JP7115868B2 - 装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電子部品が収容される筐体を備えた装置に関する。
オーディオ装置、車両搭載移動電話装置、あるいはカーナビゲーション装置等に代表される車載装置には、車両の電子化や高性能化に伴って発熱量の多い高性能ICを用いた電子機器が採用されるようになってきている。一方、これらの電子機器が発生する電磁波による不具合、すなわちEMI(電磁妨害)はできるだけ抑制される必要がある。そのため、電子機器が収納された筐体のシールド材を導電性の高い素材(例えば、亜鉛鋼板、銅箔、アルミ箔等)で構成し、電波を表面反射させて遮蔽する方法が主に採用されてきた。このようなシールド材を用いることによって機器内で発生した熱量を放熱させ易いというメリットも享受できる(例えば、特許文献1、2および3参照)。
特開2002-176282号公報 特開2005-108328号公報 実開平5-72180号公報
電子機器用の筐体には、軽量であり、かつ、電子機器用の筐体としての十分な電磁波シールド機能および機械的強度を有することが求められる。一方、電子部品は発熱する。電子部品の温度が上昇しすぎると、電子部品の信頼性が低下してしまう。一方、電子部品は筐体内に収容される場合が多いため、熱が逃げにくい。本発明は、電子機器用の筐体を軽量にして、電子機器用の筐体としての十分な電磁波シールド機能および機械的強度を持たせ、かつ、筐体に収容された電子部品からの熱を逃げやすくすることを目的の一つとする。
本発明によれば、以下に示す装置が提供される。
[1]板状の金属部材と、
前記金属部材の一面に接合された第1樹脂部材と、
前記金属部材に設けられた開口にはめ込まれた放熱部材と、
前記開口の縁と前記放熱部材の間に生じている隙間を埋めている第2樹脂部材と、を備え、
前記第1樹脂部材と前記第2 樹脂部材はつながっており、
前記第1樹脂部材は、第1の方向に延在している第1部分と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在している第2部分とを有し、
前記第1部分は、前記第2部分と交わっている、装置。
本発明によれば、電子機器用の筐体を軽量にして、電子機器用の筐体としての十分な電磁波シールド機能および機械的強度を持たせることができ、かつ、筐体に収容された電子部品からの熱が逃げやすくなる。
実施形態の電子機器用筐体の構造の一例を模式的に示した斜視図である。 実施形態の蓋板の構造の一例を模式的に示した斜視図である。 実施形態の熱可塑性樹脂部材が接合された展開図状金属板の構造の一例を模式的に示した斜視図である。 実施形態の熱可塑性樹脂部材が接合された展開図状金属板の構造の一例を模式的に示した斜視図である。 実施形態に係る金属部材(M)の接合部表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部の測定箇所を説明するための模式図である。 図3に示した底板を示す斜視図である。 図6のA-A断面図である。 実施例1で用いた力学特性評価用の金属樹脂接合板の斜視図である。 実施例2に係る展開図状金属板の斜視図である。 実施例2に係る展開図状金属樹脂接合板の斜視図である。 本実施形態に係る金属部材(M)の接合部表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部の測定箇所を説明するための模式図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。文中の数字の間にある「~」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
[電子機器用筐体]
まず、本実施形態に係る電子機器用筐体100について図1および図2を例に取って説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の電子機器用筐体100の構造の一例を模式的に示した斜視図である。図2は、本発明に係る実施形態の蓋板203の構造の一例を模式的に示した斜視図である。
本実施形態に係る電子機器用筐体100は、金属製の底板201と、底板に一体的に折り曲げられて連結された金属製の側板202(202-1、202-2、202-3、および202-4)と、を備え、内部に電子機器の少なくとも一部となる電子部品を収容するための筐体であって、少なくとも底板201および側板202からなる金属部材(M)において、板状の金属部材(M)の表面の一部に熱可塑性樹脂部材301が接合され、好ましくは直接接合され、金属部材(M)が熱可塑性樹脂部材301により補強されており、板状の金属部材(M)の両面に熱可塑性樹脂部材301が接合されている。なお、本実施形態において直接接合とは、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301の間に接着剤含有層等の介在層が存在しない接合を意味する。
ここで、側板202同士は、例えば、機械的手段で係合されていることが好ましい。機械的係合手段(物理的係合手段とも呼ぶ。)は特に限定されないが、例えば、ネジ止め等が挙げられる。側板202と必要に応じて設けられる蓋板203とは、上記の機械的手段で係合されていてもよいし、任意の側板1枚に一体的に折り曲げられて連結されていてもよい。図1では、側板は202-1、202-2、202-3、および202-4の4枚としているが、本発明では側板がこれらから選ばれる3枚である実施態様も包含する。ただし、この場合は蓋板が上記3枚の側板のいずれかに一体的に折り曲げられて連結していることが好ましい。
電子機器用筐体100に収容される電子部品は、例えば回路基板、マイコンやCPUなどの半導体装置、ディスクリートタイプの素子(例えば容量素子、コイル、抵抗素子等)、及び、換気用又は冷却用のファンの少なくとも一つである。
本実施形態に係る電子機器用筐体100は、その一部が重い金属部材から軽量な樹脂部材に置き換わるため、筐体全体が金属部材により構成されている従来の筐体に比べて、軽量にすることができる。
また、本実施形態に係る電子機器用筐体100は、その一部に金属製の底板201と金属製の側板202を備えることにより、筐体全体が金属部材により構成されている従来の筐体と同等の電磁波シールド機能を得ることができる。
さらに、本実施形態に係る電子機器用筐体100は、少なくとも底板201および側板202からなる金属部材(M)を熱可塑性樹脂部材301により補強することにより、金属部材(M)の厚みを薄くすることによる電子機器用筐体100の機械的強度の低下を抑制することができる。すなわち、電子機器用筐体100の軽量化を実現しながら、機械的強度の維持が可能である。
さらに、本実施形態に係る電子機器用筐体100は、金属製の底板201と金属製の側板202とが一体的に連結されているため、底板と側板とを連結する部品が不要となり、部品点数を削減することができ、その結果、工程管理を簡素化できる。また、アース設置個所の削減も可能である。そして、本実施形態に係る電子機器用筐体100は、部品点数やアース設置個所を削減できるため、より軽量な電子機器用筐体100を実現することができる。
さらに、板状の金属部材(M)の表面の一部分のみに、熱可塑性樹脂部材301が形成されているため、熱可塑性樹脂部材301によって金属部材(M)の表面全体が覆われてしまうことを抑制でき、電子機器用筐体100の放熱特性を良好に維持することができる。
本実施形態に係る電子機器用筐体100において、板状の金属部材(M)の両面に熱可塑性樹脂部材301が接合されている。こうすることで、金属部材(M)の両面から金属部材(M)を補強することができるため、電子機器用筐体100の機械的強度を良好にすることができる。これにより、金属部材(M)の厚みを薄くすることができ、軽量な電子機器用筐体100を得ることができる。
以上から、本実施形態に係る電子機器用筐体100は、軽量性、電磁波シールド性、放熱特性および機械的強度のバランスに優れている。
本実施形態に係る金属部材(M)は、熱可塑性樹脂部材301との接合部表面に微細凹凸構造を有することが好ましい。この場合、上記微細凹凸構造に熱可塑性樹脂部材301の一部分が浸入することにより金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301とが接合されるため、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度をより良好にすることができる。これにより、電子機器用筐体100の機械的強度をより良好にすることができるため、電子機器用筐体100を構成する金属部材(M)の厚みをより薄くすることができる。その結果、より軽量な電子機器用筐体100を得ることができる。
また、板状の金属部材(M)の一方の面に接合された熱可塑性樹脂部材301と、他方の面に接合された熱可塑性樹脂部材301の少なくとも一部とが、金属部材(M)の板面の垂直方向において互いに対向するように配置されていることが好ましい。こうすることで、熱可塑性樹脂部材301の成形時の収縮により金属部材(M)が変形してしまうことを抑制することができる。
本実施形態に係る電子機器用筐体100において、金属部材(M)の全表面積に占める熱可塑性樹脂部材301の接合部の表面積(以下、接合部面積率と略称する場合がある)は、例えば1面積%以上50面積%以下、好ましくは2面積%以上40面積%以下、より好ましくは5面積%以上30面積%以下である。接合部面積率が上記下限値以上であることによって、電子機器用筐体100の機械的強度をより良好にすることができる。接合部面積率が上記上限値以下であることによって放熱特性により一層優れた軽量な電子機器用筐体100とすることができる。
本実施形態に係る電子機器用筐体100において、熱可塑性樹脂部材301は、図1~4に示すように、金属部材(M)の表面の少なくとも周縁部に接合されていることが好ましい。こうすることで、より少量の熱可塑性樹脂部材301で金属部材(M)をより効果的に補強することができる。さらに、熱可塑性樹脂部材301の使用量を減らすことができるため、熱可塑性樹脂部材301の成形時の収縮により金属部材(M)が変形してしまうことを抑制することができる。
また、本実施形態に係る電子機器用筐体100において、熱可塑性樹脂部材301の少なくとも一部は、例えば、図1~4に示すように、金属部材(M)の表面に骨組状に形成されていることが好ましい。骨組状としては、例えば、筋交い状、格子状、トラス状およびラーメン状から選択される少なくとも一種の形状が挙げられる。金属部材(M)の表面に熱可塑性樹脂部材301を骨組状に形成することにより、より少量の熱可塑性樹脂部材301で金属部材(M)をより効果的に補強することができるので好ましい。
さらに、金属部材(M)の表面に熱可塑性樹脂部材301を骨組状に形成することにより、熱可塑性樹脂部材301の使用量を減らすことができるため、熱可塑性樹脂部材301の成形時の収縮により金属部材(M)が変形してしまうことや、熱可塑性樹脂部材301によって電子機器用筐体100の放熱特性が低下してしまうことを抑制することができる。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂部材301の厚みは、全ての場所で同一厚みであっても、場所によって厚みが異なっていてもよい。
本実施形態に係る電子機器用筐体100において、金属部材(M)の表面に接合される熱可塑性樹脂部材301の平均厚みは、金属部材(M)の平均厚みや筐体全体の大きさにもよるが、例えば1.0mm~10mm、好ましくは1.5mm~8mm、より好ましくは1.5mm~5.0mmである。
熱可塑性樹脂部材301の平均厚みが上記下限値以上であることにより、得られる電子機器用筐体100の機械的強度をより良好にすることができる。
熱可塑性樹脂部材301の平均厚みが上記上限値以下であることにより、得られる電子機器用筐体100をより軽量にすることができる。また、熱可塑性樹脂部材301の使用量を減らすことができるため、熱可塑性樹脂部材301の成形時の収縮により金属部材(M)が変形してしまうことを抑制することができる。
本実施形態に係る電子機器用筐体100において、金属部材(M)の両面に熱可塑性樹脂部材301が接合されていることが好ましい。こうすることで、金属部材(M)の両面から金属部材(M)を補強することができるため、電子機器用筐体100の機械的強度をより良好にすることができる。これにより、金属部材(M)の厚みをより薄くすることができ、より軽量な電子機器用筐体100を得ることができる。
また、金属部材(M)の両面に熱可塑性樹脂部材301が接合されている場合、金属部材(M)の一方の面に接合された熱可塑性樹脂部材301の少なくとも一部は、他方の面に接合された熱可塑性樹脂部材301と、金属部材(M)の板面の垂直方向において対向するように同じ位置に配置されていることが好ましい。こうすることで、熱可塑性樹脂部材301の成形時の収縮により金属部材(M)が変形してしまうことが抑制することができる。この場合において、平面視において、一方の面に接合された熱可塑性樹脂部材301の少なくとも一部は、他方の面に接合された熱可塑性樹脂部材301と重なっていなくてもよい。
本実施形態に係る電子機器用筐体100において、熱可塑性樹脂部材301は、図1に示すように、金属部材(M)の表面の少なくとも周縁部の好ましくは全周に接合されていることが好ましい。こうすることで、より少量の熱可塑性樹脂部材301で金属部材(M)をより効果的に補強することができる。
電子機器用筐体100の一面(例えば底板201及びいずれかの側板202)において、熱可塑性樹脂部材301は、骨組状に形成されている。例えば熱可塑性樹脂部材301は、図3に示すように、第1の方向に延在している第1部分301aと、第1の方向とは異なる第2の方向に延在している第2部分301bとを有している。図3に示す例において、第1部分301aは底板201の一辺に対して直交しており、第2部分301bは底板201の他の辺及び第1部分301aに対して直交している。なお、第1部分301a及び第2部分301bは、底板201の辺に対して斜めに延在していてもよい。例えば第1部分301a及び第2部分301bは、底板201の対角線に沿って延在していてもよいし、底板201内のある点を中心として放射状に延在している部分を有しいてもよい。また、熱可塑性樹脂部材301は格子状に延在している部分を有していてもよい。さらに熱可塑性樹脂部材301は蜘蛛の巣状に延在している部分を有していてもよい。
なお、いずれの例においても、熱可塑性樹脂部材301を射出成形で形成する場合、熱可塑性樹脂部材301のいずれの部分も、電子機器用筐体100の縁に位置する熱可塑性樹脂部材301に繋がっているのが好ましい。このようにすると、一回の射出成形ですべての熱可塑性樹脂部材301を形成することができる。
本実施形態に係る電子機器用筐体100において、底板201と側板202との境界線部205(すなわち電子機器用筐体100(立体)の辺)には熱可塑性樹脂部材301が接合されていないことが好ましい。こうすることで、底板201と側板202との境界線部205を折り曲げることがより容易となり、電子機器用筐体100をより容易に得ることができる。
本実施形態に係る金属部材(M)において、金属製の底板201の表面と、金属製の全ての側板202(図1に示す例では202-1、202-2、202-3、および202-4)のそれぞれの表面に対し、熱可塑性樹脂部材301が接合されていることが好ましい。こうすることで、電子機器用筐体100の機械的強度をより良好にすることができ、金属部材(M)の厚みをより薄くすることができる。その結果、より軽量な電子機器用筐体100を得ることができる。
また、本実施形態に係る電子機器用筐体100は、側板202に一体的に折り曲げられて連結された金属製の蓋板203をさらに備えることが好ましい。この場合、図2~4に示すように、蓋板203の表面の一部に熱可塑性樹脂部材301が接合され、蓋板203が熱可塑性樹脂部材301により補強されていることが好ましい。こうすることで、電子機器用筐体100の機械的強度をより良好にすることができ、電子機器用筐体100を構成する金属部材(M)の厚みをより薄くすることができる。その結果、より軽量な電子機器用筐体100を得ることができる。また、この場合では折り曲げを容易化するため側板202と蓋板203の境界部には熱可塑性樹脂部材301が接合していないことが好ましい。なお、金属製の蓋板203は、金属部材(M)とは別に準備し、側板202に機械的手段や係合機構(例えばヒンジ)を用いてで係合してもよい。
本実施形態に係る蓋板203は、熱可塑性樹脂部材301との接合部表面には金属部材(M)の接合部表面と同様な微細凹凸構造を有することが好ましい。この場合、上記微細凹凸構造に熱可塑性樹脂部材301の一部分が浸入することにより蓋板203と熱可塑性樹脂部材301とが接合されるため、蓋板203と熱可塑性樹脂部材301との接合強度をより良好にすることができる。これにより、電子機器用筐体100の機械的強度をより良好にすることができるため、電子機器用筐体100を構成する蓋板203の厚みをより薄くすることができる。その結果、より軽量な電子機器用筐体100を得ることができる。
ここで、蓋板203を含めた金属部材(M)および蓋板203表面の上記微細凹凸構造は、例えば、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸構造である。
このような微細凹凸構造に熱可塑性樹脂部材301の一部分が侵入して位置するため、金属部材(M)または蓋板203に熱可塑性樹脂部材301が接合することができる。こうすることによって、金属部材(M)または蓋板203と熱可塑性樹脂部材301との間に物理的な抵抗力(アンカー効果)が効果的に発現し、金属部材(M)または蓋板203と熱可塑性樹脂部材301とをより強固に接合することが可能になる。
また、本実施形態に係る電子機器用筐体100は、図1に示すように、側板202に開口部207やスリット209を有していてもよい。側板202に開口部207を有することにより、送風機等を用いて開口部207から電子機器用筐体100内に風を送ることができ、その結果、電子機器用筐体100内の電子機器が熱を持った場合、この電子機器を送風により冷却することができる。
また、側板202にスリット209を有することで、開口部207から取り入れた風を電子機器用筐体100の外部に排出することができる。なお、開口部207やスリット209は底板201に設けられていてもよい。
本実施形態に係る電子装置は、電子機器用筐体100と、電子機器用筐体100に収容された電子機器とを備える。本実施形態に係る電子機器用筐体100に電子機器が収容された電子装置としては、例えば、オーディオ装置、車両搭載移動電話装置、カーナビゲーション装置、車載カメラ、ドライブレコーダー等に代表される車載装置が挙げられる。
以下、本実施形態に係る電子機器用筐体100を構成する各部材について図1および図2を例に取って説明する。
<金属部材(M)>
本実施形態に係る金属部材(M)は、底板201と、側板202-1、側板202-2、側板202-3、および側板202-4から選択される少なくとも一つの側板202とからなる。好ましい態様の一は、底板201、側板202-1、側板202-2、側板202-3、および側板202-4からなる。好ましい態様の二は、底板201、側板(前面板)202-1、側板(両側板)202-2並びに202-4および蓋板203からなる。好ましい態様の三は、底板201、側板202-1、側板202-2、側板202-3、側板202-4、および蓋板203からなる。これらの態様の中でも、態様の二および三が特に好ましい。
こうすることで、電子機器用筐体100の部品点数をより削減することができ、その結果、工程管理をより容易にできたり、アース設置個所をより削減できたりすることができる。そして、部品点数やアース設置個所をより削減できるため、より一層軽量な電子機器用筐体100を実現することができる。
本実施形態に係る金属部材(M)を構成する金属材料は特に限定されないが、電磁波シールド性を有する金属が好ましく、例えば、鉄、鉄鋼材、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、軽量、安価、および高強度の点から、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。
アルミニウム合金は特に限定されないが、アルミニウムを主成分とする合金である。具体的には、アルミニウムと、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、およびニッケル等から選択される少なくとも1種の金属との合金を例示することができる。
本実施形態に係るアルミニウム合金としては、日本工業規格(JIS H4140)で規定されている国際アルミニウム合金名の4桁の数字が、2000番台のアルミニウム/銅系合金、3000番台のアルミニウム/マンガン系合金、4000番台のアルミニウム/ケイ素系合金、5000番台のアルミニウム/マグネシウム系合金、6000番台のアルミニウム/マグネシウム/ケイ素系合金、7000番台のアルミニウム/亜鉛/マグネシウム系合金、アルミニウム/亜鉛/マグネシウム/銅系合金等が好適に用いられる。これらの中でも、入手容易性、機械・熱特性の視点から5000番台のアルミニウム/マグネシウム合金が特に好んで用いられる。
本実施形態に係る金属部材(M)の厚みは、全ての場所で同一厚みであっても、場所によって厚みが異なっていてもよい。金属部材(M)の平均厚みは好ましくは0.2mm以上1.0mm以下、より好ましくは0.2mm超え1.0mm以下、特に好ましくは0.2mm超え0.8mm以下である。
金属部材(M)の平均厚みが上記下限値以上であることにより、得られる電子機器用筐体100の機械的強度、放熱特性および電磁波シールド特性をより良好にすることができる。
金属部材(M)の平均厚みが上記上限値以下であることにより、得られる電子機器用筐体100をより軽量にすることができる。さらに金属部材(M)の平均厚みが上記上限値以下であることにより、金属部材(M)を折り曲げることがより容易となり、電子機器用筐体100の生産性をより向上させることができる。
金属部材(M)の形状は、例えば、板状とすることができる。金属部材(M)は上記金属材料を、切断、プレス等による塑性加工、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工等の除肉加工等公知の方法によって所定の形状に加工された後に、後述する粗化処理がなされたものが好ましい。要するに、種々の加工法により、必要な形状に加工されたものを用いることが好ましい。
金属部材(M)の熱可塑性樹脂部材301との接合部表面には、例えば、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸構造が形成されている。
ここで、微細凹凸構造の間隔周期は凸部から隣接する凸部までの距離の平均値であり、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真、あるいは表面粗さ測定装置を用いて求めることができる。
電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡により測定される間隔周期は通常500nm未満の間隔周期であり、具体的には金属部材(M)のうち熱可塑性樹脂部材301との接合部の表面を撮影する。その写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定する。凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とする。一方、500nmを超える間隔周期は通常、表面粗さ測定装置を用いて求める。
なお、通常、金属部材(M)の接合部表面だけでなく、金属部材(M)の表面全体に対し、表面粗化処理が施されているため、金属部材(M)の接合部表面と同一面で、接合部表面以外の箇所から間隔周期を測定することもできる。
上記間隔周期は、好ましくは10nm以上300μm以下、より好ましくは20nm以上200μm以下である。
上記間隔周期が上記下限値以上であると、微細凹凸構造の凹部に熱可塑性樹脂部材301を構成する熱可塑性樹脂組成物(P)が十分に進入することができ、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度をより向上させることができる。また、上記間隔周期が上記上限値以下であると、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合部分に隙間が生じるのを抑制できる。その結果、金属―樹脂界面の隙間から水分等の不純物が浸入することを抑制できるため、電子機器用筐体100を高温、高湿下で用いた際、強度が低下することを抑制できる。
上記間隔周期を有する微細凹凸構造を形成する方法としては、NaOH等を含有する無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO等を含有する無機酸水溶液に金属部材を浸漬する方法;陽極酸化法により金属部材を処理する方法;機械的切削、例えばダイヤモンド砥粒研削またはブラスト加工によって作製した凹凸を有する金型パンチをプレスすることにより金属部材表面に凹凸を形成する方法や、サンドブラスト、ローレット加工、レーザー加工により金属部材表面に凹凸形状を作製する方法;国際公開第2009/31632号パンフレットに開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、および水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に金属部材を浸漬する方法等が挙げられる。これらの方法は、金属部材(M)を構成する金属材料の種類や、上記間隔周期の範囲内において形成する凹凸形状によって使い分けることが可能である。本実施形態においては、NaOH等を含有する無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO等を含有する無機酸水溶液に金属部材を浸漬する方法が、金属部材を広範囲にわたってまとめて処理することができることや、また金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合力に優れることから好ましい。
また、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面104上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たすことが好ましい。
(1)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を1直線部以上含む
(2)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が2μmを超える
図11は、金属部材(M)の接合部表面104上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部を説明するための模式図である。
上記6直線部は、例えば、図11に示すような6直線部B1~B6を選択することができる。まず、基準線として、金属部材(M)の接合部表面104の中心部Aを通る中心線B1を選択する。次いで、中心線B1と平行関係にある直線B2およびB3を選択する。次いで、中心線B1と直交する中心線B4を選択し、中心線B1と直交し、中心線B4と並行関係にある直線B5およびB6を選択する。ここで、各直線間の垂直距離D1~D4は、例えば、2~5mmである。
なお、通常、金属部材(M)は、金属部材(M)の熱可塑性樹脂部材301との接合部表面104のみならず、金属部材(M)全体に対し、表面粗化処理が施されているため、例えば、金属部材(M)の熱可塑性樹脂部材301との接合部表面104と同一面、または反対面で、接合部表面104以外の箇所から6直線部を選択してもよい。
上記要件(1)および(2)を同時に満たすと、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度により一層優れた電子機器用筐体100が得られる理由は必ずしも明らかではないが、金属部材(M)の熱可塑性樹脂部材301との接合部表面104が、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との間のアンカー効果を効果的に発現できる構造になっているためと考えられる。
金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面104上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1A)~(1C)のうち1つ以上の要件をさらに満たすことが好ましく、要件(1C)を満たすことがとりわけ好ましい。
(1A)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を好ましくは2直線部以上、より好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
(1B)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が20%以下である直線部を好ましくは1直線部以上、より好ましくは2直線部以上、さらに好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
(1C)切断レベル40%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が60%以下である直線部を好ましくは1直線部以上、より好ましくは2直線部以上、さらに好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
また、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面104上の、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)の平均値が好ましくは0.1%以上40%以下であり、より好ましくは0.5%以上30%以下であり、さらに好ましくは1%以上20%以下であり、最も好ましくは2%以上15%以下である。
なお、上記負荷長さ率(Rmr)の平均値は、前述の任意の6直線部の負荷長さ率(Rmr)を平均したものを採用することができる。
本実施形態に係る金属部材(M)の接合部表面104の負荷長さ率(Rmr)は、金属部材の表面に対する粗化処理の条件を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、特にエッチング剤の種類および濃度、粗化処理の温度および時間、エッチング処理のタイミング等が、上記負荷長さ率(Rmr)を制御するための因子として挙げられる。
金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面104上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(2A)をさらに満たすことが好ましい。
(2A)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が好ましくは5μm超、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である
金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面104上の、十点平均粗さ(Rz)の平均値が好ましくは2μmを超えて50μm以下、より好ましくは5μmを超えて45μm以下、さらに好ましくは10μm以上40μm以下、特に好ましくは15μm以上30μm以下である。
なお、上記十点平均粗さ(Rz)の平均値は、前述の任意の6直線部の十点平均粗さ(Rz)を平均したものを採用することができる。
金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面104上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(4)をさらに満たすことが好ましい。
(4)すべての直線部の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μmを超え300μm未満であり、より好ましくは20μm以上200μm以下である。
金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面104上の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が好ましくは10μmを超え300μm未満、より好ましくは20μm以上200μm以下である。
なお、上記粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値は、前述の任意の6直線部の十点平均粗さ(Rz)を平均したものを採用することができる。
ここで、本実施形態において、金属部材(M)の平均厚みが500μm以上の範囲である場合、上記粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が上記間隔周期となる。
本実施形態に係る金属部材(M)の接合部表面104の十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、金属部材の表面に対する粗化処理の条件を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、特に粗化処理の温度および時間、エッチング量等が、上記十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を制御するための因子として挙げられる。
次に、上記間隔周期、負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)等を満たす金属部材(M)の調製方法について説明する。
このような金属部材(M)は、例えば、エッチング剤を用いて金属部材の表面を粗化処理することにより形成することができる。
以下、上記間隔周期、負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)等を満たす金属部材(M)を得るための金属部材の粗化処理方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る金属部材の粗化処理方法は、以下の例に限定されない。
(1)前処理工程
まず、金属部材は、熱可塑性樹脂部材301との接合側の表面に酸化膜や水酸化物等からなる厚い被膜がないことが望ましい。このような厚い被膜を除去するため、次のエッチング剤で処理する工程の前に、サンドブラスト加工、ショットブラスト加工、研削加工、バレル加工等の機械研磨や、化学研磨により表面層を研磨してもよい。また、熱可塑性樹脂部材301との接合側の表面に機械油等の著しい汚染がある場合は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液による処理や、脱脂を行なうことが好ましい。
(2)表面粗化処理工程
本実施形態において金属部材の表面粗化処理方法としては、後述する酸系エッチング剤による処理を特定のタイミングで行うことが好ましい。具体的には、該酸系エッチング剤による処理を表面粗化処理工程の最終段階で行うことが好ましい。
上記酸系エッチング剤を用いて粗化処理する方法としては、浸漬、スプレー等による処理方法が挙げられる。処理温度は20~40℃が好ましく、処理時間は5~350秒程度が好ましく、金属部材表面をより均一に粗化できる観点から、20~300秒がより好ましく、50~300秒が特に好ましい。
上記酸系エッチング剤を用いた粗化処理によって、金属部材の表面が凹凸形状に粗化される。上記酸系エッチング剤を用いた際の金属部材の深さ方向のエッチング量(溶解量)は、溶解した金属部材の質量、比重および表面積から算出した場合、0.1~500μmであることが好ましく、5~500μmであることがより好ましく、5~100μmであることがさらに好ましい。エッチング量が上記下限値以上であれば、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度をより向上させることができる。また、エッチング量が上記上限値以下であれば、処理コストの低減が可能となる。エッチング量は、処理温度や処理時間等により調整できる。
なお、本実施形態では、上記酸系エッチング剤を用いて金属部材を粗化処理する際、金属部材表面の全面を粗化処理してもよく、熱可塑性樹脂部材301が接合される面だけを部分的に粗化処理してもよい。
(3)後処理工程
本実施形態では、上記表面粗化処理工程の後、通常、水洗および乾燥を行うことが好ましい。水洗の方法については特に制限はないが浸漬または流水にて所定時間洗浄することが好ましい。
さらに、後処理工程としては、上記酸系エッチング剤を用いた処理により生じたスマット等を除去するため、超音波洗浄を施すことが好ましい。超音波洗浄の条件は、生じたスマット等を除去することができる条件であれば特に限定されないが、用いる溶媒としては水が好ましく、また、処理時間としては、好ましくは1~20分間である。
(酸系エッチング剤)
本実施形態において、金属部材表面の粗化処理に用いられるエッチング剤としては、後述する特定の酸系エッチング剤が好ましい。上記特定のエッチング剤で処理することにより、金属部材の表面に、熱可塑性樹脂部材301との間の密着性向上に適した微細凹凸構造が形成され、そのアンカー効果により金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との間の接合強度がより一層向上するものと考えられる。
以下、本実施形態で使用できる酸系エッチング剤の成分について説明する。
上記酸系エッチング剤は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの少なくとも一方と、酸と、を含み、必要に応じて、マンガンイオン、各種添加剤等を含むことができる。
・第二鉄イオン
上記第二鉄イオンは、金属部材を酸化する成分であり、第二鉄イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二鉄イオンを含有させることができる。上記第二鉄イオン源としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄等が挙げられる。上記第二鉄イオン源のうちでは、塩化第二鉄が溶解性に優れ、安価であるという点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記第二鉄イオンの含有量は、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~12質量%、さらに好ましくは0.5~7質量%、さらにより好ましくは1~6質量%、特に好ましくは1~5質量%である。上記第二鉄イオンの含有量が上記下限値以上であれば、金属部材の粗化速度(溶解速度)の低下を防ぐことができる。一方、上記第二鉄イオンの含有量が上記上限値以下であれば、粗化速度を適正に維持することができるため、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になる。
・第二銅イオン
上記第二銅イオンは金属部材を酸化する成分であり、第二銅イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二銅イオン含有させることができる。上記第二銅イオン源としては、硫酸第二銅、塩化第二銅、硝酸第二銅、水酸化第二銅等が挙げられる。上記第二銅イオン源のうちでは、硫酸第二銅、塩化第二銅が安価であるという点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記第二銅イオンの含有量は、0.001~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01~7質量%、さらに好ましくは0.05~1質量%、さらにより好ましくは0.1~0.8質量%、さらにより好ましくは0.15~0.7質量%、特に好ましくは0.15~0.4質量%である。上記第二銅イオンの含有量が上記下限値以上であれば、金属部材の粗化速度(溶解速度)の低下を防ぐことができる。一方、上記第二銅イオンの含有量が上記上限値以下であれば、粗化速度を適正に維持することができるため、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になる。
上記酸系エッチング剤は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの一方のみを含むものであってもよく、両方を含むものであってもよいが、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含むことが好ましい。酸系エッチング剤が第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含むことで、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との間の接合強度向上により適した良好な粗化形状が容易に得られる。
上記酸系エッチング剤が、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含む場合、第二鉄イオンおよび第二銅イオンのそれぞれの含有量が、上記範囲であることが好ましい。また、酸系エッチング剤中の第二鉄イオンと第二銅イオンの含有量の合計は、0.011~20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~15質量%、さらに好ましくは0.5~10質量%、特に好ましくは1~5質量%である。
・マンガンイオン
上記酸系エッチング剤には、金属部材表面をむらなく一様に粗化するために、マンガンイオンが含まれていてもよい。マンガンイオンは、マンガンイオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該マンガンイオンを含有させることができる。上記マンガンイオン源としては、硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガン、フッ化マンガン、硝酸マンガン等が挙げられる。上記マンガンイオン源のうちでは、硫酸マンガン、塩化マンガンが安価である等の点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記マンガンイオンの含有量は、0~1質量%であることが好ましく、より好ましくは0~0.5質量%である。上記マンガンイオンの含有量は、熱可塑性樹脂部材301を構成する熱可塑性樹脂(P1)がポリオレフィン系樹脂の場合は0質量%であっても十分な接合強度を発現することを本発明者らは確認している。すなわち、熱可塑性樹脂(P1)としてポリオレフィン系樹脂を用いる場合は上記マンガンイオン含有量は0質量%であることが好ましく、一方、ポリオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を用いる場合は上記上限値以下のマンガンイオンが適宜使用される。
・酸
上記酸は、第二鉄イオンおよび/または第二銅イオンにより酸化された金属を溶解させる成分である。上記酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸や、スルホン酸、カルボン酸等の有機酸が挙げられる。上記カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸等が挙げられる。上記酸系エッチング剤には、これらの酸を一種または二種以上配合することができる。上記無機酸のうちでは、臭気がほとんどなく、安価である点から硫酸が好ましい。また、上記有機酸のうちでは、粗化形状の均一性の観点から、カルボン酸が好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記酸の含有量は、0.1~50質量%であることが好ましく、0.5~50質量%であることがより好ましく、1~50質量%であることがさらに好ましく、1~30質量%であることがさらにより好ましく、1~25質量%であることがさらにより好ましく、2~18質量%であることがさらにより好ましい。上記酸の含有量が上記下限値以上であれば、金属部材の粗化速度(溶解速度)の低下を防止できる。一方、上記酸の含有量が上記上限値以下であれば、液温が低下した際の金属部材の金属塩の結晶析出を防止できるため、作業性を向上できる。
・他の成分
本実施形態において使用できる酸系エッチング剤には、指紋等の表面汚染物による粗化のむらを防ぐために界面活性剤を添加してもよく、必要に応じて他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、深い凹凸を形成するために添加されるハロゲン化物イオン源、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等を例示できる。あるいは、粗化処理速度を上げるために添加されるチオ硫酸イオン、チオ尿素等のチオ化合物や、より均一な粗化形状を得るために添加されるイミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等のアゾール類や、粗化反応を制御するために添加されるpH調整剤等も例示できる。これら他の成分を添加する場合、その合計含有量は、酸系エッチング剤中に0.01~10質量%程度であることが好ましい。
本実施形態の酸系エッチング剤は、上記の各成分をイオン交換水等に溶解させることにより容易に調製することができる。
<熱可塑性樹脂部材>
以下、本実施形態に係る熱可塑性樹脂部材301について説明する。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂部材301は熱可塑性樹脂組成物(P)により構成されている。熱可塑性樹脂組成物(P)は、熱可塑性樹脂(P1)を必須成分として含み、必要に応じてその他の配合剤(P2)を含む。なお、便宜上、熱可塑性樹脂部材301が熱可塑性樹脂(P1)のみからなる場合であっても、熱可塑性樹脂部材301は熱可塑性樹脂組成物(P)により構成されていると記載する。
(熱可塑性樹脂(P1))
熱可塑性樹脂(P1)としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール-ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸-スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ABS、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン-塩化ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合強度向上効果をより効果的に得ることができる観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、およびポリアセタール樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
上記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンを重合して得られる重合体を特に限定なく使用することができる。
上記ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンとしては、例えば、エチレン、α-オレフィン、環状オレフィン、極性オレフィン等が挙げられる。
上記α-オレフィンとしては、炭素原子数3~30、好ましくは炭素原子数3~20の直鎖状または分岐状のα-オレフィンが挙げられる。より具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
上記環状オレフィンとしては、炭素原子数3~30の環状オレフィンが挙げられ、好ましくは炭素原子数3~20である。より具体的には、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン等が挙げられる。
上記極性オレフィンとしては、例えば、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート等が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンとして好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。これらのうち、より好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンであり、さらに好ましくはエチレンまたはプロピレンである。
上記ポリオレフィン系樹脂は、上述したオレフィンを一種単独で重合して得られたもの、または二種以上を組み合わせてランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合して得られたものであってもよい。
上記ポリオレフィン系樹脂は、性質の異なるポリオレフィンからなるブレンドであってもよい。このような例として、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体から選ばれる一種以上と、プロピレン・エチレン共重合体ゴム、エチレン・α-オレフィン共重合体(ここでα-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等)の如きエラストマーとのブレンド体を挙げることができる。
また、上記ポリオレフィン系樹脂としては、直鎖状のものであっても、分岐構造を導入したものであってもよい。
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等が挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂としては、例えば、PA6、PA12等の開環重合系脂肪族ポリアミド;PA66、PA46、PA610、PA612、PA11等の重縮合系ポリアミド;MXD6、PA6T、PA9T、PA6T/66、PA6T/6、アモルファスPA等の半芳香族ポリアミド;ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m-フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)等の全芳香族ポリアミド、アミド系エラストマー等が挙げられる。
(その他の配合剤(P2))
熱可塑性樹脂組成物(P)には、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤(P2)を含んでもよい。上記配合剤(P2)としては、充填材、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、耐衝撃性改質剤等が挙げられる。
本実施形態において、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との線膨張係数差の調整や熱可塑性樹脂部材301の機械的強度を向上させる観点から、熱可塑性樹脂部材301は充填材をさらに含むことが好ましい。
上記充填材としては、例えば、ハイドロタルサイト類、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、有機繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ハイドロタルサイト類、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。
上記充填材の形状は特に限定されず、繊維状、粒子状、板状等どのような形状であってもよい。
熱可塑性樹脂部材301が充填材を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂部材301全体を100質量%としたとき、例えば、5質量%以上95質量%以下、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上90質量%以下、特に好ましくは50質量%以上90質量%以下である。
上記充填材は、熱可塑性樹脂部材301の剛性を高める効果の他、熱可塑性樹脂部材301の線膨張係数を制御できる効果がある。特に、本実施形態の電子機器用筐体100の場合は、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との形状安定性の温度依存性が大きく異なることが多いので、大きな温度変化が起こると電子機器用筐体100に歪みが掛かりやすい。熱可塑性樹脂部材301が充填材を含有することにより、この歪みを低減することができる。また、充填材の含有量が上記範囲内であることにより、靱性の低減を抑制することができる。
本実施形態において、充填材は繊維状充填材であることが好ましく、ガラス繊維および炭素繊維であることがより好ましく、ガラス繊維であることが特に好ましい。
これにより、成形後の熱可塑性樹脂部材301の収縮を抑制することができるため、金属部材(M)と熱可塑性樹脂部材301との接合をより強固なものとすることができる。
上記ハイドロタルサイト類としては天然物と合成品とがあり、例えば、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、ビスマス等の含水塩基性炭酸塩又はその結晶水を含まないものが挙げられる。天然物としては、MgAl(OH)16CO・4HOの構造を有するものが挙げられる。合成品としては、Mg0.7Al0.3(OH)(CO0.15・0.54HO、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.2 Al(OH)12.4(CO0.15、ZnAl(OH)16CO・4H2O、CaAl(OH)16CO・4HO、Mg14Bi(OH)29.6・4.2HO等が挙げられる。ハイドロタルサイト類の配合量は、熱可塑性樹脂組成物(P)100質量部当たり、例えば、0.01質量部以上2質量部以下が好ましい。ハイドロタルサイト類の配合量が上記下限値以上であると、得られる熱可塑性樹脂部材301の耐熱性をより良好にすることができる。ハイドロタルサイト類の配合量が上記上限値以下であると、得られる熱可塑性樹脂部材301の難燃性をより良好にすることができる。
上記難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールAのビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールSのビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAのビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテル、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートおよびこれらの二種以上からなる混合物を挙げることができる。難燃剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物(P)100質量部当たり、例えば、5~25質量部、好ましくは10~20質量部である。難燃剤の含有量が上記下限値以上であると、得られる熱可塑性樹脂部材301の難燃性をより良好にすることができる。難燃剤の含有量が上記上限値以下であると、得られる熱可塑性樹脂部材301の機械特性をより良好にすることができる。
熱可塑性樹脂組成物(P)は難燃助剤を含むことができる。熱可塑性樹脂組成物(P)が難燃助剤を含む場合、その含有量は熱可塑性樹脂組成物(P)100質量部当たり、0.5~20質量部、好ましくは1~10質量部である。難燃助剤の含有量が上記下限値以上であると、難燃剤との十分な相乗効果を得ることができる。難燃助剤の含有量が上記上限値以下であると、得られる熱可塑性樹脂部材301の機械特性をより良好にすることができる。難燃助剤としては、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物(P)は、金属部材(M)表面に付与された微細凹凸構造への浸入を容易にするために流動性が高いことが好ましい。そのため、本実施形態において熱可塑性樹脂組成物(P)は、ASTM D1238に準拠し、230℃下、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが1~200g/10minであることが好ましく、5~50g/10minであることがより好ましい。
(熱可塑性樹脂組成物(P)の製造方法)
熱可塑性樹脂組成物(P)の製造方法は特に限定されず、一般的に公知の方法により製造することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、熱可塑性樹脂(P1)、必要に応じてその他の配合剤(P2)を、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機等の混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより、熱可塑性樹脂組成物(P)が得られる。
[電子機器用筐体の製造方法]
次に、本実施形態に係る電子機器用筐体100の製造方法について説明する。
図3、4および5は、本発明に係る実施形態の熱可塑性樹脂部材301が接合された展開図状金属板(展開図状金属樹脂接合板20、板材)の構造の一例を模式的に示した斜視図である。
本実施形態に係る電子機器用筐体100の製造方法は、例えば、以下の工程(A)~(C)を含む。
(A)金属製の底板201と、金属製の底板201に一体的に連結された金属製の側板202(202-1、202-2、202-3、および202-4)と、を備え、少なくとも熱可塑性樹脂部材301が接合される接合部表面に微細凹凸構造を有する展開図状金属板を準備する工程
(B)展開図状金属板を金型内に設置し、熱可塑性樹脂組成物(P)を上記金型内に注入して展開図状金属板の表面に熱可塑性樹脂部材301を接合して展開図状金属樹脂接合板20を製造する工程
(C)展開図状金属樹脂接合板20の底板201と側板202との境界線部205を折り曲げて、展開図状金属樹脂接合板20を箱型状にする工程
本実施形態に係る電子機器用筐体100の製造方法は、折り曲げ加工前の中間製品である展開図状金属板や展開図状金属樹脂接合板20の形状が平板状であるので、大量中間製品の保管効率や運搬効率が向上するというメリットがある。
(工程(A))
はじめに、金属製の底板201と、金属製の底板201に一体的に連結された金属製の側板202(202-1、202-2、202-3、および202-4)と、を備え、少なくとも熱可塑性樹脂部材301が接合される接合部表面に微細凹凸構造を有する、電子機器用筐体100の展開図の形状である展開図状金属板を準備する。ここで、展開図状金属板20は、電子機器用筐体100の展開図の一部(例えば2面以上)であってもよい。例えば、展開図状金属板は、図3に示すように、一つの側板202に一体的に連結された金属製の蓋板203をさらに備えてもよいし、図5に示すように蓋板203を備えていなくてもよい。また図4に示すように側板の一つ(背面板)202-3を備えていなくてもよい。蓋板203を備えていない場合は、図2に示す蓋板203を別途準備し、一つの側板202に蓋板203を、例えば上記機械的係合手段で係合することができる。同様に、背面板202-3を備えていない場合は、背面板202-3(図示せず)を別途準備し、底板201、両側板202-2、202-4および蓋板203からなる面に、例えば上記機械的係合手段で係合することができる。
ここで、展開図状金属板は電子機器用筐体100を構成する金属部材(M)に相当し、例えば、板状の金属部材を打ち抜きなどにより図3、図4、および図5に示す展開図状に加工し、少なくとも熱可塑性樹脂部材301が接合される接合部表面に前述した粗化処理を施すことによって得ることができる。
金属部材および粗化処理の詳細はここでは省略する。
(工程(B))
次いで、展開図状金属板20を金型内に設置し、熱可塑性樹脂組成物(P)を上記金型内に注入して展開図状金属板20の表面に熱可塑性樹脂部材301を接合する。
熱可塑性樹脂部材301を接合する方法としては、例えば、射出成形法、トランスファー成形法、圧縮成形法、反応射出成形法、ブロー成形法、熱成形法、プレス成形法等が挙げられる。これらの中でも射出成形法が好ましい。すなわち、熱可塑性樹脂部材301は射出成形体であることが好ましい。以下、射出成形法を用いた例について説明する。
射出成形法を用いた展開図状金属板20への熱可塑性樹脂部材301の接合方法は、例えば、以下の(i)~(ii)の工程を含む。
(i)展開図状金属板20を射出成形用金型内に配置する工程
(ii)熱可塑性樹脂部材301の少なくとも一部が展開図状金属板20と接するように、金型内に熱可塑性樹脂組成物(P)を射出成形し、熱可塑性樹脂部材301を成形する工程
以下、具体的に説明する。
まず、(i)射出成形用金型を用意し、その金型を開いてそのキャビティ部(空間部)に展開図状金属板を配置する。(ii)その後、金型を閉じ、熱可塑性樹脂部材301の少なくとも一部が展開図状金属板と接するように、上記金型の上記キャビティ部に熱可塑性樹脂組成物(P)を射出して固化し、展開図状金属板と熱可塑性樹脂部材301とを接合する。その後、金型を開き離型することにより、展開図状金属板に熱可塑性樹脂部材301が接合された展開図状金属樹脂接合板20を得ることができる。上記金型としては、例えば、高速ヒートサイクル成形(RHCM、ヒート&クール成形)で一般的に使用される射出成形用金型を用いることができる。
ここで、上記(ii)の工程において、高速ヒートサイクル成形を採用する場合は熱可塑性樹脂組成物(P)の射出開始から保圧完了までの間、上記金型の表面温度を、好ましくは熱可塑性樹脂部材301のガラス転移温度(以下、Tgとも呼ぶ。)以上、より好ましくはTg+(5以上150以下)℃以上の温度に維持することが好ましい。
これにより、熱可塑性樹脂組成物(P)が軟化した状態に保ちながら、展開図状金属板の表面に熱可塑性樹脂組成物(P)を高圧でより長い時間接触させることができる。
その結果、展開図状金属板と熱可塑性樹脂部材301との間の接着性を向上できるため、接合強度により一層優れた電子機器用筐体100をより安定的に得ることができる。
金型の加熱方法として、蒸気式、加圧熱水式、熱水式、熱油式、電気ヒータ式、電磁誘導過熱式のいずれか1方式またはそれらを複数組み合わせた方式でよい。
上記(ii)の工程において、上記射出開始から上記保圧完了までの時間は、好ましくは1秒以上60秒以下であり、より好ましくは10秒以上50秒以下である。
上記時間が上記下限値以上であると熱可塑性樹脂部材301を溶融させた状態に保ちながら、展開図状金属板20の上記微細凹凸構造に熱可塑性樹脂部材301を高圧でより長い時間接触させることができる。これにより、接合強度により一層優れた電子機器用筐体100をより安定的に得ることができる。
また、上記時間が上記上限値以下であると、電子機器用筐体100の成形サイクルを短縮できるため、電子機器用筐体100をより効率よく得ることができる。
本実施形態に係る電子機器用筐体100の製造方法において、工程(B)では、底板201と側板202との境界線部205に、熱可塑性樹脂部材301が接合されないように熱可塑性樹脂組成物(P)を上記金型内に注入することが好ましい。
こうすることで、底板201と側板202との境界線部205には熱可塑性樹脂部材301が接合されていない展開図状金属樹脂接合板20を得ることができ、その結果、底板201と側板202との境界線部205を折り曲げることがより容易となり、展開図状金属樹脂接合板20を箱型状にすることがより容易となる。そのため、電子機器用筐体100の生産性をより向上させることができる。
(工程(C))
次いで、底板201と側板202との境界線部205を折り曲げて、展開図状金属樹脂接合板20を箱型状にすることにより、電子機器用筐体100を得る。
展開図状金属樹脂接合板20を箱型状にする方法は特に限定されず、一般的に公知の方法を用いることができる。例えば、底板201と側板202との境界線部205を折り曲げ、必要に応じて蓋板203を取り付けることにより電子機器用筐体100が得られる。
この際、隣接する側板202同士、および側板202と必要に応じて連結された蓋板203とを機械的手段で係合してもよい。機械的係合手段としては特に限定されないが、ネジ止め等が挙げられる。
図6は、図3に示した底板201を示す斜視図である。図7は、図6のA-A断面図である。図1、図3、図6、及び図7に示すように、電子機器用筐体100は、熱可塑性樹脂部材301の他に、第2樹脂部材500及び放熱部材600を備えている。放熱部材600は金属部材(M)に設けられた開口400にはめ込まれている。第2樹脂部材500は、開口400の縁と放熱部材600の間に生じている隙間を埋めている。また、第2樹脂部材500は開口400の縁に位置している金属部材(M)と、放熱部材600の縁のそれぞれに接合している。そして、第2樹脂部材500は熱可塑性樹脂部材301(第1樹脂部材)につながっている。
放熱部材600は例えばヒートシンクであり、一面640が電子機器用筐体100の内側を向くように、金属部材(M)に固定されている。放熱部材600は、少なくとも一面640が金属である。放熱部材600のうちこの金属により構成されている部分は、体積比率で放熱部材600の80%以上を占めていてもよい。放熱部材600を構成する金属は、鉄、ステンレス、亜鉛、アルミニウム合金、銅合金、及びマグネシウム合金から選ばれる1種又は2種以上を含んでいる。
図6に示す例において、放熱部材600は放熱用のフィン620を複数有している。このフィンは、例えば一面640とは逆側の面に設けられている。ただし、放熱部材600はフィン620を有していなくてもよい。放熱部材600がフィン620を有さない場合として、例えば冷却手段としての冷媒流路が内部に形成された、いわゆるコールドプレートを例示できる。
上記したように、放熱部材600は第2樹脂部材500を用いて金属部材(M)に固定されている。詳細には、金属部材(M)には開口400が設けられている。開口400の大きさは、一面640をはめ込むことが可能になっており、例えば、一面640の大きさに遊び分を追加した程度である。第2樹脂部材500は熱可塑性樹脂部材301と繋がっており、また、第2樹脂部材500は熱可塑性樹脂部材301と同一の工程で形成されている。このため、第2樹脂部材500の樹脂組成は熱可塑性樹脂部材301の樹脂組成と同じである。なお、熱可塑性樹脂部材301及び第2樹脂部材500を射出成形で形成する場合、熱可塑性樹脂部材301及び第2樹脂部材500は一つの金型を用いて同時に形成される。
また、第2樹脂部材500と放熱部材600の接合構造、及び第2樹脂部材500と熱可塑性樹脂部材301の接合構造は、熱可塑性樹脂部材301と金属部材(M)の接合構造と同様である。すなわち、放熱部材600のうち少なくとも第2樹脂部材500との接合する領域、及び金属部材(M)のうち第2樹脂部材500の表面には、いずれも、例えば、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸構造が形成されている。そしてこの微細凹凸構造に、第2樹脂部材500の一部が位置している。詳細には、微細凹凸構造の凹部に第2樹脂部材500の一部が入り込んでいるため、第2樹脂部材500と一面640の接合強度、及び第2樹脂部材500と金属部材(M)の接合強度は、いずれも向上している。
図7に示すように、第2樹脂部材500は、放熱部材600の側面の上部、及び一面640の縁のそれぞれに接合している。さらに、第2樹脂部材500は金属部材(M)のうち電子機器用筐体100の外面に相当する面にも接合している。ただし、第2樹脂部材500は、放熱部材600の側面に接合していなくてもよい。また、第2樹脂部材500は金属部材(M)のうち電子機器用筐体100の外面に相当する面に接合していなくてもよい。これらの接合形態は、第2樹脂部材500を形成するときの条件、例えば射出成形の金型、開口400の縁と一面640の間の隙間の大きさ、及び樹脂の粘度などを調整することにより、変更することができる。
第2樹脂部材500は、一面640の縁及び金属部材(M)のうち開口400の縁に位置する部分の全周に接合しているのが好ましい。このようにすると、第2樹脂部材500と放熱部材600の間から水が浸入することが抑制される。
なお、一面640には、電子部品700が固定される。電子部品700は、通電によって発熱する素子であり、例えば回路基板、マイコンやCPUなどの半導体装置、又はディスクリートタイプの素子(例えば容量素子、コイル、抵抗素子等)である。電子部品700は、固定層を用いて放熱部材600の一面640に固定されている。固定層は、例えば接着剤や粘着剤などの樹脂であるが、熱伝達率が高いのが好ましい。電子部品700は放熱部材600の一面640に固定されているため、電子部品700が発した熱は効率よく放熱部材600に移動する。
なお、放熱部材600は電子機器用筐体100の底板201以外の面、例えばいずれかの側板202や蓋板203に固定されていてもよい。
以上、本実施形態によれば、電子機器用筐体100の内面(例えば底面)には、放熱部材600の一面640が露出している。このため、電子部品700を一面640に固定することができる。このため、電子部品700を含む電子部品が発した熱は、効率よく放熱部材600に伝わる。また、放熱部材600は第2樹脂部材500を用いて金属部材(M)に固定されているが、第2樹脂部材500は熱可塑性樹脂部材301と繋がっているため、第2樹脂部材500を熱可塑性樹脂部材301と同一の工程で形成することができる。従って、電子機器用筐体100の製造コストを低くすることができる。さらに、電子機器用筐体100は金属部材(M)を用いて形成されているため、十分な電磁波シールド機能を有している。さらに、電子機器用筐体100は熱可塑性樹脂部材301を有しているため、金属部材(M)を薄くすることにより電子機器用筐体100の軽量化が可能となり、かつ、電子機器用筐体100に十分な機械的強度を持たせることができる。
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。なお、図8、図9および図10を実施例を説明するための図として利用する。
〔実施例1〕
実施例1においては、本実施形態に係る電子機器用筐体の一部を構成する金属樹脂接合板に着目した。金属樹脂接合板を構成する金属部材をアルミニウム合金とし、金属部材の両面に熱可塑性樹脂部材を接合して金属樹脂接合板E10を作製した。次いで、金属樹脂接合板E10が、既存技術である鋼板材(SECC)のみからなる比較例1で用いた金属板に比べて遜色ない強度を維持しつつ、高い軽量化効果を発現する実験結果を示す。
(金属樹脂接合板E10を構成する金属部材である粗化アルミニウム合金板E101の作製)
形状が180mm(横幅)×129mm(縦幅)×0.3mm(厚み)であるアルミニウム合金板(JIS H4000に規定された合金番号5052)を準備した。なお、このアルミニウム合金板には、樹脂が固定側(キャビティ側)から可動側(コア側)に流動連通が可能なように複数個の樹脂貫通用の小孔(図示せず)が設けられている。
次いで、上記アルミニウム合金板を市販の脱脂剤を用いて脱脂処理した後、水酸化ナトリウムを15質量%と酸化亜鉛を3質量%含有するアルカリ系エッチング剤(30℃)が充填された処理槽1に3分間浸漬(以下の説明では「アルカリ系エッチング剤処理」と略称する場合がある)後、30質量%の硝酸(30℃)にて、1分間浸漬し、アルカリ系エッチング剤処理をさらに1回繰り返し実施した。次いで、得られたアルミニウム合金板を、塩化第二鉄を3.9質量%と、塩化第二銅を0.2質量%と、硫酸を4.1質量%とを含有する酸系エッチング水溶液が充填された処理槽2に、30℃下で5分間浸漬し搖動させた(以下の説明では「酸系エッチング剤処理」と略称する場合がある)。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、その後乾燥させることによって粗化アルミニウム合金板E101を得た。
得られた粗化アルミニウム合金板E101の表面粗さを、表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用し、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)をそれぞれ測定した。得られた結果を以下に示す。なお、測定場所は、図11に示すように、粗化アルミニウム合金板E101の微細凹凸表面上の任意の3直線部、および当該直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部である。
・切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr):長手3点=6.4%/4.0%/3.7%、短手3点=6.9%/2.0%/6.4%
・切断レベル40%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr):長手3点:28.5%/28.3%/26.5%、短手3点=38.5%/18.4%/19.3%
・十点平均粗さ(Rz):長手3点=17.0μm/18.4μm/16.6μm、短手3点=17.9μm/18.0μm/19.8μm
・粗さ曲線要素の平均長さ(RSm):長手3点=120μm/165μm/127μm、短手3点=119μm/145μm/156μm
(インサート成形による金属樹脂接合板E10の作製)
日本製鋼所社製の射出成形機(JSW J180AD110H)に専用の金属インサート金型を装着し、該金型内に上記方法で得られた粗化アルミニウム合金板E101を設置した。次いで、その金型内に熱可塑性樹脂組成物として、ガラス繊維強化ポリプロピレン(プライムポリマー社製V7100、ポリプロピレン(230℃、2.16kg荷重のMFR=18g/10分)80質量部、ガラス繊維20質量部)を、シリンダー温度230℃、金型温度100℃、射出速度100mm/秒、保圧80MPa、保圧時間5秒、冷却時間50秒条件にて射出成形を行い、金属樹脂接合板E10を作製した。なお、金属樹脂接合板E10において、全ての熱可塑性樹脂部材E102は粗化アルミニウム合金板E101の両面に対向するように接合されている。接合された熱可塑性樹脂部材(以下、樹脂リブ部と呼ぶ場合がある)の幅は共通して3.6mm、樹脂リブ部高さは共通して2.1mmであった。金属樹脂接合板E10の合計重量は39.6gであった。
また、接合部面積率は14面積%であった。
(曲げ試験における変位量の測定)
島津製作所製の曲げたわみ測定装置オートグラフを用いて、金属樹脂接合板E10のセンター部位に垂直方向2kgfの応力をかけた場合(図8における符号F)の変位量を測定(25℃)した結果、1.8mmであった。
〔比較例1〕
実施例1の変位量測定と同様な方法で、2kgfの応力をかけた際に、実施例1で得られた金属樹脂接合板E10と同一の変位量(1.8mm)を示す既存材料(亜鉛めっき鋼板;SECC)の厚みを求めた。すなわち、実施例1で用いたアルミニウム合金板と同一の縦横寸法を持ち、厚みのみが異なる市販SECC材について2kgf浮力をかけた際の変位量を測定した結果、0.8mm厚みのSECCが実施例1で得られた金属樹脂接合板E10と同一の変位量(1.8mm)を示すことが分かった。このSECC板の合計重量は146.2gであった。
実施例1と比較例1を対比する。本実施形態に係る金属樹脂接合板E10は既存材であるSECC板にくらべて一定荷重下の変位量が同一にもかかわらず、約73%の軽量化を達成していることがわかった。
〔実施例2〕
(展開図状金属樹脂接合板E30を構成する金属部材である粗化アルミニウム合金板E20の作製)
市販の0.3mm厚みのアルミニウム合金板(JIS H4000に規定された合金番号5052)を図9に示した形状(単位;mm)に切断するとともに、板金加工等することによって図9に示した開口部E207やスリット部E209を設けた。またアルミニウム合金板(素板)には、樹脂が固定側(キャビティ側)から可動側(コア側)に流動連通が可能なように複数個の樹脂貫通用の小孔(図示せず)が設けられている。樹脂貫通用の小孔の数は特に限定されないが、通常側板、各側板、蓋板1枚当たり、2~5個である。
次いで、上記アルミニウム合金板を、実施例1に示した方法と全く同様に表面粗化処理することによって、底板E201、側板E202および蓋板E203を有する粗化アルミニウム合金板E20を得た。
得られた粗化アルミニウム合金板E20の表面粗さを、表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用し、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)をそれぞれ測定した。その結果、実施例1に示した表面粗さパラメーターを再現する値を示すことを確認した。
(インサート成形による展開図状金属樹脂接合板E30の作製)
日本製鋼所社製の射出成形機(JSW J180AD110H)に専用の金属インサート金型を装着し、該金型内に上記方法で得られた粗化アルミニウム合金板E20を設置した。次いで、その金型内に熱可塑性樹脂組成物として、ガラス繊維強化ポリプロピレン(プライムポリマー社製V7100、ポリプロピレン(230℃、2.16kg荷重のMFR=18g/10分)80質量部、ガラス繊維20質量部)を、シリンダー温度230℃、金型温度100℃、射出速度100mm/秒、保圧80MPa、保圧時間5秒、冷却時間50秒の条件にて射出成形を行い、図10に示す展開図状金属樹脂接合板E30を作製した。図10に示されるように、粗化アルミニウム合金板E20の両面に熱可塑性樹脂部材が接合されていることが確認できた(図10では、裏面側の樹脂部を図示せず)。なお、図10には図示していないが、熱可塑性樹脂部材の任意の箇所には、蓋板と側板同士をスナップフィット係合できるように凸部(ツメ部)と凹部が形成されている。
(境界線部の折り曲げによる電子機器用筐体の作製)
得られた展開図状金属樹脂接合板E30の、各境界線部E205を内側に直角状に折り曲げたのち、樹脂部に設けられた凸部と凹部をスナップフィット止めすることによって箱型状の電子機器用筐体を作製した。この電子機器用筐体には反りや金属と樹脂の剥がれは全く認められなかった。この筐体をヒートサイクル試験機中でヒートサイクル試験(試験条件;-20℃に2時間保持後、80℃に2時間保持、昇温、降温にそれぞれ1時間かけるヒートサイクルを1日に4回、7日間繰り返し)した結果、金属部材と熱可塑性樹脂部材は強固に接合された状態を維持しており、反りや剥がれ現象の発生は全く認められなかった。
また、接合部面積率は21面積%であった。
〔比較例2〕
実施例2において、樹脂貫通用の小孔を全く持たないアルミニウム合金板(素板)を用いた以外は実施例2と全く同様な条件で同様な操作を行った。インサート成形によって、展開図状金属板の固定側(キャビティ側)のみに熱可塑性樹脂組成物が接合された展開図状金属樹脂接合板を得た。成形直後に、既に金属部材と熱可塑性樹脂部材の一部に剥がれが目視で観察された。この片面のみに樹脂が接合された展開図状金属樹脂接合板を実施例2と同様にして折り曲げて箱型状にした。この際、接合された熱可塑性樹脂部材が箱の内側になるように折り曲げている。次いでこの電子機器用筐体を実施例2と同様にしてヒートサイクル試験にかけた。その結果、底板、全側板および蓋板の全てについて各面が凸状に変形し、また金属部材と熱可塑性樹脂部材との接合部の大部分(接合部全体面積の90%以上)が剥がれ、また各面の辺同士を連結する境界線も変形して隙間が出来ていることが確認された。
以上、本発明の参考例及び実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
20 展開図状金属板
100 電子機器用筐体
104 接合部表面
201 底板
202 側板
202-1 側板
202-2 側板
202-3 側板
202-4 側板
203 蓋板
205 境界線部
207 開口部
209 スリット
301 熱可塑性樹脂部材
400 開口
500 第2樹脂部材
600 放熱部材
700 電子部品

Claims (11)

  1. 板状の金属部材と、
    前記金属部材の少なくとも一面に接合された第1樹脂部材と、
    前記金属部材に設けられた開口にはめ込まれた放熱部材と、
    前記開口の縁と前記放熱部材の間に生じている隙間を埋めている第2樹脂部材と、を備え、
    前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材はつながっており、
    前記第1樹脂部材は、第1の方向に延在している第1部分と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在している第2部分とを有し、
    前記第1部分は、前記第2部分と交わっている、装置。
  2. 請求項1に記載の装置において、
    前記第1樹脂部材は、前記金属部材の両面に接合されている装置
  3. 請求項2に記載の装置において、
    前記第1樹脂部材は、前記金属部材の板面の垂直方向において互いに対向するように配置されている装置。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の装置において、
    前記第1樹脂部材は格子状の部分及び放射状の部分の少なくとも一方を有している装置。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の装置において、
    前記第1樹脂部材は前記金属部材を補強している装置。
  6. 請求項1~のいずれか一項に記載の装置であって、
    前記第1樹脂部材は、前記一面に骨組状に形成されている装置。
  7. 請求項1~のいずれか一項に記載の装置において、
    前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とは樹脂組成が同じである装置。
  8. 請求項1~のいずれか一項に記載の装置において、
    前記一面は、少なくとも前記第1樹脂部材および前記第2樹脂部材との接合部に微細凹凸構造を有し、
    前記微細凹凸構造に前記第1樹脂部材および前記第2樹脂部材の一部分がそれぞれ位置している装置。
  9. 請求項1~のいずれか一項に記載の装置において、
    前記金属部材は立体を展開した展開図状である装置。
  10. 請求項1~のいずれか一項に記載の装置において、
    前記金属部材は筐体の少なくとも一部である装置。
  11. 請求項10に記載の装置において、
    前記筐体に収容された電子部品を備える装置。
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