JP2017203547A - 金属樹脂複合ギヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】軽量化が可能で、かつ、ギヤとしての十分な強度および耐衝撃性を得ることが可能なギヤを提供すること。【解決手段】本発明の金属樹脂複合ギヤ100は、第1の金属材料により構成された歯車部101と、第2の金属材料により構成された軸受け部103と、歯車部101と軸受け部103とを連結する熱可塑性樹脂部105と、を備え、歯車部101は、少なくとも熱可塑性樹脂部105との接合部表面(A)に微細凹凸構造(α)を有しており、上記微細凹凸構造(α)に熱可塑性樹脂部105の一部分が浸入することにより歯車部101と熱可塑性樹脂部105とが接合されている。【選択図】図1

Description

本発明は、金属樹脂複合ギヤに関する。
一般的に、ギヤは、その全体が金属材料により構成されている。しかし、ギヤ全体が金属材料により構成されていると、ギヤの軽量化が困難である。
ギヤを軽量化する方法としては、例えば、ギヤの一部に樹脂を用いる方法が挙げられる。ギヤの一部に樹脂を用いる方法としては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載の方法が挙げられる。
特許文献1には、動力伝達に適した樹脂歯車であって、上記樹脂歯車は、吸水処理されたポリアミド樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物からなる樹脂部を金属製ハブの外周に一体的に成形し、該樹脂部に噛合用の歯が形成された歯車であることを特徴とする動力伝達に適した樹脂歯車が記載されている。
特許文献2には、金属製の回転軸部と、金属製の歯車部と、上記回転軸部と上記歯車部とにそれぞれ接合して、上記回転軸部と上記歯車部とを相互に連結している樹脂製の連結体と、を有するギヤが開示されている。
特開2004−218712号公報 特開2015−203477号公報
特許文献1に記載されているような金属と樹脂を一体成形した金属樹脂複合ギヤは、ギヤの一部が重い金属から軽量な樹脂に置き換わるため軽量化が可能である。しかし、本発明者らの検討によれば、このような金属樹脂複合ギヤは、ギヤ歯が樹脂であるが故にギヤとしての噛合強度が不十分であることが予想される。
特許文献2に記載されているようなギヤは、樹脂製の連結体を構成する樹脂部材が熱硬化性樹脂部材であるので、接合方法として生産性に優れた射出成形法を採用するためには大きな困難を伴うことが予想される。また、熱硬化性樹脂により構成される樹脂部材は耐衝撃性に劣るため、かさ歯車等の耐衝撃性が求められるギヤの連結体としては適していない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、軽量化が可能で、かつ、ギヤとしての十分な強度および耐衝撃性を得ることが可能なギヤを提供するものである。
本発明者らは、軽量化が可能で、かつ、ギヤとしての十分な強度および耐衝撃性を得ることが可能なギヤを提供するために鋭意検討した。その結果、熱可塑性樹脂部との接合部表面に微細凹凸構造を有する歯車部と軸受け部を熱可塑性樹脂部により連結することにより、軽量化が可能で、かつ、十分な強度および耐衝撃性を有するギヤが得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明によれば、以下に示す金属樹脂複合ギヤが提供される。
[1]
第1の金属材料により構成された歯車部と、
第2の金属材料により構成された軸受け部と、
上記歯車部と上記軸受け部とを連結する熱可塑性樹脂部と、を備え、
上記歯車部は、少なくとも上記熱可塑性樹脂部との接合部表面(A)に微細凹凸構造(α)を有しており、
上記微細凹凸構造(α)に上記熱可塑性樹脂部の一部分が浸入することにより上記歯車部と上記熱可塑性樹脂部とが接合されている金属樹脂複合ギヤ。
[2]
上記[1]に記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
上記軸受け部は、少なくとも上記熱可塑性樹脂部との接合部表面(B)に微細凹凸構造(β)を有しており、
上記微細凹凸構造(β)に上記熱可塑性樹脂部の一部分が浸入することにより上記軸受け部と上記熱可塑性樹脂部とが接合されている金属樹脂複合ギヤ。
[3]
上記[1]または[2]に記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
上記歯車部は、少なくとも上記熱可塑性樹脂部との接合部表面(A)に溝構造を有し、
上記熱可塑性樹脂部の一部分が上記溝構造の溝部分に充填されている金属樹脂複合ギヤ。
[4]
上記[1]乃至[3]いずれか一つに記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
上記熱可塑性樹脂部がポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、およびポリアセタール樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂を含む金属樹脂複合ギヤ。
[5]
上記[1]乃至[4]いずれか一つに記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
上記熱可塑性樹脂部が充填材を含む金属樹脂複合ギヤ。
[6]
上記[5]に記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
上記熱可塑性樹脂部全体を100質量%としたとき、上記熱可塑性樹脂部中の上記充填材の含有量が5質量%以上95質量%以下である金属樹脂複合ギヤ。
[7]
上記[1]乃至[6]いずれか一つに記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
上記第1の金属材料および第2の金属材料のうち少なくとも一方が、鉄、鉄鋼材、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金から選択される一種または二種以上を含む金属樹脂複合ギヤ。
[8]
かさ歯車である、上記[7]に記載の金属樹脂複合ギヤ。
[9]
上記[8]に記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
上記熱可塑性樹脂部が、
上記歯車部の内周面に接合する熱可塑性樹脂部(A)と、
上記軸受け部の外周面に接合する熱可塑性樹脂部(B)と、
上記熱可塑性樹脂部(A)と上記熱可塑性樹脂部(B)の間に周方向と直交するようにして配置される複数のリブ状の熱可塑性樹脂部(C)と、
により構成される金属樹脂複合ギヤ。
本発明によれば、軽量化が可能で、かつ、ギヤとしての十分な強度および耐衝撃性を得ることが可能なギヤを提供することができる。
本発明に係る実施形態の金属樹脂複合ギヤの構造の一例を模式的に示した斜視図である。 本発明に係る実施形態の金属樹脂複合ギヤの構造の一例を模式的に示した、上方から見た斜視断面図である。 本発明に係る実施形態の金属樹脂複合ギヤの構造の一例を模式的に示した、上方から見た斜視断面図である。 本発明に係る実施形態の金属樹脂複合ギヤの構造の一例を模式的に示した、下方から見た斜視図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。文中の数字の間にある「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
[金属樹脂複合ギヤ]
まず、本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の金属樹脂複合ギヤ100の構造の一例を模式的に示した斜視図である。図2および3は、本発明に係る実施形態の金属樹脂複合ギヤ100の構造の一例を模式的に示した、上方から見た斜視断面図である。図4は、本発明に係る実施形態の金属樹脂複合ギヤの構造の一例を模式的に示した、下方から見た斜視図である。
本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100は、第1の金属材料により構成された歯車部101と、第2の金属材料により構成された軸受け部103と、歯車部101と軸受け部103とを連結する熱可塑性樹脂部105と、を備え、歯車部101は、少なくとも熱可塑性樹脂部105との接合部表面(A)に微細凹凸構造(α)を有しており、該微細凹凸構造(α)に熱可塑性樹脂部105の一部分が浸入することにより歯車部101と熱可塑性樹脂部105とが接合されている。
ここで、微細凹凸構造(α)は、例えば、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸構造である。
歯車部101の接合部表面(A)に形成された微細凹凸構造(α)に熱可塑性樹脂部105の一部分が侵入して歯車部101と熱可塑性樹脂部105が接合し、金属―樹脂界面を形成することにより本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100が得られる。
歯車部101の接合部表面(A)には、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との間の接合強度向上に適した微細凹凸構造(α)が形成されているため、例えば、片末端にエポキシ基あるいはアミノ基のいずれかを有するシランカップリング剤、エポキシ樹脂系接着剤、アイオノマー、エチレン−アクリレート共重合体、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレン等の接着剤の使用量を削減した場合や、これらの接着剤を使用しない場合であっても、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との間の接合性を優れたものにすることができ、その結果、軽量化が可能で、かつ、ギヤとしての十分な強度および耐衝撃性を有するギヤを提供することができる。
具体的には、歯車部101の接合部表面(A)に接するように熱可塑性樹脂部105を成形、好ましくは射出成形(金属インサート成形)することにより、歯車部101の接合部表面(A)の微細凹凸構造(α)の中に熱可塑性樹脂部105を構成する熱可塑性樹脂を進入させることができる。こうすることによって、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との間に物理的な抵抗力(アンカー効果)が効果的に発現し、歯車部101と熱可塑性樹脂部105とを強固に接合することが可能になる。
このようにして得られた金属樹脂複合ギヤ100はギヤの一部が重い金属から軽量な樹脂に置き換わるため、ギヤ全体が金属材料により構成されているギヤに比べて、軽量にすることができる。また、歯車部101が金属材料により構成されていることにより、ギヤ全体が金属材料により構成されているギヤと同等の耐摩耗性が得られる。さらに歯車部101と熱可塑性樹脂部105との接合が強固なため、ギヤとしての強度を良好なものとすることができる。さらに、ギヤの一部に耐衝撃性に優れる熱可塑性樹脂を用いているため、ギヤの耐衝撃性も優れている。また、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との接合部分からの水分や湿気、油分の浸入を効果的に防ぐことができるため、耐湿性や耐油性に優れた金属樹脂複合ギヤ100を実現できる。
本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100において、図3に示すように、歯車部101は、少なくとも熱可塑性樹脂部105との接合部表面(A)に溝構造101bを有することが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂部105の一部分が溝構造101bの溝部分に充填され、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との接触面積を増加させることができ、その結果、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との接合性をより一層良好なものとすることができる。
また、歯車部101に溝構造101bを設けることにより、歯車部101が占める体積を減らすことができ、金属樹脂複合ギヤ100をより一層軽量にすることができる。さらには、歯車部101と熱可塑性樹脂部105の接合部が剥離した場合であっても、歯車部101の脱落防止につなげられる。
溝構造101bの断面形状としては、U字状、V字状、コの字状、ハの字状、逆ハの字状(アリ溝)を挙げることができる。
溝構造101bは、接合部表面(A)の周方向に沿って連続的または断続的に形成されていてもよいし、周方向と直行するように形成されていてもよいし、周方向に対して90°未満の角度で傾斜するように形成されていてもよいし、これらの溝構造の二種類以上が共存する溝構造であってもよい。なお、上記した断続的な形成には点状に窪みが形成されている場合も含む。
本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100において、軸受け部103は、少なくとも熱可塑性樹脂部105との接合部表面(B)に微細凹凸構造(β)を有することが好ましい。この場合、上記微細凹凸構造(β)に熱可塑性樹脂部105の一部分が浸入することにより軸受け部103と熱可塑性樹脂部105とが接合されていることが好ましい。
ここで、微細凹凸構造(β)は、例えば、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸構造である。
軸受け部103の接合部表面(B)に形成された微細凹凸構造(β)に熱可塑性樹脂部105の一部分が侵入して軸受け部103と熱可塑性樹脂部105が接合し、金属―樹脂界面を形成することができる。
軸受け部103の接合部表面(B)に、軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との間の接合強度向上に適した微細凹凸構造(β)が形成されている場合、例えば、片末端にエポキシ基あるいはアミノ基のいずれかを有するシランカップリング剤、エポキシ樹脂系接着剤、アイオノマー、エチレン−アクリレート共重合体、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレン等の接着剤の使用量を削減した場合や、これらの接着剤を使用しない場合であっても、軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との間の接合性をより一層優れたものにすることができ、その結果、軽量化が可能で、かつ、より一層良好な強度を有するギヤを提供することができる。
具体的には、軸受け部103の接合部表面(B)に接するように熱可塑性樹脂部105を成形、好ましくは射出成形することにより、軸受け部103の接合部表面(B)の微細凹凸構造(β)の中に熱可塑性樹脂部105を構成する熱可塑性樹脂を進入させることができる。こうすることによって、軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との間に物理的な抵抗力(アンカー効果)が効果的に発現し、軸受け部103と熱可塑性樹脂部105とを強固に接合することが可能になる。
本実施形態に係る軸受け部103においては、上記した歯車部101と同様に、少なくても熱可塑性樹脂部105との接合部表面(B)に溝構造を有していてもよい。
図1に示すように、本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100は、例えば、回転軸部としてのシャフト200を有していてもよい。シャフト200は軸受け部103を貫通している。
また、シャフト200を構成する金属材料としては、例えば、鉄、鉄鋼材、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。シャフト200を構成する金属材料としてアルミニウムやアルミニウム合金等を使用する場合、シャフト200をより軽量にすることができる。一方、シャフト200を構成する金属材料として鉄や鉄鋼材、ステンレス等を使用する場合、シャフト200をより高剛性にすることができる。
本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100としては、例えば、ウォームギヤ、ねじ歯車、ラックギヤ、はすば歯車、平歯車、かさ歯車、ハイポイドギヤが挙げられる。本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100は高強度、軽量および耐衝撃性の性能バランスに優れているため、工作機械や産業用ロボット、生活支援ロボット等のギヤ類として有用なかさ歯車に好適に用いられる。かさ歯車の歯すじは、すぐばかさ歯車であってもよいし、はすばかさ歯車であってもよいし、まがりばかさ歯車であってもよい。さらに、本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100は、マイタ歯車(以下、マイタギヤとも呼ぶ。)として特に好んで用いられる。ここで、マイタ歯車は、例えば、交わるかさ歯車の歯数が同一であり、ピッチ面が45°である。
また、本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100は、後述する射出成形法によって製造される場合は生産性が極めて高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100は、例えば、車両用のギヤ、ロボット用のギヤ等に用いることができる。
以下、本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100を構成する各部材について説明する。
<歯車部>
歯車部101は、所定の厚みを有する円環状に形成されている。本実施形態の場合、歯車部101の外周面に沿って複数の歯が一定間隔で設けられている。歯車部101は、例えば、金型鋳造等により作製される。
歯車部101を構成する第1の金属材料は特に限定されないが、例えば、鉄、鉄鋼材、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、軽量かつ高強度の点から、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。また、耐摩耗性の観点から、鉄、鉄鋼材およびステンレスが好ましい。歯車部101は特に耐摩耗性が求められるため、歯車部101を構成する第1の金属材料としては、鉄、鉄鋼材およびステンレスが特に好ましい。
歯車部101の接合部表面(A)には、例えば、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸構造(α)が形成されている。
ここで、微細凹凸構造(α)の間隔周期は凸部から隣接する凸部までの距離の平均値であり、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真、あるいは表面粗さ測定装置を用いて求めることができる。
電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡により測定される間隔周期は通常500nm未満の間隔周期であり、具体的には歯車部101の接合部表面(A)を撮影する。その写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定する。凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とする。一方、500nmを超える間隔周期は通常、表面粗さ測定装置を用いて求める。
なお、通常、歯車部101の接合部表面(A)だけでなく、歯車部101の表面全体に対し、表面粗化処理が施されているため、歯車部101の接合部表面(A)と同一面で、接合部表面(A)以外の箇所から間隔周期を測定することもできる。
上記間隔周期は、好ましくは10nm以上300μm以下、より好ましくは20nm以上200μm以下である。
上記間隔周期が上記下限値以上であると、微細凹凸構造(α)の凹部に熱可塑性樹脂部105を構成する熱可塑性樹脂が十分に進入することができ、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との接合強度をより向上させることができる。また、上記間隔周期が上記上限値以下であると、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との接合部分に隙間が生じるのを抑制できる。その結果、金属―樹脂界面の隙間から水分等の不純物が浸入することを抑制できるため、金属樹脂複合ギヤ100を高温、高湿下で用いた際、強度が低下することを抑制できる。
上記間隔周期を有する微細凹凸構造を形成する方法としては、NaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO等の無機酸水溶液に第1の金属材料を浸漬する方法;陽極酸化法により第1の金属材料を処理する方法;機械的切削、例えばダイヤモンド砥粒研削またはブラスト加工によって作製した凹凸を有する金型パンチをプレスすることにより金属表面に凹凸を形成する方法や、サンドブラスト、ローレット加工、レーザー加工により金属表面に凹凸形状を作成する方法;国際公開第2009/31632号パンフレットに開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、および水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に第1の金属材料を浸漬する方法等が挙げられる。これらの方法は、歯車部101を構成する第1の金属材料の種類や、上記間隔周期の範囲内において形成する凹凸形状によって使い分けることが可能である。本実施形態においては、NaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO等の無機酸水溶液に第1の金属材料を浸漬する方法が、第1の金属材料を広範囲にわたってまとめて処理することができることや、また第1の金属材料と熱可塑性樹脂との接合力に優れることから好ましい。
また、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との接合強度をより一層向上させる観点から、歯車部101の接合部表面(A)上の、十点平均粗さ(Rz)が好ましくは2μm超え、より好ましくは5μm超え、さらに好ましくは10μm超えである。歯車部101と熱可塑性樹脂部105との接合強度の視点からは、更に粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下である要件を満たすことが好ましい。
歯車部101の接合部表面(A)の間隔周期、十点平均粗さ(Rz)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、歯車部101の接合部表面(A)に対する粗化処理の条件を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、とくに粗化処理の温度および時間、エッチング量等が、上記間隔周期や十点平均粗さ(Rz)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を制御するための因子として挙げられる。
次に、上記間隔周期、十点平均粗さ(Rz)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)等を満たす歯車部101の調製方法について説明する。
このような歯車部101は、例えば、エッチング剤を用いて第1の金属材料の表面を粗化処理することにより形成することができる。
以下、上記間隔周期、十点平均粗さ(Rz)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)等を満たす歯車部101を得るための第1の金属材料の粗化処理方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る第1の金属材料の粗化処理方法は、以下の例に限定されない。
(1)前処理工程
まず、第1の金属材料は、熱可塑性樹脂部105との接合側の表面に酸化膜や水酸化物等からなる厚い被膜がないことが望ましい。このような厚い被膜を除去するため、次のエッチング剤で処理する工程の前に、サンドブラスト加工、ショットブラスト加工、研削加工、バレル加工等の機械研磨や、化学研磨により表面層を研磨してもよい。また、熱可塑性樹脂部105との接合側の表面に機械油等の著しい汚染がある場合は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液による処理や、脱脂を行なうことが好ましい。
(2)表面粗化処理工程
本実施形態において第1の金属材料の表面粗化処理方法としては、後述する酸系エッチング剤による処理を特定のタイミングで行うことが好ましい。具体的には、該酸系エッチング剤による処理を表面粗化処理工程の最終段階で行うことが好ましい。
上記酸系エッチング剤を用いて粗化処理する方法としては、浸漬、スプレー等による処理方法が挙げられる。処理温度は20〜40℃が好ましく、処理時間は5〜350秒程度が好ましく、第1の金属材料表面をより均一に粗化できる観点から、20〜300秒がより好ましく、50〜300秒が特に好ましい。
上記酸系エッチング剤を用いた粗化処理によって、第1の金属材料の表面が凹凸形状に粗化される。上記酸系エッチング剤を用いた際の第1の金属材料の深さ方向のエッチング量(溶解量)は、溶解した第1の金属材料の質量、比重および表面積から算出した場合、0.1〜500μmであることが好ましく、5〜500μmであることがより好ましく、5〜100μmであることが更に好ましい。エッチング量が上記下限値以上であれば、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との接合強度をより向上させることができる。また、エッチング量が上記上限値以下であれば、処理コストの低減が可能となる。エッチング量は、処理温度や処理時間等により調整できる。
なお、本実施形態では、上記酸系エッチング剤を用いて第1の金属材料を粗化処理する際、第1の金属材料表面の全面を粗化処理してもよく、熱可塑性樹脂部105が接合される面だけを部分的に粗化処理してもよい。
(3)後処理工程
本実施形態では、上記表面粗化処理工程の後、通常、水洗および乾燥を行うことが好ましい。水洗の方法については特に制限はないが浸漬または流水にて所定時間洗浄することが好ましい。
さらに、後処理工程としては、上記酸系エッチング剤を用いた処理により生じたスマット等を除去するため、超音波洗浄を施すことが好ましい。超音波洗浄の条件は、生じたスマット等を除去することができる条件であれば特に限定されないが、用いる溶媒としては水が好ましく、また、処理時間としては、好ましくは1〜20分間である。
(酸系エッチング剤)
本実施形態において、第1の金属材料表面の粗化処理に用いられるエッチング剤としては、後述する特定の酸系エッチング剤が好ましい。上記特定のエッチング剤で処理することにより、第1の金属材料の表面に、熱可塑性樹脂部105との間の密着性向上に適した微細凹凸構造が形成され、そのアンカー効果により歯車部101と熱可塑性樹脂部105との間の接合強度がより一層向上するものと考えられる。
以下、本実施形態で使用できる酸系エッチング剤の成分について説明する。
上記酸系エッチング剤は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの少なくとも一方と、酸と、を含み、必要に応じて、マンガンイオン、各種添加剤等を含むことができる。
・第二鉄イオン
上記第二鉄イオンは、第1の金属材料を酸化する成分であり、第二鉄イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二鉄イオンを含有させることができる。上記第二鉄イオン源としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄等が挙げられる。上記第二鉄イオン源のうちでは、塩化第二鉄が溶解性に優れ、安価であるという点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記第二鉄イオンの含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜12質量%、さらに好ましくは0.5〜7質量%、さらにより好ましくは1〜6質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。上記第二鉄イオンの含有量が上記下限値以上であれば、第1の金属材料の粗化速度(溶解速度)の低下を防ぐことができる。一方、上記第二鉄イオンの含有量が上記上限値以下であれば、粗化速度を適正に維持することができるため、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になる。
・第二銅イオン
上記第二銅イオンは第1の金属材料を酸化する成分であり、第二銅イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二銅イオン含有させることができる。上記第二銅イオン源としては、硫酸第二銅、塩化第二銅、硝酸第二銅、水酸化第二銅等が挙げられる。上記第二銅イオン源のうちでは、硫酸第二銅、塩化第二銅が安価であるという点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記第二銅イオンの含有量は、0.001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜7質量%、さらに好ましくは0.05〜1質量%、さらにより好ましくは0.1〜0.8質量%、さらにより好ましくは0.15〜0.7質量%、特に好ましくは0.15〜0.4質量%である。上記第二銅イオンの含有量が上記下限値以上であれば、第1の金属材料の粗化速度(溶解速度)の低下を防ぐことができる。一方、上記第二銅イオンの含有量が上記上限値以下であれば、粗化速度を適正に維持することができるため、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になる。
上記酸系エッチング剤は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの一方のみを含むものであってもよく、両方を含むものであってもよいが、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含むことが好ましい。酸系エッチング剤が第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含むことで、歯車部101と熱可塑性樹脂部105との間の接合強度向上により適した良好な粗化形状が容易に得られる。
上記酸系エッチング剤が、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含む場合、第二鉄イオンおよび第二銅イオンのそれぞれの含有量が、上記範囲であることが好ましい。また、酸系エッチング剤中の第二鉄イオンと第二銅イオンの含有量の合計は、0.011〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。
・マンガンイオン
上記酸系エッチング剤には、第1の金属材料表面をむらなく一様に粗化するために、マンガンイオンが含まれていてもよい。マンガンイオンは、マンガンイオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該マンガンイオンを含有させることができる。上記マンガンイオン源としては、硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガン、フッ化マンガン、硝酸マンガン等が挙げられる。上記マンガンイオン源のうちでは、硫酸マンガン、塩化マンガンが安価である等の点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記マンガンイオンの含有量は、0〜1質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜0.5質量%である。
・酸
上記酸は、第二鉄イオンおよび/または第二銅イオンにより酸化された金属を溶解させる成分である。上記酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸や、スルホン酸、カルボン酸等の有機酸が挙げられる。上記カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸等が挙げられる。上記酸系エッチング剤には、これらの酸を一種または二種以上配合することができる。上記無機酸のうちでは、臭気がほとんどなく、安価である点から硫酸が好ましい。また、上記有機酸のうちでは、粗化形状の均一性の観点から、カルボン酸が好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記酸の含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜50質量%であることがより好ましく、1〜50質量%であることがさらに好ましく、1〜30質量%であることがさらにより好ましく、1〜25質量%であることがさらにより好ましく、2〜18質量%であることがさらにより好ましい。上記酸の含有量が上記下限値以上であれば、第1の金属材料の粗化速度(溶解速度)の低下を防止できる。一方、上記酸の含有量が上記上限値以下であれば、液温が低下した際の第1の金属材料の金属塩の結晶析出を防止できるため、作業性を向上できる。
・他の成分
本実施形態において使用できる酸系エッチング剤には、指紋等の表面汚染物による粗化のむらを防ぐために界面活性剤を添加してもよく、必要に応じて他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、深い凹凸を形成するために添加されるハロゲン化物イオン源、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等を例示できる。あるいは、粗化処理速度を上げるために添加されるチオ硫酸イオン、チオ尿素等のチオ化合物や、より均一な粗化形状を得るために添加されるイミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等のアゾール類や、粗化反応を制御するために添加されるpH調整剤等も例示できる。これら他の成分を添加する場合、その合計含有量は、酸系エッチング剤中に0.01〜10質量%程度であることが好ましい。
本実施形態の酸系エッチング剤は、上記の各成分をイオン交換水等に溶解させることにより容易に調製することができる。
<軸受け部>
図1に示すように、軸受け部103は、例えば、回転軸部としてのシャフト200を貫通させて固定する役割を有する。
軸受け部103は、例えば、金型鋳造等により作製される。
軸受け部103を構成する第2の金属材料は特に限定されないが、例えば、鉄、鉄鋼材、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、軽量かつ高強度の点から、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。また、耐摩耗性の観点から、鉄、鉄鋼材およびステンレスが好ましい。軸受け部103を構成する第2の金属材料としては、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が特に好ましい。
軸受け部103の接合部表面(B)には、例えば、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸構造(β)が形成されている。
ここで、微細凹凸構造(β)の間隔周期は凸部から隣接する凸部までの距離の平均値であり、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真、あるいは表面粗さ測定装置を用いて求めることができる。
電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡により測定される間隔周期は通常500nm未満の間隔周期であり、具体的には軸受け部103の接合部表面(B)を撮影する。その写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定する。凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とする。一方、500nmを超える間隔周期は通常、表面粗さ測定装置を用いて求める。
なお、通常、軸受け部103の接合部表面(B)だけでなく、軸受け部103の表面全体に対し、表面粗化処理が施されているため、軸受け部103の接合部表面(B)と同一面で、接合部表面(B)以外の箇所から間隔周期を測定することもできる。
上記間隔周期は、好ましくは10nm以上300μm以下、より好ましくは20nm以上200μm以下である。
上記間隔周期が上記下限値以上であると、微細凹凸構造(β)の凹部に熱可塑性樹脂部105を構成する熱可塑性樹脂が十分に進入することができ、軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との接合強度をより向上させることができる。また、上記間隔周期が上記上限値以下であると、軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との接合部分に隙間が生じるのを抑制できる。その結果、金属―樹脂界面の隙間から水分等の不純物が浸入することを抑制できるため、金属樹脂複合ギヤ100を高温、高湿下で用いた際、強度が低下することを抑制できる。
上記間隔周期を有する微細凹凸構造を形成する方法としては、NaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO等の無機酸水溶液に第2の金属材料を浸漬する方法;陽極酸化法により第2の金属材料を処理する方法;機械的切削、例えばダイヤモンド砥粒研削またはブラスト加工によって作製した凹凸を有する金型パンチをプレスすることにより金属表面に凹凸を形成する方法や、サンドブラスト、ローレット加工、レーザー加工により金属表面に凹凸形状を作成する方法;国際公開第2009/31632号パンフレットに開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、および水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に第2の金属材料を浸漬する方法等が挙げられる。これらの方法は、軸受け部103を構成する第2の金属材料の種類や、上記間隔周期の範囲内において形成する凹凸形状によって使い分けることが可能である。本実施形態においては、NaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO等の無機酸水溶液に第2の金属材料を浸漬する方法が、第2の金属材料を広範囲にわたってまとめて処理することができることや、また第2の金属材料と熱可塑性樹脂との接合力に優れることから好ましい。
また、軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との接合強度をより一層向上させる観点から、軸受け部103の接合部表面(B)上の、十点平均粗さ(Rz)が好ましくは2μm超え、より好ましくは5μm超え、さらに好ましくは10μm超えである。軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との接合強度の視点からは、更に粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下である要件を満たすことが好ましい。
軸受け部103の接合部表面(B)の間隔周期、十点平均粗さ(Rz)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、軸受け部103の接合部表面(B)に対する粗化処理の条件を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、とくに粗化処理の温度および時間、エッチング量等が、上記間隔周期や十点平均粗さ(Rz)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を制御するための因子として挙げられる。
次に、上記間隔周期、十点平均粗さ(Rz)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)等を満たす軸受け部103の調製方法について説明する。
このような軸受け部103は、例えば、エッチング剤を用いて第2の金属材料の表面を粗化処理することにより形成することができる。エッチング剤を用いた第2の金属材料の表面の粗化処理は、前述した第1の金属材料の粗化処理方法と同様の方法によりおこなうことができる。そのため、ここでの説明は省略する。
<熱可塑性樹脂部>
以下、本実施形態に係る熱可塑性樹脂部105について説明する。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂部105は熱可塑性樹脂組成物(P)により構成されている。熱可塑性樹脂組成物(P)は、熱可塑性樹脂(P1)を必須成分として含み、必要に応じて充填材(P2)を含む。さらに、熱可塑性樹脂組成物(P)は必要に応じてその他の配合剤を含む。なお、便宜上、熱可塑性樹脂部105が熱可塑性樹脂(P1)のみからなる場合であっても、熱可塑性樹脂部105は熱可塑性樹脂組成物(P)により構成されていると記載する。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂部105の形状については特に限定されないが、金属樹脂複合ギヤ100がかさ歯車である場合は、熱可塑性樹脂部105は、図4に示すとおり、歯車部101の内周面101aに接合する熱可塑性樹脂部(A)105aと、軸受け部103の外周面103bに接合する熱可塑性樹脂部(B)105bと、熱可塑性樹脂部(A)105aと熱可塑性樹脂部(B)105bの二面が成す隙間に、周方向と直交するようにして配置される複数のリブ状の熱可塑性樹脂部(C)105cと、により構成されることが好ましい。熱可塑性樹脂部(A)105aの平均厚み、熱可塑性樹脂部(B)105bの平均厚み、および熱可塑性樹脂部(C)105cの平均厚みは特に限定されないが、相互に2倍以上とはならないことが好ましく、より好ましくは相互に1.5倍以下である。三者の相互の平均厚み比が相互に2倍以下であると、部分的に成形収縮の状態が一定にならず熱可塑性樹脂部にひけ(シンクマーク)、ボイド、或いはそりが発生することを抑制することができる。
熱可塑性樹脂部(A)105a、熱可塑性樹脂部(B)105bおよび熱可塑性樹脂部(C)105cを構成する熱可塑性樹脂の種類は相互に同一であっても異なっていてもよいが、通常、熱可塑性樹脂部105が金属インサート成形(射出成形)によって製造されるという理由によって相互に同一であることが好ましい。
熱可塑性樹脂部(A)105a、熱可塑性樹脂部(B)105bおよび熱可塑性樹脂部(C)105cの相互の結合は、成形工程のみで結合一体化されていてもよいし、熱可塑性樹脂部(A)105aと熱可塑性樹脂部(B)105bを成形工程のみで結合・一体化したのちに、次いで熱可塑性樹脂部(C)105cを機械的、接着または溶着等の接合手段によって組み立ててもよい。しかし、通常、熱可塑性樹脂部105が射出成形によって製造されるという理由によって、熱可塑性樹脂部(A)105a、熱可塑性樹脂部(B)105bおよび熱可塑性樹脂部(C)105cの相互の結合は、成形工程のみで一体結合されていることが好ましい。リブ状の熱可塑性樹脂部(C)105cの形状は、熱可塑性樹脂部(A)105aと熱可塑性樹脂部(B)105bの両樹脂部に結合点を有する形状を持ち、金属樹脂複合ギヤ100の補強効果を発現している限りは特に限定されないが、具体的には三角リブ板形状が好ましい。リブ状の熱可塑性樹脂部(C)105cの個数は、金属樹脂複合ギヤ100にかかる力によって随時調整されるが、通常6〜36個、好ましくは8〜18個であり、それぞれ均一角度で放射状に配置される。
(熱可塑性樹脂(P1))
熱可塑性樹脂(P1)としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール−ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ABS、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂等、ポリアセタール樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、熱可塑性樹脂(P1)としては、歯車部101または軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との接合強度向上効果をより効果的に得ることができる観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、およびポリアセタール樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
上記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンを重合して得られる重合体を特に限定なく使用することができる。
上記ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンとしては、例えば、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィン等が挙げられる。
上記α−オレフィンとしては、炭素原子数3〜30、好ましくは炭素原子数3〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが挙げられる。より具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。
上記環状オレフィンとしては、炭素原子数3〜30の環状オレフィンが挙げられ、好ましくは炭素原子数3〜20である。より具体的には、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン等が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンとして好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。これらのうち、より好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンであり、さらに好ましくはエチレンまたはプロピレンである。
上記ポリオレフィン系樹脂は、上述したオレフィンを一種単独で重合して得られたもの、または二種以上を組み合わせてランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合して得られたものであってもよい。
また、上記ポリオレフィン系樹脂としては、直鎖状のものであっても、分岐構造を導入したものであってもよい。
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグルコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等が挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂としては、例えば、PA6、PA12等の開環重合系脂肪族ポリアミド;PA66、PA46、PA610、PA612、PA11等の重縮合系ポリアミド;MXD6、PA6T、PA9T、PA6T/66、PA6T/6、アモルファスPA等の半芳香族ポリアミド;ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)等の全芳香族ポリアミド、アミド系エラストマー等が挙げられる。
熱可塑性樹脂(P1)としては、得られる金属樹脂複合ギヤ100の耐衝撃性や強度をより効果的に向上させることができる観点から、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂およびポリアセタール樹脂から選択される一種または二種以上であることが好ましい。
(充填材(P2))
本実施形態において、歯車部101または軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との線膨張係数差の調整や熱可塑性樹脂部105の機械的強度を向上させる観点から、熱可塑性樹脂部105は充填材(P2)をさらに含んでもよい。
充填材(P2)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、有機繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。
充填材(P2)の形状は特に限定されず、繊維状、粒子状、板状等どのような形状であってもよい。
熱可塑性樹脂部105が充填材(P2)を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂部105全体を100質量%としたとき、通常5質量%以上95質量%以下、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上90質量%以下、特に好ましくは50質量%以上90質量%以下である。
充填材(P2)は、熱可塑性樹脂部105の剛性を高める効果の他、熱可塑性樹脂部105の線膨張係数を制御できる効果がある。特に、本実施形態の金属樹脂複合ギヤ100の場合は、歯車部101または軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との形状安定性の温度依存性が大きく異なることが多いので、大きな温度変化が起こると金属樹脂複合ギヤ100に歪みが掛かりやすい。熱可塑性樹脂部105が充填材(P2)を含有することにより、この歪みを低減することができる。また、充填材(P2)の含有量が上記範囲内であることにより、靱性の低減を抑制することができる。
本実施形態において、充填材(P2)は繊維状充填材であることが好ましく、ガラス繊維および炭素繊維であることがより好ましく、ガラス繊維であることが特に好ましい。
これにより、成形後の熱可塑性樹脂部105の収縮を抑制することができるため、歯車部101または軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との接合をより強固なものとすることができる。
(その他の配合剤)
熱可塑性樹脂部105には、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤を含んでもよい。上記配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、耐衝撃性改質剤等が挙げられる。
(熱可塑性樹脂組成物(P)の製造方法)
熱可塑性樹脂組成物(P)の製造方法は特に限定されず、一般的に公知の方法により製造することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、熱可塑性樹脂(P1)、必要に応じて充填材(P2)、さらに必要に応じて上記その他の配合剤を、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機等の混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより、熱可塑性樹脂組成物(P)が得られる。
[金属樹脂複合ギヤの製造方法]
次に、本実施形態に係る金属樹脂複合ギヤ100の製造方法について説明する。
金属樹脂複合ギヤ100の製造方法は、歯車部101および軸受け部103と、熱可塑性樹脂部105とがそれぞれ相互に接合するように金属樹脂複合ギヤ100を成形できる方法であれば特に限定されない。こうした金属樹脂複合ギヤ100を成形できる方法としては、例えば、射出成形法、トランスファー成形法、圧縮成形法、反応射出成形法、ブロー成形法、熱成形法、プレス成形法等が挙げられる。これらの中でも射出成形法が好ましい。以下、射出成形法を用いた例について説明する。
射出成形法を用いた金属樹脂複合ギヤ100の製造方法は、例えば、以下の(i)〜(ii)の工程を含む。
(i)歯車部101および軸受け部103を射出成形用金型内に配置する工程
(ii)熱可塑性樹脂部105の少なくとも一部が歯車部101および軸受け部103とそれぞれ接するように、金型内に熱可塑性樹脂組成物(P)を射出成形し、熱可塑性樹脂部105を成形する工程
以下、具体的に説明する。
まず、(i)射出成形用金型を用意し、その金型を開いてそのキャビティ部(空間部)に歯車部101および軸受け部103を配置する。(ii)その後、金型を閉じ、熱可塑性樹脂部105の少なくとも一部が歯車部101および軸受け部103とそれぞれ接するように、上記金型の上記キャビティ部に熱可塑性樹脂組成物(P)を射出して固化し、歯車部101および軸受け部103と熱可塑性樹脂部105とをそれぞれ接合する。その後、金型を開き離型することにより、金属樹脂複合ギヤ100を得ることができる。上記金型としては、例えば、高速ヒートサイクル成形(RHCM、ヒート&クール成形)で一般的に使用される射出成形用金型を用いることができる。
ここで、上記(ii)の工程において、熱可塑性樹脂組成物(P)の射出開始から保圧完了までの間、上記金型の表面温度を、好ましくは熱可塑性樹脂部105のガラス転移温度(以下、Tgとも呼ぶ。)以上、より好ましくはTg+(5以上100以下)℃以上の温度に維持することが好ましい。
これにより、熱可塑性樹脂組成物(P)が軟化した状態に保ちながら、歯車部101および軸受け部103の表面に熱可塑性樹脂組成物(P)を高圧でより長い時間接触させることができる。
その結果、歯車部101および軸受け部103と熱可塑性樹脂部105との間の接着性を向上できるため、接合強度により一層優れた金属樹脂複合ギヤ100をより安定的に得ることができる。
また、上記(ii)の工程において、上記保圧完了後、上記金型の表面温度を、好ましくは熱可塑性樹脂部105のガラス転移温度未満、より好ましくはTg−(5以上100以下)℃以下の温度に冷却する。
これにより、軟化状態の熱可塑性樹脂部105を急速に固化させることができる。その結果、金属樹脂複合ギヤ100の成形サイクルを短縮できるため、金属樹脂複合ギヤ100を効率よく得ることができる。
上記金型の表面温度の調整は、急速加熱冷却装置を金型に接続することにより、実施することができる。急速加熱冷却装置は、一般的に使用されている方式を採用することができる。
加熱方法として、蒸気式、加圧熱水式、熱水式、熱油式、電気ヒータ式、電磁誘導過熱式のいずれか1方式またはそれらを複数組み合わせた方式でよい。
具体的には、金型の表面の近くに設けられた流路に水蒸気、温水および温油から選択される加熱媒体を導入する、あるいは電磁誘導加熱を用いることにより、上記金型の上記表面温度を熱可塑性樹脂部105のガラス転移温度以上の温度に維持することが好ましい。
冷却方法としては、冷水式、冷油式のいずれか1方式またはそれらを組み合わせた方式でよい。
具体的には、金型の表面の近くに設けられた流路に冷水および冷油から選択される冷却媒体を導入することにより、金型の表面温度を熱可塑性樹脂部105のガラス転移温度未満の温度に冷却することが好ましい。
上記(ii)の工程において、上記射出開始から上記保圧完了までの時間は、好ましくは1秒以上60秒以下であり、より好ましくは10秒以上50秒以下である。
上記時間が上記下限値以上であると熱可塑性樹脂部105を溶融させた状態に保ちながら、歯車部101および軸受け部103の上記微細凹凸構造に熱可塑性樹脂部105を高圧でより長い時間接触させることができる。これにより、接合強度により一層優れた金属樹脂複合ギヤ100をより安定的に得ることができる。
また、上記時間が上記上限値以下であると、金属樹脂複合ギヤ100の成形サイクルを短縮できるため、金属樹脂複合ギヤ100をより効率よく得ることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(歯車部の作製)
次の第一工程、第二工程および第三工程を順次実施することによって表面処理済の歯車部を得た。
≪第一工程≫
鉄鋼材(SCM415)により構成された歯車部を、市販脱脂剤NE−6(メルテック社製)を5重量%になるように希釈した60℃の水溶液中に5分間浸漬(無搖動下)させた後、5秒間の水洗(搖動下)を3回繰り返した。次いで、特開2001−011662号公報の実施例3に記載された条件に準じて第一工程を実施した。すなわち硫酸、硫酸第二銅の5水和物、塩化カリウム、およびチオサリチル酸が各々50重量%、3重量%、3重量%および0.0001重量%含有する30℃の水溶液中に、5分間浸漬(無搖動下)させた。次いで、超音波照射下で30秒間の水洗(搖動下)を3回繰り返すことによって第一の工程を終えた。
≪第二工程≫
第一工程で得られた歯車部を、20重量%硝酸水溶液中に90秒間浸漬(無搖動下)させた。その際の水溶液の温度は40℃に維持された。その後、20秒間の水洗(搖動下)を3回繰り返し、次いで80℃に設定された乾燥機中で15分間乾燥させることによって第二工程を終了した。
≪第三工程≫
第二工程で得られた歯車部を、銅めっき剥離剤(メルテックス社製、メルストリップCU−3940)に、40℃で1分間浸漬(無搖動下)させた。その後、超音波照射下で20秒間の水洗(搖動下)を3回繰り返した。次いで80℃に設定された乾燥機中で15分間乾燥させることによって第三工程を終了した。第三工程終了後の歯車部の表面を電子顕微鏡写真により観察したところ、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸構造が観察された。
(軸受け部の作製)
アルミニウム合金(A7075−T6)により構成された軸受け部を酸系エッチング剤(硫酸:8.2質量%、塩化第二鉄:7.8質量%(Fe3+:2.7質量%)、塩化第二銅:0.4質量%(Cu2+:0.2質量%)、イオン交換水:残部)(30℃)中に80秒間浸漬し、揺動させることによってエッチングした。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの軸受け部を得た。
軸受け部の表面を電子顕微鏡写真により観察したところ、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸構造が観察された。
(金属樹脂複合ギヤの作製)
射出成形機に金型を装着し、得られた歯車部および軸受け部を金型内に設置した。
次いで、その金型内に、熱可塑性樹脂組成物(ポリアミド系樹脂(PA6):40質量%、ガラス繊維:60質量%)を射出成形して、歯車部および軸受け部と、熱可塑性樹脂組成物により構成された熱可塑性樹脂部材とをそれぞれ接合し、図4に示す、12枚のリブ状の熱可塑性樹脂部(C)(リブ板)を有する金属樹脂複合ギヤ(ただし、シャフト200は除く)を得た。
得られた金属樹脂複合ギヤにおける歯車部と熱可塑性樹脂部材との界面、および軸受け部と熱可塑性樹脂部材との界面をそれぞれ電子顕微鏡写真により観察したところ、それぞれの界面には空隙等は観察されず良好な接合状態であることが確認できた。
また、歯車部表面の微細凹凸構造に熱可塑性樹脂部の一部分が浸入することにより歯車部と熱可塑性樹脂部とが接合されていることが確認できた。
同様に、軸受け部表面の微細凹凸構造に熱可塑性樹脂部の一部分が浸入することにより軸受け部と熱可塑性樹脂部とが接合されていることが確認できた。
また、得られた金属樹脂複合ギヤをマイタギヤとして使用したところ、ギヤの割れや部材間の剥離等の問題は生じず、マイタギヤとして問題なく使用することができた。すなわち、得られた金属樹脂複合ギヤはマイタギヤとして十分な強度および耐衝撃性を有していた。
また、得られた金属樹脂複合ギヤの重量は58gであり、全体が金属材料により構成された現行のマイタギヤ(250g)に比べて、大幅に軽量化できた。
以上から、本実施形態によれば、軽量化が可能で、かつ、ギヤとしての十分な強度および耐衝撃性を得ることが可能なギヤを提供できることが確認できた。
100 金属樹脂複合ギヤ
101 歯車部
101a 内周面
101b 溝構造
103 軸受け部
103a 外周面
105 熱可塑性樹脂部
105a 熱可塑性樹脂部(A)
105b 熱可塑性樹脂部(B)
105c 熱可塑性樹脂部(C)
200 シャフト

Claims (9)

  1. 第1の金属材料により構成された歯車部と、
    第2の金属材料により構成された軸受け部と、
    前記歯車部と前記軸受け部とを連結する熱可塑性樹脂部と、を備え、
    前記歯車部は、少なくとも前記熱可塑性樹脂部との接合部表面(A)に微細凹凸構造(α)を有しており、
    前記微細凹凸構造(α)に前記熱可塑性樹脂部の一部分が浸入することにより前記歯車部と前記熱可塑性樹脂部とが接合されている金属樹脂複合ギヤ。
  2. 請求項1に記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
    前記軸受け部は、少なくとも前記熱可塑性樹脂部との接合部表面(B)に微細凹凸構造(β)を有しており、
    前記微細凹凸構造(β)に前記熱可塑性樹脂部の一部分が浸入することにより前記軸受け部と前記熱可塑性樹脂部とが接合されている金属樹脂複合ギヤ。
  3. 請求項1または2に記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
    前記歯車部は、少なくとも前記熱可塑性樹脂部との接合部表面(A)に溝構造を有し、
    前記熱可塑性樹脂部の一部分が前記溝構造の溝部分に充填されている金属樹脂複合ギヤ。
  4. 請求項1乃至3いずれか一項に記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
    前記熱可塑性樹脂部がポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、およびポリアセタール樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂を含む金属樹脂複合ギヤ。
  5. 請求項1乃至4いずれか一項に記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
    前記熱可塑性樹脂部が充填材を含む金属樹脂複合ギヤ。
  6. 請求項5に記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
    前記熱可塑性樹脂部全体を100質量%としたとき、前記熱可塑性樹脂部中の前記充填材の含有量が5質量%以上95質量%以下である金属樹脂複合ギヤ。
  7. 請求項1乃至6いずれか一項に記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
    前記第1の金属材料および第2の金属材料のうち少なくとも一方が、鉄、鉄鋼材、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金から選択される一種または二種以上を含む金属樹脂複合ギヤ。
  8. かさ歯車である、請求項7に記載の金属樹脂複合ギヤ。
  9. 請求項8に記載の金属樹脂複合ギヤにおいて、
    前記熱可塑性樹脂部が、
    前記歯車部の内周面に接合する熱可塑性樹脂部(A)と、
    前記軸受け部の外周面に接合する熱可塑性樹脂部(B)と、
    前記熱可塑性樹脂部(A)と前記熱可塑性樹脂部(B)の間に周方向と直交するようにして配置される複数のリブ状の熱可塑性樹脂部(C)と、
    により構成される金属樹脂複合ギヤ。
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