JP7219540B2 - 電子部品収納用筐体および電子装置 - Google Patents
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Description
これらの車載用の電子機器においては、軽量化ニーズおよびEMI(電磁妨害)低減ニーズに対応していることが肝要である。このため、金属製のシャーシ構造において金属厚みを薄くして軽量化を図る一方で、その分の強度低下を金属板へのトラス状に固着した樹脂部材で補うことを特徴とした電子機器のシャーシ構造体が開示されている(特許文献1)。
また、筐体を構成する金属板あるいは金属箔を樹脂部で挟み込んだ電子部品格納用筐体も開示されている(特許文献2)。
しかし、近年のモジュールやセット機器自体の顕著な小型化傾向によって、内部に放熱フィン、クーリングプレート或いは冷却ファン等を設置するスペースを確保し難いという問題があった。さらに、一般的な電気・電子機器において放熱対策が必要な温度はせいぜい200℃程度以下の比較的低温領域にあるため、ファンやフィン等の手段を用いた対流方式のみによる放熱効果にも限界があった。
[1]
金属製の底板と、上記底板に一体的に折り曲げられて連結された金属製の側板と、を備え、内部に電子機器を収容するための筐体であって、
少なくとも上記底板および上記側板からなる板状の金属部材(M)の表面の一部に、面方向の熱伝導率が1W/(m・K)以上である熱伝導性樹脂部材が接合されている電子部品収納用筐体。
[2]
上記熱伝導性樹脂部材が、熱可塑性樹脂(P)と、熱伝導率が2W/(m・K)以上であり、かつ、平均粒子径が0.1~50μmの範囲を満たす熱伝導性充填剤(B)を含む上記[1]に記載の電子部品収納用筐体。
[3]
前記熱伝導性充填剤(B)が、(B-1)金属窒化物、(B-2)金属酸化物、(B-3)金属水酸化物から選ばれる1種類又は2種以上の充填剤を含む上記[2]に記載の電子部品収納用筐体。
[4]
前記熱伝導性樹脂部材100質量%中に含まれる前記熱伝導性充填剤(B)の含有量が5~70質量%である上記[2]または[3]に記載の電子部品収納用筐体。
[5]
板状の上記金属部材(M)の両面に上記熱伝導性樹脂部材が接合されている上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体。
[6]
上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体において、
上記金属部材(M)の平均厚みが0.2mm以上1.0mm以下である電子部品収納用筐体。
[7]
上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体において、
上記金属部材(M)は、少なくとも上記熱伝導性樹脂部材との接合部表面に微細凹凸構造を有しており、
上記微細凹凸構造に上記熱伝導性樹脂部材の一部分が浸入することにより上記金属部材(M)と上記熱伝導性樹脂部材とが接合されている電子部品収納用筐体。
[8]
上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体において、
板状の上記金属部材(M)の一方の面に接合された上記熱伝導性樹脂部材と、他方の面に接合された上記熱伝導性樹脂部材の少なくとも一部とが、上記金属部材(M)の板面の垂直方向において互いに対向するように配置されている電子部品収納用筐体。
[9]
上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体において、
上記熱伝導性樹脂部材は、上記金属部材(M)の表面の少なくとも周縁部に接合されている電子部品収納用筐体。
[10]
上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体において、
上記熱伝導性樹脂部材の少なくとも一部は、上記金属部材(M)の表面に骨組状に形成されている電子部品収納用筐体。
[11]
上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体において、
上記熱伝導性樹脂部材は射出成形体を含む電子部品収納用筐体。
[12]
上記[1]~[11]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体において、
上記熱伝導性樹脂部材の平均厚みが1.0mm以上10mm以下である電子部品収納用筐体。
[13]
上記[1]~[12]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体において、
上記金属部材(M)を構成する金属材料が電磁波シールド性を有する金属を含む電子部品収納用筐体。
[14]
上記[1]~[13]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体において、
上記側板に一体的に折り曲げられて連結された金属製の蓋板をさらに備え、
上記蓋板表面の一部に熱伝導性樹脂部材が接合され、上記蓋板が上記熱伝導性樹脂部材により補強されている電子部品収納用筐体。
[15]
上記[14]に記載の電子部品収納用筐体において、
上記蓋板は、少なくとも上記熱伝導性樹脂部材との接合部表面に微細凹凸構造を有しており、
上記微細凹凸構造に上記熱伝導性樹脂部材の一部分が浸入することにより上記蓋板と上記熱伝導性樹脂部材とが接合されている電子部品収納用筐体。
[16]
上記[1]~[15]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体において、
上記底板と上記側板との境界線部には上記熱伝導性樹脂部材が接合されていない電子部品収納用筐体。
[17]
上記[1]~[16]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体において、
上記金属部材(M)の全表面積に占める上記熱伝導性樹脂部材の接合部の表面積は、1面積%以上50面積%以下である電子部品収納用筐体。
[18]
上記[1]~[17]のいずれか一つに記載の電子部品収納用筐体と、上記電子部品収納用筐体に収容された電子部品とを備える電子装置。
まず、本実施形態に係る電子部品収納用筐体100について図1および図2を例に取って説明する。
なお図1は、本発明に係る実施形態の電子部品収納用筐体100の構造の一例を模式的に示した斜視図である。図2は、本発明に係る実施形態の蓋板203の構造の一例を模式的に示した斜視図である。
ここで、側板202同士は、例えば、機械的手段で係合されていることが好ましい。機械的係合手段(物理的係合手段とも呼ぶ。)は特に限定されないが、例えば、ネジ止め等が挙げられる。側板202と必要に応じて設けられる蓋板203とは、上記の機械的手段で係合されていてもよいし、任意の側板1枚に一体的に折り曲げられて連結されていてもよい。図1では、側板は202-1、202-2、202-3、および202-4の4枚としているが、本実施形態では側板がこれらから選ばれる3枚である実施態様も包含する。ただし、この場合は蓋板が上記3枚の側板のいずれかに一体的に折り曲げられて連結していることが好ましい。
また、本実施形態に係る電子部品収納用筐体100は、その一部に金属製の底板201と金属製の側板202を備えることにより、筐体全体が金属部材により構成されている従来の筐体と同等の電磁波シールド機能を得ることができる。
さらに、本実施形態に係る電子部品収納用筐体100は、少なくとも底板201および側板202からなる金属部材(M)を熱伝導性樹脂部材301により補強することにより、金属部材(M)の厚みを薄くすることによる電子部品収納用筐体100の機械的強度の低下を抑制することができる。すなわち、電子部品収納用筐体100の軽量化を実現しながら、機械的強度の維持が可能である。
また、金属部材(M)を補強するための補強用樹脂部材として、熱伝導性に優れる熱伝導性樹脂部材301を用いることによって、補強用樹脂部材による金属部材(M)の放熱特性の低下を抑制することができるため、機械的強度および放熱特性のバランスに優れる電子部品収納用筐体100を得ることができる。
さらに、板状の金属部材(M)の表面の一部分のみに、熱伝導性樹脂部材301が形成されていることによって電子部品収納用筐体100の放熱特性を良好に維持することができる。
さらに、本実施形態に係る電子部品収納用筐体100は、金属製の底板201と金属製の側板202とが一体的に連結されているため、底板と側板とを連結する部品が不要となり、部品点数を削減することができ、その結果、工程管理を簡素化できる。また、アース設置個所の削減も可能である。そして、本実施形態に係る電子部品収納用筐体100は、部品点数やアース設置個所を削減できるため、より軽量な電子部品収納用筐体100を実現することができる。
ここで、図1では、金属部材(M)を補強するための補強用樹脂部材として熱伝導性樹脂部材301が使用されている電子部品収納用筐体100の例を示しているが、補強用樹脂部材のすべてが熱伝導性樹脂部材301でなくてもよく、他の樹脂部材であってもよい。電子部品収納用筐体100の放熱特性をより良好にする観点や、電子部品収納用筐体100の生産性を向上させる観点から、補強用樹脂部材のすべてが熱伝導性樹脂部材301であることが好ましい。
また、本実施形態に係る電子部品収納用筐体100において、熱伝導性樹脂部材301の少なくとも一部は、例えば、図1~5に示すように、金属部材(M)の表面に骨組状に形成されていることが好ましい。骨組状としては、例えば、筋交い状、格子状、トラス状およびラーメン状から選択される少なくとも一種の形状が挙げられる。金属部材(M)の表面に熱伝導性樹脂部材301を骨組状に形成することにより、より少量の熱伝導性樹脂部材301で金属部材(M)をより効果的に補強することができるので好ましい。
さらに、金属部材(M)の表面に熱伝導性樹脂部材301を骨組状に形成することにより、熱伝導性樹脂部材301の使用量を減らすことができるため、熱伝導性樹脂部材301の成形時の収縮により金属部材(M)が変形してしまうことや、熱伝導性樹脂部材301によって電子部品収納用筐体100の放熱特性が低下してしまうことを抑制することができる。
本実施形態に係る電子部品収納用筐体100において、金属部材(M)の表面に接合される熱伝導性樹脂部材301の平均厚みは、金属部材(M)の平均厚みや筐体全体の大きさにもよるが、例えば1.0mm~10mm、好ましくは1.5mm~8mm、より好ましくは1.5~5.0mmである。
熱伝導性樹脂部材301の平均厚みが上記下限値以上であることにより、得られる電子部品収納用筐体100の機械的強度をより良好にすることができる。
熱伝導性樹脂部材301の平均厚みが上記上限値以下であることにより、得られる電子部品収納用筐体100をより軽量にすることができる。また、熱伝導性樹脂部材301の使用量を減らすことができるため、熱伝導性樹脂部材301の成形時の収縮により金属部材(M)が変形してしまうことを抑制することができる。
このような微細凹凸構造に熱伝導性樹脂部材301の一部分が侵入することにより、金属部材(M)または蓋板203に熱伝導性樹脂部材301が接合する。こうすることによって、金属部材(M)または蓋板203と熱伝導性樹脂部材301との間に物理的な抵抗力(アンカー効果)が効果的に発現し、金属部材(M)または蓋板203と熱伝導性樹脂部材301とをより強固に接合することが可能になる。
また、側板202にスリット209を有することで、開口部207から取り入れた風を電子部品収納用筐体100の外部に排出することができる。
以下、本実施形態に係る熱伝導性樹脂部材301について説明する。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂部材301は熱伝導性樹脂組成物(A)の成形体、好ましくは射出成形体であり、面方向の熱伝導率が1W/(m・K)以上である。面方向の熱伝導率は好ましくは3W/(m・K)以上であり、より好ましくは5W/(m・K)以上、さらに好ましくは10W/(m・K)以上である。上限値は特に限定されず高ければ高いほど良いが、例えば100W/(m・K)以下である。
本実施形態に係る熱伝導性樹脂部材301の厚み方向の熱伝導率は特に限定されず、例えば0.5W/(m・K)以上、好ましくは1W/(m・K)以上である。
なお、本実施形態で定義する面方向の熱伝導率とは成形の際に溶融樹脂が流動する方向に対する熱伝導率のことであり、樹脂流動方向に対して垂直方向の熱伝導率が厚み方向の熱伝導率である。
面方向および厚み方向の熱伝導率は、電子部品収納用筐体100から熱伝導性樹脂部材301を剥がし、ASTM E1461規格に準拠して、レーザーフラッシュ法熱伝導率測定装置(NETZSCH社製 LFA447)を用いて測定することができる。あるいは、熱伝導性樹脂組成物(A)のペレットを用いて、射出成形機にて、φ26mm×1mm厚の成形体を作製し、ASTM E1461規格に準拠して、レーザーフラッシュ法熱伝導率測定装置(NETZSCH社製 LFA447)を用いて測定することができる。
成形体としては射出成形体、トランスファー成形体、圧縮成形体、反応射出成形体、ブロー成形体、熱成形体、プレス成形体等が挙げられる。これらの中でも、生産性、品質安定性の視点から、射出成形体が好ましい。なお、熱伝導性樹脂部材301中の熱伝導性充填剤(B)の含有量は、電子部品収納用筐体から剥ぎ落した熱伝導性樹脂部材を所定量秤量し、オーブンの中で放置(例えば、400℃で24時間)し、樹脂を完全に炭化させ、残存する熱伝導性充填剤(B)の質量を測定することにより求めることができる。
また、熱伝導性充填剤(B)の平均粒子径(数平均粒子径)は以下の方法により算出することができる。まず、熱伝導性樹脂部材を所定量秤量し、オーブンの中で放置(例えば、400℃で24時間)し、樹脂を完全に炭化させ、残存する熱伝導性充填剤(B)を得る。次いで、残存した熱伝導性充填剤(B)を、例えば走査型電子顕微鏡(日本電子社製)にて熱伝導性充填剤(B)が100個以上撮影できる倍率で撮影し、1つ1つの熱伝導性充填剤(B)の粒子径を測定する。次いで、これらの粒子径の平均値を平均粒子径(数平均粒子径)とすることができる。さらには、下記式を用いて、平均粒子径が0.1~50μm範囲にある数分率X(%)を求めることができる。
X=(Y/Z)×100
X: 数分率
Y:熱伝導性樹脂部材に含まれる0.1~50μm範囲の熱伝導性充填剤(B)の数
Z:全充填剤の数
熱伝導性充填剤(B)としては、樹脂組成物としての熱伝導性、熱伝導性充填剤の樹脂への充填性、得られる樹脂部材の柔軟性および機械特性などの点から、具体的には、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、亜鉛、ジルコニウムから選ばれた元素を有する熱伝導性を有する金属化合物系熱伝導性充填剤が好ましい。
金属化合物系熱伝導性充填剤としては、例えば、(B-1)金属窒化物、(B-2)金属酸化物、(B-3)金属水酸化物、(B-4)金属炭化物、および(B-5)金属炭酸化物からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ニッケル等が挙げられる。金属窒化物としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等が挙げられる。金属炭化物としては、例えば、炭化ホウ素、炭化アルミニウム等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。金属炭酸化物としては、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
本実施形態においては、熱伝導率や熱可塑性樹脂(P)との反応性に鑑みて、(B-1)金属窒化物、(B-2)金属酸化物および(B-3)金属水酸化物からなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。また、これら熱伝導性充填剤(B)の形状は、繊維状、粒子状、板状等どのような形状であってもよい。熱伝導性樹脂部材301に占める、熱伝導性充填剤(B)の含有量は、例えば5~70質量%、好ましくは10~60質量%である。
熱伝導性充填剤(B)の含有量が上記下限値以上であると、放熱特性および補強効果をより良好にすることができる。また、熱伝導性充填剤(B)の含有量が上記上限値以下であると、熱伝導性樹脂部材を形成させるための熱伝導性樹脂組成物(A)の流動性が良好になり、成形性を向上させることができる。
熱可塑性樹脂(P)としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール-ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸-スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ABS、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン-塩化ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
本実施形態に係る金属部材(M)は、底板201と、側板202-1、側板202-2、側板202-3、および側板202-4から選択される少なくとも一つの側板202とからなる。好ましい態様の一は、底板201、側板202-1、側板202-2、側板202-3、および側板202-4からなる。好ましい態様の二は、底板201、側板(前面板)202-1、側板(両側板)202-2並びに202-4および蓋板203からなる。好ましい態様の三は、底板201、側板202-1、側板202-2、側板202-3、側板202-4、および蓋板203からなる。これらの態様の中でも、態様の二および三が特に好ましい。
こうすることで、電子部品収納用筐体100の部品点数をより削減することができ、その結果、工程管理をより容易にできたり、アース設置個所をより削減できたりする。そして、部品点数やアース設置個所をより削減できるため、より一層軽量な電子部品収納用筐体100を実現することができる。
これらの中でも、軽量、安価、および高強度の点から、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。
本実施形態に係るアルミニウム合金としては、日本工業規格(JIS H4140)で規定されている国際アルミニウム合金名の4桁の数字が、2000番台のアルミニウム/銅系合金、3000番台のアルミニウム/マンガン系合金、4000番台のアルミニウム/ケイ素系合金、5000番台のアルミニウム/マグネシウム系合金、6000番台のアルミニウム/マグネシウム/ケイ素系合金、7000番台のアルミニウム/亜鉛/マグネシウム系合金、アルミニウム/亜鉛/マグネシウム/銅系合金等が好適に用いられる。これらの中でも、入手容易性、機械・熱特性の視点から5000番台のアルミニウム/マグネシウム合金が特に好んで用いられる。
金属部材(M)の平均厚みが上記下限値以上であることにより、得られる電子部品収納用筐体100の機械的強度、放熱特性および電磁波シールド特性をより良好にすることができる。
金属部材(M)の平均厚みが上記上限値以下であることにより、得られる電子部品収納用筐体100をより軽量にすることができる。さらに金属部材(M)の平均厚みが上記上限値以下であることにより、金属部材(M)を折り曲げることがより容易となり、電子部品収納用筐体100の生産性をより向上させることができる。
ここで、微細凹凸構造の間隔周期は凸部から隣接する凸部までの距離の平均値であり、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真、あるいは表面粗さ測定装置を用いて求めることができる。
電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡により測定される間隔周期は通常500nm未満の間隔周期であり、具体的には金属部材(M)の接合部表面を撮影する。その写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定する。凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とする。一方、500nmを超える間隔周期は通常、表面粗さ測定装置を用いて求める。
なお、通常、金属部材(M)の接合部表面だけでなく、金属部材(M)の表面全体に対し、表面粗化処理が施されているため、金属部材(M)の接合部表面と同一面で、接合部表面以外の箇所から間隔周期を測定することもできる。
上記間隔周期が上記下限値以上であると、微細凹凸構造の凹部に熱伝導性樹脂部材301を構成する熱伝導性樹脂組成物(A)が十分に進入することができ、金属部材(M)と熱伝導性樹脂部材301との接合強度をより向上させることができる。また、上記間隔周期が上記上限値以下であると、金属部材(M)と熱伝導性樹脂部材301との接合部分に隙間が生じるのを抑制できる。その結果、金属―樹脂界面の隙間から水分等の不純物が浸入することを抑制できるため、電子部品収納用筐体100を高温、高湿下で用いた際、強度が低下することを抑制できる。
また、上記間隔周期を有する微細凹凸構造を形成する方法は特に限定されないが、例えば、国際公開第2015/008847号に記載された金属表面の粗化処理方法を使用することもできる。
熱伝導性樹脂組成物(A)の製造方法は特に限定されず、一般的な公知方法により製造することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、熱可塑性樹脂(P)、熱伝導性充填剤(B)、必要に応じてその他の配合剤(C)を、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機等の混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより、熱伝導性樹脂組成物(A)が得られる。
次に、本実施形態に係る電子部品収納用筐体100の製造方法について説明する。
本発明に係る実施形態の熱伝導性樹脂部材301が接合された展開図状金属板(展開図状金属樹脂接合板20)の構造の一例を、図3、4および5に模式的に示した。
本実施形態に係る電子部品収納用筐体100の製造方法は、例えば、以下の工程(A)~(C)を含む。
(A)金属製の底板201と、金属製の底板201に一体的に連結された金属製の側板202(202-1、202-2、202-3、および202-4)と、を備え、少なくとも熱伝導性樹脂部材301が接合される接合部表面に微細凹凸構造を有する展開図状金属板を準備する工程
(B)展開図状金属板を金型内に設置し、熱伝導性樹脂組成物(A)を上記金型内に注入して展開図状金属板の表面に熱伝導性樹脂部材301を接合して展開図状金属樹脂接合板20を製造する工程
(C)展開図状金属樹脂接合板20の底板201と側板202との境界線部205を折り曲げて、展開図状金属樹脂接合板20を箱型状にする工程
本実施形態に係る電子部品収納用筐体100の製造方法は、折り曲げ加工前の中間製品である展開図状金属板や展開図状金属樹脂接合板20の形状が平板状であるので、大量中間製品の保管効率や運搬効率が向上するという利点を有する。
はじめに、金属製の底板201と、金属製の底板201に一体的に連結された金属製の側板202(202-1、202-2、202-3、および202-4)と、を備え、少なくとも熱伝導性樹脂部材301が接合される接合部表面に微細凹凸構造を有する展開図状金属板を準備する。ここで、展開図状金属板は、図3に示すように、一つの側板202に一体的に連結された金属製の蓋板203をさらに備えてもよいし、図5に示すように蓋板203を備えていなくてもよい。また図4に示すように側板の一つ(背面板)202-3を備えていなくてもよい。蓋板203を備えていない場合は、図2に示す蓋板203を別途準備し、一つの側板202に蓋板203を、例えば上記機械的係合手段で係合することができる。同様に、背面板202-3を備えていない場合は、背面板202-3(図示せず)を別途準備し、底板201、両側板202-2、202-4および蓋板203からなる面に、例えば上記機械的係合手段で係合することができる。
ここで、展開図状金属板は電子部品収納用筐体100を構成する金属部材(M)に相当し、例えば、金属部材を図3、4および5に示す展開図状に加工し、少なくとも熱伝導性樹脂部材301が接合される接合部表面に粗化処理を施すことによって得ることができる。
金属部材および粗化処理の詳細はここでは省略する。
次いで、展開図状金属板を金型内に設置し、熱伝導性樹脂組成物(A)を上記金型内に注入して展開図状金属板の表面に熱伝導性樹脂部材301を接合する。
熱伝導性樹脂部材301を接合する方法としては、例えば、射出成形法、トランスファー成形法、圧縮成形法、反応射出成形法、ブロー成形法、熱成形法、プレス成形法等が挙げられる。これらの中でも射出成形法が好ましい。すなわち、熱伝導性樹脂部材301は射出成形体であることが好ましい。以下、射出成形法を用いた例について説明する。
(i)展開図状金属板を射出成形用金型内に配置する工程
(ii)熱伝導性樹脂部材301の少なくとも一部が展開図状金属板と接するように、金型内に熱伝導性樹脂組成物(A)を射出成形し、熱伝導性樹脂部材301を成形する工程
以下、具体的に説明する。
これにより、熱伝導性樹脂組成物(A)が軟化した状態に保ちながら、展開図状金属板の表面に熱可塑性樹脂組成物(A)を高圧でより長い時間接触させることができる。
その結果、展開図状金属板と熱伝導性樹脂部材301との間の接着性を向上できるため、接合強度により一層優れた電子部品収納用筐体100をより安定的に得ることができる。
これにより、軟化状態の熱伝導性樹脂部材301を急速に固化させることができる。その結果、電子部品収納用筐体100の成形サイクルを短縮できるため、電子部品収納用筐体100を効率よく得ることができる。
具体的には、金型の表面の近くに設けられた流路に水蒸気、温水および温油から選択される加熱媒体を導入する、あるいは電磁誘導加熱を用いることにより、上記金型の上記表面温度を熱伝導性樹脂部材301のガラス転移温度以上の温度に維持することが好ましい。
具体的には、金型の表面の近くに設けられた流路に冷水および冷油から選択される冷却媒体を導入することにより、金型の表面温度を熱伝導性樹脂部材301のガラス転移温度未満の温度に冷却することが好ましい。
上記時間が上記下限値以上であると熱伝導性樹脂部材301を溶融させた状態に保ちながら、展開図状金属板の上記微細凹凸構造に熱伝導性樹脂部材301を高圧でより長い時間接触させることができる。これにより、接合強度により一層優れた電子部品収納用筐体100をより安定的に得ることができる。
また、上記時間が上記上限値以下であると、電子部品収納用筐体100の成形サイクルを短縮できるため、電子部品収納用筐体100をより効率よく得ることができる。
こうすることで、底板201と側板202との境界線部205には熱伝導性樹脂部材301が接合されていない展開図状金属樹脂接合板20を得ることができ、その結果、底板201と側板202との境界線部205を折り曲げることがより容易となり、展開図状金属樹脂接合板20を箱型状にすることがより容易となる。そのため、電子部品収納用筐体100の生産性をより向上させることができる。
次いで、底板201と側板202との境界線部205を折り曲げて、展開図状金属樹脂接合板20を箱型状にすることにより、電子部品収納用筐体100を得る。
展開図状金属樹脂接合板20を箱型状にする方法は特に限定されず、一般的に公知の方法を用いることができる。例えば、底板201と側板202との境界線部205を折り曲げ、必要に応じて蓋板203を取り付けることにより電子部品収納用筐体100が得られる。
この際、隣接する側板202同士、および側板202と必要に応じて連結された蓋板203とを機械的手段で係合してもよい。機械的係合手段としては特に限定されないが、ネジ止め等が挙げられる。
100 電子部品収納用筐体
104 接合部表面
201 底板
202 側板
202-1 側板
202-2 側板
202-3 側板
202-4 側板
203 蓋板
205 境界線部
207 開口部
209 スリット
301 熱伝導性樹脂部材
Claims (14)
- 金属製の底板と、前記底板に一体的に折り曲げられて連結された金属製の側板と、を備え、内部に電子機器を収容するための筐体であって、
少なくとも前記底板および前記側板からなる板状の金属部材(M)の表面の一部に、面方向の熱伝導率が1W/(m・K)以上である熱伝導性樹脂部材が接合されており、
前記熱伝導性樹脂部材は、前記金属部材(M)を補強するための補強用樹脂部材であり、
前記金属部材(M)は、少なくとも前記熱伝導性樹脂部材との接合部表面に微細凹凸構造を有しており、
前記微細凹凸構造に前記熱伝導性樹脂部材の一部分が浸入することにより前記金属部材(M)と前記熱伝導性樹脂部材とが接合されており、
前記熱伝導性樹脂部材は、前記金属部材(M)の表面の少なくとも周縁部に接合されており、
前記熱伝導性樹脂部材は、前記金属部材(M)の両面に骨組状に形成されている電子部品収納用筐体。 - 前記熱伝導性樹脂部材が、熱可塑性樹脂(P)と、熱伝導率が2W/(m・K)以上であり、かつ、平均粒子径が0.1~50μmの範囲を満たす熱伝導性充填剤(B)を含む請求項1に記載の電子部品収納用筐体。
- 前記熱伝導性充填剤(B)が、(B-1)金属窒化物、(B-2)金属酸化物、(B-3)金属水酸化物から選ばれる1種類又は2種以上の充填剤を含む請求項2に記載の電子部品収納用筐体。
- 前記熱伝導性樹脂部材100質量%中に含まれる前記熱伝導性充填剤(B)の含有量が5~70質量%である請求項2または3に記載の電子部品収納用筐体。
- 請求項1~4のいずれか一項に記載の電子部品収納用筐体において、
前記金属部材(M)の平均厚みが0.2mm以上1.0mm以下である電子部品収納用筐体。 - 請求項1~5のいずれか一項に記載の電子部品収納用筐体において、
板状の前記金属部材(M)の一方の面に接合された前記熱伝導性樹脂部材と、他方の面に接合された前記熱伝導性樹脂部材の少なくとも一部とが、前記金属部材(M)の板面の垂直方向において互いに対向するように配置されている電子部品収納用筐体。 - 請求項1~6のいずれか一項に記載の電子部品収納用筐体において、
前記熱伝導性樹脂部材は射出成形体を含む電子部品収納用筐体。 - 請求項1~7のいずれか一項に記載の電子部品収納用筐体において、
前記熱伝導性樹脂部材の平均厚みが1.0mm以上10mm以下である電子部品収納用筐体。 - 請求項1~8のいずれか一項に記載の電子部品収納用筐体において、
前記金属部材(M)を構成する金属材料が電磁波シールド性を有する金属を含む電子部品収納用筐体。 - 請求項1~9のいずれか一項に記載の電子部品収納用筐体において、
前記側板に一体的に折り曲げられて連結された金属製の蓋板をさらに備え、
前記蓋板表面の一部に熱伝導性樹脂部材が接合され、前記蓋板が前記熱伝導性樹脂部材により補強されている電子部品収納用筐体。 - 請求項10に記載の電子部品収納用筐体において、
前記蓋板は、少なくとも前記熱伝導性樹脂部材との接合部表面に微細凹凸構造を有しており、
前記微細凹凸構造に前記熱伝導性樹脂部材の一部分が浸入することにより前記蓋板と前記熱伝導性樹脂部材とが接合されている電子部品収納用筐体。 - 請求項1~11のいずれか一項に記載の電子部品収納用筐体において、
前記底板と前記側板との境界線部には前記熱伝導性樹脂部材が接合されていない電子部品収納用筐体。 - 請求項1~12のいずれか一項に記載の電子部品収納用筐体において、
前記金属部材(M)の全表面積に占める前記熱伝導性樹脂部材の接合部の表面積は、1面積%以上50面積%以下である電子部品収納用筐体。 - 請求項1~13のいずれか一項に記載の電子部品収納用筐体と、前記電子部品収納用筐体に収容された電子部品とを備える電子装置。
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