JP2017014607A - エッチング剤、ステンレス鋼材の製造方法、およびステンレス−樹脂複合体の製造方法 - Google Patents

エッチング剤、ステンレス鋼材の製造方法、およびステンレス−樹脂複合体の製造方法 Download PDF

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稔生 谷村
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Abstract

【課題】ステンレス鋼と被着材との密着性を向上できるステンレス鋼用のエッチング剤を提供する。【解決手段】本発明のエッチング剤は、酸、第二鉄イオン、ハロゲン化物イオン、両性界面活性剤、および特定金属イオンを含む。特定金属イオンは、コバルトイオン、マンガンイオン、バリウムイオン、およびセリウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンである。エッチング剤中の特定金属イオンの濃度は、0.0005〜2.5重量%が好ましい。エッチング剤中の両性界面活性剤の濃度は0.0005重量%以上が好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、ステンレス鋼の表面を粗化するためのエッチング剤に関する。さらに、本発明は当該エッチング剤を用いたステンレス鋼の粗化方法、およびステンレス−樹脂複合体の製造方法に関する。
電気・自動車分野を中心に、幅広い産業分野で金属と樹脂を一体化させる技術が開発されている。従来、金属と樹脂との接合には、接接着剤を使用することが一般的であった。しかし、接着剤の使用は、生産工程を煩雑化し、製品のコストアップの要因になっていた。また、接着剤を使用すると、高温下における接合強度が低下するため、耐熱性が要求される用途への適用が困難となる。
そのため、金属部品の表面を粗化して樹脂との密着性を高め、接着剤を使用せずに、金属と樹脂とを一体化させる技術が研究されている(例えば、特許文献1参照)。中でも、各種電子・電気機器、医療機器、車両搭載用機器、自動車部品、船舶用機器等の外装部には、ステンレス鋼製部品が使用されることが多いため、接着剤を使用せずにステンレス鋼と樹脂とを一体化させる技術に対する市場の要望が高まってきている。
ステンレス鋼用のエッチング剤としては、打ち抜き加工したステンレス鋼板のバリを除去する際に使用される塩化第二鉄系の酸性エッチング剤が知られている。例えば、特許文献1には、リサイクル性を向上させる目的で、塩化第二鉄と、クロムイオンまたはニッケルイオンとを含むステンレス鋼用のエッチング剤が開示されている。
ステンレス鋼の表面を粗化するためのマイクロエッチング剤として、特許文献3には、塩化物イオン、第二銅イオン、およびチオール化合物を含む硫酸系のエッチング剤が開示されている。また、特許文献4には、金属イオンと錯体を形成可能な改質剤、および重金属イオンを含む酸系エッチング剤が開示されている。
国際公開第2008/081933号パンフレット 国際公開第2007/122855号パンフレット 特開2001−11662号公報 特開2012−102056号公報
本発明者らの検討によれば、特許文献2に記載のエッチング剤でステンレス鋼を処理しても、ステンレス鋼の表面に、樹脂との密着性を向上可能な粗化形状を形成することは困難であった。特許文献3のように、酸化剤として第二銅イオンを含むエッチング剤を用いると、エッチング剤から析出した銅が、エッチング対象であるステンレス鋼部品の表面に付着するとの問題があることが判明した。また、特許文献2〜4に開示のエッチング剤を用いた場合、エッチング後のステンレス鋼表面に巨視的な粗化ムラが生じ、樹脂との密着性を十分に向上させることは困難であった。
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ステンレス鋼の表面に、被着材との密着性向上に適した粗化形状を均一に形成できるステンレス鋼用のエッチング剤の提供を目的とする。
本発明のエッチング剤は、ステンレス鋼用のエッチング剤であって、酸、第二鉄イオン、ハロゲン化物イオン、両性界面活性剤、および特定金属イオンを含有する。特定金属イオンは、コバルトイオン、マンガンイオン、バリウムイオン、およびセリウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種である。エッチング剤中の特定金属イオンの濃度は、0.0005〜2.5重量%が好ましい。エッチング剤中の両性界面活性剤の濃度は0.0005重量%以上が好ましい。両性界面活性剤としては、アニオン基としてカルボキシル基を有し、カチオン基として第二〜第四級のアミノ基またはアンモニウム基を有するものが好ましく用いられる。
本発明のエッチング剤によってステンレス鋼を処理すると、ステンレス鋼の表面に、被着材との密着性向上に適した細かい粗化形状が均一に形成される。本発明のエッチング剤により処理されたステンレス鋼は、樹脂等の被着材との密着性に優れる。
実施例のエッチング剤により粗化処理されたステンレス鋼表面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例のエッチング剤により粗化処理されたステンレス鋼表面の走査型電子顕微鏡写真である。
[エッチング剤]
本発明のエッチング剤は、酸、第二鉄イオン、ハロゲン化物イオン、両性界面活性剤、および特定金属イオンを含む水溶液である。以下、本発明のエッチング剤に含まれる各成分について説明する。
<第二鉄イオン>
第二鉄イオンはステンレス鋼の金属の酸化剤として作用する成分であり、第二鉄イオン源を配合することによって、エッチング剤中に含有させることができる。第二鉄イオン源は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。第二鉄イオン源としては、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、水酸化第二鉄、硫酸鉄(III)アンモニウム等が挙げられる。中でも、被着体との密着性向上に適した凹凸形成の観点、およびコスト低減の観点から、第二鉄イオン源としては、塩化第二鉄が好ましい。第二鉄イオン源として塩化第二鉄等のハロゲン化物を使用した場合、該ハロゲン化物は、後述のハロゲン化物イオン源としても作用する。
エッチング剤中の第二鉄イオンの濃度は、0.5〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましく、3〜12重量%がさらに好ましい。第二鉄イオンの濃度が0.5重量%以上であれば、ステンレス鋼の表面に、樹脂との密着性向上に適した粗化形状を容易に形成できる。一方、第二鉄イオン濃度が20重量%以下であれば、エッチング剤中での第二鉄イオンの溶解安定性を維持できるとともに、エッチング速度を適正に維持できる。
<ハロゲン化物イオン>
ハロゲン化物イオンは、ステンレス鋼の表面に形成された不動態皮膜を浸食することにより、深い凹凸の形成を可能とする成分である。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。エッチング剤中には、2種以上のハロゲン化物イオンが含まれていてもよい。ステンレス鋼の表面に被着体との密着性向上に適した粗化形状を均一に形成する観点から、ハロゲン化物イオンとしては塩化物イオンが好ましい。
ハロゲン化物イオンは、ハロゲン化物イオン源を配合することによって、エッチング剤中に含有させることができる。ハロゲン化物イオン源としては、塩化水素酸(塩酸)、臭化水素酸等のハロゲン化水素酸、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム、塩化第二鉄、塩化第二銅、塩化マンガン、塩化コバルト、塩化バリウム、塩化セリウム、臭化第二鉄、臭化第二銅、臭化マンガン、臭化コバルト、臭化バリウム、臭化セリウム、塩化亜鉛、臭化錫等が挙げられる。ハロゲン化物イオン源としては、これらの他、溶液中でハロゲン化物イオンを解離しうる化合物が挙げられる。ハロゲン化物イオン源は2種以上を併用してもよい。上述のように、塩化第二鉄等のハロゲン化鉄は、ハロゲン化物イオン源と第二鉄イオン源の両方の作用を有するものとして使用することができる。また、塩酸、臭化水素酸等のハロゲン化水素酸は、後述の酸成分としても作用する。塩化マンガン、塩化コバルト、塩化バリウム、塩化セリウム、臭化マンガン、臭化コバルト、臭化バリウム、臭化セリウム等は、後述の特定金属イオン成分としても作用する。
エッチング剤中のハロゲン化物イオンの濃度は、樹脂との密着性に優れた粗化形状を形成する観点から1〜35重量%が好ましく、2〜30重量%がより好ましく、5〜25重量%がさらに好ましい。ハロゲン化物イオン濃度が1重量%以上であれば、樹脂との密着性向上に適した深い凹凸を容易に形成できる。一方、ハロゲン化物イオン濃度が35重量%以下であれば、エッチング速度を適正に維持できる。
<特定金属イオン>
エッチング剤中に所定の金属イオンが含まれることにより、ステンレス鋼の表面をむらなく一様に粗化することができる。本発明のエッチング剤には、コバルトイオン、マンガンイオン、バリウムイオン、およびセリウムイオンの少なくとも1種が含まれる。本明細書では、これらの金属イオンをまとめて「特定金属イオン」と記載する。特定金属イオンは、特定金属イオン源を配合することによって、エッチング剤中に含有させることができる。特定金属イオン源としては、コバルト塩、マンガン塩、バリウム塩、セリウム塩が好ましく用いられる。金属塩としては、塩化物、フッ化物、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩等が挙げられる。中でも、塩化マンガンおよび硫酸マンガンが、安価である等の点から好ましい。
被着体との密着性向上に適した粗化形状を均一に形成する観点から、エッチング剤中の特定金属イオンの含有量は、0.0005〜2.5重量%が好ましく、0.03〜1.5重量%がより好ましく、0.1〜1.0重量%がさらに好ましい。エッチング剤中に、コバルトイオン、マンガンイオン、バリウムイオン、およびセリウムイオンからなる群から選択される2種以上特定金属イオンが含まれる場合、これらの特定金属イオンの合計濃度が上記範囲内であることが好ましい。
<両性界面活性剤>
エッチング剤中に、両性界面活性剤を配合することにより、ステンレス鋼の表面に、樹脂との密着性向上に適した微細な凸部(オーバーハング)を形成できる。両性界面活性剤は、アニオン基とカチオン基を有するものであれば特に限定されず、カルボン酸塩型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤、リン酸エステル塩型両性界面活性剤等を用いることができる。これらの中でも、アニオン基としてカルボキシ基を有するカルボン酸塩型両性界面活性剤が好ましく用いられる。また、カチオン基として、第二〜第四のアミノ基またはアンモニウム基を有するものが好ましく用いられる。
分子内にカルボキシル基と第二〜第四級のアミノ基またはアンモニウム基とを有する両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤等が挙げられる。アミノ酸型両性界面活性剤の具体例としては、コカミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等のアルキルアミノプロピオン酸;ラウリルアミノ酢酸ナトリウム等のアルキルアミノ酢酸;N‐ラウロイル‐N’‐カルボキシメチル‐N’‐ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等が挙げられる。ベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルベタイン;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等のアミドベタイン;ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等のアルキルジヒドロキシアルキルベタイン類等が挙げられる。イミダゾリン型両性界面活性剤の具体例としては、2‐アルキル‐N‐カルボキシメチル‐N‐ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。これらの中でも第三級アミンまたは第四級アンモニウム基を含むものが好ましく、カチオン基として第四級アンモニウム基を含むものが特に好ましい。
ステンレス鋼の表面に、樹脂との密着性向上に適した特徴的な粗化形状を形成する観点から、エッチング剤中の両性界面活性剤の濃度は、0.0005重量%以上が好ましく、0.001重量%以上がより好ましく、0.003重量%以上がさらに好ましく、0.005重量%以上が特に好ましい。両性界面活性剤濃度の上限は特に限定されないが、エッチング剤の粘性調整およびコスト低減の観点から、5重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましく、0.2重量%以下がさらに好ましい。
<酸成分>
本発明のエッチング剤は酸成分を含む酸性水溶液である。酸成分は、ステンレス鋼から溶出する金属を溶解させる作用を有する。酸成分としては、フッ化水素酸、塩化水素酸(塩酸)、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸や、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、スルファミン酸等のその他の無機酸、あるいは、スルホン酸、カルボン酸等の有機酸があげられる。本発明では、これらを単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。前記酸成分の中でも、エッチング剤中の酸濃度を高めてエッチング速度を適切に保つ観点から、無機酸が好ましく、中でも、ステンレス鋼の表面に細かい凹凸を均一に形成する観点、およびコスト低減の観点から、塩酸が好ましい。
エッチング剤中の酸成分の濃度は、水素イオンの濃度として、0.001〜0.8重量%が好ましく、0.005〜0.6重量%がより好ましく、0.01〜0.3重量%がさらに好ましい。水素イオン濃度が0.001重量%以上であれば、ステンレス鋼のエッチング速度(溶解速度)の低下を防止できる。一方、水素イオン濃度が0.8重量%以下であれば、液温が低下した際の金属塩の結晶析出を防止できる。また、作業性を向上でき、コスト低減が容易となる。
<他の成分>
本発明のエッチング剤には、上記本発明の効果を妨げない範囲で他の成分を添加してもよい。他の成分としては、金属に配位する化合物(金属配位化合物)、消泡剤、界面活性剤(上記の両性界面活性剤以外のもの)等が例示できる。なお、金属配位化合物としては、カルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、アミン系キレート剤等のキレート剤や、窒素含有化合物、硫黄含有化合物等が例示できる。金属配位化合物は、ステンレス鋼表面の金属に配位して、ステンレス鋼表面からの金属イオンの溶出を抑制したり、逆にステンレス鋼表面から溶出した金属イオンに配位して、金属イオンの溶出を促進したりして、表面の粗化形状を制御することができる。これら他の成分を添加する場合、その濃度は、0.01〜10.0重量%程度が好ましい。
本発明のエッチング剤は、前記の各成分をイオン交換水等に溶解させることにより容易に調製することができる。
[ステンレス鋼の粗化処理]
次に、本発明のエッチング剤を用いたステンレス鋼の粗化処理について説明する。
本発明のステンレス鋼材の製造方法では、ステンレス鋼の表面に上記エッチング剤を接触させることにより、粗化処理工程が実施され、表面が粗化されたステンレス鋼材が得られる。上記エッチング剤により粗化されたステンレス鋼材の表面には、特徴的な粗化形状が均一に形成されており、樹脂等の被着体との密着性に優れる。
ステンレスは、FeおよびCrを含む合金であり、さらにNi,C,Si,Mn,Mo,Cu,Nb等を含んでいてもよい。本発明に用いられるステンレス鋼としては、SUS201,SUS202,SUS301,SUS302,SUS303,SUS304,SUS305,SUS316,SUS317,等のオーステナイト系ステンレス、SUS403,SUS420,SUS630等のマルテンサイト系ステンレス、SUS405,SUS430,SUS430LX等のフェライト系ステンレス等が挙げられる。これらのステンレス鋼の多くは、プレス加工、切削加工等が可能であるため、構造、形状も自由に選択できる。また、ステンレス鋼は上記例示のものに限定されず、日本工業規格(JIS)、国際標準化機構(ISO)等で規格化されたあらゆるステンレス鋼が含まれる。
<前処理>
上記エッチング剤を用いてステンレス鋼を粗化する前に、ステンレス鋼に、脱脂処理や、サンドブラスト加工、ショットブラスト加工、研削加工、バレル加工等の機械研磨処理や、化学研磨処理等を施してもよい。
<粗化処理>
ステンレス鋼を本発明のエッチング剤で処理する方法としては、例えば処理対象のステンレス鋼の表面にエッチング剤をスプレーする方法や、ステンレス鋼をエッチング剤中に浸漬する方法等が挙げられる。この際の処理温度は、20〜70℃が好ましく、処理時間は1〜30分程度が好ましい。
本発明のエッチング剤を用いてステンレス鋼の表面を処理すると、微細な凸部(オーバーハング)を有する深い凹凸が、ステンレス鋼の表面に均一に形成される(図1参照)。溶解したステンレス鋼の重量、比重および表面積から算出した深さ方向の平均エッチング量(溶解量)は、1〜30μmが好ましく、3〜25μmがより好ましく、5〜20μmがさらに好ましい。エッチング量が1μm以上であれば、樹脂との密着性向上に適した形状の凹凸を容易に形成できる。また、エッチング量が25μm以下であれば、処理時間の短縮が可能となる。エッチング量は、処理温度や処理時間等により調整できる。
本発明のエッチング剤を連続または繰り返し使用して粗化処理を行う場合、第二鉄イオン源、ハロゲン化物イオン源、特定金属イオン源、両性界面活性剤、酸成分等をエッチング剤に添加して、前述の各成分の濃度を所定範囲内に調整することが好ましい。
本発明においては、ステンレス鋼をエッチング処理する際、ステンレス鋼表面の全面を処理してもよく、ステンレス鋼表面を部分的に処理してもよい。例えば、ステンレス鋼材と樹脂等との複合体を形成する場合、樹脂等の被着材との接合部分のステンレス鋼表面を選択的に処理してもよい。
<後処理>
エッチング剤による粗化処理工程後には、ステンレス鋼の表面に析出した金属の除去や不動態化による防錆を目的として、酸洗浄を実施することが好ましい。酸洗浄に用いられる酸は、析出した金属を溶解できるものであれば特に限定されないが、硝酸および硫酸が好ましい。析出した金属の除去性および再不動態化を容易に行う観点からは、硝酸が好ましく用いられる。酸性水溶液による洗浄方法としては、浸漬、スプレー等よる処理が挙げられる。この際の処理温度は20〜40℃が好ましく、処理時間は10〜120秒程度が好ましい。酸洗浄後には、通常、水洗および乾燥が行われる。
[粗化処理後のステンレス鋼材の用途]
本発明のエッチング剤により粗化処理されたステンレス鋼材は、後述するステンレス−樹脂複合体の材料として使用できる他、各種溶媒に対する濡れ性が付与されたステンレス鋼材としても使用できる。また、本発明のエッチング剤により粗化処理されたステンレス鋼材は、樹脂だけでなく、ガラス、金属めっき膜、無機半導体、有機半導体、セラミック等の被着材に対する密着性向上効果も期待できる。
[ステンレス−樹脂複合体]
次に、本発明のエッチング剤により粗化処理されたステンレス鋼材の適用例として、ステンレス鋼材と樹脂とを一体化させたステンレス−樹脂複合体について説明する。ステンレス−樹脂複合体は、上述の方法によりステンレス鋼の表面を粗化処理した後、当該処理面への樹脂付着工程を実施することにより得られる。ステンレス鋼を本発明のエッチング剤で処理することにより、ステンレス−樹脂間の密着性向上に適した凹凸がステンレス鋼の表面に均一に形成されるため、ステンレス−樹脂間の密着性向上が可能となる。
ステンレス鋼材の表面に樹脂を付着させる方法は、特に限定されず、射出成形、押出成形、加熱プレス成形、圧縮成形、トランスファーモールド成形、注型成形、レーザー溶着成形、反応射出成形(RIM成形)、リム成形(LIM成形)等の樹脂成形方法が採用できる。また、ステンレス鋼材表面に樹脂組成物皮膜をコーティングしたステンレス−樹脂組成物皮膜からなる複合体を製造する場合は、溶剤に樹脂組成物を溶解または分散させて塗布するコーティング法や、その他の各種塗装方法が採用できる。その他の塗装方法としては、焼き付け塗装、電着塗装、静電塗装、粉体塗装、紫外線硬化塗装等が例示できる。前記列挙した成形方法の成形条件は、樹脂組成物に応じて公知の条件を採用することができる。
上記のステンレス−樹脂複合体に使用できる樹脂は、ステンレス鋼材表面に付着させるものであれば、特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物や熱硬化性樹脂組成物の中から用途に応じて選択することができる。
(熱可塑性樹脂組成物)
熱可塑性樹脂組成物を使用する場合、主成分となる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド6やポリアミド66等のポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、非晶ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・アクリル酸共重合樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合樹脂等や、これら2種以上を組み合わせたもの等を挙げることができる。
使用できる熱可塑性樹脂組成物としては、前記列挙した熱可塑性樹脂からなる組成物であってもよく、本発明の効果を損なわない程度に、前記列挙した熱可塑性樹脂に対して、従来公知の各種無機・有機充填剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、着色剤、カーボンブラック、加工助剤、核剤、離型剤、可塑剤、繊維状補強材等の添加剤を添加した組成物であってもよい。
(熱硬化性樹脂組成物)
樹脂組成物として熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、主成分となる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、シアネート樹脂、シリコーン樹脂等や、これら2種以上を組み合わせたもの等を挙げることができる。
使用できる熱硬化性樹脂組成物としては、前記列挙した熱硬化性樹脂からなる組成物であってもよく、本発明の効果を損なわない程度に、前記列挙した熱硬化性樹脂に対して、従来公知の各種無機・有機充填剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、着色剤、カーボンブラック、加工助剤、核剤、離型剤、可塑剤、繊維状補強材等の添加剤を添加した組成物であってもよい。
(その他の樹脂組成物)
その他の使用できる樹脂組成物としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂等を含む光硬化性樹脂組成物や、ゴム、エラストマー等を含む反応硬化性樹脂組成物等、各種の樹脂組成物を挙げることができる。
上述のステンレス−樹脂複合体は、例えば、各種電子・電気機器、医療機器、車両搭載用機器、自動車部品、船舶用機器、その他の移動機械用の部品や外装部等に用いることができる。
次に、本発明の実施例を、比較例と併せて説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
<エッチング剤による処理>
試験基板として、幅40mm長さ40mm厚み2mmの2B仕上げ冷間圧延鋼板(スタンダードテストピース社製 SUS304試験片;JIS G4305準拠)を用意し、前処理として、アルカリ性脱脂剤(奥野製薬工業製「エースクリーン850」を濃度50g/Lに調整したもの)に50℃で10分間浸漬した。その後、40℃の水に1分間浸漬した後、常温で水洗処理を行った。表1示す組成の各エッチング剤に、前処理後の上記試験基板を、53℃で13分間浸漬して、エッチングを実施した。なお、表1に示すエッチング剤の配合成分の残部はイオン交換水であり、濃度はいずれも重量%である。各エッチング剤に用いた界面活性剤のうち、比較例4で用いたポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルはノニオン性界面活性剤であり、それ以外はいずれも両性界面活性剤である。
エッチング後の試験基板は、水洗、超音波水洗を行った後、乾燥した。エッチング前後の重量変化から求めたエッチング量を表1に示す。各実施例および比較例のエッチング後の試験基板のSEM観察写真(加速電圧:20kV、試料傾斜角:45°、倍率:500倍、1500倍および3500倍)を、図1および図2に示す。
図1(実施例)に示す結果から、本発明のエッチング剤によりステンレス鋼を処理することにより、ステンレス鋼の表面に、深い凹凸構造が網目状に均一に形成されており、凸部の表面にさらに微細な突出部(オーバーハング)が形成されていることが分かる。3500倍のSEM観察写真から、実施例2のエッチング剤でステンレス鋼の処理を行った場合に、深い凹凸構造の表面に、微細な突出部が多数形成されていることが分かる。
マンガンイオンの含有量が小さいエッチング剤を用いた比較例1では、微細な凹凸が形成されていなかった。一方、マンガンイオンの含有量が2%を超えるエッチング剤を用いた比較例2では、ステンレス鋼の表面に、凹凸が形成されていない平滑部がみられた。両性界面活性剤の濃度が小さいエッチング剤を用いた比較例3では、ステンレス鋼の表面に凹凸がほとんど形成されていなかった。ノニオン性界面活性剤を含むエッチング剤を用いた比較例4では、表面が平滑な山脈状の凸部が形成されていたが、実施例のような網目状の凹凸は形成されず、細かい突出部の形成も確認できなかった。
以上の結果から、両性界面活性剤と所定の金属イオンを含む本発明のエッチング剤で表面処理を行うことにより、特徴的な粗化形状がステンレス鋼表面に均一に形成され、高いアンカー効果(投錨効果)により、被着体との密着性を向上できることが分かる。

Claims (7)

  1. ステンレス鋼用のエッチング剤であって、
    酸;第二鉄イオン;ハロゲン化物イオン;両性界面活性剤;および特定金属イオンを含む水溶液であり、
    前記特定金属イオンは、コバルトイオン、マンガンイオン、バリウムイオン、およびセリウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンであり、
    前記特定金属イオンの濃度が0.0005〜2.5重量%であり、前記両性界面活性剤の濃度が0.0005重量%以上である、エッチング剤。
  2. 前記両性界面活性剤は、アニオン基としてカルボキシル基を有し、カチオン基として第二〜第四級のアミノ基またはアンモニウム基を有する、請求項1に記載のエッチング剤。
  3. 前記第二鉄イオンの濃度が0.5〜20重量%である、請求項1または2に記載のエッチング剤。
  4. 前記ハロゲン化物イオンの濃度が1〜35重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエッチング剤。
  5. 表面が粗化されたステンレス鋼材を製造する方法であって、
    ステンレス鋼材の表面に、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエッチング剤を接触させて、表面を粗化する粗化処理工程を有する、ステンレス鋼材の製造方法。
  6. 請求項5に記載の方法により表面が粗化されたステンレス鋼材の表面に、樹脂組成物を付着させる樹脂付着工程を有する、ステンレス−樹脂複合体の製造方法。
  7. 前記樹脂付着工程において、粗化処理後のステンレス鋼材の表面に樹脂組成物を付着させる方法が、射出成形またはトランスファーモールド成形である、請求項6に記載のステンレス−樹脂複合体の製造方法。
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