JP7131986B2 - 金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法 - Google Patents
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近年は、耐食性・意匠性等の観点から、産業用部品や自動車部品、家電製品等の多くの用途において各種の塗料を塗装したステンレス鋼板、あるいは合成樹脂類を被覆したステンレス鋼板に注目が集まっている。例えば、住宅やビルの内外壁に有用な塗装ステンレス鋼板はメンテナンスフリー化のニーズに対応可能な材料として注目されている。また、合成樹脂被覆体については、例えば自動車エンジンのシリンダーガスケット用途のゴム被覆ステンレス鋼製ガスケットが注目を浴びている。
すなわち、本発明者の検討によれば、特許文献1の方法で得られる金属樹脂複合体は、例えば引張せん断試験等において、ある程度の接合強度を示す場合であっても界面剥離が部分的に併発してしまい、ステンレス鋼と樹脂との接合性が不十分となる場合があることが明らかになった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、接合性に優れたステンレス鋼と樹脂との金属樹脂複合体およびその製造方法を提供するものである。
ステンレス鋼からなる金属部材と、熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂部材とが接合してなる金属/樹脂複合構造体であって、
上記金属部材における、少なくとも上記樹脂部材との接合面が粗化されており、かつ、該粗化による金属の重量減少率が0.5(mg/cm2)以上3.5(mg/cm2)以下の範囲にあることを特徴とする金属/樹脂複合構造体。
[2]
上記ステンレス鋼がオーステナイト系ステンレス鋼を含む上記[1]に記載の金属/樹脂複合構造体。
[3]
上記ステンレス鋼がSUS301、SUS304、SUS316およびSUS316Lからなる群から選ばれる一種または二種以上を含む上記[1]または[2]に記載の金属/樹脂複合構造体。
[4]
上記熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリアリーレンスルフィド系樹脂およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる一種または二種以上を含む上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体。
[5]
上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
ステンレス鋼からなる金属部材における、少なくとも樹脂部材との接合面を化学エッチング剤によって粗化する工程を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[6]
上記化学エッチング剤が酸系エッチング剤を含む上記[5]に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[7]
上記酸系エッチング剤を構成する酸が、塩酸および硫酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の酸を含む上記[6]に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[8]
上記酸系エッチング剤が、塩酸および硫酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の酸に起因する酸イオン(H+)、第二銅イオン(Cu2+)およびハライドイオン(X-)を含んでなり、各々の成分濃度が以下の範囲にあることを特徴とする上記[5]~[7]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法。
H+;1.0(mol/L)~4.0(mol/L)
Cu2+;0.03(mol/L)~0.6(mol/L)
X-;1.0(mol/L)~4.5(mol/L)
金属/樹脂複合構造体1は、金属部材2と、樹脂部材3とが接合されており、金属部材2と樹脂部材3とを接合することにより得られる。
本実施形態に係る金属部材2は、ステンレス鋼からなる。ステンレス鋼はFe中にCrを12質量%程度以上含む限りは制限なく使用できる。ステンレス鋼としては、面心立方結晶構造を有するγ相からなるものが好ましく、具体的にはオーステナイト系ステンレス鋼を挙げることができ、より好ましい例としてJIS分類の300番台のステンレス鋼を挙げることができる。このようなステンレス鋼は耐力(降伏点)が330N/mm2程度以下であるという特徴があり、具体的にはSUS301、SUS304、SUS316およびSUS316Lからなる群から選ばれる一種または二種以上がより好ましく、SUS316が特に好ましい。
重量減少率が0.5(mg/cm2)未満では樹脂との接合強度が十分でない。この理由は、0.5(mg/cm2)未満の領域では化学エッチングによって樹脂のアンカー効果発現に必要な微細凹凸構造が十分に形成されていないためと考えられる。一方で3.5(mg/cm2)を超える場合は、化学エッチングが進行し過ぎる結果、金属表面にせっかく形成された微細凹状部の雪庇部が部分的に溶解してしまいアンカー効果が弱められるので好ましくない。
[H+];通常1.0(mol/L)~4.0(mol/L)、好ましくは、1.2(mol/L)~3.5(mol/L)、より好ましくは1.5(mol/L)~3.0(mol/L)の範囲にある。
[Cu2+];通常0.03(mol/L)~0.6(mol/L)、好ましくは0.05(mol/L)~0.5(mol/L)、より好ましくは0.07(mol/L)~0.4(mol/L)の範囲にある
[X-];通常1.0(mol/L)~4.5(mol/L)、好ましくは1.5(mol/L)~4.0(mol/L)、より好ましくは2.0(mol/L)~3.5(mol/L)の範囲にある。
本実施形態に係る化学エッチング剤を用いたエッチングは、例えば40~80℃、好ましくは45~70℃下、より好ましくは45~60℃下、例えば0.5分~30分、好ましくは1分~20分程度行われる。エッチングは超音波照射下であってもよい。
脱脂工程では市販脱脂剤を溶解させた水溶液中に浸漬させる方法が一般に行われる(60℃で5分程度)。希アルカリ水溶液処理は通常40℃下、1分程浸漬させることによって行われる。この際の希アルカリ水としては1~2質量%程度の苛性ソーダ水溶液が用いられる。本エッチング後に粗化表面の構造安定化を目的として行われる酸化性酸の水溶液処理工程で用いられる酸としては通常、3質量%程度の硝酸水溶液が頻用される。また、その際の処理条件は40℃、3分程度である。各工程の間には、必要に応じて更に水洗工程が付加されても良い。水洗は工業用水であってもイオン交換水であってもよく、また水洗時には超音波照射してもよい。
以上の処理を終えた金属部材を乾燥させることによって金属部材2を得ることができる。
本実施形態における樹脂部材3は、熱可塑性樹脂組成物からなる。熱可塑性樹脂組成物は樹脂成分としての熱可塑性樹脂と必要に応じて充填材とからなる。
熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、極性基含有ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等のポリアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール-ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸-スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ABS、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン-塩化ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂等のポリアリーレンスルフィド系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
つづいて、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体1の製造方法について説明する。
金属/樹脂複合構造体1の製造方法は、上記化学エッチング剤によって粗化処理を行った金属部材2に対して、上記熱可塑性樹脂組成物を所望の樹脂部材3の形状になるように成形しながら接合させることにより得られる。
(i)熱可塑性樹脂組成物を調製する工程
(ii)金属部材2を射出成形用の金型内に設置する工程
(iii)熱可塑性樹脂組成物を、金属部材2の少なくとも一部と接するように、上記金型内に射出成形し、樹脂部材3を形成する工程
以下、各工程について説明する。
射出発泡成形の方法として、化学発泡剤を樹脂に添加する方法や、射出成形機のシリンダー部に直接、窒素ガスや炭酸ガスを注入する方法、あるいは、窒素ガスや炭酸ガスを超臨界状態で射出成形機のシリンダー部に注入するMuCell射出発泡成形法があるが、いずれの方法でも樹脂部材が発泡体である金属/樹脂複合構造体を得ることができる。また、いずれの方法でも、金型の制御方法として、カウンタープレッシャーを使用したり、成形品の形状によってはコアバックを利用したりすることも可能である。
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体1は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
市販の2.0mm厚SUS316板材を購入し、多数の18mm×45mmの長方形片に切断して、試験用のステンレス鋼片とした。次いで、市販脱脂剤NE-6(メルテック株式会社製)5質量%を含む水溶液中に5分間浸漬させた。この際の温度は60℃、超音波照射下とした。工業用水で水洗後、ステンレス鋼片を50℃に維持し、表1に示す酸イオン濃度、第二銅イオンおよびハライドイオン濃度となるように、塩酸と塩化第二銅から調製された酸系エッチング剤水溶液に15分間浸漬させた。浸漬は超音波照射下で行った。なお、酸系エッチング剤水溶液を構成する酸イオン濃度、第二銅イオンおよびハライドイオンの濃度(mol/L)は表1に示す通りであった。
次いで、工業用水で水洗後、80℃下、15分間乾燥させて粗化ステンレス鋼片(me1)を得た。全粗化面の面積と粗化前後の重量変化から重量減少率(ΔW)を求めたところ、1.9(mg/cm2)であった。粗化ステンレス鋼板(me1)の粗化面を表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用し、JIS B0601(対応ISO 4287)に準拠して測定される十点平均粗さ(Rz)は5μm、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は110μmであった。
得られた金属/樹脂複合構造体(E1)について、引張試験機「モデル1323(アイコーエンジニヤリング社製)」を使用し、引張試験機に専用の治具を取り付け、室温(23℃)にて、チャック間距離60mm、引張速度10(mm/min)の条件にて図1に示すx方向に引っ張って測定をおこなった。破断荷重(N)を金属/樹脂接合部分の面積(50mm2)で除することにより接合強度(引張りせん断強度)(MPa)を求めた。その結果、接合強度は29MPaであった。また破断面(金属側)の観察を行った結果、ほとんど全ての接合面に母材破壊に起因する樹脂残りが認められた(図2参照)。
実施例1において、酸系エッチング剤水溶液の組成を、表1に示す酸イオン濃度、第二銅イオンおよびハライドイオン濃度となるように、硫酸と塩化第二銅と塩化ナトリウムから調製された酸系エッチング剤水溶液に変更した以外は実施例1と同様にして粗化ステンレス鋼板(me2)を得た。なお、酸系エッチング剤水溶液を構成する酸イオン濃度、第二銅イオンおよびハライドイオンの濃度(mol/L)は表1に示す通りであった。粗化前後の重量変化から重量減少率(ΔW)を求めたところ、1.3(mg/cm2)であった。
この粗化ステンレス鋼板(me2)の表面に、実施例1と同じ条件でPBTを射出して金属/樹脂複合構造体(E2)を得た。得られた金属/樹脂複合構造体(E2)の接合強度(引張りせん断強度)は、27MPaであった。また破断面(金属側)のルーペ観察を行った結果、ほとんど全ての接合面に母材破壊に起因する樹脂残りが認められた。
実施例1において、酸系エッチング剤への浸漬時間を15分から3分に短縮した以外は実施例1と同様に粗化して粗化ステンレス鋼板(me3)を得た。粗化前後の重量変化から重量減少率(ΔW)を求めたところ、0.6(mg/cm2)であった。この粗化ステンレス鋼板(me3)の表面に、実施例1と同じ条件でPBTを射出して金属/樹脂複合構造体(E3)を得た。得られた金属/樹脂複合構造体(E3)の接合強度(引張りせん断強度)は、19MPaであった。また破断面(金属側)のルーペ観察を行った結果、ほとんど全ての接合面に母材破壊に起因する樹脂残りが認められた。
実施例1において、酸系エッチング剤による粗化を二回繰り返した。一回目の粗化に用いた酸系エッチング剤水溶液の組成は、5.0質量%の塩酸と8.2質量%の塩化第二銅を含む酸系エッチング剤であり、浸漬条件は50℃、5分間、二回目の粗化に用いた酸系エッチング剤水溶液の組成は、7.5質量%の塩酸と2.1質量%の塩化第二銅を含む酸系エッチング剤であり、浸漬条件は50℃、5分間であり、いずれも超音波照射下で粗化を行った。実施例1と同様にして粗化ステンレス鋼板(mc1)を得た。なお、酸系エッチング剤水溶液を構成する酸イオン濃度、第二銅イオンおよびハライドイオンの合算濃度(mol/L)は表1に示す通りであった。粗化前後の重量変化から重量減少率(ΔW)を求めたところ、3.9(mg/cm2)であった。この粗化ステンレス鋼板(mc1)の表面に、実施例1と同じ条件でPBTを射出して金属/樹脂複合構造体(C1)を得た。得られた金属/樹脂複合構造体(C1)の接合強度(引張りせん断強度)は、13MPaであった。また破断面(金属側)のルーペ観察を行った結果、母材破壊に起因する樹脂残りは全接合面の30面積%程度で認められたが、特に接合面周縁部の残り70面積%程度には樹脂残りは認められず界面破壊モードであることが確認された(図3参照)。
実施例1において、酸系エッチング剤水溶液の組成を、表1に示す酸イオン濃度、第二銅イオンおよびハライドイオン濃度となるように、塩酸と塩化第二銅から調製された酸系エッチング剤水溶液に変更した以外は実施例1と同様にして粗化ステンレス鋼板(mc2)を得た。粗化前後の重量変化から重量減少率(ΔW)を求めたところ、7.1(mg/cm2)であった。この粗化ステンレス鋼板(mc2)の表面に、実施例1と同じ条件でPBTを射出して金属/樹脂複合構造体(C2)を得た。得られた金属/樹脂複合構造体(C2)の接合強度(引張りせん断強度)は、14MPaであった。また破断面(金属側)のルーペ観察を行った結果、母材破壊に起因する樹脂残りは全接合面の30面積%程度で認められたが、特に接合面周縁部の残り70面積%程度には樹脂残りは認められず界面破壊モードであることが確認された。
実施例1において、酸系エッチング剤水溶液の組成を、表1に示す酸イオン濃度、第二銅イオンおよびハライドイオン濃度となるように、塩酸と塩化第二銅と塩化ナトリウムから調製された酸系エッチング剤水溶液に変更し、さらに浸漬時間を表1に示す時間にした以外は実施例1と同様にして粗化ステンレス鋼板(mc3)を得た。粗化前後の重量変化から重量減少率(ΔW)を求めたところ、0.4(mg/cm2)であった。この粗化ステンレス鋼板(mc3)の表面に、実施例1と同じ条件でPBTを射出して金属/樹脂複合構造体(C3)を得た。得られた金属/樹脂複合構造体(C3)の接合強度(引張りせん断強度)は、4MPaであった。また破断面(金属側)のルーペ観察を行った結果、母材破壊に起因する樹脂残りは認められず界面破壊モードであることが確認された。
実施例1において、酸系エッチング剤水溶液の組成を、表1に示す酸イオン濃度、第二銅イオンおよびハライドイオン濃度となるように、塩酸と塩化第二銅と塩化ナトリウムから調製された酸系エッチング剤水溶液に変更し、さらに浸漬時間を表1に示す時間にした以外は実施例1と同様にして粗化ステンレス鋼板(mc4)を得た。粗化前後の重量変化から重量減少率(ΔW)を求めたところ、0.2(mg/cm2)であった。この粗化ステンレス鋼板(mc4)の表面に、実施例1と同じ条件でPBTを射出して金属/樹脂複合構造体(C4)を得た。得られた金属/樹脂複合構造体(C4)の接合強度(引張りせん断強度)は、6MPaであった。また破断面(金属側)のルーペ観察を行った結果、母材破壊に起因する樹脂残りは全接合面の10面積%程度で認められたが、特に接合面周縁部の残り90面積%程度には樹脂残りは認められず界面破壊モードであることが確認された。
実施例1において、酸系エッチング剤水溶液の組成を、表1に示す酸イオン濃度、第二銅イオンおよびハライドイオン濃度となるように、硫酸と塩化第二銅と塩化ナトリウムから調製された酸系エッチング剤水溶液に変更し、さらに浸漬時間を表1に示す時間にした以外は実施例1と同様にして粗化ステンレス鋼板(mc5)を得た。なお、酸系エッチング剤水溶液を構成する酸イオン濃度、第二銅イオンおよびハライドイオンの濃度(mol/L)は表1に示す通りであった。粗化前後の重量変化から重量減少率(ΔW)を求めたところ、0.2(mg/cm2)であった。この粗化ステンレス鋼板(mc5)の表面に、実施例1と同じ条件でPBTを射出して金属/樹脂複合構造体(C5)を得た。得られた金属/樹脂複合構造体(C5)の接合強度(引張りせん断強度)は、12MPaであった。また破断面(金属側)のルーペ観察を行った結果、母材破壊に起因する樹脂残りは全接合面の20面積%程度で認められたが、特に接合面周縁部の残り80面積%程度には樹脂残りは認められず界面破壊モードであることが確認された。
実施例1において、酸系エッチング剤水溶液の組成を、表1に示す酸イオン濃度となるように、塩酸のみを含む酸系エッチング剤に変更した以外は実施例1と同様にして粗化ステンレス鋼板(mc6)を得た。粗化前後の重量変化から重量減少率(ΔW)を求めたところ、0.1(mg/cm2)であった。この粗化ステンレス鋼板(mc6)の表面に、実施例1と同じ条件でPBTを射出して金属/樹脂複合構造体(C6)を得た。得られた金属/樹脂複合構造体(C6)の接合強度(引張りせん断強度)は、24MPaであった。また破断面(金属側)のルーペ観察を行った結果、母材破壊に起因する樹脂残りは全接合面の40面積%程度で認められたが、特に接合面周縁部の残り60面積%程度には樹脂残りは認められず界面破壊モードであることが確認された。
2 金属部材
3 樹脂部材
Claims (8)
- ステンレス鋼からなる金属部材と、熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂部材とが接合してなる金属/樹脂複合構造体であって、
前記金属部材における、少なくとも前記樹脂部材との接合面が粗化されており、かつ、該粗化による金属の重量減少率が0.5(mg/cm2)以上3.5(mg/cm2)以下の範囲にあり、
JIS B 0601に準じて前記金属部材の表面粗さ測定を行った場合、前記金属部材の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が80μm~160μmの範囲にある、金属/樹脂複合構造体。 - 前記ステンレス鋼がオーステナイト系ステンレス鋼を含む請求項1に記載の金属/樹脂複合構造体。
- 前記ステンレス鋼がSUS301、SUS304、SUS316およびSUS316Lからなる群から選ばれる一種または二種以上を含む請求項1または2に記載の金属/樹脂複合構造体。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリアリーレンスルフィド系樹脂およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる一種または二種以上を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
- 請求項1~4のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
ステンレス鋼からなる金属部材における、少なくとも樹脂部材との接合面を化学エッチング剤によって粗化する工程を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。 - 前記化学エッチング剤が酸系エッチング剤を含む請求項5に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法。
- 前記酸系エッチング剤を構成する酸が、塩酸および硫酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の酸を含む請求項6に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法。
- 前記酸系エッチング剤が、塩酸および硫酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の酸に起因する酸イオン(H+)、第二銅イオン(Cu2+)およびハライドイオン(X-)を含んでなり、各々の成分濃度が以下の範囲にあることを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法。
H+;1.0(mol/L)~4.0(mol/L)
Cu2+;0.03(mol/L)~0.6(mol/L)
X-;1.0(mol/L)~4.5(mol/L)
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