JP3722065B2 - 帯電防止性樹脂成形品 - Google Patents
帯電防止性樹脂成形品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3722065B2 JP3722065B2 JP2002013144A JP2002013144A JP3722065B2 JP 3722065 B2 JP3722065 B2 JP 3722065B2 JP 2002013144 A JP2002013144 A JP 2002013144A JP 2002013144 A JP2002013144 A JP 2002013144A JP 3722065 B2 JP3722065 B2 JP 3722065B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fiber
- carbon
- fibers
- conductive
- molded product
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報電子分野の電子デバイス取り扱い用帯電防止部品、電子デバイスの組立、搬送等に用いられる帯電防止部品、例えば、IC、ウェハ、ハードディスク、磁気ヘッド、液晶デバイスなどの電子デバイスを取り扱う際の、トレイやカセット、ケース、組み立て用治工具、或いはこれらの電子デバイスを搭載した機器の構成部品などに好適な帯電防止性樹脂成形品に関する。
【0002】
本発明は特に、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの平面ディスプレイを製造、運搬する際に、ガラス、セラミックなどのパネルを搬送するためのトレイに好適な、低発塵性かつ高剛性の帯電防止性樹脂成形品に関する。
【0003】
【従来の技術】
高密度電子デバイス、例えば液晶ディスプレイは、一般にガラス等の電気絶縁性のパネル基板上に薄膜半導体微細回路を形成し、液晶材料等を積層して製造される。かかる製造プロセスにおいて使用される搬送トレイには、以下の性能が要求される。
▲1▼ トレイからの発塵が少ないこと。
▲2▼ 帯電によるゴミや埃の付着を防止したり、回路の静電気破壊を防止するための帯電防止性に優れること。特に、ディスプレイのパネルは電気絶縁性であるため、デバイス自体が帯電し易く、トレイと接触した際に大きな電流が発生し、その結果、回路が破損することが問題となっている。従って、トレイには、帯電しないだけでなく、接触電流を流さないことも要求される。
▲3▼ 平面状の表示パネルを搭載して搬送する際、トレイの撓みによるパネルの損傷を防ぐための高い剛性(すなわち弾性率)を有すること。特に、最近のデバイスの高密度化に伴い、パネルの薄型化、回路の高密度化が進み、僅かな外部応力でも損傷しやすくなっている。その結果、パネル搭載時の運搬の際の、トレイの撓みによる破損を防止し得る高い剛性が要求される。特に、パネルを搭載した状態のトレイを複数枚重ねて運搬する様な場合は、荷重が大きくなって、トレイの撓みが大きくなり、パネルへの接触と損傷の原因になりやすいため、高い剛性が要求される。
【0004】
従来、帯電防止材料としては、樹脂にカーボンブラックや、カーボンファイバーなどの導電性フィラーを添加したものが使用されてきた。
【0005】
しかしながら、カーボンブラック添加樹脂では、成形品からの発塵が多い;導電性を得るために比較的多量の添加が必要であるため、成形性を損ないやすい;強化効果が無いため、成形品の剛性が不足しがちとなる;などの問題がある。
【0006】
また、カーボンファイバー添加樹脂では、発塵性、剛性が比較的優れるものの、帯電防止効果が十分でない;含有される炭素繊維が、繊維直径7〜15μm、繊維長さ100〜500μm程度と、比較的大きいため、炭素繊維の脱落物が薄膜回路をショートさせ、破損に到る危険性がある;などの問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の問題点を解決し、高剛性で発塵の問題がなく、帯電防止性に優れた帯電防止性樹脂成形品を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の帯電防止性樹脂成形品は、(A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径200nm以下の炭素微細繊維0.1〜20重量%とからなる導電性樹脂成分100重量部に、(C)非導電性繊維を1〜200重量部添加してなる導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなる帯電防止性樹脂成形品であって、該炭素微細繊維の屈曲度が5゜以上であり、表面活性度が0.1%以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の帯電防止性樹脂成形品では、炭素微細繊維による導電性で優れた帯電防止性が得られると共に、非導電性繊維による補強効果で、高い剛性を得ることができる。しかも、炭素微細繊維による次のような効果で、発塵の原因となる非導電性繊維の脱落も防止されるため、発塵の問題のない帯電防止性樹脂成形品が提供される。
【0010】
本発明の帯電防止性樹脂成形品では、概念的に図1に示すように、相対的に繊維径の太い非導電性繊維1の周囲が、繊維径が細く、それ自体が屈曲して互いに絡み合っている炭素微細繊維2で包囲され、この状態で基材樹脂中に埋設されているため、太い非導電性繊維1の脱落が防止される。
【0011】
即ち、非導電性繊維の代表例としてガラス繊維が挙げられるが、ガラス繊維は成形品の表面から突出し易く、また、ガラス繊維等は表面が比較的平滑で基材樹脂から脱落し易く、非導電性繊維が成形品からの発塵の原因となる。本発明では、ガラス繊維等の非導電性繊維1よりも非常に繊維径の細い炭素微細繊維2がガラス繊維等の非導電性繊維1表面の細かな凹凸に引っ掛かり、この炭素微細繊維2による基材樹脂に対する投錨効果で非導電性繊維1の脱落が防止される。
【0012】
本発明では、このように、互いに絡み合った炭素微細繊維2がガラス繊維等の非導電性繊維1の表面に絡まって、非導電性繊維1の脱落を物理的に防止する上に、次のような化学的な脱落防止効果も得られる。
【0013】
即ち、炭素微細繊維の表面には、カルボン酸などの極性基が存在すると考えられており、この極性基が、ガラス繊維等の非導電性繊維の表面処理剤の極性基及びポリカーボネート等の熱可塑性樹脂の極性基と相互作用することにより、非導電性繊維を熱可塑性樹脂に対して固定し、非導電性繊維の脱落を防止する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の帯電防止性樹脂成形品の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明に係る(A)熱可塑性樹脂、(B)炭素微細繊維、(C)非導電性繊維及び(D)その他の添加成分について説明する。
【0016】
(A)熱可塑性樹脂
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂としては、例えばポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、各種ポリアミド(6、66、46、12、半芳香族など)、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスチレン、液晶性ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良く、使用目的に応じて必要とされる耐熱性、耐薬品性、成形性等の特性から適宜選択して用いることができる。
【0017】
中でも、ポリカーボネートが、寸法精度に優れ、そり等が少なく、かつ安価な点で望ましい。
【0018】
(B)炭素微細繊維
本発明で使用される(B)炭素微細繊維は、平均繊維径が200nm以下のものであり、例えば特表平8−508534号公報に記載されている炭素フィブリルが使用される。
【0019】
即ち、炭素フィブリルは、当該フィブリルの円柱状軸に実質的に同心的に沿って沈着されているグラファイト外層を有し、その繊維中心軸は直線状でなく、うねうねと曲がりくねった管状の形態を有する。
【0020】
炭素フィブリルの平均繊維径は200nm以下、望ましくは100nm以下、さらに望ましくは50nm以下である。炭素フィブリルの繊維径は炭素フィブリルの製法に依存し、若干の分布があるが、ここで言う平均繊維径とは顕微鏡観察して5点測定した平均値である。
【0021】
炭素フィブリルの平均繊維径が200nmより大きいと、樹脂中でのフィブリル同士の接触が不十分となり、導電性を発現させるために多量の添加が必要となったり、安定した導電性が得られにくい。
【0022】
炭素フィブリルの平均繊維径は0.1nm、特に0.5nm以上が望ましい。平均繊維径がこれより小さいと、製造が著しく困難である。
【0023】
炭素フィブリルは、長さと径の比(長さ/径比、即ちアスペクト比)が5以上のものが好ましく、特に100以上の長さ/径比を有するものは、導電性ネットワークを形成しやすいため、少量の添加で優れた導電性が得られる点で望ましい。より好ましい炭素フィブリルの長さ/径比は1000以上である。なお、この炭素フィブリルの繊維径、繊維長(及びアスペクト比)は、透過型電子顕微鏡での観察において、5点の実測値の平均値である。
【0024】
微細な管状の形態を有する炭素フィブリルの壁の厚み(管状体の壁厚)は、通常3.5〜75nm程度である。これは、通常フィブリルの外径の約0.1から0.4倍に相当する。
【0025】
炭素フィブリルはその少なくとも一部分が凝集体の形態である場合、原料となる樹脂組成物中に、面積ベースで測定して約50μm、特に10μmよりも大きい径を有するフィブリル凝集体を含有していないことが、所定の導電性を得るための添加量が少なくてすみ、得られる成形品の機械物性を低下させない点で望ましい。
【0026】
このような炭素フィブリル等の炭素微細繊維は、望ましくは、成形品中に分散した状態において、直線状ではなく、曲がりくねった状態で分散していることが、発塵が少ない点で望ましく、さらに繊維同士の絡み合いが保持された状態で分散している事が望ましい。
【0027】
このような絡み合いを確保するために、本発明で用いる炭素微細繊維は、屈曲度が5゜以上である。
【0028】
炭素微細繊維の屈曲度は炭素微細繊維同士の絡み易さの目安となる値であり、これにより、炭素微細繊維同士が絡み合いネットワークを形成して、ガラス繊維等の非導電性繊維の基材樹脂からの脱落防止効果を良く発揮すると共に、少量の添加量で得られる成形品に対して十分な帯電防止効果を与えることが可能となる。
【0029】
炭素微細繊維の屈曲度は、例えば、本発明の帯電防止性樹脂成形品の樹脂成分を溶媒やイオンスパッタリング等で除去して、炭素微細繊維を露出させるか、又は成形品より切り出した超薄切片を電子顕微鏡観察することによって測定することができる。この場合、成形品の表面から5μm以内の表面層における炭素微細繊維について測定することとする。
【0030】
屈曲度は図2に示すように炭素フィブリル等の炭素微細繊維2を顕微鏡で観察し、同一繊維上において、繊維径の5倍(繊維径(図2のdの部分)を測定し、デバイダ等で繊維に沿って5回計る等の方法による)離れた任意の2点A,Bを選び、それぞれの点に接線LA,LBを引いて、接線LA,LBの交差する点Qの外角(図2においてαで示す角)を測定する。10点の平均値をとり、これを屈曲度とする。
【0031】
繊維が直線的であればこの角度は0゜となり、半円であれば180゜、円を描くものであれば360゜となる。
【0032】
このような測定を行って求めた屈曲度αが、5゜以上、望ましくは20゜以上、さらに望ましくは40゜以上の炭素微細繊維であれば、炭素微細繊維同士の絡み合いによるネットワークを形成し易く、非導電性繊維の脱落防止、帯電防止性付与の面で好ましい。
【0033】
なお、通常の炭素繊維(ピッチ系、PAN系)は、繊維直径が7〜13μm程度の、剛直かつ直線的な繊維であり、屈曲度は5°未満となる。かかる直線的な繊維では、お互いの絡み合いが生じることはなく、ネットワーク構造を形成し難い。
【0034】
また、炭素微細繊維の表面の極性基による非導電性繊維と熱可塑性樹脂との相互作用で、非導電性繊維の脱落を効果的に防止するために、炭素微細繊維の表面活性度が0.1%以上である。炭素微細繊維の表面活性度は、炭素微細繊維の表面に存在するカルボン酸基、水酸基等の極性基の量を示し、これらの極性基の作用により基材樹脂や非導電性繊維との親和性、接着性を向上させる効果が得られ、非導電性繊維の脱落防止の面で好ましい。
【0035】
炭素微細繊維の表面活性度は、炭素微細繊維の表面に存在するカルボン酸基、水酸基等の極性基の量を次のようにして測定することにより求めることができる。
【0036】
即ち、まず、乾燥した炭素微細繊維サンプル1gを石英製のサンプル管に入れて真空に引いた後、サンプル管を950℃に加熱された炉の中で30分間加熱する。その後、サンプル管内に発生したガスを、ピストンにて圧力計付きのタンクへ導入し、タンク容量と圧力から計算して、発生ガス量を測定し、極性基量とする。表面活性度は、炭素微細繊維重量に対する発生ガス量(極性基の目安量)の割合の百分率で間接的に表している。
【0037】
本発明において、炭素微細繊維としては、市販品、例えば、ハイペリオンカタリシスインターナショナル社の、「BN」等を用いることができる。
【0038】
本発明において、炭素微細繊維の含有量は、(A)成分の熱可塑性樹脂と炭素微細繊維との合計の導電性樹脂成分中に0.1〜20重量%、望ましくは0.5〜8重量%である。炭素微細繊維の含有量がこの範囲よりも少ないと得られる成形品に十分な帯電防止性能を得ることができず、また、炭素微細繊維による非導電性繊維の脱落防止効果が十分に得られない場合がある。炭素微細繊維の含有量がこの範囲よりも多いと、成形性の低下、得られる成形品の強度等の物性の低下を引き起こす恐れがある。
【0039】
(C)非導電性繊維
本発明で用いる(C)非導電性繊維としては、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維等の非導電性の強化繊維が挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0040】
非導電性繊維としては、特に、ガラス繊維が安価かつ強化効果が大きい上に、繊維表面のシランカップリング剤による処理効果が大きいことにより、樹脂との界面接着力が大きく、その結果、成形品からの繊維の脱落に由来する発塵が少なくなるなどの理由から望ましい。
【0041】
ガラス繊維としては、一般に樹脂の強化目的に用いられるものであれば良く、特に限定されない。例えば、長繊維タイプ(ガラスロービング)や短繊維状のチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。このガラス繊維の平均繊維径は、6〜13μmの範囲にあるものが、集束性等の取り扱い性や樹脂の補強効果等に優れる点において好ましい。なお、ガラス繊維は一般に収束剤(例えばポリ酢酸ビニル、ポリエステル収束剤等)、カップリング剤(例えばシラン化合物、ボロン化合物、チタン化合物等)、その他の表面処理剤で処理されている。
【0042】
通常、長繊維タイプのガラス繊維は樹脂への添加前又は後に所望の長さに切断されて用いられるが、この使用態様も本発明には好ましい。
【0043】
ガラス繊維の表面処理剤は、基材樹脂との界面接着強度を強化し、その結果、発塵性を改善することができるものであることが好ましい。従って、表面処理剤としては、基材樹脂に応じて適正なものを選定することが望ましい。表面処理剤としては、例えば、基材樹脂がポリカーボネート樹脂であれば、エポキシ系処理剤、又はウレタン系処理剤が望ましく、基材樹脂がポリフェニレンサルファイド樹脂であれば、エポキシ系処理剤が望ましい。
【0044】
なお、前述の如く、非導電性繊維の絡み合いによるネットワークにより、ガラス繊維等の非導電性繊維を絡めとって、基材樹脂からの脱落を防止する作用効果を十分に得るためには、炭素微細繊維の絡み合いのネットワークに比べて、非導電性繊維が十分に大きいことが好ましい。即ち、炭素微細繊維の絡み合いのネットワークに対して、非導電性繊維が十分に大きくないと、このネットワークから非導電性繊維がすり抜けてしまい、十分な脱落防止効果が得られない。このため、非導電性繊維の平均繊維径(T)は炭素微細繊維の平均繊維径(t)に対して50倍、即ちT/t=50以上であることが好ましい。このT/t比は過度に大きいと、非導電性繊維の平均繊維径が大き過ぎて成形性や得られる成形品の物性を損ねる恐れがあるため、T/tは50〜5000、特に500〜2000であることが好ましい。
【0045】
なお、補強効果の面から非導電性繊維の長さ/径比(アスペクト比)は5以上であることが好ましく、特に10〜200であることが好ましい。
【0046】
このような非導電性繊維の配合割合は、(A)熱可塑性樹脂及び(B)炭素微細繊維よりなる導電性樹脂成分100重量部に対して1〜200重量部、好ましくは10〜100重量部、より好ましくは20〜100重量部である。非導電性繊維の配合割合がこの範囲よりも少ないと得られる成形品の剛性が不足し、多いと成形性が損なわれる。
【0047】
(D)その他の添加成分
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で上記(A)〜(C)成分以外の成分を配合することができる。この添加成分としては、各種のゴム、熱可塑性エラストマー(オレフィン系、スチレン系、エステル系、ウレタン系、アミド系など)や、フッ素樹脂パウダー、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、相溶化剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、防菌剤、蛍光増白剤等といった各種添加剤を挙げることができる。
【0048】
特に、硬度が70D(ASTM2240D)以下の熱可塑性エラストマーを、(A)熱可塑性樹脂及び(B)炭素微細繊維の合計100重量部に対して、0.1〜50重量部配合したものは、成形品の抵抗値が安定して得られる点で望ましい。このような熱可塑性エラストマーとしては、例えばオレフィン系、スチレン系、エステル系、アミド系、ウレタン系などの各種エラストマーが挙げられる。
【0049】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分と、必要に応じて上記(D)成分を用いて、通常の熱可塑性樹脂の加工方法で製造することができる。
【0050】
例えば(A)〜(C)成分或いは更に(D)成分を予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押し出し機、二軸混練押し出し機、ニーダーなどで溶融混練することによって導電性樹脂組成物を製造することができる。
【0051】
本発明の帯電防止性樹脂成形品は、この導電性熱可塑性樹脂組成物を各種の溶融成形法を用いて成形することにより得ることができる。成形法としては具体的には、プレス成形、押し出し成形、真空成形、ブロー成形、射出成形などを挙げることができる。特に、射出成形法は、生産性の点で望ましい。
【0052】
なお、射出成形によって成形された成形品においては、樹脂の注入口であるゲート部に樹脂の突起が残る。この突起部からは非導電性繊維等の脱落が起こり易く、脱落物がデバイスの損傷を引き起こす危険性がある。従って、ゲート跡の突起部に、かしめ処理、エンドミルによる除去、超音波加熱等により処理を施して、この脱落を防止することが望ましい。
【0053】
このようにして得られる本発明の帯電防止性樹脂成形品は、炭素微細繊維の配合により通常、表面抵抗値1×103〜1×1012Ωに調整される。また、非導電性繊維の配合により、好ましくは曲げ弾性率(ASTM790)4000MPa以上、望ましくは6000MPa以上の高剛性が得られる。
【0054】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0055】
なお、成形に用いた材料は次の通りである。
【0056】
ポリカーボネート:三菱エンジニアリングプラスチック社製「ユーピロン3000」
炭素微細繊維:炭素フィブリル(平均繊維径=10nm,平均繊維長=0.5μm以上,長さ/径比=50以上)
カーボンブラック:電気化学(株)製「デンカブラック」
ガラス繊維:日本電気硝子社製「チョップドストランドECS03T−129」(平均繊維径=12μm,平均繊維長=6mm,エポキシ系表面処理品)
炭素繊維:東邦レーヨン社製「ベスファイト HTA−C6−SRS」(平均繊維径=7μm,平均繊維長=6mm,エポキシ系表面処理品)
【0057】
なお、上記炭素微細繊維について、前述の方法で測定した屈曲度は73゜であり、表面活性度は0.15%であった。また、この炭素微細繊維の平均繊維径(t)は10nmで、非導電性繊維としてのガラス繊維の平均繊維径(T)は12μmであるため、T/t=1200である。
【0058】
実施例1、比較例1〜4
各成分を表1に示す配合で混合し、2軸押出機(池貝鉄鋼社製「PCM45」、L/D=32(L;スクリュー長、D;スクリュー径))を用いて、バレル温度300℃、スクリュー回転数160rpmにて溶融混練して、ポリカーボネート組成物ペレットを得、下記評価を行って結果を表1に示した。
【0059】
なお、炭素フィブリルの配合混練は、予めポリカーボネート樹脂に炭素フィブリルを15重量%添加したマスターバッチを製造し、これを希釈して所定の炭素フィブリル添加量とした。
【0060】
[曲げ弾性率]
ADTM790に準拠して測定した。
【0061】
[表面抵抗値]
得られた各組成物ペレットを、75ton射出成形機にて100×100×2mm(厚み)のシートに成形し、このシートサンプルについて、ダイヤインスツルメント社製「ハイレスタUP」にて表面抵抗値を測定した。印加電圧は、1×106Ω未満の抵抗値のものは10V、1×106Ω以上の抵抗値のものは100Vとして測定した。
【0062】
[帯電電位]
チャージプレートモニター(ヒューグエレクトロニクス社製)上に、上記シートサンプルを置いて、サンプル及びプレートが帯電ゼロで、かつ接地から絶縁された状態で、サンプルの上方よりコロナチャージによって、プレートモニターが1000Vになるまで帯電させた。サンプルを載せているプレートを接地して、接地後3秒後のサンプルの表面電位を表面電位計(モンローエレクトロニクス社製「244A」)で測定した。
【0063】
[接触電流値]
帯電したトレイに、接地されたデバイスが接触した場合に生じる接触電流について、電子部品を接地プローブで代用して以下のように測定を行った。
チャージプレートモニター(ヒューグエレクトロニクス社製)上に、上記シートサンプルを置いて、チャージプレートモニターを使用して、プレート及びサンプルに1000Vを3秒間充電させた後、接地から切り離して絶縁した。3秒後に接地プローブ(テクトロニクス社製「CT1」)をサンプルに接触させて、プローブを流れる接触電流を測定した。この場合、接触電流はナノ秒オーダーの交流電流が流れるので、最も高い電流値を接触電流とした。
【0064】
[パーティクル]
発塵性の指標として、以下の方法で評価した。
純水500mL中に、上記シートサンプルを浸漬し、超音波を60秒間印加した。その後、抽出した純水中のパーティクルを、パーティクルカウンター(セイシン企業社製「PAC150」)にて1μm以上のパーティクルについて測定し、シートサンプルの面積当たりのパーティクル数で示した。なお、測定の前処理として、予めシートサンプルに純水500mL中で超音波を60秒間印加したサンプルを使用した。
【0065】
【表1】
【0066】
表1より次のことが明らかである。
【0067】
炭素微細繊維(炭素フィブリル)のみを添加した比較例1では、帯電特性、発塵性は良いが、補強効果がない。
【0068】
カーボンブラック及びガラス繊維のみを添加した比較例2では、発塵性が著しく悪化する。
【0069】
ガラス繊維のみを添加した比較例3では、帯電防止効果が得られない。
【0070】
また、炭素繊維のみを添加した比較例4では、曲げ弾性率は良いが、帯電防止効果が十分でない。これは、導電性フィラーである炭素繊維のサイズが比較的大きいため、導電性ネットワークのサイズが大きくなり、炭素繊維の存在しない部分の帯電電荷が散逸されにくいことによるものと考えられる。一方、炭素繊維の周囲の電荷は極めて速く流れるので、接触電流が大きい。また、比較例3のガラス繊維添加量に比べて炭素繊維の添加量が少ないにも関わらず、発塵性が高いのは、繊維とマトリックス樹脂との接着強度が、ガラス繊維に比べて低いためと考えられる。
【0071】
これに対して、炭素微細繊維とガラス繊維を配合した実施例1では、帯電防止性、接触電流、発塵性及び曲げ弾性率のバランスに優れている。特に、比較例3のガラス繊維のみの添加に比べて、炭素微細繊維を含有しているにも関わらず、発塵性が優れていることの理由の詳細は明らかではないが、前述の如く、互いに絡み合った炭素微細繊維が、樹脂とガラス繊維の双方に強固に接着し、その結果、炭素微細繊維の脱落のみならず、ガラス繊維の脱落をも抑制する結果となっているものと考えられる。
【0072】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の帯電防止性樹脂成形品によれば、高剛性で発塵の問題がなく、帯電防止性に優れた帯電防止性樹脂成形品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の帯電防止性樹脂成形品における炭素微細繊維と非導電性繊維との絡み合いを説明する概念図である。
【図2】本発明に係る炭素微細繊維の屈曲度の測定方法の説明図である。
【符号の説明】
1 非導電性繊維
2 炭素微細繊維
Claims (5)
- (A)熱可塑性樹脂と、(B)平均繊維径200nm以下の炭素微細繊維0.1〜20重量%とからなる導電性樹脂成分100重量部に、(C)非導電性繊維を1〜200重量部添加してなる導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなる帯電防止性樹脂成形品であって、該炭素微細繊維の屈曲度が5゜以上であり、表面活性度が0.1%以上であることを特徴とする帯電防止性樹脂成形品。
- 請求項1において、該非導電性繊維がガラス繊維であることを特徴とする帯電防止性樹脂成形品。
- 請求項1又は2において、該熱可塑性樹脂がポリカーボネートであることを特徴とする帯電防止性樹脂成形品。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、該非導電性繊維の平均繊維径(T)と該炭素微細繊維の平均繊維径(t)との比T/tが50〜5000であることを特徴とする帯電防止性樹脂成形品。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、表面抵抗値が1×103Ω以上1×1012Ω以下であることを特徴とする帯電防止性樹脂成形品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002013144A JP3722065B2 (ja) | 2002-01-22 | 2002-01-22 | 帯電防止性樹脂成形品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002013144A JP3722065B2 (ja) | 2002-01-22 | 2002-01-22 | 帯電防止性樹脂成形品 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003213140A JP2003213140A (ja) | 2003-07-30 |
JP3722065B2 true JP3722065B2 (ja) | 2005-11-30 |
Family
ID=27650172
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002013144A Expired - Fee Related JP3722065B2 (ja) | 2002-01-22 | 2002-01-22 | 帯電防止性樹脂成形品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3722065B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007099887A (ja) * | 2005-10-04 | 2007-04-19 | Kyooka:Kk | ヘッドスタックアッセンブリ保護治具と、そのための樹脂組成物 |
US20230383188A1 (en) | 2020-10-29 | 2023-11-30 | Otsuka Chemical Co., Ltd. | Liquid crystal polymer composition, liquid crystal polymer molded body, and electrical and electronic equipment |
JP7050973B2 (ja) * | 2021-01-28 | 2022-04-08 | 大塚化学株式会社 | ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体 |
-
2002
- 2002-01-22 JP JP2002013144A patent/JP3722065B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003213140A (ja) | 2003-07-30 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6780490B1 (en) | Tray for conveying magnetic head for magnetic disk | |
US6545081B1 (en) | Synthetic resin composition | |
KR101190896B1 (ko) | 기판용 카세트 | |
WO2005078008A1 (en) | Stock shape for machining and production process thereof | |
JP3722065B2 (ja) | 帯電防止性樹脂成形品 | |
JP2009127038A (ja) | 樹脂組成物およびその製造方法、並びに、その用途 | |
JP2021091220A (ja) | 樹脂成形体及び静電気対策部品 | |
JP4456916B2 (ja) | 低汚染性の射出成形体 | |
JP3705241B2 (ja) | 導電性摺動性樹脂成形品 | |
JP4214654B2 (ja) | 磁気ヘッド搬送用トレイ | |
JPH05247351A (ja) | 静電気拡散性摺動部材用樹脂組成物 | |
JP3900456B2 (ja) | 導電性スピンチャック | |
CN113646385B (zh) | 树脂组合物 | |
JP4239349B2 (ja) | 磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ | |
JP4765163B2 (ja) | 導電性樹脂組成物及び導電性射出成形品 | |
KR100646150B1 (ko) | 자기디스크용 자기저항효과 헤드반송 트레이 | |
JP4239347B2 (ja) | 磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ | |
JP2001129826A (ja) | 導電性繊維強化成形材料およびその製造方法 | |
JPH05226092A (ja) | 静電気拡散性樹脂複合物 | |
JP4239348B2 (ja) | 磁気ディスク用磁気ヘッドの搬送用トレイ | |
JP4039886B2 (ja) | 導電性成形品 | |
JP2003082115A (ja) | 帯電防止部品 | |
JP4161428B2 (ja) | 磁気ディスク用磁気抵抗効果ヘッド搬送トレー | |
JP2006137938A (ja) | 磁気ディスク用磁気ヘッド搬送トレイ用樹脂組成物及び搬送トレイ | |
JP2001049130A (ja) | 電子部品取り扱い用熱可塑性樹脂組成物及び電子部品取り扱い用成形体 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041014 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050523 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050531 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050721 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050823 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050905 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Ref document number: 3722065 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080922 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090922 Year of fee payment: 4 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090922 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100922 Year of fee payment: 5 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110922 Year of fee payment: 6 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120922 Year of fee payment: 7 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130922 Year of fee payment: 8 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |