JP2016117228A - 金属/樹脂複合構造体、摺動部品および金属/樹脂複合構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ポリアミド(A)を含む樹脂部材と金属部材とが、ポリアミド(B)を含むプライマー層を介して接合しており、
上記ポリアミド(A)の融点Tm(A)が240℃以上であり、
上記ポリアミド(B)の融点Tm(B)が240℃未満であり、
上記プライマー層は、上記ポリアミド(B)を液体に分散または溶解してなるプライマー塗工液を上記金属部材の表面に塗工し、乾燥することにより得られたものである金属/樹脂複合構造体。
[2]
上記ポリアミド(A)がポリアミド46およびポリアミド66から選択される一種または二種以上である、上記[1]に記載の金属/樹脂複合構造体。
[3]
上記ポリアミド(B)がポリアミド6、ポリアミド11およびポリアミド12から選択される一種または二種以上である、上記[1]または[2]に記載の金属/樹脂複合構造体。
[4]
上記金属部材が鉄、高張力鋼、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金から選択される一種または二種以上の金属を含む金属材料からなる、上記[1]乃至[3]いずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体。
[5]
上記金属部材の少なくとも上記プライマー層と接する部位に、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸が形成されている、上記[1]乃至[4]いずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体。
[6]
上記プライマー層を構成する上記ポリアミド(B)が上記微細凹凸に入り込むことにより上記金属部材と上記プライマー層とが接着している、上記[5]に記載の金属/樹脂複合構造体。
[7]
上記[1]乃至[6]いずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体により形成された摺動部品。
[8]
ギア、ブッシュ、およびドアチェッカー用アームから選択される、上記[7]に記載の摺動部品。
[9]
上記[1]乃至[6]いずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
表面の少なくとも一部に上記ポリアミド(B)を含む上記プライマー層が形成された上記金属部材を、射出成形用の金型内に設置する工程と、
上記ポリアミド(A)を含む樹脂部材の少なくとも一部が上記プライマー層と接するように、上記金型内に上記樹脂部材を射出成形する工程と、を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。
[10]
上記金属部材の表面に、上記ポリアミド(B)を液体に分散または溶解してなるプライマー塗工液を塗工し、乾燥することにより、上記ポリアミド(B)を含む上記プライマー層を形成する工程をさらに含む、上記[9]に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法。
まず、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106について説明する。
図1は、本実施形態の金属/樹脂複合構造体106の構造の一例を示す外観図である。金属/樹脂複合構造体106は、ポリアミド(A)を含む樹脂部材105と、金属部材103とがポリアミド(B)を含むプライマー層108を介して接合されている。ポリアミド(A)の融点Tm(A)は240℃以上であり、ポリアミド(B)の融点Tm(B)は240℃未満である。また、プライマー層108は、ポリアミド(B)を液体に分散または溶解してなるプライマー塗工液を金属部材103の表面に塗工し、乾燥することにより得られたものである。
具体的には、ポリアミド(B)を液体に分散または溶解してなるプライマー塗工液を金属部材103の表面に塗工し、乾燥することにより、通常では接合が困難な金属部材103と、ポリアミド(B)とを強固に接着することが可能となる。また、ポリアミド(A)とポリアミド(B)は同じポリアミドであり親和性に優れるため、ポリアミド(A)を含む樹脂部材105はポリアミド(B)を含むプライマー層108に強固に接着することができる。
以上から、ポリアミド(A)を含む樹脂部材105と、金属部材103とをポリアミド(B)を含むプライマー層108を介して接合することにより、通常では接合が困難な金属部材103と、ポリアミド(A)を含む樹脂部材105と、を強固に接合することが可能になる。
以下、本実施形態に係る金属部材103について説明する。
金属部材103を構成する金属材料は特に限定されないが、例えば、鉄、高張力鋼、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、軽量かつ高強度の点から、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。また、高強度の観点から、鉄及び高張力鋼が好ましい。
アルミニウム合金としては、JIS H4000に規定された合金番号1050、1100、2014、2024、3003、5052、6061、6063、7075等が好ましく用いられる。
また、樹脂部材105と接合する接合部表面104の形状は、特に限定されないが、平面、曲面等が挙げられる。
必要な形状に加工された金属部材103は、プライマー層108が形成される部位が酸化や水酸化されていないことが好ましく、長期間の自然放置で表面に酸化皮膜である錆の存在が明らかなものは研磨、化学処理等でこれを取り除くことが好ましい。
これにより、プライマー層108を構成するポリアミド(B)が、金属部材103表面の上記微細凹凸に入り込むため、金属部材103とプライマー層108との接着強度を向上させることができる。その結果、金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより向上させることができる。
上記微細凹凸の間隔周期は凸部から隣接する凸部までの距離の平均値であり、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真から求めることができる。
具体的には、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡により、金属部材103の表面110を撮影する。その写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定する。凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とする。
凸部の間隔周期が上記下限値以上であると、上記微細凹凸表面の凹部にプライマー層108が十分に進入することができ、その結果、金属部材103と樹脂部材105との接合強度をより向上させることができる。また、凸部の間隔周期が上記上限値以下であると、得られる金属/樹脂複合構造体106の金属―樹脂界面に隙間が生じるのを抑制できる。その結果、金属―樹脂界面の隙間から水分等の不純物が浸入することを抑制できるため、金属/樹脂複合構造体106を高温、高湿下で用いた際、強度が低下することを抑制できる。
(1)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を1直線部以上含む
(2)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が2μmを超える
上記6直線部は、例えば、図2に示すような6直線部B1〜B6を選択することができる。まず、基準線として、金属部材103の接合部表面104の中心部Aを通る中心線B1を選択する。次いで、中心線B1と平行関係にある直線B2およびB3を選択する。次いで、中心線B1と直交する中心線B4を選択し、中心線B1と直交し、中心線B4と並行関係にある直線B5およびB6を選択する。ここで、各直線間の垂直距離D1〜D4は、例えば、2〜5mmである。
なお、通常、金属部材の表面110中の接合部表面104だけでなく、金属部材の表面110全体に対し、表面粗化処理が施されているため、例えば、図3に示すように、金属部材103の接合部表面104と同一面で、接合部表面104以外の箇所から6直線部を選択してもよい。
本発明者らは、金属部材と、樹脂部材との接合強度を向上させるために、金属部材の表面の十点平均粗さ(Rz)を調整することを検討した。
しかし、金属部材の表面の十点平均粗さ(Rz)を単に調整するだけでは金属部材と樹脂部材との接合強度を十分に向上させることができないことが明らかとなった。
ここで、本発明者らは、負荷長さ率という尺度が金属部材表面の凹凸形状の鋭利性を表す指標として有効であると考えた。負荷長さ率が小さい場合は、金属部材表面の凹凸形状の鋭利性が大きいことを意味し、負荷長さ率が大きい場合は、金属部材表面の凹凸形状の鋭利性が小さいことを意味する。
そこで、本発明者らは、金属部材と、樹脂部材との接合強度を向上させるための設計指針として、金属部材表面の粗さ曲線の負荷長さ率という尺度に注目し、さらに鋭意検討を重ねた。その結果、金属部材表面の負荷長さ率を特定値以下に調整することにより、金属部材103とプライマー層108との間にアンカー効果がより効果的に発現し、その結果、接合強度により一層優れた金属/樹脂複合構造体106が実現できることを見出した。
(1A)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を好ましくは2直線部以上、より好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
(1B)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が20%以下である直線部を好ましくは1直線部以上、より好ましくは2直線部以上、さらに好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
(1C)切断レベル40%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が60%以下である直線部を好ましくは1直線部以上、より好ましくは2直線部以上、さらに好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
なお、上記負荷長さ率(Rmr)の平均値は、前述の任意の6直線部の負荷長さ率(Rmr)を平均したものを採用することができる。
本実施形態においては、とくにエッチング剤の種類および濃度、粗化処理の温度および時間、エッチング処理のタイミング等が、上記各負荷長さ率(Rmr)を制御するための因子として挙げられる。
(2A)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が好ましくは5μm超、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である
なお、上記十点平均粗さ(Rz)の平均値は、前述の任意の6直線部の十点平均粗さ(Rz)を平均したものを採用することができる。
(3)すべての直線部の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μmを超え300μm未満であり、より好ましくは20μm以上200μm以下である。
なお、上記粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値は、前述の任意の6直線部のRSmを平均したものを採用することができる。
本実施形態においては、とくに粗化処理の温度および時間、エッチング量等が、上記十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を制御するための因子として挙げられる。
このような金属部材103は、例えば、エッチング剤を用いて粗化処理することにより形成することができる。
ここで、エッチング剤を用いて金属部材の表面を粗化処理すること自体は従来技術においても行われてきた。しかし、本実施形態では、エッチング剤の種類および濃度、粗化処理の温度および時間、エッチング処理のタイミング、等の因子を高度に制御している。上記要件(1)〜(3)、(1A)〜(1C)、(2A)等を満たす金属部材103を得るためには、これらの因子を高度に制御することが重要となる。
以下、上記要件(1)〜(3)、(1A)〜(1C)、(2A)等を満たす金属部材103を得るための金属部材表面の粗化処理方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る金属部材表面の粗化処理方法は、以下の例に限定されない。
まず、金属部材103は、樹脂部材105との接合側の表面に酸化膜や水酸化物等からなる厚い被膜がないことが望ましい。このような厚い被膜を除去するため、次のエッチング剤で処理する工程の前に、サンドブラスト加工、ショットブラスト加工、研削加工、バレル加工等の機械研磨や、化学研磨により表面層を研磨してもよい。また、樹脂部材105との接合側の表面に機械油等の著しい汚染がある場合は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液による処理や、脱脂を行なうことが好ましい。
本実施形態において金属部材の表面粗化処理方法としては、後述する酸系エッチング剤による処理を特定のタイミングで行うことが好ましい。具体的には、該酸系エッチング剤による処理を表面粗化処理工程の最終段階で行うことが好ましい。
当該アルカリ系エッチング剤は、金属部材との反応が穏やかなため、作業性の観点からは好ましく用いられる。しかし、本発明者らの検討によれば、このようなアルカリ系エッチング剤は反応性が穏やかであるため、金属部材表面の粗化処理の度合いが弱く、深い凹凸形状を形成するのが困難であることが明らかになった。また、酸系エッチング剤処理を行った後アルカリ系エッチング剤やアルカリ系溶液を併用する場合には、酸系エッチング剤によって形成した深い凹凸形状を後のアルカリ系エッチング剤やアルカリ系溶液での処理により該凹凸形状を幾分か滑らかにしてしまうことが明らかになった。
本実施形態では、上記表面粗化処理工程の後、通常、水洗および乾燥を行うことが好ましい。水洗の方法については特に制限はないが浸漬または流水にて所定時間洗浄することが好ましい。
本実施形態において、金属部材表面の粗化処理に用いられるエッチング剤としては、後述する特定の酸系エッチング剤が好ましい。上記特定のエッチング剤で処理することにより、金属部材の表面に、プライマー層108との間の密着性向上に適した凹凸形状が形成され、そのアンカー効果により金属部材103と樹脂部材105との間の接合強度がより一層向上するものと考えられる。
上記第二鉄イオンは、金属部材を酸化する成分であり、第二鉄イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二鉄イオンを含有させることができる。上記第二鉄イオン源としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄等が挙げられる。上記第二鉄イオン源のうちでは、塩化第二鉄が溶解性に優れ、安価であるという点から好ましい。
上記第二銅イオンは金属部材を酸化する成分であり、第二銅イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二銅イオン含有させることができる。上記第二銅イオン源としては、硫酸第二銅、塩化第二銅、硝酸第二銅、水酸化第二銅等が挙げられる。上記第二銅イオン源のうちでは、硫酸第二銅、塩化第二銅が安価であるという点から好ましい。
上記酸系エッチング剤には、金属部材表面をむらなく一様に粗化するために、マンガンイオンが含まれていてもよい。マンガンイオンは、マンガンイオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該マンガンイオンを含有させることができる。上記マンガンイオン源としては、硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガン、フッ化マンガン、硝酸マンガン等が挙げられる。上記マンガンイオン源のうちでは、硫酸マンガン、塩化マンガンが安価である等の点から好ましい。
上記酸は、第二鉄イオンおよび/または第二銅イオンにより酸化された金属を溶解させる成分である。上記酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸や、スルホン酸、カルボン酸等の有機酸が挙げられる。上記カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸等が挙げられる。上記酸系エッチング剤には、これらの酸を一種または二種以上配合することができる。上記無機酸のうちでは、臭気がほとんどなく、安価である点から硫酸が好ましい。また、上記有機酸のうちでは、粗化形状の均一性の観点から、カルボン酸が好ましい。
本実施形態において使用できる酸系エッチング剤には、指紋等の表面汚染物による粗化のむらを防ぐために界面活性剤を添加してもよく、必要に応じて他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、深い凹凸を形成するために添加されるハロゲン化物イオン源、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等を例示できる。あるいは、粗化処理速度を上げるために添加されるチオ硫酸イオン、チオ尿素等のチオ化合物や、より均一な粗化形状を得るために添加されるイミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等のアゾール類や、粗化反応を制御するために添加されるpH調整剤等も例示できる。これら他の成分を添加する場合、その合計含有量は、酸系エッチング剤中に0.01〜10質量%程度であることが好ましい。
以下、本実施形態に係る樹脂部材105について説明する。
本実施形態に係る樹脂部材105はポリアミド(A)を含む。
ポリアミド(A)は融点Tm(A)が240℃以上、好ましくは250℃以上、特に好ましくは260℃以上である。
ポリアミド(A)の融点Tm(A)が上記下限値以上であると、得られる樹脂部材105の剛性が高まり、得られる金属/樹脂複合構造体106の機械特性および耐摩耗性を向上させることができる。
ここで、上記融点Tm(A)は、示差走査熱量計(DSC)測定により測定することができる。
本実施形態において、樹脂部材105は、金属部材103と樹脂部材105との線膨張係数差の調整や樹脂部材105の機械的強度を向上させる観点から、充填材(C)をさらに含んでもよい。
これにより、成形後の樹脂部材105の収縮を抑制することができるため、金属部材103と樹脂部材105との接合をより強固なものとすることができる。
樹脂部材105には、個々の機能を付与する目的でその他の配合剤を含んでもよい。
上記配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等、耐衝撃性改質剤が挙げられる。
樹脂部材105の製造方法は、例えば、前述したポリアミド(A)、さらに必要に応じて充填材(C)、上記その他の配合剤を、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機等の混合装置を用いて、混合または溶融混合することにより、樹脂部材105が得られる。
本実施形態に係るプライマー層108はポリアミド(B)を含む。
ポリアミド(B)は融点Tm(B)が240℃未満、好ましくは230℃以下である。
ポリアミド(B)の融点Tm(B)が上記上限値未満または以下であると、ポリアミド(A)との相互侵入界面を形成することができる、ポリアミド(A)との接合に適したプライマー塗工液を得ることができる。また、ポリアミド(B)の融点Tm(B)が上記上限値未満または以下であると、ポリアミド(B)の分子鎖の運動性が良好となるため、金属部材103の微細凹凸へのプライマー層108の進入量を向上させることができ、その結果、金属部材103と樹脂部材105との接合強度を向上させることができる。
ポリアミド(B)を溶解する液体としては、ポリアミド(B)を溶解できる液体であれば特に限定されないが、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール等の有機溶媒が挙げられる。
ポリアミド(B)を分散する液体としては、例えば、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
プライマー塗工液としては、ポリアミド(B)を液体に溶解してなるものが好ましい。
つづいて、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の製造方法について説明する。
金属/樹脂複合構造体106の製造方法は、以下の(i)〜(ii)の工程を含み、さらに必要に応じて工程(iii)を含む。
(i)表面の少なくとも一部にポリアミド(B)を含むプライマー層108が形成された金属部材103を、射出成形用の金型内に設置する工程
(ii)ポリアミド(A)を含む樹脂部材105の少なくとも一部がプライマー層108と接するように、金型内に樹脂部材105を射出成形する工程
(iii)金属部材103の表面に、ポリアミド(B)を液体に分散または溶解してなるプライマー塗工液を塗工し、乾燥することにより、ポリアミド(B)を含むプライマー層108を形成する工程
以下、具体的に説明する。
これにより、樹脂部材105が軟化した状態に保ちながら、ポリアミド(B)を含むプライマー層108に樹脂部材105を高圧でより長い時間接触させることができる。
その結果、ポリアミド(B)を含むプライマー層108と樹脂部材105と分子鎖の絡まりを向上させることができるため、プライマー層108と樹脂部材105との間の接着性を向上でき、その結果、接合強度により一層優れた金属/樹脂複合構造体106をより安定的に得ることができる。
これにより、軟化状態の樹脂部材105を急速に固化させることができる。その結果、金属/樹脂複合構造体106の成形サイクルを短縮できるため、金属/樹脂複合構造体106を効率よく得ることができる。
具体的には、金型の表面の近くに設けられた流路に水蒸気、温水および温油から選択される加熱媒体を導入する、あるいは電磁誘導加熱を用いることにより、上記金型の上記表面温度を樹脂部材105のガラス転移温度以上の温度に維持することが好ましい。
具体的には、金型の表面の近くに設けられた流路に冷水および冷油から選択される冷却媒体を導入することにより、金型の表面温度を樹脂部材105のガラス転移温度未満の温度に冷却することが好ましい。
上記時間が上記下限値以上であると樹脂部材105を溶融させた状態に保ちながら、金属部材103の上記微細凹凸表面に樹脂部材105を高圧でより長い時間接触させることができる。これにより、接合強度により一層優れた金属/樹脂複合構造体106をより安定的に得ることができる。
また、上記時間が上記上限値以下であると、金属/樹脂複合構造体106の成形サイクルを短縮できるため、金属/樹脂複合構造体106をより効率よく得ることができる。
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
さらに、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、高い気密性、水密性が発現するので、これらの特性に応じた用途に好適に用いられる。
ドアチェッカー用アーム101における金属部材と樹脂部材の界面を、光学顕微鏡で観察した。
金属部材と樹脂部材との界面に空隙が観察されなかったものを「〇」、金属部材と樹脂部材との界面に空隙が観察されたものを「×」と評価した。
[金属部材1の調製方法]
鉄板(厚み:5mm)を、長さ200mm、幅20mmに切断した。市販の脱脂剤「NE−6(メルテックス社製)」を15%濃度で水に溶かし75℃とした。この水溶液が入った脱脂槽に上記鉄板を5分間浸漬し水洗し、40℃の1.5%塩酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。つづいて、65℃の1%酸性フッ化アンモニウムと10%硫酸の水溶液が入った槽に2分浸漬し水洗した。次いで25℃の1.5%アンモニア水溶液を入れた槽に1分浸漬し水洗した。次いで55℃の1.2%リン酸と0.21%酸化亜鉛と0.16%珪フッ化ナトリウム水溶液を入れた槽に2分浸漬し水洗した。これを80℃で15分間、60℃で5分程度温風乾燥させることにより、表面処理済みの金属部材1を得た。
得られた結果を以下に示す。
間隔周期[nm]:200
(プライマー層の形成)
金属部材1の表面に、プライマー層108の厚みが10μmとなるように、ポリアミド6(東レ社製アミラン(登録商標)CM1017、融点:220℃)をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解してなるプライマー塗工液を室温で塗工した。次いで、230℃のオーブンにて乾燥をおこなった。
日本製鋼所社製の射出成形機J55ADに小型ダンベル金属インサート金型を装着し、金型内にプライマー層108を形成した金属部材1を設置した。次いで、金型の表面温度を、加熱媒体である加圧熱水を用いて175℃まで加熱した。
次いで、その金型内に、樹脂部材1(ポリアミド46、DSM社製Stanyl(登録商標)TW341−B、融点:292℃)を、シリンダー温度300℃、射出速度40mm/sec、保圧60MPa、保圧時間40秒の条件にて射出成形を行い、図4に示すドアチェッカー用アーム101を得た。なお、保圧完了後の金型表面温度も175℃に維持されていた。
ここで、図4は、本実施形態のドアチェッカー用アーム101の一例を模式的に示した断面図である。金属部材103(インサート)の表面にプライマー層108を介して樹脂部材105(摺動部)が形成されている。
得られたドアチェッカー用アーム101について、上記評価をおこなった。評価結果を表1に示す。
プライマー層108に用いたポリアミド6をポリアミド11(ARKEMA社製Rilsan(登録商標)B BMN、融点:185℃)に変えた以外は実施例1と同様にしてドアチェッカー用アーム101を得た。得られたドアチェッカー用アーム101について、上記評価をおこなった。評価結果は表1に示す。
プライマー層108に用いたポリアミド6をポリアミド12(ARKEMA社製Rilsan(登録商標)A AMN、融点:175℃)に変えた以外は実施例1と同様にしてドアチェッカー用アーム101を得た。得られたドアチェッカー用アーム101について、上記評価をおこなった。評価結果は表1に示す。
樹脂部材1を樹脂部材2(ポリアミド66、ユニチカ社製B2040G33、融点:265℃)に変えた以外は実施例1と同様にしてドアチェッカー用アーム101を得た。得られたドアチェッカー用アーム101について、上記評価をおこなった。評価結果は表1に示す。
プライマー層108を形成しない以外は実施例1と同様にして、ドアチェッカー用アーム101を得た。得られたドアチェッカー用アーム101について、上記評価をおこなった。評価結果は表1に示す。
一方、比較例1で得られたドアチェッカー用アーム101は金属部材と樹脂部材との界面に空隙が観察された。このようなドアチェッカー用アーム101は摺動時に異音が発生した。
103 金属部材
104 接合部表面
105 樹脂部材
106 金属/樹脂複合構造体
108 プライマー層
110 表面
Claims (10)
- ポリアミド(A)を含む樹脂部材と金属部材とが、ポリアミド(B)を含むプライマー層を介して接合しており、
前記ポリアミド(A)の融点Tm(A)が240℃以上であり、
前記ポリアミド(B)の融点Tm(B)が240℃未満であり、
前記プライマー層は、前記ポリアミド(B)を液体に分散または溶解してなるプライマー塗工液を前記金属部材の表面に塗工し、乾燥することにより得られたものである金属/樹脂複合構造体。 - 前記ポリアミド(A)がポリアミド46およびポリアミド66から選択される一種または二種以上である、請求項1に記載の金属/樹脂複合構造体。
- 前記ポリアミド(B)がポリアミド6、ポリアミド11およびポリアミド12から選択される一種または二種以上である、請求項1または2に記載の金属/樹脂複合構造体。
- 前記金属部材が鉄、高張力鋼、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金から選択される一種または二種以上の金属を含む金属材料からなる、請求項1乃至3いずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
- 前記金属部材の少なくとも前記プライマー層と接する部位に、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸が形成されている、請求項1乃至4いずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
- 前記プライマー層を構成する前記ポリアミド(B)が前記微細凹凸に入り込むことにより前記金属部材と前記プライマー層とが接着している、請求項5に記載の金属/樹脂複合構造体。
- 請求項1乃至6いずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体により形成された摺動部品。
- ギア、ブッシュ、およびドアチェッカー用アームから選択される、請求項7に記載の摺動部品。
- 請求項1乃至6いずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
表面の少なくても一部に前記ポリアミド(B)を含む前記プライマー層が形成された前記金属部材を、射出成形用の金型内に設置する工程と、
前記ポリアミド(A)を含む樹脂部材の少なくとも一部が前記プライマー層と接するように、前記金型内に前記樹脂部材を射出成形する工程と、を含む金属/樹脂複合構造体の製造方法。 - 前記金属部材の表面に、前記ポリアミド(B)を液体に分散または溶解してなるプライマー塗工液を塗工し、乾燥することにより、前記ポリアミド(B)を含む前記プライマー層を形成する工程をさらに含む、請求項9に記載の金属/樹脂複合構造体の製造方法。
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