JP7274083B2 - 電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

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本発明は、電気電子包装材を形成するために用いられる熱可塑性樹脂組成物、及び成形体に関する。
近年、OA機器や電子機器等の小型軽量化や高集積化、高精度化が進んでいる。これらに用いられる電気電子部品は、塵やほこりが付着すると、接点不良や読みとりエラー等の問題を起こしてしまう。そのため、塵やほこりの付着を極力低減させる必要があり、さらなる小型軽量化や高集積化、高精度化に伴い、その要求が一層厳しくなっている。例えば、半導体に使われるICチップや、ウエハー、コンピューターに使われるハードディスクの内部部品等はその最たる例である。通常、これらの部品の製造や組立ては、塵やほこりの極めて少ない、いわゆるクリーンルーム内で行われているが、搬送時には外気にさらされるため、ここでの塵やほこりの付着が問題となってくる。これら電気電子部品の搬送等に用いられる電気電子包装材としては、例えばシリコンウェーハを安全でクリーンに保持、搬送するFOUP(Front-Opening Unified Pod)やFOSB(Front Opening Shipping Box)、ICチップ等の半導体を搬送する際に用いられるICトレイやエンボスキャリアテープ、電子部品の回路パターン等を被転写対象に転写する際の原版となるフォトマスクを搬送するフォトマスクケース、半導体製造の前工程にて使用されるレチクルを収納しておくRSP(Reticle SMIF Pod)などが挙げられる。
このような、電気電子部品を収納あるいは運搬するために使用される樹脂組成物として、特許文献1、2には、ポリカーボネート樹脂と、導電性カーボンブラックを用いた樹脂組成物が、特許文献3には、芳香族ポリカーボネート樹脂と、カーボンナノチューブを用いた樹脂組成物が開示されている。
特開2008-141130号公報 国際公開第2001/005868号 特開2010-155929号公報
しかしながら、これら従来の樹脂組成物では、近年の小型軽量化や高集積化、高精度化に対応できるだけの、塵やほこりの付着を防ぐことが充分ではない。
例えば、特許文献1、2のような導電性のカーボンブラックを用いた場合、カーボンブラックにより電気抵抗を下げることができるが、耐衝撃性等の機械的強度の低下、成形性の低下、カーボンブラックの露出による外観の悪化といった問題がある。また、成形条件やリサイクルによる導電性のバラつきが大きく、さらに接触・摩擦時の摩耗によるカーボンブラックの脱離が発生し、脱離したカーボンブラックがICチップや、ウエハー、コンピューターに使われるハードディスクの内部部品といった電気電子部品に付着して誤作動を引き起こす場合がある。
また、カーボンナノチューブを熱可塑性樹脂に練り込む方法の場合、カーボンナノチューブは増粘効果があるため、樹脂組成物の流動性が低下することで分配不良が発生し、均一な帯電防止性能を達成することが難しいという問題がある。さらに、帯電防止性能を上げようとすると、カーボンナノチューブの含有濃度を高くする必要があり、それによる熱可塑性樹脂組成物への吸水のために、成型品の収縮率も悪くなってしまう場合がある。
よって本発明は、導電性に優れ、かつ面内バラつきもなく、塵やほこりの付着を防ぐことが可能な帯電防止性能を有し、さらに樹脂組成物への吸水を抑えることで寸法安定性に優れた成形体を形成可能な電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物、ならびに、該熱可塑性樹脂組成物により形成される、帯電防止性能に優れた成形体の提供を目的とする。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)を含む熱可塑性樹脂組成物であり、カーボンナノチューブ(B)は、下記(1)および(2)を満たし、熱可塑性樹脂組成物から形成してなる厚み100μmのシートは、ISO25178に準拠して測定されるシート表面の最大高さSzが10μm以下であることを特徴とする電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物に関する。
(1)粉末X線回折分析において、(002)面の回折ピークの半価幅が2.0°~6.0°である。
(2)ラマンスペクトルにおける1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度G、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度Dの比率(G/D比)が0.5~2.0である。
本発明により、導電性に優れ、かつ流動性に優れることにより、帯電防止性に面内バラつきもなく、塵やほこりの付着を防ぐことが可能な帯電防止性能を有し、さらに樹脂組成物への吸水を抑えることで寸法安定性にも優れた成形体を形成可能な電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物とすることができる。ならびに、該熱可塑性樹脂組成物により形成される、帯電防止性能に優れた成形体の提供が可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書で「フィルム」、および「シート」は同義である。
また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
また、カーボンナノチューブをCNTと表すことがある。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
《電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物》
本発明の電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物は、電気電子部品用の包装材を形成するために用いられる熱可塑性樹脂組成物である。
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)を含み、カーボンナノチューブ(B)は、下記(1)および(2)を満たし、
熱可塑性樹脂組成物から形成してなる厚み100μmのシートは、ISO25178に準拠して測定されるシート表面の最大高さSzが10μm以下である。
(1)粉末X線回折分析において、(002)面の回折ピークの半価幅が2.0°~6.0°である。
(2)ラマンスペクトルにおける1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度G、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度Dの比率(G/D比)が0.5~2.0である。
熱可塑性樹脂組成物から形成してなる厚み100μmのシートは、表面の最大高さSzが10μm以下である。これにより熱可塑性樹脂に充分な導電性を付与し、かつ流動性が優れることで面内バラつきのない帯電防止性能を有する成形体が形成できる。さらに、樹脂組成物への吸水を抑えることで寸法安定性にも優れた成形体を形成することが可能となる。
最大高さSzは、小さいほど好ましく、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは8μm以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、X線回折ピークの半価幅、およびラマンスペクトルにおけるG/D比が特定の範囲にあるカーボンナノチューブ(B)を用い、かつシート表面の最大高さSzがこの範囲を満たすことにより、導電性に優れるだけでなく、熱可塑性樹脂組成物の流動性に優れることで、面内バラつきのない、高い帯電防止性能を備えた熱可塑性樹脂組成物とすることができる。
シート表面の最大高さSzは、カーボンナノチューブの分散性により大きく変化し、この範囲にするためには、用いるカーボンナノチューブ(B)として、本発明のカーボンナノチューブ(B)と熱可塑性樹脂(A)を用いることに加え、成形体を形成するための樹脂の溶融混錬時の分散条件等により、カーボンナノチューブを高分散することで制御することが可能である。カーボンナノチューブの半価幅が6.0°より大きいとより単層のカーボンナノチューブに近くなる。単層のカーボンナノチューブに近づくほど、比表面積が大きく結晶性が高いカーボンナノチューブとなり、凝集力が非常に強く、樹脂中での分散性が悪くなってしまう。よって、半価幅が2.0°~6.0°であるカーボンナノチューブ(B)を用いることで最大高さSzを10μm以下に制御することが可能となる。
本発明のカーボンナノチューブ(B)を用いることによって、高分散としても熱可塑性樹脂組成物が流動性を保持することができる。さらに、シートの表面粗さも平滑であり、帯電防止性能に優れた成形体を形成できるものとなっている。
シート表面の最大高さSzを測定するための、シートの形成方法は、厚み100μmのシートを形成することができれば、どのような方法であっても制限されない。
例えば、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)を含む熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融し、Tダイ成形機によりシートを成形することができる。
具体的には、例えば、樹脂組成物に使用されている熱可塑性樹脂(A)の融点より30℃程度高い温度にてTダイ成形機を使用することにより厚み100μmシートを作製することができる。熱可塑性樹脂(A)が非晶性の熱可塑性樹脂の場合には、ガラス転移点温度より130℃程度高い温度にてTダイ成形機を使用することにより厚み100μmシートを作製することができる。
シート表面の最大高さSzは、二次元の粗さパラメーターである最大高さRzを三次元に拡張したパラメーターであり、測定表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
最大高さSzは、ISO25178に準拠して測定し、求めることができる。
なお、ある表面について、その断面を抜き出し、粗さを議論する際には、SzとRzは同義とみなすことができる。
具体的には、例えば、作製した厚み100μmのシートをTaylor/Hobson社製、タリサーフCCI MP-HSを使用し、測定長が2.5mm×2.5mm、ロバストガウシアンフィルタが0.08mm、とした際の最大高さSz(μm)から求められる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレイト(MFR)は、0.1~30g/10分が好ましく、5~30g/10分が更に好ましい。MFRが前記範囲内であることで、成形時にカーボンナノチューブが成形体中に均一に分配し、成形体において均一な帯電防止性能が得られる。
なお、本発明におけるMFRはJIS(日本工業規格)K-7210に従って測定し、求めることができる。
<熱可塑性樹脂(A)>
熱可塑性樹脂(A)は、加熱溶融により成形可能な樹脂であれば特に制限されるものではない。熱可塑性樹脂(A)は、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン樹脂(PU)、液状シリコーンゴム(LSR)等が挙げられる。
汎用性、機械物性の観点から、好ましくは、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)ポリエステル系樹脂などである。
熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量は、汎用性、機械物性の点で1,000~900,000であることが好ましく、より好ましくは2,000~500,000である。
なかでも、熱可塑性樹脂(A)として、重量平均分子量が50,000以上の熱可塑性樹脂(A1)と、50,000未満の熱可塑性樹脂(A2)を併用して用いることが好ましい。これにより、カーボンナノチューブ(B)と熱可塑性樹脂(A)を溶融混錬する際に、カーボンナノチューブの濡れ性が向上し、カーボンナノチューブを解し、高分散とすることができるために、帯電防止性能をより向上することができる。
なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)により測定された値(標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフランを用いて得られた測定値)である。
熱可塑性樹脂(A1)と熱可塑性樹脂(A2)の重量比は、(A1):(A2)=99:1~50:50であることが好ましく、より好ましくは90:10~50:50である。上記範囲内であることで、熱可塑性樹脂(A2)がカーボンナノチューブ(B)の濡れ性を向上させ、希釈樹脂である熱可塑性樹脂(A1)中でのカーボンナノチューブ(B)の分散性を向上させることができるために好ましい。
<カーボンナノチューブ(B)>
カーボンナノチューブ(B)は、下記(1)および(2)を満たす。
(1)粉末X線回折分析において、(002)面の回折ピークの半価幅が2.0°~6.0°である。
(2)ラマンスペクトルにおける1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度G、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度Dの比率(G/D比)が0.5~2.0以下である。
カーボンナノチューブは、グラフェンシートを丸めて円筒状にしたような構造をしており、それが単層の場合は単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層の場合は多層カーボンナノチューブ(MWCNT)と呼ばれ、電子顕微鏡等で1本1本のカーボンナノチューブを確認することができる。カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ繊維同士で一次凝集して、絡み合ったり、バンドル状の一次凝集体を形成したりするが、一次凝集体が凝集して二次以上の凝集体を形成することもある。
[X線回折ピークの半価幅]
カーボンナノチューブ(B)の(002)面の回折ピークの半価幅は、2.0°~6.0°であり、より好ましくは、2.0°~5.0°である。上記範囲であることで、帯電防止性が良好な熱可塑性樹脂組成物となる。
半価幅が2.0°以上であることで、カーボンナノチューブの層数が少なくなり、カーボンナノチューブのアモルファス部分が減り、結晶性が高まるため、カーボンナノチューブの帯電防止性能が向上する。また半価幅が6.0°以下であることでカーボンナノチューブ同士の凝集力を抑制したまま、比表面積が大きく結晶性が高いカーボンナノチューブとなるため高い分散性を維持したまま帯電防止性能を向上させることができる。
カーボンナノチューブ(B)の(002)面は2θが25°±2°の位置に検出され、炭素六角網面の面間距離によって変化し、ピーク位置が高角側であるほど炭素六角網面の距離が近いことから、構造の黒鉛的規則性が高いことが示される。また、上記ピークがシャープである(半値幅が小さい)ほど、結晶子サイズが大きく、結晶構造が発達していることを示すものである。
カーボンナノチューブ(B)の半価幅は次のように求められる。
まず、カーボンナノチューブ(B)を所定のサンプルホルダーに表面が平らになるように詰め、粉末X線回折分析装置にセットし、5°から80°までX線源の照射角度を変化させ測定する。X線源としては例えばCuKα線が用いられる。ステップ幅は0.010°、計測時間は1 .0秒である。その時にピークが現れる回折角2θを読み取ることでカーボンナノチューブ(B)の評価が可能である。グラファイトでは通常2θが26°付近にピークが検出され、これが層間回折によるピークであることが知られている。カーボンナノチューブ(B)もグラファイト構造を有するため、この付近にグラファイト層間回折によるピークが検出される。ただし、カーボンナノチューブは円筒構造であるために、その値はグラファイトとは異なってくる。その値2θが25°±2°の位置にピークが出現することで単層ではなく、多層構造を有している組成物を含んでいることが判断できる。この位置に出現するピークは多層構造の層間回折によるピークであるため、カーボンナノチューブ(B)の層数を判断することが可能となる。単層カーボンナノチューブは層数が1枚しなないので、単層カーボンナノチューブのみでは25°±2°の位置にピークは出現しない。しかしながら、単層カーボンナノチューブであっても、100%単層カーボンナノチューブということはなく、多層カーボンナノチューブ等が混入している場合は2θが25°±2°の位置にピークが出現する場合がある。
本実施形態のカーボンナノチューブ(B)は、2θが25°±2°の位置にピークが出現する。また粉末X線回折分析により検出される25°±2°のピークの半価幅からも層構成を解析することができる。すなわち、このピークの半価幅が小さいほどカーボンナノチューブ(B)の層数が多いと考えられる。逆にこのピークの半価幅が大きいほど、カーボンナノチューブの層数が少ないと考えられる。
本実施形態のカーボンナノチューブ(B)は、粉末X線回折分析を行ったときに、回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、この(002)面のピークの半価幅が2.0°~6.0°である。
[ラマンスペクトルのG/D比]
カーボンナノチューブ(B)は、ラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際にG/D比が0.5~2.0である。特に好ましくは、0.5~1.0である。ラマンスペクトルにおいて1590cm-1付近に見られるラマンシフトは、グラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm-1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このG/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高い。G/D比が0.5未満では、アモルファスなカーボンナノチューブが多くなることで、カーボンナノチューブの帯電防止性能が低下し、G/D比が2.0よりも大きいと、カーボンナノチューブの結晶性が高いことで、樹脂中への分散性が低下し、結果として帯電防止性能が低下する。
G/D比は、顕微レーザーラマン分光光度計(日本分光(株)NRS-3100)に粉末試料を設置し、532nmのレーザー波長を用いて行う測定をもとに、1590cm-1付近のグラファイト構造由来のGバンドと1350cm-1付近の構造欠陥由来のDバンドのピークの積分値から算出できる。
[比表面積]
カーボンナノチューブ(B)は、BET比表面積が200~600m/gであることが好ましく、この範囲であることで、より帯電防止性が良好な熱可塑性樹脂組成物とできる。カーボンナノチューブ(B)のBET比表面積が200m/g以上であることで、単位重量当たりのカーボンナノチューブ粒子個数が増加しマトリックス中で粒子間の距離が近づくため帯電防止性能が向上し、BET比表面積が600m/g以下であることで、カーボンナノチューブ同士の凝集を抑えつつ、樹脂中にCNTを高分散できるため帯電防止性能が向上させることができる。
カーボンナノチューブ(B)のBET比表面積は、全自動比表面積測定装置(MOUNTECH社製、HM-model1208)を用いて測定することができる。
[体積抵抗率]
さらに、カーボンナノチューブ(B)は、体積抵抗率が1.0×10-3~3.0×10-2Ω・cmであることが好ましく、1.0×10-3~1.5×10-2Ω・cmであることがより好ましく、1.5×10-3~1.0×10-2Ω・cmであることがさらに好ましい。カーボンナノチューブ(B)の体積抵抗率が上記範囲内にあることで、帯電防止性がより良好となる。カーボンナノチューブ(B)の体積抵抗率が30×10-2Ω・cm以下であることで、流動性が良好な状態で十分な帯電防止性能を付与するができるため好ましい。
カーボンナノチューブ(B)の体積抵抗率は、粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51))を用いて測定することができる。
[嵩密度]
カーボンナノチューブ(B)は、嵩密度が0.005~0.5g/mLであることが好ましい。上記範囲の嵩密度を有するカーボンナノチューブを使用した場合、熱可塑性樹脂(A)に対する分散性が良好となり、混練時の生産性に優れる。
なお、ここでいう嵩密度とは、測定装置としてスコットボリュームメータ(筒井理化学器機社製)を用い、カーボンナノチューブ粉末を測定装置上部より直円筒容器に流し入れ、山盛りになったところですり切った一定容積の試料質量を測定し、この質量と容器容積の比であり、下記の式[1]に基づいて算出される値である。
式[1]嵩密度(g/mL)=
(すり切った一定容積のカーボンナノチューブの質量(g))÷(容器容積(mL))
カーボンナノチューブ(B)は単層カーボンナノチューブ、2層またはそれ以上で巻いた多層カーボンナノチューブでも、これらが混在するものであってもよいが、コスト面および強度面から多層カーボンナノチューブであることが好ましい。また、カーボンナノチューブの側壁がグラファイト構造ではなく、アモルファス構造をもったカーボンナノチューブを用いても構わない。
カーボンナノチューブ(B)は、一般にレーザーアブレーション法、アーク放電法、化学気相成長法(CVD)、燃焼法などで製造できるが、どのような方法で製造したカーボンナノチューブでも構わない。特にCVD法は、通常、400~1000℃の高温下において、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、珪酸塩、珪藻土、アルミナシリカ、シリカチタニア、およびゼオライトなどの担体に鉄やニッケルなどの金属触媒を担持した触媒微粒子と、原料の炭素含有ガスとを接触させることにより、カーボンナノチューブを安価に、かつ大量に生産することができる方法であり、本発明に使用するカーボンナノチューブとしても好ましい。
<ワックス、脂肪族金属塩>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、さらにワックスおよび脂肪族金属塩の少なくともいずれかを用いることができる。
ワックスまたは脂肪族金属塩を用いることで、カーボンナノチューブ(B)と熱可塑性樹脂(A)を溶融混錬する際に、カーボンナノチューブの濡れ性が向上し、カーボンナノチューブを解し、高分散とすることができるために、面内バラつきを抑制することができ、帯電防止性能をより向上することができる。寸法安定性の点からは、ワックスを用いることが好ましい。
ワックスとしては、天然ワックス、半合成ワックス、または合成ワックスが挙げられる。
天然ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス、半合成ワックスとしてはエチレン-ビス-ステルアミド、アマイドワックス、合成ワックスとしてはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
ワックスの数平均分子量は、1,000~30,000であることが好ましく、より好ましくは1,000~1,0000である。
数平均分子量が1,000以上であると、カーボンナノチューブ(B)と熱可塑性樹脂(A)の混練の際、カーボンナノチューブの濡れ性が向上し、カーボンナノチューブを解すことができるために好ましい。数平均分子量が30,000以下であると、混練の際適度な溶融粘度となり、せん断力は強い状態で混練が可能となることで、カーボンナノチューブの再凝集を抑制しつつ、解すことが可能であるため、カーボンナノチューブが高分散となり帯電防止性能が向上するために好ましい。
なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)により測定された値(標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフランを用いて得られた測定値)である。
脂肪族金属塩としては、直鎖脂肪族モノカルボン酸の金属塩等が挙げられる。
直鎖脂肪族モノカルボン酸としては、ラウリル酸、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリシノレイン酸等が挙げられる。
金属としては、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、およびアルミニウム等が挙げられる。
ワックスおよび脂肪族金属塩の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1~30質量部であることが好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。0.1質量部以上であることで、カーボンナノチューブの分散性をより向上させることができ、30質量部以下であることで、最適な流動性が保てるため混練の際に、適切なせん断力をカーボンナノチューブに加えることができるため、分散性がより向上し、面内バラつきを防止することができるために好ましい。
<任意成分>
熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて耐候安定剤、帯電防止剤、染料、顔料、カップリング剤、結晶造核剤、樹脂充填材等を用いることができる。
なお、帯電防止材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンナノチューブ(B)以外のカーボンナノチューブやカーボンブラック等を含んでもよいが、帯電防止性能の点から、帯電防止材料100質量%中、カーボンナノチューブ(B)が多いほど好ましく、より好ましくは、50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%である。
すなわち、カーボンナノチューブ(B)以外の帯電防止材料の含有量は、10質量%未満であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
カーボンナノチューブの分散性が悪い状態であると、実用範囲内の帯電防止性能を達成しようとすると、高添加量が必要となってしまう。しかし高添加になることで流動性が低下して面内バラつきが起こり、また樹脂組成物の吸水が多くなることで寸法安定性は低下する傾向にある。また、カーボンナノチューブよりも導電性能の劣るカーボンブラックを併用する場合には、カーボンナノチューブ以上の高添加が必須となる。これら帯電防止材料が樹脂組成物中に高濃度となることで、樹脂組成物の流動性が低下し、分配不良によって成形品における均一な帯電防止性能が得られなくなる場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(B)を用いることで、このような従来のカーボンナノチューブによる流動性、または寸法安定性の低下を抑制し、かつ導電性に優れることで、帯電防止性能も満たすことができるものとなっている。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。
例えば、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)、更に必要に応じて添加剤等を加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合しニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター、バンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等で混合や溶融混練し、ペレット状、粉体状、顆粒状あるいはビーズ状等の形状の樹脂組成物を得ることができる。
本発明では、溶融混錬に二軸押出機を用いるのが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物は、揮発成分を含まないことが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物100質量%中、溶剤や低分子量成分等の揮発成分は5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(B)を用いることで、溶融混錬により、熱可塑性樹脂(A)中に、カーボンナノチューブが均一に分配され、面内バラつきのない、帯電防止能に優れた成形体が形成可能となる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(B)を比較的高濃度に含有し、成形時に熱可塑性樹脂(A)で希釈されるマスターバッチとしてもよいし、カーボンナノチューブ(B)の濃度が比較的低く、熱可塑性樹脂(A)で希釈せずにそのままの組成で成形に供されるコンパウンドであってもよい。添加コストや在庫コスト等の点から、高濃度化できるマスターバッチであることが好ましい。マスターバッチは、取り扱いが容易なペレット状が好ましい。
カーボンナノチューブ(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1~30質量部であることが好ましい。
マスターバッチの場合、カーボンナノチューブ(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、10~30質量部であることが好ましく、より好ましくは12~25質量部である。カーボンナノチューブ(B)の含有量が30質量部以下であることで、カーボンナノチューブの再凝集を抑制でき、分散性の良いマスターバッチを提供することが可能となる。
コンパウンドの場合、カーボンナノチューブ(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、2~8質量部がより好ましい。カーボンナノチューブ(B)の含有量が前記範囲内にあることで、表面抵抗率を帯電防止性領域である1×10~1×1012Ω/□の範囲内に制御することができ、さらに2~8質量部の範囲内であることで良好な流動性を維持したまま、カーボンナノチューブの分配性が良く、均一な帯電防止性能を得ることが可能となるために好ましい。
《成形体》
本発明の成形体は、電気電子部品に用いられる包装材であって、電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物から形成される。
成形体は、電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物であるコンパウンド、またはマスターバッチと希釈樹脂を、通常50℃~350℃ に設定した成形機にて溶融混合後に成形体の形状を形成し冷却することで得ることができる。成形機の温度は、熱可塑性樹脂(A)が軟化する温度であれば問題ないが、好ましくは主成分となる熱可塑性樹脂の軟化点より30℃以上高い温度である。
成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファー成形、T-ダイ成形やインフレーション成形のようなフィルム成形、カレンダー成形、紡糸等を用いることができる。
成形体の形状は特に制限されないが、板状、棒状、繊維、チューブ、パイプ、ボトル、フィルムなどが挙げられる。
成形体のカーボンナノチューブ(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、2~8質量部がより好ましい。カーボンナノチューブ(B)の含有量が前記範囲内にあることで、表面抵抗率を帯電防止領域である1×10~1×1012Ω/□の範囲内に制御することができ、さらに2~8質量部の範囲内であることで良好な流動性を維持したまま、カーボンナノチューブの分配性が良く、均一な帯電防止性能を有する成形体を得ることが可能となるために好ましい。
通常、帯電防止性能を上げるためには、カーボンナノチューブの含有濃度を高くする必要があり、それによる熱可塑性樹脂組成物への吸水のために、成型品の収縮率が悪くなってしまう場合がある。しかし本発明の熱可塑性樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(B)を用いることで、分散性に優れ、カーボンナノチューブの含有量をそれほど高くしなくても、充分な導電性を有することができる。それにより、樹脂組成物への吸水が抑制され、寸法安定性にも優れたものとすることができるものとなっている。
電気電子部品としては、シリコンウェーハ、ハードディスク、ディスク基板、ICチップ、光磁気ディスク、LCD用高機能基板ガラス、LCDカラーフィルター、ハードディスクの磁気抵抗ヘッド等の半導体関連部品、レチクル等の半導体製造用の部品、またはフォトマスク等の電子回路製造用の部品等が挙げられる。
電気電子包装材は、これらの電気電子部品に用いられる包装材であって、包装材自体に導電性を付与することで帯電防止性能を有し、摩擦等による電子の偏在化や蓄積を防ぎ、静電気の蓄積を防止することができる。それにより、電気電子部品の搬送や保管収納等に用いられるトレイ、ケース、テープなどとして用いることができる。
電気電子包装材として具体的には、例えばシリコンウェーハを安全でクリーンに保持、搬送するFOUP(Front-Opening Unified Pod)やFOSB(Front Opening Shipping Box)、またはICチップを搬送する際に用いられるICトレイやエンボスキャリアテープといった半導体関連部品に用いられる包装材、電子部品の回路パターン等を被転写対象に転写する際の原版となるフォトマスクを搬送するフォトマスクケース、半導体製造の前工程にて使用されるレチクルを収納しておくレクチル搬送容器、RSP(Reticle SMIF Pod)などに用いられる。
電気電子包装材は、塵やほこりの付着を極力低減させることができ、OA機器や電子機器等の小型軽量化や高集積化、高精度化に対応できるだけの充分な帯電防止性能を有することが要求される。
これを達成するために、電気電子包装材の表面抵抗値は、電子機器を静電気障害から保護し、塵やほこりを寄せ付けずに高いクリーン度を保つという観点から、帯電防止性領域である1×10~1×1012Ω/□の範囲内であることが好ましく、1×10~1×10Ω/□の範囲内であることがより好ましい。
表面抵抗値が、1×1012Ω/□以下であることにより、電気電子部品の摩擦帯電の影響による、電子機器の帯電を抑制できる。帯電して静電気を蓄積した電子機器は、静電気の放電により損傷を受けたり、空中に浮遊している塵やほこりを静電吸着したりすることが原因となって、トラブルを発生することがあるが、これを防止することができるために好ましい。1×10Ω/□以上であることにより、電気電子部品中での電荷の移動速度が速すぎて、静電気の放電の際に発生する強い電流や高い電圧により、電子機器に障害を与えることを抑制することができる。
なかでも、1×10~1×10Ω/□の範囲である場合、帯電圧半減期が大幅に短縮され、優れた帯電防止性能を発揮することが可能になるために好ましい。
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
なお、カーボンナノチューブの粉末X線回折分析、ラマン分光分析及び体積抵抗率と熱可塑性樹脂(A)の融点、ガラス転移温度及び分子量とは次の方法で測定した。
<カーボンナノチューブの粉末X線回折分析>
アルミ試料板(外径φ46mm、厚さ3mm、試料部φ26.5mm、厚さ2mm)の中央凹部にカーボンナノチューブをのせ、スライドガラスを用いて、平坦化した。その後、試料を載せた面に薬包紙をのせ、さらにアルミハイシートパッキンをのせた面に対して、1トンの荷重をかけて平坦化した。その後、薬包紙とアルミハイシートパッキンを除去して、カーボンナノチューブの粉末X線回折分析用サンプルを得た。その後、X線回折装置(Ultima2100、株式会社リガク社製)にカーボンナノチューブの粉末X線回折分析用サンプルを設置し、15°から35°まで操作し、分析を行った。サンプリングは0.02°毎に行い、スキャンスピードは2°/min.とした。電圧は40kV、電流は40mA、X線源はCuKα線とした。この時得られる回折角2θ=25°±2°に出現するカーボンナノチューブの(002)面のプロットをそれぞれ11点単純移動平均し、そのピークの半価幅をカーボンナノチューブの半価幅とした。ベースラインは2θ=16°および2θ=34°のプロットを結んだ線とした。
<カーボンナノチューブのラマン分光分析>
顕微レーザーラマン分光光度計(日本分光(株)NRS-3100)にカーボンナノチューブを設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定条件は取り込み時間60秒、積算回数2回、減光フィルタ10%、対物レンズの倍率20倍、コンフォーカスホール500、スリット幅100μm、測定波長は100~3000cm-1とした。測定用のカーボンナノチューブはスライドガラス上に分取し、スパチュラを用いて平坦化した。得られたピークの内、スペクトルで1560~1600cm-1の範囲内で最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内で最大ピーク強度をDとし、G/Dの比をカーボンナノチューブのG/D比とした。
<カーボンナノチューブの比表面積>
カーボンナノチューブを電子天秤(sartorius社製、MSA225S100DI)を用いて、0.03g計量した後、110℃で15分間、脱気しながら乾燥させた。その後、全自動比表面積測定装置(MOUNTECH社製、HM-model1208)を用いて、カーボンナノチューブの比表面積を測定した。
<カーボンナノチューブの体積抵抗率>
粉体抵抗率測定装置(三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51))を用い、試料質量1.2gとし、粉体用プローブユニット(四探針・リング電極、電極間隔5.0mm、電極半径1.0mm、試料半径12.5mm)により、印加電圧リミッタを90Vとして、種々加圧下の導電性粉体の体積抵抗率[Ω・cm]を測定し、1g/cmの密度におけるカーボンナノチューブの体積抵抗率の値を求めた。
<熱可塑性樹脂の融点>
示差走査熱量測定(DSC)における融解ピーク温度であり、セイコーインスツルメンツ社製DSC6200 を用いて加熱速度:10℃/分にて測定した。
<熱可塑性樹脂のガラス転移温度>
示差走査熱量測定(DSC)における融解ピーク温度であり、セイコーインスツルメンツ社製DSC6200 を用いて加熱速度:10℃/分にて測定した。
<熱可塑性樹脂の重量平均分子量>
島津製作所製ProminenceGPCシステムを用いて、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)法により、分子量分布曲線を測定し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を、ポリスチレン換算の値から算出した。分子量分布(Mw/Mn)は、得られた重量平均分子量及び数平均分子量の値から算出した。ポリスチレン換算に使用した標準ポリスチレンには、VARIAN社製ポリスチレンを用い、カラムは東ソー社製TSKgel GMH-HTを用い、測定時のキャリアにはオルトジクロロベンゼンを用いた。カラム温度は140℃、キャリア流速は1.0mLでおこなった。
実施例で使用した材料は以下のとおりである。
<熱可塑性樹脂(A)>
・(A-1)ノバテック MA1B(日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂、融点165℃、重量平均分子量312,000)
・(A-2)カーネルKJ-640T(日本ポリエチレン社製ポリエチレン樹脂、融点58℃、重量平均分子量43,300)
・(A-3)スタイラックABS191(旭化成ケミカルズ製ABS樹脂、ガラス転移温度85℃、重量平均分子量110,000)
・(A-4)ジュラネックス700FP(ポリプラスチックス社製ポリエステル樹脂、融点224℃、重量平均分子量104,000)
・(A-5)ニチゴーポリエスターSP154(三菱ケミカル社製ポリエステル樹脂融点120℃、重量平均分子量19,000)
<ワックス>
・(C-1)ハイワックスNP056(三井化学社製、ポリエチレンワックス)
・(C-2)Licowax E(クラリアント社製、ポリエステルワックス)
<脂肪族金属塩>
・(D-1)ステアリン酸マグネシウム(淡南化学社製、脂肪族金属塩)
<カーボンナノチューブ>
・(B-1)CM‐130(Hanhwa Chemical hanos社製)
・(B-2)SMW210(SouthWest NanoTechnologies社製)
・(B-3)Flotube7010(CNano社製)
・(B-4)製造例1のカーボンナノチューブ
・(B-5)製造例2のカーボンナノチューブ
・(B-6)AMC(宇部興産社製)
・(B-7)製造例3のカーボンナノチューブ
・(B’-1)製造例4のカーボンナノチューブ
・(B’-2)製造例5のカーボンナノチューブ
・(B’-3)製造例6のカーボンナノチューブ
Figure 0007274083000001
(製造例1:B-4)
<カーボンナノチューブ(B-4)合成用触媒>
水酸化コバルト60質量部、酢酸マグネシウム・四水和物138質量部、炭酸マンガン16.2質量部、アエロジル(AEOSIL(登録商標)200、日本アエロジル株式会社製)4.0質量部をそれぞれ耐熱性容器に秤取り、電気オーブンを用いて、170±5℃の温度で1 時間乾燥させて水分を蒸発させた後、粉砕機(ワンダークラッシャーWC-3、大阪ケミカル株式会社製)を用いてSPEEDのダイヤルを3に調整し、1分間粉砕した。その後、粉砕したそれぞれの粉末を粉砕機(ワンダークラッシャーWC-3、大阪ケミカル株式会社製)を用いて、SPEEDのダイヤルを2に調整し、30秒間混合してカーボンナノチューブ合成用触媒前駆体(B-4)を作製した。そして、カーボンナノチューブ合成用触媒前駆体(B-4)を耐熱性容器に移し替え、マッフル炉(FO510、ヤマト科学株式会社製) を使用し、空気雰囲気、450±5℃ の条件で30分間焼成した後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ合成用触媒(B-4)を得た。
<カーボンナノチューブ(B-4)の合成>
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10Lの横型反応管の中央部に、前記カーボンナノチューブ合成用触媒(B-4)2gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。窒素ガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、横型反応管中の雰囲気を酸素濃度1体積% 以下とした。次いで、外部ヒーターにて加熱し、横型反応管内の中心温度が680℃ になるまで加熱した。680℃に到達した後、炭素源としてプロパンガスを毎分2Lの流速で反応管内に導入し、1時間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスを窒素ガスで置換し、反応管内のガスを窒素ガスで置換し、反応管の温度を100℃以下になるまで冷却し取り出すことで、カーボンナノチューブ(B-4)を得た。
(製造例2:B-5)
<カーボンナノチューブ(B-5)の合成>
カーボンナノチューブ(B-1)を120Lの耐熱性容器に10kgを計量し、カーボンナノチューブ(B-1)が入った耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内に窒素ガスを導入して、陽圧を保持しながら、炉内中の空気を排出した。炉内の酸素濃度が0.1% 以下になった後、30時間かけて、1600℃まで加熱した。炉内温度を1600℃に保持しながら、塩素ガスを50L/分の速度で50時間導入した。その後、窒素ガスを50L/分で導入して陽圧を維持したまま冷却し、カーボンナノチューブ(B-5)を得た。
(製造例3:B-7)
<カーボンナノチューブ(B-7)の合成>
カーボンナノチューブ(B-1)を120Lの耐熱性容器に10kgを計量し、カーボンナノチューブ(B-1)が入った耐熱性容器を炉内に設置した。その後、窒素ガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、横型反応管中の雰囲気温度が700℃になるまで加熱した。700℃に到達した後、炭化水素としてエチレンガスを毎分2Lの流速で反応管内に導入し、15分間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスを窒素ガスで置換し、反応管の温度を100℃以下になるまで冷却し取り出すことでカーボンナノチューブ(B-7)を得た。
(製造例4:B’-1)
<カーボンナノチューブ(B’-1)合成用触媒>
酢酸コバルト・四水和物200g、金属マンガン2.4g、および担持成分として酢酸マグネシウム・四水和物172gをビーカーに秤取り、水1488g加えて、均一になるまで撹拌した。耐熱性容器に移し替え、電気オーブンを用いて、190±5℃の温度で30分乾燥させ水分を蒸発させた後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ(B’-1)合成用触媒前駆体を得た。得られたカーボンナノチューブ(B’-1)合成用触媒前駆体400gを耐熱容器に秤取り、マッフル炉にて、空気中500℃±5℃ 雰囲気下で30分焼成した後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ(B’-1)合成用触媒を得た。
<カーボンナノチューブ(B’-1)の合成>
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10Lの横型反応管の中央部に、カーボンナノチューブ(B’-1)合成用触媒1.0gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。アルゴンガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気をアルゴンガスで置換し、横型反応管中の雰囲気を酸素濃度1体積% 以下とした。次いで、外部ヒーターにて加熱し、横型反応管内の中心部温度が700℃になるまで加熱した。700℃に到達した後、0.1L/分の流速で1分間、水素ガスを反応管内に導入し、触媒を活性化処理した。その後、炭素源としてエタノールを1L/分の流速で反応管内に導入し、4時間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスをアルゴンガスで置換し、反応管内の温度を100℃以下になるまで冷却し、得られたカーボンナノチューブを採取した。得られたカーボンナノチューブは、導電性、分散性を比較するため、80メッシュの金網で粉砕ろ過した。
(製造例5:B’-2)
<カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒>
酢酸マグネシウム4水和物1000質量部を耐熱性容器に秤取り、電気オーブンを用いて、170±5℃ の雰囲気温度で6時間乾燥させた後、粉砕機(サンプルミルKIIW-I型、株式会社ダルトン社製)を用いて、1mmのスクリーンを装着し、粉砕し、酢酸マグネシウム乾燥粉砕品を得た。酢酸マグネシウム乾燥粉砕品45.8部、炭酸マンガン8.1部、酸化珪素(SiO2、日本アエロジル社製:AEROSIL(登録商標)200)1.0部、スチールビーズ(ビーズ径2.0mmφ)200部をSMサンプル瓶(株式会社三商製)に仕込み、レッドデビル社製ペイントコンディショナーを用いて、30分間粉砕混合処理を行った。その後、ステンレスふるいを使用し、粉砕混合した粉末とスチールビーズ(ビーズ径2.0mmφ)を分離し、カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒担持体を得た。その後、水酸化コバルト(II)30質量部を耐熱性容器に秤取り、170±5℃の雰囲気温度で2時間乾燥させ、CoHO2を含むコバルト組成物を得た。さらにその後、カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒担持体54.9質量部とコバルト組成物29質量部を粉砕機(ワンダークラッシャーWC-3、大阪ケミカル株式会社製)に仕込み、標準フタを装着し、SPEEDダイヤルを2に調節し、30秒間粉砕混合し、カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒前駆体を得た。カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒前駆体を耐熱性容器に移し替え、マッフル炉(FO510、ヤマト科学株式会社製)を使用し、空気雰囲気、450±5℃の条件で30分間焼成した後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒を得た。
<カーボンナノチューブ(B’-2)の合成>
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10Lの横型反応管の中央部に、カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒1gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。窒素ガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、横型反応管中の雰囲気温度が680℃ になるまで加熱した。680℃ に到達した後、炭化水素としてエチレンガスを2L/分の流速で反応管内に導入し、7分間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスを窒素ガスで置換し、反応管の温度を100℃以下になるまで冷却し取り出すことでカーボンナノチューブ(B’-2)前駆体を得た。カーボンナノチューブ(B’-2)前駆体をカーボン製の耐熱性容器に1000gを計量した。その後、カーボンナノチューブ(B’-2)前駆体が入ったカーボン製の耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内を1Torr(133Pa)以下に真空排気し、更にカーボン製ヒーターに通電を行い、炉の内部を1000℃ まで昇温させた。次に、アルゴンガスを炉内に導入して、炉内の圧力が70Torr(9.33kPa)となるように調整し、その後1L/分のアルゴンガスを炉内に導入した。その後、アルゴンガスに加えて、塩素ガスを導入し、炉内の圧力が90Torr(11.99kPa)となるように調整し、当該圧力となった後は0.3L/分の塩素ガスを炉内に導入した。そのままの状態で、1時間保持した後に通電を停止し、さらにアルゴンガスと塩素ガスとの導入を停止して、真空冷却した。最後に、1Torr(133Pa)以下の圧力で真空冷却を12時間行った後、炉内が室温まで冷却されていることを確認したうえで大気圧になるまで窒素ガスを炉内に導入し、耐熱性容器を取り出し、カーボンナノチューブ(B’-2)を得た。
(製造例6:B’-3)
<カーボンナノチューブ(B’-3)の合成>
カーボンナノチューブ(B-1)を120Lの耐熱性容器に10kgを計量し、カーボンナノチューブ(B-1)が入った耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内に窒素ガスを導入して、陽圧を保持しながら、炉内中の空気を排出した。炉内の酸素濃度が0.1%以下になった後、30時間かけて、1800℃まで加熱した。炉内温度を1800℃に保持しながら、塩素ガスを50L/分の速度で50時間導入した。その後、窒素ガスを50L/分で導入して陽圧を維持したまま冷却し、カーボンナノチューブ(B’-3)を得た。
(実施例1)
(電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物の製造)
熱可塑性樹脂(A-1)80%、カーボンナノチューブ(B-1)5%、ワックス(C-1)15%を混合して溶融混錬し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて230℃で押出し、造粒して電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物を得た。
(成形体の作製)
得られた電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物をシリンダー設定温度220℃、金型温度40℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形し、縦90mm×横110mm×厚み3mmの成形体を作製した。
(実施例2~13)
表2に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法で電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物および成形体をそれぞれ得た。
なお、実施例10~12では、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて250℃で押出して電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物を製造し、シリンダー設定温度250℃、金型温度80℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形体を作製した。
(実施例14)
(電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物(マスターバッチ)の製造)
熱可塑性樹脂(A-1)55%、カーボンナノチューブ(B-1)15%、ワックス(C-1)30%を混合して溶融混錬し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて230℃で押出し、造粒して電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物であるマスターバッチを得た。
(成形体の作製)
得られたマスターバッチをカーボンナノチューブ(B-1)5%となるように熱可塑性樹脂(A-1)で希釈し、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形し、縦90mm×横110mm×厚み3mmの成形体を作製した。
(比較例1)
熱可塑性樹脂(A-1)95%、カーボンナノチューブ(B-1)5%を混合して溶融混錬し、単軸押出機(日本製鋼所社製)にて230℃で押出し、造粒し電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物を得た。
(成形体の作製)
得られた電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物をシリンダー設定温度220℃、金型温度40℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形し、縦90mm×横110mm×厚み3mmの成形体を作製した。
(比較例2)
表3に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、比較例1と同様の方法で電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物および成形体をそれぞれ得た。
なお、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて220℃で押出して電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物を製造し、シリンダー設定温度220℃、金型温度60℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形体を作製した。
(比較例3)
熱可塑性樹脂(A-1)80%、カーボンナノチューブ(B’-1)5%、ワックス(C-1)15%を混合して溶融混錬し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて230℃で押出し、造粒して電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物を得た。
(成形体の作製)
得られた熱可塑性樹脂組成物をシリンダー設定温度220℃、金型温度40℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形し、縦90mm×横110mm×厚み3mmの成形体を作製した。
(比較例4~6)
表1に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、比較例3と同様の方法で電気電子部品包装用熱可塑性樹脂組成物および成形体をそれぞれ得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物の物性値および評価結果を下記の方法で求めた。結果を表4に示す。
<シート表面の最大高さSz測定>
樹脂組成物に使用した主成分となる熱可塑性樹脂(A)の融点より30℃高い温度にてTダイ成形機を使用することにより厚み100μmのシートを作製した。
なお、熱可塑性樹脂(A)が非晶性の熱可塑性樹脂の場合には、ガラス転移点温度より130℃高い温度にてTダイ成形機を使用することにより厚み100μmシートを作製した。
得られたシートを用い、Taylor/Hobson社製、タリサーフCCI MP-HSを用い、測定長が2.5mm×2.5mm、ロバストガウシアンフィルタが0.08mm、とした際の最大高さSz(μm)を測定した。
(帯電防止性能)
帯電防止性能を、導電性と面内バラつきから評価した。
<導電性>
帯電防止性の指標として、導電性を、成形体の表面抵抗率から評価した。
得られた縦90mm×横110mm×厚み3mmの成形体を用いて、三菱化学(株)製ハイレスタ用いて任意の5ヶ所について表面抵抗率を測定し、平均値を求めた。
評価基準は下記の通りである。
[評価基準]
○:成形体の表面抵抗率が1×10Ω/□以上、
1×10Ω/□以下であり実用上優れる
△:成形体の表面抵抗率が1×10Ω/□を超え、
1×1012Ω/□以下であり実用可
×:成形体の表面抵抗率が1×10Ω/□未満または
1×1012Ω/□を超えており実用不可
<面内バラつき>
面内バラつきは前記の条件にて測定した成形体の任意の5ヶ所についての表面抵抗率について、最大値および最小値から、最大値/最小値(X)を求めることにより評価した。
評価基準は下記の通りである。最大値/最小値(X)の値が小さいほど、面内バラつきが小さいといえる。
[評価基準]
◎:成形体の表面抵抗率の最大値/最小値(X)が1≦X<10
○:成形体の表面抵抗率の最大値/最小値(X)が10≦X<100
×:成形体の表面抵抗率の最大値/最小値(X)が100≦X
(寸法安定性)
寸法安定性は、JIS7209に従い、以下の手順にて吸水試験を行い、吸水性により評価した。
1.射出成型機にて、試験片(縦80mm、横45mm)を作製した。
2.50℃のオーブンに試験片を24時間静置後、試験片の質量(m1)を測定。
3.23℃の純水に試験片を24時間浸漬させた後、試験片の質量(m2)を測定。
4.50℃のオーブンに試験片を24時間静置後、試験片の質量(m3)を測定。
以下の式に従い、吸湿率を算出した。
(吸水率[%])=(m2-m3)/m1×100
評価基準は下記の通りである。吸水率が小さいほど、寸法安定性に優れるといえる。
[評価基準]
◎:吸水率が0.03%未満であり実用上優れる
○:吸水率が0.03%以上0.05%未満であり実用可
×:吸水率が0.05%以上であり実用不可
Figure 0007274083000002
Figure 0007274083000003
Figure 0007274083000004
上記の評価結果より、導電性に優れ、かつ面内バラつきもなく、塵やほこりの付着を防ぐことが可能な帯電防止性能を有し、さらに樹脂組成物への吸水を抑えることで寸法安定性に優れた成形体を形成可能な電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物であることが確認できた。

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)と、ワックスおよび脂肪族金属塩の少なくともいずれかとを含む熱可塑性樹脂組成物であり、
    カーボンナノチューブ(B)は、下記(1)および(2)を満たし、
    熱可塑性樹脂組成物からTダイ成形機により形成してなる厚み100μmのシートは、ISO25178に準拠して測定されるシート表面の最大高さSzが10μm以下であることを特徴とする電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物。

    (1)粉末X線回折分析において、(002)面の回折ピークの半価幅が2.0°~6.0°である。
    (2)ラマンスペクトルにおける1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度G、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度Dの比率(G/D比)が0.5~2.0である。
  2. カーボンナノチューブ(B)は、BET比表面積が200~600m/gであることを特徴とする請求項1記載の電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物。
  3. カーボンナノチューブ(B)は、体積抵抗率が1.0×10-3~3.0×10-2Ω・cmであることを特徴とする請求項1または2記載の電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ワックスは、数平均分子量が1,000~30,000であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物。
  5. 熱可塑性樹脂(A)は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選ばれるいずれかを含むことを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1~5いずれか1項記載の電気電子包装材用熱可塑性樹脂組成物から形成してなる、成形体。
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