JP6850604B2 - 金属表面処理用組成物および金属表面処理方法 - Google Patents

金属表面処理用組成物および金属表面処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属の表面処理に用いられる金属表面処理用組成物および金属の表面を処理する金属表面処理方法に関する。
一般的に、被処理物に塗装を施す場合、耐食性および塗膜の密着性を確保する観点から、表面処理が施される。特に、金属(金属材料、金属構造物)を塗装する場合には、金属表面に化学的に化成皮膜を形成する化成処理(表面処理)が施される。
その化成処理の一例としては、クロム酸塩によるクロメート化成処理があるが、クロムによる有害性が指摘されるようになっており、近年、クロムを含まない処理剤(表面処理剤、化成処理剤)としてリン酸亜鉛系処理剤による処理(リン酸亜鉛処理)が広く行われている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、リン酸亜鉛系処理剤は、金属イオンおよび酸濃度が高く反応性の高い処理剤であるため、排水処理における経済性、作業性が良好でない。また、リン酸イオンは、富栄養化により環境に対する負荷が高く、廃液の処理に労力を要する。
このようなリン酸亜鉛系処理剤又はクロメート化成処理剤以外の処理剤として、ジルコニウム化合物を含む化成処理剤が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のジルコニウム化合物は、実質的にフッ素を含まないので、取り扱いが容易であり、環境への負荷を低減できる。
特開平10−204649号公報 国際公開第2007/100018号
しかしながら、実質的にフッ素を含まないジルコニウム化合物は、ジルコニウム元素が化成液中で不安定になる場合がある。そのため、より安定した化成液を調整できるように改良の余地がある。
本発明は、実質的にフッ素を含まず、良好な化成皮膜を形成できる金属表面処理用組成物を提供することを目的とする。
本発明は、金属の表面処理に用いられ、実質的にクロムおよびフッ素を含まない金属表面処理用組成物であって、実質的にフッ素を含まないジルコニウム化合物(A)と、両性金属化合物(B)と、モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方(C)と、を含有し、pHが3〜5であり、前記両性金属化合物(B)由来の両性金属に対する、前記ジルコニウム化合物(A)由来のジルコニウムのモル比は、1〜10である金属表面処理用組成物に関する。
また、前記両性金属化合物(B)は、アルミニウム化合物又は亜鉛化合物を含むことが好ましい。
また、前記両性金属化合物(B)は、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸亜鉛および酢酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
また、前記モノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸および安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
また、前記ジルコニウム化合物(A)は、硝酸ジルコニウム又は酢酸ジルコニウムのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。
また、前記両性金属化合物(B)由来の両性金属に対する、前記モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方(C)のモル比は、1〜100であることが好ましい。
また、本発明は、金属の表面を処理する金属表面処理方法であって、上記の金属表面処理用組成物を前記金属に接触させる接触工程を有する金属表面処理方法に関する。
また、前記接触工程により、金属の表面に30〜100mg/mの前記金属表面処理用組成物による化成皮膜を形成することが好ましい。
本発明によれば、実質的にフッ素を含まず、安定した化成皮膜を形成できる金属表面処理用組成物を提供することができる。
以下、本実施形態の金属表面処理用組成物、金属表面処理方法、および、金属材料について詳細に説明する。
<金属表面処理用組成物>
本実施形態に係る金属表面処理用組成物は、金属の表面処理に用いられ、実質的にクロムおよびフッ素を含まない。そのため、金属表面処理用組成物の取り扱いは容易であり、環境への負荷を低減することもできる。また、本実施形態に係る金属表面処理用組成物は、金属の表面処理に用いられるものであり、ジルコニウム化合物(A)と、両性金属化合物(B)と、モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方(C)と、を含む。
なお、本明細書において「実質的にクロムを含まない」とは、クロムイオンが金属表面処理用組成物(処理液)中の成分として作用する程、処理液中に含まれていないことを意味し、具体的には、クロム含有化合物を原材料として意図的に使用していないことを意味し、例として、クロム元素濃度の測定値が1000ppm(EU各国でのRoHS指令により規定された値)以下である場合をいう。
また、本明細書において「実質的にフッ素を含まない」とは、フッ素イオンが金属表面処理用組成物(処理液)中の成分として作用する程、処理液中に含まれていないことを意味し、例として、イオンクロマトグラフ等を用いたフッ素元素濃度の測定値が10ppm以下である場合をいう。
また、本実施形態に係る金属表面処理用組成物は、水で希釈、調整されて金属表面処理液とされ、金属の表面処理に供される。
[ジルコニウム化合物(A)]
本実施形態に係るジルコニウム化合物(A)に含まれるジルコニウム元素は、化成皮膜を形成する主成分である。金属材料にジルコニウムを含む化成皮膜が形成されることにより、金属材料の耐食性や密着性を向上させることができる。
従来、KZrF、(NHZrF等のフッ素元素を含有する金属表面処理用組成物が用いられていたが、本実施形態に係る金属表面処理用組成物のジルコニウム化合物(A)は、実質的にフッ素を含まない。
本実施形態に係るジルコニウム化合物(A)を含む金属表面処理用組成物により金属材料の表面処理を行うと、金属材料を構成する金属の溶解反応が起こる。金属の溶解反応が起こると、界面のpHが上昇することにより、ジルコニウムの水酸化物又は酸化物が生成し、金属材料の表面に析出すると考えられる。そして、このジルコニウムの水酸化物又は酸化物由来のZr−O結合および/又はTi−O結合の存在により、化成皮膜とその表面に形成される塗膜との密着性は良好となる。
ジルコニウム化合物(A)としては特に限定されるものではないが、ジルコニウムの硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、塩化物、臭化物、酸化物、水酸化物、過酸化物、および炭酸塩等を挙げることができる。このジルコニウム化合物(A)は、金属表面処理液中のpHが3〜5となるように、酸を含む化合物であることが好ましいが、pHがこの範囲となるように酸や塩基により調整されてもよい。
より具体的なジルコニウム化合物(A)としては、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム等を挙げることができる。これらの中でも、化成皮膜形成の観点から、本実施形態に係るジルコニウム化合物(A)は、硝酸ジルコニウムおよび酢酸ジルコニウムのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。
[両性金属化合物(B)]
本実施形態に係る両性金属化合物(B)に含まれる両性金属元素は、ジルコニウムとともに化成皮膜を形成する成分である。両性金属元素とカルボン酸は後述するように金属表面処理用組成物中のフッ素を含まないジルコニウム化合物(A)を安定化させることに寄与する。これにより、金属材料に耐食性および密着性に優れた化成皮膜を形成できる。
本実施形態に係る両性金属化合物は、塩基に対しては酸性、酸に対しては塩基性の塩を形成する化合物である。具体的には、両性金属元素化合は、アルミニウム、亜鉛、スズ又は鉛の化合物である。これらの中でも、より環境への負荷を低減できることから、本実施形態に係る両性金属化合物は、アルミニウム化合物又は亜鉛化合物を含むことが好ましい。
アルミニウム化合物としては、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム等を挙げることができる。亜鉛化合物としては、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛等を挙げることができる。
これらの中でも、耐食性能をより効果的に発現させることから、本実施形態に係る両性金属化合物は、アルミニウム化合物としての硝酸アルミニウムおよび酢酸アルミニウム、亜鉛化合物としての硝酸亜鉛および酢酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
[モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方(C)]
また、本実施形態に係る金属表面処理用組成物に含まれる、モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方(C)は、両性金属化合物(B)とともに、ジルコニウム元素を化成液中で安定化させると考えられる。モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方(C)は、化成液に含まれることでジルコニウム元素と両性金属元素とが複合キレートを形成すると考えられるからである。そのため、実質的にフッ素を含まなくても、ジルコニウム化合物(A)は、化成液で安定化すると考えられる。
モノカルボン酸又はその塩としては、酢酸、酢酸ナトリウム、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸、イソプロピオン酸等を挙げることができる。
これらの中でも、化成液の安定性をより向上させることから、本実施形態に係るモノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸および安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
[ジルコニウム化合物(A)/両性金属化合物(B)/モノカルボン酸(C)の比率]
本実施形態に係る金属表面処理用組成物において、ジルコニウム化合物(A)と、両性金属化合物(B)と、モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方(C)とは、ジルコニウム化合物(A)と、両性金属化合物(B)とが複合キレートを形成可能な範囲で調整されることが好ましい。具体的には、両性金属に対する、ジルコニウムのモル比は、1〜10であることが好ましく、1〜2であることが更に好ましい。モル比が1を下回るとジルコニウムが不足することでジルコニウムを主成分とする化成皮膜を形成することが困難になり、モル比が10を上回ると両性金属元素が不足することで複合キレートの形成が困難になる。
なお、本明細書において、ジルコニウム化合物(A)のモル数とは、ジルコニウム化合物(A)由来のジルコニウムのモル数を意味し、両性金属化合物(B)のモル数とは、両性金属化合物(B)由来の両性金属のモル数を意味する。
また、両性金属に対する、モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方のモル比は、1〜100であることが好ましく、5〜10であることが更に好ましい。モル比が1を下回るとモノカルボン酸由来の成分が不足することで複合キレートの形成が困難になり、モル比が100を上回るとモノカルボン酸由来の成分が過多となることで化成皮膜を形成することが困難になる。
[無機酸又はその塩]
また、本実施形態に係る金属表面処理用組成物に含まれる、無機酸又はその塩は、酸化剤として化成皮膜の形成反応を促進させると考えられる。無機酸としては、硝酸、亜硝酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnOおよびHVO等を挙げることができる。なお、金属表面処理用組成物には、酸化剤として、スルホン酸基含有化合物又はこれらの塩が含まれるようにしてもよい。
[金属表面処理用組成物のpH]
本実施形態に係る金属表面処理用組成物のpHは、3〜5であることが好ましく、3〜4であることが更に好ましい。pHが3を下回ると、エッチングが過剰となり充分な化成皮膜が形成できなくなる場合や、化成皮膜が不均一となり、塗装外観に悪影響を与える場合がある。一方で、pHが5を上回ると、エッチングが不充分となり良好な化成皮膜が得られない。
なお、金属表面処理用組成物のpHは、硝酸、硫酸等の酸性化合物、および、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物を使用して調整することができる。
[界面活性剤]
また、本実施形態に係る金属表面処理用組成物は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を更に含んでもよい。ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性界面活性剤としては、それぞれ従来公知のものを用いることができる。本実施形態に用いられる金属表面処理用組成物がこれらの界面活性剤を含有する場合は、金属材料をあらかじめ脱脂処理し、清浄化しておかなくても、良好な化成皮膜を形成させることができる。
[金属元素]
本実施形態に係る金属表面処理用組成物は、塗膜に密着性および耐食性を付与させることが可能であるジルコニウムおよび両性金属以外の金属元素を更に含んでもよい。このような金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ガリウム、インジウム、銅、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、セリウム、ストロンチウム、希土類元素、および銀等を挙げることができる。
[その他添加剤]
塗膜密着性をさらに向上させるためにオルガノシロキサン、オルガノシラン等のシランカップリング剤、その他シラン化合物を含有しても良い。
<金属表面処理方法>
本実施形態の金属の表面処理を行う金属表面処理方法は、特に限定されるものではなく、本実施形態に係る金属表面処理用組成物を含む金属表面処理液を金属(金属材料)に接触させることによって行うことができる。
[金属材料]
本実施形態に係る金属表面処理方法において用いられる金属材料(金属表面処理用組成物を接触させる金属)は、特に限定されるものではないが、例えば、鋼板、アルミニウム板等を挙げることができる。鋼板は、冷延鋼板、熱延鋼板、軟鋼板又は高張力鋼板等を含み、特に限定されるものではないが、例えば、鉄系金属材料、アルミニウム系金属材料、亜鉛系金属材料、およびマグネシウム系金属材料等を挙げることができる。
鉄系金属材料とは鉄又はその合金からなる金属材料を意味する。アルミニウム系金属材料とはアルミニウム又はその合金からなる金属材料を意味する。亜鉛系金属材料とは亜鉛又はその合金からなる金属材料を意味する。マグネシウム系金属材料とはマグネシウム又はその合金からなる金属材料を意味する。
[金属材料の前処理]
本実施形態に係る金属材料は、脱脂処理により清浄化されることが好ましい。さらには、本実施形態の金属材料は、脱脂処理をした後、水洗処理により水洗されることが好ましい。これら脱脂処理や水洗処理は、金属材料の表面に付着している油分や汚れを除去するために行われるものであり、無リン・無窒素脱脂洗浄液等の脱脂剤により、通常30℃〜55℃において数分間程度の浸漬処理がなされる。所望により、脱脂処理の前に、予備脱脂処理を行うことも可能である。また、脱脂処理後の水洗処理は、脱脂剤を水洗するために、大量の水洗水によって少なくとも1回以上、スプレー処理により行われることが好ましい。
なお、金属表面処理用組成物が界面活性剤を含有する場合は、金属材料をあらかじめ脱脂処理し、清浄化しておかなくても、良好な化成皮膜を形成させることができる。即ち、この場合には、処理液の接触工程において、金属材料の脱脂処理が同時に行われる。
[接触工程]
本実施形態に係る接触工程は、金属表面処理用組成物を含む金属表面処理液を金属材料に接触させる工程である。接触工程における処理方法の一例としては、浸漬法、スプレー法、ロールコート法、流しかけ処理法等を挙げることができる。
接触工程は、10℃以上70℃以下の処理温度で行われることが好ましい。10℃未満であると、十分な化成皮膜が形成されない可能性があり、また、夏場に温度調整が必要となるなどの不都合があり、70度を超えると、皮膜量が厚くなり塗膜密着性が低下すると共に、経済的にも不利となる。この処理温度は、20℃以上50℃以下の範囲であることがより好ましい。
接触工程は、5秒以上1100秒以下の処理時間で行われることが好ましい。5秒未満であると、十分な化成皮膜が形成されないので不都合であり、1100秒を超えると、これ以上の化成皮膜を形成させても効果が得られないので無意味である。この処理時間は、60秒以上120秒以下の範囲であることがより好ましい。
本実施形態に係る金属表面処理方法は、従来から実用化されているリン酸亜鉛系化成処理液による処理と比較して、表面調整処理を行わなくてもよい。このため、より少ない工程で金属材料の化成処理を行うことが可能となる。
また、本実施形態に係る金属表面処理方法は、金属材料を陰極として電解処理することもできる。この場合、陰極である金属材料界面で水素の還元反応が起こり、pHが上昇する。pHの上昇に伴い、陰極界面でのジルコニウムの元素を含む化合物の安定性が低下し、酸化物又は水を含む水酸化物として、表面処理化成皮膜が析出する。
本実施形態に係る接触工程により、金属の表面に30〜100mg/mの金属表面処理用組成物による化成皮膜を形成することが好ましく、40〜70mg/mの金属表面処理用組成物による化成皮膜を形成することが更に好ましい。金属表面処理用組成物による化成皮膜が30mg/mを下回ると、金属材料に対して、均一な化成皮膜を形成し、良好な密着性を得ることが困難になる場合がある。一方で、金属表面処理用組成物による化成皮膜が100mg/mを上回ると、塗膜密着性が低下する。
[金属材料の後処理]
本実施形態に係る金属表面処理方法により化成皮膜が形成された金属材料は、その後実施される塗膜形成の前に水洗処理を行うことが好ましい。即ち、本実施形態に係る金属表面処理方法は、金属表面処理用組成物を含む金属表面処理液を前記金属材料に接触させる接触工程と、接触工程を経た金属材料を水洗する水洗工程と、を含む。塗膜形成の前に水洗処理を行うことにより、化成皮膜の表面の不純物が除去されるため、塗装塗膜との密着性をより向上でき、良好な耐食性を付与できる。
上記表面処理後の水洗処理において、最終の水洗は、純水で行われることが好ましい。この表面処理後の水洗処理においては、スプレー水洗又は浸漬水洗のいずれであってもよく、これらの方法を組み合わせて水洗することもできる。
表面処理後に水洗処理を行った後で公知の方法に従って必要に応じて乾燥してもよいが、本実施形態に係る金属表面処理方法で化成皮膜を形成した場合は、水洗処理後に乾燥処理を行わずに塗装することができる。即ち、本実施形態に係る金属表面処理方法で化成皮膜を形成した後の塗料の塗布方法として、ウェットアンドウェット塗装方法を採用することができる。従って、本実施形態に係る金属表面処理方法は、電着塗装前の金属材料、特に、電着塗装前の自動車車体、二輪車車体等の乗物外板、各種部品、更に、工作機械、家電等を含む一般工業用部材等の表面処理工程を短縮することができる。
[その後形成される塗膜]
本実施形態に係る金属表面処理方法により化成皮膜を形成した後に、化成皮膜上に形成される塗膜としては、例えば、電着塗料、溶剤塗料、水性塗料、粉体塗料等の従来公知の塗料により形成される塗膜を挙げることができる。
本実施形態に係る金属表面処理用組成物を含む金属表面処理液を金属材料に接触させる接触工程を経た金属材料を水洗する水洗工程後、又は、接触させて電解処理した後には、金属材料を、水溶性高分子化合物および水分散性高分子化合物のうち少なくとも一方を含有する高分子含有液と接触させてもよい。即ち、本実施形態に係る金属表面処理方法は、接触工程を経た金属材料を水洗する水洗工程後、金属材料に、水溶性高分子化合物および水分散性高分子化合物のうち少なくとも一方を含有する高分子含有液を接触させる高分子含有液接触工程を含んでもよい。これにより、耐食性をさらに高めることができる。
水溶性高分子化合物および水分散性高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルレート等のアクリル系単量体との共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリウレタン、アミノ変性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、タンニン、タンニン酸およびその塩、フィチン酸、オルガノシロキサン、オルガノシラン等のシラン化合物等が挙げられる。
以上説明したように、本実施形態における金属表面処理用組成物は、金属の表面処理に用いられ、実質的にクロムおよびフッ素を含まない金属表面処理用組成物であって、実質的にフッ素を含まないジルコニウム化合物(A)と、両性金属化合物(B)と、モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方(C)と、を含有し、pHが3〜5であり、両性金属化合物(B)由来の両性金属に対する、ジルコニウム化合物(A)由来のジルコニウムのモル比は、1〜10である。モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方(C)が化成液に含まれることで、ジルコニウム元素と両性金属元素とが複合キレートを形成すると考えられる。そのため、実質的にフッ素を含まなくても、ジルコニウム化合物(A)は、化成液中で安定化する。これにより、実質的にフッ素を含まず、安定した化成液を形成できる。また、このような化成液により、安定した化成皮膜を形成できる。
また、両性金属化合物(B)は、アルミニウム化合物又は亜鉛化合物を含み、特に、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸亜鉛および酢酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種である。これにより、ジルコニウムとの複合皮膜が形成され、より耐食性能を向上させることができる。
また、モノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸および安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも一種である。これにより、化成液の安定性をより向上させることができる。
また、ジルコニウム化合物(A)は、硝酸ジルコニウムおよび酢酸ジルコニウムのうち少なくとも一方を含む。これにより、化成皮膜をより均一に形成させることができる。
また、両性金属化合物(B)由来の両性金属に対する、モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方のモル比は、1〜100である。これにより、より安定した化成皮膜を形成できる。
また、本実施形態における金属表面処理方法は、金属(金属材料)の表面を処理する金属表面処理方法であって、金属表面処理用組成物を金属に接触させる接触工程を有する。これにより、実質的にフッ素を含まず、安定した化成皮膜を金属の表面に形成できる。
また、接触工程により、金属の表面に30〜100mg/mの金属表面処理用組成物による化成皮膜を形成する。これにより、より安定した化成皮膜を金属の表面に形成できる。
次に、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
<実施例1>
金属表面処理組成物に含まれるジルコニウム化合物として硝酸ジルコニウムを用いた。また、アルミニウム化合物として、硝酸アルミニウムを用いた。また、酢酸として、98%酢酸を用いた。また、無機酸成分として硝酸ナトリウムを用いた。これらの各組成物を表1に示した割合、pHとなるように希釈、調整して実施例1の金属表面処理液を得た。なお、pH調整剤として、20%水酸化ナトリウム溶液を用いた。
<実施例2〜24>
実施例1と同様に、表1に示した各組成物を表1に示した割合、pHとなるように希釈、調整して実施例2〜24の金属表面処理液を得た。
<比較例1〜3>
モノカルボン酸およびその塩を用いずに、表1に示した各組成物を表1に示した割合、pHとなるように希釈、調整して比較例1〜3の金属表面処理液を得た。
<比較例4〜7>
両性金属化合物(B)由来の両性金属に対する、ジルコニウム化合物(A)由来のジルコニウムのモル比が50となるように、表1に示した各組成物を表1に示した割合、pHとなるように希釈、調整して比較例4、5の金属表面処理液を得た。
両性金属化合物(B)由来の両性金属に対する、ジルコニウム化合物(A)由来のジルコニウムのモル比が0.5となるように、表1に示した各組成物を表1に示した割合、pHとなるように希釈、調整して比較例6、7の金属表面処理液を得た。
<比較例8〜13>
両性金属化合物(B)を用いずに、表1に示した各組成物を表1に示した割合、pHとなるように希釈、調整して比較例8〜13の金属表面処理液を得た。
なお、比較例10〜13において、両性金属化合物(B)ではなく、硝酸カルシウム(比較例10)、硝酸マグネシウム(比較例11)、硝酸鉄(比較例12)、硝酸マンガン(比較例13)をそれぞれ用いた。
<比較例14〜17>
両性金属化合物(B)と、モノカルボン酸およびその塩とを用いずに、表1に示した各組成物を表1に示した割合、pHとなるように希釈、調整して比較例14〜17の金属表面処理液を得た。
なお、比較例14〜17において、モノカルボン酸およびその塩ではなく、硫酸ナトリウム(比較例14)、リン酸三ナトリウム(比較例15)、アスパラギン酸(比較例16)、エチドロン酸(比較例17)をそれぞれ用いた。
<比較例18、19>
pHが2.0(比較例18)又は5.5(比較例19)となるように、表1に示した各組成物を表1に示した割合となるように希釈、調整して比較例18、19の金属表面処理液を得た。
なお、各実施例および比較例の金属表面処理液のジルコニウム化合物(A)には、実質的にフッ素が含まれていなかった。また、各実施例および比較例の金属表面処理液には、実質的にクロムおよびフッ素が含まれていなかった。
<液状態>
実施例および比較例の各金属表面処理液を1時間静置した後、以下の評価基準で液状態を目視で評価した。結果を表1に示した。
(評価基準)
1:透明
2:半透明
3:白濁
表1に示したように、全ての実施例で金属表面処理液の白濁が確認されなかった。
Figure 0006850604
続いて、表2に示す鋼板(金属材料)を、日本ペイント社製「サーフクリーナー53NF」2%希釈液を用いて40℃で120秒間かけて脱脂した。脱脂された鋼板に対して、各実施例および比較例の金属表面処理剤を表2に示す処理時間および処理温度で浸漬法により処理し実施例および比較例の各金属材料を得た。
<塗膜状態>
実施例および比較例の各金属材料に対し、塗膜の状態を以下の評価試験により評価した。なお、表2に示した比較例2、6、7、8、18以外の比較例は、金属材料の表面に化成皮膜が形成されなかったことから、以下の評価試験の対象から除いた。
<金属化成皮膜量>
金属材料に形成された塗膜量を蛍光X線試験機で計測し、結果を表2に示した。
表2に示したように、実施例23を除いた全ての実施例で30〜100mg/m程度の十分な塗膜(化成皮膜)が得られた。なお、実施例23の金属材料と十分な塗膜が得られた実施例24の金属材料とは、同様の金属表面処理液が同様の金属材料に異なる処理時間で処理されたものであり、実施例23の金属表面処理液を異なる処理時間で金属材料に接触させることで30〜100mg/m程度の十分な塗膜(化成皮膜)を得ることができると考えられた。
<耐食性>
各金属材料に対して、素地まで達するクロスカットをいれた後、35℃に保たれた塩水噴霧試験器中で5%NaCl水溶液を960時間連続噴霧した。その後、カット部からの剥離幅を測定し、以下の評価基準で耐食性を評価し、結果を表2に示した。
1:剥離幅3mm未満
2:剥離幅3mm以上
表2に示したように、全ての実施例で高い耐食性が確認された。
<密着性>
塗装試験片について、JIS−K−5600 5.6に従い、碁盤目剥離試験を行った。1mm角の100個の碁盤目を用意し、セロファン粘着テープを用いて剥離試験を行い、剥がれなかった碁盤目数を数え、以下の評価基準で耐食性を評価し、結果を表2に示した。
1:100/100で剥離なし
2:1つでも剥離あり
表2に示したように、実施例23を除いた全ての実施例で高い密着性が確認された。なお、実施例23の金属材料と高い密着性が確認された実施例24の金属材料とは、同様の金属表面処理液が同様の金属材料に異なる処理時間で処理されたものであり、実施例23の金属表面処理液を異なる処理時間で金属材料に接触させることで高い密着性を有する塗膜(化成皮膜)を得ることができると考えられた。
Figure 0006850604

Claims (3)

  1. 金属の表面処理に用いられ、実質的にクロムおよびフッ素を含まない金属表面処理用組成物であって、
    実質的にフッ素を含まないジルコニウム化合物(A)と、
    両性金属化合物(B)と、
    モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方(C)と、を含有し、
    前記ジルコニウム化合物(A)は、硝酸ジルコニウムおよび酢酸ジルコニウムのうち少なくとも一方を含み、
    前記両性金属化合物(B)は、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸亜鉛および酢酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
    前記モノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸および安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
    pHが3〜5であり、
    前記両性金属化合物(B)由来の両性金属に対する、前記ジルコニウム化合物(A)由来のジルコニウムのモル比は、1〜10であり、
    前記両性金属化合物(B)由来の両性金属に対する、前記モノカルボン酸およびその塩のうち少なくとも一方(C)のモル比は、1〜100である金属表面処理用組成物。
  2. 金属の表面を処理する金属表面処理方法であって、
    請求項に記載の金属表面処理用組成物を前記金属に接触させる接触工程を有する金属表面処理方法。
  3. 前記接触工程により、金属の表面に30〜100mg/mの前記金属表面処理用組成物による化成皮膜を形成する請求項に記載の金属表面処理方法。
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