JP6482417B2 - 金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法 - Google Patents

金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法 Download PDF

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本発明は、金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法に関する。
自動車部品や電子機器部品において、軽量化や意匠性向上、組立工数削減といった需要が高まっている。その中で、金属と樹脂を、接着剤や機械締結無しで接合できる、金属樹脂一体化技術が研究されている。
近年、金属成形体と樹脂成形体を接合一体化する技術として、金属部材の表面に微細な凹凸を形成させたものに、その金属部材と親和性を有する極性基を持つエンジニアリングプラスチックを接合させることが検討されている(例えば、特許文献1〜5等)。
例えば、特許文献1〜3には、アルミニウム合金をヒドラジン水溶液で浸漬処理することによって、その表面に30〜300nm径の凹部を形成した後、該処理面にポリブチレンテレフタレート樹脂(以下「PBT」という。)、またはポリフェニレンスルィド樹脂(以下「PPS」という。)を接合させる技術が開示されている。
また、特許文献4には、アルミニウム素材を燐酸または水酸化ナトリウムの電解浴で陽極酸化処理することにより、アルミニウム素材の表面に直径が25nm以上である凹部を有する陽極酸化皮膜を形成した後、該処理面にエンジニアリングプラスチックを接合させる技術が開示されている。
さらに、特許文献5には、アルミニウム合金に対し、特定のエッチング剤により微細な凹凸もしくは孔を形成し、その孔にポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、PPSを射出接合させる技術が開示されている。
一方で、非晶性樹脂と金属との接合に関する技術は結晶性樹脂の場合に比べてはるかに少なく、非晶性樹脂を効率よく接合して高い強度を発現させることは現在のところ難しいとされている。特にポリカーボネートにおいては、透明性、成形性、着色性、機械的特性、表面光沢性の観点から、特にスマートフォンなどの意匠部品において需要が高く、特にアルミニウム等の金属との接合に関する需要もますます高まってきている。
特開2004−216425号公報 特開2009−6721号公報 国際公開第2003/064150号パンフレット 国際公開第2004/055248号パンフレット 特開2013−52671号公報
本発明者らの検討によれば、特許文献1〜5に開示されているような方法で得られた金属/樹脂複合構造体においては、樹脂部材が非晶性樹脂である場合、十分な接合強度を確保することが出来ないことが分ってきた。
そこで、本発明者らは、非晶性樹脂であるポリカーボネート樹脂により構成された樹脂部材(以下、ポリカーボネート樹脂部材とも呼ぶ。)の物理的諸特性や成形条件と、得られる金属/樹脂複合構造体の接合強度との関係について鋭意検討した。最初に本発明者らは、成形時の金型の温度を上げれば、ポリカーボネート樹脂部材であっても、得られる金属/樹脂複合構造体の接合強度が高くなる傾向にあることを見出した。しかし、一般的には成形時の金型の温度を上げることは、接合強度が改善されるものの、成形サイクルの遅延化を招く方向になり、生産性の面でも問題になる場合がある。
つまり、従来の金属/非晶性樹脂複合構造体は、接合強度と生産性との間にトレードオフの関係が存在し、そのトレードオフの関係は成形条件の変更のみでは改善できなかったのである。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ポリカーボネート樹脂部材の物理的性質を特定の範囲内に制御することによって、成形温度を過度に上げなくても金属部材と樹脂部材とを直接接合することができ、生産性と接合強度とのバランスに優れた金属/樹脂複合構造体を提供するものである。
本発明者らは、金属部材と、ポリカーボネート樹脂部材との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を安定的に、かつ、効率よく得るために、樹脂部材の諸特性と接合強度との関係を検討した。その結果、特定の要件を満たすポリカーボネート樹脂部材を用いることにより、上記トレードオフの関係を改善でき、幅広い成形条件で、接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体を安定的に、かつ、効率よく得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明によれば、以下に示す金属/樹脂複合構造体および金属/樹脂複合構造体の製造方法が提供される。
[1]
微細凹凸表面を有する金属部材と、ポリカーボネート樹脂組成物(C)により構成された樹脂部材と、が接合してなる金属/樹脂複合構造体であって、
上記ポリカーボネート樹脂組成物(C)は、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)が20,000以上60,000以下の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上15.0以下の範囲にあるポリカーボネート樹脂(A)、および
GPCにより測定される重量平均分子量(Mw)が500以上5,000以下の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上5.0以下の範囲にあるポリカーボネートオリゴマー(B)を含み、
上記ポリカーボネートオリゴマー(B)に対する上記ポリカーボネート樹脂(A)の質量比((A)/(B))が90/10以上99/1以下である金属/樹脂複合構造体。
[2]
上記金属部材の上記微細凹凸表面には間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立している、上記[1]に記載の金属/樹脂複合構造体。
[3]
上記樹脂部材がさらに充填材(D)を含み、
上記樹脂部材中の上記充填材(D)の含有量が5質量%以上50質量%以下である、上記[1]または[2]に記載の金属/樹脂複合構造体。
[4]
上記充填材(D)がガラス繊維を含む、上記[3]に記載の金属/樹脂複合構造体。
[5]
上記金属部材がアルミニウムおよびアルミニウム合金から選択される一種または二種以上の金属材料を含む、上記[1]乃至[4]いずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体。
[6]
上記金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たす、上記[1]乃至[5]いずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体。
(1)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を1直線部以上含む
(2)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が2μmを超える
[7]
上記金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(3)をさらに満たす、上記[6]に記載の金属/樹脂複合構造体。
(3)切断レベル40%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が60%以下である直線部を1直線部以上含む
[8]
上記金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、すべての直線部の上記十点平均粗さ(Rz)が5μmを超える、上記[6]または[7]に記載の金属/樹脂複合構造体。
[9]
上記金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、すべての直線部の上記十点平均粗さ(Rz)が15μm以上である、上記[8]に記載の金属/樹脂複合構造体。
[10]
上記[1]乃至[9]いずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
金型のキャビティ部に、微細凹凸表面を有する上記金属部材を配置する工程と、
上記キャビティ部に上記樹脂部材を射出することにより上記金属部材と上記樹脂部材とを接合する工程と、
を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
本発明によれば、金属部材と樹脂部材とを直接接合することができ、生産性と接合強度とのバランスに優れた金属/樹脂複合構造体を提供することができる。
本実施形態の金属/樹脂複合構造体の構造の一例を模式的に示した外観図である。 本実施形態の金属/樹脂複合構造体を製造する過程の一例を模式的に示した構成図である。 本実施形態に係る金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部の測定箇所を説明するための模式図である。 本実施形態に係る金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部の測定箇所を説明するための模式図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、文中の数字の間にある「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
[金属/樹脂複合構造体]
まず、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106について説明する。
図1は、本実施形態の金属/樹脂複合構造体106の構造の一例を模式的に示した外観図である。金属/樹脂複合構造体106は、金属部材103と、樹脂部材105とが接合されており、金属部材103と樹脂部材105とを接合することにより得られる。
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、ポリカーボネート樹脂組成物(C)により構成された樹脂部材105が、金属部材103の表面110に形成された微細凹凸に進入して金属とポリカーボネート樹脂組成物(C)が接合し、金属―樹脂界面を形成することにより得られる。
ここで、本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物(C)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)が20,000以上60,000以下の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上15.0以下の範囲にあるポリカーボネート樹脂(A)と、GPCにより測定される重量平均分子量(Mw)が500以上5,000以下の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上5.0以下の範囲にあるポリカーボネートオリゴマー(B)と、を含む。そして、ポリカーボネートオリゴマー(B)に対するポリカーボネート樹脂(A)の質量比((A)/(B))が90/10以上99/1以下である。
金属部材103の表面110には、金属部材103と樹脂部材105との間の接合強度向上に適した凹凸形状が形成されているため、接着剤を使用せずに金属部材103と樹脂部材105との間の接合性確保が可能となる。
具体的には金属部材103の表面110の上記微細凹凸形状の中に樹脂部材105が進入することによって、金属部材103と樹脂部材105との間に物理的な抵抗力(アンカー効果)が効果的に発現し、通常では接合が困難な金属部材103と樹脂部材105とを強固に接合することが可能になる。
このようにして得られた金属/樹脂複合構造体106は、金属部材103と樹脂部材105の界面への水分や湿気の浸入を防ぐこともできる。つまり、金属/樹脂複合構造体106の付着界面における気密性や水密性を向上させることもできる。
本発明者らは、本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物(C)により構成された樹脂部材105を用いると、成形時の金型の温度を下げて、成形サイクルを向上させたとしても、得られる金属/樹脂複合構造体について、高い接合強度が維持できることを新たに知見した。
すなわち、本実施形態によれば、ポリカーボネート樹脂組成物(C)により構成された樹脂部材105を用いることにより、金属部材103と樹脂部材105とを直接接合することができ、生産性と接合強度とのバランスに優れた金属/樹脂複合構造体106を実現できる。
このような金属/樹脂複合構造体106が生産性と接合強度とのバランスに優れる理由は必ずしも明らかではないが、上記のポリカーボネート樹脂組成物(C)により構成された樹脂部材105は、金型温度を低下させたとしても、金属部材103の微細凹凸形状の凹部への進入性、金属部材103との密着性、および成形後の機械的強度とのバランスに優れているからだと考えられる。
以下、金属/樹脂複合構造体106を構成する各部材について説明する。
<金属部材>
以下、本実施形態に係る金属部材103について説明する。
本実施形態に係る金属部材103は微細凹凸表面を有する。上記微細凹凸表面は、金属部材103と樹脂部材105とをより一層強固に接合する観点から、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立しているものであることが好ましい。
上記微細凹凸表面の間隔周期は凸部から隣接する凸部までの距離の平均値であり、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真から求めることができる。
具体的には、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡により、金属部材103の表面110を撮影する。その写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定する。凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とする。
凸部の間隔周期は、好ましくは10nm以上300μm以下、より好ましくは20nm以上200μm以下である。
凸部の間隔周期が上記下限値以上であると、上記微細凹凸表面の凹部に樹脂部材105が十分に進入することができ、金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより向上させることができる。また、凸部の間隔周期が上記上限値以下であると、得られる金属/樹脂複合構造体106の金属―樹脂界面に隙間が生じるのを抑制できる。その結果、金属―樹脂界面の隙間から水分等の不純物が浸入することを抑制できるため、金属/樹脂複合構造体106を高温、高湿下で用いた際、強度が低下することを抑制できる。
上記間隔周期を有する微細凹凸表面を形成する方法としては、NaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO等の無機酸水溶液に金属部材を浸漬する方法、陽極酸化法により金属部材を処理する方法、国際公開第2009/31632号パンフレットに開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、及び水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に金属部材を浸漬する方法などが挙げられる。これらの方法は、使用する金属部材103の金属種類や、上記間隔周期の範囲内において形成する凹凸形状によって使い分けることが可能である。
本実施形態に係る金属部材103は、金属部材103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たすことが好ましい。
(1)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を1直線部以上含む
(2)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が2μmを超える
図3は、金属部材103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部を説明するための模式図である。
上記6直線部は、例えば、図3に示すような6直線部B1〜B6を選択することができる。まず、基準線として、金属部材103の接合部表面104の中心部Aを通る中心線B1を選択する。次いで、中心線B1と平行関係にある直線B2およびB3を選択する。次いで、中心線B1と直交する中心線B4を選択し、中心線B1と直交し、中心線B4と並行関係にある直線B5およびB6を選択する。ここで、各直線間の垂直距離D1〜D4は、例えば、2〜5mmである。
なお、通常、金属部材の表面110中の接合部表面104だけでなく、金属部材の表面110全体に対し、表面粗化処理が施されているため、例えば、図4に示すように、金属部材103の接合部表面104と同一面で、接合部表面104以外の箇所から6直線部を選択してもよい。
上記要件(1)および(2)を同時に満たすと、接合強度により一層優れた金属/樹脂複合構造体106が得られる理由は必ずしも明らかではないが、金属部材103の接合部表面104が、金属部材103と樹脂部材105との間のアンカー効果が効果的に発現できる構造になっているためと考えられる。
金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1A)〜(1C)のうち1つ以上の要件をさらに満たすことが好ましく、要件(1C)を満たすことがとりわけ好ましい。なお、要件(1C)の一部は上述した要件(3)と同一である。
(1A)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を好ましくは2直線部以上、より好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
(1B)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が20%以下である直線部を好ましくは1直線部以上、より好ましくは2直線部以上、さらに好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
(1C)切断レベル40%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が60%以下である直線部を好ましくは1直線部以上、より好ましくは2直線部以上、さらに好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
また、金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材103の表面110上の、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)の平均値が好ましくは0.1%以上40%以下であり、より好ましくは0.5%以上30%以下であり、さらに好ましくは1%以上20%以下であり、最も好ましくは2%以上15%以下である。
なお、上記負荷長さ率(Rmr)の平均値は、前述の任意の6直線部の負荷長さ率(Rmr)を平均したものを採用することができる。
本実施形態に係る金属部材103の表面110の各負荷長さ率(Rmr)は、金属部材103の表面に対する粗化処理の条件を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、とくにエッチング剤の種類および濃度、粗化処理の温度および時間、エッチング処理のタイミング等が、上記各負荷長さ率(Rmr)を制御するための因子として挙げられる。
金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(2A)をさらに満たすことが好ましい。
(2A)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が好ましくは5μm超、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である
金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材103の表面110上の、十点平均粗さ(Rz)の平均値が好ましくは2μmを超えて50μm以下、より好ましくは5μmを超えて45μm以下、さらに好ましくは10μm以上40μm以下、特に好ましくは15μm以上30μm以下である。
なお、上記十点平均粗さ(Rz)の平均値は、前述の任意の6直線部の十点平均粗さ(Rz)を平均したものを採用することができる。
金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(4)をさらに満たすことが好ましい。
(4)すべての直線部の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μmを超え300μm未満であり、より好ましくは20μm以上200μm以下である
金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材103の表面110上の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が好ましくは10μmを超え300μm未満、より好ましくは20μm以上200μm以下である。
なお、上記粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値は、前述の任意の6直線部のRSmを平均したものを採用することができる。
本実施形態に係る金属部材103の表面110の十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、金属部材103の表面110に対する粗化処理の条件を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、とくに粗化処理の温度および時間、エッチング量等が、上記十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を制御するための因子として挙げられる。
金属部材103を構成する金属材料は特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅および銅合金等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、軽量かつ高強度の点から、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。
アルミニウム合金としては、JIS H4000に規定された合金番号1050、1100、2014、2024、3003、5052、6061、6063、7075等が好ましく用いられる。
金属部材103の形状は、樹脂部材105と接合できる形状であれば特に限定されず、例えば、平板状、曲板状、棒状、筒状、塊状等とすることができる。また、これらの組み合わせからなる構造体であってもよい。
また、樹脂部材105と接合する接合部表面104の形状は、特に限定されないが、平面、曲面等が挙げられる。
金属部材103は、金属材料を切断、プレス等による塑性加工、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工等の除肉加工によって上述した所定の形状に加工された後に、後述する粗化処理がなされたものが好ましい。要するに、種々の加工法により、必要な形状に加工されたものを用いることが好ましい。
必要な形状に加工された金属部材103は、樹脂部材105と接合する面が酸化や水酸化されていないことが好ましく、長期間の自然放置で表面に酸化皮膜である錆の存在が明らかなものは研磨、化学処理等でこれを取り除くことが好ましい。
次に、上記要件(1)〜(4)、(1A)〜(1C)、(2A)等を満たす金属部材103の調製方法について説明する。
このような金属部材103は、例えば、エッチング剤を用いて粗化処理することにより形成することができる。
ここで、エッチング剤を用いて金属部材の表面を粗化処理すること自体は従来技術においても行われてきた。しかし、本実施形態では、エッチング剤の種類および濃度、粗化処理の温度および時間、エッチング処理のタイミング、等の因子を高度に制御している。上記要件(1)〜(4)、(1A)〜(1C)、(2A)等を満たす金属部材103を得るためには、これらの因子を高度に制御することが重要となる。
以下、上記要件(1)〜(4)、(1A)〜(1C)、(2A)等を満たす金属部材103を得るための金属部材表面の粗化処理方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る金属部材表面の粗化処理方法は、以下の例に限定されない。
(1)前処理工程
まず、金属部材103は、樹脂部材105との接合側の表面に酸化膜や水酸化物等からなる厚い被膜がないことが望ましい。このような厚い被膜を除去するため、次のエッチング剤で処理する工程の前に、サンドブラスト加工、ショットブラスト加工、研削加工、バレル加工等の機械研磨や、化学研磨により表面層を研磨してもよい。また、樹脂部材105との接合側の表面に機械油等の著しい汚染がある場合は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液による処理や、脱脂を行なうことが好ましい。
(2)表面粗化処理工程
本実施形態において金属部材の表面粗化処理方法としては、後述する酸系エッチング剤による処理を特定のタイミングで行うことが好ましい。具体的には、該酸系エッチング剤による処理を表面粗化処理工程の最終段階で行うことが好ましい。
なお、上述した特許文献5には、アルミニウムを含む金属材料からなる金属部材の表面粗化処理に用いるエッチング剤として、アルカリ系エッチング剤を用いる態様、アルカリ系エッチング剤と酸系エッチング剤を併用する態様、酸系エッチング剤で処理した後アルカリ系溶液で洗浄する態様が開示されている。
当該アルカリ系エッチング剤は、金属部材との反応が穏やかなため、作業性の観点からは好ましく用いられる。しかし、本発明者らの検討によれば、このようなアルカリ系エッチング剤は反応性が穏やかであるため、金属部材表面の粗化処理の度合いが弱く、深い凹凸形状を形成するのが困難であることが明らかになった。また、酸系エッチング剤処理を行った後アルカリ系エッチング剤やアルカリ系溶液を併用する場合には、酸系エッチング剤によって形成した深い凹凸形状を後のアルカリ系エッチング剤やアルカリ系溶液での処理により該凹凸形状を幾分か滑らかにしてしまうことが明らかになった。
上記酸系エッチング剤を用いて粗化処理する方法としては、浸漬、スプレー等による処理方法が挙げられる。処理温度は20〜40℃が好ましく、処理時間は5〜350秒程度が好ましく、金属部材表面をより均一に粗化できる観点から、20〜300秒がより好ましく、50〜300秒が特に好ましい。
上記酸系エッチング剤を用いた粗化処理によって、金属部材103の表面が凹凸形状に粗化される。上記酸系エッチング剤を用いた際の金属部材103の深さ方向のエッチング量(溶解量)は、溶解した金属部材103の質量、比重および表面積から算出した場合、0.1〜500μmであることが好ましく、5〜500μmであることがより好ましく、5〜100μmであることが更に好ましい。エッチング量が上記下限値以上であれば、金属部材103と樹脂部材105との間の接合強度をより向上させることができる。また、エッチング量が上記上限値以下であれば、処理コストの低減が可能となる。エッチング量は、処理温度や処理時間等により調整できる。
なお、本実施形態では、上記酸系エッチング剤を用いて金属部材を粗化処理する際、金属部材表面の全面を粗化処理してもよく、樹脂部材105が接合される面だけを部分的に粗化処理してもよい。
(3)後処理工程
本実施形態では、上記表面粗化処理工程の後、通常、水洗および乾燥を行うことが好ましい。水洗の方法については特に制限はないが浸漬または流水にて所定時間洗浄することが好ましい。
さらに、後処理工程としては、上記酸系エッチング剤を用いた処理により生じたスマット等を除去するため、超音波洗浄を施すことが好ましい。超音波洗浄の条件は、生じたスマット等を除去することができる条件であれば特に限定されないが、用いる溶媒としては水が好ましく、また、処理時間としては、好ましくは1〜20分間である。
(酸系エッチング剤)
本実施形態において、金属部材表面の粗化処理に用いられるエッチング剤としては、後述する特定の酸系エッチング剤が好ましい。上記特定のエッチング剤で処理することにより、金属部材の表面に、樹脂部材との間の密着性向上に適した凹凸形状が形成され、そのアンカー効果により金属部材103と樹脂部材105との間の接合強度がより一層向上するものと考えられる。
以下、本実施形態で使用できる酸系エッチング剤の成分について説明する。
上記酸系エッチング剤は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの少なくとも一方と、酸と、を含み、必要に応じて、マンガンイオン、各種添加剤等を含むことができる。
・第二鉄イオン
上記第二鉄イオンは、金属部材を酸化する成分であり、第二鉄イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二鉄イオンを含有させることができる。上記第二鉄イオン源としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄等が挙げられる。上記第二鉄イオン源のうちでは、塩化第二鉄が溶解性に優れ、安価であるという点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記第二鉄イオンの含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜12質量%、さらに好ましくは0.5〜7質量%、さらにより好ましくは1〜6質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。上記第二鉄イオンの含有量が上記下限値以上であれば、金属部材の粗化速度(溶解速度)の低下を防ぐことができる。一方、上記第二鉄イオンの含有量が上記上限値以下であれば、粗化速度を適正に維持することができるため、金属部材103と樹脂部材105との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になる。
・第二銅イオン
上記第二銅イオンは金属部材を酸化する成分であり、第二銅イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二銅イオン含有させることができる。上記第二銅イオン源としては、硫酸第二銅、塩化第二銅、硝酸第二銅、水酸化第二銅等が挙げられる。上記第二銅イオン源のうちでは、硫酸第二銅、塩化第二銅が安価であるという点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記第二銅イオンの含有量は、0.001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜7質量%、さらに好ましくは0.05〜1質量%、さらにより好ましくは0.1〜0.8質量%、さらにより好ましくは0.15〜0.7質量%、特に好ましくは0.15〜0.4質量%である。上記第二銅イオンの含有量が上記下限値以上であれば、金属部材の粗化速度(溶解速度)の低下を防ぐことができる。一方、上記第二銅イオンの含有量が上記上限値以下であれば、粗化速度を適正に維持することができるため、金属部材103と樹脂部材105との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になる。
上記酸系エッチング剤は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの一方のみを含むものであってもよく、両方を含むものであってもよいが、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含むことが好ましい。酸系エッチング剤が第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含むことで、金属部材103と樹脂部材105との間の接合強度向上により適した良好な粗化形状が容易に得られる。
上記酸系エッチング剤が、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含む場合、第二鉄イオンおよび第二銅イオンのそれぞれの含有量が、上記範囲であることが好ましい。また、酸系エッチング剤中の第二鉄イオンと第二銅イオンの含有量の合計は、0.011〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。
・マンガンイオン
上記酸系エッチング剤には、金属部材表面をむらなく一様に粗化するために、マンガンイオンが含まれていてもよい。マンガンイオンは、マンガンイオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該マンガンイオンを含有させることができる。上記マンガンイオン源としては、硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガン、フッ化マンガン、硝酸マンガン等が挙げられる。上記マンガンイオン源のうちでは、硫酸マンガン、塩化マンガンが安価である等の点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記マンガンイオンの含有量は、0〜1質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜0.5質量%である。
・酸
上記酸は、第二鉄イオンおよび/または第二銅イオンにより酸化された金属を溶解させる成分である。上記酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸や、スルホン酸、カルボン酸等の有機酸が挙げられる。上記カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸等が挙げられる。上記酸系エッチング剤には、これらの酸を一種または二種以上配合することができる。上記無機酸のうちでは、臭気がほとんどなく、安価である点から硫酸が好ましい。また、上記有機酸のうちでは、粗化形状の均一性の観点から、カルボン酸が好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記酸の含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜50質量%であることがより好ましく、1〜50質量%であることがさらに好ましく、1〜30質量%であることがさらにより好ましく、1〜25質量%であることがさらにより好ましく、2〜18質量%であることがさらにより好ましい。上記酸の含有量が上記下限値以上であれば、金属の粗化速度(溶解速度)の低下を防止できる。一方、上記酸の含有量が上記上限値以下であれば、液温が低下した際の金属塩の結晶析出を防止できるため、作業性を向上できる。
・他の成分
本実施形態において使用できる酸系エッチング剤には、指紋等の表面汚染物による粗化のむらを防ぐために界面活性剤を添加してもよく、必要に応じて他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、深い凹凸を形成するために添加されるハロゲン化物イオン源、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等を例示できる。あるいは、粗化処理速度を上げるために添加されるチオ硫酸イオン、チオ尿素等のチオ化合物や、より均一な粗化形状を得るために添加されるイミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等のアゾール類や、粗化反応を制御するために添加されるpH調整剤等も例示できる。これら他の成分を添加する場合、その合計含有量は、酸系エッチング剤中に0.01〜10質量%程度であることが好ましい。
本実施形態の酸系エッチング剤は、上記の各成分をイオン交換水等に溶解させることにより容易に調製することができる。
<樹脂部材>
以下、本実施形態に係る樹脂部材105について説明する。
本実施形態に係る樹脂部材105はポリカーボネート樹脂組成物(C)により構成される。
ここで、本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物(C)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)が20,000以上60,000以下の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上15.0以下の範囲にあるポリカーボネート樹脂(A)と、GPCにより測定される重量平均分子量(Mw)が500以上5,000以下の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上5.0以下の範囲にあるポリカーボネートオリゴマー(B)と、を含む。そして、ポリカーボネートオリゴマー(B)に対するポリカーボネート樹脂(A)の質量比((A)/(B))が90/10以上99/1以下である。
本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物(C)は、通常は、後述するポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネートオリゴマー(B)を、(質量比((A)/(B))で90/10以上99/1以下、好ましくは92/8以上98/2以下、より好ましくは93/7以上98/2以下の割合でブレンドすることによって得られる。
(ポリカーボネート樹脂(A))
本実施形態に係るポリカーボネート樹脂(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)が通常20,000以上60,000以下、好ましくは25,000以上60,000以下、より好ましくは30,000以上55,000以下の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が通常1.5以上15.0以下、好ましくは2.0以上15.0以下、より好ましくは2.1以上14.0以下、さらに好ましくは2.3以上12.5以下の範囲にある。
ポリカーボネート樹脂(A)を製造するための原料は、上記分子量特性を満たす限りは特に限定されないが、例えば、ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン、炭酸ジエステルまたはハロゲンホルメートとを反応させて得られるポリカーボネートを挙げることができる。
上記ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「ビスフェノールA」とも呼ぶ。)、テトラメチルビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができ、これらの中でもビスフェノールAが好ましい。また、ポリカーボネートは、必要に応じて、三官能以上のポリヒドロキシ化合物に誘導される構造単位の1種または2種以上を少量であれば有していてもよい。このようなポリカーボネート樹脂(A)としては、通常は市販品をそのまま用いる。
(ポリカーボネートオリゴマー(B))
本実施形態に係るポリカーボネートオリゴマー(B)は、GPCにより測定される重量平均分子量(Mw)が500以上5,000以下、好ましくは1,000以上4,000以下、より好ましくは2,000以上3,500以下の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上5.0以下、好ましくは1.0以上4.0以下、より好ましくは1.2以上3.0以下の範囲にある。
ポリカーボネートオリゴマー(B)を製造するための原料は、上記分子量特性を満たす限りは、特に制限されないが、通常はビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物とホスゲン、炭酸ジエステルまたはハロゲンホルメート等の化合物類を例示することができる。
特定の分子量範囲、分子量分布範囲にあるポリカーボネートオリゴマー(B)は、分子量調整剤を用いる公知の方法に基づき、あるいは処方のマイナーチェンジによって容易に調製することが可能である(例えば、特開平6−234842号公報、特開平7−173277号公報、特表2004−528403号公報など参照)。後述する実施例においては、特開平7−173277号に記載された実施例に基づいてポリカーボネートオリゴマー(B)を調製した。
樹脂部材105は、ポリカーボネート樹脂組成物(C)のみから構成されていてもよく、また後述する充填剤(D)を含んでいてもよい。充填剤(D)を含む場合は、ポリカーボネート樹脂組成物(C)の含有量は、樹脂部材105全体を100質量%としたとき、通常50質量%以上95質量%以下、好ましくは50質量%以上90質量%以下、より好ましくは60質量%以上90質量%以下である。
(充填材(D))
本実施形態において、樹脂部材105は、金属部材103と樹脂部材105との線膨張係数差の調整や樹脂部材105の機械的強度を向上させる観点から、充填材(D)をさらに含んでもよい。
充填材(D)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上であり、特に好ましくはガラス繊維である。
充填材(D)の形状は特に限定されず、繊維状、粒子状、板状等どのような形状であってもよい。
なお、樹脂部材105が充填材(D)を含む場合、その含有量は、樹脂部材105全体を100質量%としたとき、通常5質量%以上50質量%以下、好ましくは10質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
充填材(D)は、ポリカーボネート樹脂組成物(C)により構成された樹脂部材105の剛性を高める効果の他、樹脂部材105の線膨張係数を制御できる効果がある。特に、本実施形態の金属部材103と樹脂部材105との複合体の場合は、金属部材103と樹脂部材105との形状安定性の温度依存性が大きく異なることが多いので、大きな温度変化が起こると複合体に歪みが掛かりやすい。樹脂部材105が上記充填材(D)を含有することにより、この歪みを低減することができる。また、上記充填材(D)の含有量が上記範囲内であることにより、靱性の低減を抑制することができる。
本実施形態において、充填材(D)は繊維状無機充填材であることが好ましく、ガラス繊維、炭素繊維であることがより好ましく、ガラス繊維であることが特に好ましい。
これにより、樹脂部材105の剛性を高めながら、ガラス転移温度を低下させることが可能となり、成形時の金型の温度を下げたとしても、樹脂部材105の分子鎖の運動性が低下することを抑制できる。その結果、金属部材103の微細凹凸形状の凹部への樹脂部材105の進入性を維持することができ、金属部材103と樹脂部材105との接合強度の低下を抑制できる。さらに、成形後の樹脂部材105の収縮を抑制することができるため、上記微細凹凸形状の凹部内での金属部材103と樹脂部材105との接合をより強固なものとすることができる。
本実施形態において、樹脂部材105中の繊維状無機充填材の含有量は、樹脂部材105の成形性を維持しつつ接合強度を向上させる観点から、樹脂部材105全体を100質量%としたとき、好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上50質量%以下、特に好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
(その他の配合剤)
樹脂部材105には、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤を含んでもよい。
上記配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等、耐衝撃性改質剤が挙げられる。
(樹脂部材105の製造方法)
樹脂部材105の製造方法では、樹脂部材105を構成するポリカーボネート樹脂組成物(C)や充填材(D)の種類や含有量等の各因子を高度に制御することが特に重要となる。
例えば、前述したポリカーボネート樹脂組成物(C)、さらに必要に応じて充填材(D)、上記その他の配合剤を、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機等の混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより、樹脂部材105が得られる。
[金属/樹脂複合構造体の製造方法]
つづいて、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の製造方法について説明する。
金属/樹脂複合構造体106の製造方法は、以下の(i)〜(ii)の工程を含む。
(i)金型のキャビティ部に、微細凹凸表面を有する金属部材103を配置する工程
(ii)上記キャビティ部に樹脂部材105を射出することにより金属部材103と樹脂部材105とを接合する工程
以下、具体的に説明する。
まず、(i)金型を用意し、その金型を開いてそのキャビティ部(空間部)に金属部材103を配置する。(ii)その後、金型を閉じ、樹脂部材105の少なくとも一部が金属部材103の上記微細凹凸表面と接するように、上記金型の上記キャビティ部に樹脂部材105を射出して固化し、金属部材103と樹脂部材105とを接合する。その後、金型を開き離型することにより、金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。
ここで、上記(ii)の工程において、樹脂部材105の射出開始から保圧完了までの間、上記金型の表面温度は特に制限されない。後述する実施例で明らかになるように、本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物(C)により構成された樹脂部材105を用いる場合には、樹脂部材105のガラス転移温度(以下、Tgとも呼ぶ。)以下の金型表面温度であっても金属と十分な接合強度(母材破壊レベル)を示すことを特徴としている。もちろん金型の表面温度をTgより高めることを本願発明は何ら制限するものではなく、金型へのフィードエネルギーと成形時間が潤沢に確保されている場合において、より高い接合強度を得ようとする場合にはTg+(5以上100以下)℃以上の温度に維持することもできる。
なお、上記(ii)の工程において、上記金型の表面温度を、Tg以上の温度に設定した場合には、保圧完了後の冷却操作が好ましく採用される。これにより、金属/樹脂複合構造体106の成形サイクルを短縮できるため、金属/樹脂複合構造体106を効率よく得ることができる。
以上から、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の製造方法によれば、金属部材103と樹脂部材105との接合強度に優れた金属/樹脂複合構造体106を安定的に、かつ、より一層効率よく製造することができる。
また、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の製造方法が適用される成形方法としては、射出成形法、トランスファー成形法、圧縮成形法、反応射出成形法、ブロー成形法、熱成形法、プレス成形法などが挙げられる。これらの中でも射出成形法が好ましい。
[金属/樹脂複合構造体の用途]
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
さらに、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、高い気密性、水密性が発現するので、これらの特性に応じた用途に好適に用いられる。
例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等が挙げられる。
より具体的には、樹脂だけでは強度が足りない部分を金属がサポートする様にデザインされた次のような部品である。車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ラジエータ、オイルパン、ステアリングホイール、ECUボックス、電装部品等が挙げられる。また、建材や家具類として、ガラス窓枠、手すり、カーテンレール、たんす、引き出し、クローゼット、書棚、机、椅子等が挙げられる。また、精密電子部品類として、コネクタ、リレー、ギヤ等が挙げられる。また、輸送容器として、輸送コンテナ、スーツケース、トランク等が挙げられる。
また、金属部材103の高い熱伝導率と、樹脂部材105の断熱的性質とを組み合わせ、ヒートマネージメントを最適に設計する機器に使用される部品用途、例えば、各種家電にも用いることができる。具体的には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、スピーカー等の家電製品類、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット型PC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、電池等電子情報機器等が挙げられる。
これらについては、金属部材103の表面を粗化することによって表面積が増加するため、金属部材103と樹脂部材105との間の接触面積が増加し、接触界面の熱抵抗を低減させることができることに由来する。
その他の用途として、玩具、スポーツ用具、靴、サンダル、鞄、フォークやナイフ、スプーン、皿等の食器類、ボールペンやシャープペン、ファイル、バインダー等の文具類、フライパンや鍋、やかん、フライ返し、おたま、穴杓子、泡だて器、トング等の調理器具、リチウムイオン2次電池用部品、ロボット等が挙げられる。
以上、本発明の金属/樹脂複合構造体106の用途について述べたが、これらは本発明の用途の例示であり、上記以外の様々な用途に用いることもできる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
なお、図1、2および4は各実施例の共通の図として使用する。
図1は、金属部材103と樹脂部材105との金属/樹脂複合構造体106の構造の一例を模式的に示した外観図である。
図2は、金属部材103と樹脂部材105との金属/樹脂複合構造体106を製造する過程の一例を模式的に示した構成図である。具体的には所定形状に加工され、表面に微細凹凸面を有する接合部表面104が形成された金属部材103を金型102内に設置し、射出成形機101により、樹脂組成物をゲート/ランナー107を通して射出し、微細凹凸表面を有する金属部材103と一体化された金属/樹脂複合構造体106を製造する過程を模式的に示している。
(金属部材表面の、粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の測定)
表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用し、JIS B0601(対応ISO 4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。なお、測定条件は以下のとおりである。
・触針先端半径:5μm
・基準長さ:0.8mm
・評価長さ:4mm
・測定速度:0.06mm/sec
測定は、金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部についておこなった(図4参照)。なお、本実施例・比較例では、金属部材103の全面について粗化処理をおこなっているため、金属/樹脂複合構造体106の接合部表面104について粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の測定をおこなっても、図4に示す測定箇所と同様の評価結果が得られることが理解される。
(接合強度の評価方法および総合合否判定)
引っ張り試験機「モデル1323(アイコーエンジニヤリング社製)」を使用し、引張試験機に専用の治具を取り付け、室温(23℃)にて、チャック間距離60mm、引張速度10mm/minの条件にて測定をおこなった。破断荷重(N)を金属/樹脂接合部分の面積で除することにより接合強度(MPa)を得た。また、破断後の金属部材側の界面を観察し、界面積の10%以上に樹脂が残っていれば、母材破壊とし、それ以外は界面剥離と判断した。ただし、樹脂自体の機械物性が低下した場合、接合強度が低いにもかかわらず母材破壊となる場合が有る。そこで、接合強度が20MPa以上でかつ、母材破壊のものを○と判定し、それ以外は×と判定した。
(樹脂組成物の調製方法)
<ポリカーボネートオリゴマー(B)の調製方法>
ビスフェノールA8406g(36.87モル)と分子量調節剤としてのp−ターシャリブチルフェノール316.5g(2.11モル)、トリエチルアミン5.994g(0.05935モル)、苛性ソーダ4277g(106.93モル)、ソジウムハイドロサルファイト16.794gを57.06kgの水に溶解させて総重量69.94kgの水系混合物を調製した。この混合物とホスゲン、有機溶媒をそれぞれ129.56g/分、7.638g(0.07715モル)/分、127.37g/分で第一の槽型反応装置に導入した。この槽型反応装置から264.57g/分で反応混合物が排出される。滞留時間は20分とした。連続的に排出された反応混合物を、配管を用い第二の槽型反応装置に供給し、滞留時間40分で重合を行い、更に、反応混合物を第三の槽型反応装置に供給し、滞留時間40分で重合を行なった。第三の槽型反応装置から連続的に排出される反応混合物を、直ちに分液し、塩酸により中和した。得られた有機相を純水で電解質がなくなるまで洗浄した。この連続運転を9時間行い、得られた芳香族ポリカーボネートを含んだ有機溶媒溶液から有機溶媒を蒸発留去することにより、固体の芳香族ポリカーボネートを得た。得られた固体ポリカーボネートを粉砕機で粉砕したものをポリカーボネートオリゴマー(B1)とした。得られたPCオリゴマーの分子量を測定したところ、Mn=1,900、Mw=2,800、Mw/Mnは1.5であった。
<ポリカーボネート樹脂組成物(C)の調製方法>
ポリカーボネート樹脂(A)として、帝人社製パンライトL1225L(以下、ポリカーボネート樹脂(A1)と呼ぶ)を用いた。ポリカーボネート樹脂(A1)の、GPC測定における数平均分子量(Mn)は16,380、重量平均分子量(Mw)は39,110、Mw/Mnは2.4であった。ポリカーボネート樹脂(A1)に対して、上記の方法で得られたポリカーボネートオリゴマー(B1)を表1に示す割合でテクノベル社製二軸押出機KZW15TW(スクリュー径15mm、L/D=45)を用いて、300℃、300rpmにて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物(C)であるPC−1〜PC−4の樹脂ペレットをそれぞれ得た。
Figure 0006482417
(樹脂部材のDSC測定)
樹脂部材のDSC測定は、DSC装置(SII社製X−DSC7000)を用いて以下の方法でおこなった。
樹脂ペレットから5mgサンプルを切り出し、開始温度30℃、測定温度範囲30〜200℃、昇温速度10℃/min、降温速度10℃/min、窒素雰囲気の条件下でDSC測定をおこなった。ここで、ガラス転移温度は、上記DSC測定において、2ndRunのガラス転移温度(Tg)を採用した。各樹脂部材のTgを表2にまとめた。
(GPC測定)
ポリカーボネート樹脂(A)およびポリカーボネートオリゴマー(B)についてのGPC測定(分子量測定)は以下の方法でおこなった。
3.0mgのサンプルにクロロホルムを3.0ml加えて十分溶解し、0.45μmの親水性PTFEメンブランフィルターカートリッジ(Millex−LH;メルクミリポア)でろ過し、そのろ液を測定試料とした。GPC装置は、ポンプ、インジェクター、カラム及び検出器から構成され、ポンプの流速を1.0ml/分、カラム計内温度を40℃とし、測定溶液を10μlインジェクターより注入して測定を行った。溶媒にはクロロホルムを用いた。また、カラムにはPolyPore 7.5×300mm(ポリマーラボラトリー社製)を2本直列接続させた。検出器には486 紫外可視検出器(日本ウォーターズ社製)を用いた。
試料の解析にあたっては、単分散ポリスチレン(以下、PS)標準試料により作成した検量線を用いた。検量線はPSの分子量の対数値とPSのピーク検出時間(保持時間)をプロットし、3次式に回帰したものを用いた。検量線作成用の標準PS試料としては、単分散ポリスチレンPS−1(アジレントテクノロジー社)を使用した。
(金属部材の表面粗化処理)
[金属部材の調製方法]
JIS H4000に規定された合金番号5052のアルミニウム板(厚み:2.0mm)を、長さ45mm、幅18mmに切断した。このアルミニウム板を酸系エッチング剤(硫酸:8.2質量%、塩化第二鉄:7.8質量%(Fe3+:2.7質量%)、塩化第二銅:0.4質量%(Cu2+:0.2質量%)イオン交換水:残部)(30℃)中に80秒間浸漬し、揺動させることによってエッチングした。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材を得た。
得られた金属部材の間隔周期は、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製VK−X100)にて測定した。
また、得られた金属部材の表面粗さを、表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用して測定し、6直線部について、切断レベル10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%および80%における負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を求めた。このうち、切断レベル20%におけるRmr(20%)値、上記Rmr(20%)値が30%以下となる直線部の本数、切断レベル40%におけるRmr(40%)値、上記Rmr(40%)値が60%以下となる直線部の本数、6直線部のRz値、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)、エッチング処理前後の金属部材の質量比から求めたエッチング率を算出した。
得られた結果を以下に示す。
間隔周期[μm]:92
切断レベル20%におけるRmr(20%)値[%]:17.5、10.3、13.4、10.6、3.8、7.4
Rmr(20%)値が30%以下となる直線部の本数:6
切断レベル40%におけるRmr(40%)値[%]:43.6、26.1、48.0、46.7、33.5、34.2
Rmr(40%)値が60%以下となる直線部の本数:6
6直線部のRz値[μm]:17.8、18.1、19.6、17.8、17.2、18.0
6直線部のRSm値[μm]:104.0、83.0、85.6、98.7、106.6、103.1
エッチング率[質量%]:2.6
[実施例1]
日本製鋼所社製の射出成形機J85ADに小型ダンベル金属インサート金型102を装着し、金型102内に金属部材を設置した。金型102の表面温度は、あらかじめ、PC−1の樹脂ペレットのTgよりも10℃低い温度まで加熱した。
次いで、その金型102内に、PC―1の樹脂ペレットを用いて、シリンダー温度300℃、射出速度25mm/sec、保圧120MPa、保圧時間10秒の条件にて射出成形を行い、冷却を行うことで、金属/樹脂複合構造体106を得た。接合強度の評価結果を表2に示す。
[実施例2、比較例1〜2]
樹脂ペレットをそれぞれPC−2の樹脂ペレット、PC−3の樹脂ペレット、PC−4の樹脂ペレットとした以外は、実施例1に示す方法で金属/樹脂複合構造体106を得た。接合強度の評価結果を表2に示す。
Figure 0006482417
表2が示すように、実施例1〜2においては、金型温度がTg以下にも関わらず、非常に高い接合強度が得られ、破壊形態も母材破壊レベルの強度が得られていることが確認された。すなわち、実施例で得られた金属/樹脂複合構造体106は、金型温度を下げて成形しても高い接合強度を有しており、生産性と接合強度とのバランスに優れていた。
一方、比較例で得られた金属/樹脂複合構造体106は、金型温度を下げて成形すると、低い接合強度となり、生産性と接合強度とのバランスに劣っていた。
また、表2から明らかなように、ポリカーボネート樹脂(A)に、特定の分子量特性を有するポリカーボネートオリゴマー(B)が本発明で定義する量比で添加されたポリカーボネート樹脂組成物(C)により構成された樹脂部材は、樹脂部材のTg以下の金型温度であっても金属部材と十分な接合強度を示すことがわかった。
101 射出成形機
102 金型
103 金属部材
104 接合部表面
105 樹脂部材
106 金属/樹脂複合構造体
107 ゲート/ランナー
110 表面

Claims (10)

  1. 微細凹凸表面を有する金属部材と、ポリカーボネート樹脂組成物(C)により構成された樹脂部材と、が接合してなる金属/樹脂複合構造体であって、
    前記ポリカーボネート樹脂組成物(C)は、
    ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)が20,000以上60,000以下の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上15.0以下の範囲にあるポリカーボネート樹脂(A)、および
    GPCにより測定される重量平均分子量(Mw)が500以上5,000以下の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上5.0以下の範囲にあるポリカーボネートオリゴマー(B)を含み、
    前記ポリカーボネートオリゴマー(B)に対する前記ポリカーボネート樹脂(A)の質量比((A)/(B))が90/10以上99/1以下である金属/樹脂複合構造体。
  2. 前記金属部材の前記微細凹凸表面には間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立している、請求項1に記載の金属/樹脂複合構造体。
  3. 前記樹脂部材がさらに充填材(D)を含み、
    前記樹脂部材中の前記充填材(D)の含有量が5質量%以上50質量%以下である、請求項1または2に記載の金属/樹脂複合構造体。
  4. 前記充填材(D)がガラス繊維を含む、請求項3に記載の金属/樹脂複合構造体。
  5. 前記金属部材がアルミニウムおよびアルミニウム合金から選択される一種または二種以上の金属材料を含む、請求項1乃至4いずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
  6. 前記金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たす、請求項1乃至5いずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
    (1)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を1直線部以上含む
    (2)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が2μmを超える
  7. 前記金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(3)をさらに満たす、請求項6に記載の金属/樹脂複合構造体。
    (3)切断レベル40%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が60%以下である直線部を1直線部以上含む
  8. 前記金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、すべての直線部の前記十点平均粗さ(Rz)が5μmを超える、請求項6または7に記載の金属/樹脂複合構造体。
  9. 前記金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、すべての直線部の前記十点平均粗さ(Rz)が15μm以上である、請求項8に記載の金属/樹脂複合構造体。
  10. 請求項1乃至9いずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
    金型のキャビティ部に、微細凹凸表面を有する前記金属部材を配置する工程と、
    前記キャビティ部に前記樹脂部材を射出することにより前記金属部材と前記樹脂部材とを接合する工程と、
    を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
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