JP7128576B2 - 樹脂集電体、及び、リチウムイオン電池 - Google Patents
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Description
このような樹脂集電体を正極用樹脂集電体として使用した場合、アセチレンブラックの比表面積が大きいために、アセチレンブラック界面での電解液の分解が生じやすく、これに伴って樹脂集電体を構成する樹脂が劣化しやすくなることが判明した。
また、アセチレンブラックへの電解液の浸み込み(フィラー膨張)により、樹脂集電体の体積が膨張するという問題もあった。
すなわち、本発明は、ポリオレフィン樹脂及び導電性炭素フィラーを含む樹脂集電体であって、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量が0.10~0.26mlであることを特徴とする樹脂集電体;本発明の樹脂集電体を備えることを特徴とするリチウムイオン電池である。
その結果、樹脂集電体を構成する樹脂の劣化を抑制することができ、かつ、体積の膨張が起こりにくい樹脂集電体とすることができる。
ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。
ホモポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体である。ランダムポリプロピレンは、不規則に導入された少量(好ましくは4.5重量%以下)のエチレン単位を含有する共重合体である。ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンの中にエチレンプロピレンゴム(EPR)が分散している組成物であり、ホモポリプロピレンの「海」の中にEPRを含む「島」が浮かぶ「海島構造」を有している。長鎖分岐構造を有するポリプロピレンとしては、特開2001-253910号公報等に記載されたポリプロピレン等が挙げられる。酸変性ポリプロピレンは、カルボキシル基を導入したポリプロピレンであり、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸とポリプロピレンとを有機過酸化物の存在下で反応する等の公知の方法で反応して得ることができる。
PE:「ノバテックLL UE320」「ノバテックLL UJ960」いずれも日本ポリエチレン(株)製
PP:「サンアロマーPM854X」「サンアロマーPC684S」「サンアロマーPL500A」「サンアロマーPC630S」「サンアロマーPC630A」「サンアロマーPB522M」「クオリアCM688A」いずれもサンアロマー(株)製、「プライムポリマーJ-2000GP」(株)プライムポリマー製、「ウィンテックWFX4T」日本ポリプロ(株)製
PMP:「TPX」三井化学(株)製
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量が0.10ml未満であると、電気抵抗値が高くなりすぎ、0.26mlを超えると、導電性炭素フィラー界面での電解液の分解や、導電性炭素フィラーへの電解液の浸み込み(フィラー膨張)が起こる。
導電性炭素フィラーの吸油量は、「JIS K6217-4 2008 ゴム用カーボンブラック基本特性」に準じて、DBP(フタル酸ジブチル)の吸収量を測定した値である。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量(ml)
=樹脂集電体1g中の導電性炭素フィラーの重量(g)×導電性炭素フィラーの吸油量(ml/g)
まず、樹脂集電体から導電性炭素フィラーを分離する必要がある。導電性炭素フィラーの分離には、樹脂集電体を構成する樹脂を溶解することができる溶媒で樹脂集電体を溶解し、樹脂集電体を構成する樹脂と導電性炭素フィラーを分離する等の方法を用いることができる。
分離前の樹脂集電体の重量(g)と、分離された導電性炭素フィラーの重量(g)から、樹脂集電体1g中の導電性炭素フィラーの重量(g)を求めることができ、上記式により樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量を求めることができる。
なお、導電性炭素フィラーの種類は、走査電子顕微鏡(SEM)観察や、元素分析等により特定することができる。
導電性炭素フィラーを2種類以上含む場合は樹脂集電体1g中に含まれるそれぞれの導電性炭素フィラーの重量にそれぞれの導電性炭素フィラーの吸油量を掛けることにより、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量を計算することとする。
本明細書において、導電性炭素フィラーの体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
その一方で、吸油量の小さい導電性炭素フィラーを用いると樹脂集電体は比較的電気抵抗が高くなるため、必要な電気抵抗値を得るためには導電性炭素フィラーの配合量を増やす必要がある。
そして、導電性炭素フィラーの配合量を増やすと、樹脂集電体の薄膜化が困難になることがある。
樹脂集電体を薄膜化することができないと、電池内における集電体の体積が大きいことに起因して、電池容量の低下につながるために好ましくない。
吸油量の小さい導電性炭素フィラーと、吸油量の大きい導電性炭素フィラーを併用することによって、構成する樹脂の劣化を抑制することができ、かつ、体積の膨張が起こりにくい樹脂集電体を得ることができ、さらに薄膜化の要請にも応えることができる。
一方、吸油量が大きい第2の導電性炭素フィラー(A2)は副反応の反応場にもなるので、吸油量が小さい第1の導電性炭素フィラー(A1)を使用することにより、導電性炭素フィラー界面での電解液の分解、及び、導電性炭素フィラーへの電解液の浸み込み(フィラー膨張)を抑制することができる。
すなわち、2種類の導電性炭素フィラーのそれぞれの働きにより、構成する樹脂の劣化を抑制することができ、かつ、体積の膨張が起こりにくい樹脂集電体を得ることができ、さらに薄膜化に適した樹脂集電体を提供することができる。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量(ml)
=樹脂集電体1g中の(A1)の重量(g)×(A1)の吸油量(ml/g)+樹脂集電体1g中の(A2)の重量(g)×(A2)の吸油量(ml/g)
なお、(A1)又は(A2)を2種類以上含む場合は樹脂集電体1g中に含まれるそれぞれの導電性炭素フィラーの重量にそれぞれの導電性炭素フィラーの吸油量を掛けて計算することとする。
また、第1の導電性炭素フィラー(A1)はその吸油量が0.1ml/g以上であることが好ましい。
なお、品名の後の括弧内に記載した値は、そのフィラーの吸油量である。
第2の導電性炭素フィラー(A2)はその吸油量が1.7~3.6ml/gであることがより好ましい。
なお、品名の後の括弧内に記載した値は、そのフィラーの吸油量である。
また、樹脂集電体中の第2の導電性炭素フィラー(A2)の重量割合が1~35重量%であることが好ましい。
上記比率が55/45以上であると、吸油量が大きい第2の導電性炭素フィラー(A2)の比率が相対的に少ないため、導電性炭素フィラー界面での電解液の分解、及び、導電性炭素フィラーへの電解液の浸み込み(フィラー膨張)を好適に抑制することができる。
また、上記比率が90/10以下であると、吸油量が小さく、比較的導電性が低い第1の導電性炭素フィラー(A1)の比率が多過ぎないため、樹脂集電体の電気抵抗値を低くするために必要なフィラーの量を減らすことができ、樹脂集電体の薄膜化がより容易になる。
上記重量割合が13重量%以上であると、樹脂集電体に含まれる導電性炭素フィラーの量が充分であるため電気抵抗値をより低くすることができる。また、上記重量割合が70重量%未満であると、樹脂集電体に含まれるポリオレフィン樹脂の割合が低くなりすぎないため、樹脂集電体の成形性への影響が少なく、樹脂集電体の薄膜化により適している。
導電材料の材質としては、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]及びこれらの合金、並びにこれらの混合物が挙げられる。電気的安定性の観点から、好ましくはニッケルである。
また、導電材料として、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電材料(上記した導電材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
樹脂集電体の膜厚が110μm以下であると、樹脂集電体としての厚さが薄く、薄膜化された樹脂集電体であるといえる。このような樹脂集電体は電池内における体積が小さいため、電池の電池容量を高くするために適している。
また、樹脂集電体の膜厚が50μm以上であると、樹脂集電体の強度が充分となるため好ましい。
<厚さ方向の電気抵抗値の測定>
3cm×10cmの短冊状に裁断した樹脂集電体を測定用試験片とし、抵抗計[RM3548、HIOKI製]を接続した電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]の電極間に試験片を挟み、電極に2.16kgの荷重をかけながら抵抗値を測定する。加重をかけてから60秒後の値に電極と試験片との接触面積(3.14cm2)をかけた値を厚さ方向の電気抵抗値とすることができる。なお、電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]は、JISK6378-5において厚さ方向の体積電気抵抗の測定に用いる装置に準拠した試験片を正負電極間に挟んで抵抗値の測定を行うための装置である。
まず、ポリオレフィン樹脂、導電性炭素フィラー、及び、必要に応じてその他の成分を混合することにより、樹脂集電体用材料を得る。
混合の方法としては、導電性炭素フィラーのマスターバッチを得てからさらにポリオレフィン樹脂と混合する方法、ポリオレフィン樹脂、導電性炭素フィラー、及び、必要に応じてその他の成分のマスターバッチを用いる方法、及び、全ての原料を一括して混合する方法等があり、その混合にはペレット状又は粉体状の成分を適切な公知の混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー及びロール等を用いることができる。
正極用樹脂集電体として用いることもでき、負極用樹脂集電体として用いることもできるが、リチウムイオン電池の正極用樹脂集電体として用いることが好ましい。
バイポーラ電極とは、リチウムイオン電池用電極であって、一つの集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成された電極を意味する。
集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極の少なくとも一方の面が本発明の樹脂集電体であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池が本発明の樹脂集電体を正極用樹脂集電体として備える場合、本発明のリチウムイオン電池は、上述した本発明の樹脂集電体と、樹脂集電体の表面に形成された正極活物質層とを備える。正極活物質層は、正極活物質とともに、必要に応じてバインダ、導電助剤等の添加剤を含む。
ポリオレフィン樹脂:ブロックポリプロピレン[商品名「サンアロマーPM854X」、サンアロマー(株)製]
第1の導電性炭素フィラー(A1)
A1-1:アセチレンブラック[吸油量1.40ml/g、商品名「デンカブラックLi-400」、デンカ(株)製]
A1-2:カーボンナノチューブ[吸油量1.10ml/g、商品名「VGCF」、昭和電工(株)製]
A1-3:黒鉛粒子[吸油量0.15ml/g、商品名「SNG-WXA1」、JFEケミカル(株)製]
第2の導電性炭素フィラー(A2)
A2-1:アセチレンブラック[吸油量1.75ml/g、商品名「デンカブラック」、デンカ(株)製]
A2-2:アセチレンブラック[吸油量1.90ml/g、商品名「エンサコ250G」、Imerys製]
A2-3:ケッチェンブラック[吸油量3.60ml/g、商品名「ケッチェンブラックEC300J」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]
A2-4:カーボンナノチューブ[吸油量3.30ml/g、商品名「AMC」、宇部興産(株)製]
A2-5:グラフェン[吸油量2.50ml/g、商品名「igrafen-αS」、アイテック(株)製]
なお、各導電性炭素フィラーの吸油量は、「JIS K6217-4 2008 ゴム用カーボンブラック基本特性」に準じて、DBP(フタル酸ジブチル)の吸収量を測定した値である。
分散剤
[商品名「ユーメックス1001(酸変性ポリプロピレン)」、三洋化成工業(株)製]
2軸押出機にて、ポリオレフィン樹脂80部、A1-1「デンカブラックLi-400」15部及び分散剤5部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して樹脂集電体用材料を得た。
得られた樹脂集電体用材料をTダイから押し出し、50℃に温調した冷却ロールで圧延することで、膜厚100μmの樹脂集電体を得た。
ポリオレフィン樹脂の配合量、並びに、第1の導電性炭素フィラー(A1)及び第2の導電性炭素フィラー(A2)の種類及び配合量を表1に示すように変更して、実施例1と同様の方法により樹脂集電体用材料及び樹脂集電体を得た。
<耐電位試験用コインセルの作製>
2032型コインセルの負極缶にガスケット、φ16mmに裁断したLi箔、φ17mmに裁断したセパレータ(厚さ25μmのポリプロピレン製)を順に重ね、電解液を100μL添加した。その上にφ15mmに裁断した樹脂集電体を乗せ、さらにカーボンコートアルミ[昭和電工(株)製、SDX]、スペーサー(厚さ500μm)を2つ、皿バネ、正極缶を順に重ねて封をし、評価用のコインセルを作製した。なお、電解液として、1M LiPF6をエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒(体積比1:1)に溶解した溶液を準備した。
充放電測定装置「HJ1001SM8A」[北斗電工製]を用いて、評価用コインセルを電圧4.2Vまで充電し、そのまま200時間電圧をかけた状態での発生電流を計測した。本試験での結果は、4.2Vの電圧をかけ続けた状態で流れた電流量の総和としている。
なお、酸化電流量が少ないと電池の構成部材として用いた際の部材由来の容量ロスが低減でき、優れた長期の信頼性を有することを示す。
酸化電流量が0.9mAh/φ15以下である場合良好と判断して表1において酸化電流量判定の欄に○と表示し、酸化電流量が0.9mAh/φ15を超える場合を×と表示した。
本発明の系では、樹脂集電体の体積変化を重量変化と読み替えることが可能であるので、以下の方法により樹脂集電体の膨潤率(重量%)を測定して、体積膨張率を評価した。
樹脂集電体を10×40×0.2mmの寸法に切り出した試験片とし、この試験片を上記電解液に50℃で3日間浸漬させて飽和吸液状態の樹脂集電体を準備した。
試験片の吸液前後の重量変化から下記式によって膨潤率(重量%)を求めた。結果を表1に示す。
膨潤率[重量%]=[(吸液後の試験片重量-吸液前の試験片重量)/吸液前の試験片重量]×100
膨潤率が0.1%以下である場合良好と判断して表1において体積膨張率判定の欄に○と表示し、膨潤率が0.1%を超える場合を×と表示した。
樹脂集電体を3cm×10cm程度の短冊に裁断し、電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]及び抵抗計[RM3548、HIOKI製]を用いて各樹脂集電体の貫通抵抗値を測定した。
電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態での樹脂集電体の抵抗値を測定し、2.16kgの荷重をかけてから60秒後の値をその樹脂集電体の抵抗値とした。下記の式に示すように、抵抗測定時の冶具の接触表面の面積(3.14cm2)をかけた値を貫通抵抗値(Ω・cm2)とした。
貫通抵抗値(Ω・cm2)=抵抗値(Ω)×3.14(cm2)
貫通抵抗値が150Ω・cm2以下である場合良好と判断して表1において電気抵抗値判定の欄に○と表示し、貫通抵抗値が150Ω・cm2を超える場合を×と表示した。
一方で、比較例1~6では、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量が少なすぎる、又は、大きすぎるために、酸化電流量、体積膨張率、及び、電気抵抗値のいずれかの評価結果が悪くなっていた。
Claims (5)
- ポリオレフィン樹脂及び導電性炭素フィラーを含む樹脂集電体であって、
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの合計吸油量が0.10~0.26mlであり、
前記導電性炭素フィラーの重量割合が樹脂集電体の重量に対して13~70重量%であり、
前記導電性炭素フィラーが、
吸油量が1.5ml/g未満である第1の導電性炭素フィラー(A1)と、
吸油量が1.5~4.0ml/gである第2の導電性炭素フィラー(A2)とを含むことを特徴とする樹脂集電体。 - 前記第1の導電性炭素フィラー(A1)と前記第2の導電性炭素フィラー(A2)との重量割合が、[前記第1の導電性炭素フィラー(A1)/前記第2の導電性炭素フィラー(A2)]=55/45~90/10である請求項1に記載の樹脂集電体。
- リチウムイオン電池の正極用樹脂集電体である請求項1又は2に記載の樹脂集電体。
- リチウムイオン電池用電極であって、集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極用である請求項1又は2に記載の樹脂集電体。
- 請求項1~4のいずれかに記載の樹脂集電体を備えることを特徴とするリチウムイオン電池。
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