JP2023178272A - リチウムイオン電池用集電体、リチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池用集電体の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン電池用集電体、リチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池用集電体の製造方法 Download PDF

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智史 山下
Tomofumi Yamashita
靖泰 都藤
Yasuhiro Tsudo
英明 堀江
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Abstract

【課題】電解液の液滲みを防止することができるリチウムイオン電池用集電体を提供する。【解決手段】高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる樹脂集電体基板と、上記樹脂集電体基板の表面の少なくとも一方に設けられた撥水層と、を有することを特徴とするリチウムイオン電池用集電体。【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウムイオン電池用集電体、リチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池用集電体の製造方法に関する。
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力密度が達成できる二次電池として、近年様々な用途に多用されている。一般的なリチウムイオン電池は、集電体の一面に正極活物質層及び負極活物質層をそれぞれ設けた後に、活物質層間にセパレータを挾んでこれら正極活物質と負極活物質を積層することで略平板状のリチウム二次単電池を製造し、この単電池を複数層積層して構成される。
このような、単電池を複数層積層してなるリチウムイオン電池において、集電体として、導電性フィラーである金属粉末、バインダ(樹脂)及び溶剤を含む集電体金属ペーストを加熱成形した樹脂集電体を用いたものが提案されている(特許文献1参照)。
特開2010-62081号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたような樹脂集電体を用いる場合、導電性フィラーを介して電解液の液滲みが生じるといった課題があった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、電解液の液滲みを防止することができるリチウムイオン電池用集電体及びその製造方法、並びに、電解液の液滲みを防止することができるリチウムイオン電池用電極を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる樹脂集電体基板と、上記樹脂集電体基板の表面の少なくとも一方に設けられた撥水層と、を有することを特徴とするリチウムイオン電池用集電体、本発明のリチウムイオン電池用集電体と、上記リチウムイオン電池用集電体の一方の表面に配置された電極組成物層とを有し、上記撥水層が、上記電極組成物層と隣接していることを特徴とするリチウムイオン電池用電極、及び、高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる樹脂集電体基板の表面の少なくとも一方に樹脂溶液を塗布する塗布工程と、上記樹脂集電体基板の上記表面に塗布された上記樹脂溶液を脱溶剤して撥水層を形成する撥水層形成工程とを有することを特徴とするリチウムイオン電池用集電体の製造方法に関する。
本発明のリチウムイオン電池用集電体及びリチウムイオン電池用電極は、電解液の液滲みを防止することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
[リチウムイオン電池用集電体]
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる樹脂集電体基板と、樹脂集電体基板の表面の少なくとも一方に設けられた撥水層と、を有することを特徴とする。
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、電極組成物と接触させて使用する。このとき、電極組成物と接触する側の表面に、撥水層が設けられていることが好ましい。
[樹脂集電体基板]
樹脂集電体基板は、高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる。
高分子材料としては、特に制限はなく、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリオレフィン[ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、及びポリシクロオレフィン(PCO)等]が挙げられる。より好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)が挙げられる。
また、これらのポリオレフィン樹脂の変性物(以下、変性ポリオレフィンという)又は混合物であってもよい。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、以下のものが市場から入手できる。
PE:「ノバテックLL UE320」「ノバテックLL UJ960」いずれも日本ポリエチレン(株)製
PP:「サンアロマーPM854X」「サンアロマーPC684S」「サンアロマーPL500A」「サンアロマーPC630S」「サンアロマーPC630A」「サンアロマーPC900A」「サンアロマーPB522M」「クオリアCM688A」いずれもサンアロマー(株)製、「プライムポリマーJ-2000GP」(株)プライムポリマー製、「ウィンテックWFX4T」日本ポリプロ(株)製
PMP:「TPX」三井化学(株)製
変性ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの共重合体に極性官能基を導入したものが挙げられ、極性官能基としては、カルボキシル基、1,3-ジオキソ-2-オキサプロピレン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基及びイミド基等が挙げられる。
ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの共重合体に極性官能基を導入した変性ポリオレフィンの例としては、三井化学(株)製アドマーシリーズ等が市販されている。
ポリオレフィン樹脂以外の樹脂としては、スチレンクロロエチレン、トリクロロエチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-メチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ピロメリット酸(無水物)、2-クロロ-1,4-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、テレフタロイルクロライド、2,6-ジメチルフェニレンオキサイド、スチレン、4,4-ジクロロベンゾフェノン、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル等を単量体として重合することで得られる樹脂が挙げられる。
樹脂集電体基板に占める高分子材料は、樹脂集電体基板の重量を基準として45~90重量%であることが好ましく、65~80重量%であることがより好ましい。
導電性フィラーとしては、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの材料は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましく、0.02~5μmであることがより好ましく、0.03~1μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書中において、「導電性フィラーの平均粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブ(CNT)等、いわゆるフィラー系導電性材料として実用化されている形態であってもよい。
導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電性フィラーが導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1~20μmであることが好ましい。
リチウムイオン電池用集電体の引き裂き強度を高める観点から、導電性フィラーは、アセチレンブラックであることが好ましい。
樹脂集電体基板に占める導電性フィラーの重量割合は、樹脂集電体基板の重量を基準として10~50重量%であることが好ましく、20~30重量%であることがより好ましい。
樹脂集電体基板に占める導電性フィラーの重量割合が20~30重量%であると、液滲み性の防止と貫通抵抗値の低下を両立させやすくなる。そのため、リチウムイオン電池用樹脂集電体を複数使用したリチウムイオン電池の内部抵抗の上昇を抑制することができる。
樹脂集電体基板の厚さは特に限定されるものではないが、樹脂集電体基板の厚さは、100μm以下であることが好ましく、40~80μmがより好ましい。
樹脂集電体基板の厚さが100μm以下、特に40~80μmであると、集電体としての厚さが薄く、薄膜化された集電体とすることができる。このような集電体は電池内における体積が小さいため、電池の電池容量を高くするために適している。
樹脂集電体基板は、高分子材料及び導電性フィラーの他にフィラー分散剤を含んでいてもよい。
フィラー分散剤としては、変性ポリオレフィン及び界面活性剤等を使用することができる。
フィラー分散剤としては、三洋化成工業(株)製ユーメックスシリーズ、東洋紡(株)製ハードレンシリーズ、トーヨータックシリーズ等が使用可能である。
樹脂集電体基板の一方の面で、撥水層が設けられない側の面には金属膜が設けられていてもよい。金属膜を設ける方法としてはスパッタリング、電着、めっき処理及び塗布等の手法が挙げられる。
[撥水層]
樹脂集電体基板の表面の少なくとも一方には、撥水層が設けられている。
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、樹脂集電体基板の表面の少なくとも一方に撥水層が設けられているため、電解液の液滲みを防止することができる。
樹脂集電体基板の表面に撥水層が設けられているかどうかは、樹脂集電体基板の表面のδ接触角を求めることにより確認することができる。
具体的には、撥水層を設けた後の樹脂集電体基板の表面の電解液に対する接触角(θ)と撥水層を設ける前の樹脂集電体基板の表面の電解液に対する接触角(θ)とを測定し、その差(θ-θ)をδ接触角とした際に、δ接触角が1°以上であれば、樹脂集電体基板の当該表面に撥水層が設けられていると判断する。
δ接触角は、1°~35°であることが好ましく、5°~30°であることがより好ましく、10°~25°であることがさらに好ましい。
なお、高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる樹脂集電体基板の表面の接触角(θに相当)は、通常、60°~70°程度である。
樹脂集電体基板の表面のうち、撥水層が設けられている表面の電解液に対する接触角、すなわち、撥水層の電解液に対する接触角(θ)は、75°以上であることが好ましく、80°以上であることがより好ましく、85°以上であることがさらに好ましい。また、撥水層の電解液に対する接触角(θ)は、105°以下であることが好ましく、100°以下であることがより好ましく、95°以下であることがさらに好ましい。
接触角は、例えば、協和界面化学(株)製動的接触角測定器「DMo-701」を用いて測定できる。
なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiN(FSOを2mol/Lの割合で溶解させたものを用いる。
撥水層を構成する材料は特に限定されないが、フッ素樹脂等が挙げられる。
フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン重合体、フルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体、フルオロエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
撥水層を構成する材料は、樹脂集電体基板の撥水層が設けられた表面に対して、フーリエ変換型赤外分光分析(FT-IR)を行うことにより特定することができる。
撥水層は、フッ素樹脂のほかに、ハイドロフルオロエーテル及び/又はハイドロフルオロオレフィンを含んでいてもよい。
撥水層は、樹脂集電体基板の少なくとも一方の表面の全面に設けられていることが好ましい。
撥水層は、樹脂集電体基板の一方の表面だけに設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。ただし、貫通抵抗値の低下と液滲みの防止を両立させる観点からは、撥水層は、リチウムイオン電池用集電体を構成する樹脂集電体基板の表面のうち、電極組成物と接触する側の表面だけに形成されていることが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池用集電体の貫通抵抗値は、35Ω・cm以下であることが好ましく、25Ω・cm以下であることがより好ましく、20Ω・cm以下であることがさらに好ましく、15Ω・cm以下であることが最も好ましい。
本発明のリチウムイオン電池用集電体の引き裂き強度は、40kN/m以上であることが好ましく、100kN/m以上であることがより好ましく、130kN/m以上であることがさらに好ましく、160kN/m以上であることが最も好ましい。
リチウムイオン電池用集電体の引き裂き強度は、JIS-K-6732(1996)に準拠した方法で測定することができる、リチウムイオン電池用集電体の機械方向(以下、MD方向又はMDともいう)の引き裂き強度(MD引き裂き強度ともいう)である。
[リチウムイオン電池用集電体の製造方法]
本発明のリチウムイオン電池用集電体の製造方法は、高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる樹脂集電体基板の表面の少なくとも一方に樹脂溶液を塗布する塗布工程と、樹脂集電体基板の表面に塗布された樹脂溶液を脱溶剤して撥水層を形成する撥水層形成工程とを有することを特徴とする。
[塗布工程]
塗布工程では、高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂溶液を、樹脂集電体基板の少なくとも一方の表面に塗布する。
樹脂集電体基板の表面に上記樹脂溶液を塗布する方法は特に限定されないが、ディスペンサ、ドクターブレード等を用いる方法が挙げられる。
樹脂溶液は、フッ素樹脂と、ハイドロフルオロエーテル及び/又はハイドロフルオロオレフィンとを含むことが好ましい。なお、ハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロオレフィンは、フッ素樹脂を分散させる分散媒として機能する。
樹脂溶液に占めるフッ素樹脂の割合は、0.5~15重量%であることが好ましい。
樹脂集電体基板の表面に塗布される樹脂溶液の厚みは、1~10μmであることが好ましい。
[撥水層形成工程]
撥水層形成工程では、樹脂集電体基板の表面に塗布された樹脂溶液を脱溶媒して撥水層を形成する。
脱溶媒の方法としては、例えば、加熱、減圧等の方法が挙げられる。
[リチウムイオン電池用電極]
本発明のリチウムイオン電池用電極は、本発明のリチウムイオン電池用集電体と、上記リチウムイオン電池用集電体の一方の表面に配置された電極組成物層とを有し、上記撥水層が上記電極組成物層と隣接していることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン電池用電極では、電極集電体として、本発明のリチウムイオン電池用集電体を用いている。そのため、電解液の液滲みを防止することができる。
電極組成物層は、電極活物質を含む。
電極活物質は、正極活物質であってもよく、負極活物質であってもよい。
正極活物質は、正極活物質がアクリル系樹脂等の樹脂で被覆された被覆正極活物質であってもよく、負極活物質は、負極活物質がアクリル系樹脂等の樹脂で被覆された被覆負極活物質であってもよい。
電極組成物層の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
[リチウムイオン電池]
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、公知のリチウムイオン電池に適用することができる。すなわち、正極活物質、負極活物質、電解液及びセパレータ等の材料としては、公知の材料を使用することができる。
なお、リチウムイオン電池においては、本発明のリチウムイオン電池用集電体を、正極集電体又は負極集電体のうち少なくとも一方に用いていればよい。また、正極集電体及び負極集電体の両方が本発明のリチウムイオン電池用集電体であってもよい。
また、リチウムイオン電池は、順に積層されたひと組の正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体からなる積層単位を備える単電池を複数積層してなり、複数の単電池を外装体に封入した組電池であることが好ましい。
積層単位の周囲には枠部材を有していることが好ましく、枠部材が正極枠部材と負極枠部材からなり、正極枠部材と負極枠部材でセパレータを挟むことにより、セパレータの周縁部を固定した構造であることが好ましい。
本明細書には以下の事項が開示されている。
本開示(1)は高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる樹脂集電体基板と、
前記樹脂集電体基板の表面の少なくとも一方に設けられた撥水層と、を有することを特徴とするリチウムイオン電池用集電体である。
本開示(2)は前記撥水層の電解液に対する接触角が80°以上である本開示(1)に記載のリチウムイオン電池用集電体である。
本開示(3)は前記撥水層がフッ素樹脂からなる本開示(1)又は(2)に記載のリチウムイオン電池用集電体である。
本開示(4)は前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン重合体、フルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体、フルオロエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選択される1種以上である本開示(3)に記載のリチウムイオン電池用集電体である。
本開示(5)は前記導電性フィラーの含有量の割合が、前記樹脂集電体基板の総重量に対して10~50重量%である、本開示(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せのリチウムイオン電池用集電体である。
本開示(6)は本開示(1)~(5)のいずれかとの任意の組合せのリチウムイオン電池用集電体と、前記リチウムイオン電池用集電体の一方の表面に配置された電極組成物層とを有し、
前記撥水層が、前記電極組成物層と隣接していることを特徴とするリチウムイオン電池用電極である。
本開示(7)は高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる樹脂集電体基板の表面の少なくとも一方に樹脂溶液を塗布する塗布工程と、前記樹脂集電体基板の前記表面に塗布された前記樹脂溶液を脱溶剤して撥水層を形成する撥水層形成工程とを有することを特徴とするリチウムイオン電池用集電体の製造方法である。
本開示(8)は前記樹脂溶液が、フッ素樹脂と、ハイドロフルオロエーテル及び/又はハイドロフルオロオレフィンとを含む本開示(7)に記載のリチウムイオン電池用集電体の製造方法である。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
(実施例1)
<樹脂集電体基板の作製>
2軸押出機にて、高分子材料としてのポリプロピレン樹脂90部、導電性フィラーとしてのアセチレンブラック5部、フィラー分散剤[商品名「ユーメックス1001(酸変性ポリプロピレン)」、三洋化成工業(株)製]5部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して樹脂集電体基板用組成物を得た。
得られた樹脂集電体基板用組成物をTダイから押し出し、50℃に温調した冷却ロールで圧延することで、樹脂集電体基板を得た。得られた樹脂集電体基板の厚さは50μmであった。
なお、ここでTダイにより押し出される方向が、MD(Machine Direction)となり、MDに直交する方向がTD(Transverse Direction)となる。
<塗布工程>
フッ素樹脂であるフルオロエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体[(株)フロロテクノロジー製フロロサーフ(登録商標)FS-1610C-2.0]10部と、溶媒であるハイドロフルオロエーテル90部とを混合して、樹脂溶液を作製した。
得られた樹脂溶液を、上記樹脂集電体基板の表面にドクターブレードを用いて厚さ1μmで塗布した。
その後、減圧環境下で脱溶媒し、樹脂集電体基板の一方の表面だけに撥水層Aを形成し、実施例1に係るリチウムイオン電池用集電体1を得た。
作製された撥水層Aの厚みは確認できなかったが、リチウムイオン電池用集電体1の表面のうち、撥水層が形成された表面のδ接触角を測定したところ、15°であったことから、撥水層が形成されていることを確認した。
<評価用リチウムイオン電池の作製>
実施例1で作製したリチウムイオン電池用集電体1に正極活物質スラリーを塗工したものを正極とし、同様に銅箔[古川電気工業(株)製]に負極活物質スラリーを塗工したものを負極とした。
ここで得られた正極と負極をセパレータを介して貼り合わせ、評価用リチウムイオン電池1を作製した。
以下にそのプロセスを詳しく示す。
<正極の作製>
[被覆用高分子化合物とその溶液の作製]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸ブチル20.0部、アクリル酸55.0部、メタクリル酸メチル22.0部、アリルスルホン酸ナトリウム3部及びDMF20部を配合したモノマー配合液と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.4部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、80℃に昇温し反応を5時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行ってDMFを留去し、被覆用高分子化合物を得た。
[被覆正極活物質の作製]
正極活物質粉末(LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末、体積平均粒子径4μm)100部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、上記被覆用高分子化合物をイソプロパノールに1.0重量%の濃度で溶解して得られた被覆用高分子化合物溶液11.2部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電剤としてアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]6.2部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆正極活物質を得た。
[リチウムイオン電池の正極の作製]
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiN(FSO(LiFSI)を2mol/Lの割合で溶解させて作製したリチウムイオン電池用電解液42部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]4.2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで7分間混合し、続いて上記電解液30部と上記被覆正極活物質206部を追加した後、更にあわとり練太郎により2000rpmで1.5分間混合し、上記電解液20部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、上記電解液2.3部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1.5分間混合して、正極活物質スラリーを作製した。
得られた正極活物質スラリーを実施例1で作製したリチウムイオン電池用集電体1に塗布し、5MPaの圧力で約10秒プレスし、リチウムイオン電池用正極(58mm×42mm)を作製した。
<負極の作製>
[被覆用高分子化合物とその溶液の作製]
上記<正極の作製>において用いた被覆用高分子化合物とその溶液を作製した。
[被覆負極活物質の作製]
炭素系材料である難黒鉛化性炭素粉末(体積平均粒子径20μm)100部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、上記被覆用高分子化合物をイソプロパノールに19.8重量%の濃度で溶解して得られた被覆用高分子化合物溶液9.2部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電剤であるアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]11.3部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆負極活物質を得た。
[リチウムイオン電池の負極の作製]
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)に上記電解液20部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで7分間混合し、続いて上記電解液50部と上記被覆負極活物質98部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで1.5分間混合し、上記電解液25部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液50部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1.5分間混合して、負極活物質スラリーを作製した。
得られた負極活物質スラリーを銅箔[古河電工(株)製]の片面に塗布し、5MPaの圧力で約10秒プレスし、リチウムイオン電池用負極(62mm×46mm)を作製した。
[セパレータの製造]
平板状のセルガード2500(PP製、厚さ25μm)を30mm×30mmの正方形に切り出して、セパレータ本体とした。
[枠部材の作製]
低融点ポリエチレン(PE)からなる積層フィルムを延伸して厚さ25μmの延伸フィルム(低融点PE延伸フィルム)を準備した。その後、ポリエチレンナフタレート[帝人(株)製、PEN]からなる厚さ250μmのフィルムと接着性ポリオレフィン系樹 脂フィルム[三井化学(株)製、アドマーVE300、厚さ50μm]とを加熱ロールまたはラミネート機により接着して積層体を準備した。その後、積層体を66mm×50mmの長方形に切断し、さらに、中央のφ23mmの領域を打ち抜くことにより、PENからなる層(PEN層)と低融点PE延伸フィルムからなる層(低融点PE層)とが積層された、外形形状が長方形の積層体(枠部材)を得た。
[セパレータ本体と枠部材との接合]
枠部材の外形寸法に基づく重心とセパレータ本体の外形寸法に基づく重心が重なるように、かつ、各枠部材のPEN層がそれぞれセパレータ本体と接触するように、セパレータ本体の両面に枠部材を貼り合わせ、インパルスシーラーを用いて接着することにより、セパレータ本体の外周に沿って枠部材が環状に配置されたリチウムイオン電池用セパレータを得た。
なお、リチウムイオン電池とする際に正極側に配置される枠部材が正極枠部材であり、負極側に配置される枠部材が負極枠部材である。
なお、正極集電体と接触する側の層(低融点PE層)を第1シール層、負極集電体と接触する側の層(低融点PE層)を第2シール層ともいう。
PEN層は、外周から幅0.5mmの部分では互いに接触しているが、その内側の幅1.5mmの部分ではセパレータ本体を介して対向している。
[評価用リチウムイオン電池の作製]
負極上に予め上記電解液で湿らせた上記リチウムイオン電池用セパレータを乗せ、さらに上にから実施例1に係るリチウムイオン電池用正極を重ね合わせた。重ね合わせた後に3辺を加熱シーラーにて長辺、短辺、長辺の順でシールした。最後の1辺は、トスパック(TOSEI製)を用いてセル内を真空にし、短辺をシールした。このとき得られたセルをアルミラミセル(正極:カーボンコートアルミ、負極:銅箔)に入れて、評価用リチウムイオン電池1を作製した。
<リチウムイオン電池の充放電試験>
45℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法により評価用リチウムイオン電池1につき充放電試験を行った。
定電流定電圧方式(0.1C)で4.2Vまで充電した後、10分間の休止後、定電流方式(0.1C)で2.6Vまで放電する工程を1サイクルとして、これを100サイクル繰り返した。
<耐液滲み性試験>
以下の手順により、リチウムイオン電池用集電体1に対して耐液滲み性試験を行い、下記の基準で耐液滲み性を評価した。結果を表1に示す。
[耐液滲み性評価]
上記充放電試験後の評価用リチウムイオン電池1からリチウムイオン電池用集電体1を取り出し、リチウムイオン電池用集電体1の外側に、液滴等のセル内部から浸透した液滲みがないか目視で確認し、以下の基準で判定した。
○:電解液由来による液滴がない
×:電解液由来による液滴がある
<集電体の貫通抵抗値の測定>
リチウムイオン電池用集電体1を、7cm角に裁断して測定用試験片とし、電気抵抗測定器[IMC-0240型 (株)井元製作所製]及び抵抗計[RM3548 日置電機(株)製]を用いて測定用試験片の厚み方向(貫通方向)の抵抗値を測定した。具体的には、電気抵抗測定器の電極に2.16kgの荷重をかけた状態で測定用試験片の抵抗値を測定し、荷重をかけてから60秒後の値をリチウムイオン電池用集電体1の抵抗値(Ω)とした。下記式に示すように、測定した抵抗値(Ω)に、抵抗測定時の電極の接触面積(3.14cm2)を乗算した値を貫通抵抗値(Ω・cm2)とした。その結果を表1に示す。
貫通抵抗値(Ω・cm2)=抵抗値(Ω)×3.14(cm2
<MD引き裂き強度の測定>
MD引き裂き強度をJIS-K-6732に準拠した方法で測定した。具体的には、リチウムイオン電池用集電体1を、直角型引裂試験片の形状に切り出して試験片とし、試験片の軸方向と試験片のつかみ具方向とを一致させて正確に引張試験機[精密万能試験機 オートグラフ AG-X 500N (株)島津製作所製]に取り付けた。試験速度は200mm/minとして試験片の切断時の強さを測定しMD引き裂き強度とした。その結果を表1に示す。
なお、試験片を切り出す際は、試験片の軸方向が、試験片を構成する樹脂集電体基板のMDに平行となるように調整した。試験片の軸方向を樹脂集電体基板のMDに平行とすることで、試験片のつかみ具方向(試験片が引っ張られる方向)が樹脂集電体基板のMDとなり、MDにおける引き裂き強度(MD引き裂き強度)が測定できる。
Figure 2023178272000001
(実施例2~9、比較例1)
樹脂集電体基板を構成する高分子材料及び導電性フィラーの割合並びに撥水層を形成する際の樹脂溶液の厚みを表1に示すものに変更したほかは、実施例1と同様の手順で樹脂集電体基板の表面に撥水層を形成して実施例2~9及び比較例1に係るリチウムイオン電池用集電体を作製し、耐液滲み性試験、貫通抵抗値の測定、及びMD引き裂き強度の測定を行った。結果を表1に示す。なお、比較例1では、上記塗布工程及び撥水層形成工程を行わず、実施例1で作製した樹脂集電体基板をそのまま、リチウムイオン電池用集電体として用いた。
表1に示すように、撥水層が設けられた実施例1~9のリチウムイオン電池用集電体では、耐液滲み性に優れていた。一方、撥水層が設けられていない比較例1のリチウムイオン電池用集電体では、耐液滲み性が低くなっていた。
実施例3と比較例1との対比より、撥水層を設けることによってリチウムイオン電池用集電体のMD引き裂き強度が低下しないことを確認した。
実施例5の結果より、樹脂集電体基板を構成する導電性フィラーの含有量が50重量%の場合には、リチウムイオン電池用集電体のMD引き裂き強度が低下することがわかった。
実施例9の結果より、樹脂集電体基板を構成する導電性フィラーとしてCNTを用いると、貫通抵抗を大きく低下させることができるものの、MD引き裂き強度が低下してしまうことを確認した。
本発明のリチウムイオン電池用集電体は、リチウムイオン電池用の集電体として好適に使用することができる。

Claims (8)

  1. 高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる樹脂集電体基板と、
    前記樹脂集電体基板の表面の少なくとも一方に設けられた撥水層と、を有することを特徴とするリチウムイオン電池用集電体。
  2. 前記撥水層の電解液に対する接触角が80°以上である請求項1に記載のリチウムイオン電池用集電体。
  3. 前記撥水層がフッ素樹脂からなる請求項1に記載のリチウムイオン電池用集電体。
  4. 前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン重合体、フルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体、フルオロエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体からなる群から選択される1種以上である請求項3に記載のリチウムイオン電池用集電体。
  5. 前記導電性フィラーの含有量の割合が、前記樹脂集電体基板の総重量に対して10~50重量%である、請求項1又は3に記載のリチウムイオン電池用集電体。
  6. 請求項1又は3に記載のリチウムイオン電池用集電体と、前記リチウムイオン電池用集電体の一方の表面に配置された電極組成物層とを有し、
    前記撥水層が、前記電極組成物層と隣接していることを特徴とするリチウムイオン電池用電極。
  7. 高分子材料と導電性フィラーとを含む樹脂組成物からなる樹脂集電体基板の表面の少なくとも一方に樹脂溶液を塗布する塗布工程と、前記樹脂集電体基板の前記表面に塗布された前記樹脂溶液を脱溶剤して撥水層を形成する撥水層形成工程とを有することを特徴とするリチウムイオン電池用集電体の製造方法。
  8. 前記樹脂溶液が、フッ素樹脂と、ハイドロフルオロエーテル及び/又はハイドロフルオロオレフィンとを含む請求項7に記載のリチウムイオン電池用集電体の製造方法。
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