JP4463278B2 - 六価クロムフリー表面処理方法及び六価クロムフリー鉛含有銅系金属材 - Google Patents

六価クロムフリー表面処理方法及び六価クロムフリー鉛含有銅系金属材 Download PDF

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Description

本発明は、鉛含有銅系金属材を初めとする各種金属材またはその他の基材の六価クロムフリー表面処理方法及び六価クロムフリー鉛含有銅系金属材に関し、特に、水栓金具・継手・配管部品等の水道用品の素材として使用される快削黄銅等の鉛含有銅系金属材(純銅及び各種銅合金)や、クロムメッキした銅系金属材の表面処理過程でその表面に残留する六価クロムを完全に除去すると共に、その表面改質をも可能にする鉛含有銅系金属材を初めとする各種金属材またはその他の基材の六価クロムフリー表面処理方法及び六価クロムフリー鉛含有銅系金属材に関する。
従来から、水栓金具・継手・配管部品等の水道用品は、一般に、青銅、黄銅等の銅合金を鋳造又は鍛造し、切削加工、研磨加工等で所望形状に整形し、整形後の鋳造品若しくは鍛造品、または、整形後の鋳造品若しくは鍛造品にニッケルクロムメッキを施したクロムメッキ鋳造品若しくはクロムメッキ鍛造品として提供されている。
また、水道用品の銅合金としては、製造過程中の切削加工の際に銅合金の切削性を向上させるために、銅合金(特に黄銅)中に鉛を添加した鉛含有銅合金(特に快削黄銅)が使用されている。しかし、昨今の環境規制の動向から、製品化後の水道用品からの鉛の溶出が問題視されるようになり、水道用品から鉛を除去する鉛除去乃至鉛フリー(NPb)表面処理技術が開発されている。
かかるNPb表面処理に関する文献としては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
特開2000−96269
特許文献1には、鉛含有銅合金素材の表面にクロメート処理を行い、クロメート皮膜を形成することによって鉛溶出を防止する処理方法が開示されている。この処理方法によれば、鉛含有銅合金を、リン酸を添加したクロメート液に浸漬している。この処理方法によれば、クロメート液に含まれるクロム酸とリン酸の相乗効果により、鉛含有銅合金が溶解する化学反応と、クロメート被膜を形成する化学反応が生じて鉛含有銅合金素材表面に僅かに残った鉛も溶解除去され、しかも鉛を除去した鉛含有銅合金材表面がクロメート被膜で保護されて、鉛除去後の鉛含有銅合金材表面が長期間の通水による腐食で内部の鉛が溶け出したりせず、長期間に渉って鉛の溶出を低減することができるとされている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、NPb処理により銅合金表面の鉛を除去し、製品化からの鉛の溶出を低減することは可能になる一方、製品表面にクロメート皮膜を形成することになる。このクロメート皮膜は、六価クロム(Cr6+)と三価クロム(Cr3+)とを主成分とするゲル状の複合水和酸化物皮膜(XCr23・YCrO3・ZH2O)であり、優れた防食性能を発揮すると共に、六価クロムの一部は六価のまま皮膜に取り込まれ、防錆力と自己修復力を併せ持つ特徴を持つ。しかし、六価クロムは、環境負荷物質であり、発癌性の疑いがあるなど人体に有害であるとの理由から、日本や欧米を中心にクロメート皮膜に代わる代替皮膜乃至代替表面処理が強く要望され、各種の代替技術が提案されている。また、六価クロムは、鉛と同様、2006年7月1日に施行される電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限(RoHS)指令により特定有害物質に指定されており、このことからも、最終製品から六価クロムを溶出させることのない表面処理技術の開発が望まれている。
なお、水道用品以外にも、自動車・建築材料・家具・金物等に用いられる各種金属及びプラスチック(各種樹脂)材のニッケルクロム(NiCr)メッキ及び工業用クロム(Cr)メッキ、または、六価クロムを使用する各種表面処理においては、耐食性の向上、変色防止(防食)等を目的としてクロメート処理を行う場合がある。しかしながら、上記のように、昨今の環境問題への関心の高まりや国内外の法規制、特に、2006年7月から適用される欧州連合(EU)の有害物質規制、電気・電子機器に使われる特定有害物質の使用制限(RoHS)指令、それに伴っての自主規制等により、これらの分野においても、最終製品からの環境負荷物質である六価クロムが溶出することのない表面処理技術の開発が早急に求められている。
現在、六価クロムによるクロメート処理の代替技術としては、(1)三価クロムを使用したクロメート処理、(2)三価クロムを使用したクロメート層に追加コーティング層を施す処理、(3)無機系ノンクロメート処理、(4)有機系ノンクロメート処理等が提案されている。このうち無機系ノンクロメート処理については、チタン系、ジルコニウム系、モリブデン系、マンガン系、セリウム系の各表面処理が、また、有機系ノンクロメート処理では、シランカップリング剤を主剤とした表面処理が提案されている。
ここで、三価クロムを使用したクロメート処理技術として、例えば、特許文献2に記載の技術がある。
特開2004−60051
特許文献2には、家電・建材・自動車等の用途に広く適用可能で、加熱後の耐食性に優れ、かつ環境負荷物質である6価クロムの溶出がゼロであるめっき鋼材が開示されている。この技術は、部分還元クロム酸、リン酸化合物、硝酸化合物を必須成分とし、かつ、部分還元クロム酸のクロム還元率(X)と各成分の浴中濃度の間に、所定の関係を有する組成物をめっき鋼材に塗布、乾燥する。
しかしながら、特許文献2の技術を含め、三価クロムを使用したクロメート処理は、六価クロメート処理と比較して、コストが高く、耐食性が低くなるという問題がある。また、特許文献2に記載の技術は、表面にオール三価クロムの皮膜が形成されているが、時間の経過と共に、皮膜を構成する三価クロムが外部との反応等により六価クロムに変質する可能性を否定できない。更に、特許文献2に記載の技術は、鋼材用表面処理に関するもので、特に、鉛含有銅系金属の表面処理において、六価クロムの溶出防止に先立ち、同じく環境負荷物質である鉛の溶出を防止する点については開示も示唆もない。一方、その他の代替技術、即ち、ノンクロメート処理技術では、現在まで使用していた表面処理装置や工程をそのまま利用することができず、設備投資に多大なコストがかかる。
特に、給水器具である混合水栓やシングルレバー水栓等の水栓装置や各種弁装置等は、多数の部品を組み合わせた複雑な内部構造を有しており、内部の部品間等に小さい隙間(微小間隙)や複雑形状の隙間(複雑形状間隙)が多数形成される。また、内部表面に小さなクラックが多数存在したり、鉛の溶出除去箇所に小さなピンホールが存在したりする。よって、これらの微小間隙や複雑間隙、または、クラックやピンホール等に、溶出したクロムが残存する可能性が高い。よって、これらの残存する六価クロムを完全に除去しないと、水栓装置の使用に伴い、六価クロムが溶出または浸出する可能性がある。
そこで、本発明は、鉛含有金属等の各種金属及びプラスチック(各種樹脂)材のニッケルクロム(NiCr)メッキ及び工業用クロム(Cr)メッキ、または、六価クロムを使用する各種表面処理を実施した素材からなる各種用途の製品において、鉛含有金属材においては製品化後の鉛の溶出を確実に防止できると共に、全ての場合において六価クロムの溶出量をゼロとすることができ、かつ、銅系金属材等の金属材の場合は表面の耐食性を向上して変色等を確実に防止することができる鉛含有銅系金属材を初めとする各種金属材またはその他の基材の六価クロムフリー表面処理方法及び六価クロムフリー鉛含有銅系金属材の提供を課題とする。
請求項1に係る鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、鉛含有金属材の表面をクロム酸により処理し、表面部分の鉛を溶出除去するクロム酸処理工程と、クロム酸用還元剤を含有する還元剤水溶液により、前記クロム酸処理工程で前記鉛含有金属材の表面に形成された皮膜成分としての六価クロムを完全に除去する六価クロム除去工程と、六価クロムを除去した前記鉛含有金属材の表面にリン酸皮膜を形成することにより前記鉛含有金属材の表面を改質する表面改質処理工程とを備え、前記六価クロム除去工程は、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有金属材表面の六価クロムを三価クロムに還元するものであり、更に、前記六価クロム除去工程と前記表面改質処理工程との間に、前記鉛含有金属材表面に残留する三価クロムを水洗により完全に分離除去する水洗工程を備える
ここで、鉛含有金属材の表面とは、管材等、内部に空間または露出部を有する金属材の場合、その外部表面以外にその内部表面をも含む。例えば、鉛含有金属材として、黄銅等からなる水栓金具や水道配管用部品等を使用した場合、その外部表面のみならず、その内部表面若しくは内部表面露出部にも、前記クロム酸エッチング工程の処理や前記六価クロム除去工程の処理や前記表面改質処理工程の処理が施されることになる。また、鉛含有金属材の内部表面には、微小間隙や複雑形状間隙、クラックやピンホール等も含まれるが、かかる微小間隙や複雑形状間隙、クラックやピンホール等にも、前記クロム酸エッチング工程の処理や前記六価クロム除去工程の処理や前記表面改質処理工程の処理が施されることになる。
請求項2に係る鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項1の構成において、前記六価クロム除去工程が、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有金属材表面を還元するものである。
請求項3に係る鉛含有金属材の六価クロムフリー処理方法は、請求項1または2の構成において、前記クロム酸用還元剤が、次亜硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムのいずれか一つまたはこれらの混合物からなる。
請求項4に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、鉛含有金属材の表面をクロム酸により処理し、表面部分の鉛を溶出除去するクロム酸処理工程と、クロム酸用還元剤を含有する還元剤水溶液により、前記クロム酸処理工程で前記鉛含有金属材の表面に形成された皮膜成分としての六価クロムを完全に除去する六価クロム除去工程と、六価クロムを除去した前記鉛含有金属材の表面にリン酸皮膜を形成することにより前記鉛含有金属材の表面を改質する表面改質処理工程とを備え、前記表面改質処理工程は、リン酸と硝酸とを主材として含有する混酸の水溶液を貯留した化成処理槽に前記鉛含有金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有金属材の表面にリン酸皮膜を形成するものである。
請求項5に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、鉛含有銅系金属材の素地表面をクロム酸によりエッチング処理し、前記鉛含有銅系金属材の素地表面部分の鉛を溶出除去するクロム酸エッチング工程と、クロム酸用還元剤の水溶液により、前記クロム酸エッチング工程で前記鉛含有銅系金属材の素地表面に形成された皮膜成分としての六価クロムを完全に除去する六価クロム除去工程と、六価クロムを除去した前記鉛含有銅系金属材の表面にリン酸皮膜を形成することにより前記鉛含有銅系金属材の素地表面を改質する表面改質処理工程とを備え、前記六価クロム除去工程は、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の素地表面の六価クロムを三価クロムに還元するものであり、更に、前記六価クロム除去工程と前記表面改質処理工程との間に、前記鉛含有金属材の素地表面に残留する三価クロムを水洗により完全に分離除去する水洗工程を備える
ここで、鉛含有銅系金属材の表面とは、管材等、内部に空間または露出部を有する金属材の場合、その外部表面以外にその内部表面をも含む。例えば、鉛含有銅系金属材として、黄銅等からなる水栓金具や水道配管用部品等を使用した場合、その外部表面のみならず、その内部表面若しくは内部表面露出部にも、前記クロム酸エッチング工程の処理や前記六価クロム除去工程の処理や前記表面改質処理工程の処理が施されることになる。
請求項6に係る鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項5の構成において、前記六価クロム除去工程が、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の素地表面を還元するものである。
請求項7に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、鉛含有銅系金属材にクロムメッキ層を形成するクロムメッキ工程と、前記鉛含有銅系金属材の製品内部または内部金属露出部の鉛を溶出除去するクロム酸エッチング工程と、クロム酸用還元剤の水溶液により、前記クロム酸エッチング工程またはクロムメッキ工程で前記鉛含有銅系金属材の表面に形成された皮膜成分としての六価クロムを完全に除去する六価クロム除去工程と、六価クロムを除去した前記鉛含有銅系金属材の表面にリン酸皮膜を形成することにより前記鉛含有銅系金属材の表面を改質する表面改質処理工程とを備え、前記六価クロム除去工程は、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の表面の六価クロムを三価クロムに還元するものであり、更に、前記六価クロム除去工程と前記表面改質処理工程との間に、前記鉛含有金属材の表面に残留する三価クロムを水洗により完全に分離除去する水洗工程を備え、これにより、前記鉛含有銅系金属材の表面を、前記クロムメッキ層のクロムメッキからなる零価のクロム表面にする
ここで、前記クロムメッキ工程と前記クロム酸エッチング工程とは、通常、同時に実施される。即ち、被処理体としての鉛含有銅系金属材にクロムメッキ処理を施すと同時に、クロム酸によるエッチング処理を施す。また、鉛含有銅系金属材の表面とは、管材等、内部に空間または露出部を有する金属材の場合、その外部表面以外にその内部表面をも含む。例えば、鉛含有銅系金属材として、黄銅等からなる水栓金具や水道配管用部品等を使用した場合、ニッケルメッキやクロムメッキは前記外部表面にのみ形成され、その内部表面(製品内部)は、黄銅の素地が露出する内部金属露出部となる。よって、前記クロム酸エッチング工程の処理は、前記内部表面露出部に施されて、鉛含有銅系金属材の製品内部または内部表面露出部からの鉛の溶出を防止する。更に、前記六価クロム除去工程は、鉛含有銅系金属材の外部表面のみならず、その内部表面、即ち、製品内部または内部金属露出部にも施される。即ち、鉛含有銅系金属材の製品内部または内部金属露出部にも、クロムメッキ処理やクロム酸エッチング処理に伴って六価クロム皮膜が形成されることになるため、前記六価クロム除去工程の処理は、鉛含有銅系金属材の外部表面(メッキ表面)のみならず、製品内部または内部表面露出部(素地表面)にも施されることになる。更にまた、前記表面改質処理工程の処理は、鉛含有銅系金属材の外部表面(メッキ表面)のみならず、製品内部または内部表面露出部(素地表面)にも施されることになる。
請求項8に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項7の構成において、前記六価クロム除去工程が、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の表面を還元するものである。
請求項9に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項7の構成において、前記六価クロム除去工程は、所定温度及び所定濃度に維持したクロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の表面の六価クロムがクロム用還元剤により還元され三価クロムとなった状態で前記鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面に付着して残留する六価クロムを完全に除去して零価のクロム表面にするものである。
請求項10に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項5または7の構成において、前記六価クロム除去工程において、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材表面の六価クロムを三価クロムに還元して前記鉛含有銅系金属材表面から分離し、前記水溶液中に放出または溶放させる一方、前記六価クロム除去工程と前記表面改質処理工程との間に、前記鉛含有銅系金属材表面に残留する三価クロムを水洗により完全に分離除去する水洗工程を備える。
請求項11に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項5乃至10のいずれかの構成において、前記クロム酸用還元剤が、次亜硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムのいずれか一つまたはこれらの混合物からなる。
請求項12に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項5乃至11のいずれかの構成において、前記表面改質処理工程が、リン酸と硝酸とを主材として含有する混酸の水溶液を貯留した化成処理槽に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の表面にリン酸皮膜を形成するものである。
請求項13に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項5乃至11のいずれかの構成において、前記表面改質処理工程が、リン酸が濃度約2〜5%、硝酸が濃度約0.5〜2%となるよう、前記リン酸と前記硝酸とを主材として含有する混酸の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属の表面にリン酸皮膜を形成するものである。
請求項14に係る六価クロムフリー表面処理方法は、クロムを使用した表面処理により六価クロム皮膜が表面に形成された基材の六価クロムフリー表面処理方法であって、クロム酸用還元剤を含有する還元剤水溶液により、六価クロム皮膜が表面に形成された基材の表面の六価クロムを三価クロムに還元して前記基材の表面から分離した後、前記基材の表面に残留する三価クロムを水洗により完全に分離除去することにより前記六価クロム皮膜を完全に除去する。
ここで、基材の表面とは、管材等、内部に空間または露出部を有する基材の場合、その外部表面以外にその内部表面をも含む。例えば、基材として、黄銅等からなる水栓金具や水道配管用部品等を使用した場合、その外部表面のみならず、その内部表面若しくは内部表面露出部にも、前記六価クロムの除去処理が施されることになる。
また、前記基材としては、クロムを使用した表面処理により六価クロム皮膜が表面に形成されるものであれば、任意のものを使用することができる。例えば、基材としては、クロム酸エッチング処理、クロメート処理、クロムメッキ処理等の表面処理により六価クロム皮膜が表面に形成される鉄系金属材や銅系金属材等の金属材を使用することができる。金属材としては、素地のままの金属材(即ち、素地金属表面にメッキを施さない非メッキ品)、素地金属表面に硬質クロムメッキやニッケルクロムメッキ等のメッキを施したメッキ品等を使用することができる。また、前記基材としては、金属材以外に、熱可塑性合成樹脂や熱硬化性合成樹脂等の樹脂材や皮革等の非金属材を使用することもできる。即ち、クロムメッキを施した皮革製品やプラスチック製品に本発明を適用することができる。或いは、基材としては、メッキ品以外にも、塗装品を使用することもできる。更に、本発明は、水栓金具や水道用品等の他、自動車用部品等、各種製品に適用することができる。
請求項15に係る六価クロムフリー表面処理方法は、クロムを使用した表面処理により六価クロム皮膜が表面に形成された基材の六価クロムフリー表面処理方法であって、クロム酸用還元剤を含有する還元剤水溶液により、六価クロム皮膜が表面に形成された基材の表面の前記六価クロム皮膜を完全に除去する六価クロム除去工程と、六価クロム皮膜を除去した後、リン酸と硝酸とを主材として含有する混酸の水溶液を貯留した化成処理槽に前記基材を所定時間浸漬することにより、前記基材の表面にリン酸皮膜を形成して前記基材の表面を改質する表面改質処理工程とを備える。
ここで、基材の表面とは、管材等、内部に空間または露出部を有する基材の場合、その外部表面以外にその内部表面をも含む。例えば、基材として、黄銅等からなる水栓金具や水道配管用部品等を使用した場合、その外部表面のみならず、その内部表面若しくは内部表面露出部にも、前記六価クロム除去工程の処理や前記表面改質処理工程の処理が施されることになる。
また、前記基材としては、クロムを使用した表面処理により六価クロム皮膜が表面に形成されるものであれば、任意のものを使用することができる。例えば、基材としては、クロム酸エッチング処理、クロメート処理、クロムメッキ処理等の表面処理により六価クロム皮膜が表面に形成される鉄系金属材や銅系金属材等の金属材を使用することができる。金属材としては、素地のままの金属材(即ち、素地金属表面にメッキを施さない非メッキ品)、素地金属表面に硬質クロムメッキやニッケルクロムメッキ等のメッキを施したメッキ品等を使用することができる。また、前記基材としては、金属材以外に、熱可塑性合成樹脂や熱硬化性合成樹脂等の樹脂材や皮革等の非金属材を使用することもできる。即ち、クロムメッキを施した皮革製品やプラスチック製品に本発明を適用することができる。或いは、基材としては、メッキ品以外にも、塗装品を使用することもできる。更に、本発明は、水栓金具や水道用品等の他、自動車用部品等、各種製品に適用することができる。
また、本発明に係る鉛含有銅系金属材は、メッキを施すことなく使用される六価クロムフリー鉛含有銅系金属材であって、鉛含有銅系金属材の表面部分の鉛をクロム酸エッチング処理により溶出除去すると共に、前記クロム酸エッチング処理により前記鉛含有銅系金属材の表面に形成された六価クロムを、クロム酸用還元剤水溶液による還元処理により完全に除去した後、前記鉛含有銅系金属材の表面にリン酸皮膜を形成してなる。
なお、鉛含有銅系金属材の表面とは、管材等、内部に空間または露出部を有する金属材の場合、その外部表面以外にその内部表面をも含む。例えば、鉛含有銅系金属材として、黄銅等からなる水栓金具や水道配管用部品等を使用した場合、その外部表面のみならず、その内部表面若しくは内部表面露出部にも、前記クロム酸エッチング処理や前記六価クロムの除去処理が施され、前記リン酸皮膜が形成されることになる。
また、本発明に係る鉛含有銅系金属材は、メッキを施して使用される六価クロムフリー鉛含有銅系金属材であって、鉛含有銅系金属材の内部表面露出部または製品内部の鉛をクロム酸エッチング処理により溶出除去すると共に、前記クロム酸エッチング処理により前記鉛含有銅系金属材のメッキ表面に形成された六価クロムを、クロム酸用還元剤水溶液による還元処理により完全に除去した後、前記鉛含有銅系金属材のメッキ表面にリン酸皮膜を形成してなる。
ここで、鉛含有銅系金属材の表面とは、管材等、内部に空間または露出部を有する金属材の場合、その外部表面以外にその内部表面をも含む。例えば、鉛含有銅系金属材として、黄銅等からなる水栓金具や水道配管用部品等を使用した場合、ニッケルメッキやクロムメッキ等のメッキは前記外部表面にのみ形成され、その内部表面(製品内部)は、黄銅の素地が露出する内部金属露出部となる。よって、前記クロム酸エッチング処理は、前記内部表面露出部に施されて、鉛含有銅系金属材の製品内部または内部表面露出部からの鉛の溶出を防止する。また、前記六価クロムの除去処理は、鉛含有銅系金属材の外部表面のみならず、その内部表面、即ち、製品内部または内部金属露出部にも施される。即ち、鉛含有銅系金属材の製品内部または内部金属露出部にも、クロムメッキ処理やクロム酸エッチング処理に伴って六価クロム皮膜が形成されることになるため、前記六価クロムの除去処理は、鉛含有銅系金属材の外部表面(メッキ表面)のみならず、製品内部または内部表面露出部(素地表面)にも施されることになる。更に、前記リン酸皮膜の形成は、鉛含有銅系金属材の外部表面(メッキ表面)のみならず、製品内部または内部表面露出部(素地表面)にも行なわれることになる。
請求項1に係る鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、上記のように構成したため、鉛含有金属を素材とする製品において、製品化後の鉛の溶出を確実に防止できると共に、六価クロムの溶出量をゼロとすることができ、かつ、表面の耐食性を向上して変色等を確実に防止することができる。
また、請求項1に係る鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、六価クロム除去工程において鉛含有金属材の表面の六価クロムを還元することにより、六価クロムが三価クロムとなる。また、鉛含有金属材の表面に付着する三価クロムが、更に、水洗工程で水洗により完全に鉛含有金属材の表面から分離除去されることにより、六価クロムの溶出量をゼロとすることができる。
請求項2に係る鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項1の効果に加え、六価クロム除去工程において鉛含有金属材の表面の六価クロムを完全に除去することにより、六価クロムの溶出量をゼロとすることができる。
請求項3に係る鉛含有金属材の六価クロムフリー処理方法は、請求項1または2の効果に加え、六価クロム除去工程において、より効果的に六価クロムの還元処理を行うことができる。
請求項4に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、表面改質処理工程において、鉛含有金属材の表面に強固なリン酸皮膜を確実に形成することができる。
請求項5に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、上記のように構成したため、鉛含有銅系金属を素材とする素地製品において、製品化後の鉛の溶出を確実に防止できると共に、六価クロムの溶出量をゼロとすることができ、かつ、素地表面の耐食性を向上して変色等を確実に防止することができる。
また、請求項5に係る鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、六価クロム除去工程において鉛含有銅系金属材の素地表面の六価クロムを還元することにより、六価クロムが三価クロムとなる。また、鉛含有銅系金属材の素地表面に付着する三価クロムが、更に、水洗工程で水洗により完全に鉛含有銅系金属材の素地表面から分離除去されることにより、六価クロムの溶出量をゼロとすることができる。
請求項6に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項5の効果に加え、六価クロム除去工程において鉛含有銅系金属材の素地表面の六価クロムを完全に除去することにより、六価クロムの溶出量をゼロとすることができる。
請求項7に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、上記のように構成したため、鉛含有銅系金属を素材とするメッキ製品において、製品化後の鉛の溶出を確実に防止できると共に、六価クロムの溶出量をゼロとすることができ、かつ、メッキ表面の耐食性を向上して変色等を確実に防止することができる。
また、請求項7に係る鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、六価クロム除去工程において鉛含有銅系金属材の表面の六価クロムを還元することにより、六価クロムが三価クロムとなる。また、鉛含有銅系金属材の表面に付着する三価クロムが、更に、水洗工程で水洗により完全に鉛含有銅系金属材の表面から分離除去されることにより、六価クロムの溶出量をゼロとすることができる。
請求項8に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項7の効果に加え、六価クロム除去工程において鉛含有銅系金属材の表面の六価クロムを完全に除去することにより、六価クロムの溶出量をゼロとすることができる。
請求項9に係る六価クロムフリー表面処理方法は、請求項7の効果に加え、六価クロム除去工程において鉛含有銅系金属材の表面の六価クロムを完全に除去し、鉛含有銅系金属材の表面をクロム表面とすることにより、六価クロムの溶出量をゼロとすることができる。
請求項10に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項5または7の効果に加え、六価クロム除去工程において鉛含有銅系金属材の表面の六価クロムを完全に除去し、鉛含有銅系金属材の表面をクロム表面とすることにより、六価クロムの溶出量をゼロとすることができる。即ち、鉛含有銅系金属材の表面に付着する三価クロムが水洗工程により完全に分離除去され、鉛含有銅系金属材の表面をクロムメッキのみからなり六価クロムや三価クロムを全く有しない完全なクロム表面、即ち、零価のクロム表面とすることができる。
請求項11に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項5乃至10のいずれかの効果に加え、六価クロム除去工程において、より効果的に六価クロムの還元処理を行うことができる。
請求項12に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項5乃至11のいずれかの効果に加え、表面改質処理工程において、鉛含有銅系金属材の表面に強固なリン酸皮膜を確実に形成することができる。
請求項13に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、請求項5乃至11のいずれかの効果に加え、表面改質処理工程において、鉛含有銅系金属材の表面に強固なリン酸皮膜を一層確実に形成することができる。
請求項14に係る六価クロムフリー表面処理方法は、上記のように構成したため、クロムを使用した表面処理により六価クロム皮膜が表面に形成された基材を素材とする製品において、製品化後の六価クロムの溶出量をゼロとすることができる。
請求項15に係る六価クロムフリー表面処理方法は、上記のように構成したため、クロムを使用した表面処理により六価クロム皮膜が表面に形成された基材を素材とする製品において、製品化後の六価クロムの溶出量をゼロとすることができ、かつ、表面の耐食性を向上して変色等を確実に防止することができる。
また、本発明に係る鉛含有銅系金属材は、上記のように構成したため、メッキを施すことなく使用される鉛含有銅系金属(ホウ金)を素材とする製品において、製品化後の鉛の溶出を確実に防止できると共に、六価クロムの溶出量をゼロとすることができ、かつ、素地表面の耐食性を向上して変色等を確実に防止することができる。
また、本発明に係る鉛含有銅系金属材は、上記のように構成したため、メッキを施して使用される鉛含有銅系金属(メッキ品)を素材とする製品において、製品化後の鉛の溶出を確実に防止できると共に、六価クロムの溶出量をゼロとすることができ、かつ、メッキ表面の耐食性を向上して変色等を確実に防止することができる。
図1は本発明の実施の形態1に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法の一連の工程を示す工程図である。 図2は本発明の実施の形態1に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法による鉛含有銅系金属材の表面状態の変化を示す模式図であり、(a)はクロム酸エッチング工程において鉛含有銅系金属材の素地表面に六価クロム皮膜が形成された状態を、(b)は六価クロム除去工程において鉛含有銅系金属材の素地表面の六価クロム皮膜が三価クロムに還元された状態を、(c)は六価クロム除去工程後の水洗工程において鉛含有銅系金属材の素地表面から三価クロムが水洗された状態を、(d)は表面改質処理工程において鉛含有銅系金属材の素地表面にリン酸皮膜が形成された状態を示す。 図3は本発明の実施の形態2に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法の一連の工程を示す工程図である。 図4は本発明の実施の形態2に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法による鉛含有銅系金属材の表面状態の変化を示す模式図であり、(a)は超光沢ニッケルメッキ工程において鉛含有銅系金属材の素地表面に超光沢ニッケルメッキが形成された状態を、(b)は光沢ニッケルメッキ工程において鉛含有銅系金属材の超光沢ニッケルメッキ表面に光沢ニッケルメッキが形成された状態を、(c)はクロムメッキ工程において鉛含有銅系金属材の光沢ニッケルメッキ表面にクロムメッキが形成されると共に、クロム酸エッチング工程においてクロムメッキ表面に六価クロム皮膜が形成された状態を、(d)は六価クロム除去工程において鉛含有銅系金属材のメッキ表面の六価クロム皮膜が還元された状態を、(e)は六価クロム除去工程後の水洗工程において鉛含有銅系金属材のクロムメッキ表面から三価クロムが水洗される共に零価のクロム表面となった状態を、(f)は表面改質処理工程において鉛含有銅系金属材のクロムメッキ表面にリン酸皮膜が形成された状態を示す。
S1:アルカリクリーナ超音波洗浄工程、S2:アルカリクリーナ超音波洗浄後の第1回目の水洗工程
S3:アルカリクリーナ超音波洗浄後の第2回目の水洗工程
S4:クロム酸エッチング工程(クロム酸処理工程)
S5:第1回目の回収工程、S6:第2回目の回収工程、S8:六価クロム除去工程
S9:六価クロム除去後の水洗工程、S10:表面改質処理工程
S11:表面改質処理工程後の第1回目の水洗工程
S12:表面改質処理工程後の第2回目の水洗工程
S15:湯洗工程、S16:乾燥工程
S21:アルカリクリーナ超音波洗浄工程
S22:アルカリクリーナ超音波洗浄後の第1回目の水洗工程S22
S23:アルカリクリーナ超音波洗浄後の第2回目の水洗工程
S24:(−)電解脱脂工程、S25:(+)電解脱脂工程
S26:電解脱脂後の第1回目の水洗工程、S27:電解脱脂後の第2回目の水洗工程
S28:第1回目の活性酸処理工程
S29:第1回目の活性酸処理後の水洗工程、S30:超光沢ニッケルメッキ工程
S31:超光沢ニッケルメッキ後の第1回目の回収工程
S32:超光沢ニッケルメッキ後の第2回目の回収工程
S33:光沢ニッケルメッキ工程、S34:光沢ニッケルメッキ後の回収工程
S35:光沢ニッケルメッキ後の第1回目の水洗工程
S36:光沢ニッケルメッキ後の第2回目の水洗工程
S37:第2回目の活性酸処理工程、S38:第2回目の活性酸処理後の水洗工程
S39:クロム酸活性処理工程(クロム酸処理工程)
S40:クロムメッキ工程(クロム酸エッチング工程)
S41:クロムメッキ後の第1回目の回収工程
S42:クロムメッキ後の第2回目の回収工程
S44:六価クロム除去工程、S45:六価クロム除去後の水洗工程
S46:表面改質処理工程
S47:表面改質処理工程後の第1回目の水洗工程
S48:表面改質処理工程後の第2回目の水洗工程
S50:湯洗工程、S52:乾燥工程
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)を説明する。なお、各実施の形態を通じ、同一の部材、要素または部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
実施の形態1(素地表面処理)
以下、本発明の実施の形態1に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法について説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法の一連の工程を示す工程図である。図2は本発明の実施の形態1に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法による鉛含有銅系金属材の表面状態の変化を示す模式図であり、(a)はクロム酸エッチング工程において鉛含有銅系金属材の素地表面に六価クロム皮膜が形成された状態を、(b)は六価クロム除去工程において鉛含有銅系金属材の素地表面の六価クロム皮膜が三価クロムに還元された状態を、(c)は六価クロム除去工程後の水洗工程において鉛含有銅系金属材の素地表面から三価クロムが水洗された状態を、(d)は表面改質処理工程において鉛含有銅系金属材の素地表面にリン酸皮膜が形成された状態を示す。
実施の形態1に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、鋳造等により所定形状に成形された鉛含有銅系金属材、例えば、快削黄銅の水洗金具の鋳造品の素地表面からの鉛の溶出を防止して鉛フリーとすると共に、素地表面からの六価クロムの溶出をも防止して六価クロムフリーとし、かつ、素地表面にリン酸皮膜を形成して耐食性(変色防止機能等)を向上するものである。詳細には、実施の形態1に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、図1に示すように、アルカリクリーナ超音波洗浄工程S1、アルカリクリーナ超音波洗浄後の第1回目の水洗工程S2、アルカリクリーナ超音波洗浄後の第2回目の水洗工程S3、クロム酸処理工程としてのクロム酸エッチング工程S4、第1回目の回収工程S5、第2回目の回収工程S6、六価クロム除去工程S7、六価クロム除去後の水洗工程S8、表面改質処理工程S9、表面改質処理工程S9後の第1回目の水洗工程S10、表面改質処理工程S9後の第2回目の水洗工程S11、湯洗工程S12及び乾燥工程S13からなる。以下、各工程について説明する。
[アルカリクリーナ超音波洗浄工程]
鉛含有銅系金属材は、まず、アルカリクリーナ超音波洗浄工程S1において、アルカリクリーナによる超音波洗浄により、その素地表面(内部の露出表面含む)が洗浄される。このとき、鉛含有銅系金属材の素地表面部分に含有される鉛成分は、アルカリ及び酸のいずれにも溶解するため、このアルカリクリーナ超音波洗浄処理におけるアルカリクリーナにより、鉛含有銅系金属材の素地表面部分に存在する鉛成分の大部分が溶出して除去される。
[水洗工程]
鉛含有銅系金属材は、アルカリクリーナ超音波洗浄工程S1でアルカリクリーナ超音波洗浄処理された後、アルカリクリーナ超音波洗浄槽から引き上げられ、アルカリクリーナ超音波洗浄後の第1回目の水洗工程S2に送られて、第1の水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられて、更に、アルカリクリーナ超音波洗浄後の第2回目の水洗工程S3に送られ、第2の水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材の素地表面(内部の露出表面含む)に付着したアルカリクリーナ超音波洗浄液や、アルカリクリーナ超音波洗浄液に含有される形で素地表面(内部の露出表面含む)に付着する溶出鉛成分等が、第1の水洗槽及び第2の水洗槽において順次水洗により除去され、鉛含有銅系金属材の素地表面が清浄化される。
[クロム酸エッチング工程(クロム酸処理工程)]
鉛含有銅系金属材は、次に、クロム酸処理工程としてのクロム酸エッチング工程S4において、所定温度のクロム酸エッチング液(水溶液)を貯留したクロム酸エッチング槽に所定時間浸漬される。具体的には、クロム酸エッチング工程S4のクロム酸エッチング液としては、例えば、無水クロム酸(CrO3)の水溶液を使用する。なお、クロム酸エッチング液の浴組成は、例えば、水(H2O)に対して無水クロム酸(CrO3)のみを所定割合で混合したもの、若しくは、水(H2O)に対して無水クロム酸(CrO3)及び硫酸(H2SO4)を所定割合で混合したものとすることができる。或いは、クロム酸エッチング工程S4で、その他の銅及び銅合金用のクロム酸エッチング液(例えば、重クロム酸カリウム水溶液、フッ素化合物等)を使用することもできる。このとき、クロム酸エッチング液に含まれるクロム酸水溶液は強酸化性であるため、鉛含有銅系金属材の素地表面(内部の露出表面含む)部分を全体溶解しながらその表面部分に含有される鉛成分をも溶解する。これにより、鉛含有銅系金属材の素地表面部分に存在する鉛成分の残部がクロム酸エッチング液中に溶出して除去される。
[回収工程]
クロム酸エッチング工程S4の後、鉛含有銅系金属材は、クロム酸エッチング槽から引き上げられ、次の第1回目の回収工程S5に送られて、第1の回収水槽に所定時間浸漬された後引き上げられ、次の第2回目の回収工程S6に送られて、第2の回収水槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材の素地表面(内部の露出表面含む)に付着する(クロム酸を含む)クロム酸エッチング液が、第1の回収水槽及び第2の回収水槽に順次回収され、鉛含有銅系金属材の素地表面が完全に清浄化される。このとき、鉛含有金属材の素地表面(外側素地表面及び内部素地表面)には、必然的に、六価クロム(Cr6+)を含有するゲル状の六価クロム皮膜が形成される。
このときの反応による鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面の変化を模式的に説明すると、図2(a)に示すように、クロム酸エッチング工程S4から回収工程S5,S6において、鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面には、ゲル状の複合水和酸化物皮膜(XCr23・YCrO3・ZH2O)の皮膜が形成される。なお、クロム酸エッチング工程S4後、クロム酸エッチング槽から引き上げられた鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面には、多量のクロム酸エッチング液が付着している。しかし、鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面に付着したクロム酸エッチング液は、第1回目及び第2回目の回収工程S5及びS6において第1及び第2の回収水槽内で除去されて水中に放出される。
[反応式]
或いは、このとき、六価クロム皮膜は、例えば、以下の反応式により、鉛含有銅系金属材の素地表面に生成されると考えることもできる。
(1)CrO3+H2O⇔H2CrO4
(2)2H2CrO4⇔H2Cr27+H2
(3)Cr27 2-+14H++3Cu⇔2Cr3++3Cu2++7H2
(4)Cr3++3H2O⇔Cr(OH)3+3H+
(5)2Cr(OH)3+CrO4 2-+2H+⇔Cr(OH)3+Cr(OH)・CrO4・H2
[水洗工程]
2回の回収工程S5,S6の後、鉛含有銅系金属材は、水洗工程S7に送られて、水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材の素地表面(内部の露出表面含む)に残留するクロム酸エッチング液やその他の付着物が、水洗槽により水洗除去され、鉛含有銅系金属材の素地表面が更に完全に清浄化される。なお、水洗工程S7は、必要に応じて、省略することもできる。
[六価クロム除去工程]
回収工程S5,S6後の水洗工程S7の後、鉛含有銅系金属材は、水洗槽から引き上げられ、六価クロム除去工程S8において、所定温度の還元剤水溶液を貯留した還元槽(還元浴)に所定時間浸漬される。六価クロム除去工程S8の還元浴のクロム酸用還元剤としては、例えば、次亜硫酸ナトリウム(Na225)、亜二チオン酸ナトリウム(Na224)、チオ硫酸ナトリウム(Na223)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)等を使用することができる。なお、次亜硫酸ナトリウム(Na225)としては、例えば、大東化学株式会社の製品名ソービスを使用することができる。また、亜二チオン酸ナトリウム(Na224)としては、例えば、広栄化学工業株式会社の製品名ハイドロサルファイトコンクを使用することができる。そして、次亜硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム等の1種またはそれ以上を溶解した所定濃度の亜硫酸ナトリウム水溶液を調製して還元浴とすることができる。例えば、亜二チオン酸ナトリウムを約5〜10g/lの割合で水中に攪拌溶解して還元剤水溶液を調製することができる。なお、還元浴中における還元剤濃度は、数g/l〜数10g/lの範囲内で可能であり、使用する成分の組合せにより適宜判断することが好ましい。好ましくは、還元浴中における還元剤濃度は、約2〜5%の範囲とし、より好ましくは、約3〜5%の範囲とする。或いは、上記のように、還元浴中における還元剤濃度は、約5〜10g/lとすることが好ましい。また、還元浴の温度は、常温とすることができるが、反応速度により適宜温度調節することが好ましい。更に、還元浴への鉛含有銅系金属材の浸漬時間は、約20〜30秒の範囲の時間とすることができるが、反応速度により適宜温度調節することが好ましい。ここで、還元浴のpH調整を行うことも好ましく、例えば、次亜硫酸ナトリウム(Na225)の場合、還元浴中に硫酸(H2SO4)を添加して、pH2〜3の範囲となるようpH調整することが好ましい。或いは、例えば、亜二チオン酸ナトリウム(Na224)の場合、還元浴を中性pHとして還元力を発揮させることができるが、還元浴をアルカリ性となるようpH調整して、その還元力を強力に発揮させることもできる。
六価クロム除去工程S8で、上記還元浴に鉛含有銅系金属材を浸漬すると、クロム酸エッチング工程S4で前記鉛含有銅系金属材の素地表面(内部の露出表面含む)に形成された皮膜成分としての六価クロムが完全に除去される。具体的には、還元浴に鉛含有銅系金属材を浸漬すると、鉛含有銅系金属材の素地表面の六価クロム(Cr6+)の皮膜が、還元浴中のクロム酸用還元剤により還元されて三価クロム(Cr3+)となり、鉛含有銅系金属材の素地表面から分離して還元浴中に放出される。なお、鉛含有銅系金属材の素地表面から離脱して還元浴中に放出された三価クロム(Cr3+)は、最終的に、還元浴の還元剤水溶液を中性域にpH調整等することにより、還元浴の還元剤水溶液中に沈殿させて回収等することができる。
このときの反応による鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面の変化を模式的に説明すると、図2(b)に示すように、鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面に形成されたゲル状の複合水和酸化物皮膜(XCr23・YCrO3・ZH2O)の皮膜、即ち、六価クロムの皮膜は、六価クロム除去工程S7でクロム酸用還元剤により還元され、三価クロム(Cr23)となった状態で、鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面に付着していると推察される。即ち、このとき、鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面には、六価クロムは全く存在せず、鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面から六価クロムが完全に除去されたといえる。
[水洗工程]
鉛含有銅系金属材は、六価クロム除去工程S8で還元処理された後、還元槽から引き上げられ、ただちに六価クロム除去後の水洗工程S9に送られて、水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材の素地表面(内部の露出表面含む)に付着した三価クロム(Cr3+)、例えば、酸化クロム(Cr23)が、水洗槽において除去され、鉛含有銅系金属材の素地表面が清浄化される。このときの反応による鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面の変化を模式的に説明すると、図2(c)に示すように、鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面に付着した三価クロム(Cr23)は、全て、水洗工程S9での水洗槽内における水洗により、鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面から完全に分離除去されて水中に放出される。即ち、鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面には、六価クロムが全く存在しないのみならず、三価クロムも全て除去されて全く存在しない状態となる。
[反応式]
なお、上記六価クロム除去工程S8で、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(Na225)を使用した場合、次亜硫酸ナトリウム(Na225)が水中で亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)となり、例えば、以下の反応式により、鉛含有銅系金属材の素地表面の六価クロム(4CrO4 2-または4H2CrO4)が三価クロム(2Cr(SO43)に還元されると考えることもできる。
4CrO4 2-+6NaHSO3+3H2SO4⇔2Cr(SO43+3Na2SO4+10H2
また、六価クロム除去工程S8で、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(Na225)をそのまま還元槽の水溶液中に投入した場合、例えば、以下の反応式により、鉛含有銅系金属材の素地表面の六価クロム(4CrO4 2-または4H2CrO4)が三価クロム(2Cr(SO43)に還元されると考えることもできる。
4H2CrO4+3Na225+3H2SO4⇔2Cr(SO43+3Na2SO4+7H2
このとき、六価クロム(Cr6+)は、還元浴中で亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)に硫酸(H2SO4)を添加してpHをpH2〜3の間に調製しても、上記反応が進むにつれて還元浴中のpHが上昇し、中性付近で反応が止まることがある。これは、硫酸(H2SO4)は還元剤水溶液中では2H+とSO4 2-とに解離し、プロトン(H+)を供給するため、反応は右方向に進み(→)、プロトンの供給が終わると反応が停止するためと考えられる。よって、この場合、還元浴のpHをモニターし、pHをpH2〜3の間に維持するよう、定期的に硫酸を追加することが好ましい。
[排水処理工程]
上記回収工程S5及びS6では、回収槽内の水中に六価クロムが存在している。また、六価クロム除去工程S8では、還元槽の還元剤水溶液中に三価クロムが存在している。更に、水洗工程S9では、水洗槽の水中に三価クロムが存在している。よって、図示はしないが、回収槽、還元槽及び水洗槽の排水には排水処理工程が必要となる。即ち、回収槽の場合、水中に六価クロムが含有されるため、排水に上記次亜硫酸ナトリウム等の還元剤を添加して水溶し、六価クロムを三価クロムに還元処理する。その後、排水に水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して排水のpHを中性域に調整したり、排水に凝集剤等を添加したりして、排水中の三価クロムを凝集沈殿させる。そして、排水の上澄み部分(三価クロムを含有しない清浄水)と沈殿部分とを分離して取り出し、再利用・廃棄処理等する。また、前記還元槽及び水洗槽の場合、還元剤水溶液中及び水中には三価クロムが含有されるため、排水に水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して排水のpHを中性域に調整したり、排水に凝集剤等を添加したりして、排水中の三価クロムを凝集沈殿させる。そして、排水の上澄み部分(三価クロムを含有しない清浄水)と沈殿部分とを分離して取り出し、再利用・廃棄処理等する。例えば、上記反応式(a)または(b)の場合、還元剤水溶液中に溶解した硫酸クロム(2Cr(SO43)を水酸化ナトリウム(NaOH)等により中和し、水酸化クロムとして溶液中に沈殿させた後、濾別し、その濾液を排水処理すると共に、沈殿物(水酸化クロム)は脱水処理などを行う等して、廃棄物として処分することができる。
[表面改質処理工程]
水洗工程S9の後、鉛含有銅系合金材は、表面改質処理工程S10に送られ、リン酸皮膜処理により、六価クロムを除去した前記鉛含有銅系金属材の素地表面(内部の露出表面含む)が改質される。具体的には、表面改質処理工程S10では、鉛含有銅系合金材は、所定温度の混酸水溶液を貯留した化成処理槽に所定時間浸漬される。表面改質処理工程S10の化成処理層の混酸水溶液としては、例えば、リン酸乃至オルトリン酸(H3PO4)と硝酸(HNO3)とを主材として溶解した混酸水溶液を使用することができる。リン酸皮膜の良好な形成の観点から、リン酸の濃度は約2〜5%の範囲とすることが好ましい。また、硝酸の濃度は約0.5〜2%の範囲とすることが好ましい。即ち、混酸水溶液における硝酸は、化学研磨機能等を発揮することにより、リン酸による鉛含有銅系金属表面へのリン酸皮膜の形成を促進または助長する等の目的で使用されるが、硝酸の濃度は約0.5未満ではかかる機能を十分に発揮できず、一方、硝酸の濃度が約2%を越えると、鉛含有銅系金属の最終製品の外観等に影響を与える可能性がある。更に、リン酸及び混酸の濃度を上記範囲の設定とすると、鉛含有銅系金属材にメッキを施さずにその素地表面にリン酸皮膜を施す場合のみならず、鉛含有銅系金属材にニッケルメッキやニッケルクロムメッキ等を施してそのメッキ表面にリン酸皮膜を施す場合でも、表面に良好なリン酸皮膜を施し、かつ、最終製品の外観等を良好に維持することができる。一方、化成処理浴の温度は、例えば、約40〜60℃または約40〜80℃の範囲とすることができる。更に、化成処理浴への鉛含有銅系金属材の浸漬時間は、例えば、約20秒〜3分または約30秒〜3分の範囲とすることができる。なお、化成処理浴の温度と鉛含有銅系金属材の浸漬時間とは相対的に決定し、化成処理浴の温度を高く設定した場合、鉛含有銅系金属材の浸漬時間を短く設定し、化成処理浴の温度を低く設定した場合、鉛含有銅系金属材の浸漬時間を長く設定することが好ましい。例えば、化成処理槽の温度が約40℃の場合は浸漬時間を約3分間とし、化成処理層の温度が約60℃の場合は浸漬時間を約20秒間とすることができる。
上記所定濃度のリン酸(オルトリン酸)と硝酸とを含有する混酸の水溶液を貯留した化成処理槽に前記鉛含有銅系金属材を上記所定時間浸漬することにより、鉛含有金属材の素地表面に所定膜厚のリン酸皮膜が形成され、防食機能及び変色防止機能等の所期の機能を発揮する。なお、前記化成処理槽の混酸水溶液には、リン酸及び硝酸の他、シリカ等の無機分散体等を添加剤として加えてもよい。このときの反応による鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面の変化を模式的に説明すると、図2(d)に示すように、鉛含有銅系金属材(Cu)の素地表面(六価クロム及び三価クロムが全く存在しない素地表面)では、鉛含有銅系金属材(Cu)とリン酸とが反応して、所定のリン酸皮膜(H3PO4)が形成されると推察される。
或いは、表面改質処理工程S10における銅または銅合金の表面の改質処理(化成処理)は、以下のように行われると考えることもできる。まず、第一段階として、混酸水溶液に含有される硝酸により、銅または銅合金の表面が溶け、その直後、銅または銅合金の表面に酸化膜が形成される。この酸化膜は、酸化第一銅(Cu2O)と考えられる。また、このときの反応は以下の反応式のように進行すると考えられる。
4Cu+4HNO3 → 4Cu2++2H2O+3O2+4NO↑ →
2Cu2O+2H2O+2O2+4NO↑
次に、第二段階として、銅または銅合金の表面でリン酸による反応が進行する。この燐酸による反応の詳細は不明であるが、一部がリン酸塩三水和物となると考えられ、以下のような反応式のように反応が進行すると考えられる。
6Cu+4H3PO4+3O2 → 2Cu3(PO42+6H2O →
2(Cu3(PO42・6H2O)
[水洗工程]
鉛含有銅系金属材は、表面改質処理工程S10でリン酸皮膜処理された後、化成処理槽から引き上げられ、表面改質処理工程S10後の第1回目の水洗工程S11に送られて、水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられ、更に、表面改質処理工程S10後の第2回目の水洗工程S12に送られ、水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材の表面(内部の露出表面含む)に付着した混酸成分が、水洗工程S11の水洗槽及び水洗工程S12の水洗槽において順次水洗により除去され、鉛含有銅系金属材の表面が清浄化される。
[変色防止処理工程]
次に、鉛含有銅系金属材は、水栓工程S11及びS12の後、変色防止処理工程S13に送られ、防錆剤水溶液等の変色防止剤を貯留した変色防止処理槽に所定時間浸漬されて、素地表面(内部の露出表面含む)が防錆・腐食・変色防止処理される。このときの防錆剤乃至腐食・変色防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール(C653)を使用することができる。このベンゾトリアゾールは、銅または銅合金との反応では、不溶性のCu−ベンゾトリアゾール錯重合体になっている。ここで、Cu+のベンゾトリアゾールの構造式はCuC643となり、Cu2+のベンゾトリアゾールの構造式はCu(C6332となると推察される。なお、変色防止処理工程S13は、必要に応じて省略することもできる。
[水洗工程]
鉛含有銅系金属材は、前記変色防止処理工程S13の後、変色防止処理槽から引き上げられ、水洗工程S14に送られて、水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材の表面(内部の露出表面含む)に付着した変色防止剤成分が、水洗槽において水洗により除去され、鉛含有銅系金属材の表面が清浄化される。なお、水洗工程S14は、変色防止処理工程S13を省略したとき等、必要時には省略することもできる。
[湯洗工程及び乾燥工程]
鉛含有銅系金属材は、前記変色防止処理工程S13後の水洗工程S14の後、変色防止処理槽から引き上げられ、湯洗工程S15に送られて、湯洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材の表面(内部の露出表面含む)に付着した変色防止剤成分が、湯洗槽において湯洗により完全に除去され、鉛含有銅系金属材の表面が完全に清浄化される。更に、鉛含有銅系金属材は、湯洗工程S15で湯洗された後、湯洗槽から引き上げられ、乾燥工程S16に送られて熱風等により強制乾燥される。
このように、実施の形態1に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、六価クロムが、酸性及びアルカリ性のどちらでも安定したイオンの形で存在する性質に着目し、六価クロム除去工程S8で、鉛含有銅系金属材を還元槽の還元剤水溶液に浸漬し、その素地表面の六価クロムを三価クロムに還元して還元槽中に溶出等させることにより、鉛含有銅系金属材の素地表面の六価クロムを選択的に溶解及び除去する。更に、六価クロム除去後の鉛含有銅系金属材の素地表面はそのままでは変色しやすいため、表面改質処理工程S10で、鉛含有銅系金属材を化成処理槽の混酸水溶液に浸漬して素地表面にリン酸皮膜を形成する。
[効果]
実施の形態1に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、鉛含有銅系金属材を素材とする素地製品において、製品化後の鉛の溶出を確実に防止できると共に、六価クロムの溶出量をゼロとすることができ、かつ、素地表面(内部露出表面含む)の耐食性を向上して変色等を確実に防止することができる。特に、鉛含有同系金属材からなる水栓金具等の内部素地表面に存在するピンホールやクラック、或いは、内部の部品間等に存在する小さい隙間(微小間隙)や複雑形状の隙間(複雑形状間隙)に残留しやすい六価クロムの皮膜が、かかるピンホールやクラックまたは微小間隙や複雑形状間隙から完全に除去されるため、本実施の形態の鉛含有同系金属材からなる水栓装置等の使用に伴い、六価クロムが溶出または浸出する可能性を完全に防止することができる。また、特に、実施の形態1に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、環境負荷物質である六価クロムを完全に除去できると共に、耐食性に優れた環境適応型銅合金等の表面処理方法として好適に使用することができる。また、従来の水道用品の表面処理プラント等をそのままの形で使用でき、コストの増大を招くことがない。
実施の形態2(メッキ表面処理)
以下、本発明の実施の形態2に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法について説明する。図3は本発明の実施の形態2に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法の一連の工程を示す工程図である。図4は本発明の実施の形態2に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法による鉛含有銅系金属材の表面状態の変化を示す模式図であり、(a)は超光沢ニッケルメッキ工程において鉛含有銅系金属材の素地表面に超光沢ニッケルメッキが形成された状態を、(b)は光沢ニッケルメッキ工程において鉛含有銅系金属材の超光沢ニッケルメッキ表面に光沢ニッケルメッキが形成された状態を、(c)はクロムメッキ工程において鉛含有銅系金属材の光沢ニッケルメッキ表面にクロムメッキが形成されると共に、クロム酸エッチング工程においてクロムメッキ表面に六価クロム皮膜が形成された状態を、(d)は六価クロム除去工程において鉛含有銅系金属材のメッキ表面の六価クロム皮膜が還元された状態を、(e)は六価クロム除去工程後の水洗工程において鉛含有銅系金属材のクロムメッキ表面から三価クロムが水洗される共に零価のクロム表面となった状態を、(f)は表面改質処理工程において鉛含有銅系金属材のクロムメッキ表面にリン酸皮膜が形成された状態を示す。
実施の形態2に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、鋳造等により所定形状に成形された鉛含有銅系金属材、例えば、快削黄銅の水洗金具のニッケルクロムメッキ品において、そのクロムメッキ表面からの鉛の溶出を防止して鉛フリーとすると共に、クロムメッキ表面からの六価クロムの溶出をも防止して六価クロムフリーとし、かつ、クロムメッキ表面にリン酸皮膜を形成して耐食性(変色防止機能等)を向上するものである。詳細には、実施の形態2に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、図3に示すように、アルカリクリーナ超音波洗浄工程S21、アルカリクリーナ超音波洗浄後の第1回目の水洗工程S22、アルカリクリーナ超音波洗浄後の第2回目の水洗工程S23、(−)電解脱脂工程S24、(+)電解脱脂工程S25、電解脱脂後の第1回目の水洗工程S26、電解脱脂後の第2回目の水洗工程S27、第1回目の活性酸処理工程S28、第1回目の活性酸処理後の水洗工程S29、超光沢ニッケルメッキ工程S30、超光沢ニッケルメッキ後の第1回目の回収工程S31、超光沢ニッケルメッキ後の第2回目の回収工程S32、光沢ニッケルメッキ工程S33、光沢ニッケルメッキ後の回収工程S34、光沢ニッケルメッキ後の第1回目の水洗工程S35、光沢ニッケルメッキ後の第2回目の水洗工程S36、第2回目の活性酸処理工程S37、第2回目の活性酸処理後の水洗工程S38、クロム酸処理工程としてのクロム酸活性処理工程S39、クロムメッキ工程S40、クロムメッキ後の第1回目の回収工程S41、クロムメッキ後の第2回目の回収工程S42、六価クロム除去工程S43、六価クロム除去後の水洗工程S44、表面改質処理工程S45、表面改質処理工程S45後の第1回目の水洗工程S46、表面改質処理工程S45後の第2回目の水洗工程S47、湯洗工程S48及び乾燥工程S49からなる。
[アルカリクリーナ超音波洗浄工程]
鉛含有銅系金属材は、まず、アルカリクリーナ超音波洗浄工程S21において、アルカリクリーナによる超音波洗浄により、その素地表面(内部の露出表面含む)が洗浄される。このとき、鉛含有銅系金属材の素地表面部分に含有される鉛成分は、アルカリ及び酸のいずれにも溶解するため、このアルカリクリーナ超音波洗浄処理におけるアルカリクリーナにより、鉛含有銅系金属材の素地表面部分に存在する鉛成分の大部分が溶出して除去される。
[水洗工程]
鉛含有銅系金属材は、アルカリクリーナ超音波洗浄工程S21でアルカリクリーナ超音波洗浄処理された後、アルカリクリーナ超音波洗浄後の第1回目の水洗工程S22に送られて、第1の水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられて、更に、アルカリクリーナ超音波洗浄後の第2回目の水洗工程S23に送られ、第2の水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材の素地表面(内部の露出表面含む)に付着したアルカリクリーナ成分や、アルカリクリーナに含有される形で素地表面に付着する溶出鉛成分等が、第1の水洗槽及び第2の水洗槽において順次水洗により除去され、鉛含有銅系金属材の素地表面が清浄化される。
[電解脱脂工程〜活性酸処理工程〜水洗工程]
鉛含有銅系金属材は、次に、(−)電解脱脂工程S24及び(+)電解脱脂工程S25において、順次、その素地表面(内部の露出表面含む)が電解脱脂処理される。次に、鉛含有銅系金属材は、電解脱脂後の第1回目の水洗工程S26及び第2回目の水洗工程S27において、第3及び第34の水洗槽に浸漬され、素地表面が順次洗浄される。次に、鉛含有銅系金属材は、第1回目の活性酸処理工程S28において、素地表面が活性酸により酸活性処理されて、素地表面の錆やスマット等が除去される。次に、鉛含有銅系金属材は、第1回目の活性酸処理後の水洗工程S29において、第5の水洗槽に浸漬され、素地表面が洗浄される。
[超光沢ニッケルメッキ工程〜第2回目の活性酸処理工程〜水洗工程]
鉛含有銅系金属材は、次に、超光沢ニッケルメッキ工程S30において、図4(a)に示すように、素地表面(外側表面のみ)に超光沢ニッケルメッキが形成される。次に、鉛含有銅系金属材は、超光沢ニッケルメッキ後の第1回目の回収工程S31に送られて、第1の回収水槽に所定時間浸漬された後引き上げられ、第2回目の回収工程S32に送られて、第2の回収水槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材のメッキ表面に付着するメッキ浴成分が、第1の回収水槽及び第2の回収水槽に順次回収され、鉛含有銅系金属材のメッキ表面が完全に清浄化される。次に、鉛含有銅系金属材は、光沢ニッケルメッキ工程S33に送られ、図4(b)に示すように、超光沢ニッケルメッキ表面に光沢ニッケルメッキが形成される。次に、鉛含有銅系金属材は、光沢ニッケルメッキ後の回収工程S34に送られて、第3の回収水槽に所定時間浸漬された後引き上げられて、光沢ニッケルメッキ表面が清浄化される。更に、鉛含有銅系金属材は、光沢ニッケルメッキ後の第1回目の水洗工程S35及び第2回目の水洗工程S36に送られ、第6及び第7の水洗槽に順次浸漬されて、光沢ニッケルメッキ表面が洗浄されて完全に清浄化される。次に、鉛含有銅系金属材は、第2回目の活性酸処理工程S37に送られ、光沢ニッケルメッキ表面が活性酸により酸活性処理されて、光沢ニッケルメッキ表面に吸着されている有機物等が除去される。次に、鉛含有銅系金属材は、第2回目の活性酸処理後の水洗工程S38において、第8の水洗槽に浸漬され、めっき表面(外側表面)及び内部表面(非めっきの素地面)が洗浄される。
[クロム酸活性処理工程〜クロムメッキ工程・クロム酸エッチング処理工程(クロム酸処理工程)]
鉛含有銅系金属材は、次に、クロム酸活性処理工程S39において、クロム酸活性処理を受け、ニッケルメッキ処理により鉛含有銅系金属材の表面(外側のめっき表面及び内部の素地表面)に付着した酸化膜や有機不純物が除去され、表面(外側のめっき部分及び内部の素地表面部分)が清浄化される。次に、鉛含有銅系金属材は、クロムメッキ工程S40によりクロムメッキ処理されると同時に、所定温度(例えば、常温)のクロム酸エッチング処理液(水溶液)によりクロム酸エッチング処理される。即ち、クロムメッキ工程S40は、クロム酸エッチング工程を包含する。このとき、クロム酸エッチング処理液に含まれるクロム酸水溶液は強酸化性であるため、鉛含有銅系金属材のメッキ部分(外側表面のメッキ部分)、或いは、鉛含有銅系金属材の素地表面部分(内部の素地表面部分)をも全体溶解しながら、メッキ部分や素地表面部分に含有される鉛成分をも溶解する。これにより、鉛含有銅系金属材のメッキ部分や素地表面部分、或いは、製品内面や内部金属露出部に存在する鉛成分の残部がクロム酸エッチング液中に溶出して除去される。これと同時に、鉛含有銅系金属材は、クロムメッキ工程S40により、光沢ニッケルメッキ表面にクロムメッキが施される。
[回収工程]
クロム酸活性処理工程S39及びクロムメッキ工程(クロム酸エッチング工程)S40の後、鉛含有銅系金属材は、クロムメッキ後の第1回目の回収工程S41に送られて、第4の回収水槽に所定時間浸漬された後引き上げられ、次の第2回目の回収工程S42に送られて、第5の回収水槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面に付着する(クロム酸を含む)クロム酸活性処理液またはクロム酸エッチング処理液が、第4の回収水槽及び第5の回収水槽に順次回収され、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面が完全に清浄化される。このとき、鉛含有金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面には、必然的に、六価クロム(Cr6+)を含有するゲル状の六価クロム皮膜が形成される。
このときの反応による鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部素地表面の変化を模式的に説明すると、図4(c)に示すように、クロム酸活性処理工程S39からクロムメッキ工程(クロム酸エッチング工程)S40を経た鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面には、クロムメッキ(Cr)層が形成される。また、回収工程S41,S42時点で、鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面としてのクロムメッキ(Cr)表面と内部表面としての内部素地表面には、ゲル状の複合水和酸化物皮膜(XCr23・YCrO3・ZH2O)の皮膜が形成されている。特に、内部素地表面に存在するピンホールやクラック、或いは、内部の部品間等に存在する小さい隙間(微小間隙)や複雑形状の隙間(複雑形状間隙)には、かかるゲル状の複合水和酸化物皮膜(XCr23・YCrO3・ZH2O)の皮膜が形成され、残留しやすい。なお、鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部素地表面に残留付着したクロム酸エッチング液等は、回収工程S41及びS42においてそれぞれ回収水槽内で除去されて水中に放出される。
[反応式]
或いは、このとき、六価クロム皮膜は、例えば、以下の反応式により、鉛含有銅系金属材のメッキ表面に生成されると考えることもできる。
(11)CrO3+H2O⇔H2CrO4
(12)2H2CrO4⇔H2Cr27+H2
(13)Cr27 2−+14H++3Cu⇔2Cr3++3Cu2++7H2
(14)Cr3++3H2O⇔Cr(OH)3+3H+
(15)2Cr(OH)3+CrO4 2-+2H+⇔Cr(OH)3+Cr(OH)・CrO4・H2
[水洗工程]
2回の回収工程S41,S42の後、鉛含有銅系金属材は、水洗工程S43に送られて、第9の水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)に残留するクロム酸エッチング液やその他の付着物が、第9の水洗槽により水洗除去され、鉛含有銅系金属材の素地表面が更に完全に清浄化される。なお、水洗工程S43は、必要に応じて、省略することもできる。
[六価クロム除去工程]
回収工程S41,S42後の水洗工程S43の後、鉛含有銅系金属材は、第9の水洗槽から引き上げられ、六価クロム除去工程S44において、所定温度の還元剤水溶液を貯留した還元槽(還元浴)に所定時間浸漬される。六価クロム除去工程S44の還元浴のクロム酸用還元剤としては、例えば、実施の形態1と同様のものを使用することができ、また、これらのうちの1種またはそれ以上を溶解した所定濃度の亜硫酸ナトリウム水溶液を調製して還元浴とすることができる。なお、還元浴中における還元剤濃度、還元浴の温度、浸漬時間等の諸条件も、実施の形態1と同様とすることができる。
六価クロム除去工程S44で、上記還元浴に鉛含有銅系金属材を浸漬すると、クロム酸活性処理工程S39及びクロムメッキ工程(クロム酸エッチング工程)S40で前記鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)に形成された皮膜成分としての六価クロムが完全に除去される。具体的には、還元浴に鉛含有銅系金属材を浸漬すると、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)の六価クロム(Cr6+)の皮膜が、還元浴中のクロム酸用還元剤により還元されて三価クロム(Cr3+)となり、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)から分離して還元浴中に放出される。これにより、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)には、ゼロ価のクロム(Cr0)からなるクロム皮膜、即ち、金属クロムのクロムメッキ皮膜(Cr)が形成されている。無論、ゼロ価のクロム(Cr0)乃至金属クロムには六価クロムは全く含有されず、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)は完全な六価クロムフリーとなっている。なお、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)から離脱して還元浴中に放出された三価クロム(Cr3+)は、最終的に、還元浴の還元剤水溶液を中性域にpH調整等することにより、還元浴の還元剤水溶液中に沈殿させて回収等することができる。
このときの反応による鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)の変化を模式的に説明すると、図4(d)に示すように、鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)に形成されたゲル状の複合水和酸化物皮膜(XCr23・YCrO3・ZH2O)の皮膜、即ち、六価クロムの皮膜は、六価クロム除去工程S42でクロム酸用還元剤により還元され、三価クロム(Cr23)となった状態で、鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)に付着していると推察される。即ち、このとき、鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)には、六価クロムは全く存在せず、鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部素地表面(内部露出表面)から六価クロムが完全に除去されたといえる。特に、このとき、内部素地表面に存在するピンホールやクラック、或いは、内部の部品間等に存在する小さい隙間(微小間隙)や複雑形状の隙間(複雑形状間隙)に残留しやすい六価クロムの皮膜が、かかるピンホールやクラックまたは微小間隙や複雑形状間隙から完全に除去されるため、本実施の形態の鉛含有同系金属材からなる水栓装置等の使用に伴い、六価クロムが溶出または浸出する可能性を完全に防止することができる。
[水洗工程]
鉛含有銅系金属材は、六価クロム除去工程S44で還元処理された後、還元槽から引き上げられ、ただちに六価クロム除去後の水洗工程S45に送られて、第10の水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)に付着した三価クロム(Cr3+)、例えば、酸化クロム(Cr23)が、第10の水洗槽において水洗により除去され、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)が清浄化される。このときの反応による鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)の変化を模式的に説明すると、図4(e)に示すように、鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)に付着した三価クロム(Cr23)は、全て、水洗工程S45での水洗槽内における水洗により、鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)から完全に分離除去されて水中に放出される。即ち、このとき、鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)には、六価クロムが全く存在しないのみならず、三価クロムも全て除去されて全く存在しない状態となる。特に、このとき、内部素地表面に存在するピンホールやクラック、或いは、内部の部品間等に存在する小さい隙間(微小間隙)や複雑形状の隙間(複雑形状間隙)に残留しやすい三価クロムが、かかるピンホールやクラックまたは微小間隙や複雑形状間隙から完全に除去されるため、本実施の形態の鉛含有同系金属材からなる水栓装置等の使用に伴い、三価クロムが溶出または浸出する可能性をも完全に防止することができる。
[反応式]
なお、上記六価クロム除去工程S44で、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(Na225)を使用した場合、次亜硫酸ナトリウム(Na225)が水中で亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)となり、例えば、以下の反応式により、鉛含有銅系金属材のメッキ表面の六価クロム(4CrO4 2-または4H2CrO4)が三価クロム(2Cr(SO43)に還元されると考えることもできる。
4CrO4 2-+6NaHSO3+3H2SO4⇔2Cr(SO43+3Na2SO4+10H2
また、六価クロム除去工程S43で、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(Na225)をそのまま還元槽の水溶液中に投入した場合、例えば、以下の反応式により、鉛含有銅系金属材のメッキ表面の六価クロム(4CrO4 2-または4H2CrO4)が三価クロム(2Cr(SO43)に還元されると考えることもできる。
4H2CrO4+3Na225+3H2SO4⇔2Cr(SO43+3Na2SO4+7H2
[排水処理工程]
上記回収工程S41及びS42では、回収槽内の水中に六価クロムが存在している。また、六価クロム除去工程S44では、還元槽の還元剤水溶液中に三価クロムが存在している。更に、水洗工程S45では、水洗槽の水中に三価クロムが存在している。よって、図示はしないが、回収槽、還元槽及び水洗槽の排水には、実施の形態1で述べたような排水処理工程が必要となる。
[表面改質処理工程]
水洗工程S45の後、鉛含有銅系合金材は、表面改質処理工程S46に送られ、リン酸皮膜処理により、六価クロムを除去した前記鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)が改質される。具体的には、表面改質処理工程S46では、鉛含有銅系合金材は、所定温度の混酸水溶液を貯留した化成処理槽に所定時間浸漬される。表面改質処理工程S46の化成処理層の混酸水溶液としては、例えば、実施の形態1と同様のものを使用するができる。また、混酸水溶液中におけるリン酸や硝酸の濃度、浴温度、浸漬時間等の諸条件も、実施の形態1と同様とすることができる。
上記所定濃度のリン酸(オルトリン酸)と硝酸とを含有する混酸の水溶液を貯留した化成処理槽に前記鉛含有銅系金属材を上記所定時間浸漬することにより、鉛含有金属材のメッキ表面に所定膜厚のリン酸皮膜が形成され、防食機能及び変色防止機能等の所期の機能を発揮する。このときの反応による鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)の変化を模式的に説明すると、図4(f)に示すように、鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面(六価クロム及び三価クロムが全く存在しない外側メッキ表面)では、クロムメッキとリン酸とが反応して、所定のリン酸皮膜(H3PO4)が形成されると推察される。同様に、鉛含有銅系金属材(Cu)の内部露出表面乃至素地表面(六価クロム及び三価クロムが全く存在しない内部露出表面乃至素地表面)にも、実施の形態1で述べたようにして、所定のリン酸皮膜(H3PO4)が形成される。
[反応式]
なお、リン酸皮膜は、例えば、以下の反応式により、鉛含有銅系金属材の表面に生成されると考えることもできる。
(16)6H3PO4+2Cr⇔2Cr(H2PO43+3H2
(17)Cr(H2PO43⇔CrPO4+2H3PO4
上記反応式(16)〜(17)によれば、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面の零価のクロム皮膜がリン酸と反応し、最終的に、鉛含有銅系金属材(Cu)の外側メッキ表面には、リン酸クロム(CrPO4)及びオルトリン酸(H3PO4)の皮膜が形成されると考えることもできる。
或いは、表面改質処理工程S46における銅または銅合金の表面の改質処理(化成処理)は、実施の形態1で述べたようにして、以下の反応式として行われると考えることもできる。 (1)4Cu+4HNO3 → 4Cu2++2H2O+3O2+4NO↑ →
2Cu2O+2H2O+2O2+4NO↑
(2)6Cu+4H3PO4+3O2 → 2Cu3(PO42+6H2O →
2(Cu3(PO42・6H2O)
[水洗工程]
鉛含有銅系金属材は、表面改質処理工程S46でリン酸皮膜処理された後、化成処理槽から引き上げ、表面改質処理工程S46後の第1回目の水洗工程S47に送られて、第11の水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられ、更に、表面改質処理工程S46後の第2回目の水洗工程S48に送られ、第12の水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材のメッキ表面及び内部露出表面(素地表面)に付着した混酸成分が、2つの水洗工程S47,S48の水洗槽において順次水洗により除去され、鉛含有銅系金属材のメッキ表面及び内部露出表面(素地表面)が清浄化される。
[変色防止処理工程]
次に、鉛含有銅系金属材は、これら2つの水栓工程S47,S48の後、変色防止処理工程S49に送られ、防錆剤水溶液等の変色防止剤を貯留した変色防止処理槽に所定時間浸漬されて、メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)が防錆・変色防止処理される。このときの防錆剤乃至腐食・変色防止剤としては、例えば、実施の形態1と同様、ベンゾトリアゾール(C653)を使用することができる。なお、変色防止処理工程S49は、必要に応じて省略することもできる。
[水洗工程]
鉛含有銅系金属材は、前記変色防止処理工程S49の後、変色防止処理槽から引き上げられ、水洗工程S50に送られて、水洗槽に所定時間浸漬された後引き上げられる。これにより、鉛含有銅系金属材のメッキ表面及び内部露出表面(素地表面)に付着した変色防止剤成分が、水洗槽において水洗により除去され、鉛含有銅系金属材のメッキ表面及び内部露出表面(素地表面)が清浄化される。なお、水洗工程S50は、変色防止処理工程S49を省略したとき等、必要時には省略することもできる。
[湯洗工程及び乾燥工程]
鉛含有銅系金属材は、前記変色防止処理工程S49後の水洗工程S50の後、変色防止処理槽から引き上げられ、実施の形態1と同様にして、湯洗工程S51に送られて湯洗された後、乾燥工程S52に送られて熱風等により強制乾燥される。これにより、外側めっき表面及び内部露出表面(素地表面)に付着した変色防止剤成分等が湯洗槽において湯洗除去され、外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)が完全に清浄化される。
このように、実施の形態2に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、六価クロムが、酸性及びアルカリ性のどちらでも安定したイオンの形で存在する性質に着目し、六価クロム除去工程S44で、鉛含有銅系金属材を還元槽の還元剤水溶液に浸漬し、その外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)の六価クロムを三価クロムに還元して還元槽中に溶出等させることにより、鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)の六価クロムを選択的に溶解及び除去する。更に、表面改質処理工程S45で、鉛含有銅系金属材を化成処理槽の混酸水溶液に浸漬して外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)にリン酸皮膜を形成し、六価クロム除去後の鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)の耐食性(耐変色性)等を更に向上する。
[効果]
実施の形態2に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、鉛含有銅系金属材を素材とするメッキ製品において、製品化後の鉛の溶出を確実に防止できると共に、六価クロムの溶出量をゼロとすることができ、かつ、外側メッキ表面及び内部露出表面(素地表面)の耐食性を更に向上して変色等を確実に防止することができる。特に、鉛含有同系金属材からなる水栓金具等の内部素地表面に存在するピンホールやクラック、或いは、内部の部品間等に存在する小さい隙間(微小間隙)や複雑形状の隙間(複雑形状間隙)に残留しやすい六価クロムの皮膜が、かかるピンホールやクラックまたは微小間隙や複雑形状間隙から完全に除去されるため、本実施の形態の鉛含有同系金属材からなる水栓装置等の使用に伴い、六価クロムが溶出または浸出する可能性を完全に防止することができる。また、特に、実施の形態2に係る鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法は、環境負荷物質である六価クロムを完全に除去できると共に、耐食性に優れた環境適応型銅合金等の表面処理方法として好適に使用することができる。また、従来の水道用品の表面処理プラント等をそのままの形で使用でき、コストの増大を招くことがない。
本発明は、水栓金具・継手・配管部品等の素材以外にも、例えば、自動車用部品・建築材料・家電製品・金物等の素材の表面処理用途に広く適用可能である。

Claims (15)

  1. 鉛含有金属材の表面をクロム酸により処理し、表面部分の鉛を溶出除去するクロム酸処理工程と、
    クロム酸用還元剤を含有する還元剤水溶液により、前記クロム酸処理工程で前記鉛含有金属材の表面に形成された皮膜成分としての六価クロムを完全に除去する六価クロム除去工程と、
    六価クロムを除去した前記鉛含有金属材の表面にリン酸皮膜を形成することにより前記鉛含有金属材の表面を改質する表面改質処理工程とを備え
    前記六価クロム除去工程は、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有金属材表面の六価クロムを三価クロムに還元するものであり、
    更に、前記六価クロム除去工程と前記表面改質処理工程との間に、前記鉛含有金属材表面に残留する三価クロムを水洗により完全に分離除去する水洗工程を備えることを特徴とする鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法。
  2. 前記六価クロム除去工程は、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有金属材表面を還元するものであることを特徴とする請求項1記載の鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法。
  3. 前記クロム酸用還元剤が、次亜硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムのいずれか一つまたはこれらの混合物からなることを特徴とする請求項1または2記載の鉛含有金属材の六価クロムフリー処理方法。
  4. 鉛含有金属材の表面をクロム酸により処理し、表面部分の鉛を溶出除去するクロム酸処理工程と、
    クロム酸用還元剤を含有する還元剤水溶液により、前記クロム酸処理工程で前記鉛含有金属材の表面に形成された皮膜成分としての六価クロムを完全に除去する六価クロム除去工程と、
    六価クロムを除去した前記鉛含有金属材の表面にリン酸皮膜を形成することにより前記鉛含有金属材の表面を改質する表面改質処理工程とを備え、
    前記表面改質処理工程は、リン酸と硝酸とを主材として含有する混酸の水溶液を貯留した化成処理槽に前記鉛含有金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有金属材の表面にリン酸皮膜を形成するものであることを特徴とする鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法。
  5. 鉛含有銅系金属材の素地表面をクロム酸によりエッチング処理し、前記鉛含有銅系金属材の素地表面部分の鉛を溶出除去するクロム酸エッチング工程と、
    クロム酸用還元剤の水溶液により、前記クロム酸エッチング工程で前記鉛含有銅系金属材の素地表面に形成された皮膜成分としての六価クロムを完全に除去する六価クロム除去工程と、
    六価クロムを除去した前記鉛含有銅系金属材の表面にリン酸皮膜を形成することにより前記鉛含有銅系金属材の素地表面を改質する表面改質処理工程とを備え
    前記六価クロム除去工程は、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の素地表面の六価クロムを三価クロムに還元するものであり、
    更に、前記六価クロム除去工程と前記表面改質処理工程との間に、前記鉛含有金属材の素地表面に残留する三価クロムを水洗により完全に分離除去する水洗工程を備えることを特徴とする鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法。
  6. 前記六価クロム除去工程は、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の素地表面を還元するものであることを特徴とする請求項5記載の鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法。
  7. 鉛含有銅系金属材にクロムメッキ層を形成するクロムメッキ工程と、
    前記鉛含有銅系金属材の製品内部または内部金属露出部の鉛を溶出除去するクロム酸エッチング工程と、
    クロム酸用還元剤の水溶液により、前記クロム酸エッチング工程またはクロムメッキ工程で前記鉛含有銅系金属材の表面に形成された皮膜成分としての六価クロムを完全に除去する六価クロム除去工程と、
    六価クロムを除去した前記鉛含有銅系金属材の表面にリン酸皮膜を形成することにより前記鉛含有銅系金属材の表面を改質する表面改質処理工程とを備え
    前記六価クロム除去工程は、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の表面の六価クロムを三価クロムに還元するものであり、
    更に、前記六価クロム除去工程と前記表面改質処理工程との間に、前記鉛含有金属材の表面に残留する三価クロムを水洗により完全に分離除去する水洗工程を備え、
    これにより、前記鉛含有銅系金属材の表面を、前記クロムメッキ層のクロムメッキからなる零価のクロム表面にすることを特徴とする鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法。
  8. 前記六価クロム除去工程は、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の表面を還元するものであることを特徴とする請求項7記載の鉛含有金属材の六価クロムフリー表面処理方法。
  9. 前記六価クロム除去工程は、所定温度及び所定濃度に維持したクロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の表面の六価クロムがクロム用還元剤により還元され三価クロムとなった状態で前記鉛含有銅系金属材の外側メッキ表面及び内部素地表面に付着して残留する六価クロムを完全に除去して零価のクロム表面にするものであることを特徴とする請求項7記載の鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法。
  10. 前記六価クロム除去工程において、クロム酸用還元剤の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材表面の六価クロムを三価クロムに還元して前記鉛含有銅系金属材表面から分離し、前記水溶液中に放出または溶放させる一方、
    前記六価クロム除去工程と前記表面改質処理工程との間に、前記鉛含有銅系金属材表面に残留する三価クロムを水洗により完全に分離除去する水洗工程を備えることを特徴とする請求項5または7記載の鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法。
  11. 前記クロム酸用還元剤が、次亜硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムのいずれか一つまたはこれらの混合物からなることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項記載の鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー処理方法。
  12. 前記表面改質処理工程は、リン酸と硝酸とを主材として含有する混酸の水溶液を貯留した化成処理槽に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属材の表面にリン酸皮膜を形成するものであることを特徴とする請求項5乃至11のいずれか1項記載の鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法。
  13. 前記表面改質処理工程は、リン酸が濃度約2〜5%、硝酸が濃度約0.5〜2%となるよう、前記リン酸と前記硝酸とを主材として含有する混酸の水溶液中に前記鉛含有銅系金属材を所定時間浸漬することにより、前記鉛含有銅系金属の表面にリン酸皮膜を形成するものであることを特徴とする請求項5乃至11のいずれか1項記載の鉛含有銅系金属材の六価クロムフリー表面処理方法。
  14. クロムを使用した表面処理により六価クロム皮膜が表面に形成された基材の六価クロムフリー表面処理方法であって、
    クロム酸用還元剤を含有する還元剤水溶液により、六価クロム皮膜が表面に形成された基材の表面の六価クロムを三価クロムに還元して前記基材の表面から分離した後、前記基材の表面に残留する三価クロムを水洗により完全に分離除去することにより前記六価クロム皮膜を完全に除去することを特徴とする六価クロムフリー表面処理方法。
  15. クロムを使用した表面処理により六価クロム皮膜が表面に形成された基材の六価クロムフリー表面処理方法であって、
    クロム酸用還元剤を含有する還元剤水溶液により、六価クロム皮膜が表面に形成された基材の表面の前記六価クロム皮膜を完全に除去する六価クロム除去工程と、
    六価クロム皮膜を除去した後、リン酸と硝酸とを主材として含有する混酸の水溶液を貯留した化成処理槽に前記基材を所定時間浸漬することにより、前記基材の表面にリン酸皮膜を形成して前記基材の表面を改質する表面改質処理工程と
    を備えることを特徴とする六価クロムフリー表面処理方法。
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