JP2019077038A - 金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法 - Google Patents

金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Al−Mg−Si系アルミニウム合金等のアルミニウム合金により構成された金属部材と、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物により構成された樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を提供する。【解決手段】本発明の金属/樹脂複合構造体106は、アルミニウム合金により構成され、かつ、微細凹凸表面104を有する金属部材103と、金属部材103の微細凹凸表面104に接合し、かつ、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された樹脂部材105と、を備える金属/樹脂複合構造体であって、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、微細凹凸表面104の断面を観察したとき、金属部材103の表面110に平行に配置された横穴形状の凹部201が観測される。【選択図】図1

Description

本発明は、金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法に関する。
アルミニウム合金のうち、Al−Si−Mg系アルミニウム合金(JIS H4000またはJIS H4100:2014等に規定される6000番台のアルミニウム合金)は耐食性と強度をバランスよく備えることから広い分野で用いられている。例えば、上記JISに規定されているA6061−T6合金は、耐力が245MPa以上あり、SS400鋼に相当する強靭さを示す。また耐食性が良好であることから、船舶、車両、陸上構造物、光学機器等の構造部材に幅広く用いられている。より具体的には、航空宇宙産業用部品、ギヤチェンジペダル等の二輪車用部品、四輪車用部品、自転車用部品等である。
上記のような構造部材の軽量化の視点から、金属の代替品として樹脂の使用は魅力的である。しかし、全ての金属を樹脂で代替することは難しい場合が多く、このような場合は金属を一部残したまま、金属と樹脂を接合一体化することで新たな複合部品を製造することが考えられる。このようなマルチマテリアル化の流れは、金属としてのアルミニウム合金についても例外ではなく、アルミニウム合金/樹脂複合構造体に関する多くの技術が開示されている。アルミニウム合金と樹脂を接合一体化する技術として、アルミニウム合金表面に酸性またはアルカリ性の薬液、あるいは温水で処理することにより合金表面に微細凹凸構造を形成させた後に、その微細凹凸面上に非極性樹脂や極性樹脂を射出成形等の手法を用いて接合させる技術が開示されている(特許文献1〜5)。
特開2013−052671号公報 特開2011−121306号公報 国際公開2013/047365号 国際公開2004/041532号 特開2008−162115号公報
本発明者らの予備的検討によれば、特許文献1〜5に開示されているような薬液(エッチング剤)を用いて、Al−Mg−Si系アルミニウム合金等のアルミニウム合金を処理して樹脂を接合させたとしても十分な接合強度が得られない場合があることが明らかになった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、Al−Mg−Si系アルミニウム合金等のアルミニウム合金により構成された金属部材と、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物により構成された樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を提供するものである。
本発明者らは、Al−Mg−Si系アルミニウム合金等のアルミニウム合金により構成された金属部材と、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物により構成された樹脂部材とが十分な接合力を示さない原因を種々検討した。その結果、金属部材の薬液処理時に粗化面に微粉状アルミニウム合金が副生し、この微粉が微細凹部から十分に除去し切れず、金属と樹脂界面に介在するために接合強度低下をもたらしている可能性が高いことを突き止めた。そこで薬液処理時に発生する微粉除去を主眼に置いた検討を鋭意進めた結果、Al−Mg−Si系アルミニウム合金等のアルミニウム合金により構成された金属部材上の微細凹凸構造が特定の形状を示す場合において、金属部材と樹脂部材とが強力な接合力を示すことを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明によれば、以下に示す金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法が提供される。
[1]
アルミニウム合金により構成され、かつ、微細凹凸表面を有する金属部材と、
上記金属部材の上記微細凹凸表面に接合し、かつ、熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された樹脂部材と、
を備える金属/樹脂複合構造体であって、
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、上記微細凹凸表面の断面を観察したとき、上記金属部材の表面に平行に配置された横穴形状の凹部が観測される金属/樹脂複合構造体。
[2]
上記[2]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記横穴形状の凹部の平均穴径が0.5μm以上20μm以下である金属/樹脂複合構造体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記金属部材の上記微細凹凸表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たす金属/樹脂複合構造体。
(1)評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値が10μm以上80μm以下である
(2)評価長さ4mmにおける算術平均粗さ(Ra)の平均値が4μm超え20μm以下である
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記金属部材の上記微細凹凸表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(3)を満たす金属/樹脂複合構造体。
(3)評価長さ4mmにおける粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が50μm超え200μm以下である
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記アルミニウム合金が、Al純度が96質量%以上99質量%以下の範囲にあり、SiおよびMgから選択される少なくとも一種を0.2質量%以上3.0質量%以下含むアルミニウム合金を含む金属/樹脂複合構造体。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記アルミニウム合金が、JIS H4000、JIS H4040、JIS H4100またはJIS H4140に規定された合金番号6000番台から選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、およびポリカーボネート樹脂から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体。
[8]
アルミニウム合金により構成され、かつ、微細凹凸表面を有する金属部材を準備する工程と、
上記金属部材の上記微細凹凸表面を含む表面の少なくとも一部に接合するように、熱可塑熱可塑性樹脂または上記熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物により構成された樹脂部材を成形する工程と、
を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法であって、
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、上記微細凹凸表面の断面を観察したとき、上記金属部材の表面に平行に配置された横穴形状の凹部が観測される金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[9]
上記[8]に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記横穴形状の凹部の平均穴径が0.5μm以上20μm以下である金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[10]
上記[8]または[9]に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記金属部材の上記微細凹凸表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たす金属/樹脂複合構造体の製造方法。
(1)評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値が10μm以上80μm以下である
(2)評価長さ4mmにおける算術平均粗さ(Ra)の平均値が4μm超え20μm以下である
[11]
上記[8]乃至[10]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記金属部材を準備する工程は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの少なくとも一方と、酸とを含む酸系エッチング剤を用いてアルミニウム合金を処理する酸処理工程を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
本発明によれば、Al−Mg−Si系アルミニウム合金等のアルミニウム合金により構成された金属部材と、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物により構成された樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を提供することができる。
本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体の構造の一例を模式的に示した外観図である。 本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体を製造する過程の一例を模式的に示した構成図である。 本発明に係る実施形態の金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部の測定箇所を説明するための模式図である。 実施例1で用いたアルミニウム合金板1表面の断面部のSEM像(2次電子像)を示す図である。写真中、矢印は任意に選びだした横穴形状の凹部を示す。 比較例1で用いたアルミニウム合金板2表面の断面部のSEM像(2次電子像)を示す図である。写真の中には、図4で認められたような横穴形状の凹部は認められない。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、文中の数字の間にある「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
[金属/樹脂複合構造体]
まず、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体106の構造の一例を示す外観図である。
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、アルミニウム合金により構成され、かつ、微細凹凸表面104を有する金属部材103と、金属部材103の微細凹凸表面104に接合し、かつ、熱可塑性樹脂(A)または上記熱可塑性樹脂(A)を含む樹脂組成物(以下、熱可塑性樹脂組成物(P)とも呼ぶ。)により構成された樹脂部材105と、を備える。
そして、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、微細凹凸表面104の断面を観察したとき、金属部材103の表面110に平行に配置された横穴形状の凹部201が観測される。
金属部材103の微細凹凸表面104には、金属部材103と樹脂部材105との間の接合強度向上に適した横穴形状の凹部201が形成されているため、接着剤を使用せずに金属部材103と樹脂部材105との間の接合性確保が可能となる。具体的には金属部材103の表面110に平行に配置されるように形成された横穴形状の凹部201中に熱可塑性樹脂(A)または熱可塑性樹脂組成物(P)が侵入することによって、金属部材103と樹脂部材105との間に物理的な抵抗力(アンカー効果)が効果的に発現し、通常では接合が困難な金属部材103と熱可塑性樹脂組成物(P)からなる樹脂部材105とを強固に接合することが可能になったものと考えられる。
以下、金属/樹脂複合構造体106を構成する各部材について説明する。
<金属部材>
以下、本実施形態に係る金属部材103について説明する。
金属部材103を構成する金属材料はアルミニウム合金であり、好ましくはAl−Mg−Si系アルミニウム合金であり、好ましくは、Al純度が96質量%以上99質量%以下の範囲にあり、MgおよびSiから選択される少なくとも一種を、SiおよびMgの合計として0.2質量%以上3.0質量%以下含むアルミニウム合金である。好ましくはSiおよびMgを共に含み、その含有量が各々、0.2質量%〜2.0質量%、および0.1〜1.0質量%である。好ましいアルミニウム合金としてはJIS H4000、JIS H4040、JIS H4100またはJIS H4140に規定された合金番号6000番台から選択される少なくとも一種のアルミニウム合金であり、さらに好ましくは上記JISに規定されたA6061、A6063、A6016、A6022、A6101、A6111またはA6151であり、特に好ましくはA6061またはA6063であり、最も好ましくはA6061である。
金属部材103の形状は、樹脂部材105と接合できる形状であれば特に限定されず、例えば、平板状、曲板状、棒状、筒状、塊状等とすることができる。また、これらの組み合わせからなる構造体であってもよい。
また、樹脂部材105と接合する微細凹凸表面104の形状は、特に限定されないが、平面、曲面等が挙げられる。
金属部材103は、アルミニウム合金材料を切断、プレス等による塑性加工、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工等の除肉加工によって上述した所定の形状に加工された後に、後述する粗化処理がなされたものが好ましい。要するに、種々の加工法により、必要な形状に加工されたものを用いることが好ましい。
本実施形態に係る金属部材103は、金属部材103の微細凹凸表面104の断面部を、金属部材103の表面110が水平になるように配置して走査型電子顕微鏡(SEM)で二次電子像または反射電子像を観測した場合、金属部材103の微細凹凸表面104の断面部に、金属部材103の表面110に平行に配置された横穴形状の凹部201が少なくとも観測されることを特徴としている。
観測される横穴形状の凹部201の平均穴径は、好ましくは0.5μm〜20μm、より好ましくは1μm〜15μm、さらに好ましくは1.5μm〜10μmの範囲である。なお、横穴形状の凹部201の平均穴径は後述する実施例で述べるように合計30の横穴の最大直径の平均値である。本実施形態に係る金属部材103において、横穴形状の空洞部は、上記のように片末端部が開放、他の末端部が閉鎖した凹部になっているものが大多数を占める。その他の空洞部としては、両末端部がいずれも閉鎖された密閉型のものや、両末端部がいずれも開放されたトンネル状のものや、横穴の中央部に小孔を有するものも観測されるが、本実施形態においては片末端のみが閉じた凹部状のもの(横穴形状の凹部201とも呼ぶ。)は必ず存在する。
このような要件を満たすと、接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体106が得られる理由は必ずしも明らかではないが、金属部材103の微細凹凸表面104が、金属部材103と樹脂部材105との間に引張りせん断方向および引き剥がし方向に対してアンカー効果が効果的に発現できる構造になっているためと考えられる。
本実施形態に係る金属部材103の微細凹凸表面104上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たすことが好ましい。
(1)評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値が10μm以上80μm以下である
(2)評価長さ4mmにおける算術平均粗さ(Ra)の平均値が4μm超え20μm以下である
図3は、金属部材103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部を説明するための模式図である。
上記6直線部は、例えば、図3に示すような6直線部B1〜B6を選択することができる。まず、基準線として、金属部材103の微細凹凸表面104の中心部Aを通る中心線B1を選択する。次いで、中心線B1と平行関係にある直線B2およびB3を選択する。次いで、中心線B1と直交する中心線B4を選択し、中心線B1と直交し、中心線B4と並行関係にある直線B5およびB6を選択する。ここで、各直線間の垂直距離D1〜D4は、例えば、2〜5mmである。
なお、通常、金属部材103の表面110中の微細凹凸表面104だけでなく、金属部材103の表面110全体に対し、表面粗化処理が施されているため、金属部材103の微細凹凸表面104と同一面で、微細凹凸表面104以外の箇所から6直線部を選択してもよい。
上記要件(1)および(2)を同時に満たすということにより接合強度がより向上する理由については必ずしも明らかではないが、おそらく両要件を満たすことによって金属部材表面に残存する微粉状のアルミニウム合金の存在量が十分に低減され、その結果として、接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体106が得られるものと考えられる。
上記要件(1)については、金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、十点平均粗さ(Rz)の平均値は15μm以上70μm以下が好ましく、20μm超え60μm以下がより好ましく、30μm以上60μm以下がさらに好ましい。
上記要件(2)については、金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、算術平均粗さ(Ra)の平均値は4.5μm以上18μm以下が好ましく、7μm以上15μm以下がより好ましい。
本実施形態においては、金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、本実施形態に係る金属部材103の微細凹凸表面104上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(3)を満たすことが好ましい。
(3)評価長さ4mmにおける粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が50μm超え200μm以下である。
粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値は、好ましくは60μm以上180μm以下、より好ましくは70μm以上160μm以下である。
(金属部材表面の粗化処理方法)
上記要件(1)および(2)を共に満たす微細凹凸表面104を有する金属部材103は、例えば、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの少なくとも一方と、酸とを含む酸系エッチング剤を用いてアルミニウム系金属部材を処理する酸処理工程を含む方法によって製造することが可能である。このような酸系エッチング剤を用いる粗化方法としては、例えば、国際公開第2015/8847号、特開2001−348684号公報、国際公開2008/81933号等に開示された公知方法を採用することができる。
本実施形態においては、上記酸系エッチング剤による酸処理工程の前に、両性金属イオン、好ましくは亜鉛金属イオンと水酸化物イオンとを含むアルカリ系エッチング剤を用いてアルミニウム系金属部材を処理するアルカリ処理工程をおこなうことが好ましい。このようなアルカリエッチング剤による処理を加えることによって、特定のアルミニウム合金、例えばJIS H4000やJIS H4040に規定された6000番台、好ましくはA6061である場合に、例えば自動車構造材料として有用な金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。なお、亜鉛イオン含有アルカリ水溶液による処理方法については、例えば、国際公開2013/47365号に開示された処理方法を採用することができる。
本実施形態において、金属部材の表面を粗化する特に好ましい方法は、次のステップ(S1)〜(S5)をこの順に実施する方法である。
(S1)前処理工程
金属部材の樹脂部材105との接合側の表面に存在する酸化膜や水酸化物等からなる被膜を除去する。例えば、機械研磨や化学研磨処理が行われる。接合側表面に機械油等の著しい汚染がある場合は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液による処理や、脱脂を行ってもよい。
(S2)亜鉛イオン含有アルカリ水溶液による処理工程
水酸化アルカリ(MOH)と亜鉛イオン(Zn2+)とを重量比(MOH/Zn2+)1〜100の割合で含む亜鉛イオン含有アルカリ水溶液中に、前処理後の金属部材を浸漬し、金属部材の表面に亜鉛含有被膜形成させる。ステップ(S2)は二回以上の複数回実施しても良い。
(S3)酸系エッチング剤による処理工程
上記工程(S2)終了後の金属部材を、第二鉄イオンと第二銅イオンの少なくとも一方と、酸を含む酸系エッチング剤により処理して金属部材の表面上の亜鉛含有被膜を溶離させると共に、ミクロンオーダーの凹凸形状を形成させる。上記酸系エッチング剤への浸漬温度は通常は室温である。浸漬時間は、浸漬温度が30℃である場合、通常10秒〜1000秒、好ましくは50秒〜800秒、より好ましくは100秒〜500秒である。
(S4)スマット除去工程
上記工程(S3)終了後の金属部材を、30質量%前後の硝酸水溶液中に浸漬(40℃、5分程度)させて、スマットを除去した後に、水洗浄を行う。
(S5)後処理工程
上記工程(S4)の後に、金属部材を水中に浸漬し、金属粉の除去のために超音波洗浄をおこなう。水温は通常は室温である。超音波照射時間は、通常10秒〜1000秒、好ましくは50秒〜800秒、より好ましくは100秒〜600秒である。
<樹脂部材>
以下、本実施形態に係る樹脂部材105について説明する。
樹脂部材105は熱可塑性樹脂(A)または熱可塑性樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(P)により構成される。熱可塑性樹脂組成物(P)は、樹脂成分として熱可塑性樹脂(A)と、必要に応じて充填材(B)と、含む。さらに、熱可塑性樹脂組成物(P)は必要に応じてその他の配合剤を含む。なお、便宜上、樹脂部材105が熱可塑性樹脂(A)のみからなる場合であっても、樹脂部材105は熱可塑性樹脂組成物(P)からなると記載する場合がある。
(熱可塑性樹脂(A))
熱可塑性樹脂(A)としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等のポリアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール−ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等のポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂やポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂等のポリフェニレン系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、熱可塑性樹脂(A)としては、金属部材103と樹脂部材105との接合強度向上効果がより効果的に得ることができる観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、およびポリカーボネート樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、およびポリアミド系樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂がより好ましく、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の主な用途に想定している例えば自動車用構造材料分野においては、耐熱性のほかに耐油性や耐摩耗性、潤滑性、機械的強度等のバランスに優れたポリアミド系樹脂(非強化または強化)が特に好ましい。
(充填材(B))
熱可塑性樹脂組成物(P)は、金属部材103と樹脂部材105との線膨張係数差の調整や樹脂部材105の機械的強度を向上させる観点から、充填材(B)をさらに含んでもよい。
充填材(B)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。このような充填材(B)の形状は特に限定されず、繊維状、粒子状、板状等どのような形状であってもよい。
熱可塑性樹脂組成物(P)が充填材(B)を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上90質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以上80質量部以下である。
(その他の配合剤)
熱可塑性樹脂組成物(P)には、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤を含むことも本発明は何ら制限するものではない。このような配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。
<熱可塑性樹脂組成物(P)の製造方法>
熱可塑性樹脂組成物(P)の製造方法は特に限定されず、一般的に公知の方法により製造することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、上記熱可塑性樹脂(A)、必要に応じて上記充填材(B)、さらに必要に応じて上記その他の配合剤とを、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機等の混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより、熱可塑性樹脂組成物(P)が得られる。
<金属/樹脂複合構造体の製造方法>
図2は、本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体106を製造する過程の一例を模式的に示した構成図である。
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、例えば、微細凹凸表面104を有する金属部材103を金型102内に配置し、熱可塑性樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂組成物(P)を金型102内に射出することにより製造可能である。
射出工程は、例えば、微細凹凸表面104を有する金属部材103を射出成形用の金型102のキャビティ部にインサートし、金属部材103の微細凹凸表面104に接するように熱可塑性樹脂組成物(P)を射出する射出成形法によって樹脂部材105を成形し、金属/樹脂複合構造体106を製造する工程である。
具体的には、まず、射出成形用の金型102を用意し、その金型102を開いてその一部に金属部材103を設置する。その後、金型を閉じ、熱可塑性樹脂組成物(P)の少なくとも一部が金属部材103の表面110に形成された微細凹凸形状と接するように、金型102内に熱可塑性樹脂組成物(P)を射出して固化する。その後、金型102を開き離型することにより、金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。
また、上記射出成形工程においては、公知の射出発泡成形や、金型の温度制御を射出成形の一サイクルの中で行い加熱冷却する公知のヒート&クール成形を併用してもよい。ヒート&クール成形の条件としては、射出成形金型を80℃以上300℃以下の温度に加熱し、熱可塑性樹脂組成物(P)の射出が完了した後、射出成形金型を冷却することが望ましい。金型を加熱する温度は、熱可塑性樹脂組成物(P)を構成する熱可塑性樹脂(A)によって好ましい範囲が異なり、結晶性樹脂で融点が200℃未満の熱可塑性樹脂であれば、80℃以上200℃以下が好ましく、結晶性樹脂で融点が200℃以上の熱可塑性樹脂であれば、120℃以上300℃以下が好ましい。非晶性樹脂を含有する樹脂組成物においては、樹脂のTg(ガラス転移温度)以上の温度で射出完了させた後、20℃以上180℃以下に金型を冷却することが好ましい。
<金属/樹脂複合構造体の用途>
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
さらに、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、耐力にも優れ、耐熱性も良好であることから自動車構造材料を中心として多くの産業分野で好適に用いられる。
例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等が挙げられる。
より具体的には、樹脂だけでは強度が足りない部分を金属がサポートする様にデザインされた次のような部品である。車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ラジエータ、オイルパン、ステアリングホイール、エンジンマウント、ECUボックス、LIB電池モジュール、車載カメラモジュール、車載レーダーモジュール、電装部品等が挙げられる。また、建材や家具類として、ガラス窓枠、手すり、カーテンレール、たんす、引き出し、クローゼット、書棚、机、椅子等が挙げられる。また、精密電子部品類として、コネクタ、リレー、ギヤ等が挙げられる。また、輸送容器として、輸送コンテナ、スーツケース、トランク等が挙げられる。
また、金属部材103の高い熱伝導率と、樹脂部材105の断熱的性質とを組み合わせ、ヒートマネージメントを最適に設計する機器に使用される部品用途、例えば、各種家電にも用いることができる。具体的には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、スピーカー等の家電製品類、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、パソコン、タブレットPC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、電池等電子情報機器、ロボット用部材等が挙げられる。
以上、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の用途について述べたが、これらは本発明の用途の例示であり、上記以外の様々な用途に用いることもできる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、実施例および比較例で採用した各種分析法、接合強度評価法を示す。
(接合部分の接合強度)
金属/樹脂複合構造体の引張せん断強度試験は以下の方法でおこなった。
引張せん断強度試験機(「モデル1323(アイコーエンジニヤリング社製)」を使用し、引張試験機に専用の治具を取り付け、室温(23℃)にて、チャック間距離60mm、引張速度10mm/minの条件にて測定)によって金属部材と樹脂部材とをせん断方向に引き剥がして接合部を破壊した。この破壊時の強度を引っ張りせん断強度(または単に接合強度と略称する場合がある)とした。
(金属部材表面の微細凹凸形状のSEM観察)
金属部材表面を粗化処理した部分の断面部について、日立ハイテクノロジー社製IM4000を用いてイオンミリング後、走査型電子顕微鏡(JEOL社製JSM−7001F)を用い、二次電子像を観察した。得られた写真から凹部の配置、形状を観察した。
(金属部材表面の、十点平均粗さ(Rz)、算術平均粗さ(Ra)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の測定)
表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用し、JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)、算術平均粗さ(Ra)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。なお、測定条件は以下のとおりである。
・触針先端半径:5μm
・基準長さ:0.8mm
・評価長さ:4mm
・測定速度:0.06mm/sec
測定は、金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部についておこなった(図3参照)。
(破壊形態観察)
引張試験後の金属部材側を観察し、金属/樹脂接合部分の界面に樹脂が残っていれば材料破壊とした。界面の一部のみに樹脂が残っている場合を一部材料破壊、界面に樹脂残りがない場合を界面破壊とした。一部材料破壊および界面破壊の場合は接合強度が不足していることを示す。
[実施例1]
(表面粗化工程)
JIS H4000に規定された合金番号6061のアルミニウム合金板(厚み:2.0mm)を、長さ45mm、幅18mmに切断した。このアルミニウム合金板を脱脂処理した後、水酸化ナトリウムを15質量%と酸化亜鉛を3質量%含有するアルカリ系エッチング剤(30℃)が充填された処理槽1に3分間浸漬(以下の説明では「アルカリ系エッチング剤処理」と略称する場合がある)後、30質量%の硝酸(30℃)にて、1分間浸漬し、アルカリ系エッチング剤処理をさらに1回繰り返し実施した。次いで、得られたアルミニウム合金板を、塩化第二鉄を3.9質量%と、塩化第二銅を0.2質量%と、硫酸を4.1質量%とを含有する酸系エッチング水溶液が充填された処理槽2に、30℃で300秒間浸漬し搖動させた(以下の説明では「酸系エッチング剤処理」と略称する場合がある)。次いで、40℃の30質量%硝酸水溶液に5分間浸漬させた。次いで、流水で超音波洗浄(水中、180秒間)を行い、その後乾燥させることによって表面処理済みのアルミニウム合金板1を得た。
得られた表面処理済みのアルミニウム合金板1の接合部の表面粗さを、表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用し、JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、十点平均粗さ(Rz)、算術平均粗さ(Ra)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)をそれぞれ測定した。その結果、Rz平均値は43μm、Ra平均値は11μm、およびRSmの平均値は115μmであった。なお、Rz平均値およびRSm平均値は、測定場所を変えた6点の測定値の平均である。
また、表面処理済みのアルミニウム合金板1の接合部の任意の6点について断面SEM(二次電子像)観察したところ、6枚の全ての画像において、金属部材の表面に平行に配置された、横穴形状の凹部が観測された。(図4に断面SEM画像の一例を示した)。その横穴形状の凹部の平均穴径は4μmであった。なお、平均穴径は、6枚の各画像を、分割面積が等しくなるように縦方向に6分割した後、合計30枚の分割画像について、横穴形状の凹部の最大直径を求め、次いで、その平均値を求めて、これを横穴形状の凹部の平均穴径とした。
(射出成形工程)
上記方法で得られた表面処理済みアルミニウム合金板1を、日本製鋼所社製のJ85AD110Hに小型ダンベル金属インサート金型102を装着し、金型102内に表面処理済みのアルミニウム合金板1を設置した。次いで、その金型102内に熱可塑性樹脂組成物(P)として、デユポン社製ガラス繊維強化ポリアミド(PA66;ザイテル(登録商標)70G43L)を、シリンダー温度300℃、金型温度170℃、射出速度40mm/sec、保圧90MPa、保圧時間10秒の条件にて射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を作製した。得られた金属/樹脂複合構造体106の接合部分の引張せん断強度を測定したところ56MPaであった。破壊形態は母材破壊であった。破壊面(樹脂部材側)にはアルミニウム微粉は観測されなかった。
[実施例2]
実施例1で用いた表面処理済みのアルミニウム合金板1を、日本製鋼所社製のJ85AD110Hに小型ダンベル金属インサート金型102を装着し、金型102内に表面処理済み合金板1を設置した。次いで、その金型102内に熱可塑性樹脂組成物(P)として、ポリプラスチック社製ポリブチレンテレフタレート(PBT;ジェラネックス(登録商標)930HL)を、シリンダー温度270℃、金型温度160℃、射出速度30mm/sec、保圧80MPa、保圧時間10秒の条件にて射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を作製した。得られた金属/樹脂複合構造体106の接合部分の引張せん断強度を測定したところ31MPaであった。破壊形態は母材破壊であった。
[比較例1]
実施例1の表面粗化工程において、超音波照射を行わなかった以外は実施例1の表面粗化工程と同様に行い、表面処理済みのアルミニウム合金板2を得た。
得られた表面処理済みのアルミニウム合金板2の接合部の表面粗さを測定した結果、Rz平均値は20μm、Ra平均値は4μm、およびRSmの平均値は50μmであった。なお、Rz平均値およびRSm平均値は、測定場所を変えた6点の測定値の平均である。
また、表面処理済みのアルミニウム合金板2の接合部の断面SEM(二次電子像)観察したところ、金属部材の表面に平行に配置された、横穴形状の凹部は全く観測されなかった(図5参照)。
実施例1と同様にして、デユポン社製ガラス繊維強化ポリアミド(PA66;ザイテル(登録商標)70G43L)を、シリンダー温度300℃、金型温度170℃、射出速度40mm/sec、保圧90MPa、保圧時間10秒の条件にて射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を作製した。得られた金属/樹脂複合構造体106の接合部分の引張せん断強度を測定したところ33MPaであった。破壊形態は界面破壊であった。破壊面(樹脂部材側)には多数の金属微粉が付着していることが確認された。
[比較例2]
比較例1で用いた表面処理済みのアルミニウム合金板2を、日本製鋼所社製のJ85AD110Hに小型ダンベル金属インサート金型102を装着し、金型102内に表面処理済み合金板2を設置した。次いで、その金型102内に熱可塑性樹脂組成物(P)として、ポリプラスチック社製ポリブチレンテレフタレート(PBT;ジェラネックス(登録商標)930HL)を、シリンダー温度270℃、金型温度160℃、射出速度30mm/sec、保圧80MPa、保圧時間10秒の条件にて射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を作製した。得られた金属/樹脂複合構造体106の接合部分の引張せん断強度を測定したところ23MPaであった。破壊形態は界面破壊であった。ダンベル試験片の接合部分全体に多数のアルミニウム微粉が観測されることが分かった。
101 射出成形機
102 金型
103 金属部材
104 微細凹凸表面
105 樹脂部材
106 金属/樹脂複合構造体
107 ゲート/ランナー
110 表面
201 横穴形状の凹部

Claims (11)

  1. アルミニウム合金により構成され、かつ、微細凹凸表面を有する金属部材と、
    前記金属部材の前記微細凹凸表面に接合し、かつ、熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された樹脂部材と、
    を備える金属/樹脂複合構造体であって、
    走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、前記微細凹凸表面の断面を観察したとき、前記金属部材の表面に平行に配置された横穴形状の凹部が観測される金属/樹脂複合構造体。
  2. 請求項1に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記横穴形状の凹部の平均穴径が0.5μm以上20μm以下である金属/樹脂複合構造体。
  3. 請求項1または2に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記金属部材の前記微細凹凸表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たす金属/樹脂複合構造体。
    (1)評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値が10μm以上80μm以下である
    (2)評価長さ4mmにおける算術平均粗さ(Ra)の平均値が4μm超え20μm以下である
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記金属部材の前記微細凹凸表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(3)を満たす金属/樹脂複合構造体。
    (3)評価長さ4mmにおける粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が50μm超え200μm以下である
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記アルミニウム合金が、Al純度が96質量%以上99質量%以下の範囲にあり、SiおよびMgから選択される少なくとも一種を0.2質量%以上3.0質量%以下含むアルミニウム合金を含む金属/樹脂複合構造体。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記アルミニウム合金が、JIS H4000、JIS H4040、JIS H4100またはJIS H4140に規定された合金番号6000番台から選択される少なくとも一種を含む金属/樹脂複合構造体。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
    前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、およびポリカーボネート樹脂から選択される一種または二種以上を含む金属/樹脂複合構造体。
  8. アルミニウム合金により構成され、かつ、微細凹凸表面を有する金属部材を準備する工程と、
    前記金属部材の前記微細凹凸表面を含む表面の少なくとも一部に接合するように、熱可塑熱可塑性樹脂または前記熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物により構成された樹脂部材を成形する工程と、
    を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法であって、
    走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、前記微細凹凸表面の断面を観察したとき、前記金属部材の表面に平行に配置された横穴形状の凹部が観測される金属/樹脂複合構造体の製造方法。
  9. 請求項8に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
    前記横穴形状の凹部の平均穴径が0.5μm以上20μm以下である金属/樹脂複合構造体の製造方法。
  10. 請求項8または9に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
    前記金属部材の前記微細凹凸表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たす金属/樹脂複合構造体の製造方法。
    (1)評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)の平均値が10μm以上80μm以下である
    (2)評価長さ4mmにおける算術平均粗さ(Ra)の平均値が4μm超え20μm以下である
  11. 請求項8乃至10のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
    前記金属部材を準備する工程は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの少なくとも一方と、酸とを含む酸系エッチング剤を用いてアルミニウム合金を処理する酸処理工程を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
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