JP2019153587A - 樹脂集電体、及び、リチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
Description
このような樹脂集電体を正極用樹脂集電体として使用した場合、アセチレンブラックの表面での(酸化)分解電流により樹脂集電体が劣化して、充放電後に電解液の滲み(液滲み)が発生することがあり、液滲みを抑えたまま低抵抗化することが困難であるという問題があった。
すなわち、本発明は、導電性炭素フィラーとポリオレフィン樹脂(P)とを含む樹脂集電体であって、上記ポリオレフィン樹脂(P)は、結晶化温度が80〜96℃であるポリオレフィン樹脂と、結晶化温度が110〜140℃であるポリオレフィン樹脂との混合物であり、上記ポリオレフィン樹脂(P)の重量に対する上記結晶化温度が80〜96℃であるポリオレフィン樹脂の重量の割合が20〜80重量%であることを特徴とする樹脂集電体;本発明の樹脂集電体を備えることを特徴とするリチウムイオン電池である。
ポリオレフィン樹脂(P)が、結晶化温度が異なるポリオレフィン樹脂の混合物であることにより、ポリオレフィン樹脂(P)の結晶構造を崩し、薄膜形成時に導電性炭素フィラーがポリオレフィン樹脂(P)の結晶核として働くことによって生じる膜厚のムラ(脈動)を抑制することができると考えられる。
また、成膜時において、導電性炭素フィラーの表面にポリオレフィン樹脂(P)の結晶成分が結晶相として存在と考えられ、導電性炭素フィラーの表面で副反応(分解反応)が生じにくくなり、分解反応に伴う分解電流を抑制することもできると推測される。
結晶化温度が80〜96℃であるポリオレフィン樹脂(ポリオレフィン樹脂(p1)ともいう)としては、例えば、結晶化温度が80〜96℃であるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。その他、結晶化温度が80〜96℃であり、炭素数4〜30のα−オレフィン(1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−デセン及び1−ドデセン等)を必須構成単量体とする重合体等でもよい。これらのポリオレフィンは、1種単独でもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
ランダムポリプロピレンは、不規則に導入された少量(好ましくは4.5重量%以下)のエチレン単位を含有するエチレンとプロピレンとの共重合体である。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレンとしては、特開2001−253910号公報等に記載されたポリプロピレン等が挙げられる。酸変性ポリプロピレンは、カルボキシル基を導入したポリプロピレンであり、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸とポリプロピレンとを有機過酸化物の存在下で反応する等の公知の方法で反応して得ることができる。
ランダムポリプロピレン:「サンアロマーPC630S:結晶化温度83℃」「サンアロマーPC630A:結晶化温度96℃」「サンアロマーPB522M:結晶化温度80℃」いずれもサンアロマー(株)製、「ウィンテックWFX4T:結晶化温度86℃」」日本ポリプロ(株)製、「プライムポリマーF−744NP:結晶化温度86℃」(株)プライムポリマー製
これらのポリオレフィンの中でも、防湿特性や機械的強度の点で、結晶性が高いポリオレフィンが好ましい。
結晶性が高いポリオレフィンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。ホモポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体である。また、ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンの中にエチレンプロピレンゴム(EPR)が分散している組成物であり、ホモポリプロピレンの「海」の中にEPRを含む「島」が浮かぶ「海島構造」を有している。
高密度ポリエチレン(HDPE):「サンテックB680:結晶化温度119℃」旭化成ケミカルズ(株)製
ホモポリプロピレン:「サンアロマーPM600A:結晶化温度114℃」、「サンアロマーPL500A:結晶化温度110℃」、「サンアロマーPM900A:結晶化温度116℃」いずれもサンアロマー(株)製
ブロックポリプロピレン:「クオリアCM688A:結晶化温度120℃」、「サンアロマーPC684S:結晶化温度115℃」、「サンアロマーPM854X:結晶化温度132℃」いずれもサンアロマー(株)製
ポリオレフィン樹脂(P)の重量に対するポリオレフィン樹脂(p1)の重量の割合を20〜80重量%とすることにより、薄膜形成時に導電性炭素フィラーがポリオレフィン樹脂(P)の結晶核として働くことによって生じる膜厚のムラ(脈動)を抑制することができる。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積(m2)
=樹脂集電体1g中の導電性炭素フィラーの重量(g)×導電性炭素フィラーの比表面積(m2/g)
導電性炭素フィラーの比表面積は、「JIS Z8830 ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準じて、BET比表面積として測定した値である。
導電性炭素フィラーを2種類以上含む場合は樹脂集電体1g中に含まれるそれぞれの導電性炭素フィラーの重量にそれぞれの導電性炭素フィラーの比表面積を掛けることにより、樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積を計算することとする。
その一方で、比表面積の小さい導電性炭素フィラーを用いると樹脂集電体は比較的電気抵抗が高くなるため、必要な電気抵抗値を得るためには導電性炭素フィラーの配合量を増やす必要がある。
そして、導電性炭素フィラーの配合量を増やすと、樹脂集電体の薄膜化が困難になることがある。
樹脂集電体を薄膜化することができないと、電池内における集電体の体積が大きいことに起因して、電池容量の低下につながるために好ましくない。
比表面積の小さい導電性炭素フィラーと、比表面積の大きい導電性炭素フィラーを併用することによって、サイクル特性及び薄膜化のいずれも良化する。
一方、比表面積が大きい第2の導電性炭素フィラー(A2)は副反応の反応場にもなるので、比表面積が小さい第1の導電性炭素フィラー(A1)を使用することにより、副反応の反応場となる面積を減らし、分解電流を少なくすることができる。
すなわち、2種類の導電性炭素フィラーのそれぞれの働きにより、サイクル特性に優れ、さらに薄膜化に適した樹脂集電体を提供することができる。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積(m2)
=樹脂集電体1g中の(A1)の重量(g)×(A1)の比表面積(m2/g)+樹脂集電体1g中の(A2)の重量(g)×(A2)の比表面積(m2/g)
なお、(A1)又は(A2)を2種類以上含む場合は樹脂集電体1g中に含まれるそれぞれの導電性炭素フィラーの重量にそれぞれの導電性炭素フィラーの比表面積を掛けて計算することとする。
樹脂集電体1gに含まれる導電性炭素フィラーの総表面積が7〜10m2であると、総表面積が大きくなりすぎないため分解電流が小さく、サイクル特性が良好になる。
また、第1の導電性炭素フィラー(A1)はその比表面積が0.1m2/g以上であることが好ましい。
第1の導電性炭素フィラー(A1)の比表面積が10m2/g以下であるためには、導電性炭素フィラーの体積平均粒子径が5.0μm以上であることが好ましい。
本明細書において、導電性炭素フィラーの体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
なお、品名の後の括弧内に記載した値は、そのフィラーの比表面積及び体積平均粒子径である。
なお、品名の後の括弧内に記載した値は、そのフィラーの比表面積及び体積平均粒子径である。
その他の導電性炭素フィラーとしては、例えば、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維等のカーボンファイバー、カーボンナノファイバー並びにカーボンナノチューブ等が挙げられる。
なかでも、安全性と低い電気抵抗値を得る観点から、導電性炭素フィラーの表面を樹脂で被覆し、凝集された構造を有するものが好ましい。
なお、品名の後の括弧内に記載した値は、そのフィラーの比表面積及び平均粒子径である。「デュロビーズ K−Nanos100P」の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いて倍率18〜720倍で観察し、無作為に選んだ100個の導電性炭素フィラーの粒子径について測定し、その平均を求めたものである。
また、樹脂集電体中の第2の導電性炭素フィラー(A2)の重量割合が3〜10重量%であることが好ましい。
上記比率が3以上であると、比表面積が大きい第2の導電性炭素フィラー(A2)の比率が相対的に少ないため、第2の導電性炭素フィラー(A2)の表面での副反応の影響が少なく、サイクル特性がより良好になる。
また、上記比率が20以下であると、比表面積が小さく、比較的導電性が低い第1の導電性炭素フィラー(A1)の比率が多過ぎないため、樹脂集電体の電気抵抗値を低くするために必要なフィラーの量を減らすことができ、樹脂集電体の薄膜化がより容易になる。
上記重量割合が40重量%以上であると、樹脂集電体に含まれる導電性炭素フィラーの量が充分であるため電気抵抗値をより低くすることができる。また、上記重量割合が70重量%未満であると、樹脂集電体に含まれるポリオレフィン樹脂(P)の割合が低くなりすぎないため、樹脂集電体の成形性への影響が少なく、樹脂集電体の薄膜化により適している。
導電材料の材質としては、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]及びこれらの合金、並びにこれらの混合物が挙げられる。電気的安定性の観点から、好ましくはニッケルである。
また、導電材料として、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電材料(上記した導電材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
また、樹脂集電体に含まれる、結晶化温度が80〜96℃であるポリオレフィン樹脂(p1)の割合が6〜48重量%であることが好ましい。
樹脂集電体の膜厚が110μm以下であると、樹脂集電体としての厚さが薄く、薄膜化された樹脂集電体であるといえる。このような樹脂集電体は電池内における体積が小さいため、電池の電池容量を高くするために適している。
また、樹脂集電体の膜厚が90μm以上であると、樹脂集電体の強度が充分となるため好ましい。
<厚さ方向の電気抵抗値の測定>
3cm×10cmの短冊状に裁断した樹脂集電体を測定用試験片とし、抵抗計[RM3548、HIOKI製]を接続した電気抵抗測定器[IMC−0240型、井元製作所(株)製]の電極間に試験片を挟み、電極に2.16kgの荷重をかけながら抵抗値を測定する。加重をかけてから60秒後の値に電極と試験片との接触面積(3.14cm2)をかけた値を厚さ方向の電気抵抗値とすることができる。なお、電気抵抗測定器[IMC−0240型、井元製作所(株)製]は、JISK6378−5において厚さ方向の体積電気抵抗の測定に用いる装置に準拠した試験片を正負電極間に挟んで抵抗値の測定を行うための装置である。
まず、ポリオレフィン樹脂(P)、導電性炭素フィラー、及び、必要に応じてその他の成分を混合することにより、樹脂集電体用材料を得る。
混合の方法としては、導電性炭素フィラーのマスターバッチを得てからさらにポリオレフィン樹脂(P)と混合する方法、ポリオレフィン樹脂(P)、導電性炭素フィラー、及び、必要に応じてその他の成分のマスターバッチを用いる方法、及び、全ての原料を一括して混合する方法等があり、その混合にはペレット状又は粉体状の成分を適切な公知の混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー及びロール等を用いることができる。
正極用樹脂集電体として用いることもでき、負極用樹脂集電体として用いることもできるが、リチウムイオン電池の正極用樹脂集電体として用いることが好ましい。
バイポーラ電極とは、リチウムイオン電池用電極であって、一つの集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成された電極を意味する。
集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極の少なくとも一方の面が本発明の樹脂集電体であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池が本発明の樹脂集電体を正極用樹脂集電体として備える場合、本発明のリチウムイオン電池は、上述した本発明の樹脂集電体と、樹脂集電体の表面に形成された正極活物質層とを備える。正極活物質層は、正極活物質とともに、必要に応じてバインダ、導電助剤等の添加剤を含む。
ポリオレフィン樹脂(p1)
p1−1:ランダムポリプロピレン[結晶化温度80℃、商品名「サンアロマーPB522M」、サンアロマー(株)製]
p1−2:ランダムポリプロピレン[結晶化温度96℃、商品名「サンアロマーPC630A」、サンアロマー(株)製]
ポリオレフィン樹脂(p2)
p2−1:ブロックポリプロピレン[結晶化温度132℃、商品名「サンアロマーPM854X」、サンアロマー(株)製]
p2−2:ホモポリプロピレン[結晶化温度114℃、商品名「サンアロマーPM600A」、サンアロマー(株)製]
p2−3:高密度ポリエチレン[結晶化温度119℃、商品名「サンテックB680」、旭化成ケミカルズ(株)製]
なお、ポリオレフィン樹脂の結晶化温度は、示差走査熱量(DSC)測定にて10℃/分で200℃までポリオレフィン樹脂を昇温し、昇温後10℃/分で降温して結晶化ピークを検出し、そのときの温度を結晶化温度とした。
第1の導電性炭素フィラー(A1)
黒鉛粒子[比表面積1.8m2/g、体積平均粒子径12μm、商品名「SNG−WXA1」、JFEケミカル(株)製]
第2の導電性炭素フィラー(A2)
アセチレンブラック1[比表面積65m2/g、平均一次粒子径45nm、商品名「エンサコ250G」、Imerys(株)製]
アセチレンブラック2[比表面積69m2/g、平均一次粒子径35nm、商品名「デンカブラック」、デンカ(株)製]
アセチレンブラック3[比表面積39m2/g、平均一次粒子径48nm、商品名「デンカブラックLi−400」、デンカ(株)製]
アセチレンブラック4[比表面積32m2/g、平均一次粒子径55nm、商品名「♯3030B」、三菱化学(株)製]
その他の導電性フィラー
カーボンナノチューブ[比表面積213m2/g、平均粒子径0.5mm〜2.0m、商品名「デュロビーズ K−Nanos100P」、Kumho製]
なお、各導電性炭素フィラーの比表面積は、「JIS Z8830 ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準じて、BET比表面積として測定した値である。
分散剤
[商品名「ユーメックス1001(酸変性ポリプロピレン)」、三洋化成工業(株)製]
2軸押出機にて、p1−1(ランダムポリプロピレン)10部、p2−1(ブロックポリプロピレン)25部、p2−3(高密度ポリエチレン)10部、黒鉛粒子「SNG−WXA1」40部、アセチレンブラック1「エンサコ250G」10部及び分散剤5部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して樹脂集電体用材料を得た。
得られた樹脂集電体用材料をTダイから押し出し、50℃に温調した冷却ロールで圧延することで、樹脂集電体を得た。
ポリオレフィン樹脂(P)の種類及び配合量、並びに、第1の導電性炭素フィラー及び第2の導電性炭素フィラーの種類及び配合量を表1に示すように変更して、実施例1と同様の方法により樹脂集電体用材料及び樹脂集電体を得た。
実施例1〜9及び比較例1〜2で得られた樹脂集電体に正極活物質スラリーを塗工したものを正極とし、同様に銅箔(古川電工製)に負極活物質スラリーを塗工したものを負極とした。ここで得られた正極と負極を枠材付セパレータを介して貼り合わせ、評価用リチウムイオン電池1〜9及び比較用リチウムイオン電池1〜2を作製した。
以下にそのプロセスを詳しく示す。
[被覆用高分子化合物とその溶液の作製]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸ブチル20.0部、アクリル酸55.0部、メタクリル酸メチル22.0部、アリルスルホン酸ナトリウム3部及びDMF20部を配合したモノマー配合液と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、80℃に昇温し反応を5時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行ってDMFを留去し、被覆用高分子化合物を得た。
正極活物質粉末(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末、体積平均粒子径4μm)100部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、上記被覆用高分子化合物をイソプロパノールに1.0重量%の濃度で溶解して得られた被覆用高分子化合物溶液11.2部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電剤としてアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]6.2部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆正極活物質を得た。
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiPF6を1mol/Lの割合で溶解させて作製したリチウムイオン電池用電解液42部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S−243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]4.2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで7分間混合し、続いて上記電解液30部と上記被覆正極活物質206部を追加した後、更にあわとり練太郎により2000rpmで1.5分間混合し、上記電解液20部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、上記電解液2.3部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1.5分間混合して、正極活物質スラリーを作製した。得られた正極活物質スラリーをそれぞれ実施例1〜9及び比較例1〜2の樹脂集電体に塗布し、5MPaの圧力で約10秒プレスし、実施例1〜9及び比較例1〜2に係るリチウムイオン電池用正極(58mm×42mm)を作製した。
[被覆用高分子化合物とその溶液の作製]
上記<正極の作製>において用いた被覆用高分子化合物とその溶液を作製した。
炭素系材料である難黒鉛化性炭素粉末(体積平均粒子径20μm)100部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、上記被覆用高分子化合物をイソプロパノールに19.8重量%の濃度で溶解して得られた被覆用高分子化合物溶液9.2部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電剤であるアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]11.3部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、被覆負極活物質を得た。
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiPF6を1mol/Lの割合で溶解させて作製したリチウムイオン電池用電解液20部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S−243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで7分間混合し、続いて上記電解液50部と上記被覆負極活物質98部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで1.5分間混合し、上記電解液25部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液50部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1.5分間混合して、負極活物質スラリーを作製した。
得られた負極活物質スラリーをそれぞれ銅箔[古河電工(株)製]の片面に塗布し、5MPaの圧力で約10秒プレスし、リチウムイオン電池用負極(62mm×46mm)を作製した。
平板状のセルガード2500(PP製、厚さ25μm)を30mm×30mmの正方形に切り出して、セパレータ本体とした。
シール層となる低融点ポリエチレン(PE)からなる積層フィルムを延伸して厚さ25μmの延伸フィルム(低融点PE延伸フィルム)を準備した。その後、耐熱性環状支持部材となるポリエチレンナフタレート(帝人社製、PEN)からなる厚さ250μmのフィルムと接着性ポリオレフィン系樹脂フィルム(三井化学社製、アドマーVE300、厚さ50μm)とを加熱ロールまたはラミネート機により接着して積層体を準備した。その後、積層体を66mm×50mmの長方形に切断し、さらに、中央のφ23mmの領域を打ち抜くことにより、PENからなる耐熱性環状支持部材(PEN層)と低融点PE延伸フィルムからなるシール層(低融点PE層)とが積層され、長方形の4辺における環状の積層体(枠状部材)を得た。
枠状部材の外形寸法に基づく重心とセパレータ本体の外形寸法に基づく重心が重なるように、かつ、各枠状部材のPEN層がそれぞれセパレータ本体と接触するように、セパレータ本体の両面に枠状部材を貼り合わせ、インパルスシーラーを用いて接着することにより、セパレータ本体の外周に沿って枠状部材が環状に配置されたリチウムイオン電池用セパレータを得た。
なお、正極集電体と接触する側のシール層(低融点PE層)を第1シール層、負極集電体と接触する側のシール層(低融点PE層)を第2シール層とする。
PEN層は、外周から幅0.5mmの部分では互いに接触しているが、その内側の幅1.5mmの部分ではセパレータ本体を介して対向している。
負極に予めセパレータを電解液で湿らせた枠材付セパレータを乗せ(このときの負極に乗せる面は、セパレータが枠材に貼り合わされている面と逆の面)、この負極と枠材付セパレータが一体化したものと実施例1〜9及び比較例1〜2に係るリチウムイオン電池用正極を重ね合わせた。重ね合わせた後に3辺を加熱シーラーにて長辺、短辺、長辺の順でシールした。最後の1辺は、トスパック(TOSEI製)を用いてセル内を真空にし、短辺をシールした。このとき得られたセルをアルミラミセル(正極:カーボンコートアルミ、負極:銅箔)に入れて、評価用リチウムイオン電池1〜9及び比較用リチウムイオン電池1〜2を作製した。
45℃下、充放電測定装置「HJ−SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法により評価用リチウムイオン電池1〜9及び比較用リチウムイオン電池1〜2につき充放電試験を行った。
定電流定電圧方式(0.1C)で4.2Vまで充電した後、10分間の休止後、定電流方式(0.1C)で2.6Vまで放電した。
評価用リチウムイオン電池1〜9、比較用リチウムイオン電池1〜2について、上記充放電試験後のセルの樹脂集電体の外側に、液滴等のセル内部から浸透した液滲みがないか目視で確認した。電解液由来による液滴がなければ液滲み判定を無しとし、液滴が滲み出ていたら液滲み判定をありと判断した。
樹脂集電体を3cm×10cm程度の短冊に裁断し、電気抵抗測定器[IMC−0240型、井元製作所(株)製]及び抵抗計[RM3548、HIOKI製]を用いて各樹脂集電体の貫通抵抗値を測定した。
電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態での樹脂集電体の抵抗値を測定し、2.16kgの荷重をかけてから60秒後の値をその樹脂集電体の抵抗値とした。下記の式に示すように、抵抗測定時の冶具の接触表面の面積(3.14cm2)をかけた値を貫通抵抗値(Ω・cm2)とした。
貫通抵抗値(Ω・cm2)=抵抗値(Ω)×3.14(cm2)
(耐電位試験用コインセルの作製)
2032型コインセルの負極缶にガスケット、φ16mmに裁断したLi箔、φ17mmに裁断したセパレータ(厚さ25μmのポリプロピレン製)を順に重ね、電解液を100μL添加した。その上にφ15mmに裁断した樹脂集電体を乗せ、さらにカーボンコートアルミ[昭和電工(株)製、SDX]、スペーサー(厚さ500μm)を2つ、皿バネ、正極缶を順に重ねて封をし、評価用のコインセルを作製した。なお、電解液として、1M LiPF6をエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒(体積比1:1)に溶解した溶液を準備した。
充放電測定装置「HJ1001SM8A」[北斗電工製]を用いて、評価用コインセルを電圧4.2Vまで充電し、そのまま200時間電圧をかけた状態での発生電流を計測した。本試験での結果は、4.2Vの電圧をかけ続けた状態で流れた電流量の総和としている。
なお、酸化電流量が少ないと電池の構成部材として用いた際の部材由来の容量ロスが低減でき、優れた長期の信頼性を有することを示す。
実施例1〜9及び比較例1〜2と同様の方法により得られた樹脂集電体用材料をTダイから押し出し、50℃に温調した冷却ロールで厚みが100μmになるように引き取り、評価用樹脂集電体1〜9及び比較用樹脂集電体1〜2を作製した。
評価用樹脂集電体1〜9及び比較用樹脂集電体1〜2について、1.00m2あたりの膜厚のバラつきが20μm以内である場合を脈動無しと判断し、バラつきが20μmを超える場合を脈動有りと判断した。膜厚のバラつきは、フィルム1.00m2の任意の10点における膜厚を膜厚計(商品名「デジマチックシックネスゲージ」ミツトヨ製)で測定し、それらの測定値の最大値と最小値の差をバラつきの値とした。
なお、実施例5〜8では、第2の導電性炭素フィラー(A2)の重量比率が大きいために、酸化電流量がやや高かった。特に、樹脂集電体1gに含まれるフィラーの総表面積が10m2を超えていた実施例7、及び、導電性炭素フィラー(A2)のみを用いた実施例8では、貫通抵抗値がやや高かった。
これに対して、結晶化温度が80〜96℃であるポリオレフィン樹脂(p1)を含まないポリオレフィン樹脂(P)を用いた比較例1では、薄膜形成時に導電性炭素フィラーがポリオレフィン樹脂(P)の結晶核として働くことによって膜厚のムラ(脈動)が発生し、ポリオレフィン樹脂(P)の重量に対するポリオレフィン樹脂(p1)の重量の割合が80重量%を超えていた比較例2では、貫通抵抗値がとくに高くなっており、優れた低抵抗性と成膜性とを両立するのが困難であることが確認された。
Claims (7)
- 導電性炭素フィラーとポリオレフィン樹脂(P)とを含む樹脂集電体であって、
前記ポリオレフィン樹脂(P)は、結晶化温度が80〜96℃であるポリオレフィン樹脂と、結晶化温度が110〜140℃であるポリオレフィン樹脂との混合物であり、
前記ポリオレフィン樹脂(P)の重量に対する前記結晶化温度が80〜96℃であるポリオレフィン樹脂の重量の割合が20〜80重量%であることを特徴とする樹脂集電体。 - 前記樹脂集電体1gに含まれる前記導電性炭素フィラーの総表面積が7〜10m2である請求項1に記載の樹脂集電体。
- 前記導電性炭素フィラーが、
比表面積が10m2/g以下である第1の導電性炭素フィラー(A1)と、
比表面積が30〜70m2/gである第2の導電性炭素フィラー(A2)とを含む請求項1又は2に記載の樹脂集電体。 - 樹脂集電体の膜厚が90〜110μmである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂集電体。
- リチウムイオン電池の正極用樹脂集電体である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂集電体。
- リチウムイオン電池用電極であって、集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極用である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂集電体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂集電体を備えることを特徴とするリチウムイオン電池。
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