JP7128576B2 - 樹脂集電体、及び、リチウムイオン電池 - Google Patents

樹脂集電体、及び、リチウムイオン電池 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂集電体、及び、リチウムイオン電池に関する。
近年、環境保護のため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン電池に注目が集まっている。
リチウムイオン電池は、一般に、バインダを用いて正極または負極活物質等を正極用または負極用集電体にそれぞれ塗布して電極を構成している。また、バイポーラ(双極)型の電池の場合には、集電体の一方の面にバインダを用いて正極活物質等を塗布して正極層を、反対側の面にバインダを用いて負極活物質等を塗布して負極層を有するバイポーラ(双極)型電極を構成している。
このようなリチウムイオン電池においては、従来、集電体として金属箔(金属集電箔)が用いられてきた。近年、金属箔に代わって導電性材料が添加された樹脂から構成される、いわゆる樹脂集電体が提案されている。このような樹脂集電体は、金属集電箔と比較して軽量であり、電池の単位重量あたりの出力向上が期待される。
特許文献1には、樹脂集電体用分散剤、樹脂及び導電性フィラーを含有する樹脂集電体用材料、並びに、該樹脂集電体用材料を有する樹脂集電体が開示されている。
国際公開第2015/005116号
特許文献1には、樹脂集電体の例として、樹脂としてポリプロピレン樹脂を使用し、導電性フィラーとしてアセチレンブラックを使用した例が記載されている。
このような樹脂集電体を正極用樹脂集電体として使用した場合、アセチレンブラックの比表面積が大きいために、アセチレンブラック界面での電解液の分解が生じやすく、これに伴って樹脂集電体を構成する樹脂が劣化しやすくなることが判明した。
また、アセチレンブラックへの電解液の浸み込み(フィラー膨張)により、樹脂集電体の体積が膨張するという問題もあった。
以上の状況を踏まえて、本発明は、樹脂集電体を構成する樹脂の劣化を抑制することができ、かつ、体積の膨張が起こりにくい樹脂集電体を提供することを目的とする。本発明はまた、上記樹脂集電体を用いたリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に想到した。
すなわち、本発明は、ポリオレフィン樹脂及び導電性炭素フィラーを含む樹脂集電体であって、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量が0.10~0.26mlであることを特徴とする樹脂集電体;本発明の樹脂集電体を備えることを特徴とするリチウムイオン電池である。
本発明の樹脂集電体は、構成する樹脂の劣化を抑制することができ、かつ、体積の膨張が起こりにくい樹脂集電体である。
本発明の樹脂集電体は、ポリオレフィン樹脂及び導電性炭素フィラーを含む樹脂集電体であって、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量が0.10~0.26mlであることを特徴とする。
本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量を特定の範囲に制御することで、導電性炭素フィラー界面での電解液の分解、及び、導電性炭素フィラーへの電解液の浸み込み(フィラー膨張)を抑制することができる。
その結果、樹脂集電体を構成する樹脂の劣化を抑制することができ、かつ、体積の膨張が起こりにくい樹脂集電体とすることができる。
本発明の樹脂集電体で用いるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)等の混合物が挙げられる。また、これらのポリオレフィン樹脂は、変性物(以下、変性ポリオレフィンという)であってもよい。
ポリオレフィン樹脂の中でも、防湿特性や機械的強度の点で、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。
ホモポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体である。ランダムポリプロピレンは、不規則に導入された少量(好ましくは4.5重量%以下)のエチレン単位を含有する共重合体である。ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンの中にエチレンプロピレンゴム(EPR)が分散している組成物であり、ホモポリプロピレンの「海」の中にEPRを含む「島」が浮かぶ「海島構造」を有している。長鎖分岐構造を有するポリプロピレンとしては、特開2001-253910号公報等に記載されたポリプロピレン等が挙げられる。酸変性ポリプロピレンは、カルボキシル基を導入したポリプロピレンであり、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸とポリプロピレンとを有機過酸化物の存在下で反応する等の公知の方法で反応して得ることができる。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、以下のものが市場から入手できる。
PE:「ノバテックLL UE320」「ノバテックLL UJ960」いずれも日本ポリエチレン(株)製
PP:「サンアロマーPM854X」「サンアロマーPC684S」「サンアロマーPL500A」「サンアロマーPC630S」「サンアロマーPC630A」「サンアロマーPB522M」「クオリアCM688A」いずれもサンアロマー(株)製、「プライムポリマーJ-2000GP」(株)プライムポリマー製、「ウィンテックWFX4T」日本ポリプロ(株)製
PMP:「TPX」三井化学(株)製
変性ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの共重合体に極性官能基を導入したものが挙げられ、極性官能基としては、カルボキシル基、1,3-ジオキソ-2-オキサプロピレン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基及びイミド基等が挙げられる。
ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの共重合体に極性官能基を導入した変性ポリオレフィンは、樹脂用分散剤及び相溶化剤等として市販されており、三洋化成工業株式会社製ユーメックスシリーズ及び三井化学株式会社製アドマーシリーズ等として入手可能である。
本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量が0.10~0.26mlである。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量が0.10ml未満であると、電気抵抗値が高くなりすぎ、0.26mlを超えると、導電性炭素フィラー界面での電解液の分解や、導電性炭素フィラーへの電解液の浸み込み(フィラー膨張)が起こる。
導電性炭素フィラーの吸油量は、「JIS K6217-4 2008 ゴム用カーボンブラック基本特性」に準じて、DBP(フタル酸ジブチル)の吸収量を測定した値である。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量は、以下の式で算出される。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量(ml)
=樹脂集電体1g中の導電性炭素フィラーの重量(g)×導電性炭素フィラーの吸油量(ml/g)
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量は、以下の方法等により分析することができる。
まず、樹脂集電体から導電性炭素フィラーを分離する必要がある。導電性炭素フィラーの分離には、樹脂集電体を構成する樹脂を溶解することができる溶媒で樹脂集電体を溶解し、樹脂集電体を構成する樹脂と導電性炭素フィラーを分離する等の方法を用いることができる。
分離前の樹脂集電体の重量(g)と、分離された導電性炭素フィラーの重量(g)から、樹脂集電体1g中の導電性炭素フィラーの重量(g)を求めることができ、上記式により樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量を求めることができる。
なお、導電性炭素フィラーの種類は、走査電子顕微鏡(SEM)観察や、元素分析等により特定することができる。
なお、樹脂集電体が、導電性炭素フィラーとして2種以上の導電性炭素フィラーを含む場合は、導電性炭素フィラーの吸油量はそれぞれ分離して測定される。2種以上の導電性炭素フィラーの分離は、遠心分離機等を用いて行うことができる。
導電性炭素フィラーを2種類以上含む場合は樹脂集電体1g中に含まれるそれぞれの導電性炭素フィラーの重量にそれぞれの導電性炭素フィラーの吸油量を掛けることにより、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量を計算することとする。
導電性炭素フィラーとしては、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、カーボンナノチューブ、グラフェン及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
導電性炭素フィラーとしては、その体積平均粒子径は特に限定されず、例えば、3nm~11.5μmのものを適宜選択して用いることができる。
本明細書において、導電性炭素フィラーの体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
本発明の樹脂集電体は、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量を0.26ml以下と小さくすることにより、樹脂集電体を構成する樹脂の劣化を抑制することができ、かつ、体積の膨張が起こりにくい樹脂集電体とすることができるが、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量を小さくするためには、吸油量の小さい導電性炭素フィラーを使用する方法を採用することができる。
その一方で、吸油量の小さい導電性炭素フィラーを用いると樹脂集電体は比較的電気抵抗が高くなるため、必要な電気抵抗値を得るためには導電性炭素フィラーの配合量を増やす必要がある。
そして、導電性炭素フィラーの配合量を増やすと、樹脂集電体の薄膜化が困難になることがある。
樹脂集電体を薄膜化することができないと、電池内における集電体の体積が大きいことに起因して、電池容量の低下につながるために好ましくない。
そこで、本発明の樹脂集電体の好ましい態様として、吸油量の小さい導電性炭素フィラーと、吸油量が大きく、導電性の高い導電性炭素フィラーを混合して使用する態様が考えられる。
吸油量の小さい導電性炭素フィラーと、吸油量の大きい導電性炭素フィラーを併用することによって、構成する樹脂の劣化を抑制することができ、かつ、体積の膨張が起こりにくい樹脂集電体を得ることができ、さらに薄膜化の要請にも応えることができる。
具体的には、本発明の樹脂集電体が、導電性炭素フィラーが、吸油量が1.5ml/g未満である第1の導電性炭素フィラー(A1)と、吸油量が1.5~4.0ml/gである第2の導電性炭素フィラー(A2)とを含むことが好ましい。
吸油量が大きく、導電性の高い第2の導電性炭素フィラー(A2)を含むことにより低い電気抵抗値が得られるため、樹脂集電体を薄膜化することに適している。
一方、吸油量が大きい第2の導電性炭素フィラー(A2)は副反応の反応場にもなるので、吸油量が小さい第1の導電性炭素フィラー(A1)を使用することにより、導電性炭素フィラー界面での電解液の分解、及び、導電性炭素フィラーへの電解液の浸み込み(フィラー膨張)を抑制することができる。
すなわち、2種類の導電性炭素フィラーのそれぞれの働きにより、構成する樹脂の劣化を抑制することができ、かつ、体積の膨張が起こりにくい樹脂集電体を得ることができ、さらに薄膜化に適した樹脂集電体を提供することができる。
導電性炭素フィラーとして(A1)と(A2)を含む場合、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量(ml)は以下の式で算出される。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量(ml)
=樹脂集電体1g中の(A1)の重量(g)×(A1)の吸油量(ml/g)+樹脂集電体1g中の(A2)の重量(g)×(A2)の吸油量(ml/g)
なお、(A1)又は(A2)を2種類以上含む場合は樹脂集電体1g中に含まれるそれぞれの導電性炭素フィラーの重量にそれぞれの導電性炭素フィラーの吸油量を掛けて計算することとする。
第1の導電性炭素フィラー(A1)はその吸油量が1.5ml/g未満の導電性炭素フィラーであることが好ましい。第1の導電性炭素フィラー(A1)はその吸油量が1.3ml/g以下であることがより好ましい。
また、第1の導電性炭素フィラー(A1)はその吸油量が0.1ml/g以上であることが好ましい。
第1の導電性炭素フィラー(A1)としては、天然又は人造の黒鉛(グラファイト)、ハードカーボン(難黒鉛化炭素)、カーボンブラック(アセチレンブラック)、カーボンナノチューブ及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中では黒鉛が好ましい。また、形状は球状、鱗片状及び塊状のいずれであっても良いが、球状が好ましい。
第1の導電性炭素フィラー(A1)としては、その吸油量が1.5ml/g未満である限り、その種類、吸油量が異なる2種類以上の導電性炭素フィラーを含んでいてもよい。
第1の導電性炭素フィラー(A1)として市場から入手できるものとしては、商品名「デンカブラックLi-400(1.40ml/g)」[デンカ(株)製]、商品名「VGCF(1.10ml/g)」[昭和電工(株)製]、商品名「SNG-WXA1(0.15ml/g)」[JFEケミカル(株)製]等が挙げられる。
なお、品名の後の括弧内に記載した値は、そのフィラーの吸油量である。
第2の導電性炭素フィラー(A2)はその吸油量が1.5~4.0ml/gの導電性炭素フィラーであることが好ましい。
第2の導電性炭素フィラー(A2)はその吸油量が1.7~3.6ml/gであることがより好ましい。
第2の導電性炭素フィラー(A2)としては、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中ではアセチレンブラックが好ましい。
第2の導電性炭素フィラー(A2)としては、その吸油量が1.5~4.0ml/gである限り、その種類、吸油量が異なる2種類以上の導電性炭素フィラーを含んでいてもよい。
第2の導電性炭素フィラー(A2)として市場から入手できるものとしては、商品名「デンカブラック(1.75ml/g)」[デンカ(株)製]、商品名「エンサコ250G(1.90ml/g)」[Imerys製]、商品名「ケッチェンブラックEC300J(3.60ml/g)」[ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]、商品名「AMC(3.30ml/g)[宇部興産(株)製]、商品名「igrafen-αS(2.50ml/g)」[アイテック(株)製]等が挙げられる。
なお、品名の後の括弧内に記載した値は、そのフィラーの吸油量である。
本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体中の第1の導電性炭素フィラー(A1)の重量割合が7~65重量%であることが好ましい。
また、樹脂集電体中の第2の導電性炭素フィラー(A2)の重量割合が1~35重量%であることが好ましい。
本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体に含まれる第1の導電性炭素フィラー(A1)と第2の導電性炭素フィラー(A2)との重量比率が、[第1の導電性炭素フィラー(A1)/第2の導電性炭素フィラー(A2)]=55/45~90/10であることが好ましい。
上記比率が55/45以上であると、吸油量が大きい第2の導電性炭素フィラー(A2)の比率が相対的に少ないため、導電性炭素フィラー界面での電解液の分解、及び、導電性炭素フィラーへの電解液の浸み込み(フィラー膨張)を好適に抑制することができる。
また、上記比率が90/10以下であると、吸油量が小さく、比較的導電性が低い第1の導電性炭素フィラー(A1)の比率が多過ぎないため、樹脂集電体の電気抵抗値を低くするために必要なフィラーの量を減らすことができ、樹脂集電体の薄膜化がより容易になる。
本発明の樹脂集電体では、導電性炭素フィラーの重量割合が樹脂集電体の重量に対して13~70重量%であることが好ましい。
上記重量割合が13重量%以上であると、樹脂集電体に含まれる導電性炭素フィラーの量が充分であるため電気抵抗値をより低くすることができる。また、上記重量割合が70重量%未満であると、樹脂集電体に含まれるポリオレフィン樹脂の割合が低くなりすぎないため、樹脂集電体の成形性への影響が少なく、樹脂集電体の薄膜化により適している。
樹脂集電体は、導電性炭素フィラーとは異なる導電材料を含有していてもよい。
導電材料の材質としては、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]及びこれらの合金、並びにこれらの混合物が挙げられる。電気的安定性の観点から、好ましくはニッケルである。
また、導電材料として、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電材料(上記した導電材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
樹脂集電体は、ポリオレフィン樹脂と、導電性炭素フィラーとの他に、さらに必要に応じ、その他の成分[導電材料用分散剤、着色剤、紫外線吸収剤、汎用の可塑剤(フタル酸骨格含有化合物、トリメリット酸骨格含有化合物、リン酸基含有化合物及びエポキシ骨格含有化合物等)]等を適宜含んでいてもよい。その他の成分の合計添加量は、電気的安定性の観点から、樹脂集電体100重量部中0.001~5重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.001~3重量部である。
導電材料用分散剤としては、三洋化成工業株式会社製ユーメックスシリーズ、東洋紡株式会社製ハードレンシリーズ、トーヨータックシリーズ等が使用可能である。
樹脂集電体に含まれるポリオレフィン樹脂の割合が25~82重量%であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂の割合が上記範囲であると、成形性が良好であり、樹脂集電体の薄膜化に適している。
本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体の膜厚は、50~110μmであることが好ましく、50~100μmがより好ましい。
樹脂集電体の膜厚が110μm以下であると、樹脂集電体としての厚さが薄く、薄膜化された樹脂集電体であるといえる。このような樹脂集電体は電池内における体積が小さいため、電池の電池容量を高くするために適している。
また、樹脂集電体の膜厚が50μm以上であると、樹脂集電体の強度が充分となるため好ましい。
また、本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体の厚さ方向の電気抵抗値(貫通抵抗値)が、1~150Ω・cmであることが好ましい。厚さ方向の電気抵抗値は以下の方法で測定することができる。
<厚さ方向の電気抵抗値の測定>
3cm×10cmの短冊状に裁断した樹脂集電体を測定用試験片とし、抵抗計[RM3548、HIOKI製]を接続した電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]の電極間に試験片を挟み、電極に2.16kgの荷重をかけながら抵抗値を測定する。加重をかけてから60秒後の値に電極と試験片との接触面積(3.14cm)をかけた値を厚さ方向の電気抵抗値とすることができる。なお、電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]は、JISK6378-5において厚さ方向の体積電気抵抗の測定に用いる装置に準拠した試験片を正負電極間に挟んで抵抗値の測定を行うための装置である。
本発明の樹脂集電体は、好ましくは、以下の方法で製造することができる。
まず、ポリオレフィン樹脂、導電性炭素フィラー、及び、必要に応じてその他の成分を混合することにより、樹脂集電体用材料を得る。
混合の方法としては、導電性炭素フィラーのマスターバッチを得てからさらにポリオレフィン樹脂と混合する方法、ポリオレフィン樹脂、導電性炭素フィラー、及び、必要に応じてその他の成分のマスターバッチを用いる方法、及び、全ての原料を一括して混合する方法等があり、その混合にはペレット状又は粉体状の成分を適切な公知の混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー及びロール等を用いることができる。
混合時の各成分の添加順序には特に限定はない。得られた混合物は、さらにペレタイザーなどによりペレット化又は粉末化してもよい。
得られた樹脂集電体用材料を例えばフィルム状に成形することにより、本発明の樹脂集電体が得られる。フィルム状に成形する方法としては、Tダイ法、インフレーション法及びカレンダー法等の公知のフィルム成形法が挙げられる。なお、本発明の樹脂集電体は、フィルム成形以外の成形方法によっても得ることができる。
本発明の樹脂集電体は、リチウムイオン電池の集電体として使用することが好ましい。
正極用樹脂集電体として用いることもでき、負極用樹脂集電体として用いることもできるが、リチウムイオン電池の正極用樹脂集電体として用いることが好ましい。
本発明の樹脂集電体は、リチウムイオン電池のバイポーラ電極用の樹脂集電体として好ましく用いることもできる。
バイポーラ電極とは、リチウムイオン電池用電極であって、一つの集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成された電極を意味する。
集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極の少なくとも一方の面が本発明の樹脂集電体であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明の樹脂集電体を備えることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン電池が本発明の樹脂集電体を正極用樹脂集電体として備える場合、本発明のリチウムイオン電池は、上述した本発明の樹脂集電体と、樹脂集電体の表面に形成された正極活物質層とを備える。正極活物質層は、正極活物質とともに、必要に応じてバインダ、導電助剤等の添加剤を含む。
本発明のリチウムイオン電池が本発明の樹脂集電体を負極用樹脂集電体として備える場合、本発明のリチウムイオン電池は、上述した本発明の樹脂集電体と、樹脂集電体の表面に形成された負極活物質層とを備える。負極活物質層は、負極活物質とともに、必要に応じてバインダ、導電助剤等の添加剤を含む。
本発明のリチウムイオン電池は、さらに、電解液と、セパレータとを備える。本発明のリチウムイオン電池において、正極活物質、負極活物質、電解液、セパレータ等の材料としては、公知の材料を使用することができる。正極活物質及び負極活物質は、アクリル系樹脂等の樹脂で被覆された被覆活物質であってもよい。正極用集電体又は負極用集電体が本発明の樹脂集電体でない場合、これらの集電体は、金属集電箔であってもよいし、樹脂集電体であってもよい。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
以下の実施例で使用した材料は下記の通りである。
ポリオレフィン樹脂:ブロックポリプロピレン[商品名「サンアロマーPM854X」、サンアロマー(株)製]
第1の導電性炭素フィラー(A1)
A1-1:アセチレンブラック[吸油量1.40ml/g、商品名「デンカブラックLi-400」、デンカ(株)製]
A1-2:カーボンナノチューブ[吸油量1.10ml/g、商品名「VGCF」、昭和電工(株)製]
A1-3:黒鉛粒子[吸油量0.15ml/g、商品名「SNG-WXA1」、JFEケミカル(株)製]
第2の導電性炭素フィラー(A2)
A2-1:アセチレンブラック[吸油量1.75ml/g、商品名「デンカブラック」、デンカ(株)製]
A2-2:アセチレンブラック[吸油量1.90ml/g、商品名「エンサコ250G」、Imerys製]
A2-3:ケッチェンブラック[吸油量3.60ml/g、商品名「ケッチェンブラックEC300J」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]
A2-4:カーボンナノチューブ[吸油量3.30ml/g、商品名「AMC」、宇部興産(株)製]
A2-5:グラフェン[吸油量2.50ml/g、商品名「igrafen-αS」、アイテック(株)製]
なお、各導電性炭素フィラーの吸油量は、「JIS K6217-4 2008 ゴム用カーボンブラック基本特性」に準じて、DBP(フタル酸ジブチル)の吸収量を測定した値である。
分散剤
[商品名「ユーメックス1001(酸変性ポリプロピレン)」、三洋化成工業(株)製]
<実施例1>
2軸押出機にて、ポリオレフィン樹脂80部、A1-1「デンカブラックLi-400」15部及び分散剤5部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して樹脂集電体用材料を得た。
得られた樹脂集電体用材料をTダイから押し出し、50℃に温調した冷却ロールで圧延することで、膜厚100μmの樹脂集電体を得た。
<実施例2~12、比較例1~6>
ポリオレフィン樹脂の配合量、並びに、第1の導電性炭素フィラー(A1)及び第2の導電性炭素フィラー(A2)の種類及び配合量を表1に示すように変更して、実施例1と同様の方法により樹脂集電体用材料及び樹脂集電体を得た。
<酸化電流量の測定>
<耐電位試験用コインセルの作製>
2032型コインセルの負極缶にガスケット、φ16mmに裁断したLi箔、φ17mmに裁断したセパレータ(厚さ25μmのポリプロピレン製)を順に重ね、電解液を100μL添加した。その上にφ15mmに裁断した樹脂集電体を乗せ、さらにカーボンコートアルミ[昭和電工(株)製、SDX]、スペーサー(厚さ500μm)を2つ、皿バネ、正極缶を順に重ねて封をし、評価用のコインセルを作製した。なお、電解液として、1M LiPFをエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒(体積比1:1)に溶解した溶液を準備した。
<樹脂集電体の耐電位試験評価>
充放電測定装置「HJ1001SM8A」[北斗電工製]を用いて、評価用コインセルを電圧4.2Vまで充電し、そのまま200時間電圧をかけた状態での発生電流を計測した。本試験での結果は、4.2Vの電圧をかけ続けた状態で流れた電流量の総和としている。
なお、酸化電流量が少ないと電池の構成部材として用いた際の部材由来の容量ロスが低減でき、優れた長期の信頼性を有することを示す。
酸化電流量が0.9mAh/φ15以下である場合良好と判断して表1において酸化電流量判定の欄に○と表示し、酸化電流量が0.9mAh/φ15を超える場合を×と表示した。
<体積膨張率の評価>
本発明の系では、樹脂集電体の体積変化を重量変化と読み替えることが可能であるので、以下の方法により樹脂集電体の膨潤率(重量%)を測定して、体積膨張率を評価した。
樹脂集電体を10×40×0.2mmの寸法に切り出した試験片とし、この試験片を上記電解液に50℃で3日間浸漬させて飽和吸液状態の樹脂集電体を準備した。
試験片の吸液前後の重量変化から下記式によって膨潤率(重量%)を求めた。結果を表1に示す。
膨潤率[重量%]=[(吸液後の試験片重量-吸液前の試験片重量)/吸液前の試験片重量]×100
膨潤率が0.1%以下である場合良好と判断して表1において体積膨張率判定の欄に○と表示し、膨潤率が0.1%を超える場合を×と表示した。
<貫通抵抗値の測定>
樹脂集電体を3cm×10cm程度の短冊に裁断し、電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]及び抵抗計[RM3548、HIOKI製]を用いて各樹脂集電体の貫通抵抗値を測定した。
電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態での樹脂集電体の抵抗値を測定し、2.16kgの荷重をかけてから60秒後の値をその樹脂集電体の抵抗値とした。下記の式に示すように、抵抗測定時の冶具の接触表面の面積(3.14cm)をかけた値を貫通抵抗値(Ω・cm)とした。
貫通抵抗値(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×3.14(cm
貫通抵抗値が150Ω・cm以下である場合良好と判断して表1において電気抵抗値判定の欄に○と表示し、貫通抵抗値が150Ω・cmを超える場合を×と表示した。
Figure 0007128576000001
表1より、実施例1~12では、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量が好適な範囲となっているため、酸化電流量を抑制することができ、かつ、体積の膨張が起こりにくい樹脂集電体を得ることができた。
一方で、比較例1~6では、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量が少なすぎる、又は、大きすぎるために、酸化電流量、体積膨張率、及び、電気抵抗値のいずれかの評価結果が悪くなっていた。
本発明の樹脂集電体は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター及びハイブリッド自動車、電気自動車用に用いられるリチウムイオン電池用の集電体として有用である。

Claims (5)

  1. ポリオレフィン樹脂及び導電性炭素フィラーを含む樹脂集電体であって、
    樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量が0.10~0.26mlであり、
    前記導電性炭素フィラーの重量割合が樹脂集電体の重量に対して13~70重量%であり、
    前記導電性炭素フィラーが、
    吸油量が1.5ml/g未満である第1の導電性炭素フィラー(A1)と、
    吸油量が1.5~4.0ml/gである第2の導電性炭素フィラー(A2)とを含むことを特徴とする樹脂集電体。
  2. 前記第1の導電性炭素フィラー(A1)と前記第2の導電性炭素フィラー(A2)との重量割合が、[前記第1の導電性炭素フィラー(A1)/前記第2の導電性炭素フィラー(A2)]=55/45~90/10である請求項に記載の樹脂集電体。
  3. リチウムイオン電池の正極用樹脂集電体である請求項1又は2に記載の樹脂集電体。
  4. リチウムイオン電池用電極であって、集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極用である請求項1又は2に記載の樹脂集電体。
  5. 請求項1~のいずれかに記載の樹脂集電体を備えることを特徴とするリチウムイオン電池。
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