[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に関する包装容器10の構成を模式的に示す、蓋部を閉じたときの斜視図であり、図2は、包装容器10の構成を模式的に示す、蓋部を開いたときの斜視図である。
包装容器10は、長尺状の包装用フィルムなどを巻芯の周りにロール状に巻回してなる包装物50を引き出し可能に収容する収容箱100と、切断刃200と、を有する。
収容箱100は、包装物50を収容する本体部110、および本体部110に対して回動自在に連接された蓋部120を有する。本体部110および蓋部120は、一枚の厚紙を折り曲げて一体的に形成される。
なお、以下の説明において、「幅方向」とは、巻回された包装物の巻回軸に沿った方向であり、包装物の巻芯が伸びる方向を意味する。また、「巻回方向」とは、包装物において、幅方向に直交する方向であり、かつ、使用時に引き出される端部側から巻芯に近づく方向を意味する。また、「端部」とは、切断刃において、幅方向の端部を意味し、「外側」とは、切断刃において、歯の配列する方向における中央部側から端部側に向かう方向を意味し、「内側」とは、切断刃において、歯の配列する方向における端部側から中央部側に向かう方向を意味する。
また、以下の説明において、「上端」とは、前板114および後板116の、底板118とは反対側の端部を意味し、「両端」とは、前板114が正面となるように包装容器100を配置したときの、包装容器を構成する各部材の左右の端部を意味する。
本体部110は、一対の端板112aおよび112b、前板114および後板116、ならびに底板118を有する。本体部110は、展開図において底板118の周囲に配置された端板112aおよび112b、ならびに前板114および後板116を、底板118に対して同じ方向に屈折させて形成した、略直方体状の箱体である。本体部110は、底板118に対向する上面側に、開口面119を有する。
蓋部120は、後板116の上端から延出した延出部を、前板114側に屈折させることにより、後板116との連接部128に沿って回動可能に後板116に連接される。蓋部120は、蓋板122、掩蓋片124、ならびに一対の側蓋片126aおよび126b、を有する。蓋部120は、展開図において蓋板122の周囲に配置された掩蓋片124ならびに側蓋片126aおよび126bを、蓋板122に対して同じ方向に屈折させて形成される。
蓋板122は、開口面119と略同じ形状および大きさを有する略長方形の板状部材であり、上記連接部128に沿って回動することにより、開口面119を開閉する。掩蓋片124は、蓋板122の前端から延出した延出部を、蓋板122が開口面119を閉じたときに底板118へと向かう側に屈折させることにより、蓋板122に連接して形成された板状部材であり、蓋板122が開口面119を閉じたときに前板114の上端側領域を覆う位置に配置される。
掩蓋片124は、蓋板122の前端のうち中央部における、前端から掩蓋片124の先端125aまでの長さが、蓋板122の前端の両端部から中央部に向かうにつれて長くなっていく形状を有する。これにより、掩蓋片124の先端125は、蓋板122が開口面119を閉じて、掩蓋片124が前板114を覆うときに底板118側を向いた、略V字状となる。たとえば、掩蓋片124は、蓋板122の前端のうち中央部における、前端から掩蓋片124の先端125aまでの長さが、前板114の短辺の長さの略3/4となり、蓋板122の前端のうち端部における、前端から掩蓋片124の先端125bまでの長さが、前板114の短辺の長さの略1/2となるような形状を有する。
切断刃200は、掩蓋片124の先端125と略同一である略V字の形状を有し、たとえば、シーラントおよび接着剤などを介して、超音波接着により、掩蓋片124のうち先端125の内面側となる位置に、先端125に沿って接着されて配置される。
包装容器10は、蓋部120が開口面119を閉じて、掩蓋片124が前板114と対向して前板114を覆った状態で、保管される。このとき、本体部110に収容された包装物50は、その先端が開口面119から引き出され、前板114に接触する。包装物50の使用者は、蓋部120をわずかに開いた状態で包装物50である包装用フィルムなどの先端を把持し、使用量だけを引き出した後、蓋部120を閉じて、切断刃200により包装物50を切断する。このとき、掩蓋片124の中央部を親指で押さえて掩蓋片124を前板114に対して押し付けながら、包装容器10を下向きに回転させることで、包装物50である包装用フィルムなどをその中央部から切断刃200により切断することができる(以下、このような切断方法を単に「中央カット」ともいう。)。あるいは、引き出された包装物50の幅方向端部を把持し、把持された上記幅方向端部を収容箱100に対して上向きに捻るか、または把持された上記幅方向端部に対応する収容箱100の幅方向端部を下向きに捻ることで、包装物50である包装用フィルムなどを上記幅方向端部から切断刃200により切断することができる(以下、このような切断方法を単に「端カット」ともいう。)。
図3は、本実施形態に関する切断刃200の模式的な構成を示す正面図である。切断刃200は、図3における切断刃200の上側領域に複数の歯が配列されており、図3における切断刃200の下側領域が掩蓋片124のうち先端125の内面側となる位置に接着されて、上記複数の歯が先端125からわずかに突出するように配置される。
切断刃200は、中央エリア210、中央エリア210の外側に配置された一対の側部エリア220、および側部エリア220の外側で切断刃200の端部に配置された一対の端部エリア230を有する。中央エリア210、側部エリア220および端部エリア230は、いずれも、複数の歯が配列されてなる。なお、本実施形態において、中央エリア210は、切断刃200の幅方向における全幅の長さの5~20%の範囲であり、側部エリア220は、中央エリア210の外側の、切断刃200の幅方向における全幅の長さの55~75%の範囲であり、端部エリア230は、側部エリア220の外側の、切断刃200の幅方向における全幅の長さの10~25%の範囲である。また、本明細書において、側部エリア220および端部エリア230をあわせて「外部エリア」ともいう。
なお、本実施形態においては、中央エリア210、側部エリア220、端部エリア230を有する構成について説明するが、端部エリア230を有さず、中央エリア210と側部エリア220からなる構成であってもよい。その場合には、中央エリア210は切断刃200の幅方向における全幅の長さの20~30%の範囲であり、側部エリア220は、中央エリア210の外側の、切断刃200の幅方向における全幅の長さの70~80%の範囲である。
切断刃200は、全体として略V字の形状を有する。これにより、中央エリア210が側部エリア220よりも突出して配置されるため、中央カットの初期において中央エリア230の歯を包装物50に刺し込みやすく、中央カットをより容易に行うことができる。
図4は、中央エリア210を構成する歯を示す、図3における領域Xの部分拡大図である。切断刃200は、中央エリア210の頂点を挟んで、切断刃200の幅方向において左右対称に構成される。中央エリア210は、歯高が異なる複数の歯を含んでなり、上記複数の歯は、連続する3つの歯の歯先が同一直線上に位置しないように、入れ違いに配置されている。中央エリア210は、中央カットにおいて、最初に歯先が包装物50に到達する領域である。このとき、連続する3つの歯の歯先が同一直線上に位置しないことにより、歯高が高い歯から順に包装物50に到達するようにして、包装物50に同時に刺し込まれる歯の数を少なくすることができる。これにより、包装物50を切断するための応力は常により少ない数の歯にのみ分散されるため、中央エリア210におけるそれぞれ歯の歯先を包装物50に刺し込むことがより容易となり、中央カットの初期により少ない応力で包装物50の切断を開始することができる。そのため、中央エリア210は、中央カットの初期における使用者への抵抗感をより少なくすることができる。
具体的には、中央エリア210は、歯高が最も大きい複数の中央大歯212、中央大歯212よりも歯高が小さい複数の中央中歯214、および中央中歯214よりも歯高が小さい中央小歯216を有する。
本実施形態において、図4に示すように、中央エリア210を構成する中央大歯212、中央中歯214および中央小歯216のいずれかの歯について、当該歯の内側の斜辺の延長線と、当該歯に隣接する歯の外側の斜辺の延長線と、が交差する点を交差点CSとすると、中央エリア210を構成する中央大歯212、中央中歯214および中央小歯216は、すべての歯についての交差点CSが同一の仮想直線(以下、単に「歯底線L1」ともいう。)上に位置する形状を有する。本実施形態において、中央大歯212、中央中歯214および中央小歯216は、当該歯の内側の斜辺および当該歯に隣接する歯の外側の斜辺が、いずれも円弧状である。外側の斜辺と内側の斜辺とは、それぞれ異なる2つの円の一部を構成する円弧により構成されており、上記外側の斜辺および内側の斜辺の延長線は、それぞれ、外側の斜辺および内側の斜辺を構成する円弧の延長線である。ただし、当該歯の内側の斜辺および当該歯に隣接する歯の外側の斜辺は、いずれか一方が弧状であって他方が直線状であってもよいし、いずれもが直線状であってもよい。斜辺が直線状の場合には、各直線の延長線の交点を交差点CSとする。
また、本実施形態において、中央エリア210を構成する中央大歯212、中央中歯214および中央小歯216は、すべての歯について、当該歯の歯先と当該歯に隣接する歯の歯先とを接続する辺(以下、単に「接続辺」ともいう。)が接する、歯底線L1に平行な仮想直線との接点が、同一直線(以下、単に「歯谷線L2’」ともいう。)上に位置する形状を有する。ただし、中央大歯212、中央中歯214および中央小歯216は、すべての歯について上記接点が同一の歯谷線L2’上に位置しなくてもよく、中央エリア210に複数の歯谷線が設定されてもよい。
また、本実施形態において、すべての中央中歯214の歯先は同一の仮想直線(以下、単に「中歯線L3」ともいう。)上に位置し、すべての中央大歯212の歯先は同一の仮想直線(以下、単に「大歯線L4」ともいう。)上に位置する。直線L1、L2’、L3およびL4はすべて平行であり、中央小歯216の歯先を通り直線L3およびL4に平行な仮想直線を小歯線L5とすると、歯底線L1、歯谷線L2’、小歯線L5、中歯線L3および大歯線L4はこの順に並ぶ。
中央大歯212は、中央エリア210のうち、切断刃200の中央でもあるV字の頂点となる位置に配置され(図4における中央大歯212a)、かつ、V字の頂点となる位置の両外側に複数個配置される(図4における2つの中央大歯212bおよび212c)。中央大歯212は、中央カットの初期において最初に包装物50に刺し込まれる歯であり、V字の頂点となる位置に配置された中央大歯212aから両外側に向けて順に刺し込まれていくことにより、包装物50の切断を開始する。これにより、より少ない応力で、中央カットの初期における切断を開始することができる。また、中央大歯212は、歯元の幅がより大きいため機械的強度が高い。そのため、複数の中央大歯212を中央エリア210に配置することで、中央エリア210の機械的強度を高めて切断刃200の耐久性を高めることもできる。
中央中歯214は、中央エリア210の全体にわたって、複数個(図4では片側に4個)配置される。中央中歯214は、中央大歯212に引き続いて包装物50に刺し込まれて、包装物50の切断をさらに進行させる。このとき、中央中歯214のうちいくつかの歯(図4における2つの中央中歯214aおよび中央中歯214b)は、2つの中央大歯212に挟まれる位置に配置されることにより、歯元の幅が広い中央大歯212の幅広の谷間が切断時に包装物50に引っ掛かることによる切断への抵抗を小さくし、包装物50の切断をより容易にすることができる。また、中央中歯214のうち他のいくつかの歯(図4における2つの中央中歯214cおよび中央中歯214d)は、中央エリア210のうち側部エリア220側の端部領域に配置されて、包装物50の切断を、中央エリア210から側部エリア220へと円滑に移行させる。
中央小歯216は、中央エリア210のうち側部エリア220側の端部領域に1個または複数個(図4では片側に1個)配置されて、中央中歯214cおよび214dとともに、包装物50の切断を、中央エリア210から側部エリア220へと円滑に移行させる。
中央エリア210を構成する中央大歯212、中央中歯214および中央小歯216は、いずれも、当該歯の外側の斜辺と当該歯の外側で隣接する歯の内側の斜辺とが、屈折点を有さずに接続されている。屈折点を有さずに接続されているとは、当該歯の歯先と隣接する歯の歯先とをつなぐ斜辺が、1つもしくは複数の円弧、または円弧と直線との組み合わせからなり、上記円弧同士の接続点または上記円弧と上記直線との接続点は、丸みを帯びた交点であり、傾きが不連続に変化する頂点状の折れ曲がりは形成されていないことをいう。本発明者らの知見によると、それぞれの歯の斜辺同士または斜辺と歯谷とが一定の角度を有するように(屈折点を有するように)接続されるときに比べ、それぞれの歯の斜辺が屈折点を有さずに接続されている(歯山の間に屈折点が生じない)と、破断の合流点に生じる切り欠きの進行方向がより包装物50の幅方向に近くなり(後述する角度θがより小さくなり)、復旧時の縦裂けはより生じにくくなる。なお、接続辺の底部近辺が切断時に包装物50に引っ掛かることによる切断への抵抗を小さくして包装物50の切断をより容易にし、かつ、特には中央カット時における角度θをより小さくする観点からは、接続辺は、曲率半径が異なる複数の円弧により構成されることが好ましい。
図5は、側部エリア220を構成する歯を示す、図3における領域Yの部分拡大図である。側部エリア220は、歯高が同一である複数の歯を含んでなり、本実施形態においては、上記複数の歯は、いずれも、歯先が外側を向いた外向歯222である。具体的には、上記複数の歯はすべて、内側の斜辺の曲率半径と外側の斜辺の曲率半径とが互いに異なる。側部エリア220は、中央カットにおいては、中央エリア210において開始された包装物50の切断を包装物50の端部方向に進行させる領域であり、端カットにおいては、端部エリア230において開始された包装物50の切断を包装物50の中央方向に進行させる領域である。側部エリア220は、構成する複数の歯がいずれも外向歯であるため、特には端カット時において包装物50に歯を刺し込みやすく、より少ない応力で端カットによる包装物50の切断を進行させることができる。
本明細書において、図5に示すように、側部エリア220を構成する外向歯222の一つをT1とし、外向歯T1の外側に隣接して配置された隣接歯をT2とし、外向歯T1の内側に隣接して配置された隣接歯をT3とする。また、図5に示すように、外向歯T1の外側の斜辺の延長線と隣接歯T2の内側の斜辺の延長線とが交差する点を交差点S1とし、外向歯T1の内側の斜辺の延長線と隣接歯T3の外側の斜辺の延長線とが交差する点を交差点S2とする。
このとき、本実施形態において、交差点S1と交差点S2とを結ぶ仮想直線は、歯底線L1と同一の直線である。また、外向歯T1の歯先と外向歯T1の外側で隣接する隣接歯T2の歯先とを結ぶ接続辺に接する、歯底線L1に平行な仮想直線は、歯谷線L2’と平行な、歯谷線L2’とは異なる直線(以下、単に「歯谷線L2」ともいう。)である。本実施形態において、歯谷線L2は、歯谷線L2’と小歯線L5との間に位置する(図4参照)。また、外向歯222の歯先を結ぶ仮想直線は、中歯線L3と同一の直線である。なお、外向歯222の歯先を結ぶ仮想直線の位置は特に限定されず、小歯線L5と同一の直線、または小歯線L5より高く大歯線L4より低い位置の直線、となればよい。なお、図5では、すべての外向歯222の歯先が中歯線L3上に位置しているが、すべての外向歯222の歯先が同一の仮想直線(図5では中歯線L3)上に位置しなくてもよい。言い換えると、側部エリア220は、歯底線L1から外向歯の歯先までの距離が異なる複数の外向歯222を有してもよい。
本明細書において、歯底線L1に対して外向歯T1の歯先から垂ろした垂線が歯底線L1と交差する点を交差点S3とする。また、S1とS3との間の距離をD1とし、S1とS2との間の距離をD2とする。このとき、本実施形態において、D1とD2との比率は、以下の式1を満たす。
D1/D2 =0.05 ~ 0.45 ・・・(式1)
D1/D2が0.45以下であると、外向歯222の歯先がより外側を向くため、端カット時において、より少ない応力で包装物50の切断を進行させることができる。D1/D2が0.05以上であると、外向歯222の歯先が外側を向きすぎないため、中央カット時において、中央エリア210において開始された包装物50の切断の進行が外向歯222によって阻害されにくく、上記切断が端部方向へとより進行しやすくなる。端カットと中央カットのどちらからでもよく切れるより好ましい範囲はD1/D2=0.10~0.40であり、更に好ましい範囲は、D1/D2=0.15~0.35である。
ところで、このような外向歯222では、切断時に包装体が引っ張られる方向への切断速度が、上記引っ張られる方向とは反対となる方向への切断速度より速くなる。つまり、中央カット時は、包装体は中央方向に引っ張られるので、外側から内側への切断速度(隣接歯T2から隣接歯T2の内側の斜辺に沿った破断の切断速度)はより速く、外側から内側への切断速度(外向歯T1から外向歯T1の外側の斜辺に沿った破断の切断速度)はより遅くなる。また、端カット時は、包装体は外向歯T1が向いている外側方向に引っ張られるので、外側から内側への切断速度(外向歯T1から外向歯T1の外側の斜辺に沿った破断の切断速度)はより早く、外側から内側への切断速度(隣接歯T2から隣接歯T2の内側の斜辺に沿った破断の切断速度)はより遅くなる。そのため、これらの破断が合流するときには、一方の破断が過剰に進行しやすく、合流点には切り欠きがより生じやすく、かつ、生じた切り欠きの長さはより長くなりやすいと考えられる。そのため、外向歯222を有する切断刃200を用いて包装物50を切断すると、外向歯222の外側において切り欠きからの縦裂けがより生じやすく、特にはより大きい応力が必要である復旧時の縦裂けがより生じやすいと考えられる。
図6Aは、切り欠きが生じた包装物50の切断部に形成された刃痕の様子を模式的に示す図であり、図6Bは、図6Aにおける切り欠きが生じている領域Wの部分拡大図である。本発明者らの知見によると、切断刃200が有する歯の形状によって刃痕の形状および切り欠きの形状も異なり、刃痕の形状および切り欠きの形状によって縦裂けの生じやすさも異なる。
具体的には、本明細書において、刃痕における刃山面積をBとし、刃痕において切り欠きが進行している方向が包装物50の幅方向に対してなす鋭角の角度をθとし、切り欠きの先端から切り欠きの進行方向における隣接歯の傾斜が開始する点(隣接歯による刃山が開始される点)までの、包装物50の幅方向における距離をmとする。本発明者らの知見によると、このとき、刃山面積Bがより小さく、角度θがより小さく、距離mがより大きいほど、縦裂けは生じにくい。これは、上記条件により、復旧時などに刃痕に印加される応力をより小さくし、かつ、切り欠きの先端に上記応力を集中させにくくなることによると考えられる。つまり、復旧時などには、刃痕における刃山の先端から巻回方向へと印加された応力が、刃痕における刃谷に集中する。この応力の集中方向に切り欠きの先端があると、上記応力はやがて切り欠きの先端に集中して、切り欠きの先端を開始点とする新たな破断を生じさせて、包装物50に縦裂けを生じさせてしまう。これに対し、刃山面積Bが小さいと、切欠きの先端に応力が大きく集中して上記新たな破断が生じる前に貼り付いてしまった包装体を剥がして復旧することができる。また、角度θがより小さかったり、距離mがより大きかったりすると、上記応力の集中方向に対して切り欠きの先端の位置がずれるため、切り欠きの先端に応力は集中しにくい。
つまり、歯谷線から歯先までの距離をより短くすることで、刃山面積Bをより小さくし、隣り合う歯先間の距離をより長くして刃谷の長さおよび曲率半径Rをより大きくすることで、角度θをより小さくして距離mをより大きくすることができると考えられる。
本明細書において、外向歯T1の歯先と歯谷線L2との間の距離をD3とし、外向歯T1の歯先と隣接歯T2の歯先との間の距離をD4とする。D3は、外向歯T1の歯先から、歯谷線L2に対して外向歯T1の歯先からおろした垂線が歯谷線L2と交差する交差点までの距離である。また、D4は、外向歯T1の歯先と隣接歯T2の歯先とを通る仮想直線L3における外向歯T1の歯先から隣接歯T2の歯先までの距離である。このとき、歯谷線L2から歯先までの距離D3をより短くすることで、刃山面積Bをより小さくすることができ、一方で、隣り合う歯先間の距離D4をより長くして刃谷の長さおよび曲率半径Rをより大きくすることで、角度θをより小さくし、かつ、距離mをより大きくすることができる。ただし、包装物の切断を容易にする観点からは、歯谷線L2から外向歯T1の歯先までの距離D3はある程度の長さを有することが必要である。
上記観点に基づき、本実施形態において、D3とD4との比率は、以下の式2を満たす。
D3/D4 =0.3 ~ 0.6 ・・・(式2)
D3/D4が0.3以上であると、歯谷線L2から外向歯T1の歯先までの距離D3が十分に大きいため、中央カットおよび端カットのいずれにおいても、包装物50の切断をより容易にすることができる。D3/D4が0.6以下であると、外向歯T1の歯先と歯谷線L2との間の距離D3が十分に短いため刃山面積Bをより小さくすることができ、隣り合う歯先間の距離D4がより長いため角度θをより小さくし、かつ、距離mをより大きくすることができる。上記観点からは、D3/D4は0.5以下であることがより好ましい。
側部エリア220を構成する複数の外向歯222は、いずれも、当該歯の外側の斜辺と当該歯の外側で隣接する歯の内側の斜辺とが、屈折点を有さずに接続されている。これにより、破断の合流点に生じる切り欠きの進行方向がより包装物50の幅方向に近くなり(角度θがより小さくなり)、復旧時の縦裂けはより生じにくくなる。なお、接続辺の底部近辺が切断時に包装物50に引っ掛かることによる切断への抵抗を小さくして包装物50の切断をより容易にし、かつ、特には中央カット時における角度θをより小さくする観点からは、接続辺は、曲率半径が異なる複数の円弧により構成されることが好ましい。
なお、D3は、0.3mm以上2.5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。また、D4は、0.8mm以上3.5mm以下であることが好ましく、1.3mm以上2.5mm以下であることがより好ましい。
外向歯T1の外側の斜辺のRは、3以上15以下であることが好ましく、4以上10以下であることがより好ましい。隣接歯T2の内側の斜辺のRは、1以上7以下であることが好ましく、2以上5以下であることがより好ましい。外向歯T1の外側の斜辺が円弧により接続されているとき、上記接続する円弧のRは、外向歯T1の外側の斜辺のRおよび隣接歯T2の内側の斜辺のRのいずれよりも小さい値であり、かつ、0.2以上2.0以下であることが好ましく、0.4以上1.2以下であることがより好ましい。各Rを上記の値にすることで、接続辺の底部近辺が切断時に包装物50に引っ掛かることによる切断への抵抗を小さくして包装物50の切断をより容易にし、フィルム破断の合流点に生じる切り欠きの進行方向を包装物50の幅方向により近くして、巻き戻ってしまった包装物を復旧させる時(復旧時)の縦裂けを生じ難くさせることができる。
図7は、端部エリア230を構成する歯を示す、図3における領域Zの部分拡大図である。端部エリア230は、歯高が異なる複数の歯を含んでなり、上記複数の歯は、連続する3つの歯の歯先が同一直線上に位置しないように、入れ違いに配置されている。端部エリア230は、端カットにおいて、最初に歯先が包装物50に到達する領域である。このとき、連続する3つの歯の歯先が同一直線上に位置しないことにより、歯高が高い歯から順に包装物50に到達するようにして、同時に包装物50に刺し込まれる歯の数を少なくすることができる。これにより、包装物50を切断するための応力は常により少ない数の歯にのみ分散されるため、端部エリア230における歯の歯先を包装物50に刺し込むことがより容易となり、端カットの初期に、より少ない応力で包装物50の切断を開始することができる。そのため、端部エリア230は、端カットの初期における使用者への抵抗感をより少なくすることができる。
一方で、端部エリア230は、中央カットにおいて、包装物50の切断が最後に行われる領域である。このときも、端部エリア230は、包装容器10を下向きに回転させたときに、それぞれの歯を順次包装物50に刺し込ませて、中央エリア210から側部エリア220へと進行してきた包装物50の切断を円滑に進行させることができる。
具体的には、端部エリア230は、歯高が大きい複数の端大歯232、および端大歯232よりも歯高が小さい複数の端中歯234を有する。
本実施形態において、図7に示すように、端部エリア230を構成する端大歯232および端中歯234のいずれかの歯について、当該歯の内側の斜辺の延長線と、当該歯に隣接する歯の外側の斜辺の延長線と、が交差する点を交差点PSとすると、端部エリア230を構成する端大歯232および端中歯234は、すべての歯についての交差点PSが歯底線L1上に位置する形状を有する。また、端部エリア230を構成する端大歯232および端中歯234のすべての歯について、当該歯の歯先と当該歯の外側で隣接する歯の歯先とを結ぶ接続辺は、歯谷線L2と平行な、歯谷線L2とは異なる直線(以下、単に「歯谷線L2’’」ともいう。)に接する形状を有する。ただし、端大歯232および端中歯234は、すべての歯について上記接点が同一の歯谷線L2’’上に位置しなくてもよく、端部エリア210に複数の歯谷線が設定されてもよい。本実施形態において、歯谷線L2’’は、歯谷線L2と歯底線L1との間に位置する(図7参照)。また、端大歯232の歯先を結ぶ仮想直線は、大歯線L4と同一の直線であり、端中歯234の歯先を結ぶ仮想直線は、中歯線L3と同一の直線である。なお、端大歯232の歯先を結ぶ仮想直線の位置は特に限定されず、中歯線L3より高い位置の直線となればよい。また、端中歯234の歯先を結ぶ仮想直線の位置も特に限定されず、中歯線L3と同一の直線、または小歯線L5より高く大歯線L4より低い位置の直線、となればよい。
本実施形態では、端大歯232は、端部エリア230に複数個(図7における2つの端大歯232aおよび232b)配置される。端大歯232は、端カットの初期において最初に包装物50に刺し込まれる歯であり、切断刃200の端部となる位置に配置された端大歯232から中央部側に向けて順に刺し込まれていくことにより、包装物50の切断を開始する。これにより、より少ない応力で、端カットの初期における切断を開始することができる。また、端大歯232は、歯元の幅がより大きいため機械的強度が高い。そのため、複数の端大歯232を端部エリア230に配置することで、端部エリア230の機械的強度を高めて切断刃200の耐久性を高めることもできる。
端中歯234は、端大歯232に引き続いて包装物50に刺し込まれて、包装物50の切断をさらに進行させる。端中歯234のうちいくつかの歯(図7における端中歯234a)は、2つの端大歯232に挟まれる位置に配置されることにより、歯元の幅が広い端大歯232の幅広の谷間が切断時に包装物50に引っ掛かることによる切断への抵抗を小さくし、包装物50の切断をより容易にすることができる。また、端中歯234のうち他の歯(図7における端中歯234b)は、端部エリア230のうち側部エリア220側の端部領域に配置されて、包装物50の切断を、端部エリア230から側部エリア220へと円滑に移行させる。
端部エリア230を構成する端大歯232および端中歯234は、いずれも、当該歯の外側の斜辺と当該歯の外側で隣接する歯の内側の斜辺とが、屈折点を有さずに接続されている。上述したように、それぞれの歯の斜辺が屈折点を有さずに接続されていると、破断の合流点に生じる切り欠きの進行方向がより包装物50の幅方向に近くなり、巻き戻ってしまった包装物を復旧させる時(復旧時)の縦裂けは生じにくくなる。なお、接続辺の底部近辺が切断時に包装物50に引っ掛かることによる切断への抵抗を小さくして包装物50の切断をより容易にし、かつ、特には中央カット時における角度θをより小さくする観点からは、接続辺は、曲率半径が異なる複数の円弧により構成されることが好ましい。
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態に関する切断刃300の模式的な構成を示す正面図である。切断刃300は、第1の実施形態における切断刃200と同様に、中央エリア310、中央エリア310の外側に配置された一対の側部エリア320、および側部エリア320の外側で切断刃300の端部に配置された一対の端部エリア330を有する。本実施形態に関する切断刃300は、側部エリア320を構成する歯の形状のみが第1の実施形態における切断刃300とは異なる。そのため、以下、第1の実施形態における切断刃300との共通点については説明を省略する。
図9は、側部エリア320を構成する歯を示す、図8における領域Uの部分拡大図である。側部エリア320は、歯高が同一である複数の歯を含んでなり、上記複数の歯は、歯先が外側を向いている外向歯322と、歯先が外側および内側のいずれにも変位しない上向歯324とを有する。具体的には、上記複数の歯は、内側の斜辺の曲率半径と外側の斜辺の曲率半径とが互いに異なる外向歯322と、内側の斜辺の曲率半径と外側の斜辺の曲率半径とが同じである上向歯324と、を有する。本実施形態においては、上記複数の歯のうち、1つの歯のみが外向歯322であり、残りの歯は上向歯324である。側部エリア320は、外向歯を有するため、特には端カットにおいて包装物50に歯を刺し込みやすく、より少ない応力で端カットによる包装物50の切断を進行させることができる。一方で、側部エリア320は、上向歯を有するため、中央カットにおいても包装物50に歯を刺し込みやすく、より少ない応力で中央カットによる包装物50の切断を進行させることもできる。
本実施形態においても、図9に示すように、側部エリア320に配置された外向歯322をT1とし、外向歯T1の外側に隣接されて配置された隣接歯をT2とし、外向歯T1の内側に隣接されて配置された隣接歯をT3とする。また、図9に示すように、外向歯T1の外側の斜辺の延長線と隣接歯T2の内側の斜辺の延長線とが交差する点を交差点S1とし、外向歯T1の内側の斜辺の延長線と隣接歯T3の外側の斜辺の延長線とが交差する点を交差点S2とする。
このとき、本実施形態においても、交差点S1と交差点S2とを結ぶ仮想直線(以下、単に「歯底線L1’」とする。)は、歯底線L1と平行な、歯谷線L1とは異なる直線である。ただし、外向歯T1と外向歯T1と外側で隣接する隣接歯T2とを接続する接続辺が接する、歯底線L1と平行な仮想直線は、歯谷線L2と同一の直線である。また、外向歯322の歯先を結ぶ仮想直線は、中歯線L3と同一の直線である。上向歯324の歯先を結ぶ仮想直線も、中歯線L3と同一の直線である。なお、外向歯322の歯先を結ぶ仮想直線の位置は特に限定されず、小歯線L5(図4参照)と同一の直線または小歯線L5より高く大歯線L4より低い位置の直線となればよい。
また、本実施形態において、歯底線L1’に対して外向歯T1の歯先から垂ろした垂線が、歯底線L1’と交差する点を交差点S3とする。また、S1とS3との間の距離をD1とし、S1とS2との間の距離をD2とする。このとき、側部エリア320において、D1とD2との比率は、以下の式1を満たす。
D1/D2 =0.05 ~ 0.45 ・・・(式1)
D1/D2が0.45以下であると、外向歯322の歯先がより外側を向くため、端カット時において、より少ない応力で包装物50の切断を進行させることができる。D1/D2が0.05以上であると、外向歯322の歯先が外側を向きすぎないため、中央カット時において、中央エリア310において開始された包装物50の切断が外向歯322によって阻害されにくく、上記切断が包装物50の端部方向へとより進行しやすくなる。端カットと中央カットのどちらからでもよく切れるより好ましい範囲はD1/D2=0.10~0.40であり、更に好ましい範囲は、D1/D2=0.15~0.35である。
このような外向歯322では、外向歯T1の外側の斜面の角度と隣接歯T2の内側の斜面の角度とが、大きく異なる。そのため、本実施形態においても、外向歯322を有する切断刃300を用いて包装物50を切断すると、合流点に生じる切り欠きがより長くなりやすく、外向歯322の外側において切り欠きからの縦裂けがより生じやすいため、特により大きい応力が必要である復旧時の縦裂けがより生じやすいと考えられる。
これに対し、本実施形態においても、刃山面積Bをより小さくすることで、復旧時などに刃痕における刃山の先端から巻回方向へと印加された応力をより小さくすることができる。また、角度θをより小くしたり、距離mをより大きくしたりすることで、上記応力の集中方向に対して切り欠きの先端の位置をずらして、切り欠きの先端に応力を集中しにくくすることができる。これにより、上記応力が切り欠きの先端に集中して、切り欠きの先端を開始点とする新たな破断が生じることによる、縦裂けを抑制できると考えられる。
具体的には、本実施形態においても、外向歯T1の歯先と歯谷線L2との間の距離をD3とし、外向歯T1の歯先と隣接歯T2の歯先との間の距離をD4とする。このときも、歯谷線L2から外向歯T1の歯先までの距離D3をより短くすることで、刃山面積Bをより小さくすることができ、一方で、隣り合う歯先間の距離D4をより長くして刃谷の長さおよび曲率半径Rをより大きくすることで、角度θをより小さくし、かつ、距離mをより大きくすることができる。ただし、包装物の切断を容易にする観点からは、歯谷線L2から外向歯T1の歯先までの距離D3はある程度の長さを有することが必要である。
上記観点に基づき、側部エリア320において、D3とD4との比率は、以下の式2を満たす。
D3/D4 =0.3 ~ 0.6 ・・・(式2)
D3/D4が0.3以上であると、歯谷線L2から外向歯322の歯先までの距離D3が十分に大きいため、中央カットおよび端カットのいずれにおいても、包装物50の切断をより容易にすることができる。D3/D4が0.6以下であると、外向歯T1の歯先と歯谷線L2との間の距離D3が十分に短いため刃山面積Bをより小さくすることができ、隣り合う歯先間の距離D4がより長いため角度θをより小さくし、かつ、距離mをより大きくすることができる。
なお、本実施形態では、外向歯T1の歯高と隣接歯T2および隣接歯T3の歯高とが同一である構成について説明したが、外向歯T1の歯高と隣接歯T2および隣接歯T3の歯高とは同一でなくてもよい。外向歯T1と隣接歯T2または隣接歯T3の歯高が同一でない場合には、隣接歯T2または隣接歯T3の歯先と、それと同一の歯高をもつ歯の歯先と、を結ぶ仮想線(L6)を設定し、隣接歯T2の歯先とL6の交点を交差点S5とし、外向歯T1の歯先とS3とを結ぶ仮想直線とL6との交点をS6とする。そして、S5とS6間の距離をD4とする(図10参照)。
外向歯322の外側の斜辺と外向歯322の外側で隣接する歯の内側の斜辺とは、屈折点を有さずに接続されている。これにより、破断の合流点に生じる切り欠きの進行方向がより包装物50の幅方向に近くなり(角度θがより小さくなり)、復旧時の縦裂けはより生じにくくなる。なお、上記2つの歯を接続する接続辺の底部近辺が切断時に包装物50に引っ掛かることによる切断への抵抗を小さくして包装物50の切断をより容易にし、かつ、特には中央カット時における角度θをより小さくする観点からは、上記接続辺は、曲率半径が異なる複数の円弧により構成されることが好ましい。
本実施形態では、外向歯322について、斜面の傾斜がより急であり、より大きい切り欠きが生じやすいと考えられる外側の斜面において、縦裂けが生じにくくなるように、外向歯322の形状を規定している。これにより、切断刃300は、これを用いて切断した包装物50の復旧時などに、縦裂けをより生じにくくすることができる。
なお、本実施形態では、側部エリア320は1つのみの外向歯322を有しているが、外向歯322の個数はこれに限定されることはなく、複数であってもよい。たとえば、側部エリア320に配置された歯のうち50%以上の歯を外向歯322としてもよい。また、外向歯322の配置も限定されることはなく、側部エリア320のうち、端部エリア330側の端部、中央エリア310側の端部、および上記2つの端部以外の中央部のいずれに配置されてもよい。なお、端カットをより容易に行う観点からは、外向歯322は、少なくとも、側部エリア320のうち端部エリア330側の領域に配置されていることが好ましい。なお、複数の外向歯322が連続して配置されてもよいし、外向歯322の両隣には上向歯324が配置されるようにして、外向歯322が連続しないように配置されてもよい。
[第3の実施形態]
図11は、本発明の第3の実施形態に関する包装容器20の構成を模式的に示す、蓋部を閉じたときの斜視図である。
本実施形態に関する包装容器は、中央エリア410、側部エリア420および端部エリア430が直線状の切断刃400を有する点で第1の実施形態または第2の実施形態に関する包装容器とは異なる。なお、中央エリア410、側部エリア420および端部エリア430のそれぞれが有する歯の形状は、第1の実施形態または第2の実施形態と同様とし得る。
本実施形態において、掩蓋片124の先端125および切断刃400は、直線状の形状を有する。具体的には、切断刃400は、切断刃400の中央から両端側に向けて配置される複数の歯を有する。そして、上記複数の歯は、切断刃400に設定される歯底線L1、歯谷線L2、小歯線L5、中歯線L3および大歯線L4が、いずれも直線となるように、配置される。
本実施形態に関する包装容器20によれば、端カット時に、カットを開始する側の端部とは反対側の側部エリアに配置された外向歯が、切断の進行を阻害しにくいため、端カットをより容易に行うことができる。
[第4の実施形態]
図12は、本発明の第4の実施形態に関する包装容器30の構成を模式的に示す、蓋部を閉じたときの斜視図である。
本実施形態に関する包装容器は、中央エリア510、側部エリア520および端部エリア530がいずれも屈曲している切断刃500を有する点で第1の実施形態または第2の実施形態に関する包装容器とは異なる。なお、中央エリア510、側部エリア520および端部エリア530のそれぞれが有する歯の形状は、第1の実施形態または第2の実施形態と同様とし得る。
本実施形態において、掩蓋片124の先端125および切断刃500は、略M字状の形状を有する。具体的には、切断刃500は、略M字の頂点でもある切断刃500の中央から両端側に向けて配置される複数の歯を有する。そして、上記複数の歯は、上述した歯底線L1、歯谷線L2、小歯線L5、中歯線L3および大歯線L4などが、切断刃500を包装容器30に設置したときに包装容器の底面118から蓋部120に向かう方向に凸になるような曲線となるように、配置される。
本実施形態に関する包装容器30によれば、端部エリア530の歯をより下方に突出させることができるため、端カットの初期において端部エリア530の歯を包装物50に刺し込みやすく、端カットをより容易に行うことができる。一方で、本実施形態に関する包装容器30によれば、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、中央エリア510が側部エリア520よりも突出して配置されているため、中央カットの初期において中央エリア530の歯を包装物50に刺し込みやすく、中央カットをより容易に行うことができる。
なお、切断刃500の形状は上記略M字状に限定されることはなく、たとえば、側部エリア520のみにおいて上記各線が曲線となるように配置されていてもよい。
[効果確認試験-1]
側部エリアに外向歯を有する切断刃(切断刃-1)と、外向歯を有さない切断刃(切断刃-2)と、を用意し、これらの切断刃を各々包装容器に接合したものを用いて、無作為に選択した30人の試験者に、包装容器に収容されたポリ塩化ビニリデン製のフィルムを自由な方法で切断させ、切断しやすさを評価してもらった。切断刃-1は、第1の実施形態に関する切断刃200と略同一の形状を有しており、D1/D2は0.2だった。切断刃-2は、外向歯を有さない以外は第1の実施形態に関する切断刃200と略同一の形状を有しており、すべての歯について、D1/D2は0.5だった。また、上記2種類の切断刃は、いずれもPLA製であった。
切断しやすさの評価基準は以下の通りである。試験者のうち、それぞれの評価を行った人数の割合(%)を算出した。なお、試験者のうち、約8割が端カットによりフィルムを切断していた。
1.切断刃-1のほうが切断しやすい
2.どちらかといえば切断刃-1のほうが切断しやすい
3.どちらともいえない
4.どちらかといえば切断刃-2のほうが切断しやすい
5.切断刃-2のほうが切断しやすい
上記評価結果を、表1に示す。
表1の結果から明らかなように、端カットによりフィルムを切断する試験者が多かった本試験では、外向き歯を有する切断刃-1のほうがやや切断しやすいという評価が得られた。
[効果確認試験-2]
3種類の切断刃を用意し、これらの切断刃を各々包装容器に接合したものを用いて、包装容器の軸方向に沿う中心軸を回転軸として容器を回転し、包装容器に収容されたポリ塩化ビニリデン製のフィルムを中央から切断した。上記3種類の切断刃は、いずれも第1の実施形態に関する切断刃200と略同一の形状を有していたが、歯の形状または配置がそれぞれ異なっていた。また、上記3種類の切断刃は、2つがPLA製であり、1つが金属製であった。
切断されたフィルムの切断部に形成された刃痕の様子を光学顕微鏡で観察し、側部エリアに含まれる歯によって切断された刃痕から等間隔に選択した6点において、刃痕における刃山面積B、刃痕において切り欠きが進行している方向が包装物の幅方向に対してなす鋭角の角度θ、および切り欠きの先端から切り欠きの進行方向における隣接歯の傾斜が開始する点(隣接歯による刃山が開始される点)までの包装物の幅方向における距離をmの平均値をそれぞれ求めた。
フィルムの切断部を巻回された包装物の表面に密着させるように貼り付けた後、切断部の端部から手で引っ張って復旧させた。貼り付けおよび復旧を10回行い、縦裂けが生じた数をカウントした。なお、刃山面積Bの単位はmm2であり、距離mの単位はmmである。
上記3種類の切断刃の材料、復旧試験により測定された角度θ、刃山面積Bおよび距離m、ならびに縦裂けが生じた回数を、表2に示す。
表2の結果から明らかなように、角度θがより小さく、刃山面積Bがより小さく、距離mがより大きいほど、縦裂けは生じにくかった。また、切断刃が金属製であるときは、角度θがより小さく、刃山面積Bがより小さく、かつ、距離mがより大きくなりやすく、フィルムの縦裂けも生じにくかった。
[効果確認試験-3]
側部エリアに外向歯を有する4種類の切断刃を用意し、これらの切断刃を各々包装容器に接合したものを用いて、包装容器に収容されたポリ塩化ビニリデン製のフィルムを切断した。上記4種類の切断刃は、いずれも第1の実施形態に関する切断刃200と略同一の形状を有していたが、外向歯の形状(D3およびD4の長さ、ならびに接続辺の形状)がそれぞれ異なっていた。なお、切断刃-7、切断刃-8および切断刃-9は、外向歯の外側の斜辺と外向歯の外側で隣接する歯の内側の斜辺とが、屈折点を有さずに接続されていた。また、上記4種類の切断刃は、いずれもPLA製であった。
上記4種類の切断刃が有する外向歯のD3およびD4の長さ、ならびに接続辺の形状を、表3に示す。
上記4種類の切断刃のいずれかを有する包装容器に、ポリ塩化ビニリデン製のフィルムを巻回した包装物を収容し、包装容器の本体部から引き出したフィルムを、中央カットおよび端カットのいずれかで切断した。
上記4種類の切断刃のいずれを用いても、中央カットおよび端カットの双方で問題なくフィルムを切断できた。なお、切断刃-9を用いたときに比べて、切断刃-6~切断刃-8を用いたときに、より小さい切断力でフィルムを切断することができた。
切断されたフィルムの切断部に形成された刃痕の様子を光学顕微鏡で観察し、側部エリアに含まれる歯によって切断された刃痕から等間隔に選択した6点において、切り欠きが進行している方向がフィルムの幅方向に対してなす鋭角の角度θを測定し、切断に用いた切断刃ごとに角度θの平均値を求めた。
上記4種類の切断刃のいずれかを用いて切断されたフィルムの刃痕における、中央カットおよび端カットのそれぞれの方法で切断したときの上記角度θの平均値を、表4に示す。
表4の結果から明らかなように、D3/D4が0.6以下である切断刃-7、切断刃-8および切断刃-9を用いると、角度θの平均値をより小さくすることができた。また、D3/D4が0.5以下である切断刃-7を用いると、角度θの平均値をさらに小さくすることができた。また、接続辺が複数の円弧による屈折点を有さない組み合わせである切断刃-7および切断刃-8を用いると、特に中央カット時において角度θの平均値をより小さくすることができた。
[その他の実施形態]
なお、上述した実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
たとえば、上記各実施形態では、側部エリアに配置された外向歯についてD1/D2およびD3/D4を規定したが、側部エリア以外に配置された外向歯についてD1/D2およびD3/D4を同様の範囲に設定してもよいし、外向歯以外の上向歯について、D1、D2、D3およびD4を同様に設定したときのD1/D2およびD3/D4を同様の範囲に設定してもよい。なお、中央からも幅方向端部からも包装物をより切断しやすくしつつ、縦裂けの発生をより抑制する観点からは、少なくとも側部エリアを構成するすべての歯について、D1/D2が0.05~0.45であり、D3/D4が0.3~0.6であることが好ましく、少なくとも中央エリアおよび側部エリアを構成するすべての歯について、D1/D2が0.05~0.45であり、D3/D4が0.3~0.6であることがより好ましく、切断刃を構成するすべての歯について、D1/D2が0.05~0.45であり、D3/D4が0.3~0.6であることがさらに好ましい。
また、上記各実施形態では、中央エリア210に中央小歯216が配置されているが、中央小歯216が配置されない構成であってもよい。
また、上記各実施形態では、側部エリアに外向歯が配置されているが、外向歯は端部エリアに配置されてもよい。
なお、上述したいずれの実施形態においても、切断刃は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルフォン(PES)、およびポリ乳酸(PLA)などの樹脂製でもよいし、金属製でもよい。ただし、効果確認試験-2で示したように、切断刃が樹脂製であるとき、包装物の縦裂けはより生じやすい。そのため、包装物の縦裂けを抑制するという効果は、切断刃が樹脂製であるときに顕著である。
また、前板のうち、蓋部が開口部を閉じたときに掩蓋片と対向する領域には、包装物の切断部付近を付着させて巻き戻りを抑制するためのストッパを有してもよい。ストッパは、たとえば、前板に、前板の一部を切り起こしたフラップを形成し、フラップの表面に形成する構成とすることができる。
また、本体部、蓋部および抑え板の表面は、耐水性および耐光性などを高めるため、紫外線効果型ニスを塗布および硬化させるなどして表面処理されていてもよい。
また、包装物は、シート状またはフィルム状の長尺物が巻回されていればよく、その材料は、樹脂(ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどからなる単層または多層のフィルムまたはシートなど)、紙(ロール紙、キッチンペーパー、調理用加熱シートおよびクッキングシートなど)および金属箔(アルミホイルなど)などであってもよい。