以下、本発明の詳細を説明する。以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
(粘着剤層付き光学フィルム)
図1に示すように、本実施形態の粘着剤層付き光学フィルム10は、光学フィルム1、帯電防止層2及び粘着剤層3を備える。図1の光学フィルム1、帯電防止層2及び粘着剤層3は、この順序で積層されている。図1の帯電防止層2は、光学フィルム1及び粘着剤層3のそれぞれに接している。帯電防止層2が光学フィルム1と粘着剤層3との間に位置する場合、帯電防止層2の劣化が抑制される傾向にある。ただし、光学フィルム1、帯電防止層2及び粘着剤層3の配置の順序は、図1の例に限定されない。例えば、光学フィルム1が帯電防止層2と粘着剤層3との間に位置してもよい。粘着剤層3の表面は、通常、粘着剤層付き光学フィルム10の外部に露出している。
粘着剤層付き光学フィルム10において、測定領域による光透過率の相違は、前記光透過率の最大値Tmaxと最小値Tminとの差ΔT(=Tmax-Tmin)により表示して、2%以下である。差ΔTは、1.8%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.2%以下、1%以下、0.8%以下、0.5%以下、0.2%以下、更には0.1%以下であってもよい。差ΔTの下限は、例えば、0.01%である。差ΔTは、以下のように評価できる。
粘着剤層付き光学フィルム10の表面に対して、少なくとも30箇所の測定領域を設定する。個々の測定領域は、例えば、上記表面に垂直に見て直径10~30μmの円とする。測定領域間の間隔は、少なくとも5mmを確保する。上記表面において測定領域を設定する範囲の面積は、例えば、50cm2以上とする。互いに最も離れた測定領域間の距離は、10cm以上が好ましい。測定領域は、ランダムな位置に設けても、上記表面に設定された仮想のグリッドの交点にあたる位置に規則的に設けてもよい。次に、各測定領域における全光線透過率を測定する。全光線透過率は、波長380~700nmの範囲の光の透過率を意味する。全光線透過率の測定には、例えば、上記測定領域に対する日本工業規格(以下、「JIS」と記載)L7361-1:1997の規定に準拠した測定が可能な測定装置を使用できる。全光線透過率の測定には、D65光源を使用する。全光線透過率は、粘着剤層3及び光学フィルム1から選ばれる光学フィルム1の側から光を入射して測定する。各測定領域ごとに測定した全光線透過率の最大値をTmax、最小値をTminとして、その差をΔTとして特定できる。
全光線透過率の測定にあたり、差ΔTに影響を及ぼさない層(例えば、ハードコート層)が粘着層付き光学フィルム10の表面に配置されていてもよい。
液晶セルと光学フィルムとの間に位置するITO層を高分子ポリマーを含む帯電防止層に置き換えると、液晶パネルにおける外光の反射率が低下する。液晶パネルの低反射率化は、液晶表示装置における色味の良い高精細な画像の視認を可能にする。しかし、本発明者らの検討によれば、ITO層の置換による反射光の減少によって、ITO層を備える状態では視認されなかった表示面のムラ(典型的には斑状)が明確に視認されるようになること、及び帯電防止層における光透過率のムラに起因して上記表示面のムラが生じることが判明した。したがって、差ΔTを所定の範囲とすることで、導電性ポリマーを含む帯電防止層を備えながらも、液晶パネルの表示面にムラが視認され難くなる。
[光学フィルム]
光学フィルム1の構成は、液晶パネルに使用可能である限り、限定されない。光学フィルム1は、単層のフィルムであっても、2以上のフィルムが積層された光学積層体であってもよい。
光学フィルム1は、例えば、偏光板を含む。偏光板を含む光学フィルム1を備える粘着剤層付き光学フィルム10の例を図2に示す。図2の光学フィルム1は、偏光板4から構成される。
偏光板は、偏光子及び透明保護フィルムを含む。透明保護フィルムは、例えば、偏光子の主面(最も広い面積を有する表面)に接して配置されている。偏光子は、2つの透明保護フィルムの間に配置されていてもよい。偏光子としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素、二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの;ポリビニルアルコールの脱水処理物、ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルム、及び、ヨウ素等の二色性物質からなることが好ましい。
偏光子の厚さは、特に限定されず、例えば80μm以下である。偏光子の厚さは、10μm以下、好ましくは1~7μmであってもよい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性に優れている。薄型の偏光子は、寸法変化が抑制されており、耐久性に優れる。薄型の偏光子によれば、偏光板を薄型化できる。
透明保護フィルムの材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及び、これらの混合物が挙げられる。透明保護フィルムの材料は、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂であってもよい。偏光板が2つの透明保護フィルムを有する場合、2つの透明保護フィルムの材料は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、偏光子の一方の主面に対して、接着剤を介して、熱可塑性樹脂で構成された透明保護フィルムが貼り合わされ、偏光子の他方の主面に対して、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂で構成された透明保護フィルムが貼り合わされていてもよい。透明保護フィルムは、任意の添加剤を1種類以上含んでいてもよい。
透明保護フィルムは、防眩特性、反射防止特性等の光学特性を有していてもよい。この場合、液晶パネルの更なる低反射率化が達成可能となる。更なる低反射率化によって表示面のムラがより明確に視認されるようになるが、帯電防止層2における差ΔTを所定の範囲とすることで、表示面のムラを抑制できる。
透明保護フィルムは、位相差膜として機能するフィルムであってもよい。本明細書において、位相差膜は、面内方向又は厚み方向に複屈折を有する膜を意味する。位相差膜として機能するフィルムとしては、例えば、高分子フィルムを延伸させたもの、液晶材料を配向させ、固定化させたもの等が挙げられる。
偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせるための接着剤は、光学的に透明であれば特に限定されず、例えば、水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型、カチオン硬化型等の接着剤、好ましくは水系接着剤及びラジカル硬化型接着剤、が挙げられる。
偏光板の厚さは、例えば、10μm~500μmである。偏光板の全光線透過率は、特に限定されず、例えば30%~50%である。
光学フィルム1は、反射防止層を含んでいてもよい。反射防止層を含む光学フィルム1を備える粘着剤層付き光学フィルム10の例を図3に示す。図3の光学フィルム1は、偏光板4と反射防止層5とから構成される。図3の例では、反射防止層5が最外層に位置する。反射防止層5は、液晶セルと組み合わせて液晶パネルとした際に、最も視認側に位置してもよいし、最外層に位置してもよい。
光学フィルム1が反射防止層5を含む場合、液晶パネルの更なる低反射率化が達成可能となる。更なる低反射率化によって表示面のムラがより明確に視認されるようになるが、帯電防止層2における差ΔTを所定の範囲とすることで、表示面のムラを抑制できる。換言すれば、光学フィルム1が反射防止層5を含む場合に、本発明の効果はより顕著となる。
反射防止層5は、例えば、2以上の薄膜が所定の光学設計に基づいて積層された光学積層体である。典型的な反射防止層5では、高屈折率層と低屈折率層とが組み合わされている。反射防止層5は、例えば、第1の高屈折率層、第1の低屈折率層、第2の高屈折率層及び第2の低屈折率層をこの順で有する。第1の高屈折率層は、例えば、偏光板4に接している。第2の低屈折率層は、例えば、これらの層のうち、最も視認側に位置する。
高屈折率層の屈折率は、例えば、1.6~3.2の範囲にある。低屈折率層の屈折率は、高屈折率層の屈折率に比べて低く、例えば1.35~1.55であり、好ましくは1.40~1.50である。本明細書において「屈折率」は、特に言及しない限り、温度25℃で波長λ=550nmの光を用いて、JIS K7105の規定に準拠して測定された値を意味する。
高屈折率層の材料としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化チタン(TiO2)、インジウム/スズ酸化物(ITO)、酸
化ニオブ(Nb2O5)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化
アンチモン(Sb2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)が挙げられる。金属窒化物の具体例としては、窒化ケイ素(Si3N4)が挙げられる。高屈折率層は、好ましくは、酸化ニオブ(Nb2O5)又は酸化チタン(TiO2)を含む。金属酸化物又は金属窒化物から構成される高屈折率層の屈折率は、例え
ば2.00~2.60であり、好ましくは2.10~2.45である。
低屈折率層の材料としては、例えば、金属酸化物、金属フッ化物が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化ケイ素(SiO2)が挙げられる。金属フッ化物の具体例と
しては、フッ化マグネシウム、フッ化ケイ素酸が挙げられる。低屈折率層の材料は、屈折率の観点からフッ化マグネシウム及びフッ化ケイ素酸が好ましく、製造容易性、機械的強度、耐湿性等の観点から酸化ケイ素が好ましく、各種特性を総合的に考慮すると酸化ケイ素が好ましい。
低屈折率層の材料は、硬化性の含フッ素系樹脂の硬化物であってもよい。硬化性の含フッ素系樹脂は、例えば、含フッ素モノマー由来の構成単位と架橋性モノマー由来の構成単位とを有する。含フッ素モノマーの具体例としては、例えば、フルオロオレフィン類(フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール等)、部分的に又は完全にフッ素化されたアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体類(ビスコート6FM(大阪有機化学社製)、M-2020(ダイキン社製)等)、完全に又は部分的にフッ素化されたビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性モノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート等の分子内に架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー;カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等の官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー((メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等)が挙げられる。含フッ素系樹脂は、上述した化合物以外の他のモノマー(例えば、オレフィン系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー)由来の構成単位を有していてもよい。
反射防止層5には、公知の反射防止層を使用してもよい。
光学フィルム1は、上述した以外の他の層を含んでいてもよい。光学フィルム1は、1又は2以上の他の層を含んでいてもよい。他の層は、単層であっても、光学積層体であってもよい。他の層は、偏光板4よりも視認側に位置してもよいし、偏光板4と反射防止層5との間に位置してもよい。他の層としては、例えば、偏光板、反射板、反透過板、位相差フィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、表面処理層、表面保護フィルム、透明基板、粘着剤層が挙げられる。位相差フィルムには、1/2波長板及び1/4波長板が含まれる。表面処理層としては、例えば、ハードコート層、防眩処理層、スティッキング防止層が挙げられる。ただし、他の層は、上記例に限定されない。
他の層を含む光学フィルム1を備える粘着剤層付き光学フィルム10の例を図4に示す。図4の光学フィルム1は、他の層として、透明基板6及び粘着剤層7を含む。図4の光学フィルム1は、偏光板4及び反射防止層5の間に透明基板6及び粘着剤層7を備える以外は、図3の光学フィルム1と同様の構成を有する。透明基板6及び粘着剤層7は、それぞれ、反射防止層5及び偏光板4に接している。また、透明基板6及び粘着剤層7は、互いに接している。
透明基板6の材料としては、例えば、ガラス及びポリマーが挙げられる。透明基板6は、好ましくはガラスで構成されている。ガラスで構成された透明基板6は、「カバーガラス」とも称される。透明基板6を構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネートが挙げられる。ガラスで構成された透明基板6の厚さは、例えば、0.1mm~1mmである。ポリマーで構成された透明基板6の厚さは、例えば、10μm~200μmである。
粘着剤層7としては、後述の粘着剤層3と同じものを用いることができる。粘着剤層7は、市販の光学透明粘着剤(OCA:Optical Clear Adhesive)を含むことが好ましい。粘着剤層7は、例えば、LUCIACS(登録商標)CS9621T等の粘着テープを用いて形成してもよい。
ハードコート層の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱又は放射線により硬化する材料等を用いることができる。熱又は放射線により硬化する材料としては、例えば、熱硬化型樹脂;紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の放射線硬化型樹脂が挙げられる。紫外線硬化型樹脂によれば、紫外線照射による硬化処理によって、簡単な加工操作で効率良く硬化樹脂層を形成することができる。硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂等が挙げられる。硬化型樹脂は、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系、メラミン系等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等を含む。加工速度が速く、基材への熱のダメージが少ないことから、ハードコート層の材料としては、放射線硬化型樹脂が好ましく、特に紫外線硬化型樹脂が好ましい。紫外線硬化型樹脂は、例えば、紫外線重合性の官能基を有する化合物、特に、当該官能基を2個以上、好ましくは3~6個有するアクリル系のモノマー又はオリゴマーを含むことが好ましい。紫外線硬化型樹脂には、例えば、光重合開始剤が配合されている。
防眩処理層の材料は、特に限定されず、例えば放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。
表面処理層は、導電材料を含むことによって導電性を有していてもよい。導電材料としては、帯電防止層2が含みうる導電性ポリマーが挙げられる。
表面保護フィルムは、表面処理層の上に配置されていてもよく、偏光板4又は反射防止層5の上に配置されていてもよい。表面保護フィルムは、例えば、支持フィルムと、支持フィルムの少なくとも片面に配置された粘着剤層とを有する。表面保護フィルムの粘着剤層は、軽剥離剤、導電材料等を含んでいてもよい。表面保護フィルムの粘着剤層が導電材料を含む場合、表面保護フィルムを表面処理層に貼り合わせて、その後、表面保護フィルムを剥離することによって、表面処理層に導電材料を含有させ、その表面に導電機能を付与することができる。導電材料としては、帯電防止層2が含みうる導電性ポリマーが挙げられる。表面保護フィルムの剥離によって表面処理層の表面に導電機能を付与するためには、表面保護フィルムの粘着剤層が導電材料とともに、軽剥離剤を含むことが好ましい。軽剥離剤としては、例えば、ポリオルガノシロキサン等のシリコーン樹脂が挙げられる。表面処理層の表面に付与する導電機能は、導電材料及び軽剥離剤の使用量によって適宜調整できる。
他の層は、部材間の密着性を向上させるための易接着層を含んでいてもよい。他の層が易接着層である場合、当該易接着層は、偏光板4及び帯電防止層2の間に配置されていてもよい。なお、易接着層に代えて、偏光板4の帯電防止層2側の表面に、コロナ処理、プラズマ処理等の易接着処理が施されていてもよい。
外光に対する光学フィルム1の反射率が低いほど、本発明の効果はより顕著となる。光学フィルム1の視感反射率Yは、例えば、5.0%以下であり、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.1%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、更には0.5%以下であってもよい。視感反射率Yの下限は、例えば、0.01%以上である。1.5%以下の視感反射率Yは、例えば、反射防止層5により達成可能である。視感反射率Yが1.5%以下、好ましくは1.1%以下、である粘着剤層付き光学フィルム10及びこれを備えた液晶パネルは、良好な視認性が求められる用途、例えば車載用ディスプレイ、に適している。
視感反射率Yは、次の方法によって特定することができる。まず、粘着剤層3によって、粘着剤層付き光学フィルム10を無アルカリガラスに貼り付ける。無アルカリガラスは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)を実質的に含まないガラスである。詳細には、無アルカリガラスにおけるアルカリ成分の重量比率は、例えば1000ppm以下であり、更には500ppm以下である。無アルカリガラスは、例えば板状であり、0.5mm以上の厚さを有する。次に、粘着剤層付き光学フィルム10を貼り合わされた表面とは反対側の無アルカリガラスの表面に黒色フィルムを貼り付ける。次に、粘着剤層付き光学フィルム10の表面に、5°の入射角でCIE標準光源D65からの光を入射させる。このときに生じた正反射光について、波長360nm~740nmの範囲における分光反射率を特定し、当該分光反射率からXYZ表色系(CIE1931)における三刺激値(X、Y及びZ)を特定する。三刺激値は、JIS Z8701:1999に詳細に規定されている。三刺激値のY値を視感反射率Yとして特定できる。
[帯電防止層]
帯電防止層2は、導電材料として導電性ポリマーを含む。導電性ポリマーは、ドーパントとの複合体であってもよい。帯電防止層2は、イオン性界面活性剤、導電性微粒子、イオン性化合物等を更に含んでいてもよい。導電性ポリマーを含む帯電防止層2は、高い透明性及び全光線透過率、低いヘイズ、良好な外観、優れた帯電防止効果、並びに、高温又は多湿環境下における安定した帯電防止効果を有しうる。導電性ポリマーを含む帯電防止層2は、液晶セルと偏光子との間に配置されている場合であっても、偏光解消を生じさせにくく、液晶表示装置が表示する画像のコントラストを低下させにくい。導電性ポリマーを含む帯電防止層2は、例えば、導電性微粒子のみを導電材料として含む層に比べて屈折率を低くできる。このため、導電性ポリマーを含む帯電防止層2は、液晶パネルの反射率を低下させることに適している。
帯電防止層2における導電性ポリマーの含有率は、例えば、0.01wt%~99.9wt%であり、1.0wt%~95.0wt%であってもよい。なお、本明細書において「wt%」は、重量%を意味する。
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリキノキサリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン及びこれらの誘導体が挙げられる。帯電防止層2は、これらの導電性ポリマーを1種又は2種以上含んでいてもよい。導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリアニリン及びこれらの誘導体が好ましく、ポリチオフェン誘導体が特に好ましい。ポリチオフェン、ポリアニリン及びこれらの誘導体は、例えば、水溶性又は水分散性を有する導電性ポリマーとして機能する。導電性ポリマーが水溶性又は水分散性を有する場合、導電性ポリマーの水溶液又は水分散液を用いて帯電防止層2を作製できる。この場合、帯電防止層2の作製に非水系の有機溶剤を用いる必要がないため、有機溶剤による偏光板4等の光学フィルム1の変質を抑制できる。
導電性ポリマーは、親水性官能基を有していてもよい。親水性官能基としては、例えばスルホン基、アミノ基、アミド基、イミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、硫酸エステル基、リン酸エステル基及びこれらの塩(例えば、4級アンモニウム塩基)が挙げられる。導電性ポリマーが親水性官能基を有する場合、導電性ポリマーが水に溶けやすい、又は、微粒子状の導電性ポリマーが水に分散しやすい傾向がある。
導電性及び化学的安定性の観点から、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-二置換チオフェン)であることが好ましい。ポリ(3,4-二置換チオフェン)としては、例えば、ポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)及びポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)が挙げられ、好ましくはポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)である。ポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)は、例えば、以下の式(I)で表される構造単位を有する。
式(I)において、R1は、例えば、炭素数1~4のアルキレン基である。アルキレン
基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1-エチル-1,2-エチレン基、1-メチル-1,3-プロピレン基及び2-メチル-1,3-プロピレン基が挙げられ、好ましくはメチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基であり、より好ましくは1,2-エチレン基である。導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)であることが好ましい。
ドーパントとしては、例えば、ポリアニオンが挙げられる。導電性ポリマーがポリチオフェン(又はその誘導体)である場合、ポリアニオンは、ポリチオフェン(又はその誘導体)とイオン対を形成し、ポリチオフェン(又はその誘導体)を水中に安定に分散させることができる。ポリアニオンとしては、特に限定されず、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等のカルボン酸ポリマー類;ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホン酸ポリマー類等が挙げられる。ポリアニオンは、ビニルカルボン酸類又はビニルスルホン酸類と、他のモノマー類との共重合体であってもよい。他のモノマー類としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物;スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。ポリアニオンは、ポリスチレンスルホン酸(PSS)であることが特に好ましい。ドーパントとの複合体である導電性ポリマーとしては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体(PEDOT/PSS)が挙げられる。
イオン性界面活性剤としては、例えば、4級アンモニウム塩型、ホスホニウム塩型、スルホニウム塩型等のカチオン系界面活性剤;カルボン酸型、スルホネート型、サルフェート型、ホスフェート型、ホスファイト型等のアニオン系界面活性剤;スルホベタイン型、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリウムベタイン型等の両性イオン系界面活性剤;多価アルコール誘導体、β-シクロデキストリン包接化合物、ソルビタン脂肪酸モノエステル、ソルビタン脂肪酸ジエステル、ポリアルキレンオキシド誘導体、アミンオキシド等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。
導電性微粒子としては、例えば、酸化スズ系、酸化アンチモン系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系等の金属酸化物微粒子が挙げられ、酸化スズ系微粒子が好ましい。酸化スズ系微粒子の材料としては、例えば、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化スズ、タングステンドープ酸化スズ、酸化チタン-酸化セリウム-酸化スズの複合体、酸化チタン-酸化スズの複合体等が挙げられる。導電性微粒子の平均粒径は、例えば1~100nmであり、好ましくは2~50nmである。導電性微粒子の平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度計等によって測定される粒度分布において、体積累積50%に相当する粒径(d50)を意味する。
イオン性化合物としては、例えば、アルカリ金属塩及び/又は有機カチオン-アニオン塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、アルカリ金属の有機塩及び無機塩が挙げられる。本明細書において、有機カチオン-アニオン塩は、有機カチオンを含む有機塩を意味する。有機カチオン-アニオン塩に含まれるアニオンは、有機アニオンであってもよく、無機アニオンであってもよい。有機カチオン-アニオン塩は、イオン性液体又はイオン性固体と呼ばれることがある。
アルカリ金属塩に含まれるアルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンが挙げられ、リチウムイオンが好ましい。
アルカリ金属の有機塩に含まれるアニオンとしては、例えば、CH3COO-、CF3C
OO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、C4F9SO3
-、C3F7COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、-O3S(CF2)3SO3
-、(CN)2N-及び下記一般式(1)~(4)で表されるアニオンが挙げられる。
(1) (CnF2n+1SO2)2N- (ただし、nは1~10の整数)
(2) CF2(CmF2mSO2)2N- (ただし、mは1~10の整数)
(3) -O3S(CF2)lSO3
- (ただし、lは1~10の整数)
(4) (CpF2p+1SO2)N-(CqF2q+1SO2) (ただし、p及びqは、互いに独
立して1~10の整数)
アルカリ金属の有機塩に含まれるアニオンは、フッ素原子を含むことが好ましい。フッ素原子を含むアニオンによれば、アルカリ金属の有機塩は、イオン解離性に優れたイオン化合物として機能する。
アルカリ金属の無機塩に含まれるアニオンとしては、例えば、Cl-、Br-、I-、A
lCl4
-、Al2Cl7
-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、NO3
-、AsF6
-、SbF6
-、N
bF6
-、TaF6
-、(FSO2)2N-、CO3
2-等が挙げられる。
アルカリ金属塩に含まれるアニオンとしては、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-等の上記の一般式(1)で表わされる(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドが
好ましく、特に(CF3SO2)2N-で表わされる(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
アルカリ金属の有機塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、KO3S(CF2)3SO3K、LiO3S(CF2)3SO3K等が挙げられ、好ましくはLiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9
SO2)2N、Li(CF3SO2)3Cであり、より好ましくはLi(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2Nである。アルカリ金属の有機塩は、フッ素含有リチウムイミド塩であることが好ましく、(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドリチウム塩であることが特に好ましい。
アルカリ金属の無機塩としては、例えば、過塩素酸リチウム及びヨウ化リチウムが挙げられる。
有機カチオン-アニオン塩に含まれる有機カチオンとしては、例えば、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
有機カチオン-アニオン塩に含まれるアニオンとしては、例えば、Cl-、Br-、I-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、NO3
-、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、(CN)2N-、C4F9SO3
-、C3F7COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、(FSO2)2N-、-O3S(CF2)3SO3
-及び上述した一般式(1)~(4)で表されるアニオンが挙げられる。有機カチオン-アニオン塩に含まれるアニオンは、フッ素原子を含むことが好ましい。フッ素原子を含むアニオンによれば、有機カチオン-アニオン塩は、イオン解離性に優れたイオン化合物として機能する。
イオン性化合物としては、上述したアルカリ金属塩及び有機カチオン-アニオン塩に限定されず、例えば、塩化アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム等の無機塩も挙げられる。導電材料は、上述したイオン性化合物を1種又は2種以上含んでいてもよい。
帯電防止層2が含みうる導電材料は、上述した材料に限定されない。導電材料としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然グラファイト、人造グラファイト等の炭素材料;チタンブラック;4級アンモニウム塩等のカチオン型導電性基、ベタイン化合物等の両性イオン型導電性基、スルホン酸塩等のアニオン型導電性基若しくはグリセリン等のノニオン型導電性基を有する単量体の単独重合体、又は、当該単量体と他の単量体との共重合体(例えば、4級アンモニウム塩基を有するアクリレート又はメタクリレート由来の構造単位を有する重合体等のイオン導電性を有する重合体);エチレン及びメタクリレートの共重合体等の親水性ポリマーをアクリル系樹脂等にアロイ化させたもの(永久帯電防止剤)も挙げられる。
帯電防止層2は、導電材料以外の他の材料を含んでいてもよい。他の材料としては、例えば、バインダー、レベリング剤、酸化防止剤が挙げられる。帯電防止層2は、レベリング剤を含むことが好ましい。レベリング剤は、帯電防止層2を作製する際の塗布液に含まれうる。塗布液は、レベリング剤に加えて、更に導電助剤を含むことが好ましい。塗布液がレベリング剤及び導電助剤を含む場合、帯電防止層2の厚みムラの抑制が可能となり、これにより、差ΔTの抑制が可能となる。また、塗布液に含まれるバインダーも、帯電防止層2の被膜形成性を向上させて厚みムラを抑制する作用を有する。この観点から、塗布液は、レベリング剤及び導電助剤に加えてバインダーを含むことがより好ましい。
帯電防止層2は、レベリング剤及び導電助剤を含む塗布液から形成された層であってもよいし、レベリング剤、導電助剤及びバインダーを含む塗布液から形成された層であってもよい。
バインダーとしては、例えば、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等が挙げられ、好ましくはオキサゾリン基含有ポリマー、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂であり、特に好ましくはポリウレタン系樹脂である。帯電防止層2は、これらのバインダーを1種又は2種以上含んでいてもよい。帯電防止層2におけるバインダーの含有率は、導電性ポリマー100重量部に対して、例えば、1.0~1000重量部であり、好ましくは10~900重量部である。
レベリング剤としては、例えば、帯電防止層2を作製する塗布液に対して低い表面張力を与える化合物が挙げられる。レベリング剤により、塗布液の塗布により形成された塗布膜の表面の平坦性が向上する。具体的なレベリング剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン等のポリシロキサン、ポリアルキレンオキシド、フッ素化合物等が挙げられる。帯電防止層2は、これらのレベリング剤を、1種又は2種以上含んでいてもよい。帯電防止層2におけるレベリング剤の含有率は、導電性ポリマー100重量部に対して、例えば、0.1~60重量部であり、好ましくは1.0重量部以上である。
導電助剤としては、例えば、極性基を有する有機化合物が挙げられる。極性基の例は、アミド基、ヒドロキシ基及びスルフィニル基である。有機化合物は、2以上の極性基を有していてもよい。有機化合物は、塗布液における導電性ポリマーの分散性を向上させ、これにより、帯電防止層2の導電性を向上させる導電助剤としての作用に優れると共に、導電性ポリマー間の間隙に浸透することで帯電防止層2の厚みムラをより確実に抑制できることから、分子量500以下の低分子化合物であることが好ましい。有機化合物は、帯電防止層2を安定して形成するために、100℃以上、好ましくは180℃以上の沸点を有することが好ましい。
具体的な導電助剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-エチルアセトアミド、N-フェニル-N-プロピルアセトアミド、ベンズアミド、N-メチルピロリドン、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム、ε-カプロラクタム、ラウロラクタム、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、β-チオジグリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、エリトリトール、インマトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、スクロースが挙げられる。塗布液は、これらの導電助剤を、1種又は2種以上含んでいてもよい。塗布液における導電助剤の含有率は、導電助剤及び溶媒の合計に対して、例えば、0.1~30重量%であり、好ましくは0.5~10重量%である。
帯電防止層2の厚さは、例えば、5nm~180nmであり、好ましくは150nm以下であり、より好ましくは120nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下であり、特に好ましくは80nm以下であり、とりわけ好ましくは50nm以下である。帯電防止層2の厚さは、10nm以上であってもよく、20nm以上であってもよい。
光学フィルム1に対する帯電防止層2の投錨力は、例えば、10.0N/25mm以上であり、好ましくは12.0N/25mm以上であり、より好ましくは14.0N/25mm以上であり、さらに好ましくは18.0N/25mm以上である。なお、バインダーは、光学フィルム1に対する帯電防止層2の密着性及び接着性(投錨力)を向上させる傾向がある。
上記投錨力は、次の方法によって測定することができる。まず、評価対象である粘着剤層付き光学フィルム10を幅25mm×長さ150mmに切り出して試験片とする。次に、両面テープを介して、試験片が備える光学フィルム1の表面全体をステンレス製試験板に重ね合わせ、2kgのローラを1往復させて、これらを圧着させる。次に、試験片が備える粘着剤層3を評価用シートに重ね合わせ、2kgのローラを1往復させて、これらを圧着させる。評価用シートは、幅30mm×長さ150mmのサイズを有し、試験中に粘着剤層3から剥離しないものである限り特に限定されない。評価用シートとしては、例えば、ITOフィルム(125テトライトOES(尾池工業社製)等)を用いることができる。次に、市販の引張試験機を用いて、評価用シートを把持した状態で、剥離角度180°、引張速度300mm/分で粘着剤層3及び帯電防止層2を光学フィルム1から引き剥がした際の剥離力の平均値を投錨力として特定する。なお、上記の試験は、23℃の雰囲気下で行う。
帯電防止層2の表面抵抗率は、例えば、1.0×102Ω/□~1.0×1012Ω/□である。表面抵抗率の上限は、1.0×1011Ω/□以下、1.0×108Ω/□以下、1.0×107Ω/□以下、1.0×106Ω/□以下、1.0×105Ω/□以下、更には1.0×104Ω/□以下であってもよい。表面抵抗率が低いほど、帯電防止層2の帯電防止性能は高くなる。一方、液晶パネルがタッチセンシング機能を有する場合に、液晶パネルのタッチ感度を良好に維持しつつ、液晶パネルの帯電を抑制するためには、表面抵抗率の下限は、1.0×105Ω/□より大きくてもよく、1.0×106Ω/□以上、更には1.0×107Ω/□以上であってもよい。表面抵抗率は、例えば、帯電防止層2の組成及び/又は厚さにより制御できる。同じ組成では厚さが大きい程、帯電防止層2の表面抵抗率は、通常、小さくなる。
帯電防止層2の表面抵抗率は、次の方法によって特定することができる。まず、帯電防止層2の表面が外部に露出している積層体を準備する。このような積層体としては、例えば、光学フィルム1及び帯電防止層2からなる積層体Lが挙げられる。次に、準備した積層体Lにおける帯電防止層2の表面について、表面抵抗率を測定する。帯電防止層2の表面抵抗率は、JIS K6911:1995に規定された方法に準拠して測定することができる。測定には、JIS K6911:1995に規定された方法に準拠した測定装置、例えば、三菱ケミカルアナリテック社製のハイレスタ-UP MCP-HT450(表面抵抗率が1.0×105Ω/□以上である場合)又はロレスタ-GP MCP-T600(表面抵抗率が1.0×105Ω/□未満である場合)を使用できる。
帯電防止層2による全光線透過率の損失Aは、例えば0.9%以下であり、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.6%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.4%以下であり、とりわけ好ましくは0.2%未満である。損失Aの下限値は、特に限定されず、例えば0.01%である。損失Aは、次の方法によって特定することができる。まず、光学フィルム1の全光線透過率T1と、光学フィルム1及び帯電防止層2からなる積層体Lの全光線透過率T2とを測定する。積層体Lの全光線透過率T2は、光学フィルム1側から光を入射させた場合の値である。全光線透過率T1と全光線透過率T2との差(T1-T2)を損失Aとして特定することができる。
帯電防止層2は、例えば、次の方法によって作製することができる。まず、導電材料を含む塗布液を調製する。塗布液は、通常、溶液又は分散液である。塗布液の溶媒は、例えば水であり、水溶性の有機溶媒を更に含んでいてもよい。有機化合物である導電助剤を塗布液が含む場合には、溶媒は、水溶性の有機溶媒を更に含むことが好ましい。水溶性の有機溶媒により導電助剤の分散性が向上し、これにより、帯電防止層2の厚みムラをより確実に抑制できる。水溶性の有機溶媒を更に含む場合、溶媒における当該有機溶媒の含有率は、例えば、1.0wt%~99.9wt%であり、好ましくは5.0wt%以上である。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられる。
塗布液は、レベリング剤及び導電助剤を含むことが好ましく、レベリング剤、導電助剤及びバインダーを含むことがより好ましい。
塗布液における固形分濃度は、例えば、0.1wt%~5.0wt%であり、好ましくは0.3wt%以上である。固形分濃度がこれらの範囲にある場合、帯電防止層2の厚みムラを更に抑制できる。
次に、光学フィルム1の表面に上記塗布液を塗布する。得られた塗布膜を乾燥させることによって、光学フィルム1の上に帯電防止層2が作製される。
[粘着剤層]
粘着剤層3は、粘着剤を含む層である。粘着剤層3に含まれる粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。粘着剤層3に含まれる粘着剤としては、光学的透明性に優れ、適切な濡れ性、凝集性、接着性等の粘着特性を有し、耐候性、耐熱性等に優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分として含有する。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。「主成分」は、重量基準で最も多くポリマーに含まれる構造単位を意味する。
(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を形成するための(メタ)アクリル酸エステルに含まれるエステル部分((メタ)アクリル酸基以外の部分)の炭素数は、特に限定されず、例えば1~18である。(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分は、フェニル基、フェノキシ基等の芳香族環を含んでいてもよく、アルキル基を含んでいてもよい。このアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を1種又は2種以上含んでいてもよい。(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位に含まれるエステル部分の炭素数の平均値は、3~9であることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着特性、耐久性、位相差の調整、屈折率の調整等の観点から、芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有することが好ましい。芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルにより粘着剤層3の位相差を調整することで、光学フィルム1が熱収縮し、粘着剤層3が延伸されることによって生じる液晶表示装置の光漏れを抑制することができる。さらに、この(メタ)アクリル酸エステルは、粘着剤層3の屈折率を調整し、粘着剤層3と被着体(例えば、液晶セル)との屈折率の差を低減させることに適している。屈折率の差が低減すれば、粘着剤層3と被着体との界面での光の反射が抑制され、液晶表示装置の視認性を向上させることができる。
芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、スチリル(メタ)アクリレート等のベンゼン環を含む(メタ)アクリル酸エステル;ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のナフタレン環を含む(メタ)アクリル酸エステル;ビフェニル(メタ)アクリレート等のビフェニル環を含む(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、粘着剤層3の粘着特性や耐久性を向上させる観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルにより粘着剤層3の屈折率を調整する場合、(メタ)アクリル系ポリマーの全構成単位における芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有率は、3wt%~25wt%であることが好ましい。この含有率は、22wt%以下がより好ましく、20wt%以下がさらに好ましい。この含有率は、8wt%以上がより好ましく、12wt%以上がさらに好ましい。芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有率が25wt%以下であれば、光学フィルム1の収縮による液晶表示装置の光漏れを抑制できるとともに、粘着剤層3のリワーク性を向上できる傾向がある。この含有率が3wt%以上であれば、液晶表示装置の光漏れを十分に抑制できる傾向がある。
(メタ)アクリル系ポリマーは、接着性及び耐熱性を向上させる観点から、上述した芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位以外に、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を含む重合性官能基を有する共重合モノマーに由来する構造単位を1種類以上有していてもよい。この共重合モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー等が挙げられる。
上記の共重合モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;N-アクリロイルモルホリン等のモルホリン系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー等も挙げられる。
上記の共重合モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、2-メトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー等も挙げられる。さらに、共重合モノマーとしては、例えば、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィンモノマー;ビニルエーテル等のエーテル基含有ビニルモノマーも挙げられる。
上記の共重合モノマーとしては、例えば、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4-ビニルブチルトリメトキシシラン、4-ビニルブチルトリエトキシシラン、8-ビニルオクチルトリメトキシシラン、8-ビニルオクチルトリエトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン等のシラン系モノマーも挙げられる。
上記の共重合モノマーとしては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物((メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマー);ポリエステル、エポキシ、ウレタン等の骨格に(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を有する化合物が2個以上付加した化合物(例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレート)等を用いることもできる。
(メタ)アクリル系ポリマーにおける上述した共重合モノマーに由来する構造単位の含有率は、特に限定されず、例えば、0wt%~20wt%であり、好ましくは0.1wt%~15wt%であり、より好ましくは0.1wt%~10wt%である。
共重合モノマーとしては、接着性及び耐久性の観点から、ヒドロキシル基含有モノマー及びカルボキシル基含有モノマーが好ましい。共重合モノマーとして、ヒドロキシル基含有モノマー及びカルボキシル基含有モノマーを併用してもよい。共重合モノマーは、例えば、粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物が架橋剤を含む場合に、架橋剤との反応点として機能する。ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー等は、分子間架橋剤との反応性に優れているため、得られる粘着剤層3の凝集性及び耐熱性を向上させることに適している。特に、ヒドロキシル基含有モノマーは、粘着剤層3のリワーク性を向上させることに適している。カルボキシル基含有モノマーは、粘着剤層3の耐久性とリワーク性とを両立させることに適している。
共重合モノマーとしてヒドロキシル基含有モノマーを用いる場合、(メタ)アクリル系ポリマーにおけるヒドロキシル基含有モノマーに由来する構造単位の含有率は、0.01wt%~15wt%であることが好ましく、0.03wt%~10wt%であることがより好ましく、0.05wt%~7wt%であることがさらに好ましい。共重合モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを用いる場合、(メタ)アクリル系ポリマーにおけるカルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位の含有率は、0.05wt%~10wt%であることが好ましく、0.1wt%~8wt%であることがより好ましく、0.2wt%~6wt%であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、例えば、50万~300万であり、耐久性、特に耐熱性の観点から、好ましくは70万~270万であり、より好ましくは80万~250万である。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が50万以上である場合、粘着剤層3は、実用上十分な耐熱性を有する傾向がある。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が300万以下である場合、粘着剤層3を作製するための塗工液の粘度を容易に調節できる傾向がある。塗工液の粘度を容易に調節できれば、塗工液に多量の希釈溶剤を添加する必要がないため、粘着剤層3の製造コストを抑えることができる。本明細書において、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)による測定結果をポリスチレン換算した値をいう。
(メタ)アクリル系ポリマーは、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合等の公知の重合反応によって作製できる。(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
粘着剤層3に含まれる粘着剤は、ベースポリマーが架橋剤によって架橋された構造を有していてもよい。例えば、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを用いる場合には、架橋剤として、有機系架橋剤又は多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤等が挙げられる。多官能性金属キレートとは、多価金属が有機化合物と共有結合又は配位結合しているものを意味する。多価金属を構成する原子としては、例えば、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。多官能性金属キレートに含まれる有機化合物は、例えば酸素原子等を含む。この有機化合物としては、例えば、アルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
粘着剤において、架橋剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、3重量部以下が好ましく、0.01~3重量部がより好ましく、0.02~2重量部がさらに好ましく、0.03~1重量部が特に好ましい。
粘着剤層3は、粘着剤以外の他の材料をさらに含んでいてもよい。他の材料としては、例えば、導電材料、シランカップリング剤及びその他の添加剤が挙げられる。導電材料は、粘着剤層3の表面抵抗率を低下させ、液晶表示装置の帯電による表示不良を防止することに適している。導電材料としては、帯電防止層2の説明において上述したものが挙げられる。粘着剤層3に含まれる導電材料は、ベースポリマーとの相溶性及び粘着剤層3の透明性の観点から、イオン性化合物であることが好ましい。特に、粘着剤層3が(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤を含む場合、導電材料としてイオン性化合物を用いることが好ましい。イオン性化合物は、帯電防止性能の観点からイオン性液体であることが好ましい。
粘着剤層3は、粘着剤のベースポリマー(例えば、(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対して、導電材料(例えば、イオン性化合物)を0.05~20重量部含むことが好ましい。粘着剤層3が導電材料を0.05重量部以上含むことによって、粘着剤層3の表面抵抗率が十分に低下し、粘着剤層3の帯電防止性能が十分に向上する傾向がある。粘着剤層3は、粘着剤のベースポリマー100重量部に対して、導電材料を0.1重量部以上含むことが好ましく、0.5重量部以上含むことがより好ましい。粘着剤層3に実用上十分な耐久性を付与する観点から、粘着剤層3は、粘着剤のベースポリマー100重量部に対して、導電材料を20重量部以下含むことが好ましく、10重量部以下含むことがより好ましい。
その他の添加剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリプロピレングリコール)等のポリエーテル化合物、着色剤、顔料、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉等を使用する用途に応じて適宜用いることができる。添加剤は、粉体であってもよく、粒子状であってもよく、箔状であってもよい。添加剤として、制御可能な範囲内で還元剤を用いることによってレドックス系を構成してもよい。粘着剤層3は、粘着剤のベースポリマー(例えば、(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対して、その他の添加剤を5重量部以下含むことが好ましく、3重量部以下含むことがより好ましく、1重量部以下含むことがさらに好ましい。
粘着剤層3の厚さは、特に限定されず、例えば5~100μmであり、好ましくは10~50μmである。
粘着剤層3の表面抵抗率は、特に限定されないが、1.0×1014Ω/□未満であってもよく、1.0×1012Ω/□以下であることが好ましい。粘着剤層3の表面抵抗率の下限値は、特に限定されないが、耐久性の観点から、例えば1.0×108Ω/□である。
粘着剤層3の表面抵抗率は、帯電防止層2の表面抵抗率と同じ方法によって測定できる。
[粘着剤層付き光学フィルムの製造方法]
粘着剤層付き光学フィルム10は、例えば、次の方法によって作製できる。ただし、粘着剤層付き光学フィルム10の製法は、以下の例に限定されない。
上述のようにして、光学フィルム1及び帯電防止層2の積層体を得る。次に、粘着剤を含む溶液を調製する。この溶液をセパレータの表面に塗布することによって塗布膜が得られる。セパレータは、特に限定されず、例えば、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることができる。次に、塗布膜を乾燥させることによって、セパレータの上に粘着剤層3が形成される。得られた粘着剤層3を上記積層体の上、例えば帯電防止層2の上、に転写して、粘着剤層付き光学フィルム10を作製できる。
(液晶パネル)
本実施形態の液晶パネル100を図5に示す。図5の液晶パネル100は、粘着剤層付き光学フィルム10及び液晶セル20を備える。液晶セル20は、液晶層21、第1透明基板22及び第2透明基板23を備える。液晶層21は、第1透明基板22及び第2透明基板23の間に配置されており、第1透明基板22及び第2透明基板23のそれぞれに接している。粘着剤層付き光学フィルム10と液晶セル20との間には、ITO層をはじめとする導電層(更なる導電層)が設けられていない。粘着剤層付き光学フィルム10は、粘着剤層3を介して、液晶セル20における視認側の透明基板(第1透明基板22)に直接接している。換言すれば、粘着剤層付き光学フィルム10と液晶セル20とは、ITO層を介することなく、接している。ただし、本発明の液晶パネルは、粘着剤層付き光学フィルム10と、一対の透明基板及び一対の透明基板の間に配置された液晶層を備える液晶セル20と、を備え、粘着剤層付き光学フィルム10と液晶セル20との間に導電層が設けられていない限り、図5の例に限定されない。例えば、液晶セル20における液晶層22と第1透明基板22及び/又は第2透明基板23とは、直接接していなくてもよい。
液晶層21は、例えば、電界が存在しない状態でホモジニアス配向した液晶分子を含む。このような液晶分子を含む液晶層21は、IPS(In-Plane-Switching)方式に適している。ただし、液晶層21は、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、π型、VA(Vertical Alignment)型等に用いられてもよい。液晶層21の厚さは、例えば、1.5μm~4μmである。
第1透明基板22及び第2透明基板23の材料としては、例えば、ガラス及びポリマーが挙げられる。本明細書では、ポリマーで構成された透明基板をポリマーフィルムと呼ぶことがある。透明基板を構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート等が挙げられる。ガラスで構成された透明基板の厚さは、例えば、0.1mm~1mmである。ポリマーで構成された透明基板の厚さは、例えば、10μm~200μmである。
液晶セル20は、液晶層21、第1透明基板22及び第2透明基板23以外の他の層をさらに含んでいてもよい。他の層としては、例えば、カラーフィルタ、易接着層及びハードコート層が挙げられる。カラーフィルタは、例えば、液晶層21よりも視認側に配置されており、好ましくは第1透明基板22と粘着剤層付き光学フィルム10の粘着剤層3との間に位置する。易接着層及びハードコート層は、例えば、第1透明基板22又は第2透明基板23の表面上に配置されている。
液晶パネル100は、帯電防止層2の側面に電気的に接続している導通構造(図示せず)をさらに備えていてもよい。導通構造をアースに接続すれば、粘着剤層付き光学フィルム10が静電気によって帯電することをより抑制できる。導通構造は、帯電防止層2の側面全体を覆っていてもよく、帯電防止層2の側面を部分的に覆っていてもよい。帯電防止層2の側面全体の面積に対する導通構造によって覆われた帯電防止層2の側面の面積の比率は、例えば1%以上であり、好ましくは3%以上である。導通構造は、帯電防止層2の側面だけでなく、光学フィルム1及び粘着剤層3の側面にも電気的に接続していてもよい。
導通構造の材料としては、例えば銀、金等の金属で構成された導電性ペースト;導電性接着剤;他の導電材料が挙げられる。導通構造は、帯電防止層2の側面から伸びる配線であってもよい。
液晶パネル100は、光学フィルム1以外の他の光学フィルムをさらに備えていてもよい。他の光学フィルムの例は、光学フィルム1の例と同じである。
他の光学フィルムが偏光板である場合、当該偏光板は、例えば、粘着剤層を介して、液晶セル20の第2透明基板23と貼り合わされる。この偏光板は、例えば、偏光板4について上述した構成を有しうる。他の光学フィルムとしての偏光板において、偏光子の透過軸(又は吸収軸)は、例えば、偏光板4における偏光子の透過軸(又は吸収軸)と直交している。偏光板と第2透明基板7とを貼り合わせるための粘着剤層の材料としては、粘着剤層3について上述したものを用いることができる。この粘着剤層の厚さは、特に限定されず、例えば1~100μmであり、好ましくは2~50μmであり、より好ましくは2~40μmであり、さらに好ましくは5~35μmである。
液晶パネル100は、タッチセンサを必要としない用途、例えば車両用のクラスタパネルやミラーディスプレイ、に適している。クラスタパネルは、車両の走行速度やエンジン回転数等を表示するパネルである。
外光に対する液晶パネル100の反射率が低いほど、本発明の効果はより顕著となる。液晶パネル100の視感反射率Yは、例えば、8.0%以下であり、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.3%以下、更には1.1%以下であってもよい。視感反射率Yの下限は、例えば、0.01%以上である。視感反射率Yが1.5%以下、好ましくは1.3%以下、である液晶パネル100は、良好な視認性が求められる用途、例えば車載用ディスプレイ、に適している。液晶パネル100の視感反射率Yは、粘着剤層付き光学フィルム10の視感反射率Yと同様に測定できる。
本発明の液晶パネルは、上述した以外の更なる層及び/又は部材を備えていてもよい。
(液晶パネルの変形例)
図5の液晶パネル100は、タッチセンサ又はタッチパネルを更に備えていてもよい。図6は、タッチパネル30を備えた液晶パネル110を示している。タッチパネル30を除き、液晶パネル110の構造は、液晶パネル100の構造と同じである。したがって、液晶パネル100と液晶パネル110とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。
液晶パネル110において、タッチパネル30は、例えば、光学フィルム1よりも視認側に配置されている。タッチパネル30は、粘着剤層付き光学フィルム10に接しておらず、タッチパネル30と粘着剤層付き光学フィルム10との間には空隙(空気層)が形成されている。液晶パネル110は、いわゆるアウトセル型液晶パネルである。タッチパネル30としては、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式等を採用することができる。タッチパネル30が抵抗膜方式である場合、タッチパネル30は、例えば、スペーサを介して、透明導電性薄膜を有する2つの電極板が対向するように配置された構造を有する。タッチパネル30が静電容量方式である場合、タッチパネル30は、例えば、所定のパターン形状を有する透明導電性薄膜を備えた透明導電性フィルムで構成されている。
(液晶表示装置の実施形態)
本実施形態の液晶表示装置は、例えば、液晶パネル100及び照明システムを備えている。液晶表示装置では、液晶パネル100に代えて、図6を参照して説明した液晶パネル110も使用可能である。液晶表示装置において、液晶パネル100は、例えば、照明システムよりも視認側に配置されている。照明システムは、例えば、バックライト又は反射板を有し、液晶パネル100に光を照射する。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。なお、以下では、特にことわりのない場合、「%」は「wt%」を示し、「部」は「重量部」を示す。特にことわりのない場合、室内の温度及び湿度は、23℃、65%RHである。
<(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量>
粘着剤層に使用した(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。(メタ)アクリル系ポリマーのMw/Mnについても、同様に測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8mL/min
・注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
<粘着剤層A>
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管及び冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート76.9部、ベンジルアクリレート18部、アクリル酸5部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1部を仕込むことによってモノマー混合物を得た。さらに、モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込んだ。混合物を緩やかに撹拌しながら、フラスコ内について窒素ガスを導入して窒素置換した。フラスコ内の液温を55℃付近に維持して8時間重合反応を行うことによって、重量平均分子量(Mw)200万、Mw/Mn=4.1のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
次に、アクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、0.45部のイソシアネート架橋剤(東ソー社製のコロネートL、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート)、0.1部の過酸化物架橋剤(日本油脂社製のナイパーBMT)及び0.2部のシランカップリング剤(信越化学工業社製のKBM-403、γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン)を更に配合することによって、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。
次に、得られた溶液をセパレータ(三菱化学ポリエステルフィルム社製のMRF38)の片面に塗布した。セパレータは、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムであった。得られた塗布膜を155℃で1分間乾燥させることによって、セパレータの表面に粘着剤層Aを形成した。粘着剤層Aの厚さは、20μmであった。
<粘着剤層B>
ブチルアクリレート94.9部、アクリル酸5部及び4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1部を4つ口フラスコに仕込んだ以外は粘着剤層Aと同様にして、重量平均分子量(Mw)210万、Mw/Mn=4.0のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
次に、調製した上記アクリル系ポリマーの溶液を用いた以外は粘着剤層Aと同様にして、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製し、更にセパレータの片面に塗布し、乾燥させて、粘着剤層Bを形成した。粘着剤層Bの厚さは、12μmであった。
<反射防止層AR1>
表面にアンチグレア層が形成されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを準備した。ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置にこのTACフィルムを導入し、フィルムを走行させることによってアンチグレア層の表面にボンバード処理(Arガスによるプラズマ処理)を行った。次に、アンチグレア層の表面の上に、密着層として、物理膜厚が5nmのSiOx層(x<2)を成膜した。次に、密着層の上に、物理膜厚が13nmのNb2O5層(第1の高屈折率層)、物理膜厚が30nmのSiO2層(第1の低屈折率層)、物理膜厚が100nmのNb2O5層(第2の高屈折率層)及び物理膜厚が85nmのSiO2層(第2の低屈折率層)を順に成膜して、積層体aを作製した。これらの酸化物薄膜を形成するときには、アルゴンの導入量及び排気量を調整して装置内の圧力を一定に保ちつつ、プラズマ発光モニタリング(PEM)制御によって、導入する酸素の量を調整した。
次に、積層体aの第2の低屈折率層(SiO2層)の表面に、防汚層として、フッ素系樹脂からなる層(物理膜厚:9nm)を形成した。さらに、積層体aのTACフィルムの表面に粘着剤層Bを転写することによって、粘着剤層付き反射防止膜AR1を作製した。
<偏光板P1>
まず、以下の方法によってアクリルフィルムを作製した。撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた容量30Lの釜型反応器に、8,000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2,000gの2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10,000gの4-メチル-2-ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)、5gのn-ドデシルメルカプタンを仕込んだ。反応器内に窒素を導入しつつ、反応器内の混合物を105℃まで昇温し還流させた。次に、重合開始剤として5.0gのt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(カヤカルボンBIC-7、化薬アクゾ社製)を添加するとともに、10.0gのt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を4時間かけて滴下し、溶液重合を行った。溶液重合は、還流下、約105~120℃で行った。溶液の滴下後に、さらに4時間かけて熟成を行った。
次に、得られた重合体溶液に、30gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(Phoslex A-18、堺化学工業製)を加え、還流下、約90~120℃で5時
間、環化縮合反応を行った。次に、得られた溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/hの処理速度で導入した。押出機内では、さらなる環化縮合反応とともに脱揮が進行した。これにより、ラクトン環含有重合体の透明なペレットを得た。
得られたラクトン環含有重合体について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.17質量%の質量減少を検知した。また、このラクトン環含有重合体は、重量平均分子量(Mw)が133,000、メルトフローレートが6.5g/10分、ガラス転移温度が131℃であった。
得られたペレットと、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂(トーヨーAS AS
20、東洋スチレン社製)とを、質量比90/10で、単軸押出機(スクリュー30mmφ)を用いて混練押出することにより、透明なペレットを得た。得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。
50mmφ単軸押出機を用いて、このペレットを400mm幅のコートハンガータイプTダイから溶融押出することによって、厚さ120μmのフィルムを作製した。2軸延伸装置を用いて、フィルムを150℃の温度条件下、縦2.0倍及び横2.0倍に延伸することにより、厚さ30μmの延伸フィルム(アクリルフィルム)を得た。この延伸フィルムの光学特性を測定したところ、全光線透過率が93%であり、面内位相差Δndが0.8nmであり、厚み方向位相差Rthが1.5nmであった。
次に、以下の方法によって偏光板P1を作製した。まず、速度比が互いに異なる複数のロールの間において、厚さ45μmのポリビニルアルコールフィルムを濃度0.3%のヨウ素溶液(温度30℃)中で1分間染色しながら、延伸倍率が3倍になるように延伸した。次に、得られた延伸フィルムをホウ酸の濃度が4%であり、ヨウ化カリウムの濃度が10%である水溶液(温度60℃)中に0.5分間浸漬しながら、総延伸倍率が6倍になるように延伸した。次に、延伸フィルムを濃度1.5%のヨウ化カリウムを含む水溶液(温度30℃)中に10秒間浸漬することによって洗浄した。次に、延伸フィルムを50℃で4分間乾燥させることによって、厚さ18μmの偏光子を得た。得られた偏光子の一方の主面に、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、厚さ40μmのTACフィルム(コニカミノルタ製、商品名「KC4UY」)を貼り合わせた。偏光子の他方の主面には、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、上述した厚さ30μmのアクリルフィルムを貼り合わせた。これにより、偏光板P1を得た。
<帯電防止層AE1>
PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリスチレンスルホン酸)とを含む水分散液(ヘレウス社製、商品名「Clevious P」)を28%アンモニア水(東京化成工業社製)にて中和し、固形分率1%としたもの(以下、「PEDOT-PSS-NH4」と記載)を6.9部、バインダーであるポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製のスーパーフレックス210、固形分濃度35%)及びオキサゾリン基含有ポリマー(日本触媒社製のエポクロスWS700、固形分濃度25%)をPEDOT-PSS-NH4100部に対して、それぞれ233部及び83部、レベリング剤であるポリエーテル変性シロキサン(信越化学社製のKF-6017)をPEDOT-PSS-NH4100部に対して17部、及び導電助剤であるN-メチルピロリドン2.8部、並びに水18.5部及びイソプロピルアルコール(IPA)71.1部からなる混合溶媒を混合することによって、固形分濃度が0.30%である塗布液を調製した。次に、塗布液を偏光板P1の片面に塗布した。得られた塗布膜を80℃で1分間乾燥させることによって、帯電防止層AE1を形成した。これにより、偏光板P1及び帯電防止層AE1からなる積層体を得た。帯電防止層AE1の厚さは、20nmであった。
<帯電防止層AE2>
PEDOT-PSS-NH4、N-メチルピロリドン、水及びIPAの混合量を、それぞれ、14.6部、2.5部、16.5部及び63.5部に変更すると共に、オキサゾリン基含有ポリマーの混合量をPEDOT-PSS-NH4に対して333部に変更して固形分濃度1.00%の塗布液を調製した以外は帯電防止層AE1と同様にして、帯電防止層AE2を形成した。これにより、偏光板P1及び帯電防止層AE2からなる積層体を得た。帯電防止層AE2の厚さは、70nmであった。
<帯電防止層AE3>
PEDOT-PSS-NH4、N-メチルピロリドン、水及びIPAの混合量を、それぞれ、35.1部、1.9部、12.5部及び48.1部に変更すると共に、オキサゾリン基含有ポリマー及びポリエーテル変性シロキサンの混合量をPEDOT-PSS-NH4に対して、それぞれ0部及び8.3部に変更して固形分濃度1.20%の塗布液を調製した以外は帯電防止層AE1と同様にして、帯電防止層AE3を形成した。これにより、偏光板P1及び帯電防止層AE3からなる積層体を得た。帯電防止層AE3の厚さは、80nmであった。
<帯電防止層AE4>
PEDOT-PSS-NH4、N-メチルピロリドン、水及びIPAの混合量を、それぞれ、23.4部、2.3部、57.8部及び15.0部に変更すると共に、オキサゾリン基含有ポリマー及びポリエーテル変性シロキサンの混合量をPEDOT-PSS-NH4に対して、それぞれ0部及び8.3部に変更して固形分濃度0.80%の塗布液を調製した以外は帯電防止層AE1と同様にして、帯電防止層AE4を形成した。これにより、偏光板P1及び帯電防止層AE4からなる積層体を得た。帯電防止層AE4の厚さは、50nmであった。
<帯電防止層AE5>
PEDOTとPSSとを含む水分散液としてヘレウス社製、商品名「Clevious PH1000」を使用すると共に、当該水分散液より得たPEDOT-PSS-NH4、並びにN-メチルピロリドン、水及びIPAの混合量を、それぞれ、43.9部、1.6部、40.9部及び10.6部に変更すると共に、オキサゾリン基含有ポリマー及びポリエーテル変性シロキサンの混合量をPEDOT-PSS-NH4に対して、それぞれ0部及び8.3部に変更して固形分濃度1.50%の塗布液を調製した以外は帯電防止層AE1と同様にして、帯電防止層AE5を形成した。これにより、偏光板P1及び帯電防止層AE5からなる積層体を得た。帯電防止層AE5の厚さは、100nmであった。
<帯電防止層AE6>
レベリング剤であるポリエーテル変性シロキサンを使用せず、かつ、PEDOT-PSS-NH4、N-メチルピロリドン、水及びIPAの混合量を、それぞれ、24.0部、2.2部、14.9部及び57.3部に変更すると共に、オキサゾリン基含有ポリマーの混合量をPEDOT-PSS-NH4に対して0部に変更して固形分濃度0.80%の塗布液を調製した以外は帯電防止層AE1と同様にして、帯電防止層AE6を形成した。これにより、偏光板P1及び帯電防止層AE6からなる積層体を得た。帯電防止層AE6の厚さは、50nmであった。
<帯電防止層AE7>
レベリング剤であるポリエーテル変性シロキサン及び導電助剤であるN-メチルピロリドンを使用せず、かつ、PEDOT-PSS-NH4、水及びIPAの混合量を、それぞれ、6.0部、84.2部及び9.4部に変更すると共に、オキサゾリン基含有ポリマーの混合量をPEDOT-PSS-NH4に対して0部に変更して固形分濃度0.20%の塗布液を調製した以外は帯電防止層AE1と同様にして、帯電防止層AE7を形成した。これにより、偏光板P1及び帯電防止層AE7からなる積層体を得た。帯電防止層AE7の厚さは、10nmであった。
<帯電防止層AE8>
導電助剤であるN-メチルピロリドンを使用せず、かつ、PEDOT-PSS-NH4、水及びIPAの混合量を、それぞれ、23.4部、60.0部及び15.0部に変更すると共に、オキサゾリン基含有ポリマーの混合量をPEDOT-PSS-NH4に対して0部に変更して固形分濃度0.80%の塗布液を調製した以外は帯電防止層AE1と同様にして、帯電防止層AE8を形成した。これにより、偏光板P1及び帯電防止層AE8からなる積層体を得た。帯電防止層AE8の厚さは、50nmであった。
帯電防止層AE1~AE8の形成に使用した塗布液の構成を以下の表1にまとめる。
(実施例1)
粘着剤層付き反射防止層AR1を偏光板P1及び帯電防止層AE1からなる積層体の偏光板P1側に接合した。接合は、反射防止層AR1が有する粘着剤層を介して行った。次に、粘着剤層Aを帯電防止層AE1上に転写して、実施例1の粘着剤層付き光学フィルムを得た。
(実施例2)
偏光板P1及び帯電防止層AE2からなる積層体を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の粘着剤層付き光学フィルムを得た。
(実施例3)
偏光板P1及び帯電防止層AE3からなる積層体を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の粘着剤層付き光学フィルムを得た。
(実施例4)
偏光板P1及び帯電防止層AE4からなる積層体を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の粘着剤層付き光学フィルムを得た。
(実施例5)
粘着剤層付き反射防止層AR1を使用することなく、偏光板P1及び帯電防止層AE4からなる積層体の帯電防止層AE4上に粘着剤層Aを転写して、実施例5の粘着剤層付き光学フィルムを得た。
(実施例6)
偏光板P1及び帯電防止層AE5からなる積層体を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例6の粘着剤層付き光学フィルムを得た。
(比較例1)
偏光板P1及び帯電防止層AE6からなる積層体を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の粘着剤層付き光学フィルムを得た。
(比較例2)
偏光板P1及び帯電防止層AE7からなる積層体を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の粘着剤層付き光学フィルムを得た。
(比較例3)
偏光板P1及び帯電防止層AE8からなる積層体を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の粘着剤層付き光学フィルムを得た。
(比較例4)
粘着剤層付き反射防止層AR1を使用することなく、偏光板P1及び帯電防止層AE6からなる積層体の帯電防止層AE6上に粘着剤層Aを転写して、比較例4の粘着剤層付き光学フィルムを得た。
実施例及び比較例について以下の評価を行った。
<帯電防止層の表面抵抗率>
偏光板及び帯電防止層からなる積層体を用いて、帯電防止層の表面抵抗率を測定した。測定は、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製のハイレスタ-UP MCP-HT450又はロレスタ-GP MCP-T600)を用いて、JIS K6911:1995に規定された方法に準拠して行った。
<差ΔT>
粘着剤層付き光学フィルムの差ΔTは、上述の方法により評価した。ただし、個々の測定領域は、偏光板P1の表面に垂直に見て直径16μmの円とした。また、測定領域は、上記表面の面積100cm2の範囲(当該表面に垂直に見て10cm×10cmの長方形状)におけるランダムな位置に合計30箇所とした。互いに最も離れた測定領域間の距離は、10cmであった。測定装置には、ラムダビジョン社製のLVmicroZ2を使用した。
<視感反射率Y>
粘着剤層付き光学フィルムの視感反射率Yは、上述の方法により評価した。ただし、三刺激値の測定装置には、コニカミノルタ社製の分光測色計CM2600dを使用した。
<液晶パネルの視感反射率Y>
粘着剤層付き光学フィルムを液晶セルにおける視認側の透明基板に貼り合わせて、液晶パネルを作製した。使用した液晶セルは、図5の液晶セル20と同じ構造を有していた。また、参考例1,2として、それぞれ比較例1,4の粘着剤層付き光学フィルムを、非晶性のITO層(厚さ20nm)が視認側の透明基板上に形成された液晶セルの当該ITO層上に貼り合わせた液晶パネルを作製した。参考例1,2では、粘着剤層付き光学フィルムの粘着剤層とITO層とが直接接していた。ITO層の作製には、スパッタリングを利用した。ITO層に含まれるITOのSn比率は、3%であった。作製した各液晶パネルについて、その視感反射率Yを上述の方法により評価した。ただし、三刺激値の測定装置には、コニカミノルタ社製の分光測色計CM2600dを使用した。また、測定は、液晶セルの視認側とは異なる側の透明基板に対して、偏光板P1及び帯電防止層AE4からなる積層体(反射防止層を有さず)の帯電防止層AE4上に粘着剤層Aを転写して作製した偏光板を、視認側に貼合わせた偏光板の吸収軸に対してクロスニコルの関係で貼合わせた状態で実施した。
<液晶パネルの表示面のムラ>
上記作製した各液晶パネルの表示面を目視により観察して、ムラが視認されない場合をA、僅かに視認されるが、実際の使用上問題とならない場合をB、視認され、実際の使用上問題となる場合をCとした。
評価結果を以下の表2に示す。
表2に示すように、光透過率の最大値Tmaxと最小値Tminとの差ΔTが2%以下である実施例では、差ΔTが2%を超える比較例に比べて、表示面のムラが抑制された。また、その効果は、反射防止層を備えることで粘着剤層付き偏光板の視感反射率Yが低い場合に、顕著であった。なお、参考例1,2に示すように、液晶パネルがITO層を有し、これにより、液晶パネルの視感反射率Yが高い場合には、表示面のムラは観察されなかった。