JP7144318B2 - 調光フィルム用透明導電フィルム及び調光フィルム - Google Patents

調光フィルム用透明導電フィルム及び調光フィルム Download PDF

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Description

本発明は、調光フィルムに用いられる透明導電フィルムに関する。また、本発明は、上記透明導電フィルムを用いた調光フィルムに関する。
調光フィルム等に調光材料等が用いられている。調光材料は、特定の波長の光を遮断することにより透過率を調整したり、色調を調整したりすることを目的に利用されている。調光フィルムは、室内部材、建築部材及び電子部品等の様々な分野において利用されている。
上記調光フィルムは、例えば、2つの透明導電フィルム間に、調光層が配置された構造を有する。上記調光フィルムに用いられる透明導電フィルムは、基材フィルムと、該基材フィルムの表面上に導電層とを有する。上記調光フィルムにおいて、上記導電層は、上記調光層を介して対向した状態になる。上記調光フィルムでは、2つの透明導電フィルムの導電層間に、電界が印加される。電界が印加されている状態と、電界が印加されていない状態とで、上記調光フィルムを通過する光量を変化させることができる。
上記調光フィルムに用いられる透明導電フィルムの一例が、下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の透明導電フィルムでは、導電層が、ITO等により形成されていてもよい。
WO2008/075772A1
特許文献1に記載のような従来の透明導電フィルムでは、透明導電フィルムと調光層との貼り合せ時にむらが発生することがある。さらに、導電層と調光層との密着性が低くなることがある。結果として、調光性能にむらが生じたり、良好な調光性能が得られなかったりすることがある。
本発明の目的は、透明導電フィルムと調光層との貼り合せ時にむらの発生を抑え、導電層と調光層との密着性を高めることができる調光フィルム用透明導電フィルムを提供することである。また、本発明は、上記調光フィルム用透明導電フィルムを用いた調光フィルムを提供することも目的とする。
本発明の広い局面によれば、調光フィルムに用いられる透明導電フィルムであって、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の表面側に配置されている導電層とを有し、前記導電層の前記基材フィルム側とは反対の表面の表面張力が28dyn/cm以上、50dyn/cm以下である、調光フィルム用透明導電フィルムが提供される。
本発明に係る調光フィルム用透明導電フィルムのある特定の局面では、前記調光フィルム用透明導電フィルムは、アクリル樹脂を含む調光層に前記導電層が接するように用いられる。
本発明の広い局面によれば、第1の透明導電フィルムと、第2の透明導電フィルムと、前記第1の透明導電フィルムと前記第2の透明導電フィルムとの間に配置された調光層とを備え、前記第1の透明導電フィルム及び前記第2の透明導電フィルムの内の少なくとも一方が、上述した調光フィルム用透明導電フィルムである、調光フィルムが提供される。
本発明に係る調光フィルムのある特定の局面では、前記調光層がアクリル樹脂を含む。
本発明に係る調光フィルムのある特定の局面では、前記調光層に対する前記調光フィルム用透明導電フィルムのピール強度が3.0N/inch以上である。
本発明に係る調光フィルム用透明導電フィルムは、基材フィルムと、上記基材フィルムの一方の表面側に配置されている導電層とを有し、上記導電層の上記基材フィルム側とは反対の表面の表面張力が28dyn/cm以上、50dyn/cm以下である。本発明に係る調光フィルム用透明導電フィルムでは、上記の構成が備えられているので、透明導電フィルムと調光層との貼り合せ時にむらの発生を抑え、導電層と調光層との密着性を高めることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る調光フィルム用透明導電フィルムを示す断面図である。 図2は、図1に示す調光フィルム用透明導電フィルムを用いた調光フィルムの一例を示す断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る調光フィルム用透明導電フィルム(以下、透明導電フィルムと記載することがある)は、調光フィルムに用いられる。透明導電フィルムは、透明である。透明には半透明も含まれる。透明導電フィルムは、例えば、光透過性を有する。透明導電フィルムが「光透過性」を有するとは、例えば、波長550nmにおける全光線透過率が、好ましくは88%以上、より好ましくは89%以上であることを意味する。
本発明に係る透明導電フィルムは、基材フィルムと、導電層とを備える。上記導電層は、上記基材フィルムの一方の表面側に配置されている。
本発明に係る透明導電フィルムでは、上記導電層の上記基材フィルム側とは反対の表面の表面張力が28dyn/cm以上、50dyn/cm以下である。上記導電層の上記基材フィルム側とは反対の表面は、調光層に接する側の表面である。
本発明に係る透明導電フィルムでは、上記の構成が備えられているので、透明導電フィルムと調光層との貼り合せ時にむらの発生を抑え、導電層と調光層との密着性を高めることができる。結果として、調光性能にむらが生じにくくなり、良好な調光性能を得ることができる。
透明導電フィルムと調光層との貼り合せ時にむらの発生をより一層抑え、導電層と調光層との密着性をより一層高める観点からは、上記導電層の上記基材フィルム側とは反対の表面の表面張力は、好ましくは29dyn/cm以上、好ましくは48dyn/cm以下、好ましくは45dyn/cm以下である。
上記表面張力は、JIS K6768に準拠して測定することができる。具体的には、上記表面張力は、以下のようにして測定できる。
表面張力は23℃で測定する。表面張力の測定には、和光純薬工業社製のぬれ張力試験用混合液を用いることができる。具体的には、ぬれ張力試験用混合液を用い、導電層の表面に6cm以上の面積になるようにぬれ張力試験用混合液(液体)を拡げて、液膜を形成する。液体の量は、たまりを作らないで液膜を形成する程度にする。測定は毎回未測定領域で行い、複数回にわたって液体を拡げてはならない。
表面張力の判定は、ぬれ張力試験用混合液を塗布してから5秒後に行う。液膜に破れが生じないで液体を拡げた直後の100%の面積に対して5秒後に80%以上の面積を保っていれば、導電層が所定の表面張力を有していることになる。
表面張力の低い混合液から測定を開始し、導電層が所定の表面張力を有していることを確認したら、さらに次に表面張力の高い混合液での測定に進み、表面張力の判定にて最も高い表面張力を示した場合の表面張力を、導電層の表面張力とする。
上記導電層の表面張力は、導電層の結晶性、導電層の表面粗さ、導電層の表面の水酸基及びアミノ基等の親水性官能基の密度、並びに導電層の表面のメチル基及び芳香環等の疎水基の密度等により決まる。上記導電層の表面張力は、上記導電層の材料がITO(インジウムスズ酸化物)、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)、及びSnO等の酸化物半導体である場合には、特に、導電層の表面の水酸基の密度が大きく影響する。
上記表面張力を上記範囲に制御する方法としては、例えば、導電層の形成時の基板温度を制御する方法、スパッタリングにより導電層を形成する場合に、O圧力やHO圧力を制御する方法、導電層形成後にアニール処理をする方法等が挙げられる。なお、上記導電層の材料がITO、AZO、及びSnO等の酸化物半導体である場合において、成膜時にO分圧やHO圧力を高くし、かつ導電層形成後にアニール処理をしない場合には、導電層の表面の水酸基の密度が大きくなり、表面張力が大きくなる傾向がある。また、上記導電層の材料がITO、AZO、及びSnO等の酸化物半導体である場合において、比較的低温かつ比較的短時間の条件下でアニール処理をした場合には、導電層の表面の水酸基の密度が大きくなり、表面張力が大きくなる傾向がある。
上記透明導電フィルムは、アクリル樹脂を含む調光層に上記導電層が接するように用いられることが好ましい。本発明では、導電層がアクリル樹脂を含む調光層に接したとしても、透明導電フィルムと調光層との貼り合せ時にむらの発生を抑え、導電層と調光層との密着性を高めることができる。なお、本発明では、導電層がアクリル樹脂を含まない調光層に接したとしても、透明導電フィルムと調光層との貼り合せ時にむらの発生を抑え、導電層と調光層との密着性を高めることができる。
上記透明導電フィルムは、アニール処理された透明導電フィルムであることが好ましい。上記透明導電フィルムがアニール処理された透明導電フィルムであると、導電層の長期安定性、耐薬品性、及び耐酸性等を高めることができる。また、上記透明導電フィルムがアニール処理された透明導電フィルムであると、上記導電層の材料がITO、AZO、及びSnO等の酸化物半導体である場合でも、該アニール処理によって酸化物半導体の結晶性が向上するので、上記導電層の表面抵抗値を安定的に低くすることができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る調光フィルム用透明導電フィルムを示す断面図である。
図1に示す透明導電フィルム1は、調光フィルムに用いられる。
透明導電フィルム1は、基材フィルム11と、導電層12とを備える。
基材フィルム11は、光透過性を有する。基材フィルム11は、光透過性を有する材料により構成されている。基材フィルム11は、第1の表面11a及び第2の表面11bを有する。第1の表面11aと、第2の表面11bとは、互いに対向している。
基材フィルム11の第1の表面11a側に、導電層12が配置されている。導電層12は、光透過性を有する。導電層12は、光透過性が高く、かつ導電性を有する材料により構成されている。導電層12は、基材フィルム11の第1の表面11a上に直接積層されている。導電層は、基材フィルムの第1の表面上に直接積層されていなくてもよい。例えば、導電層と基材フィルムとの間に、アンダーコート層が配置されてもよい。
本実施形態では、導電層12の基材フィルム11側とは反対の表面の表面張力が上述した範囲内である。
また、図1に示す透明導電フィルム1は、ロール状に巻かれていてもよい。
光透過性をより一層高める観点からは、上記透明導電フィルムの波長550nmにおける全光線透過率は、好ましくは88%以上、より好ましくは89%以上、更に好ましくは90%以上である。上記透明導電フィルムの波長550nmにおける全光線透過率は、通常100%以下である。
上記全光線透過率は、ヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH-2000」、又はその同等品)を用いて、JIS K7105に基づいて、測定される。
光透過性をより一層高める観点からは、上記透明導電フィルムのヘイズ値は、好ましくは1.3%以下、より好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.7%以下、特に好ましくは0.6%以下である。上記透明導電フィルムのヘイズ値は、通常0%以上である。
上記ヘイズ値は、ヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH-2000」、又はその同等品)を用いて、JIS K7136に基づいて、測定される。
以下、透明導電フィルムを構成する各層の詳細を説明する。
(基材フィルム)
基材フィルムは、高い光透過性を有することが好ましい。従って、基材フィルムの材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリスルホン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、及びセルロースナノファイバー等が挙げられる。上記基材フィルムの材料は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
基材フィルムの厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上、好ましくは190μm以下、より好ましくは125μm以下である。基材フィルムの厚みが、上記下限以上及び上記上限以下である場合、導電層のパターンを、より一層視認され難くすることができる。
基材フィルムの波長380~780nmの可視光領域における平均透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。上記基材フィルムの波長380~780nmの可視光領域における平均透過率は、通常100%以下である。
基材フィルムは、各種安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤及び着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
基材フィルムは、一方または両方の表面上に、ハードコート層を有していてもよい。
上記ハードコート層の材料は、硬化樹脂であることが好ましい。上記硬化樹脂は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
上記硬化樹脂としては、熱硬化樹脂、及び紫外線硬化樹脂等の活性エネルギー線硬化樹脂等が挙げられる。生産性及び経済性を良好にする観点から、上記硬化樹脂は、紫外線硬化樹脂であることが好ましい。
上記紫外線硬化樹脂は、光硬化性モノマーが重合した樹脂であることが好ましい。上記紫外線硬化樹脂は、上記光硬化性モノマー以外のモノマーが重合していてもよい。上記光硬化性モノマー及び上記光硬化性モノマー以外のモノマーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
上記光硬化性モノマーとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリイソプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びビスフェノールAジメタクリレート等のジアクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリアクリレート及びトリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート等のトリアクリレート化合物;ペンタエリトリトールテトラアクリレート及びジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物;並びにジペンタエリトリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレート等のペンタアクリレート化合物等が挙げられる。上記紫外線硬化樹脂は、5官能以上の多官能アクリレート化合物であってもよい。上記多官能アクリレート化合物は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。また、上記多官能アクリレート化合物に、光開始剤、光増感剤、レベリング剤、及び希釈剤等を添加してもよい。
上記ハードコート層は、フィラーを含んでいてもよい。上記ハードコート層は、上記硬化樹脂と上記フィラーとを含んでいてもよい。上記フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、シリカ、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化セリウム、インジウム-錫酸化物などの金属酸化物粒子;並びに、シリコーン、(メタ)アクリル、スチレン、及びメラミン等を主成分とする樹脂微粒子等が挙げられる。上記樹脂微粒子として、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどの樹脂微粒子を用いることができる。上記フィラーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
(導電層)
導電層は、光透過性を有する導電性材料により形成されている。上記導電性材料としては、特に限定されないが、例えば、IZO(インジウム亜鉛酸化物)及びITO(インジウムスズ酸化物)などのIn系酸化物、SnO及びFTO(フッ素ドープ酸化スズ)などのSn系酸化物、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)及びGZO(ガリウム亜鉛酸化物)などのZn系酸化物、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-リチウム合金、Al/Al混合物、Al/LiF混合物、金等の金属、CuI、Agナノワイヤー(AgNW)、カーボンナノチューブ(CNT)並びに導電性透明ポリマーなどが挙げられる。上記導電性材料は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
導電性をより一層高め、光透過性をより一層高める観点から、上記導電性材料は、IZO及びITOなどのIn系酸化物、SnO及びFTOなどのSn系酸化物、又はAZO及びGZOなどのZn系酸化物であることが好ましく、ITOであることがより好ましい。
導電層の厚みは、好ましくは12nm以上、より好ましくは16nm以上、更に好ましくは17nm以上、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、更に好ましくは19.9nm以下である。
導電層の厚みが上記下限以上である場合、透明導電フィルムの導電層の表面抵抗値を効果的に低くすることができ、導電性をより一層高めることができ、かつ光透過性を高めることができる。導電層の厚みが上記上限以下である場合、導電層のパターンをより一層視認され難くすることができ、透明導電フィルムをより一層薄くすることができる。
導電層の表面抵抗値は、好ましくは150Ω/□以下、より好ましくは140Ω/□以下、更に好ましくは130Ω/□以下、特に好ましくは100Ω/□以下である。上記導電層の表面抵抗値が上記上限以下であると、調光フィルムの駆動速度を向上させることができ、また、色調の変化のむらを抑えることができる。
上記導電層の表面抵抗値は、上記導電層の基材フィルム側とは反対の表面側で、JIS K7194に基づいて、測定される。
導電層の波長380~780nmの可視光領域における平均透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。上記導電層の波長380~780nmの可視光領域における平均透過率は、通常100%以下である。
(アンダーコート層)
上記導電層と上記基材フィルムとの間に、アンダーコート層が配置されていてもよい。上記アンダーコート層は、例えば、屈折率調整層である。上記アンダーコート層が配置されることにより、導電層と基材フィルム(基材フィルムがハードコート層を有する場合は、導電層とハードコート層)との間の屈折率の差を小さくすることができるので、透明導電フィルムの光透過性をより一層高めることができる。
アンダーコート層の材料は、屈折率調整機能を有する材料である限り特に限定されない。上記アンダーコート層の材料としては、SiO、MgF、Al等の無機材料、並びにアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、及びシロキサンポリマー等の有機材料が挙げられる。
アンダーコート層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法又は塗工法により形成することができる。
アンダーコート層の材料が、SiOである場合、スパッタリング法などの成膜プロセスを調整することで、完全酸化されたSiO層と部分酸化されたSiO(0≦x<2)層とが積層されたアンダーコート層を形成することができる。具体的にはSiターゲットを用いてスパッタリング法によりSiO層を形成する際のO分圧を調整することで、Siの酸化度を調整することができる。また、アンダーコート層がSiO層である場合、導電層とSiO層との密着性、及び基材フィルムとSiO層との密着性を高めることができる。
(保護フィルム)
上記基材フィルムの上記導電層側とは反対の表面上(他方の表面上)に保護フィルムが配置されていてもよい。
保護フィルムは、基材フィルムシート及び粘着剤層により構成されていることが好ましい。
上記基材フィルムシートは、高い光透過性を有することが好ましい。上記基材フィルムシートの材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリスルホン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、及びセルロースナノファイバー等が挙げられる。
上記粘着剤層は、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系接着剤又はエポキシ系接着剤により構成することができる。熱処理による粘着力の上昇を抑制する観点から、上記粘着剤層は、(メタ)アクリル系粘着剤により構成されていることが好ましい。
上記(メタ)アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル重合体に、必要に応じて架橋剤、粘着付与樹脂及び各種安定剤などを添加した粘着剤である。
上記(メタ)アクリル重合体は、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、他の共重合可能な重合性モノマーとを含む混合モノマーを共重合して得られた(メタ)アクリル共重合体であることが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1~12の1級又は2級のアルキルアルコールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られる(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシルなどが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
上記他の共重合可能な重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、マレイン酸及びフマル酸等の官能性モノマー等が挙げられる。上記他の共重合可能な重合性モノマーは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
上記架橋剤としては、特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤、多官能アクリレートなどが挙げられる。上記架橋剤は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
上記粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体及び脂環式系共重合体等の石油系樹脂;クマロン-インデン系樹脂;テルペン系樹脂;テルペンフェノール系樹脂;重合ロジン等のロジン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂等が挙げられる。上記粘着付与樹脂は、水素添加された樹脂であってもよい。上記粘着付与樹脂は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
保護フィルムの厚みは、好ましくは25μm以上、より好ましくは50μm以上、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。保護フィルムの厚みが、上記下限以上及び上記上限以下である場合、調光フィルムの総厚みを薄くすることができ、かつ、調光フィルムの製造時のハンドリング性を良好にできる。
(調光フィルム)
本発明に係る調光フィルムは、第1の透明導電フィルムと、第2の透明導電フィルムと、調光層とを備える。上記調光層は、上記第1の透明導電フィルムと上記第2の透明導電フィルムとの間に配置されている。本発明に係る調光フィルムでは、上記第1の透明導電フィルム及び上記第2の透明導電フィルムの内の少なくとも一方が、本発明に係る透明導電フィルムである。上記第1の透明導電フィルム及び上記第2の透明導電フィルムの一方が、本発明に係る透明導電フィルムであってもよく、上記第1の透明導電フィルム及び上記第2の透明導電フィルムの双方が、本発明に係る透明導電フィルムであってもよい。
図2は、図1に示す調光フィルム用透明導電フィルムを用いた調光フィルムの一例を示す断面図である。
調光フィルム21は、2つの透明導電フィルム1と、調光層31とを備える。2つの透明導電フィルム1の間に、調光層31が配置されている。透明導電フィルム1における導電層12は、調光層31に接している。
調光フィルム21では、2つの透明導電フィルム1の導電層12間に、電界が印加される。電界が印加されている状態と、電界が印加されていない状態とで、調光フィルム21を通過する光量を変化させることができる。
上記調光層は、アクリル樹脂を含んでいてもよい。上記調光層は、アクリル樹脂中に液晶分子を含んでいてもよい。本発明の構成により、導電層と調光層との密着性を効果的に高める観点からは、上記調光層はアクリル樹脂を含むことが好ましい。
上記調光層に対する上記調光フィルム用透明導電フィルムのピール強度は好ましくは3.0N/inch以上、より好ましくは3.3N/inch以上、更に好ましくは3.5N/inch以上である。
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例に基づき、更に詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
透明導電フィルムの作製:
基材フィルムとして、厚み50μmのPETフィルムを用意した。PETフィルムの一方の面にジルコニア粒子を分散したアクリル系ハードコート樹脂を塗布し、厚み1.0μmのハードコート層1を形成した。PETフィルムの他方の面に、アクリル系ハードコート樹脂を塗布し、厚み1.0μmのハードコート層2を形成した。このようにして、両面ハードコートフィルムを得た。

この両面ハードコートフィルムを真空装置内に設置し、真空排気を実施した。真空度が9.0×10-4Paまで到達した後、アルゴンガスを導入して、DCマグネトロンスパッタリング法によりアルゴンガス雰囲気下でハードコート層1側からSiO層(2nm)、SiO層(16nm)、SiO層(2nm)をこの順で成膜し、その上にインジウムスズ酸化物(ITO)層を18nm積層した。具体的には、SnOが7重量%のITO焼結体ターゲット、及びターゲット表面の最大水平磁束密度が1000ガウスとなるカソードを用いて、スパッタ圧力3.5×10-1Pa、O圧力4×10-3Pa、Ar圧力1.1×10-1Paで、厚み17nmの導電層(インジウムスズ酸化物層)を形成した。その後熱風循環式オーブンにて140℃で30分アニール処理を行うことで、光透過性導電フィルムを得た。

調光フィルムの作製: 液晶成分として4-ブチルビフェニル-4’-カルボニトリル100重量部及び4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボニトリル50重量部を用いた。バインダー樹脂としてメタクリル酸-2-エチルヘキシル100重量部及びアクリル酸-2-エチルヘキシル50重量部を用いた。上記液晶成分と、上記バインダー樹脂と、光重合開始剤(BASF社製「Irgacure 184」)2重量部と、調光層の厚みを調整するギャップ材として粒径20μmのアクリル樹脂粒子(積水化学工業社製、ミクロパール)1重量部とを混合し、調光層を得た。上記光透過性導電フィルムを導電層側が向かい合うように2枚重ねラミネーター(テスター産業社製、小型ラミネーター)にセットし、調光層を間に流し込んで貼り合わせを行った。得られた積層フィルムをUVランプにて、150W/m及び5分の条件で硬化させることで、調光フィルムを得た。
(実施例2~5及び比較例1~3)
導電層の形成条件(O圧力)及びアニール処理条件(加熱温度及び加熱時間)を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、透明導電フィルム及び調光フィルムを得た。
(実施例6)
導電層としてアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、透明導電フィルム及び調光フィルムを得た。ターゲットとしては、Alが2重量%のAZO焼結体ターゲットを用いた。導電層(アルミニウム亜鉛酸化物層)の厚みは17nmであった。
(評価)
(1)表面張力
得られた透明導電フィルムの導電層の基材フィルム側とは反対の表面の表面張力を23℃で測定した。表面張力の測定には、和光純薬工業社製のぬれ張力試験用混合液を用いた。ぬれ張力試験用混合液を用い、導電層の表面に6cm以上の面積になるように液体を拡げて、液膜を形成した。液体の量は、たまりを作らないで液膜を形成する程度にした。測定は毎回未測定領域で行い、複数回にわたって液体を拡げないようにした。
表面張力の判定は、ぬれ張力試験用混合液を塗布してから5秒後に行った。液膜に破れが生じず、液体を拡げた直後の100%の面積に対して5秒後に80%以上の面積を保っている場合、導電層が所定の表面張力を有していると判断した。
表面張力の低い混合液から測定を開始し、導電層が所定の表面張力を有していることを確認したら、さらに2dyn/cm毎に表面張力の高い混合液での測定に進み、表面張力の判定にて最も高い表面張力を示した場合の表面張力を、導電層の表面張力とした。
(2)透明導電フィルムと調光層との貼り合せ時のむら
上記調光フィルムの貼り合せ時に、透明導電フィルムと調光層との貼り合せむらが発生するか否かを評価した。貼り合せむらとは、調光フィルムを透過光で見た際に、スジ状や斑点状の濃淡が見えることをいう。
[むらの判定基準]
A:透明導電フィルムと調光層との貼り合せむらが発生していない
B:透明導電フィルムと調光層との貼り合せむらが発生している
(3)ピール強度
得られた調光フィルムにおいて、調光フィルムを構成する透明導電フィルム2枚を180°方向に引き剥がしたときの剥離時の強度をピール強度とした。ピール強度は引っ張り試験機で測定することにより求めた。引っ張り試験機としては島津製作所社製「EZ Test」を用いて測定した。調光フィルムを1inchの幅にカットして測定を行った。剥離する速度は100mm/minとした。
(4)導電層の表面抵抗値(シート抵抗)
得られた透明導電フィルムの導電層の表面抵抗値(シート抵抗)を、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製「ロレスタAX MCP-T370」)を用いて、JIS K7194に基づいて、測定した。
(5)全光線透過率
得られた透明導電フィルムの波長550nmにおける全光線透過率を、ヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH-2000」)を用いて、JIS K7105に基づいて、測定した。
(6)ヘイズ
得られた透明導電フィルムのヘイズ値を、ヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH-2000)を用いて、JIS K7136に基づいて測定した。
導電層の種類、導電層の形成条件、アニール処理条件及び結果を下記の表1に示す。
Figure 0007144318000001
1…透明導電フィルム
11…基材フィルム
11a…第1の表面
11b…第2の表面
12…導電層
21…調光フィルム
31…調光層

Claims (4)

  1. アクリル樹脂と、前記アクリル樹脂中に液晶分子とを含む調光層を備える調光フィルムに用いられる透明導電フィルムであって、
    基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の表面側に配置されている導電層とを有し、
    前記透明導電フィルムは、前記調光層に前記導電層が接するように用いられ、
    前記導電層の前記基材フィルム側とは反対の表面の表面張力が28dyn/cm以上、50dyn/cm以下である、調光フィルム用透明導電フィルム。
  2. 前記導電層の前記基材フィルム側とは反対の表面の表面張力が34dyn/cm以下である、請求項1に記載の調光フィルム用透明導電フィルム。
  3. 第1の透明導電フィルムと、
    第2の透明導電フィルムと、
    前記第1の透明導電フィルムと前記第2の透明導電フィルムとの間に配置された調光層とを備え、
    前記調光層が、アクリル樹脂と、前記アクリル樹脂中に液晶分子とを含み、
    前記第1の透明導電フィルム及び前記第2の透明導電フィルムの内の少なくとも一方が、請求項1又は2に記載の調光フィルム用透明導電フィルムである、調光フィルム。
  4. 前記調光層に対する前記調光フィルム用透明導電フィルムのピール強度が3.0N/inch以上である、請求項3に記載の調光フィルム。
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