。ESD試験は、例えば、次の方法によって実施される。まず、液晶パネル100をバックライト装置の上にセットする。次に、液晶パネル100の視認側(偏光フィルム1側)に静電気を付与する。静電気の付与は、印加電圧が15kVに調節された静電気放電銃(Electrostatic discharge Gun)を用いる。静電気を付与すると、液晶パネル100の一部が白抜けする。静電気を付与してから、白抜けした部分が消失するまでの時間Tを測定する。液晶パネル100において、時間Tは、例えば10秒以下であり、好ましくは1秒以下であり、より好ましくは0.5秒以下である。なお、ESD試験は、23℃、55%RHの条件で行う。
液晶パネル100は、タッチセンサを必要としない用途、例えば車両用のクラスタパネルやミラーディスプレイ、に適している。クラスタパネルは、車両の走行速度やエンジン回転数などを表示するパネルである。
(液晶パネルの変形例)
図6の液晶パネル100は、タッチセンサ又はタッチパネルをさらに備えていてもよい。図7は、タッチパネル30を備えた液晶パネル110を示している。タッチパネル30を除き、液晶パネル110の構造は、液晶パネル100の構造と同じである。したがって、液晶パネル100と液晶パネル110とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。
液晶パネル110において、タッチパネル30は、例えば、偏光フィルム1よりも視認側に配置されている。タッチパネル30は、粘着剤層付き偏光フィルム10に接しておらず、タッチパネル30と粘着剤層付き偏光フィルム10との間には空隙(空気層)が形成されている。液晶パネル110は、いわゆるアウトセル型液晶パネルである。タッチパネル30としては、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などを採用することができる。タッチパネル30が抵抗膜方式である場合、タッチパネル30は、例えば、スペーサを介して、透明導電性薄膜を有する2つの電極板が対向するように配置された構造を有する。タッチパネル30が静電容量方式である場合、タッチパネル30は、例えば、所定のパターン形状を有する透明導電性薄膜を備えた透明導電性フィルムで構成されている。
(液晶表示装置の実施形態)
本実施形態の液晶表示装置は、例えば、液晶パネル100及び照明システムを備えている。液晶表示装置では、液晶パネル100に代えて、図7を参照して説明した液晶パネル110も使用可能である。液晶表示装置において、液晶パネル100は、例えば、照明システムよりも視認側に配置されている。照明システムは、例えば、バックライト又は反射板を有し、液晶パネル100に光を照射する。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。なお、以下では、特にことわりのない場合、「%」は「重量%」を示し、「部」は「重量部」を示し、「厚さ」は「物理膜厚」を示す。特にことわりのない場合、室内の温度及び湿度は、23℃、65%RHである。
<(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量>
以下の実施例において、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。(メタ)アクリル系ポリマーのMw/Mnについても、同様に測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8mL/min
・注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
<反射防止膜を備えていない粘着剤層付き偏光フィルムに関する実施例及び比較例>
(実施例1)
[ハードコート層付きTACフィルム]
まず、ウレタンアクリレートを主成分として含む紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが酢酸ブチルに溶解している樹脂溶液(DIC社製、商品名:ユニディック17-806、固形分濃度:80%)を準備した。この樹脂溶液の固形分100部に対して、光重合開始剤(BASF社製、商品名:IRGACURE907)5部及びレベリング剤(DIC社製、商品名:GRANDIC PC4100)0.1部を樹脂溶液に添加した。次に、樹脂溶液中の固形分濃度が36%に調節されるように、樹脂溶液にシクロペンタノンとプロピレングリコールモノメチルエーテルを45:55の重量比率で加えた。これにより、ハードコート層形成材料を作製した。得られた形成材料を厚み40μmのトリアセチルセルロースを含む透明保護フィルム(コニカミノルタ社製のTACフィルム、商品名「KC4UY」)の上に塗布して塗膜を形成した。このとき、形成材料を硬化することによって得られるハードコート層の厚さが7μmに調節されるように塗膜の厚さを調節した。次に、塗膜を90℃で1分間乾燥し、さらに高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射した。これにより、塗膜が硬化し、ハードコート層(HC)付きTACフィルムが得られた。
[偏光フィルム]
まず、速度比が互いに異なる複数のロールの間において、厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを濃度0.3%のヨウ素溶液(温度30℃)中で1分間染色しながら、延伸倍率が3倍になるように延伸した。次に、得られた延伸フィルムをホウ酸の濃度が4%であり、ヨウ化カリウムの濃度が10%である水溶液(温度60℃)中に0.5分間浸漬しながら、総延伸倍率が6倍になるように延伸した。次に、延伸フィルムを濃度1.5%のヨウ化カリウムを含む水溶液(温度30℃)中に10秒間浸漬することによって洗浄した。次に、延伸フィルムを50℃で4分間乾燥させることによって、厚さ30μmの偏光子を得た。得られた偏光子の一方の主面には、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマーからなる透明保護フィルム(厚さ30μm)を接合させた。偏光子の他方の主面には、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、上述したハードコート層付きTACフィルム(厚さ47μm)を接合させた。このとき、偏光子の他方の主面を透明保護フィルムと接合させた。偏光子と透明保護フィルムとの接合は、ロール貼合機を用いて行った。偏光子と透明保護フィルムとを接合させた後に、オーブンを用いて、得られた積層体を70℃で5分間加熱乾燥させることによってハードコート層及び偏光フィルムからなる積層体L1を得た。
[導電層]
まず、PEDOT/PSSを含む溶液(ナガセケムテックス社製のデナトロンPT-436)50部及び水50部を混合することによって、固形分濃度が0.5重量%である塗布液を調製した。次に、塗布液を積層体L1の偏光フィルム側の表面に塗布した。得られた塗布膜を80℃で2分間乾燥させることによって導電層を作製した。これにより、ハードコート層、偏光フィルム及び導電層からなる積層体L2を得た。導電層の厚さは、30nmであった。
[粘着剤層]
まず、攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管及び冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート76.9部、ベンジルアクリレート18部、アクリル酸5部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1部を仕込むことによってモノマー混合物を得た。さらに、モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込んだ。混合物を緩やかに攪拌しながら、フラスコ内について窒素ガスを導入して窒素置換した。フラスコ内の液温を55℃付近に維持して8時間重合反応を行うことによって、重量平均分子量(Mw)190万、Mw/Mn=3.7のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
次に、アクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、イソシアネート架橋剤(東ソー社製のコロネートL、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート)0.45部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.1部及びγ-グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-403)0.2部をさらに配合することによって、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。
次に、得られた溶液をセパレータ(三菱化学ポリエステルフィルム社製のMRF38)の片面に塗布した。セパレータは、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムであった。得られた塗布膜を155℃で1分間乾燥させることによって、セパレータの表面に粘着剤層を形成した。粘着剤層の厚さは、20μmであった。
[粘着剤層付き偏光フィルム]
次に、得られた粘着剤層を積層体L2の導電層の上に転写することによって、実施例1の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
(実施例2)
アクリル系ポリマーの溶液に、イオン性化合物として、三菱マテリアル社製のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム1部をさらに配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を作製したことを除き、実施例1と同じ方法によって実施例2の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
(実施例3及び4)
導電層の厚さが、それぞれ、20nm及び90nmとなるように、PEDOT/PSSの塗布液を偏光フィルムに塗布したことを除き、実施例1と同じ方法によって実施例3及び4の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
(実施例5)
以下の方法によってハードコート層、偏光フィルム及び導電層からなる積層体L2を作製したことを除き、実施例1と同じ方法によって実施例5の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。まず、PEDOT/PSSを含む溶液(ナガセケムテックス社製のデナトロンP-580W)9部及び水91部を混合することによって、固形分濃度が0.27重量%である塗布液を調製した。次に、塗布液を上述の積層体L1の偏光フィルム側の主面に塗布した。得られた塗布膜を80℃で2分間乾燥させることによって導電層を作製した。これにより、ハードコート層、偏光フィルム及び導電層からなる積層体L2を得た。導電層の厚さは、100nmであった。
(実施例6)
導電層を作製するための塗布液に、バインダーとしてポリウレタン系樹脂(第一工業製薬社製のスーパーフレックス210)をさらに添加したことを除き、実施例1と同じ方法によって実施例6の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。実施例6の導電層におけるポリウレタン系樹脂の含有率は50重量%であった。
(実施例7)
導電層を作製するための塗布液に、バインダーとしてポリウレタン系樹脂(第一工業製薬社製のスーパーフレックス210)をさらに添加したことを除き、実施例2と同じ方法によって実施例7の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。実施例7の導電層におけるポリウレタン系樹脂の含有率は50重量%であった。
(実施例8)
導電層を作製するための塗布液に、バインダーとしてオキサゾリン基含有アクリルポリマーを含む溶液(日本触媒社製のエポクロスWS-700)をさらに添加したことを除き、実施例1と同じ方法によって実施例8の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。実施例8の導電層におけるオキサゾリン基含有アクリルポリマーの含有率は50重量%であった。
(実施例9)
導電層を作製するための塗布液に、バインダーとしてオキサゾリン基含有アクリルポリマーを含む溶液(日本触媒社製のエポクロスWS-700)をさらに添加したことを除き、実施例2と同じ方法によって実施例9の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。実施例9の導電層におけるオキサゾリン基含有アクリルポリマーの含有率は50重量%であった。
(実施例10)
導電層の厚さが5nmとなるように、PEDOT/PSSの塗布液を偏光フィルムに塗布したことを除き、実施例1と同じ方法によって実施例10の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
(実施例11)
導電層の厚さが5nmとなるように、PEDOT/PSSの塗布液を偏光フィルムに塗布したことを除き、実施例2と同じ方法によって実施例11の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
(実施例12)
導電層の厚さが150nmとなるように、PEDOT/PSSの塗布液を偏光フィルムに塗布したことを除き、実施例1と同じ方法によって実施例12の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
(比較例1)
導電層の厚さが15nmとなるように、PEDOT/PSSの塗布液を偏光フィルムに塗布したことを除き、実施例5と同じ方法によって比較例1の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
(比較例2)
以下の方法によってハードコート層、偏光フィルム及び導電層からなる積層体L2を作製したことを除き、実施例1と同じ方法によって比較例2の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。まず、PEDOT/PSSを含む溶液(ナガセケムテックス社製のデナトロンP-580W)36.5部及び水63.5部を混合することによって、固形分濃度が1.1重量%である塗布液を調製した。次に、塗布液を上述の積層体L1の偏光フィルム側の主面に塗布した。得られた塗布膜を80℃で2分間乾燥させることによって導電層を作製した。これにより、ハードコート層、偏光フィルム及び導電層からなる積層体L2を得た。導電層の厚さは、350nmであった。
(比較例3)
導電層を作製しなかったことを除き、実施例1と同じ方法によって比較例3の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
(比較例4)
導電層の厚さが230nmとなるように、PEDOT/PSSの塗布液を偏光フィルムに塗布したことを除き、実施例1と同じ方法によって比較例4の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
実施例1~12及び比較例1~4について以下の評価を行った。評価結果を表1及び図8に示す。
<全光線透過率の損失A>
まず、ハードコート層及び偏光フィルムからなる積層体L1を作製した段階で、積層体L1の全光線透過率T3を測定した。全光線透過率T3の測定は、JIS K7361-1:1997の規定に準拠して、分光光度計(日本分光社製のV7100)を用いて行った。積層体L1の全光線透過率は、ハードコート層側から光を入射させて測定した。同様の方法で、ハードコート層、偏光フィルム及び導電層からなる積層体L2を作製した段階で、積層体L2の全光線透過率T4を測定した。積層体L2の全光線透過率T4は、ハードコート層側から光を入射させて測定した。全光線透過率T3と全光線透過率T4との差(T3-T4)を算出し、得られた算出値を導電層による全光線透過率の損失Aとみなした。
<表面抵抗率>
ハードコート層、偏光フィルム及び導電層からなる積層体L2を用いて、導電層の表面抵抗率を測定した。実施例5、比較例1及び比較例2では、導電層の表面抵抗率の測定は、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製のハイレスタ-UP MCP-HT450)を用いて、JIS K6911:1995に規定された方法に準拠して行った。測定条件は、印加電圧が10Vであり、印加時間が10秒であった。実施例1~4、6~12及び比較例4では、導電層の表面抵抗率の測定は、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製のロレスタ-GP MCP-T600)を用いて、JIS K7194:1994に規定された方法に準拠して行った。測定条件は、印加電圧が10Vであり、印加時間が10秒であった。さらに、実施例1~12及び比較例1~4について、セパレータの上に粘着剤層を作製した段階で、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製のハイレスタ-UP MCP-HT450)を用いて、粘着剤層の表面抵抗率を測定した。測定条件は、印加電圧が250Vであり、印加時間が10秒であった。
<ESD試験>
以下の方法によって、粘着剤層付き偏光フィルムについてESD試験を行った。まず、粘着剤層を介して、粘着剤層付き偏光フィルムを液晶セルに貼り合わせることによって、液晶パネルを作製した。次に、液晶パネルの偏光フィルム、導電層及び粘着剤層のそれぞれの側面を覆うように、5mm幅で、銀ペーストを塗布した。銀ペーストを乾燥させることによって、銀で構成された導通構造を形成した。この導通構造を通じて、液晶パネルを外部のアース電極と電気的に接続させた。次に、液晶パネルをバックライト装置の上にセットした。次に、印加電圧が15kVに調節された静電気放電銃を用いて、液晶パネルの視認側(偏光フィルム側)に静電気を付与した。これにより、液晶パネルの一部が白抜けした。静電気を付与してから、白抜けした部分が消失するまでの時間Tを測定した。表1では、以下の時間Tに関する基準に基づいて、ESD試験の結果を評価した。なお、ESD試験は、23℃、55%RHの条件で行った。
(評価基準)
A:0.5秒以下
B:0.5秒を超え、1秒以下
C:1秒を超え、10秒以下
D:10秒を超える
<投錨力>
粘着剤層付き偏光フィルムについて、導電層と偏光フィルムとの投錨力を上述の方法により測定した。両面テープとしては、日東電工社製の商品名「No.531」を用いた。ステンレス製試験板としては、SUS304の板(幅40mm×長さ120mm)を用いた。評価用シートとしては、ITOフィルム(125テトライトOES、尾池工業製)を用いた。引張試験機としては、オートグラフSHIMAZU AG-I 10KN(島津製作所製)を用いた。
実施例1~12の粘着剤層付き偏光フィルムでは、導電層による全光線透過率の損失Aが0.9%以下であるため、液晶表示装置の視認性の悪化を十分に抑制できることが推察される。さらに、表面抵抗率が1.0×106Ω/□以下である導電層を有する実施例1~12の粘着剤層付き偏光フィルムは、ESD試験の結果が良好であり、液晶パネルの帯電を十分に抑制できると推察される。表1及び図8からは、全光線透過率の損失A及び導電層の表面抵抗率が、導電層の組成、厚さなどの影響を受けることが読み取れる。
<反射防止膜を備えた粘着剤層付き偏光フィルムに関する実施例及び比較例>
[粘着剤層A]
まず、攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管及び冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート76.9部、ベンジルアクリレート18部、アクリル酸5部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1部を仕込むことによってモノマー混合物を得た。さらに、モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込んだ。混合物を緩やかに攪拌しながら、フラスコ内について窒素ガスを導入して窒素置換した。フラスコ内の液温を55℃付近に維持して8時間重合反応を行うことによって、重量平均分子量(Mw)200万、Mw/Mn=4.1のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
次に、アクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、0.45部のイソシアネート架橋剤(東ソー社製のコロネートL、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート)、0.1部の過酸化物架橋剤(日本油脂社製のナイパーBMT)、及び0.2部のシランカップリング剤(信越化学工業社製のKBM-403、γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン)をさらに配合することによって、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。
次に、得られた溶液をセパレータ(三菱化学ポリエステルフィルム社製のMRF38)の片面に塗布した。セパレータは、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムであった。得られた塗布膜を155℃で1分間乾燥させることによって、セパレータの表面に粘着剤層Aを形成した。粘着剤層Aの厚さは、20μmであった。
[粘着剤層B]
アクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、1部のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI、三菱マテリアル社製)をさらに配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製したことを除き、粘着剤層Aと同じ方法によって、粘着剤層Bを作製した。
[粘着剤層C]
まず、攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管及び冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート94.9部、アクリル酸5部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1部を仕込むことによってモノマー混合物を得た。さらに、モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込んだ。混合物を緩やかに攪拌しながら、フラスコ内について窒素ガスを導入して窒素置換した。フラスコ内の液温を55℃付近に維持して8時間重合反応を行うことによって、重量平均分子量(Mw)210万、Mw/Mn=4.0のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
次に、アクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、0.45部のイソシアネート架橋剤(東ソー社製のコロネートL、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート)、0.1部の過酸化物架橋剤(日本油脂社製のナイパーBMT)、及び0.2部のシランカップリング剤(信越化学工業社製のKBM-403、γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン)をさらに配合することによって、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。
次に、得られた溶液をセパレータ(三菱化学ポリエステルフィルム社製のMRF38)の片面に塗布した。セパレータは、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムであった。得られた塗布膜を155℃で1分間乾燥させることによって、セパレータの表面に粘着剤層Cを形成した。粘着剤層Cの厚さは、12μmであった。
[反射防止膜AR1]
まず、アンチグレア層を形成するための樹脂として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「UV1700TL」、固形分濃度80重量%)50重量部、及び、ペンタエリスリトールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分濃度100重量%)50重量部を準備した。これらの樹脂の固形分100重量部あたり、(メタ)アクリル酸エステルとスチレンの共重合体を含む粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーSSX504TNR」、重量平均粒径:3.0μm)を4重量部、チキソトロピー付与剤として有機粘土である合成スメクタイト(クニミネ工業(株)製、商品名「スメクトンSAN」)を1.5重量部、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」)を3重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「GRANDIC PC4100」、固形分濃度10重量%)を0.015重量部混合した。この混合物について、固形分濃度が50重量%となるように、トルエン/シクロペンタノン混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、アンチグレア層を形成するための材料(塗工液)を調製した。
次に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム(株)製、商品名「TD60UL」)を準備した。この透明プラスチックフィルム(TACフィルム)の片面に、バーコータを用いて、アンチグレア層を形成するための材料(塗工液)を塗布し、塗膜を形成した。次に、塗膜が形成された透明プラスチックフィルムを80℃で1分間加熱することによって塗膜を乾燥させた。次に、この塗膜について、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射することにより硬化処理を行った。これにより、厚さ8.0μmのアンチグレア層が形成され、アンチグレア層付きTACフィルムが得られた。アンチグレア層付きTACフィルムのヘイズは、8%であった。
次に、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置にこのアンチグレア層付きTACフィルムを導入し、フィルムを走行させることによってアンチグレア層の表面にボンバード処理(Arガスによるプラズマ処理)を行った。次に、アンチグレア層の表面の上に、密着層として、物理膜厚が3nmのSiOx層(x<2)を成膜した。次に、密着層の上に、物理膜厚が12nmのNb2O5層(第1の高屈折率層)、物理膜厚が29nmのSiO2層(第1の低屈折率層)、物理膜厚が116nmのNb2O5層(第2の高屈折率層)及び物理膜厚が78nmのSiO2層(第2の低屈折率層)を順に成膜して、積層体aを作製した。これらの酸化物薄膜を形成するときには、アルゴンの導入量及び排気量を調整して装置内の圧力を一定に保ちつつ、プラズマ発光モニタリング(PEM)制御によって、導入する酸素の量を調整した。
次に、積層体aの第2の低屈折率層(SiO2層)の表面に、防汚層として、フッ素系樹脂からなる層(物理膜厚:9nm)を形成した。さらに、積層体aのTACフィルムの表面に粘着剤層Cを転写することによって反射防止膜AR1を作製した。
[反射防止膜AR2~AR10]
各層の物理膜厚を表2に示す値に変更したことを除いて、反射防止膜AR1と同じ方法によって、反射防止膜AR2~AR10を作製した。
[偏光フィルムP1]
まず、以下の方法によってアクリルフィルムを作製した。攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた容量30Lの釜型反応器に、8,000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2,000gの2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10,000gの4-メチル-2-ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)、5gのn-ドデシルメルカプタンを仕込んだ。反応器内に窒素を導入しつつ、反応器内の混合物を105℃まで昇温し還流させた。次に、重合開始剤として5.0gのt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(カヤカルボンBIC-7、化薬アクゾ社製)を添加するとともに、10.0gのt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を4時間かけて滴下し、溶液重合を行った。溶液重合は、還流下、約105~120℃で行った。溶液の滴下後に、さらに4時間かけて熟成を行った。
次に、得られた重合体溶液に、30gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(Phoslex A-18、堺化学工業製)を加え、還流下、約90~120℃で5時間、環化縮合反応を行った。次に、得られた溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/hの処理速度で導入した。押出し機内では、さらなる環化縮合反応とともに脱揮が進行した。これにより、ラクトン環含有重合体の透明なペレットを得た。
得られたラクトン環含有重合体について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.17質量%の質量減少を検知した。また、このラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が133,000、メルトフローレートが6.5g/10min、ガラス転移温度が131℃であった。
得られたペレットと、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂(トーヨーAS AS20、東洋スチレン社製)とを、質量比90/10で、単軸押出機(スクリュー30mmφ)を用いて混練押出することにより、透明なペレットを得た。得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。
50mmφ単軸押出機を用いて、このペレットを400mm幅のコートハンガータイプTダイから溶融押出することによって、厚さ120μmのフィルムを作製した。2軸延伸装置を用いて、フィルムを150℃の温度条件下、縦2.0倍及び横2.0倍に延伸することにより、厚さ30μmの延伸フィルム(アクリルフィルム)を得た。この延伸フィルムの光学特性を測定したところ、全光線透過率が93%であり、面内位相差Δndが0.8nmであり、厚み方向位相差Rthが1.5nmであった。
次に、以下の方法によって偏光フィルムP1を作製した。まず、速度比が互いに異なる複数のロールの間において、厚さ45μmのポリビニルアルコールフィルムを濃度0.3%のヨウ素溶液(温度30℃)中で1分間染色しながら、延伸倍率が3倍になるように延伸した。次に、得られた延伸フィルムをホウ酸の濃度が4%であり、ヨウ化カリウムの濃度が10%である水溶液(温度60℃)中に0.5分間浸漬しながら、総延伸倍率が6倍になるように延伸した。次に、延伸フィルムを濃度1.5%のヨウ化カリウムを含む水溶液(温度30℃)中に10秒間浸漬することによって洗浄した。次に、延伸フィルムを50℃で4分間乾燥させることによって、厚さ18μmの偏光子を得た。得られた偏光子の一方の主面に、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、厚さ40μmのTACフィルム(コニカミノルタ製、商品名「KC4UY」)を貼り合わせた。偏光子の他方の主面には、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、上述した厚さ30μmのアクリルフィルムを貼り合わせた。これにより、偏光フィルムP1を得た。
(実施例13)
まず、PEDOT/PSSを含む溶液(ナガセケムテックス社製のデナトロンPT-436)50部及び水50部を混合することによって、固形分濃度が0.5重量%である塗布液を調製した。次に、塗布液を偏光フィルムP1のアクリルフィルム側の表面に塗布した。得られた塗布膜を80℃で2分間乾燥させることによって導電層を作製した。これにより、導電層付き偏光フィルムを得た。導電層の厚さは、30nmであった。
次に、反射防止膜AR1の粘着剤層Cを偏光フィルムP1のTACフィルムの表面に貼り合わせた。さらに、粘着剤層Aを導電層の表面に転写することによって、反射防止膜AR1/偏光フィルムP1/導電層/粘着剤層Aの構造を有する実施例13の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
(実施例14)
導電層の厚さが90nmとなるように、PEDOT/PSSの塗布液を偏光フィルムP1に塗布したことを除き、実施例13と同じ方法によって実施例14の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
(実施例15~24、26及び比較例5)
反射防止膜、導電層及び粘着剤層を表3に示す組み合わせに変更したことを除き、実施例13と同じ方法によって、実施例15~24、26及び比較例5の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。なお、比較例5では、偏光フィルムP1に導電層を形成せずに、偏光フィルムP1のアクリルフィルム側の表面に粘着剤層Aを直接貼り合わせた。
(実施例25)
まず、PEDOT/PSSを含む溶液(ナガセケムテックス社製のデナトロンP-580W)9部及び水91部を混合することによって、固形分濃度が0.27重量%である塗布液を調製した。次に、塗布液を偏光フィルムP1のアクリルフィルム側の表面に塗布した。得られた塗布膜を80℃で2分間乾燥させることによって導電層を作製した。これにより、導電層付き偏光フィルムを得た。導電層の厚さは、100nmであった。
次に、反射防止膜AR4の粘着剤層Cを偏光フィルムP1のTACフィルムの表面に貼り合わせた。さらに、粘着剤層Aを導電層の表面に転写することによって、反射防止膜AR4/偏光フィルムP1/導電層/粘着剤層Aの構造を有する実施例25の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
(比較例6)
まず、PEDOT/PSSを含む溶液(ナガセケムテックス社製のデナトロンP-580W)8.6部、オキサゾリン基含有アクリルポリマーを含む溶液(商品名:エポクロスWS-700、日本触媒製)1部、及び、水90.4部を混合し、導電層を形成するための塗布液(固形分濃度0.5重量%)を調製した。得られた塗布液において、ポリチオフェン系ポリマーの濃度が0.04重量%であり、オキサゾリン基含有アクリルポリマーの濃度が0.25重量%であった。
次に、得られた塗布液を偏光フィルムP1のアクリルフィルム側の主面に塗布した。得られた塗布膜を80℃で2分間乾燥させることによって導電層を作製した。これにより、導電層付き偏光フィルムを得た。導電層の厚さは、60nmであった。
次に、反射防止膜AR10の粘着剤層Cを偏光フィルムP1のTACフィルムの表面に貼り合わせた。さらに、粘着剤層Aを導電層の表面に転写することによって、反射防止膜AR10/偏光フィルムP1/導電層/粘着剤層Aの構造を有する比較例6の粘着剤層付き偏光フィルムを作製した。
<粘着剤層付き偏光フィルムの光学特性>
実施例13~26及び比較例5~6で得られた粘着剤層付き偏光フィルムについて、粘着剤層が無アルカリガラスと直接接するように無アルカリガラスと積層された状態で、CIE標準光源D65からの光が反射防止膜から入射したときに生じる反射光の視感反射率Y、L*値、a*値及びb*値、並びに、L*値=0、a*値=0及びb*値=0を満たす光と反射光との色差ΔEを上述の方法により評価した。このとき、粘着剤層付き偏光フィルムは、50mm角に切り出して使用した。無アルカリガラスとしては、コーニング社製のEG-XG(厚さ0.7mm)を用いた。黒色フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のものを用いた。分光反射率は、分光光度計(コニカミノルタ社製、商品名「CM2600D」)を用いて測定した。光学特性を評価するための評価サンプルは、粘着剤層付き偏光フィルム/無アルカリガラス/黒色PETフィルムの構成を有していた。ただし、実施例26の粘着剤層付き偏光フィルムについては、表面に非晶性のITO層(厚さ20nm)が形成された無アルカリガラスを用いて反射光を評価した。すなわち、実施例26において、評価サンプルは、粘着剤層付き偏光フィルム/ITO層/無アルカリガラス/黒色PETフィルムの構成を有していた。ITO層の作製には、スパッタリングを利用した。ITO層に含まれるITOのSn比率は、3重量%であった。Sn比率は、ITOにおけるSn原子の重量/(Sn原子の重量+In原子の重量)から算出した。
<反射防止膜の光学特性>
反射防止膜AR1~AR10について、CIE標準光源D65からの光が入射したときに生じる反射光の視感反射率Y1、a1
*値及びb1
*値を上述の方法により評価した。黒色フィルム、分光光度計などは、粘着剤層付き偏光フィルムの光学特性の評価に利用したものと同じものを用いた。
<粘着剤層の表面抵抗率>
粘着剤層A及びBの表面抵抗率(Ω/□)は、粘着剤層A又はBをセパレータの表面に形成した段階で測定した。表面抵抗率の測定には、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製のハイレスタ-UP MCP-HT450)を用いた。測定条件は、印加電圧が250Vであり、印加時間が10秒であった。
<導電層の表面抵抗率>
実施例13~26及び比較例6において、導電層の表面抵抗率(Ω/□)は、導電層を偏光フィルムP1の表面に形成した段階で測定した。実施例25及び比較例6では、導電層の表面抵抗率の測定は、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製のハイレスタ-UP MCP-HT450)を用いて、JIS K6911:1995に規定された方法に準拠して行った。測定条件は、印加電圧が10Vであり、印加時間が10秒であった。実施例13~24及び26では、導電層の表面抵抗率の測定は、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製のロレスタ-GP MCP-T600)を用いて、JIS K7194:1994に規定された方法に準拠して行った。測定条件は、印加電圧が10Vであり、印加時間が10秒であった。
<偏光フィルムの表面抵抗率>
比較例5では、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製のハイレスタ-UP MCP-HT450)を用いて、JIS K6911:1995に規定された方法に準拠して偏光フィルムP1の表面抵抗率を測定した。測定条件は、印加電圧が10Vであり、印加時間が10秒であった。偏光フィルムP1の表面抵抗率は、1.0×1014Ω/□を上回った。
<導電層による全光線透過率の損失A>
まず、偏光フィルムP1の全光線透過率T1をJIS K7361-1:1997の規定に準拠して、分光光度計(日本分光社製のV7100)を用いて測定した。同様の方法で、導電層を偏光フィルムP1の表面に形成した段階で、偏光フィルムP1及び導電層からなる積層体Lの全光線透過率T2を測定した。積層体Lの全光線透過率T2は、偏光フィルムP1側から光を入射させて測定した。偏光フィルムP1の全光線透過率T1と全光線透過率T2との差(T1-T2)を算出し、得られた算出値を導電層による全光線透過率の損失Aとみなした。
<ESD試験>
まず、実施例13~26及び比較例5~6で得られた粘着剤層付き偏光フィルムを液晶セルの視認側の表面に貼り合わせて液晶パネルを作製した。ただし、実施例26については、表面に非晶性のITO層(厚さ20nm)が形成された液晶セルを用いた。すなわち、実施例26において、液晶パネルは、粘着剤層付き偏光フィルム/ITO層/液晶セルの構成を有していた。ITO層の作製には、スパッタリングを利用した。ITO層に含まれるITOのSn比率は、3重量%であった。次に、粘着剤層付き偏光フィルムの側面を覆うように、5mm幅で、銀ペーストを塗布した。銀ペーストを乾燥させることによって、銀で構成された導通構造を形成した。この導通構造を通じて、液晶パネルを外部のアース電極と電気的に接続させた。次に、液晶パネルをバックライト装置の上にセットした。次に、印加電圧が10kVに調節された静電気放電(ESD)銃を用いて、液晶パネルの視認側(反射防止膜側)に静電気を付与した。これにより、液晶パネルの一部が白抜けした。静電気を付与してから、白抜けした部分が消失するまでの時間Tを測定した。表3では、以下の時間Tに関する基準に基づいて、ESD試験の結果を評価した。なお、ESD試験は、23℃、55%RHの条件で行った。
(評価基準)
A:0.5秒以下
B:0.5秒を超え、1秒以下
C:1秒を超え、10秒以下
D:10秒を超える
<色味>
上記のESD試験で作製した液晶パネルを視認側(反射防止膜側)から目視で観察し、色味を評価した。表3の色味の項目において、Aは、色味が確認されなかったことを意味する。Bは、色味がごくわずかに確認されたことを意味する。Cは、色味がわずかに確認されたことを意味する。Dは、色味が確認されたことを意味する。
表3からわかるとおり、実施例13~26の粘着剤層付き偏光フィルムでは、導電層による全光線透過率の損失Aが0.9%以下であるため、液晶表示装置の視認性の悪化を十分に抑制できることが推察される。さらに、表面抵抗率が1.0×106Ω/□以下である導電層を有する実施例13~26の粘着剤層付き偏光フィルムは、ESD試験の結果が良好であり、液晶パネルの帯電を十分に抑制できると推察される。実施例15及び実施例26のESD試験の結果からは、導電層とともに、導電材料が添加された粘着剤層を用いることによって、ITO層を用いる場合よりも液晶パネルの帯電を十分に抑制できることがわかる。さらに、実施例24及び26の結果からわかるとおり、粘着剤層付き偏光フィルムと液晶セルとの間にITO層が配置されていない場合には、反射光の視感反射率Yの値が低く、光の反射が十分に抑制されていた。
さらに、a*値及びb*値が関係式(1)及び(2)を満たす反射光を生じる実施例13~23及び実施例25~26の粘着剤層付き偏光フィルムを備えた液晶パネルでは、実施例24、比較例5及び6の粘着剤層付き偏光フィルムを備えた液晶パネルに比べて、色味が確認できないか、確認できたとしても実用上問題がない程度であった。すなわち、実施例13~23及び実施例25~26の粘着剤層付き偏光フィルムを備えた液晶パネルからの反射光は、ニュートラルな色相を有していた。