JP7194048B2 - 樹脂集電体、及び、リチウムイオン電池 - Google Patents

樹脂集電体、及び、リチウムイオン電池 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂集電体、及び、リチウムイオン電池に関する。
近年、環境保護のため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン電池に注目が集まっている。
リチウムイオン電池は、一般に、バインダを用いて正極または負極活物質等を正極用または負極用集電体にそれぞれ塗布して電極を構成している。また、バイポーラ(双極)型の電池の場合には、集電体の一方の面にバインダを用いて正極活物質等を塗布して正極層を、反対側の面にバインダを用いて負極活物質等を塗布して負極層を有するバイポーラ(双極)型電極を構成している。
このようなリチウムイオン電池においては、従来、集電体として金属箔(金属集電箔)が用いられてきた。近年、金属箔に代わって導電性材料が添加された樹脂から構成される、いわゆる樹脂集電体が提案されている。このような樹脂集電体は、金属集電箔と比較して軽量であり、電池の単位重量あたりの出力向上が期待される。
特許文献1には、樹脂集電体用分散剤、樹脂及び導電性フィラーを含有する樹脂集電体用材料、並びに、該樹脂集電体用材料を有する樹脂集電体が開示されている。
国際公開第2015/005116号
特許文献1には、樹脂集電体の例として、樹脂としてポリプロピレン樹脂を使用し、導電性フィラーとしてアセチレンブラックを使用した例が記載されている。
このような樹脂集電体を正極用樹脂集電体として使用した場合、アセチレンブラックの表面での(酸化)分解電流により樹脂集電体が劣化して、充放電後に電解液の滲み(液滲み)が発生することがあり、液滲みを抑えたまま低抵抗化することが困難であるという問題があった。
また、樹脂集電体の抵抗値を低くするために、導電性フィラーを高充填すると、シート成形機による成形性が悪化して、薄膜化が困難となるという問題があった。
以上の状況を踏まえて、本発明は、液滲み防止性、低抵抗性を備え、かつ、薄膜化が可能な成形性を有する樹脂集電体を提供することを目的とする。本発明はまた、上記樹脂集電体を用いたリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、導電性炭素フィラーとポリオレフィン樹脂(P)とを含む樹脂集電体であって、上記ポリオレフィン樹脂(P)は、結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂と、結晶化温度が110~140℃であるポリオレフィン樹脂との混合物であり、上記ポリオレフィン樹脂(P)の重量に対する上記結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂の重量の割合が20~80重量%であることを特徴とする樹脂集電体;本発明の樹脂集電体を備えることを特徴とするリチウムイオン電池である。
本発明の樹脂集電体は、液滲み防止性及び低抵抗性を備えていても、薄膜化が可能な成形性を有する樹脂集電体である。
本発明の樹脂集電体は、導電性炭素フィラーとポリオレフィン樹脂(P)とを含む樹脂集電体であって、上記ポリオレフィン樹脂(P)は、結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂と、結晶化温度が110~140℃であるポリオレフィン樹脂との混合物であり、上記ポリオレフィン樹脂(P)の重量に対する上記結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂の重量の割合が20~80重量%であることを特徴とする。
本発明の樹脂集電体では、ポリオレフィン樹脂(P)が、結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂と、結晶化温度が110~140℃であるポリオレフィン樹脂との混合物であり、上記ポリオレフィン樹脂(P)の重量に対する上記結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂の重量の割合が20~80重量%である。
ポリオレフィン樹脂(P)が、結晶化温度が異なるポリオレフィン樹脂の混合物であることにより、ポリオレフィン樹脂(P)の結晶構造を崩し、薄膜形成時に導電性炭素フィラーがポリオレフィン樹脂(P)の結晶核として働くことによって生じる膜厚のムラ(脈動)を抑制することができると考えられる。
また、成膜時において、導電性炭素フィラーの表面にポリオレフィン樹脂(P)の結晶成分が結晶相として存在と考えられ、導電性炭素フィラーの表面で副反応(分解反応)が生じにくくなり、分解反応に伴う分解電流を抑制することもできると推測される。
本明細書においては、示差走査熱量(DSC)測定にて10℃/分で200℃までポリオレフィン樹脂を昇温し、昇温後10℃/分で降温して結晶化ピークを検出し、ピークトップの温度を結晶化温度とする。
ポリオレフィン樹脂(P)は、結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂と、結晶化温度が110~140℃であるポリオレフィン樹脂との混合物である。
結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂(ポリオレフィン樹脂(p1)ともいう)としては、例えば、結晶化温度が80~96℃であるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。その他、結晶化温度が80~96℃であり、炭素数4~30のα-オレフィン(1-ブテン、イソブテン、1-ヘキセン、1-デセン及び1-ドデセン等)を必須構成単量体とする重合体等でもよい。これらのポリオレフィンは、1種単独でもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
これらのポリオレフィンの中でも、比較的結晶化温度が低く、好適にポリオレフィン樹脂(P)の結晶構造を崩すことができる点から、ランダムポリプロピレン、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレンが好ましい。
ランダムポリプロピレンは、不規則に導入された少量(好ましくは4.5重量%以下)のエチレン単位を含有するエチレンとプロピレンとの共重合体である。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレンとしては、特開2001-253910号公報等に記載されたポリプロピレン等が挙げられる。酸変性ポリプロピレンは、カルボキシル基を導入したポリプロピレンであり、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸とポリプロピレンとを有機過酸化物の存在下で反応する等の公知の方法で反応して得ることができる。
ポリオレフィン樹脂(p1)としては、例えば、以下のものが市場から入手できる。
ランダムポリプロピレン:「サンアロマーPC630S:結晶化温度83℃」「サンアロマーPC630A:結晶化温度96℃」「サンアロマーPB522M:結晶化温度80℃」いずれもサンアロマー(株)製、「ウィンテックWFX4T:結晶化温度86℃」」日本ポリプロ(株)製、「プライムポリマーF-744NP:結晶化温度86℃」(株)プライムポリマー製
結晶化温度が110~140℃であるポリオレフィン樹脂(ポリオレフィン樹脂(p2)ともいう)としては、例えば、結晶化温度が110~140℃であるポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)等が挙げられる。また、これらのポリオレフィン樹脂の変性物(以下、変性ポリオレフィンという)又は混合物であってもよい。
これらのポリオレフィンの中でも、防湿特性や機械的強度の点で、結晶性が高いポリオレフィンが好ましい。
結晶性が高いポリオレフィンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。ホモポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体である。また、ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンの中にエチレンプロピレンゴム(EPR)が分散している組成物であり、ホモポリプロピレンの「海」の中にEPRを含む「島」が浮かぶ「海島構造」を有している。
結晶化温度が110~140℃であるポリオレフィン樹脂(p2)としては、例えば、以下のものが市場から入手できる。
高密度ポリエチレン(HDPE):「サンテックB680:結晶化温度119℃」旭化成ケミカルズ(株)製
ホモポリプロピレン:「サンアロマーPM600A:結晶化温度114℃」、「サンアロマーPL500A:結晶化温度110℃」、「サンアロマーPM900A:結晶化温度116℃」いずれもサンアロマー(株)製
ブロックポリプロピレン:「クオリアCM688A:結晶化温度120℃」、「サンアロマーPC684S:結晶化温度115℃」、「サンアロマーPM854X:結晶化温度132℃」いずれもサンアロマー(株)製
また、変性ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの共重合体に極性官能基を導入したものが挙げられ、極性官能基としては、カルボキシル基、1,3-ジオキソ-2-オキサプロピレン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基及びイミド基等が挙げられる。
ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの共重合体に極性官能基を導入した変性ポリオレフィンの例としては、三井化学株式会社製アドマーシリーズが市販されている。
本発明の樹脂集電体では、ポリオレフィン樹脂(P)の重量に対するポリオレフィン樹脂(p1)の重量の割合が20~80重量%である。
ポリオレフィン樹脂(P)の重量に対するポリオレフィン樹脂(p1)の重量の割合を20~80重量%とすることにより、薄膜形成時に導電性炭素フィラーがポリオレフィン樹脂(P)の結晶核として働くことによって生じる膜厚のムラ(脈動)を抑制することができる。
本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積が7~10mであることが好ましい。樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積が7m未満であると、電気抵抗値が高くなりすぎることがあり、10mを超えると、導電性炭素フィラーの表面で副反応(分解反応)が生じ、過剰な酸化分解電流が流れることでサイクル特性が悪化することがある。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積は、以下の式で算出される。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積(m
=樹脂集電体1g中の導電性炭素フィラーの重量(g)×導電性炭素フィラーの比表面積(m/g)
導電性炭素フィラーの比表面積は、「JIS Z8830 ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準じて、BET比表面積として測定した値である。
なお、樹脂集電体が、導電性炭素フィラーとして2種以上の導電性炭素フィラーを含む場合は、導電性炭素フィラーの比表面積はそれぞれ分離して測定される。
導電性炭素フィラーを2種類以上含む場合は樹脂集電体1g中に含まれるそれぞれの導電性炭素フィラーの重量にそれぞれの導電性炭素フィラーの比表面積を掛けることにより、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積を計算することとする。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積が10m以下と小さいということは、導電性炭素フィラーの表面で副反応(分解反応)が生じにくいことを意味している。分解反応に伴う分解電流が小さくなることにより、サイクル特性を改善することができる。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積と、樹脂集電体への電解液含浸量には正の相関がある。電解液含浸量が多いと電池の充放電後に電解液の滲みが発生し、樹脂集電体の耐久性に悪影響を与える。そのため、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積を10m以下と小さくすることで樹脂集電体の耐久性を高めることができる。
導電性炭素フィラーとしては、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積を10m以下と小さくすることにより、サイクル特性に優れた樹脂集電体とすることができるが、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積を小さくするためには、比表面積の小さい導電性炭素フィラーを使用する方法を採用することができる。
その一方で、比表面積の小さい導電性炭素フィラーを用いると樹脂集電体は比較的電気抵抗が高くなるため、必要な電気抵抗値を得るためには導電性炭素フィラーの配合量を増やす必要がある。
そして、導電性炭素フィラーの配合量を増やすと、樹脂集電体の薄膜化が困難になることがある。
樹脂集電体を薄膜化することができないと、電池内における集電体の体積が大きいことに起因して、電池容量の低下につながるために好ましくない。
そこで、本発明の樹脂集電体の好ましい態様として、比表面積の小さい導電性炭素フィラーと、比表面積が大きく、導電性の高い導電性炭素フィラーを混合して使用する態様が考えられる。
比表面積の小さい導電性炭素フィラーと、比表面積の大きい導電性炭素フィラーを併用することによって、サイクル特性及び薄膜化のいずれも良化する。
具体的には、上記導電性炭素フィラーを2種以上含む樹脂集電体であって、上記導電性炭素フィラーが、比表面積が10m/g以下である第1の導電性炭素フィラー(A1)と、比表面積が30~70m/gである第2の導電性炭素フィラー(A2)とを含むことが好ましい。
比表面積が大きく、導電性の高い第2の導電性炭素フィラー(A2)を含むことにより低い電気抵抗値が得られるため、樹脂集電体を薄膜化することに適している。
一方、比表面積が大きい第2の導電性炭素フィラー(A2)は副反応の反応場にもなるので、比表面積が小さい第1の導電性炭素フィラー(A1)を使用することにより、副反応の反応場となる面積を減らし、分解電流を少なくすることができる。
すなわち、2種類の導電性炭素フィラーのそれぞれの働きにより、サイクル特性に優れ、さらに薄膜化に適した樹脂集電体を提供することができる。
導電性炭素フィラーとして(A1)と(A2)を含む場合、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積(m)は以下の式で算出される。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積(m
=樹脂集電体1g中の(A1)の重量(g)×(A1)の比表面積(m/g)+樹脂集電体1g中の(A2)の重量(g)×(A2)の比表面積(m/g)
なお、(A1)又は(A2)を2種類以上含む場合は樹脂集電体1g中に含まれるそれぞれの導電性炭素フィラーの重量にそれぞれの導電性炭素フィラーの比表面積を掛けて計算することとする。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積が7~10mであると、総表面積が大きくなりすぎないため分解電流が小さく、サイクル特性が良好になる。
第1の導電性炭素フィラー(A1)はその比表面積が10m/g以下の導電性炭素フィラーである。第1の導電性炭素フィラー(A1)はその比表面積が2m/g以下であることがより好ましい。
また、第1の導電性炭素フィラー(A1)はその比表面積が0.1m/g以上であることが好ましい。
第1の導電性炭素フィラー(A1)の比表面積が10m/g以下であるためには、導電性炭素フィラーの体積平均粒子径が5.0μm以上であることが好ましい。
第1の導電性炭素フィラー(A1)としては、天然又は人造の黒鉛(グラファイト)及びハードカーボン(難黒鉛化炭素)及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中では黒鉛が好ましい。また、形状は球状、鱗片状及び塊状のいずれであっても良いが、球状が好ましい。
また、第1の導電性炭素フィラー(A1)はその体積平均粒子径が5.0~11.5μmであることが好ましい。
本明細書において、導電性炭素フィラーの体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
第1の導電性炭素フィラー(A1)としては、その比表面積が10m/g以下である限り、その種類、比表面積又は体積平均粒子径が異なる2種類以上の導電性炭素フィラーを含んでいてもよい。
第1の導電性炭素フィラー(A1)として市場から入手できるものとしては、商品名「UP20N(3.33m/g、20μm)」「CGB20(4.72m/g、20μm)」「CPB(6.95m/g)、21μm」[日本黒鉛工業(株)製]「SG-BH(4.84m/g、21μm)」「SG-BL30(4.28m/g、31μm)」「SG-BL40(3.19m/g、39μm)」「RP99-150(5.13m/g、33μm)」「PC99-300M(3.87m/g、41μm)」「SRP-150(5.61m/g、30μm)」「PC-30(6.04m/g、30μm)」[いずれも伊藤黒鉛工業(株)製]、商品名「SNG-WXA1(1.8m/g、12μm)」「SNG-P1A1(0.6m/g、29μm)」[いずれもJFEケミカル(株)製]等が挙げられる。
なお、品名の後の括弧内に記載した値は、そのフィラーの比表面積及び体積平均粒子径である。
第2の導電性炭素フィラー(A2)はその比表面積が30~70m/gの導電性炭素フィラーであることが好ましい。
第2の導電性炭素フィラー(A2)としては、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中ではアセチレンブラックが好ましい。
また、第2の導電性炭素フィラー(A2)はその体積平均粒子径が3~500nmであることが好ましい。体積平均粒子径の測定は上述のようにマイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)により行うことができる。
第2の導電性炭素フィラー(A2)としては、その比表面積が30~70m/gである限り、その種類、比表面積又は体積平均粒子径が異なる2種類以上の導電性炭素フィラーを含んでいてもよい。
第2の導電性炭素フィラー(A2)として市場から入手できるものとしては、商品名「デンカブラック(69m/g、35nm)」「デンカブラックLi-400(39m/g、48nm)」[デンカ(株)製]、商品名「エンサコ250G粒状(65m/g、45nm)」[Imerys製]、商品名「♯3030B(32m/g、55nm)」[三菱化学製]等が挙げられる。
なお、品名の後の括弧内に記載した値は、そのフィラーの比表面積及び体積平均粒子径である。
本発明の樹脂集電体では、導電性炭素フィラー(A1)及び(A2)以外の導電性炭素フィラー(その他の導電性炭素フィラーともいう)を含んでもよい。
その他の導電性炭素フィラーとしては、例えば、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維等のカーボンファイバー、カーボンナノファイバー並びにカーボンナノチューブ等が挙げられる。
なかでも、安全性と低い電気抵抗値を得る観点から、導電性炭素フィラーの表面を樹脂で被覆し、凝集された構造を有するものが好ましい。
その他の導電性炭素フィラーとして市場から入手できるものとしては、商品名「デュロビーズ K-Nanos100P(比表面積213m/g、0.5mm~2.0mm)」[Kumho製]、商品名「FloTube9000(比表面積210m/g、平均直径11nm)」[C-nano製]、商品名「NC7000(比表面積250-300m/g、平均直径9.5nm)」[Nanocyl製]等が挙げられる。
なお、品名の後の括弧内に記載した値は、そのフィラーの比表面積及び平均粒子径である。「デュロビーズ K-Nanos100P」の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いて倍率18~720倍で観察し、無作為に選んだ100個の導電性炭素フィラーの粒子径について測定し、その平均を求めたものである。
本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体中の第1の導電性炭素フィラー(A1)の重量割合が30~60重量%であることが好ましい。
また、樹脂集電体中の第2の導電性炭素フィラー(A2)の重量割合が3~10重量%であることが好ましい。
本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体に含まれる第1の導電性炭素フィラー(A1)と第2の導電性炭素フィラー(A2)との重量比率が、[第1の導電性炭素フィラー(A1)/第2の導電性炭素フィラー(A2)]=3~20であることが好ましい。
上記比率が3以上であると、比表面積が大きい第2の導電性炭素フィラー(A2)の比率が相対的に少ないため、第2の導電性炭素フィラー(A2)の表面での副反応の影響が少なく、サイクル特性がより良好になる。
また、上記比率が20以下であると、比表面積が小さく、比較的導電性が低い第1の導電性炭素フィラー(A1)の比率が多過ぎないため、樹脂集電体の電気抵抗値を低くするために必要なフィラーの量を減らすことができ、樹脂集電体の薄膜化がより容易になる。
本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体に含まれる第1の導電性炭素フィラー(A1)と第2の導電性炭素フィラー(A2)との合計重量割合が樹脂集電体の重量に対して40重量%以上、70重量%未満であることが好ましい。
上記重量割合が40重量%以上であると、樹脂集電体に含まれる導電性炭素フィラーの量が充分であるため電気抵抗値をより低くすることができる。また、上記重量割合が70重量%未満であると、樹脂集電体に含まれるポリオレフィン樹脂(P)の割合が低くなりすぎないため、樹脂集電体の成形性への影響が少なく、樹脂集電体の薄膜化により適している。
樹脂集電体は、導電性炭素フィラーとは異なる導電材料を含有していてもよい。
導電材料の材質としては、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]及びこれらの合金、並びにこれらの混合物が挙げられる。電気的安定性の観点から、好ましくはニッケルである。
また、導電材料として、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電材料(上記した導電材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
樹脂集電体は、ポリオレフィン樹脂(P)と、導電性炭素フィラーとの他に、さらに必要に応じ、その他の成分[導電材料用分散剤、着色剤、紫外線吸収剤、汎用の可塑剤(フタル酸骨格含有化合物、トリメリット酸骨格含有化合物、リン酸基含有化合物及びエポキシ骨格含有化合物等)]等を適宜含んでいてもよい。その他の成分の合計添加量は、電気的安定性の観点から、樹脂集電体100重量部中0.001~5重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.001~3重量部である。
導電材料用分散剤としては、三洋化成工業株式会社製ユーメックスシリーズ、東洋紡株式会社製ハードレンシリーズ、トーヨータックシリーズ等が使用可能である。
また、樹脂集電体に含まれるポリオレフィン樹脂(P)の割合が30~60重量%であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂(P)の割合が上記範囲であると、成形性が良好であり、樹脂集電体の薄膜化に適している。
また、樹脂集電体に含まれる、結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂(p1)の割合が6~48重量%であることが好ましい。
本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体の膜厚は、90~110μmであることが好ましく、90~100μmがより好ましい。
樹脂集電体の膜厚が110μm以下であると、樹脂集電体としての厚さが薄く、薄膜化された樹脂集電体であるといえる。このような樹脂集電体は電池内における体積が小さいため、電池の電池容量を高くするために適している。
また、樹脂集電体の膜厚が90μm以上であると、樹脂集電体の強度が充分となるため好ましい。
また、本発明の樹脂集電体では、樹脂集電体の厚さ方向の電気抵抗値(貫通抵抗値)が、1~150Ω・cmであることが好ましい。厚さ方向の電気抵抗値は以下の方法で測定することができる。
<厚さ方向の電気抵抗値の測定>
3cm×10cmの短冊状に裁断した樹脂集電体を測定用試験片とし、抵抗計[RM3548、HIOKI製]を接続した電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]の電極間に試験片を挟み、電極に2.16kgの荷重をかけながら抵抗値を測定する。加重をかけてから60秒後の値に電極と試験片との接触面積(3.14cm)をかけた値を厚さ方向の電気抵抗値とすることができる。なお、電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]は、JISK6378-5において厚さ方向の体積電気抵抗の測定に用いる装置に準拠した試験片を正負電極間に挟んで抵抗値の測定を行うための装置である。
本発明の樹脂集電体は、好ましくは、以下の方法で製造することができる。
まず、ポリオレフィン樹脂(P)、導電性炭素フィラー、及び、必要に応じてその他の成分を混合することにより、樹脂集電体用材料を得る。
混合の方法としては、導電性炭素フィラーのマスターバッチを得てからさらにポリオレフィン樹脂(P)と混合する方法、ポリオレフィン樹脂(P)、導電性炭素フィラー、及び、必要に応じてその他の成分のマスターバッチを用いる方法、及び、全ての原料を一括して混合する方法等があり、その混合にはペレット状又は粉体状の成分を適切な公知の混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー及びロール等を用いることができる。
混合時の各成分の添加順序には特に限定はない。得られた混合物は、さらにペレタイザーなどによりペレット化又は粉末化してもよい。
得られた樹脂集電体用材料を例えばフィルム状に成形することにより、本発明の樹脂集電体が得られる。フィルム状に成形する方法としては、Tダイ法、インフレーション法及びカレンダー法等の公知のフィルム成形法が挙げられる。なお、本発明の樹脂集電体は、フィルム成形以外の成形方法によっても得ることができる。
本発明の樹脂集電体は、リチウムイオン電池の集電体として使用することが好ましい。
正極用樹脂集電体として用いることもでき、負極用樹脂集電体として用いることもできるが、リチウムイオン電池の正極用樹脂集電体として用いることが好ましい。
本発明の樹脂集電体は、リチウムイオン電池のバイポーラ電極用の樹脂集電体として好ましく用いることもできる。
バイポーラ電極とは、リチウムイオン電池用電極であって、一つの集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成された電極を意味する。
集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極の少なくとも一方の面が本発明の樹脂集電体であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明の樹脂集電体を備えることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン電池が本発明の樹脂集電体を正極用樹脂集電体として備える場合、本発明のリチウムイオン電池は、上述した本発明の樹脂集電体と、樹脂集電体の表面に形成された正極活物質層とを備える。正極活物質層は、正極活物質とともに、必要に応じてバインダ、導電助剤等の添加剤を含む。
本発明のリチウムイオン電池が本発明の樹脂集電体を負極用樹脂集電体として備える場合、本発明のリチウムイオン電池は、上述した本発明の樹脂集電体と、樹脂集電体の表面に形成された負極活物質層とを備える。負極活物質層は、負極活物質とともに、必要に応じてバインダ、導電助剤等の添加剤を含む。
本発明のリチウムイオン電池は、さらに、電解液と、セパレータとを備える。本発明のリチウムイオン電池において、正極活物質、負極活物質、電解液、セパレータ等の材料としては、公知の材料を使用することができる。正極活物質及び負極活物質は、アクリル系樹脂等の樹脂で被覆された被覆活物質であってもよい。正極用集電体又は負極用集電体が本発明の樹脂集電体でない場合、これらの集電体は、金属集電箔であってもよいし、樹脂集電体であってもよい。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
以下の実施例で使用した材料は下記の通りである。
ポリオレフィン樹脂(p1)
p1-1:ランダムポリプロピレン[結晶化温度80℃、商品名「サンアロマーPB522M」、サンアロマー(株)製]
p1-2:ランダムポリプロピレン[結晶化温度96℃、商品名「サンアロマーPC630A」、サンアロマー(株)製]
ポリオレフィン樹脂(p2)
p2-1:ブロックポリプロピレン[結晶化温度132℃、商品名「サンアロマーPM854X」、サンアロマー(株)製]
p2-2:ホモポリプロピレン[結晶化温度114℃、商品名「サンアロマーPM600A」、サンアロマー(株)製]
p2-3:高密度ポリエチレン[結晶化温度119℃、商品名「サンテックB680」、旭化成ケミカルズ(株)製]
なお、ポリオレフィン樹脂の結晶化温度は、示差走査熱量(DSC)測定にて10℃/分で200℃までポリオレフィン樹脂を昇温し、昇温後10℃/分で降温して結晶化ピークを検出し、そのときの温度を結晶化温度とした。
第1の導電性炭素フィラー(A1)
黒鉛粒子[比表面積1.8m/g、体積平均粒子径12μm、商品名「SNG-WXA1」、JFEケミカル(株)製]
第2の導電性炭素フィラー(A2)
アセチレンブラック1[比表面積65m/g、平均一次粒子径45nm、商品名「エンサコ250G」、Imerys(株)製]
アセチレンブラック2[比表面積69m/g、平均一次粒子径35nm、商品名「デンカブラック」、デンカ(株)製]
アセチレンブラック3[比表面積39m/g、平均一次粒子径48nm、商品名「デンカブラックLi-400」、デンカ(株)製]
アセチレンブラック4[比表面積32m/g、平均一次粒子径55nm、商品名「♯3030B」、三菱化学(株)製]
その他の導電性フィラー
カーボンナノチューブ[比表面積213m/g、平均粒子径0.5mm~2.0m、商品名「デュロビーズ K-Nanos100P」、Kumho製]
なお、各導電性炭素フィラーの比表面積は、「JIS Z8830 ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準じて、BET比表面積として測定した値である。
分散剤
[商品名「ユーメックス1001(酸変性ポリプロピレン)」、三洋化成工業(株)製]
<実施例1>
2軸押出機にて、p1-1(ランダムポリプロピレン)10部、p2-1(ブロックポリプロピレン)25部、p2-3(高密度ポリエチレン)10部、黒鉛粒子「SNG-WXA1」40部、アセチレンブラック1「エンサコ250G」10部及び分散剤5部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して樹脂集電体用材料を得た。
得られた樹脂集電体用材料をTダイから押し出し、50℃に温調した冷却ロールで圧延することで、樹脂集電体を得た。
<実施例2~9、比較例1~2>
ポリオレフィン樹脂(P)の種類及び配合量、並びに、第1の導電性炭素フィラー及び第2の導電性炭素フィラーの種類及び配合量を表1に示すように変更して、実施例1と同様の方法により樹脂集電体用材料及び樹脂集電体を得た。
<評価用リチウムイオン電池の作製>
実施例1~9及び比較例1~2で得られた樹脂集電体に正極活物質スラリーを塗工したものを正極とし、同様に銅箔(古川電工製)に負極活物質スラリーを塗工したものを負極とした。ここで得られた正極と負極を枠材付セパレータを介して貼り合わせ、評価用リチウムイオン電池1~9及び比較用リチウムイオン電池1~2を作製した。
以下にそのプロセスを詳しく示す。
<正極の作製>
[被覆用高分子化合物とその溶液の作製]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸ブチル20.0部、アクリル酸55.0部、メタクリル酸メチル22.0部、アリルスルホン酸ナトリウム3部及びDMF20部を配合したモノマー配合液と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.4部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、80℃に昇温し反応を5時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行ってDMFを留去し、被覆用高分子化合物を得た。
[被覆正極活物質の作製]
正極活物質粉末(LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末、体積平均粒子径4μm)100部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、上記被覆用高分子化合物をイソプロパノールに1.0重量%の濃度で溶解して得られた被覆用高分子化合物溶液11.2部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電剤としてアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]6.2部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆正極活物質を得た。
[評価用リチウムイオン電池の正極の作製]
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiPFを1mol/Lの割合で溶解させて作製したリチウムイオン電池用電解液42部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]4.2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで7分間混合し、続いて上記電解液30部と上記被覆正極活物質206部を追加した後、更にあわとり練太郎により2000rpmで1.5分間混合し、上記電解液20部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、上記電解液2.3部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1.5分間混合して、正極活物質スラリーを作製した。得られた正極活物質スラリーをそれぞれ実施例1~9及び比較例1~2の樹脂集電体に塗布し、5MPaの圧力で約10秒プレスし、実施例1~9及び比較例1~2に係るリチウムイオン電池用正極(58mm×42mm)を作製した。
<負極の作製>
[被覆用高分子化合物とその溶液の作製]
上記<正極の作製>において用いた被覆用高分子化合物とその溶液を作製した。
[被覆負極活物質の作製]
炭素系材料である難黒鉛化性炭素粉末(体積平均粒子径20μm)100部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、上記被覆用高分子化合物をイソプロパノールに19.8重量%の濃度で溶解して得られた被覆用高分子化合物溶液9.2部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電剤であるアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]11.3部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆負極活物質を得た。
[評価用リチウムイオン電池の負極の作製]
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiPFを1mol/Lの割合で溶解させて作製したリチウムイオン電池用電解液20部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで7分間混合し、続いて上記電解液50部と上記被覆負極活物質98部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで1.5分間混合し、上記電解液25部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液50部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1.5分間混合して、負極活物質スラリーを作製した。
得られた負極活物質スラリーをそれぞれ銅箔[古河電工(株)製]の片面に塗布し、5MPaの圧力で約10秒プレスし、リチウムイオン電池用負極(62mm×46mm)を作製した。
[セパレータ本体の製造]
平板状のセルガード2500(PP製、厚さ25μm)を30mm×30mmの正方形に切り出して、セパレータ本体とした。
[枠状部材の作製]
シール層となる低融点ポリエチレン(PE)からなる積層フィルムを延伸して厚さ25μmの延伸フィルム(低融点PE延伸フィルム)を準備した。その後、耐熱性環状支持部材となるポリエチレンナフタレート(帝人社製、PEN)からなる厚さ250μmのフィルムと接着性ポリオレフィン系樹脂フィルム(三井化学社製、アドマーVE300、厚さ50μm)とを加熱ロールまたはラミネート機により接着して積層体を準備した。その後、積層体を66mm×50mmの長方形に切断し、さらに、中央のφ23mmの領域を打ち抜くことにより、PENからなる耐熱性環状支持部材(PEN層)と低融点PE延伸フィルムからなるシール層(低融点PE層)とが積層され、長方形の4辺における環状の積層体(枠状部材)を得た。
[セパレータ本体と枠状部材との接合]
枠状部材の外形寸法に基づく重心とセパレータ本体の外形寸法に基づく重心が重なるように、かつ、各枠状部材のPEN層がそれぞれセパレータ本体と接触するように、セパレータ本体の両面に枠状部材を貼り合わせ、インパルスシーラーを用いて接着することにより、セパレータ本体の外周に沿って枠状部材が環状に配置されたリチウムイオン電池用セパレータを得た。
なお、正極集電体と接触する側のシール層(低融点PE層)を第1シール層、負極集電体と接触する側のシール層(低融点PE層)を第2シール層とする。
PEN層は、外周から幅0.5mmの部分では互いに接触しているが、その内側の幅1.5mmの部分ではセパレータ本体を介して対向している。
[評価用リチウムイオン電池の作製]
負極に予めセパレータを電解液で湿らせた枠材付セパレータを乗せ(このときの負極に乗せる面は、セパレータが枠材に貼り合わされている面と逆の面)、この負極と枠材付セパレータが一体化したものと実施例1~9及び比較例1~2に係るリチウムイオン電池用正極を重ね合わせた。重ね合わせた後に3辺を加熱シーラーにて長辺、短辺、長辺の順でシールした。最後の1辺は、トスパック(TOSEI製)を用いてセル内を真空にし、短辺をシールした。このとき得られたセルをアルミラミセル(正極:カーボンコートアルミ、負極:銅箔)に入れて、評価用リチウムイオン電池1~9及び比較用リチウムイオン電池1~2を作製した。
<リチウムイオン電池の充放電試験>
45℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法により評価用リチウムイオン電池1~9及び比較用リチウムイオン電池1~2につき充放電試験を行った。
定電流定電圧方式(0.1C)で4.2Vまで充電した後、10分間の休止後、定電流方式(0.1C)で2.6Vまで放電した。
<液滲みの有無評価>
評価用リチウムイオン電池1~9、比較用リチウムイオン電池1~2について、上記充放電試験後のセルの樹脂集電体の外側に、液滴等のセル内部から浸透した液滲みがないか目視で確認した。電解液由来による液滴がなければ液滲み判定を無しとし、液滴が滲み出ていたら液滲み判定をありと判断した。
<樹脂集電体の厚さ方向における電気抵抗値(貫通抵抗値)の測定>
樹脂集電体を3cm×10cm程度の短冊に裁断し、電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]及び抵抗計[RM3548、HIOKI製]を用いて各樹脂集電体の貫通抵抗値を測定した。
電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態での樹脂集電体の抵抗値を測定し、2.16kgの荷重をかけてから60秒後の値をその樹脂集電体の抵抗値とした。下記の式に示すように、抵抗測定時の冶具の接触表面の面積(3.14cm)をかけた値を貫通抵抗値(Ω・cm)とした。
貫通抵抗値(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×3.14(cm
<酸化電流量の測定>
(耐電位試験用コインセルの作製)
2032型コインセルの負極缶にガスケット、φ16mmに裁断したLi箔、φ17mmに裁断したセパレータ(厚さ25μmのポリプロピレン製)を順に重ね、電解液を100μL添加した。その上にφ15mmに裁断した樹脂集電体を乗せ、さらにカーボンコートアルミ[昭和電工(株)製、SDX]、スペーサー(厚さ500μm)を2つ、皿バネ、正極缶を順に重ねて封をし、評価用のコインセルを作製した。なお、電解液として、1M LiPFをエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒(体積比1:1)に溶解した溶液を準備した。
(樹脂集電体の耐電位試験評価)
充放電測定装置「HJ1001SM8A」[北斗電工製]を用いて、評価用コインセルを電圧4.2Vまで充電し、そのまま200時間電圧をかけた状態での発生電流を計測した。本試験での結果は、4.2Vの電圧をかけ続けた状態で流れた電流量の総和としている。
なお、酸化電流量が少ないと電池の構成部材として用いた際の部材由来の容量ロスが低減でき、優れた長期の信頼性を有することを示す。
<成膜性脈動の有無評価>
実施例1~9及び比較例1~2と同様の方法により得られた樹脂集電体用材料をTダイから押し出し、50℃に温調した冷却ロールで厚みが100μmになるように引き取り、評価用樹脂集電体1~9及び比較用樹脂集電体1~2を作製した。
評価用樹脂集電体1~9及び比較用樹脂集電体1~2について、1.00mあたりの膜厚のバラつきが20μm以内である場合を脈動無しと判断し、バラつきが20μmを超える場合を脈動有りと判断した。膜厚のバラつきは、フィルム1.00mの任意の10点における膜厚を膜厚計(商品名「デジマチックシックネスゲージ」ミツトヨ製)で測定し、それらの測定値の最大値と最小値の差をバラつきの値とした。
Figure 0007194048000001
表1より、結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂(p1)を所定量含むポリオレフィン樹脂(P)を用いた実施例1~9では、優れた液滲み防止性及び低抵抗性を備えつつ、成膜性も良好であることが確認された。
なお、実施例5~8では、第2の導電性炭素フィラー(A2)の重量比率が大きいために、酸化電流量がやや高かった。特に、樹脂集電体1gに含まれるフィラーの総表面積が10mを超えていた実施例7、及び、導電性炭素フィラー(A2)のみを用いた実施例8では、貫通抵抗値がやや高かった。
これに対して、結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂(p1)を含まないポリオレフィン樹脂(P)を用いた比較例1では、薄膜形成時に導電性炭素フィラーがポリオレフィン樹脂(P)の結晶核として働くことによって膜厚のムラ(脈動)が発生し、ポリオレフィン樹脂(P)の重量に対するポリオレフィン樹脂(p1)の重量の割合が80重量%を超えていた比較例2では、貫通抵抗値がとくに高くなっており、優れた低抵抗性と成膜性とを両立するのが困難であることが確認された。
本発明の樹脂集電体は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター及びハイブリッド自動車、電気自動車用に用いられるリチウムイオン電池用の集電体として有用である。

Claims (7)

  1. 導電性炭素フィラーとポリオレフィン樹脂(P)とを含む樹脂集電体であって、
    前記ポリオレフィン樹脂(P)は、結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂と、結晶化温度が110~140℃であるポリオレフィン樹脂との混合物であり、
    前記ポリオレフィン樹脂(P)の重量に対する前記結晶化温度が80~96℃であるポリオレフィン樹脂の重量の割合が20~80重量%であることを特徴とする樹脂集電体。
  2. 前記樹脂集電体1gに含まれる前記導電性炭素フィラーの総表面積が7~10mである請求項1に記載の樹脂集電体。
  3. 前記導電性炭素フィラーが、
    比表面積が10m/g以下である第1の導電性炭素フィラー(A1)と、
    比表面積が30~70m/gである第2の導電性炭素フィラー(A2)とを含む請求項1又は2に記載の樹脂集電体。
  4. 樹脂集電体の膜厚が90~110μmである請求項1~3のいずれかに記載の樹脂集電体。
  5. リチウムイオン電池の正極用樹脂集電体である請求項1~4のいずれかに記載の樹脂集電体。
  6. リチウムイオン電池用電極であって、集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極用である請求項1~4のいずれかに記載の樹脂集電体。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の樹脂集電体を備えることを特徴とするリチウムイオン電池。
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