JP6941953B2 - 金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、このような金属と熱可塑性樹脂との接合には、接着剤を使用することが一般的であった。しかし、接着剤を使用する方法は生産工程数を増加させるばかりではなく、経時変化にともない接着力が低下したり、高温下において接合強度が発現しなかったりすることもあるので、特に自動車等の耐熱性が要求される分野への適用を難しくしていた。また、ねじ止め等の機械的な接合方法も従来から広く行われてきたが、軽量化の点で普及が限定されていた。
金属部材と、
前記金属部材に接合し、かつ、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された樹脂部材と、
前記金属部材と前記樹脂部材との間に設けられ、かつ、無機物粒子のみからなる無機物粒子層と、
から構成され、
前記無機物粒子は、シリカ粒子、酸化スズ粒子、ナノダイヤ粒子、ジルコニア粒子、酸化ニオブ粒子、酸化鉄粒子、アルミナ粒子、カーボンナノファイバーから選択される少なくとも1つであり、
前記金属部材は少なくとも前記樹脂部材との接合部表面に微細凹凸形状を有し、
前記無機物粒子層は前記金属部材の前記微細凹凸形状に追随する形で、前記微細凹凸形状の一部または全部を覆うように形成されており、
前記金属部材と前記樹脂部材とは前記無機物粒子層を介して接合しており、前記微細凹凸形状の凹部には、前記無機物粒子層を介して前記樹脂部材が侵入している金属/樹脂複合構造体。
[2]
上記[1]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記無機物粒子層はシリカ粒子を含む金属/樹脂複合構造体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記無機物粒子層の平均厚みが1nm以上400nm以下である金属/樹脂複合構造体。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記無機物粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下である金属/樹脂複合構造体。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記微細凹凸形状の凸部と凹部の高低差の平均値が10nm以上200μm以下である金属/樹脂複合構造体。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記熱可塑性樹脂が非晶性熱可塑性樹脂を含む金属/樹脂複合構造体。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記金属部材が鉄系金属、アルミニウム系金属、マグネシウム系金属、銅系金属およびチタン系金属から選ばれる一種または二種以上の金属を含む金属/樹脂複合構造体。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
表面に微細凹凸形状を有する金属部材を準備する工程と、
前記金属部材の前記微細凹凸形状に追随する形で、前記微細凹凸形状の一部または全部を覆うように無機物粒子のみからなる無機物粒子層を、無機物粒子分散液を用いて形成する工程であって、前記無機物粒子は、シリカ粒子、酸化スズ粒子、ナノダイヤ粒子、ジルコニア粒子、酸化ニオブ粒子、酸化鉄粒子、アルミナ粒子、カーボンナノファイバーから選択される少なくとも1つである工程と、
前記無機物粒子層を形成した前記金属部材を金型内に配置し、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を前記金型内に射出することにより、前記無機物粒子層を介して前記金属部材に樹脂部材を接合する工程であって、前記微細凹凸形状の凹部には、前記無機物粒子層を介して前記樹脂部材が侵入している、工程と、
を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[9]
上記[8]に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記無機物粒子層は無機物粒子分散液を用いて形成する金属/樹脂複合構造体。
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体106の構造の一例を示す外観図である。図2は、本発明に係る実施形態の金属/樹脂複合構造体106の接合部の構造の一例を概念的に示した断面図である。
図1および図2に示すように、金属/樹脂複合構造体106は、金属部材103と、金属部材103に接合し、かつ、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(P)により構成された樹脂部材105と、金属部材103と樹脂部材105との間に設けられ、かつ、無機物粒子により構成された無機物粒子層107と、を備える。そして、金属部材103は少なくとも樹脂部材105との接合部表面に微細凹凸形状104を有し、無機物粒子層107は金属部材103の微細凹凸形状104の一部または全部を覆うように形成されており、金属部材103と樹脂部材105とは無機物粒子層107を介して接合している。
ここで、無機物粒子層107は、微細凹凸形状104に追随する形で微細凹凸形状104の形成領域の上に形成されている。したがって、無機物粒子層107の表面の三次元形状は、微細凹凸形状104の三次元形状にほぼ一致していることが予想される。
無機物粒子層107は、金属−樹脂接合部断面の元素マッピング分析法によって、その存在を確認することができる。具体的には、イオンミリング法による接合部断面の切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)による反射電子像の獲得およびエネルギー分散型X線分析(EDS)を行うことによって無機物粒子層107を検知することができる。
図3および図4に、このようなSEM/EDS分析によって観察した、実施例1に係る金属/樹脂複合構造体106の接合部周辺の断面図を示す。金属部材103の表面110に形成された微細凹凸形状104に追従するように無機物粒子層107が存在することが確認されている。
本実施形態に係る金属部材103は、少なくとも樹脂部材105との接合部表面に微細凹凸形状104を有する金属部材である。微細凹凸形状104は、後述する様々な粗化方法によって形成することができる。粗化方法の種類によっては、微細凹凸形状104を含む領域の凹凸形状は、相対的に大きなスケールの第1凹凸形状部と、上記第1凹凸形状部の表面に形成された相対的に小さなスケールの第2凹凸形状部と、により構成される場合がある。本実施形態における微細凹凸形状104は、第1凹凸形状部のみを有する態様、第2凹凸形状部のみを有する態様および第1凹凸形状部と第2凹凸形状部の両方を有する態様を包含する用語として用いられる。
ここで、微細凹凸形状の間隔周期は凸部から隣接する凸部までの距離の平均値であり、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真、あるいは表面粗さ測定装置を用いて求めることができる。
電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡により測定される間隔周期は通常500nm未満の間隔周期である。具体的には、以下の手順で間隔周期を測定することができる。まず、金属部材103の接合部表面を撮影する。次いで、得られた写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定する。そして、凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とする。一方、500nmを超える間隔周期は通常、表面粗さ測定装置を用いて求める。
なお、通常、金属部材103の接合部表面だけでなく、金属部材103の表面全体に対し、表面粗化処理が施されているため、金属部材103の接合部表面と同一面で、接合部表面以外の箇所から間隔周期を測定することもできる。
上記間隔周期が上記下限値以上であると、微細凹凸形状の凹部に樹脂部材105を構成する樹脂組成物が十分に進入することができ、金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより向上させることができる。また、上記間隔周期が上記上限値以下であると、金属部材103と樹脂部材105との接合部分に隙間が生じるのを抑制できる。その結果、金属部材103と樹脂部材105との界面の隙間から水分等の不純物が浸入することを抑制できるため、金属/樹脂複合構造体106を高温、高湿下で用いた際、強度が低下することを抑制できる。
また、樹脂部材105と接合する接合部表面の形状は、特に限定されないが、例えば、平面、曲面等が挙げられる。
本実施形態に係る無機物粒子層107は無機物粒子により構成される。
本実施形態に係る無機物粒子層107を構成する無機物粒子は特に限定されないが、一次粒子の平均粒子径が好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは1nm以上70nm以下、さらに好ましくは1nm以上50nm以下、さらにより好ましくは1nm以上30nm以下、特に好ましくは1nm超え20nm未満のナノ粒子であり、一次粒子が数個〜数百個凝集した二次粒子構造となっていてもよい。
無機物粒子層107を構成する無機物粒子の平均粒子径は、例えば、金属部材103と樹脂部材105の接合部の断面電子顕微鏡(TEMやSEM)によって測定することができる。
無機物粒子の平均粒子径が上記下限値以上であると、金属部材103上の微細凹凸形状104に無機物粒子層107を形成する際に用いられる分散液中の無機物粒子間の凝集による作業性低下を抑制することができる。
また、無機物粒子の平均粒子径が上記上限値以下であると、金属部材103上の微細凹凸形状104の凹部と凸部の平均高低差がnmオーダーと小さな場合においても本実施形態の接合強度向上効果を十分に発現させることができる。
また、無機物粒子の平均粒子径は金属部材103上の微細凹凸形状104の凹部と凸部の平均高低差よりも小さいことが好ましい。
無機物粒子層107の平均厚み(B)は、例えば、金属/樹脂複合構造体106の任意の3点の接合部の断面をSEM/EDSを用いて観察し、得られた各SEM/EDS画像から測定される厚みを平均した値を採用することができる。
無機物粒子層107の平均厚み(B)が上記範囲内であると、金属/樹脂複合構造体106の接合強度をより一層向上させることができる。
また、無機物粒子層107の平均厚み(B)は金属部材103上の微細凹凸形状104の凹部と凸部の平均高低差よりも薄いことが好ましい。
これらの中でもシリカ粒子が好ましい。
ここで、無機物粒子層107がシリカ粒子を含む場合、無機物粒子層107の全体を100質量%としたとき、シリカ粒子以外の無機物粒子の含有量は、例えば60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
以下、本実施形態に係る樹脂部材105について説明する。
樹脂部材105は熱可塑性樹脂(A)を含む樹脂組成物(P)により構成される。樹脂組成物(P)は、樹脂成分として熱可塑性樹脂(A)と、必要に応じて充填材(B)と、含む。さらに、樹脂組成物(P)は必要に応じてその他の配合剤を含む。なお、便宜上、樹脂部材105が熱可塑性樹脂(A)のみからなる場合であっても、樹脂部材105は熱可塑性樹脂組成物(P)により構成されると記載する。
ここで、非晶性熱可塑性樹脂(A1またはA2)とは結晶状態をとりえないか、あるいは結晶化しても結晶化度が極めて低い熱可塑性樹脂を指し、さらに詳しくはアモルファスポリマーとも呼ばれ、原子または分子が三次元的に規則正しい空間格子をとらずに、それらが不規則に集合した固体状態(無定形)である。
無定形状態にはガラス状態とゴム状態があり、ガラス転移点(Tg)以下では硬いガラス状を示すが、Tg以上では軟らかいゴム状を示す特徴をもつ熱可塑性樹脂であり、上述の熱可塑性樹脂群の中では、例えば、ポリスチレン、ABS、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド等が該当する。このような非晶性熱可塑性樹脂は、高強度および高耐熱性を示すことから多くの産業分野で注目されている樹脂である。しかし、金属表面に微細凹凸形状を形成させ樹脂を金属に物理的にアンカー効果で接合するような金属樹脂一体化接合においては、その高い溶融粘度と低流動性のため、樹脂を微細凹凸形状に十分に侵入させることが困難であり、ヒート&クール成形等の特殊な成形法に頼らざるを得なかった。
非晶性熱可塑性樹脂の中では、寸法安定性に優れ、成形収縮が相対的に小さく、吸水率が小さな変性ポリフェニレンエーテル(以下、m−PPEと略記する場合がある)または該m−PPEを含有する樹脂組成物が好ましい。
樹脂組成物(P)は、金属部材103と樹脂部材105との線膨張係数差の調整や樹脂部材105の機械的強度を向上させる観点から、充填材(B)をさらに含んでもよい。
充填材(B)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。
樹脂組成物(P)には、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤を含んでもよい。このような配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。
樹脂組成物(P)の調製方法は特に限定されず、一般的に公知の方法により調製することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、熱可塑性樹脂(A)、必要に応じて充填材(B)、さらに必要に応じてその他の配合剤とを、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機等の混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより、樹脂組成物(P)が得られる。
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、例えば、以下の工程1、2および3を順次実施することにより製造することができる。以下、各々の工程について説明する。
(工程1)表面110に微細凹凸形状104を有する金属部材103を準備する工程
(工程2)金属部材103の微細凹凸形状104の一部または全部を覆うように無機物粒子により構成された無機物粒子層107を形成する工程(以下、無機物粒子層形成工程とも呼ぶ。)
(工程3)無機物粒子層107を形成した金属部材103を金型内に配置し、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を上記金型内に射出することにより、無機物粒子層107を介して金属部材103に樹脂部材105を接合する工程(以下、射出成形工程とも呼ぶ。)
以下、具体的に説明する。なお、表面110に微細凹凸形状104を有する金属部材103を準備する工程は前述したため、ここでは説明を省略する。
金属部材103の微細凹凸形状104の形成領域上に無機物粒子層107を形成する方法は特に限定されないが、例えば、微細凹凸形状104の形成領域上に無機物粒子分散液を塗工することによって形成することができる。シリカ粒子、酸化スズ粒子、ナノダイヤ粒子、ジルコニア粒子、酸化ニオブ粒子、酸化鉄粒子、アルミナ粒子、カーボンナノファイバー等に代表される無機物粒子の平均粒子径(一次粒子)は好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは1nm以上70nm以下、さらに好ましくは1nm以上50nm以下、さらにより好ましくは1nm以上30nm以下、特に好ましくは1nm超え20nm未満のナノ粒子であり、一次粒子が数個〜数百個凝集した二次粒子構造となっていてもよい。このような無機物微粒子は、固相法、液相法、および気相法によって調製可能であるが、小粒径化能の視点からは液相法、気相法(火炎処理を含む)が好ましい。なお、後述する実施例では、テトラメチルオルソシリケートを原料に用いた液相法を採用している。
分散液中の溶媒としては、水、メタノール、エタノール等を例示できるが、分散液中の無機物粒子の分散性と塗布後の溶媒留去効率の視点からメタノールおよび水が好ましい。
射出工程は具体的には、工程2まで終了した金属部材103を射出成形金型のキャビティ部にインサートし、樹脂組成物(P)を無機物粒子層107と接するように金型に射出する射出成形法によって樹脂部材105を成形し、金属/樹脂複合構造体106を製造する工程である。
具体的には、まず、射出成形用の金型を用意し、その金型を開いてその一部に工程2を終了した後の金属部材103を設置する。その後、金型を閉じ、樹脂組成物(P)の少なくとも一部が金属部材103の表面110に形成された無機物粒子層107と接するように、上記金型内に樹脂組成物(P)を射出して固化する。その後、金型を開き離型することにより、金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
さらに、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、高い気密性、水密性が発現するので、これらの特性に応じた用途に好適に用いられる。
以下、実施形態の例を付記する。
[1]
金属部材と、
上記金属部材に接合し、かつ、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された樹脂部材と、
上記金属部材と上記樹脂部材との間に設けられ、かつ、無機物粒子により構成された無機物粒子層と、
を備え、
上記金属部材は少なくとも上記樹脂部材との接合部表面に微細凹凸形状を有し、
上記無機物粒子層は上記金属部材の上記微細凹凸形状の一部または全部を覆うように形成されており、
上記金属部材と上記樹脂部材とは上記無機物粒子層を介して接合している金属/樹脂複合構造体。
[2]
上記[1]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記無機物粒子層はシリカ粒子を含む金属/樹脂複合構造体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記無機物粒子層の平均厚みが1nm以上400nm以下である金属/樹脂複合構造体。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記無機物粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下である金属/樹脂複合構造体。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記微細凹凸形状の凸部と凹部の高低差の平均値が10nm以上200μm以下である金属/樹脂複合構造体。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記熱可塑性樹脂が非晶性熱可塑性樹脂を含む金属/樹脂複合構造体。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
上記金属部材が鉄系金属、アルミニウム系金属、マグネシウム系金属、銅系金属およびチタン系金属から選ばれる一種または二種以上の金属を含む金属/樹脂複合構造体。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
表面に微細凹凸形状を有する金属部材を準備する工程と、
上記金属部材の上記微細凹凸形状の一部または全部を覆うように無機物粒子により構成された無機物粒子層を形成する工程と、
上記無機物粒子層を形成した上記金属部材を金型内に配置し、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を上記金型内に射出することにより、上記無機物粒子層を介して上記金属部材に樹脂部材を接合する工程と、
を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[9]
上記[8]に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
上記無機物粒子層は無機物粒子分散液を用いて形成する金属/樹脂複合構造体。
(表面粗化工程)
JIS H4000に規定された合金番号5052のアルミニウム合金板(45mm×18mm×2mm)を脱脂処理した。次いで、硫酸8.2質量%、塩化第二鉄7.8質量%、塩化第二銅0.4質量%が溶解した水溶液(30℃)中に80秒間浸漬し、揺動させることによってエッチングした。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、乾燥させることにより表面処理済みアルミニウム合金板を得た。
なお、表面粗さ測定条件は以下のとおりである。
・触針先端半径:5μm
・基準長さ:0.8mm
・評価長さ:4mm
・測定速度:0.06mm/sec
特開2013−82584号公報の実施例1に記載された方法に忠実に準拠してテトラメチルオルソシリケートの加水分解反応と、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液との処理を実施し、シリカナノ粒子の水/MeOH(重量比1/9)分散液を調製した。得られたシリカナノ粒子の平均一次粒子径は20nmであった。
上記の表面粗化工程で得られた表面粗化アルミニウム合金板を、上記シリカナノ粒子分散液をメタノールで6倍希釈した分散液中に室温で5分間浸漬し、その後、100℃で20分間乾燥させることによって、微細凹凸形状を覆うようにシリカナノ粒子層が形成された表面処理済みアルミニウム合金板を作製した。
上記の表面粗化工程およびシリカ粒子層形成工程を経て得られた、シリカナノ粒子層が形成された表面処理済みアルミニウム合金板を、日本製鋼所製の射出成形機J55−ADに装着された小型ダンベル金属インサート金型内に設置した。次いで、その金型内に樹脂組成物(P)として、サビックイノベーティブプラスチックス社製の変性ポリフェニレンエーテル(ノリルCN1134;ガラス繊維20質量%含有)を、シリンダー温度(樹脂温度)280℃、金型温度100℃、射出一次圧125〜135MPa、保圧110MPaの条件にて射出成形し、シリカナノ粒子層が形成された表面処理済みアルミニウム合金板に樹脂部材を射出接合させることによって金属/樹脂複合構造体を得た。
射出成形工程における金型としてヒート&クール成形が可能な金型(山下電気製Y−HeaT装置)を用い、金型温度を100℃から120℃に変更してヒート&クール成形を行った以外は実施例1と同様にして金属/樹脂複合構造体を作製し、接合強度の評価をおこなった。接合強度は26(MPa)であった。破壊面は界面破壊と母材破壊が混在するものであった。
射出成形工程における金型としてヒート&クール成形が可能な金型(山下電気製Y−HeaT装置)を用い、金型温度を100℃から140℃に変更してヒート&クール成形を行った以外は実施例1と同様にして金属/樹脂複合構造体を作製し、接合強度の評価をおこなった。接合強度は32(MPa)であった。破壊面は母材破壊であった。
シリカ粒子層を形成しない以外は実施例2と同様にして金属/樹脂複合構造体を作製し、接合強度の評価をおこなった。接合強度は16(MPa)であった。破壊面は界面破壊と母材破壊が混在するものであった。
104 微細凹凸形状
105 樹脂部材
106 金属/樹脂複合構造体
107 無機物粒子層
110 表面
Claims (9)
- 金属部材と、
前記金属部材に接合し、かつ、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物により構成された樹脂部材と、
前記金属部材と前記樹脂部材との間に設けられ、かつ、無機物粒子のみからなる無機物粒子層と、
から構成され、
前記無機物粒子は、シリカ粒子、酸化スズ粒子、ナノダイヤ粒子、ジルコニア粒子、酸化ニオブ粒子、酸化鉄粒子、アルミナ粒子、カーボンナノファイバーから選択される少なくとも1つであり、
前記金属部材は少なくとも前記樹脂部材との接合部表面に微細凹凸形状を有し、
前記無機物粒子層は前記金属部材の前記微細凹凸形状に追随する形で、前記微細凹凸形状の一部または全部を覆うように形成されており、
前記金属部材と前記樹脂部材とは前記無機物粒子層を介して接合しており、前記微細凹凸形状の凹部には、前記無機物粒子層を介して前記樹脂部材が侵入している金属/樹脂複合構造体。 - 請求項1に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記無機物粒子層はシリカ粒子を含む金属/樹脂複合構造体。 - 請求項1または2に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記無機物粒子層の平均厚みが1nm以上400nm以下である金属/樹脂複合構造体。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記無機物粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下である金属/樹脂複合構造体。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記微細凹凸形状の凸部と凹部の高低差の平均値が10nm以上200μm以下である金属/樹脂複合構造体。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記熱可塑性樹脂が非晶性熱可塑性樹脂を含む金属/樹脂複合構造体。 - 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記金属部材が鉄系金属、アルミニウム系金属、マグネシウム系金属、銅系金属およびチタン系金属から選ばれる一種または二種以上の金属を含む金属/樹脂複合構造体。 - 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
表面に微細凹凸形状を有する金属部材を準備する工程と、
前記金属部材の前記微細凹凸形状に追随する形で、前記微細凹凸形状の一部または全部を覆うように無機物粒子のみからなる無機物粒子層を、無機物粒子分散液を用いて形成する工程であって、前記無機物粒子は、シリカ粒子、酸化スズ粒子、ナノダイヤ粒子、ジルコニア粒子、酸化ニオブ粒子、酸化鉄粒子、アルミナ粒子、カーボンナノファイバーから選択される少なくとも1つである工程と、
前記無機物粒子層を形成した前記金属部材を金型内に配置し、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を前記金型内に射出することにより、前記無機物粒子層を介して前記金属部材に樹脂部材を接合する工程であって、前記微細凹凸形状の凹部には、前記無機物粒子層を介して前記樹脂部材が侵入している、工程と、
を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。 - 請求項8に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法において、
前記無機物粒子層は無機物粒子分散液を用いて形成する金属/樹脂複合構造体。
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