JP2023080964A - リチウムイオン電池用集電体及びリチウムイオン電池用集電体の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン電池用集電体及びリチウムイオン電池用集電体の製造方法 Download PDF

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智史 山下
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英明 堀江
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Abstract

【課題】電解液の液滲みを防止することができ、かつ、貫通抵抗値が高くなりにくいリチウムイオン電池用集電体及びリチウムイオン電池用集電体の製造方法を提供する。【解決手段】高分子材料と、導電性フィラーと、シリコーンオイルとを含み、上記シリコーンオイルの重量割合が、上記リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として0.01~1.00重量%であり、上記シリコーンオイルのASTM D 445-46Tに基づいてウッベローデ粘度計により測定した25℃における粘度が、5~5000mPa・sであるリチウムイオン電池用集電体。【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウムイオン電池用集電体及びリチウムイオン電池用集電体の製造方法に関する。
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力密度が達成できる二次電池として、近年様々な用途に多用されている。
一般的なリチウムイオン電池は、集電体の一面に正極活物質層及び負極活物質層をそれぞれ設けた後に、活物質層間にセパレータを挾んでこれら正極活物質と負極活物質を積層することで略平板状のリチウム二次単電池を製造し、この単電池を複数層積層して構成される。
このような、単電池を複数層積層してなるリチウムイオン電池において、集電体として導電性フィラーである金属粉末、バインダ(樹脂)及び溶剤を含む集電体金属ペーストを加熱成形した樹脂集電体を用いたものが提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたような高分子材料に導電性フィラーを分散させる形態の樹脂集電体の場合、十分な導電性が得られない、導電性フィラーを介して電解液の液滲みが生じる等の課題があり、これらを解決するために導電性フィラーの種類や量を最適化する試みがなされてきた(特許文献2参照)。
特開2010-62081号公報 特開2020-61300号公報
しかしながら、特許文献2に記載された樹脂集電体は、電解液の液滲みを防止する効果が充分であるものの、貫通抵抗値が高く、リチウムイオン電池の電気特性が低下してしまうという課題があった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、電解液の液滲みを防止することができ、かつ、貫通抵抗値が高くなりにくいリチウムイオン電池用集電体及びリチウムイオン電池用集電体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、高分子材料と、導電性フィラーと、シリコーンオイルとを含み、上記シリコーンオイルの重量割合が、上記リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として0.01~1.00重量%であり、上記シリコーンオイルのASTM D 445-46Tに基づいてウッベローデ粘度計により測定した25℃における粘度が、5~5000mPa・sであるリチウムイオン電池用集電体;高分子材料と導電性フィラーとを含む集電体用組成物に、ASTM D 445-46Tに基づいてウッベローデ粘度計により測定した25℃における粘度が、5~5000mPa・sであるシリコーンオイルを、上記リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として0.01~1.00重量%の重量割合となるように塗布又は含浸させる工程を有するリチウムイオン電池用集電体の製造方法に関する。
本発明によれば、電解液の液滲みを防止することができ、かつ、貫通抵抗値が高くなりにくいリチウムイオン電池用集電体を提供することができる。
<リチウムイオン電池用集電体>
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、高分子材料と、導電性フィラーと、シリコーンオイルとを含み、上記シリコーンオイルの重量割合が、上記リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として0.01~1.00重量%であり、上記シリコーンオイルのASTM D 445-46Tに基づいてウッベローデ粘度計により測定した25℃における粘度が、5~5000mPa・sである。
本発明のリチウムイオン電池用集電体では、導電性フィラーの近傍の空隙中にシリコーンオイルが存在しており、導電性フィラーの表面がシリコーンオイルで覆われていないので、導電性フィラー間の導電性を担保できる。
また、シリコーンオイルが導電性フィラーの空隙中に存在することにより、親水性の高い電解液が導電性フィラーの空隙中に入り込むことができなくなるので、電解液の液滲みを防止するとともに、貫通抵抗値の上昇を抑制することができる。
(高分子材料)
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、高分子材料を含む。
高分子材料としては、特に制限はないが、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリオレフィン[ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、及びポリシクロオレフィン(PCO)等]が挙げられる。より好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)が挙げられる。
また、これらのポリオレフィン樹脂の変性物(以下、変性ポリオレフィンという)又は混合物であってもよい。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、以下のものが市場から入手できる。
PE:「ノバテックLL UE320」「ノバテックLL UJ960」いずれも日本ポリエチレン(株)製
PP:「サンアロマーPM854X」「サンアロマーPC684S」「サンアロマーPL500A」「サンアロマーPC630S」「サンアロマーPC630A」「サンアロマーPC900A」「サンアロマーPB522M」「クオリアCM688A」いずれもサンアロマー(株)製、「プライムポリマーJ-2000GP」(株)プライムポリマー製、「ウィンテックWFX4T」日本ポリプロ(株)製
PMP:「TPX」三井化学(株)製
変性ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの共重合体に極性官能基を導入したものが挙げられ、極性官能基としては、カルボキシル基、1,3-ジオキソ-2-オキサプロピレン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基及びイミド基等が挙げられる。
ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの共重合体に極性官能基を導入した変性ポリオレフィンの例としては、三井化学株式会社製アドマーシリーズ等が市販されている。
高分子材料の含有量は、リチウムイオン電池用集電体の強度の観点から、リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として、20~80重量%であることが好ましく、30~75重量%であることがより好ましく、60~75重量%であることがさらに好ましい。
(導電性フィラー)
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、導電性フィラーを含む。
導電性フィラーとしては、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電性フィラーは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電性フィラーの材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましく、0.02~5μmであることがより好ましく、0.03~1μmであることがさらに好ましい。
なお、本明細書中において、「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている形態であってもよい。
導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレスのような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。導電性フィラーが導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1~20μmであることが好ましい。
導電性フィラーの重量割合は、リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として、10~70重量%であることが好ましく、15~50重量%であることがより好ましく、20~40重量%であることがさらに好ましい。特に、導電性フィラーがカーボンの場合、導電性フィラーの重量割合は、リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として、20~30重量%であることが好ましい。
(シリコーンオイル)
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、シリコーンオイルを含む。
シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルであっても、変性シリコーンオイルであってもよい。
ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられる。
変性シリコーンオイルとしては、反応性シリコーンオイル、非反応性シリコーンオイルが挙げられる。
反応性シリコーンオイルは、例えば、アミノ変性タイプ、エポキシ変性タイプ、カルボキシ変性タイプ、カルビノール変性タイプ、メタクリル変性タイプ、メルカプト変性タイプ、フェノール変性タイプ等の各種シリコーンオイルが挙げられる。
非反応性シリコーンオイルは、ポリエーテル変性タイプ、メチルスチリル変性タイプ、アルキル変性タイプ、高級脂肪酸エステル変性タイプ、親水性特殊変性タイプ、高級脂肪酸含有タイプ、フッ素変性タイプ等の各種シリコーンオイルが挙げられる。
シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルであることが好ましく、電気化学的に安定である観点から、ジメチルシリコーンオイルがより好ましい。
シリコーンオイルとしては、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
シリコーンオイルの重量割合は、リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として0.01~1.00重量%である。
シリコーンオイルをこのような重量割合で含むことにより、導電性フィラーの空隙中にシリコーンオイルが十分に存在することができるので、電解液の液滲みを好適に防止することができる。また、導電性フィラーの表面が過剰にシリコーンオイルで覆われないので、導電性フィラー間の導電性を好適に担保することができる。
シリコーンオイルの重量割合は、リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として0.05~0.30重量%であることが好ましい。
シリコーンオイルの重量割合は、例えば、以下の方法により測定することができる。
まず、リチウムイオン電池用集電体をスクリュー管に入れ、重クロロホルムに含浸させて、シリコーンオイルを抽出する。
クロロホルム抽出物を純度が既知の内部標準(例えば、γ-ブチロラクトン)と混合して混合液Aを作成し、H-NMRで測定する。
これとは別に、純度が既知のシリコーンオイル標準サンプルと、内部標準(例えば、γ-ブチロラクトン)の混合液BもH-NMRで測定する。
シリコーンオイル標準サンプルと、クロロホルム抽出物のH-NMRチャートのシリコーンオイルのピークの積分比から、重量を算出することができる。
なお、混合液Aのクロロホルム抽出物と内部標準の混合比率と、混合液Bのシリコーンオイル標準サンプルと内部標準の混合比率が同じとなるように調製する。
シリコーンオイルのASTM D 445-46Tに基づいてウッベローデ粘度計により測定した25℃における粘度が、5~5000mPa・sである。
シリコーンオイルの上記粘度が5mPa・s未満であると、シリコーンオイルが揮発してしまい、電解液の液滲みを防止する効果や、貫通抵抗値の上昇を抑制する効果を得ることができない。
また、シリコーンオイルの上記粘度が5000mPa・sを超えると、リチウムイオン電池用集電体にシリコーンオイルが十分に浸透せず、電解液の液滲みを防止する効果を得ることができない。
上記粘度は、酸化電流量を低減する観点から、10~1000mPa・sであることが好ましく、100mPa・s以上であることがより好ましい。
なお、酸化電流量が少ないと、リチウムイオン電池用集電体由来の容量ロスを低減することができ、長期間リチウムイオン電池を使用した際の損耗を軽減することができる。
(その他の成分)
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、必要に応じて、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、分散剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤(フタル酸骨格含有化合物、トリメリット酸骨格含有化合物、リン酸基含有化合物及びエポキシ骨格含有化合物等)等が挙げられる。
分散剤としては、三洋化成工業(株)製ユーメックスシリーズ、東洋紡(株)製ハードレンシリーズ、トーヨータックシリーズ、サンノプコ社製SNスパース70等を用いることができる。
着色剤、紫外線吸収剤及び可塑剤等は、公知のものを適宜選択して用いることができる。
その他の成分の合計含有量は、リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として0.001~5重量%であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池用集電体の厚さは特に限定されないが、5~150μmであることが好ましく、20~100μmであることがより好ましく、30~50μmであることが特に好ましい。
<リチウムイオン電池用集電体の製造方法>
本発明のリチウムイオン電池用集電体の製造方法は、高分子材料と導電性フィラーとを含む集電体用シートに、ASTM D 445-46Tに基づいてウッベローデ粘度計により測定した25℃における粘度が、5~5000mPa・sであるシリコーンオイルを、上記リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として0.01~1.00重量%の重量割合となるように塗布又は含浸させる工程を有する。
(集電体用シート)
集電体用シートは、高分子材料と導電性フィラーとを含む。
高分子材料及び導電性フィラーは、上述した本発明のリチウムイオン電池用集電体で記載したものを適宜選択して用いることができる。
また、それらの重量についても、上述した本発明のリチウムイオン電池用集電体で記載したものを適宜選択して用いることができる。
高分子材料及び導電性フィラーを混合する方法としては特に限定されず、公知の混合手段を適宜選択することができる。
なお、高分子材料及び導電性フィラーを混合した後の組成物を集電体用組成物ともいう。
この集電体用組成物を、公知のフィルム成形機に通して延伸圧延することにより、高分子材料と導電性フィラーとを含む集電体用シートを作製することができる。
(シリコーンオイル)
シリコーンオイルは、上述した本発明のリチウムイオン電池用集電体で記載したものを適宜選択して用いることができる。
また、シリコーンオイルの重量についても、上述した本発明のリチウムイオン電池用集電体で記載したものを適宜選択して用いることができる。
集電体用シートに、シリコーンオイルを塗布又は含浸させる方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
集電体用シート上にシリコーンオイルを数滴垂らした後、吸湿性シート(例えば、キムタオル等)でシリコーンオイルを延ばして(拡げて)静置する。十分に(数分程度)静置した後、新しい吸湿性シートでシリコーンオイルを拭き取ればよい。
シリコーンオイルの重量割合が上記範囲となるまで上述した操作を繰り返せばよい。
集電体用シートに対して、シリコーンオイルを塗布又は含浸することにより、リチウムイオン電池用集電体を作製することができる。
<リチウムイオン電池>
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、公知のリチウムイオン電池に適用することができる。
すなわち、正極活物質、負極活物質、電解液及びセパレータ等の材料としては、公知の材料を適宜選択して使用することができる。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
(シリコーンオイル)
後述する実施例、及び、比較例で用いたシリコーンオイルは以下の通りである。
シリコーンオイル1(商品名「KF-96L-5cs」、信越化学工業株式会社製、粘度:5mPa・s)
シリコーンオイル2(商品名「KF-96-10cs」、信越化学工業株式会社製、粘度:10mPa・s)
シリコーンオイル3(商品名「KF-96-100cs」、信越化学工業株式会社製、粘度:100mPa・s)
シリコーンオイル4(商品名「KF-96-500cs」、信越化学工業株式会社製、粘度:500mPa・s)
シリコーンオイル5(商品名「KF-96-1,000cs」、信越化学工業株式会社製、粘度:1000mPa・s)
シリコーンオイル6(商品名「KF-96-5,000cs」、信越化学工業株式会社製、粘度:5000mPa・s)
シリコーンオイル7(商品名「KF-96-2cs」、信越化学工業株式会社製、粘度:2mPa・s)
シリコーンオイル8(商品名「KF-96-6,000cs」、信越化学工業株式会社製、粘度:6000mPa・s)
なお、上記シリコーンオイルの粘度は、ASTM D 445-46Tに基づいてウッベローデ粘度計により測定した25℃における粘度である。
(実施例1)
[リチウムイオン電池用集電体の作製]
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー(株)製]70部、カーボンナノチューブ[商品名「FloTube9000」、CNano社製]25部及び分散剤[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]5部を200℃、200rpmの条件で溶融混練して集電体用組成物を得た。
その後、集電体用組成物をTダイ押出しフィルム成形機に通して、それを延伸圧延することで、膜厚100μmの集電体用シートを作製した。
得られた集電体用シート上にシリコーンオイル1を数滴垂らした後、吸湿性シート(商品名「キムタオル」、日本製紙クレシア社製)で上記シリコーンオイルを延ばして静置した。静置した後、新しい吸湿性シートで上記シリコーンオイルを拭き取った。この操作を後述する表1に記載のシリコーンオイルの重量割合となるまで繰り返して、リチウムイオン電池用集電体を作製した。
なお、上記シリコーンオイルの重量割合を本願明細書の記載の方法により算出したところ、0.25重量%であった。
(実施例2~6)
シリコーンオイルの種類及び重量割合を表1に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池用集電体を作製した。
(比較例1)
集電体用組成物に、シリコーンオイルを塗布又は含浸させなかったこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池用集電体を作製した。
(比較例2及び3)
シリコーンオイルの種類及び重量割合を表2に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池用集電体を作製した。
なお、比較例2では、シリコーンオイル7の粘度が低く揮発してしまったため、シリコーンオイルの重量割合が0重量%と表2に記載した。
(比較例4)
シリコーンオイルに替えてフッ素樹脂(製品名「FS-1610C-0.5」、株式会社フロロテクノロジー社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池用集電体を作製した。
なお、表2では、シリコーンオイルの種類の列に「フッ素」と記載した。
<貫通抵抗値の測定>
実施例1~6及び比較例1~4で作製したリチウムイオン電池用集電体をΦ15mmに打ち抜き、電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]及び抵抗計[RM3548、HIOKI製]を用いて各リチウムイオン電池用集電体の貫通抵抗値を測定した。
電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態でのリチウムイオン電池用集電体の抵抗値を測定し、2.16kgの荷重をかけてから60秒後の値をそのリチウムイオン電池用集電体の抵抗値とした。
下記の式に示すように、抵抗測定時の冶具の接触表面の面積(1.77cm)をかけた値を貫通抵抗値(Ω・cm)とした。
貫通抵抗値(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×1.77(cm
<酸化電流量の測定>
(耐電位試験用コインセルの作製)
2032型コインセルの負極缶にガスケット、φ16mmに裁断したLi箔、φ17mmに裁断したセパレータ(厚さ25μmのポリプロピレン製)を順に重ね、電解液を100μL添加した。その上にφ15mmに裁断した実施例1~6及び比較例1~4で作製したリチウムイオン電池用集電体を乗せ、さらにカーボンコートアルミ[昭和電工(株)製、SDX]、スペーサー(厚さ500μm)を2つ、皿バネ、正極缶を順に重ねて封をし、評価用のコインセルを作製した。
なお、電解液として、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiN(FSO(LiFSI)を2mol/Lの割合で溶解させた溶液を準備した。
(耐電位試験評価)
充放電測定装置「HJ1001SM8A」[北斗電工製]を用いて、評価用コインセルを電圧4.2Vまで充電し、そのまま200時間電圧をかけた状態での発生電流を計測した。本試験での結果は、4.2Vの電圧をかけ続けた状態で流れた電流量の総和としている。
なお、酸化電流量が少ないと、リチウムイオン電池用集電体由来の容量ロスを低減することができ、長期間リチウムイオン電池を使用した際の損耗を軽減することができる。
<評価用リチウムイオン電池の作製>
実施例1~6及び比較例1~4で作製したリチウムイオン電池用集電体に正極活物質スラリーを塗工したものを正極とし、同様に銅箔(古川電工製)に負極活物質スラリーを塗工したものを負極とした。
ここで得られた正極と負極を枠材付セパレータを介して貼り合わせ、評価用リチウムイオン電池1~6及び比較用リチウムイオン電池1~4を作製した。
以下にそのプロセスを詳しく示す。
<正極の作製>
[被覆用高分子化合物とその溶液の作製]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸ブチル20.0部、アクリル酸55.0部、メタクリル酸メチル22.0部、アリルスルホン酸ナトリウム3部及びDMF20部を配合したモノマー配合液と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.4部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、80℃に昇温し反応を5時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行ってDMFを留去し、被覆用高分子化合物を得た。
[被覆正極活物質の作製]
正極活物質粉末(LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末、体積平均粒子径4μm)100部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、上記被覆用高分子化合物をイソプロパノールに1.0重量%の濃度で溶解して得られた被覆用高分子化合物溶液11.2部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電剤としてアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]6.2部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆正極活物質を得た。
[リチウムイオン電池の正極の作製]
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiN(FSO(LiFSI)を2mol/Lの割合で溶解させて作製したリチウムイオン電池用電解液42部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]4.2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで7分間混合し、続いて上記電解液30部と上記被覆正極活物質206部を追加した後、更にあわとり練太郎により2000rpmで1.5分間混合し、上記電解液20部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、上記電解液2.3部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1.5分間混合して、正極活物質スラリーを作製した。
得られた正極活物質スラリーをそれぞれ実施例1~6及び比較例1~4で作製したリチウムイオン電池用集電体に塗布し、5MPaの圧力で約10秒プレスし、リチウムイオン電池用正極(58mm×42mm)を作製した。
<負極の作製>
[被覆用高分子化合物とその溶液の作製]
上記<正極の作製>において用いた被覆用高分子化合物とその溶液を作製した。
[被覆負極活物質の作製]
炭素系材料である難黒鉛化性炭素粉末(体積平均粒子径20μm)100部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、上記被覆用高分子化合物をイソプロパノールに19.8重量%の濃度で溶解して得られた被覆用高分子化合物溶液9.2部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電剤であるアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]11.3部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆負極活物質を得た。
[リチウムイオン電池の負極の作製]
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)に上記電解液20部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで7分間混合し、続いて上記電解液50部と上記被覆負極活物質98部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで1.5分間混合し、上記電解液25部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液50部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1.5分間混合して、負極活物質スラリーを作製した。
得られた負極活物質スラリーをそれぞれ銅箔[古河電工(株)製]の片面に塗布し、5MPaの圧力で約10秒プレスし、リチウムイオン電池用負極(62mm×46mm)を作製した。
[セパレータ本体の製造]
平板状のセルガード2500(PP製、厚さ25μm)を30mm×30mmの正方形に切り出して、セパレータ本体とした。
[枠状部材の作製]
シール層となる低融点ポリエチレン(PE)からなる積層フィルムを延伸して厚さ25μmの延伸フィルム(低融点PE延伸フィルム)を準備した。その後、耐熱性環状支持部材となるポリエチレンナフタレート(帝人社製、PEN)からなる厚さ250μmのフィルムと接着性ポリオレフィン系樹脂フィルム(三井化学社製、アドマーVE300、厚さ50μm)とを加熱ロールまたはラミネート機により接着して積層体を準備した。その後、積層体を66mm×50mmの長方形に切断し、さらに、中央のφ23mmの領域を打ち抜くことにより、PENからなる耐熱性環状支持部材(PEN層)と低融点PE延伸フィルムからなるシール層(低融点PE層)とが積層され、長方形の4辺における環状の積層体(枠状部材)を得た。
[セパレータ本体と枠状部材との接合]
枠状部材の外形寸法に基づく重心とセパレータ本体の外形寸法に基づく重心が重なるように、かつ、各枠状部材のPEN層がそれぞれセパレータ本体と接触するように、セパレータ本体の両面に枠状部材を貼り合わせ、インパルスシーラーを用いて接着することにより、セパレータ本体の外周に沿って枠状部材が環状に配置されたリチウムイオン電池用セパレータを得た。
なお、正極集電体と接触する側のシール層(低融点PE層)を第1シール層、負極集電体と接触する側のシール層(低融点PE層)を第2シール層とする。
PEN層は、外周から幅0.5mmの部分では互いに接触しているが、その内側の幅1.5mmの部分ではセパレータ本体を介して対向している。
[評価用リチウムイオン電池の作製]
負極に予めセパレータを上記電解液で湿らせた枠材付セパレータを乗せ(このときの負極に乗せる面は、セパレータが枠材に貼り合わされている面と逆の面)、この負極と枠材付セパレータが一体化したものと実施例1~6及び比較例1~4に係るリチウムイオン電池用正極を重ね合わせた。重ね合わせた後に3辺を加熱シーラーにて長辺、短辺、長辺の順でシールした。最後の1辺は、トスパック(TOSEI製)を用いてセル内を真空にし、短辺をシールした。このとき得られたセルをアルミラミセル(正極:カーボンコートアルミ、負極:銅箔)に入れて、評価用リチウムイオン電池1~6及び比較用リチウムイオン電池1~4を作製した。
<リチウムイオン電池の充放電試験>
45℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法により評価用リチウムイオン電池1~6及び比較用リチウムイオン電池1~4につき充放電試験を行った。
定電流定電圧方式(0.1C)で4.2Vまで充電した後、10分間の休止後、定電流方式(0.1C)で2.6Vまで放電した。
<液滲みの評価>
評価用リチウムイオン電池1~6、比較用リチウムイオン電池1~4について、上記充放電試験後のセルのリチウムイオン電池用集電体の外側に、液滴等のセル内部から浸透した液滲みがないか目視で確認し、以下の基準で判定した。
〇:電解液由来による液滴がない
△:液滴がわずかにみられる
×:電解液由来による液滴が滲み出ていた
Figure 2023080964000001
Figure 2023080964000002
表1及び2に示した通り、高分子材料と、導電性フィラーと、シリコーンオイルとを含み、シリコーンオイルの重量割合が0.01~1.00重量%とし、シリコーンオイルの粘度が5~5000mPa・sとすることにより、電解液の液滲みを防止することができ、かつ、貫通抵抗値が高くなりにくいリチウムイオン電池用集電体が得られることが確認された。
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、特に、定置用電源、携帯電話、パーソナルコンピューター及びハイブリッド自動車、電気自動車用に用いられるリチウムイオン電池用等の集電体として有用である。


Claims (4)

  1. 高分子材料と、導電性フィラーと、シリコーンオイルとを含み、
    前記シリコーンオイルの重量割合が、前記リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として0.01~1.00重量%であり、
    前記シリコーンオイルのASTM D 445-46Tに基づいてウッベローデ粘度計により測定した25℃における粘度が、5~5000mPa・sである
    リチウムイオン電池用集電体。
  2. 前記シリコーンオイルの重量割合が、前記リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として0.05~0.30重量%である請求項1に記載のリチウムイオン電池用集電体。
  3. 前記シリコーンオイルのASTM D 445-46Tに基づいてウッベローデ粘度計により測定した25℃における粘度が、100~1000mPa・sである請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用集電体。
  4. 高分子材料と導電性フィラーとを含む集電体用シートに、
    ASTM D 445-46Tに基づいてウッベローデ粘度計により測定した25℃における粘度が、5~5000mPa・sであるシリコーンオイルを、前記リチウムイオン電池用集電体の重量を基準として0.01~1.00重量%の重量割合となるように塗布又は含浸させる工程を有するリチウムイオン電池用集電体の製造方法。


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