JP2001118222A - 磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ - Google Patents

磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ

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JP2001118222A JP2000067484A JP2000067484A JP2001118222A JP 2001118222 A JP2001118222 A JP 2001118222A JP 2000067484 A JP2000067484 A JP 2000067484A JP 2000067484 A JP2000067484 A JP 2000067484A JP 2001118222 A JP2001118222 A JP 2001118222A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 腐食による磁気ヘッドの損傷の危険性の少な
い磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイを提供す
る。 【解決手段】 導電性充填材0.25〜50重量%を含
有するポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるトレ
イであって、ヘッドスペースガスクロマトグラムによる
測定における、加熱温度85℃、平衡時間16時間の条
件で測定した表面積12.6cmからの塩素化炭化水
素発生量が0.1μg/g以下である磁気ディスク用磁
気ヘッドの搬送用トレイ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハードディスクド
ライブ用の磁気ヘッドを搭載し、加工、洗浄、移送、保
管等を行うトレイに係り、特に、磁気抵抗効果型ヘッド
(MRヘッド)を搬送するに好適なポリカーボネート樹
脂成形体よりなるトレイに関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ヘッドは、一般に、アーム部品と、
該アーム部品の先端に取り付けられたヘッドチップと、
該ヘッドチップに結線されたリード線とを有する。MR
ヘッドは、このヘッドチップとしてMR素子(磁気抵抗
素子)を用いたものである。
【0003】ハードディスクの高密度化、高容量化のた
めに磁気抵抗型ヘッドが用いられるようになってきた。
従来の薄膜ヘッドが信号磁界がコイルに接近する際に発
生する電流によって信号を検知するのに対して、このM
Rヘッドは、MR素子に微弱なセンス電流を流し、信号
磁界を電流の抵抗値によって検出するものであり、その
機構により、検出感度が飛躍的に向上し、メディアの狭
トラック化で大容量化が可能とされる。最近ではさらに
大容量化を狙ったGMRヘッドも用いられている。
【0004】このMRヘッドやGMRヘッドは、微量の
腐食性ガスや、微少のノイズ電流などのコンタミネーシ
ョンに対して極めてデリケートである。このため、これ
らのヘッドを搬送するためのトレイをはじめとして、各
種の取り扱い用部品や治具についても、ヘッドを汚染さ
せないための要求性能が厳しくなってきている。
【0005】従来の磁気ヘッド搬送用トレイは、ポリカ
ーボネート樹脂に炭素繊維を配合してなる樹脂組成物を
成形することにより製造されている。
【0006】ここで使用されるポリカーボネート樹脂
は、通常、二価フェノールのアルカリ水溶液と、ホスゲ
ンとを有機溶媒の存在下にて反応させる溶液法により製
造されており、かかる方法によれば、ポリカーボネート
樹脂はその有機溶媒溶液として得られる。この有機溶媒
としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素な
どの塩素化脂肪族炭化水素、クロロベンゼン、クロロト
ルエンなどの塩素化芳香族炭化水素が使用されており、
中でも塩化メチレンが最も一般的に使用されている。
【0007】ポリカーボネート樹脂は、得られたポリカ
ーボネート樹脂溶液から、溶媒相を蒸発除去して分離精
製することにより得られるが、この際、塩化メチレンに
代表される有機溶媒がポリカーボネートとの親和力に優
れるため、微量ではあるが樹脂中に残留することとな
る。そして、樹脂中に残留した塩化メチレンは、成形加
工を経て最終成形品である磁気ヘッド搬送用トレイとし
ての使用時に揮発成分として発生する。
【0008】従来の磁気ヘッド搬送用トレイにおいて腐
食性揮発成分として懸念されていた物質は、主に塩酸や
クロルイオンなどのイオン性物質であったが、MR素
子、GMR素子など腐食に対して極めて敏感な素子を有
した磁気ヘッドの搬送用トレイにおいては、塩化メチレ
ンのようなクロルイオンの前駆体であっても問題が生じ
るようになってきている。
【0009】また、アルコール、ケトン類などのその他
の揮発性成分に関しても磁気ヘッドチップに対する安全
性は必ずしも確認されておらず、このため磁気ヘッド搬
送用トレイに対しては、総アウトガス量そのものも少な
いことが要求されてきている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の実
情に鑑みてなされたものであって、腐食による磁気ヘッ
ドの損傷の危険性の少ない磁気ディスク用磁気ヘッドの
搬送用トレイを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気ディスク用
磁気ヘッドの搬送用トレイは、アーム部品と、該アーム
部品の先端に取り付けられたヘッドチップと、該ヘッド
チップに結線されたリード線とを有する磁気ディスク用
磁気ヘッドを搬送するためのトレイにおいて、該トレイ
は、導電性充填材0.25〜50重量%を含有するポリ
カーボネート樹脂組成物を成形してなるものであり、該
トレイのヘッドスペースガスクロマトグラムによる測定
における、加熱温度85℃、平衡時間16時間の条件で
測定した表面積12.6cmからの塩素化炭化水素発
生量が0.1μg/g以下であることを特徴とする。
【0012】ヘッドスペースガスクロマトグラムによる
測定における、加熱温度85℃、平衡時間16時間の条
件で測定した表面積12.6cmからの塩素化炭化水
素発生量(以下単に「塩素化炭化水素発生量」と記
す。)が0.1μg/g以下であるような、揮発成分の
発生量の少ないトレイであれば、磁気ヘッドの腐食によ
る損傷の問題を排除することができる。
【0013】本発明のトレイは、特に、ヘッドスペース
ガスクロマトグラムによる測定における、加熱温度85
℃、平衡時間16時間の条件で測定した表面積12.6
cm からの総アウトガス量(以下単に「総アウトガス
量」と記す。)が1μg/g以下で、塩化メチレン発生
量(以下単に「塩化メチレン発生量」と記す。)が0.
1μg/g以下でかつ炭化水素発生量(以下単に「炭化
水素発生量」と記す。)が0.5μg/g以下であるこ
とが好ましい。
【0014】また、本発明において用いる導電性充填材
は、DBP吸油量100cc/100g以上の炭素系導
電性物質、特に直径100nm以下で、長さ/径比が5
以上の炭素フィブリルであることが好ましい。
【0015】本発明のトレイはまた、表面抵抗値が10
〜1012Ωであることが好ましい。
【0016】このような本発明のトレイは、次の(A)
〜(D)の手法を採用することにより容易に実現するこ
とができる。 (A) ポリカーボネート樹脂として、温水滴下精製さ
れたポリカーボネート樹脂を用いる。 (B) ポリカーボネート樹脂として、無溶媒重合法に
より得られたポリカーボネート樹脂を用いる。 (C) ポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練時又は
溶融成形時に、真空脱気を行う。 (D) 成形後に80〜140℃の温度で30分〜20
時間アニールする。
【0017】このような本発明のトレイは、とりわけM
Rヘッド又はGMRヘッドの搬送用トレイとして好適で
ある。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を詳細
に説明する。
【0019】本発明のトレイは、ヘッドスペースガスク
ロマトグラムにより、例えば、下記測定方法で測定した
塩素化炭化水素発生量が0.1μg/g以下のものであ
る。 <発生ガス量測定方法>トレイより切り出した分析サン
プル(22mm(長さ)×10mm(幅)×3mm(厚
さ))2ピース(総表面積12.6cm)を、容量2
2mLのバイヤル中で、内標としてn−オクタンを10
μL添加して、加熱温度85℃、平衡時間16時間の条
件でガスを抽出した後、ガスクロマトグラム(GC)に
て測定し、イオンクロマトグラムにおけるn−オクタン
との面積比より発生量を算出する。ただし、分析サンプ
ルの形状は上記長さ、幅、厚さに何ら制限されず、ま
た、分析サンプルの総表面積が異なる場合には、12.
6cmに換算すれば良い。
【0020】この塩素化炭化水素発生量が0.1μg/
g以下であればヘッドへの悪影響は極めて少ない。塩素
化炭化水素発生量は、望ましくは0.02μg/g以下
である。
【0021】また、ヘッドへの悪影響を考慮した場合、
総アウトガス量は1μg/g以下、特に0.5μg/g
以下、塩化メチレン発生量は0.1μg/g以下、炭化
水素発生量は0.5μg/g以下、特に0.2μg/g
以下であることが望ましい。なお、この炭化水素とは、
後述のポリカーボネート樹脂の製造において使用される
n−へプタンや、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベン
ゼン、トルエン等である。
【0022】本発明において、導電性充填材を含有する
ポリカーボネート樹脂組成物を成形することにより、こ
のようなガス発生量のトレイを得る方法について、以下
に説明する。
【0023】本発明において、ポリカーボネート樹脂と
しては、例えば界面重合法、ピリジン法、クロロホーメ
ート法などの溶液法により、二価フェノール系化合物を
ホスゲンと反応させることによって製造される一般的な
ものを使用できる。この場合、トレイからの揮発成分と
なる、重合溶媒として用いた塩化メチレンなどの塩素化
炭化水素等を、得られるトレイに残留させない方法とし
ては、例えば以下の(A),(C),(D)の方法が挙
げられる。また、下記(B)の如く、溶媒を用いない方
法で製造されたポリカーボネート樹脂を用いる方法も有
効である。 (A) 塩素化炭化水素溶液として得られたポリカーボ
ネート樹脂を精製するに当り、ポリカーボネート樹脂の
水懸濁液を得、これを濾過や遠心分離等により湿潤粉末
を得る。例えば、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液
に、n−へプタンなどのポリカーボネート樹脂の貧溶媒
(ポリカーボネートが溶解しないか、溶解しても僅かな
溶媒)を沈殿が生じない程度添加してなる樹脂液を、温
水中に滴下し、適宜湿式粉砕を行いながら貧溶媒を留去
する(以下、この方法を「温水滴下精製」と記す。)。
このとき、80〜100℃に加熱しながら貧溶媒を留去
する際、腐食性の揮発性ガスの原因となる塩化メチレン
等の塩素化炭化水素が効率よく除去される。 (B) 重合溶媒を使用しない重合方法により得られた
ポリカーボネート樹脂(例えば、特開平4−10362
6号公報等に開示されたポリカーボネート樹脂)を使用
する。 (C) 溶融混練又は溶融成形に当り、真空脱気する。
例えば、通常の精製方法、或いは上記(A)法又は
(B)法により得られたポリカーボネート樹脂をベント
付き押し出し機に供給して、ベントより真空脱気するこ
とにより、溶媒を除去する。この際、特開平9−297
38号公報に記載されるように、原料粉末或いは溶融状
態の樹脂に水を添加すると、残存溶媒の除去の点で好適
である。 (D) 通常の精製方法或いは、上記(A)〜(C)の
方法より得られたポリカーボネート樹脂を使用した樹脂
組成物を用いて成形したトレイを、アニールすることに
よって揮発成分を除去する。この場合、アニール処理
は、80℃以上の温度で30分以上行うのが好ましい。
このアニール処理温度が140℃を超えるとトレイの寸
法変化や変形を引き起こす可能性があり、また、アニー
ル処理時間が20時間を超えても揮発成分の除去効果の
向上は望めないことから、アニール処理は80〜140
℃で30分〜20時間とするのが好ましい。
【0024】なお、上記(A)〜(D)の方法のうち、
(A)法では、塩素化炭化水素は低減できるものの、n
−ヘプタンなどの貧溶媒成分が残留する可能性が高い。
n−ヘプタンはヘッドを腐食することはないものの、最
近のより高密度化されたMR素子においては、ヘッド素
子表面への微少なデポジットの危険性が問題とされるこ
とから、前述の如く、n−ヘプタン等の炭化水素発生量
についても、極力抑えることが望まれる。
【0025】このようなn−ヘプタンや、オリゴマー、
その他の低分子量揮発成分も効率的に除去する点から
は、特に、(C)法の真空脱気による溶媒除去法が望ま
しい。この(C)法の押し出し機での真空脱気は、導電
性充填材を溶融混練により複合化する際に行っても良い
し、この混練前又は混練後に行っても良い。
【0026】本発明において、導電性充填材としては、
導電性を有する、粒子状、フレーク状、短繊維状などの
各種のフィラーを使用することができる。
【0027】具体的には、アルミニウム、銀、銅、亜
鉛、ニッケル、ステンレス、真鍮、チタンなどの金属系
フィラー、各種カーボンブラック、黒鉛(人工黒鉛、天
然黒鉛)、ガラス状カーボン粒子、ピッチ系炭素繊維、
PAN系炭素繊維、グラファイトウィスカー、炭素フィ
ブリル等の炭素系充填材、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化イ
ンジウム等の金属酸化物系充填材などの導電性充填材が
挙げられる。なお、金属酸化物系フィラーのなかでも格
子欠陥の存在により余剰電子が生成して導電性を示すも
のの場合には、ドーパントを添加して導電性を増加させ
たものを用いても良い。この場合、例えば、酸化亜鉛に
はアルミニウム、酸化スズにはアンチモン、酸化インジ
ウムにはスズ等がそれぞれドーパントとして用いられ
る。また、炭素繊維などに金属をコーティングしたり、
チタン酸カリウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィ
スカーの表面に導電性酸化スズを形成した複合系導電性
フィラーを使用することもできる。
【0028】上述の導電性繊維の中でも、繊維径5μm
以下の導電性繊維を用いると、成形体表面への充填材の
露出が少なく、また露出したとしても、磁気ヘッド用へ
の損傷が少なく、更には表面抵抗値を適正な範囲内にコ
ントロールし易い点で望ましい。
【0029】繊維径5μm以下の導電性繊維としては、
酸化亜鉛ウィスカ、酸化チタンウィスカなどの導電性ウ
ィスカやチタン酸カリウムウィスカやホウ酸アルミニウ
ムウィスカの表面に導電性酸化スズを形成した複合系導
電性繊維が挙げられる。これらの繊維充填材は、アスペ
クト比(繊維長/繊維径比)が5以上、望ましくは10
以上のものが望ましい。なお、ここでいう繊維径、繊維
長は、顕微鏡観察して5点測定した平均値である。
【0030】上記導電性充填材の中でも、以下の理由か
ら、DBP吸油量が100cc/100g以上のもの、
好ましくは250cc/100g以上のもの、より好ま
しくは400cc/100g以上のものが望ましい。
【0031】即ち、DBP吸油量が大きいほど充填材の
表面積が大きいことを表しており、従って、一般にDB
P吸油量の数値が大きいものほど微細な形状なものとな
る。一方、導電性充填材の配合による樹脂の導電性の発
現は、導電性充填材同士の連続的な接触による導電経路
の形成により、導電性充填材間の距離が10〜30Å程
度離れた不完全な接触状態においては、充填材間に電子
のホッピングによる電気伝導が生じる。このホッピング
による導電性は導電性充填材の内部での導電性に比較し
て低い。ところで、トレイには、後述の如く、表面抵抗
値(或いは導電性)が中位に安定していることが望まれ
る。従って、樹脂内部に導電性充填材の不完全な接触状
態を多数形成することにより、樹脂組成物の導電性を中
位(例えば10Ω)に安定して得ることが望ましい。
DBP吸油量が大きく微細な形状の充填材ほど、このよ
うな不完全な接触状態が形成される確率が高いため、本
発明では、上述のようなDBP吸油量の大きい導電性充
填材を用いるのが好ましい。
【0032】ところで、前述の導電性充填材としての金
属フィラーや、炭素繊維などは、ポリカーボネート樹脂
との親和性を補うために、通常はシランカップリング剤
などの有機性の表面処理剤によって処理される。しか
し、この表面処理剤は低分子量化合物が多く、そのた
め、得られたトレイから発生するアウトガスの増加に寄
与する場合がある。これに対して、DBP吸油量が10
0cc/100g以上のカーボンブラック等の炭素系導
電性充填材の表面は、一般に極めて活性に富み、表面処
理なしでポリカーボネート樹脂とよく親和して良好な分
散性を示す。従って、表面処理剤に由来するアウトガス
が発生することがない点においても、DBP吸油量の大
きい導電性充填材が好適である。
【0033】このようなDBP吸油量を満足する導電性
充填材としては、具体的にはファーネスブラック、アセ
チレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブ
ラックや、炭素フィブリルなどの炭素系導電性物質が挙
げられる。
【0034】本発明においては、このような炭素系導電
性物質のなかでも、トレイからの導電性充填材の脱落が
少ない点で特に炭素フィブリル、とりわけ繊維径が10
0nm以下の炭素フィブリルが好ましく、例えば特表平
8−508534号公報に記載されているものを使用す
ることができる。
【0035】即ち、炭素フィブリルは、当該フィブリル
の円柱状軸に実質的に同心的に沿って沈着されているグ
ラファイト外層を有し、その繊維中心軸は直線状でな
く、うねうねと曲がりくねった管状の形態を有するた
め、トレイからの脱落が少ない。
【0036】また、前述の導電性充填材のうち、例え
ば、一部のカーボンブラックは、イオウなどの原料由来
の不純物を微量含んでいる場合があり、これが揮発成分
としてトレイのアウトガス量を増加させる。これに対し
て、炭素フィブリルは、高純度のエチレンガス等を原料
として気相にて生成するために、充填材そのものに含ま
れる揮発成分も極めて少なく、アウトガスを全く発生し
ない点で、最も望ましい。
【0037】なお、炭素フィブリルの繊維径は製法に依
存し、分布のあるものであるが、ここで言う繊維径とは
顕微鏡観察して5点測定した平均値を指す。炭素フィブ
リルの繊維径が100nmより大きいと、樹脂中でのフ
ィブリル同士の接触が不十分となり、安定した抵抗値が
得られにくい。従って、炭素フィブリルとしては繊維径
100nm以下のものが好ましい。
【0038】特に、炭素フィブリルの繊維径が20nm
以下であると、万が一炭素フィブリルがトレイの表面か
ら脱落し、ヘッド等に付着した場合であっても、作動時
のヘッドとハードディスクとのクリアランスは繊維径よ
り比較的大きい(50μm程度)ため、ディスククラッ
シュの危険性が低下するので好ましい。
【0039】一方、炭素フィブリルの繊維径は、0.1
nm以上、特に0.5nm以上であることが好ましい。
繊維径がこれより小さいと、製造が著しく困難である。
【0040】また、炭素フィブリルは、長さと径の比
(長さ/径比、即ちアスペクト比)が5以上のものが好
ましく、特に100以上、とりわけ1000以上の長さ
/径比を有するものが好ましい。なお、この炭素フィブ
リルの長さ/径比は、透過型電子顕微鏡での観察におい
て、5点の実測値の平均値によって得られる。
【0041】また、微細な管状の形態を有する炭素フィ
ブリルの壁厚み(管状体の壁厚)は、通常3.5〜75
nm程度である。これは、通常、炭素フィブリルの外径
の約0.1〜0.4倍に相当する。
【0042】炭素フィブリルはその少なくとも一部分が
凝集体の形態である場合、原料となる樹脂組成物中に、
面積ベースで測定して約50μmより大きい径を有する
フィブリル凝集体、望ましくは10μmよりも大きい径
を有するフィブリル凝集体を含有していないことが望ま
しい。
【0043】このような炭素フィブリルは、市販品を使
用することができ、例えば、ハイペリオンカタリシスイ
ンターナショナル社の「BN」が使用可能である。
【0044】本発明において、導電性充填材の添加量は
ポリカーボネート樹脂組成物中0.25〜50重量%と
する。導電性充填材の添加量が0.25重量%未満では
十分な導電性が得られず、50重量%を超えると、ポリ
カーボネート樹脂組成物の成形性が著しく低下する。
【0045】特に、導電性充填材が炭素フィブリル等の
炭素系導電性充填材の場合、その添加量はポリカーボネ
ート樹脂組成物中1〜8重量%とするのが好ましい。添
加量がこれよりも少ないと導電性が発現しにくく、一方
これより多く添加しても増量に見合う効果の向上は認め
られず、むしろトレイからの粉塵の発生が見られると共
に成形性も低下することとなる。
【0046】本発明では、導電性充填材として、高分子
型の帯電防止剤を使用することもできる。この場合、例
えば、ポリエーテル、4級アンモニウム塩、スルホン酸
塩等の導電性単位をブロックもしくはランダムに組み込
んだ高分子や、特開平1−259051号公報に記載さ
れているような、ホウ素原子を分子中に有する高分子電
荷移動型結合体などが使用できる。
【0047】特に、高分子型帯電防止剤のなかでも、ポ
リエーテル系高分子帯電防止剤が耐熱性の点で望まし
い。具体的には、ポリエチレンオキシド、ポリエーテル
エステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、エチレン
オキシド−エピハロヒドリン共重合体、メトキシポリエ
チレングリコール−(メタ)アクリレート共重合体等、
好ましくは、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテ
ルアミドイミド、より好ましくはポリエーテルエステル
アミドが挙げられる。
【0048】このような高分子型帯電防止剤の添加量
は、ポリカーボネート樹脂組成物中に1〜50重量%、
特に5〜30重量%とするのが好ましい。
【0049】上述の各種導電性充填材は、1種類を単独
で使用しても、2種以上のものを組み合わせて使用して
も良い。
【0050】本発明に係るトレイを成形するためのポリ
カーボネート樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の
目的を損なわない範囲で各種の添加成分を配合すること
ができる。例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ・
アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、ほう酸アルミニ
ウム繊維等の無機繊維状強化材、アラミド繊維、ポリイ
ミド繊維、フッ素樹脂繊維等の有機繊維状強化材、タル
ク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスビーズ、ガラスパ
ウダー、ガラスバルーン等の無機充填材、フッ素樹脂パ
ウダー、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤、パラフィン
オイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、
紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、相溶化剤、防曇剤、アン
チブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、防菌
剤、蛍光増白剤等といった各種添加剤を配合することが
できる。
【0051】また、このポリカーボネート樹脂組成物に
は、本発明の目的を損なわない範囲で各種の樹脂をブレ
ンドして用いることができる。例えば、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等の
脂肪族ポリオレフィンや脂環族ポリオレフィン、芳香族
ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ
エチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイ
ド、各種ポリアミド(ナイロン6、66、ナイロン61
0、ナイロンMXD6等)、ポリエーテルイミド、ポリ
サルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエ
ーテルケトン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、変性
ポリフェニレンエーテル、液晶性ポリエステル等の非オ
レフィン系樹脂をブレンドすることができる。更に、ス
チレン系エラストマー(スチレン−ブタジエン共重合体
等)、オレフィン系エラストマー(エチレン−プロピレ
ン共重合体等)、ポリエステルエラストマー、ポリウレ
タンエラストマー、ポリアミドエラストマーなどの各種
の熱可塑性エラストマーを併用添加しても良い。
【0052】本発明のトレイの製造方法には、特に制限
はなく、通常の熱可塑性樹脂の加工方法で製造できる。
例えば、ポリカーボネート樹脂に導電性充填材を予め混
合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダ
ー、単軸混練押し出し機、二軸混練押し出し機、ニーダ
ーなどで溶融混練することによってポリカーボネート樹
脂組成物を製造することができ、その後、各種の溶融成
形法により、この樹脂組成物を所定形状に成形してトレ
イを得ることができる。この成形法としては、具体的に
は、プレス成形、押し出し成形、真空成形、ブロー成
形、射出成形などを挙げることができる。これらの成形
法の中でも、特に射出成形法、真空成形法が望ましい。
【0053】射出成形法としては、一般的な射出成形法
の他に、インサート射出成形法による金属部品その他の
部品との一体成形や、二色射出成形法、コアバック射出
成形法、サンドイッチ射出成形法、インジェクションプ
レス成形法等の各種成形法を用いることができる。射出
成形においては、樹脂温度、金型温度、成形圧力によっ
て得られるトレイの表面抵抗値が変化するので、目的に
応じて適切な条件を設定する必要がある。
【0054】ところで、MRヘッドはMR素子の微少電
流(センス電流)の抵抗変化により磁気を感知するとい
う機構によるため、微弱なノイズ電流でもMR素子を損
傷させてしまう危険性が大きい。このため、磁気ヘッド
のトレーとの電位差に起因する静電気放電や、ヘッドと
トレーとの接触により生じる接触電流に対して、従来の
集積型磁気ヘッドやICに比べて遙かにデリケートであ
る。
【0055】即ち、MRヘッドの組み付け工程において
は、ヘッドチップにリード線が結線され、このヘッドチ
ップがジンバルを介してアーム部品に組み付けられる。
このリード線(金属線)にはポリイミドが被覆されてい
るが、ポリイミドと金属線との接触電位差に起因して接
触部は常に電荷分離した、電気的に不安定な状態にあ
る。この結果、リード線先端が磁気ヘッドのトレー等に
接触した際、接触部における電荷のやりとりがより生じ
易くなり、損傷の危険性が高くなる。
【0056】従来の磁気ヘッド搬送用トレイの表面抵抗
値は10〜10Ω/□程度であり、静電気放電によ
るヘッドチップの損傷の危険性はないものの、トレイの
表面抵抗が低すぎることによる、ヘッドチップとトレイ
間、または周辺部品とトレイ間の過度な接触電流による
損傷が深刻な問題となっている。
【0057】このような問題を回避するために、本発明
のトレイは、その表面抵抗値が2探針プローブを用いた
測定において、10〜1012Ω、特に10〜10
11Ω、とりわけ10〜1010Ωであることが好ま
しい。表面抵抗値がこの範囲であると、帯電防止性に優
れるだけでなく、トレイとの接触における過大な接触電
流が防止できるため、電子部品への損傷が少ない。
【0058】なお、一般に表面抵抗値とは、測定サンプ
ルの厚みや幅方向への電流の回り込みを考慮して、抵抗
値を形状要因で換算することにより(Ω/□)の単位で
得られるが、本発明のトレイのように複雑な形状の場
合、この換算が極めて困難である。一方、実用において
は、形状を含んだ上での見かけの抵抗値が重要であり、
必ずしも形状で換算された単位(Ω/□)を用いる必要
はない。従って、本発明においては、上記表面抵抗値
(Ω)で評価する。
【0059】また、本発明の磁気ディスク用磁気ヘッド
の搬送用トレイは、表面粗さが、カットオフ波長2.5
mmの測定において、下記又はを満足するものが好
適である。
【0060】 十点平均粗さ(Rz)が5μm以下 カッティングレベル10%負荷長さ率(tp)が1
%以上で、中心線より±0.1μm以上のピークカウン
ト(Pc)が測定長1cm当たり100以下 ここで、十点平均粗さ(Rz)とは、粗さ曲線の平均線
から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目
までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底か
ら5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和より
算出して求める。従って、Rzの数値は、小さいほど平
滑な表面であることを示す。
【0061】なお、極めて平滑な表面の場合、山及び谷
が測定範囲内に5個以上存在しないと算出が不可能であ
る。そのような場合には、本発明では最大山と最大谷の
和、すなわちRmaxで置き換えることが出来る。
【0062】一方、カッティングレベル10%の負荷長
さ率(tp)とは、粗さ曲線から基準長さだけ抜き取
り、最も高い山頂から10%低いレベルで、平均線と平
行に切断したときに得られる切断長さの和(負荷長さ)
の基準長さに対する比を百分率で表したものをいう(J
IS B0601)。
【0063】また、±0.1μm以上のピークカウント
(Pc)とは粗さ曲線の平均線から±0.1μmの高さ
及び深さに平均線と平行に線を引き、その線を縦方向に
横切る凹凸が、基準長さ内にいくつあるかをカウントし
たものである。
【0064】十点平均粗さ(Rz)が5μm以下の平滑
度の高い表面粗さであれば、ポリイミド被覆材などの磁
気ヘッドへの傷付き性は少ない。
【0065】また、十点平均粗さ(Rz)が5μmを超
えても、カッティングレベル10%の負荷長さ率(t
p)が1%以上で、かつ前記ピークカウント(Pc)が
1cmあたり100以下、望ましくは80以下である
と、磁気ヘッドへの傷付きが少なく良好となる。
【0066】逆に、十点平均粗さ(Rz)が5μmを超
え、カッティングレベル10%の負荷長さ率(tp)が
1%より小さいと、突起の先端が鋭利になり、磁気ヘッ
ドへの損傷が大きくなる。また、十点平均粗さ(Rz)
が5μmを超え、カッティングレベル10%の負荷長さ
率(tp)が1%以上でピークカウント(Pc)値が1
00を超える表面粗さであると、磁気ヘッドへの損傷が
大きくなる。
【0067】ところで、本発明のトレイのように、非結
晶性で比較的溶融粘度の高いポリカーボネート樹脂に導
電性充填材を配合した樹脂組成物の射出成形品の表面
は、金型表面を転写し難く、流動性、充填材の形状、収
縮及び成形条件等に起因する表面付近での流れムラや充
填材の露出によって表面粗さが形成される。
【0068】かかる状態での表面粗さは、Pc値で表さ
れる凹凸の数が本発明の範囲以下であれば山と谷の傾斜
がなだらかになり、山の頂点が緩やかになる。このこと
によって磁気ヘッドとの摩擦において”引っ掻き”の効
果が減少する。逆にPc値が100を超えると個々の山
が鋭利な突起となり、磁気ヘッドへの損傷を引き起こ
す。ピークカウント(Pc)は10以上80以下におい
て特に磁気ヘッドの損傷性が少なくなる。
【0069】上記の表面粗さは、金型表面の転写性を改
良したポリカーボネート樹脂組成物を用いて、金型表面
を放電加工、エッチング、サンドブラストなどによる処
理によって意識的に粗らして、それを転写した場合にお
いても同様である。
【0070】特に、磁気ヘッドをトレイに搭載した状態
にて水中洗浄及びその後の乾燥工程を行う場合、磁気ヘ
ッドと接触する部位のトレイ表面の十点平均粗さ(R
z)が小さいと、その間に浸透した洗浄水の乾燥性が低
下し、乾燥効率を低下させるという問題が生じることが
ある。更に、磁気ヘッド用トレイの場合、磁気ヘッドの
目視検査において、トレイの表面の平滑性が良すぎる
と、光の反射率が大きくなり、検査に支障をきたす。
【0071】かかる観点から、磁気ヘッド用トレイの磁
気ヘッドの搭載される部位の表面粗さは、十点平均粗さ
(Rz)が5μm以上50μm以下でカッティングレベ
ル10%の負荷長さ率(tp)が1%以上、かつピーク
カウント(Pc)が100以下、好ましくは10以上8
0以下であることが好ましい。
【0072】本発明のトレイは、純水500ml中に、
表面積100〜1000cmのトレイを浸漬し、40
KHzの超音波を60秒間印加したときに、該トレイの
表面から脱落する粒径1μm以上のパーティクルの数
(以下、この値を「パーティクル発生量」と称す。)が
5000pcs/cm以下であるような、表面の均一
性、安定性に優れたものが好ましい。かかるトレイであ
れば、ひっかきや摩耗、洗浄により脱落するパーティク
ルによる磁気ヘッドの物理的ないし化学的な汚染や損傷
を防止することができる。
【0073】このパーティクル発生量が5000pcs
/cmを超えると、ひっかきや摩擦、洗浄時に脱落し
たパーティクルによる汚染や損傷の問題がある。本発明
では、特に、パーティクル発生量は1000pcs/c
以下であることが好ましい。
【0074】また、本発明の磁気ディスク用磁気ヘッド
の搬送用トレイは、純水50ml中に表面積100cm
のトレイを浸漬して60℃で60分間攪拌したとき
に、トレイから溶出するクロルイオン量(以下、この値
を「クロルイオン溶出量」と称す。)が0.01μg/
cm以下であることが、クロルイオンによる腐食等の
問題を防止する上で好ましい。
【0075】このクロルイオン溶出量が0.01μg/
cmを超えると、洗浄時に溶出したクロルイオンによ
る腐食や使用時の異物発生の問題がある。クロルイオン
溶出量は特に0.005μg/cm以下であることが
好ましい。
【0076】ところで、導電性充填材として炭素繊維を
用いたトレイにあっては、炭素繊維の表面処理剤である
有機性成分が磁気ヘッドに付着してヘッドを汚染、損傷
させたり、ヘッドとディスク間の異物となる問題が懸念
される。この問題を防止するために、本発明では、次に
述べる不揮発性有機物溶出量の測定方法で測定したとき
のトレイからの不揮発性有機物の溶出量がトレイの単位
表面積当り0.5μg/cm以下であることが好まし
い。
【0077】<不揮発性有機物溶出量の測定方法>旭ガ
ラス社製フロン系洗浄剤「アサヒクリンAK−225」
500mlにトレイを浸漬し、超音波(40KHz、
0.5W/cm)を60秒間印加する。抽出液を10
0℃にて揮発させて、残留分の重量を測定する。
【0078】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明する。
【0079】なお、以下の実施例及び比較例において、
二軸混練押し出し機としては、池貝鉄鋼社製「PCM4
5」L/D=32(L;スクリュー長、D;スクリュー
径)を用い、バレルは、先端より4.4Dから5.8D
の部分にベント開口部を有する形状とした。
【0080】また、ポリカーボネート樹脂組成物から成
形したトレイの形状及び寸法は、図1(斜視図)及び図
2(a)(平面図)、(b)(図2(a)のB−B線に
沿う断面図)に示す通りである。図中、1はトレイ本
体、2は位置決めリブ、3は位置決めボス、4は磁気ヘ
ッドをそれぞれ示す。
【0081】実施例1 ビスフェノールAより製造したポリカーボネート樹脂の
塩化メチレン溶液を精製し、樹脂濃度20重量%の溶液
とした。この樹脂溶液200リットルに、n−ヘプタン
40リットルを加え均一に混合した後、温水中に滴下し
つつ湿式粉砕器で粉砕した。この温水滴下精製における
滴下中の容器内の液温度は40℃、内圧は0.1Kg/
cmに調整した。
【0082】滴下終了後、容器内温度を100℃まで昇
温し、約15分間で溶媒を蒸発除去し、得られたポリカ
ーボネート樹脂の水スラリー液を取り出し、濾過、水切
りをした後、140℃にて乾燥を行い、ポリカーボネー
ト樹脂の粉末を得た。
【0083】得られたポリカーボネート樹脂に、平均繊
維径7μm、平均繊維長6mmのエポキシ表面処理され
たPAN系炭素繊維を組成物中に10重量%配合して、
二軸混練押し出し機によりベント開放状態にて300℃
の温度でスクリュー回転数100RPM、吐出量30K
g/hの条件で混練して樹脂組成物ペレットを得た。
【0084】得られたペレットを射出成型機にて、30
0℃の成形温度にて成形して図示の磁気ヘッド搬送用ト
レイ(総表面積420.8cm)を得た(金型温度9
0℃)。
【0085】得られたトレイの表面抵抗値を下記の方法
で測定し、結果を表1に示した。なお、表面抵抗値は、
図2(a)の斜線を付した範囲の任意の5ヶ所で測定
し、平均値を算出した。 <表面抵抗値測定方法>2探針プローブで、プローブ先
端:2mmφ、プローブ中心間距離:20mmにて下記
プローブ間印可電圧にて測定した。 表面抵抗値が10Ω以上10Ω未満の場合: 10V 表面抵抗値が10Ω以上の場合 :100V ただし、表面抵抗値10Ω以上の測定には、プローブ
先端を5mmφとして、さらに厚み2mmt、直径5m
mφ、10Ωcm以下の導電性シリコンゴムをアセンブ
リして、サンプル表面との密着が安定するようにして測
定した。
【0086】また、測定機としては次のものを用いた。 表面抵抗値10Ω以上、10Ω未満の場合:アドバ
ンテスト社製「高抵抗計R8340」 表面抵抗値10Ω以上の場合 :ダイヤイ
ンスツルメント社製「ハイレスタAP」 (なお、比較例1の表面抵抗値10Ωの測定には、ダ
イヤインスツルメント社製「ロレスタIP(4探針プロ
ーブ)」を用いた。) <磁気ヘッドの腐食試験>このトレイにMRヘッドを1
2個搭載して、ガラス製の容器(容量201.5mL)
中で、80℃、90%、95時間放置した。その後、M
Rヘッドをトレイから取り出し、100倍の顕微鏡にて
MR素子部の腐食の有無を観察し、下記基準で評価を行
い、結果を表1に示した。 ○…磁気ヘッド(素子)に、腐食は見られなかった。 ×…全ての磁気ヘッド(素子)のパーマロイにより構成
されている部位に腐食が発生した。 <ガス発生量の測定方法>別に、トレイより分析サンプ
ルとして22mm(長さ)×10mm(幅)×3mm
(厚さ)のサンプルを2ピース(総表面積12.6cm
)切り出して、内標としてn−オクタンを10μL添
加した容量22mLのバイヤル中で、加熱温度85℃、
平衡時間16時間の条件でガスを抽出した。
【0087】バイヤル中に発生したガスをガスクロマト
グラム(GC/MS)にて測定した。このときの測定条
件は以下に示す通りである。
【0088】 装 置 :島津製作所社製「GC/MS QP5050」 カ ラ ム :CHROMPAK PORAPLOT Q 0.32 mm×25m カラム温度 :35〜240℃(10℃/min) 注入口温度 :230℃ インターフェース温度:280℃ トレイガス :ヘリウム 注入口圧力 :100K Pas 全 流 量 :60mL/min 注 入 量 :2mL 発生ガスの定性分析の結果、主成分はn−ヘプタン、ア
セトン、1−プロペン、2−プロパノール、及びその他
の微量成分であった。
【0089】総アウトガス量、塩化メチレン発生量、n
−ヘプタン発生量をそれぞれ以下の式により算出し、結
果を表1に示した。 総アウトガス量(μg/g) =(サンプル総ピーク面積−ブランク総ピーク面積) /(n−オクタンのピーク面積/n−オクタンの重量(g))×1 /(サンプル重量(g)) 塩化メチレン発生量(μg/g) =(塩化メチレンピーク面積) /(n−オクタンのピーク面積/n−オクタンの重量(g))×1 /(サンプル重量(g)) ヘプタン発生量(μg/g) =(ヘプタンピーク面積) /(n−オクタンのピーク面積/n−オクタンの重量(g))×1 /(サンプル重量(g)) <表面粗さ>東京精密社製 表面粗さ計「サーフコム」
を使用して、測定条件:カットオフ波長2.5mm、測
定長5mm、測定スピード0.3mm/Sにて測定し
た。測定は、磁気ヘッドが接触する図2(a)の斜線を
付した範囲の任意の5ヶ所について行い、各パラメータ
の平均値を算出した。また、Pc値は2倍して1cm当
たりの数値に換算した。
【0090】なお、図2(a)に示す、斜線部に対応す
る金型面の表面粗さは、Rmax1.5μmであった。 <損傷性試験>磁気ヘッドへの損傷性評価として、図3
に示す方法にて、磁気ヘッドが接触する図2(a)の斜
線を付した範囲から採取したトレイ材(サンプル)11
に対して、磁気ヘッドのリード線として使用される、基
材にポリイミドを使用したフレキシブルプリント配線基
板(FPC)(幅10mm)12を、ゴムシート13を
取り付けた荷重(100g,直径40mm)14で押し
付け、スパン80mmで10往復摺動させて、試験後の
配線基板12の表面を光学顕微鏡にて50〜100倍で
観察し、以下の基準で判定した。なお、損傷試験用サン
プル11は事前に全て純水洗浄を行い、表面に付着した
ゴミを取り除いた。また、事前洗浄及び損傷性試験は全
てクリーンルーム内で行った。 ◎: 傷が全く観察されない。 ○: 傷が6本未満で、傷深さが銅配線へ達していな
い。 ×: 傷が6本以上で、傷深さが銅配線へ達している。 <パーティクル発生量>純水500mlに図1,2の形
状に形成したトレイ(総表面積420.8cm )1枚
を浸漬し、超音波(40KHz、0.5W/cm)を
60秒間印加した。その後、抽出した純水を液中パーテ
ィクルカウンターにて吸引し、粉塵粒子径1μm以上の
数量を測定した。なお、測定に際しては、前処理とし
て、トレイを純水により8分間超音波洗浄した後に、1
00℃のオーブン中にて30分乾燥を行った。作業は全
てクリーンルーム内で行った。また、サンプル浸漬の際
には全てガラス製容器を用いた。 <クロルイオン溶出量>純水480mlに図1,2の形
状に成形したトレイ(総表面積420.cm)2枚を
ポリプロピレン容器中で浸漬し、60℃のウォーターバ
ス中で60分攪拌した。その後、イオンを抽出した純水
中のクロルイオンをイオンクロマトグラフ法にて分析し
た。 <不揮発性有機物溶出量>旭ガラス社製フロン系洗浄剤
「アサヒクリンAK−225」500mlに、図1,2
の形状のトレイサンプル(総表面積420.8cm
を浸漬し、超音波(40KHz、0.5W/cm)を
60秒間印加した。抽出液をアルミパン上で100℃に
て揮発させて、残留分の重量を測定した。
【0091】実施例2 実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂粉末を調製
し、これを二軸混練押し出し機にてベントを20Tor
rに減圧しながら、300℃の温度でスクリュー回転数
200RPM、吐出量20Kg/hの条件で混練して、
ペレットを得た。このペレットにアセチレンブラック
(電気化学(株)製「デンカブラック」DBP吸油量3
00cc/100g)18重量%を二軸混練押し出し機
にてベント開放状態にて280℃の温度でスクリュー回
転数200RPM、吐出量30Kg/hの条件で混練し
て、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0092】このペレットを用いて実施例1と同様にし
てトレイを成形し、評価を行い、表面抵抗値、腐食試験
及び発生ガス分析の結果を表1に示した。
【0093】実施例3 実施例1と同様にして調製したポリカーボネート樹脂粉
末100重量部に対して1重量部の純水を添加し、二軸
混練押し出し機にてベントを20Torrに減圧しなが
ら、300℃の温度でスクリュー回転数200RPM、
吐出量20Kg/hの条件で混練して、ペレットを得
た。このペレットに炭素フィブリル(ハイペリオンカタ
リシスインターナショナル社製「タイプBN」DBP吸
油量700cc/100g)4.3重量%を配合し、二
軸混練押し出し機にてベントを20Torrに減圧しな
がら、280℃の温度でスクリュー回転数200RP
M、吐出量20Kg/hの条件で混練して、ポリカーボ
ネート樹脂組成物のペレットを得た。なお炭素フィブリ
ルの配合混練は、予め15重量%の添加量で分散させた
炭素フィブリルマスターバッチを使用して、所定の含有
量となるように添加した。
【0094】このペレットを用いて実施例1と同様にし
てトレイを成形し、評価を行い、表面抵抗値、腐食試験
及び発生ガス分析の結果を表1に示した。
【0095】実施例4 実施例3において、ポリカーボネート樹脂ペレットを、
重合溶媒を使用しない製造方法によるポリカーボネート
として、GEプラスチック社製「MHL−1110−1
11」に変えたこと以外は、実施例3と同様にしてポリ
カーボネート樹脂組成物のペレットを製造し、同様にト
レイを成形し、評価を行って、表面抵抗値、腐食試験及
び発生ガス分析の結果を表1に示した。
【0096】実施例5 ビスフェノールAより製造したポリカーボネート樹脂の
塩化メチレン溶液を精製し、樹脂濃度20重量%の溶液
とした。この樹脂溶液を100℃の水蒸気中に噴霧して
溶媒を除去し、直接ポリカーボネートの湿潤粉末を得、
これを140℃で乾燥してポリカーボネート樹脂粉末を
得た。
【0097】得られたポリカーボネート粉末に実施例3
で使用したと同様の炭素フィブリルを4.3重量%配合
し、二軸混練押し出し機でベントを20Torrに減圧
しながら、280℃の温度でスクリュー回転数200R
PM、吐出量20Kg/hの条件で混練して、ポリカー
ボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0098】得られたペレットを用い、射出成型機に
て、300℃の成形温度にてトレイを成形した後、オー
ブン中で130℃にて10時間アニールした。
【0099】得られたトレイについて実施例1と同様に
して評価を行い、表面抵抗値、腐食試験及び発生ガス分
析の結果を表1に示した。
【0100】比較例1 実施例5で得られたポリカーボネート樹脂粉末に、実施
例1で使用した炭素繊維を組成物中に20重量%配合し
て、ベント開放状態にて300℃の温度でスクリュー回
転数100RPM、吐出量30Kg/hの条件で混練し
てポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0101】このペレットを用いて、実施例1と同様に
してトレイの成形及び評価を行い、表面抵抗値、腐食試
験及び発生ガス分析の結果を表1に示した。
【0102】比較例2 比較例1において、炭素繊維を実施例3で使用したと同
様の炭素フィブリルに変えて4.3重量%添加したこと
以外は比較例1と同様にしてペレットの製造、トレイの
成形及び評価を行い、表面抵抗値、腐食試験及び発生ガ
ス分析の結果を表1に示した。
【0103】
【表1】
【0104】表1より、本発明のトレイは、塩化メチレ
ン等の発生量が極めて少なく、ヘッドチップの腐食の危
険性が少ない上に、表面抵抗値が中位に安定しており、
ヘッドチップへの電気的な損傷も少ないことがわかる。
【0105】また、表1より本発明の磁気ディスク用磁
気ヘッドの搬送用トレイは、ヘッドの汚染及びそれによ
る損傷の問題が殆どなく、また、摩擦によるヘッドの損
傷の問題が殆どないことがわかる。
【0106】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明によれば、腐
食による磁気ヘッドのヘッドチップの損傷の問題のない
磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイが提供され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例において製造した磁気ヘッド
搬送用のトレイを示す斜視図である。
【図2】図2(a)は図1に示すトレイの平面図、図2
(b)は図2(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図3】実施例及び比較例における損傷性試験方法を示
す断面図である。
【符号の説明】
1 トレイ本体 2 位置決めリブ 3 位置決めボス 4 磁気ヘッド 11 トレイ材 12 配線基板 13 ゴムシート 14 荷重
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 7/06 C08L 69/00 C08L 69/00 G11B 5/39 G11B 5/39 B65D 85/38 R (72)発明者 田中 繁 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 浅野 悦司 三重県四日市市大治田三丁目3番17号 油 化電子株式会社四日市工場内 (72)発明者 田中 智彦 三重県四日市市東邦町1番地 三菱化学株 式会社四日市事業所内 (72)発明者 鷺坂 功一 三重県四日市市東邦町1番地 三菱化学株 式会社四日市事業所内 Fターム(参考) 3E096 AA09 BA08 CA06 CB02 CC02 EA02X FA07 GA01 3F022 AA08 EE01 4F071 AA50 AB03 AD01 AE15 AE17 AF02 AH05 AH14 4J002 CG001 DA017 DA036 FA047 FD116 GG01 GS01 5D034 BA02 CA07 DA05

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アーム部品と、該アーム部品の先端に取
    り付けられたヘッドチップと、該ヘッドチップに結線さ
    れたリード線とを有する磁気ディスク用磁気ヘッドを搬
    送するためのトレイにおいて、 該トレイは、導電性充填材0.25〜50重量%を含有
    するポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるもので
    あり、 該トレイのヘッドスペースガスクロマトグラムによる測
    定における、加熱温度85℃、平衡時間16時間の条件
    で測定した表面積12.6cmからの塩素化炭化水素
    発生量が0.1μg/g以下であることを特徴とする磁
    気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ。
  2. 【請求項2】 請求項1において、該トレイのヘッドス
    ペースガスクロマトグラムによる測定における、加熱温
    度85℃、平衡時間16時間の条件で測定した表面積1
    2.6cmからの総アウトガス量が1μg/g以下
    で、塩化メチレン発生量が0.1μg/g以下でかつ炭
    化水素発生量が0.5μg/g以下であることを特徴と
    する磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において、該導電性充填
    材が、DBP吸油量100cc/100g以上の炭素系
    導電性物質であることを特徴とする磁気ディスク用磁気
    ヘッドの搬送用トレイ。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項におい
    て、該導電性充填材が、直径100nm以下で、長さ/
    径比が5以上の炭素フィブリルであることを特徴とする
    磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれか1項におい
    て、該トレイの表面抵抗値が10〜1012Ωである
    ことを特徴とする磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用ト
    レイ。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれか1項におい
    て、ポリカーボネート樹脂として、温水滴下精製された
    ポリカーボネート樹脂を用いたことを特徴とする磁気デ
    ィスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれか1項におい
    て、ポリカーボネート樹脂として、無溶媒重合法により
    得られたポリカーボネート樹脂を用いたことを特徴とす
    る磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか1項におい
    て、ポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練時又は溶融
    成形時に、真空脱気を行ったことを特徴とする磁気ディ
    スク用磁気ヘッドの搬送用トレイ。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれか1項におい
    て、成形後に80〜140℃の温度で30分〜20時間
    アニールしたことを特徴とする磁気ディスク用磁気ヘッ
    ドの搬送用トレイ。
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