以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
<1.第1実施形態>
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態では、ブレーキディスクの両側の表面に摩擦材が設けられたいわゆる両面ブレーキを診断する。
(1-1.サーボシステム、ブレーキ診断システムの構成)
図1を参照しつつ、第1実施形態に係るサーボシステム1と、ブレーキ診断システム2の構成の一例について説明する。
図1に示すように、サーボシステム1は、コントローラ3と、モータ制御装置4と、サーボモータ5とを有する。コントローラ3は、例えば汎用パーソナルコンピュータ、PLC(Programable Logic Controller)、モーションコントローラ等のコンピュータで構成されている。コントローラ3は、位置指令、速度指令、トルク指令の少なくとも1つを生成し、モータ制御装置4に送信する。モータ制御装置4は、コントローラ3からの指令に基づいてサーボモータ5を制御する。
サーボモータ5は、モータ6と、ブレーキ装置7と、エンコーダ8とを有する。エンコーダ8は、モータ6の回転位置や回転速度等を検出し、検出結果をモータ制御装置4及びブレーキ診断装置9に送信する。
ブレーキ診断システム2は、ブレーキ診断装置9と、ブレーキ装置7に電源を供給するブレーキ電源装置10と、ブレーキ装置7のブレーキコイル25(後述の図2参照)に流れる電流を検出する電流センサ11と、リレー12と、A/D変換器13とを有する。ブレーキ診断システム2は、モータ制御装置4とは別体として構成されており、例えば単体のモジュール(ブレーキ診断モジュール)として構成されてもよいし、複数の機器により構成されてもよい。
リレー12は、ブレーキ診断装置9及びモータ制御装置4により接点の開閉を制御される。電流センサ11は、検出結果をA/D変換器13を介してブレーキ診断装置9に送信する。
なお、サーボシステム1やブレーキ診断システム2の構成は、上記に限定されるものではない。例えば、ブレーキ電源装置10は、ブレーキ診断システム2の外部に設けてもよい。また例えば、ブレーキ診断システム2のハードウェア及びソフトウェアの全部又は一部の構成を、モータ制御装置4に実装してもよい。同様に、ブレーキ診断システム2のハードウェア及びソフトウェアの全部又は一部の構成を、コントローラ3に実装してもよい。
(1-2.サーボモータの構成)
図2を参照しつつ、サーボモータ5の構成の一例について説明する。なお、以下において「負荷側」とはサーボモータ5に対して負荷が取り付けられる方向、すなわちこの例ではシャフト14が突出する方向(図2中右側)を指し、「反負荷側」とは負荷側の反対方向(図2中左側)を指す。
上述のように、サーボモータ5は、モータ6と、ブレーキ装置7と、エンコーダ8とを有する。モータ6は、シャフト14と、回転子15と、固定子16と、負荷側ブラケット17と、負荷側軸受18と、反負荷側ブラケット19と、反負荷側軸受20とを有する。シャフト14は、負荷側軸受18及び反負荷側軸受20により軸心AX周りに回転可能に支持される。シャフト14の反負荷側は、反負荷側ブラケット19から突出し、その突出した部分にブレーキ装置7及びエンコーダ8が設けられている。
ブレーキ装置7は、無励磁作動形のブレーキ装置であり、例えば電源停止時等にモータ6のシャフト14が動かないように保持する保持用ブレーキとして使用される。ブレーキ装置7は、フィールドコア21と、アーマチュア22と、ブレーキディスク23と、固定プレート24とを有する。
フィールドコア21は、ブレーキコイル25及びばね26を有する。ブレーキコイル25のコイル端部27は、ブレーキ電源装置10に電気的に接続される。アーマチュア22は、フィールドコア21に対して回転不能且つシャフト14の軸方向に移動可能に支持される。ブレーキディスク23は、ハブ28を介してシャフト14に対し回転不能且つ軸方向に移動可能に支持される。ブレーキディスク23は、負荷側の表面及び反負荷側の表面にそれぞれ摩擦材29を有する。固定プレート24は、反負荷側ブラケット19等に固定されている。
アーマチュア22は、ブレーキコイル25が通電されていない状態(無励磁状態)では、ばね26により負荷側へ押圧され、ブレーキディスク23の摩擦材29がアーマチュア22と固定プレート24とに係合する。この結果、電源停止時等にシャフト14が停止状態で保持される。この状態が、ブレーキ装置7の作動状態である。一方、アーマチュア22は、ブレーキコイル25が通電されている状態(励磁状態)では、ブレーキコイル25による磁気吸引力により反負荷側へ吸引され、ブレーキディスク23が解放される。この結果、シャフト14が回転可能となる。この状態が、ブレーキ装置7の解放状態である。
このように、解放状態においてブレーキディスク23の軸方向位置はフリーな状態となるため、サーボモータ5の向きや姿勢によっては、ブレーキ装置7の解放時に空転摩耗(モータ6の回転時に摩擦材29とアーマチュア22及び固定プレート24の少なくとも一方が接触して摩耗すること)が生じやすくなる可能性がある。
なお、サーボモータ5の構成は、上記に限定されるものではない。例えば、エンコーダ8をモータ6とブレーキ装置7の間に配置してもよいし、ブレーキ装置7又はエンコーダ8の少なくとも一方をモータ6の負荷側に配置してもよい。
(1-3.ブレーキ診断装置の機能構成)
図3及び図4を参照しつつ、ブレーキ診断装置9の機能構成の一例について説明する。
図3に示すように、ブレーキ診断装置9は、摩耗量推定部30と、摩耗量取得部31と、第1回転量記録部32と、第1回転量取得部33と、第2回転量記録部34と、第2回転量取得部35と、診断部36とを有する。診断部36は、警告情報出力部37と、注意情報出力部38とを有する。
摩耗量推定部30は、ブレーキ装置7のブレーキコイル25に流れる電流を検出する電流センサ11の出力に基づいて、ブレーキディスク23の摩擦材29の摩耗量を推定する。この摩耗量推定部30による推定手法について、図4を用いて説明する。
図4は、ブレーキ装置7が作動状態から解放状態となるときの電流センサ11の出力の一例を表す説明図である。図4に示すように、ブレーキ電流は、リレー12の接点が閉じるタイミングt1から流れ始め、ブレーキコイル25のインダクタンス及び巻線抵抗等によって定まる時定数に基づいて緩やかに増加する。ブレーキ電流の増加に伴ってブレーキコイル25が発生する吸引力も増加し、当該吸引力がばね26による押し付け力を上回ったときに、アーマチュア22がフィールドコア21側へ移動してブレーキディスク23が解放される。このときのアーマチュア22の移動によりブレーキコイル25の磁束が変化するので、ブレーキ電流に乱れが生じて電流センサ11の出力が一時的に減少する。図4では、電流センサ11の出力が減少するタイミングがt2,t3,t4である3パターンの電流波形A,B,Cを例示している。
摩擦材29の摩耗量が増加すると、ブレーキ作動時のアーマチュア22とフィールドコア21との距離が増加するため、アーマチュア22の吸引に要する時間(以下「吸引時間」という)が長くなる。図4に示す例では、電流波形Aの吸引時間(t2-t1)は比較的短いため、摩耗量も小さいと推定できる。また、電流波形Bの吸引時間(t3-t1)は中程度であるため、摩耗量も中程度であると推定できる。また、電流波形Cの吸引時間(t4-t1)は比較的長いため、摩耗量も大きいと推定できる。
なお、摩擦材29の摩耗量が大きいことは、摩擦材29の残存量が少ないことと同義であり、摩擦材29の摩耗量が小さいことは、摩擦材29の残存量が多いことと同義である。このように、摩擦材29の摩耗量と残存量とは表裏一体の関係にあることから、摩耗量推定部30は、電流センサ11の出力に基づいて、ブレーキディスク23の摩擦材29の残存量を推定している、ともいうことができる。
摩耗量取得部31は、摩耗量推定部30により推定された摩耗量を取得する。なお、上述のように、摩擦材29の摩耗量と残存量とは表裏一体の関係にあることから、摩擦材29の残存量を取得する場合も、摩擦材29の摩耗量を取得することに含まれる。
第1回転量記録部32は、エンコーダ8の検出信号に基づいて、モータ6の回転量の累積値であるモータ総回転量(総回転量)を記録する。第1回転量取得部33は、この第1回転量記録部32からモータ総回転量を取得する。なお、本実施形態において、モータ6の「回転量」という場合、モータ6の回転数(~回転)だけでなく回転角度(~度、~ラジアン等)をも含むものである。したがって、モータ総回転量は、回転数の累積値(~回転)であってもよいし、回転角度の累積値(~度、~ラジアン等)であってもよい。本実施形態では、モータ総回転量は比較的大きな回転量となることから、例えば回転数の累積値として記録され、取得される。
第2回転量記録部34は、エンコーダ8の検出信号に基づいて、ブレーキ装置7の作動時におけるモータ6の回転量の累積値であるブレーキ作動時のモータ総回転量(ブレーキ作動時総回転量)を記録する。上述のように、ブレーキ作動時のモータ総回転量は、ブレーキ作動時における回転数の累積値(~回転)であってもよいし、回転角度の累積値(~度、~ラジアン等)であってもよい。本実施形態では、ブレーキ作動時のモータ総回転量は比較的小さな回転量となることから、例えば回転角度の累積値として記録され、取得される。なお、エンコーダ8はいわゆるバッテリレスエンコーダであり、電源停止時においてもモータ6の回転量を検出して記録しておくことができる。第2回転量記録部34は、電源投入時にエンコーダ8から上記記録されたデータを読み出し、ブレーキ作動時のモータ総回転量を記録する。第2回転量取得部35は、この第2回転量記録部34からブレーキ作動時のモータ総回転量を取得する。
診断部36は、摩耗量取得部31により取得された摩耗量と、第1回転量取得部33により取得されたモータ総回転量と、第2回転量取得部35により取得されたブレーキ作動時のモータ総回転量とに基づいて、ブレーキ装置7の摩耗を診断する。診断部36による診断手法の詳細については後述する。警告情報出力部37は、診断部36による診断結果として所定の警告情報を出力する。注意情報出力部38は、診断部36による診断結果として所定の注意情報を出力する。これらの出力情報は、例えばブレーキ診断装置9が有する表示装置や音声出力装置等の出力装置915(後述の図27参照)から出力されてもよいし、必要に応じてモータ制御装置4やコントローラ3に送信されてもよい。
なお、上述した摩耗量取得部31、第1回転量取得部33、第2回転量取得部35等における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、更に少ない数の処理部(例えば1つの処理部)で処理されてもよく、また、更に細分化された処理部により処理されてもよい。また、ブレーキ診断装置9の各処理部は、後述するCPU901(図27参照)が実行するプログラムにより実装されてもよいし、その一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
(1-4.診断部の診断手法)
図5~図7を参照しつつ、診断部36による診断手法の一例について説明する。
図5に示すように、摩耗量には第1しきい値と第2しきい値が設定されている。この例では、第1しきい値と第2しきい値は固定値として設定されている。なお、第1しきい値と第2しきい値を、例えば所定の数式やテーブルによりモータ総回転量やブレーキ作動時のモータ総回転量に応じて変動するしきい値として設定してもよい。また、摩耗量に関するしきい値の数を2以外(1又は3以上)としてもよい。
モータ総回転量には第3しきい値が設定されている。この例では、第3しきい値は例えば所定の数式やテーブルにより摩耗量の増加に応じて略直線的に増加するしきい値として設定されている。なお、第3しきい値を、例えば曲線的な増減態様や直線的及び曲線的な増減態様の組み合わせ等、他の増減態様のしきい値としてもよいし、固定値としてもよい。また、モータ総回転量に関するしきい値の数を2以上としてもよい。
ブレーキ作動時のモータ総回転量には第4しきい値が設定されている。この例では、第4しきい値は例えば所定の数式やテーブルにより摩耗量の増加に応じて略直線的に増加するしきい値として設定されている。なお、第4しきい値を、例えば曲線的な増減態様や直線的及び曲線的な増減態様の組み合わせ等、他の増減態様のしきい値としてもよいし、固定値としてもよい。また、ブレーキ作動時のモータ総回転量に関するしきい値の数を2以上としてもよい。
診断部36は、摩耗量取得部31により取得された摩耗量と、摩耗量に関して設定された第1しきい値及び第2しきい値と、第1回転量取得部33により取得されたモータ総回転量と、モータ総回転量に関して設定された第3しきい値と、第2回転量取得部35により取得されたブレーキ作動時のモータ総回転量と、ブレーキ作動時のモータ総回転量に関して設定された第4しきい値とに基づいて、上記第1~第4しきい値による複数の区分(この例では12区分)ごとに診断結果を出力する。
図6は、これらの診断結果の一覧を表す説明図である。なお、以下では説明の便宜上、摩耗量が第1しきい値以上である場合を「大」、摩耗量が第2しきい値以上かつ第1しきい値未満である場合を「中」、摩耗量が第2しきい値未満である場合を「小」であるとして適宜説明する。また、モータ総回転量が第3しきい値以上である場合を「大」、モータ総回転量が第3しきい値未満である場合を「小」であるとして適宜説明する。また、ブレーキ作動時のモータ総回転量が第4しきい値以上である場合を「大」、ブレーキ作動時のモータ総回転量が第4しきい値未満である場合を「小」であるとして適宜説明する。
図6に示すように、診断部36は、摩耗量、モータ総回転量、ブレーキ作動時のモータ総回転量が全て「小」である場合には、摩耗が少なくほぼ新品であると推定し、「正常」である旨の診断結果を出力する。同様に、診断部36は、摩耗量及びブレーキ作動時のモータ総回転量が共に「小」で、且つ、モータ総回転量が「大」である場合には、モータの運転時間に対して摩耗量が相対的に小さいということであるから、正常に摩耗(空転摩耗)していると推定し、「正常」である旨の診断結果を出力する。
また、診断部36は、摩耗量及びモータ総回転量が共に「小」で、且つ、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」である場合には、不適切な運転による摩耗の可能性があると推定し、注意情報出力部38によりブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」(第1の注意情報の一例)を出力する。同様に、診断部36は、摩耗量が「小」で、且つ、モータ総回転量及びブレーキ作動時のモータ総回転量が共に「大」である場合には、不適切な運転による摩耗の可能性があると推定し、注意情報出力部38により「運転パターン注意」を出力する。
なお、上記のように摩耗量及びブレーキ作動時のモータ総回転量が共に「小」である場合には、モータ総回転量の大小によって診断結果は異ならず、モータ総回転量の大小は診断結果に影響しない。同様に、上記のように摩耗量が「小」で、且つ、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」である場合には、モータ総回転量の大小によって診断結果は異ならず、モータ総回転量の大小は診断結果に影響しない。
図7は、運転パターンが適切である場合と不適切である場合の一例を表す説明図である。図7において、ブレーキ制御信号は、モータ制御装置4又はブレーキ診断装置9からリレー12に送信される信号であり、ONでリレー12の接点が閉成し、OFFでリレー12の接点が開成する。また、解放時間は、ブレーキ制御信号がONとなってからアーマチュア22がフィールドコア21側に移動してブレーキディスク23が解放されるまでの時間である。また、作動時間は、ブレーキ制御信号がOFFとなってからアーマチュア22がブレーキディスク23側に移動してブレーキディスク23がアーマチュア22と固定プレート24に係合するまでの時間である。また、モータ実速度は、エンコーダ8からフィードバックされるモータ6の回転速度である。
一般に産業機械に用いられるブレーキ装置は、回転しているモータをブレーキで止める制動用ではなく、本実施形態のように、例えば電源停止時等に機械や装置が動かないようにモータを停止状態で保持する保持用として使用される。このため、モータとブレーキ装置は、ブレーキ装置の作動中にモータが停止し、ブレーキ装置の解放中にモータが駆動されるような運転パターンで使用されるのが好ましい。
したがって、図7の左側に示すように、モータ6がブレーキ装置7の解放状態でのみ回転し(モータ実速度が0より上)、ブレーキ装置7の作動状態では停止している(モータ実速度が0)場合には、ブレーキ装置7の動作状況(運転パターン)が適切である、すなわちブレーキ装置7が保持用として使用されていると推定することができる。一方で、図7の右側に示すように、モータ6がブレーキ装置7の解放状態だけでなく作動状態においても回転している(モータ実速度が0より上の部分がある)場合には、ブレーキ装置7の動作状況(運転パターン)が不適切である、すなわちブレーキ装置7が保持用でなく制動用として使用されている状況があると推定することができる。このような場合には、ブレーキ作動時のモータ総回転量が大きくなることから、上記のように診断部36はブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。
図6に戻り、診断部36は、摩耗量が「大」で、且つ、モータ総回転量及びブレーキ作動時のモータ総回転量が共に「小」である場合には、摩耗量が大きいことから摩擦材29が寿命であると推定して、警告情報出力部37により摩擦材29(又はブレーキ装置7)の交換を促す「ブレーキ寿命警告」(第1の警告情報の一例)を出力する。加えて、診断部36は、モータの運転時間に対して摩耗量が相対的に大きいことから異常な摩耗が生じており、且つ、ブレーキ作動時のモータ総回転量が小さいことから異常摩耗の原因は空転摩耗であると推定し、ブレーキ寿命警告と併せて、注意情報出力部38によりブレーキ装置7の空転摩耗に関する注意を促す「空転摩耗注意」(第2の注意情報の一例)を出力する。
また、診断部36は、摩耗量及びモータ総回転量が共に「大」で、且つ、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「小」である場合には、摩擦材29は寿命であるけれども、モータの運転時間に対して摩耗量が適応した量であるということであるから、正常に摩耗(空転摩耗)していると推定し、警告情報出力部37により摩擦材29(又はブレーキ装置7)の交換を促す「ブレーキ寿命警告」のみを出力する。
また、診断部36は、摩耗量及びブレーキ作動時のモータ総回転量が共に「大」で、且つ、モータ総回転量が「小」である場合には、摩擦材29が寿命であると推定して警告情報出力部37により「ブレーキ寿命警告」を出力する。加えて、診断部36は、モータの運転時間に対して摩耗量が相対的に大きいことから異常な摩耗が生じており、且つ、ブレーキ作動時のモータ総回転量が大きいことから異常摩耗の原因は不適切な運転による摩耗であると推定し、ブレーキ寿命警告と併せて、注意情報出力部38によりブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。
同様に、診断部36は、摩耗量、モータ総回転量、ブレーキ作動時のモータ総回転量が全て「大」である場合には、摩擦材29が寿命であると推定して警告情報出力部37により「ブレーキ寿命警告」を出力する。加えて、診断部36は、モータの運転時間に対して摩耗量が適応した量であるけれども、ブレーキ作動時のモータ総回転量が大きいことから不適切な運転による摩耗の可能性があると推定し、注意情報出力部38により「運転パターン注意」を出力する。
なお、上記のように摩耗量及びブレーキ作動時のモータ総回転量が共に「大」である場合には、モータ総回転量の大小によって診断結果は異ならず、モータ総回転量の大小は診断結果に影響しない。
また、診断部36は、摩耗量が「中」で、且つ、モータ総回転量及びブレーキ作動時のモータ総回転量が共に「小」である場合には、モータの運転時間に対して摩耗量が相対的に大きいということであるから、摩耗が異常に進行中であると推定して、警告情報出力部37により摩擦材29の摩耗が異常に進行中であることを示す「早期摩耗警告」(第2の警告情報、第4の警告情報の一例)を出力する。加えて、診断部36は、ブレーキ作動時総回転量が小さいことから、異常摩耗の原因は空転摩耗であると推定し、早期摩耗警告と併せて、注意情報出力部38によりブレーキ装置7の空転摩耗に関する注意を促す「空転摩耗注意」を出力する。
また、診断部36は、摩耗量が「中」で、モータ総回転量が「大」で、且つ、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「小」である場合には、モータの運転時間に対して摩耗量が相対的に小さいということであるから、摩耗(空転摩耗)が正常に進行中であると推定して、警告情報出力部37により摩擦材29の摩耗が正常に進行中であることを示す「通常摩耗警告」(第2の警告情報、第3の警告情報の一例)を出力する。
また、診断部36は、摩耗量が「中」で、モータ総回転量が「小」で、且つ、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」である場合には、モータの運転時間に対して摩耗量が相対的に大きいということであるから、摩耗が異常に進行中であると推定して、警告情報出力部37により摩擦材29の摩耗が異常に進行中であることを示す「早期摩耗警告」を出力する。加えて、診断部36は、ブレーキ作動時のモータ総回転量が大きいことから、異常摩耗の原因は不適切な運転による摩耗であると推定し、早期摩耗警告と併せて、注意情報出力部38によりブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。
また、診断部36は、摩耗量が「中」で、且つ、モータ総回転量及びブレーキ作動時のモータ総回転量が共に「大」である場合には、モータの運転時間に対して摩耗量が相対的に小さいということであるから、摩耗が正常に進行中であると推定して、警告情報出力部37により「通常摩耗警告」を出力する。加えて、診断部36は、摩耗は正常に進行中であるけれども、ブレーキ作動時のモータ総回転量が大きいことから、不適切な運転による摩耗の可能性があると推定し、通常摩耗警告と併せて、注意情報出力部38によりブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。
なお、以上では正常以外の出力情報について、緊急度あるいは重要度が相対的に高い診断結果については警告情報として、緊急度あるいは重要度が相対的に低い診断結果については注意情報として、2種類に区別して出力したが、出力情報をこのように区別せずに、例えば1つの診断結果情報として出力してもよい。あるいは出力情報をさらに細分化し、例えば3種類以上の情報に区別して出力してもよい。
(1-5.ブレーキ診断手順)
図8~図11を参照しつつ、ブレーキ診断装置9により実行されるブレーキ診断手順の一例について説明する。
図8に示すように、ステップS10では、ブレーキ診断装置9は、ブレーキ制御信号をOFFとしてリレー12の接点を開成させてブレーキ装置7を作動状態とする。
ステップS20では、ブレーキ診断装置9は、エンコーダ8からのフィードバック信号に基づいて、モータ6の回転速度が0であるか否かを判定する。モータ6の回転速度が0でない場合には(ステップS20:NO)、ステップS30に移る。
ステップS30では、ブレーキ診断装置9は、注意情報出力部38によりブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。その後、本フローを終了する。
上記ステップS10~ステップS30により、ブレーキ装置7の動作状況が適切であるか否か、言い換えると制動用でなく保持用として使用されているか否かを、この後のブレーキ診断手順に先立って簡易的に診断することができる。
一方、上記ステップS20において、モータ6の回転速度が0である場合には(ステップS20:YES)、ステップS40に移る。
ステップS40では、ブレーキ診断装置9は、ブレーキ制御信号をONとしてリレー12の接点を閉成させてブレーキ装置7を解放状態とする。
ステップS50では、ブレーキ診断装置9は、摩耗量推定部30により、ブレーキ装置7が作動状態から解放状態となるときの電流センサ11の出力に基づいて、ブレーキディスク23の摩擦材29の摩耗量を推定する(図4参照)。
ステップS60では、ブレーキ診断装置9は、摩耗量取得部31により、上記ステップS50において推定された摩耗量を取得する。
ステップS70では、ブレーキ診断装置9は、第1回転量取得部33により、第1回転量記録部32に記録されたモータ総回転量を取得する。
ステップS80では、ブレーキ診断装置9は、第2回転量取得部35により、第2回転量記録部34に記録されたブレーキ作動時のモータ総回転量を取得する。
ステップS90では、ブレーキ診断装置9は、診断部36により、上記ステップS60において取得した摩擦材29の摩耗量の大きさが「大」、「中」、「小」のいずれであるかを判定する。摩耗量の大きさが「大」である場合(第1しきい値以上の場合)には、図9に示すステップS100に移る。
図9に示すように、ステップS100では、ブレーキ診断装置9は、警告情報出力部37により、摩擦材29(又はブレーキ装置7)の交換を促す「ブレーキ寿命警告」を出力する。
ステップS110では、ブレーキ診断装置9は、診断部36により、上記ステップS80において取得したブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」であるか否か(第4しきい値以上か否か)を判定する。ブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」である場合には(ステップS110:YES)、ステップS120に移る。
ステップS120では、ブレーキ診断装置9は、注意情報出力部38により、ブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。その後、本フローを終了する(図8参照)。
一方、上記ステップS110において、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「小」である場合には(ステップS110:NO)、ステップS130に移る。
ステップS130では、ブレーキ診断装置9は、診断部36により、上記ステップS70において取得したモータ総回転量が「小」であるか否か(第3しきい値未満か否か)を判定する。モータ総回転量が「大」である場合には(ステップS130:NO)、本フローを終了する(図8参照)。一方、モータ総回転量が「小」である場合には(ステップS130:YES)、ステップS140に移る。
ステップS140では、ブレーキ診断装置9は、注意情報出力部38により、ブレーキ装置7の空転摩耗に関する注意を促す「空転摩耗注意」を出力する。その後、本フローを終了する(図8参照)。
なお、先のステップS90において、摩耗量の大きさが「中」である場合(第2しきい値以上第1しきい値未満の場合)には、図10に示すステップS200に移る。
図10に示すように、ステップS200では、ブレーキ診断装置9は、診断部36により、上記ステップS70において取得したモータ総回転量が「小」であるか否か(第3しきい値未満か否か)を判定する。モータ総回転量が「小」である場合には(ステップS200:YES)、ステップS210に移る。
ステップS210では、ブレーキ診断装置9は、警告情報出力部37により、摩擦材29の摩耗が異常に進行中であることを示す「早期摩耗警告」を出力する。
ステップS220では、ブレーキ診断装置9は、診断部36により、上記ステップS80において取得したブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」であるか否か(第4しきい値以上か否か)を判定する。ブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」である場合には(ステップS220:YES)、ステップS230に移る。
ステップS230では、ブレーキ診断装置9は、注意情報出力部38により、ブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。その後、本フローを終了する(図8参照)。
一方、上記ステップS220において、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「小」である場合には(ステップS220:NO)、ステップS240に移る。
ステップS240では、ブレーキ診断装置9は、注意情報出力部38により、ブレーキ装置7の空転摩耗に関する注意を促す「空転摩耗注意」を出力する。その後、本フローを終了する(図8参照)。
一方、上記ステップS200において、モータ総回転量が「大」である場合には(ステップS200:NO)、ステップS250に移る。
ステップS250では、ブレーキ診断装置9は、警告情報出力部37により、摩擦材29の摩耗が正常に進行中であることを示す「通常摩耗警告」を出力する。
ステップS260では、ブレーキ診断装置9は、診断部36により、上記ステップS80において取得したブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」であるか否か(第4しきい値以上か否か)を判定する。ブレーキ作動時のモータ総回転量が「小」である場合には(ステップS260:NO)、本フローを終了する(図8参照)。一方、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」である場合には(ステップS260:YES)、ステップS270に移る。
ステップS270では、ブレーキ診断装置9は、注意情報出力部38により、ブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。その後、本フローを終了する(図8参照)。
なお、先のステップS90において、摩耗量の大きさが「小」である場合(第2しきい値未満の場合)には、図11に示すステップS300に移る。
図11に示すように、ステップS300では、ブレーキ診断装置9は、診断部36により、上記ステップS80において取得したブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」であるか否か(第4しきい値以上か否か)を判定する。ブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」である場合には(ステップS300:YES)、ステップS310に移る。
ステップS310では、ブレーキ診断装置9は、注意情報出力部38により、ブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。その後、本フローを終了する(図8参照)。
一方、上記ステップS300において、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「小」である場合には(ステップS300:NO)、ステップS320に移る。
ステップS320では、ブレーキ診断装置9は、診断部36により、上記ステップS70において取得したモータ総回転量が「小」であるか否か(第3しきい値未満か否か)を判定する。モータ総回転量が「小」である場合には(ステップS320:YES)、ステップS330に移る。
ステップS330では、ブレーキ診断装置9は、診断部36により、「正常」である旨の診断結果を出力する。その後、本フローを終了する(図8参照)。
一方、上記ステップS320において、モータ総回転量が「大」である場合には(ステップS320:NO)、ステップS340に移る。
ステップS340では、ブレーキ診断装置9は、診断部36により、「正常」である旨の診断結果を出力する。その後、本フローを終了する(図8参照)。
(1-6.第1実施形態による効果)
以上説明したように、本実施形態のブレーキ診断装置9は、摩擦材29の摩耗量に加えて、モータ6の回転量の累積値であるモータ総回転量を取得し、これら2つのデータを組み合わせてブレーキ装置7の摩耗を診断する。これにより、例えば摩耗量がある程度大きい場合であっても、モータ総回転量が大きい場合には、モータ6の運転時間に対して摩耗量が適応した量であるか相対的に小さいということであるから、正常な摩耗であると診断することができる。一方で、モータ総回転量が小さい場合には、モータ6の運転時間に対して摩耗量が相対的に大きいということであるから、何らかの異常による摩耗であると診断することができる。このようにして、摩擦材29の摩耗状態だけでなく、その摩耗が正常な摩耗なのか異常な摩耗なのかについても診断することができるので、診断結果の有効性を向上できる。
また、本実施形態において、診断部36が、摩耗量取得部31により取得された摩耗量と、摩耗量に関して設定された2以上の第1しきい値及び第2しきい値と、に基づいて、当該しきい値による3以上の摩耗量の区分ごとに異なる診断結果を出力する場合には、次のような効果を得る。
すなわち、上記構成により、単に摩耗状態が正常又は異常であるという2種類の診断結果を出力するだけではなく、異常となる前の段階においてユーザに早期に注意を促す診断結果を出力することが可能となる。したがって、ブレーキ装置7に不具合が発生するのを未然に防止できる。
また、本実施形態において、ブレーキ診断装置9が、ブレーキ装置7の作動時におけるモータ6の回転量の累積値であるブレーキ作動時のモータ総回転量を取得する第2回転量取得部35、をさらに有し、診断部36は、摩耗量取得部31により取得された摩耗量と、第1回転量取得部33により取得されたモータ総回転量と、第2回転量取得部35により取得されたブレーキ作動時のモータ総回転量と、に基づいて、ブレーキ装置7の摩耗を診断する場合には、次のような効果を得る。
すなわち診断部36は、摩擦材29の摩耗量とモータ総回転量に加えて、ブレーキ作動時のモータ総回転量を取得し、これら3つのデータを組み合わせてブレーキ装置7の摩耗を診断する。これにより、例えば摩耗量が中程度以上で且つモータ総回転量が小さい場合(異常摩耗)に、ブレーキ作動時のモータ総回転量が大きい場合には、ブレーキ作動時にモータ6が大きく回転しているということであるから、その異常摩耗はブレーキ装置7の動作状況が不適切である(保持用でなく制動用として使用されている)ことが原因であると診断することができる。一方で、ブレーキ作動時のモータ総回転量が小さい場合には、ブレーキ作動時はモータ6はほぼ回転していないにも拘わらず異常な摩耗が生じているということであるから、ブレーキ解放時に空転摩耗が生じていると診断することができる。このようにして、摩擦材29に異常な摩耗が生じている場合にその原因ついても診断することができるので、診断結果の有効性をさらに向上できる。
また、本実施形態において、診断部36が、摩耗量取得部31により取得された摩耗量と、摩耗量に関して設定された第1しきい値及びこの第1しきい値よりも小さい第2しきい値と、に基づいて、摩耗量が第1しきい値以上である(「大」である)場合には、摩擦材29の交換を促す「寿命警告」を出力し、摩耗量が第2しきい値以上かつ第1しきい値未満である(「中」である)場合には、摩擦材29の摩耗が進行中であることを示す「摩耗警告」(早期摩耗警告又は通常摩耗警告)を出力する、警告情報出力部37を有する場合には、次のような効果を得る。
すなわち、上記構成により、摩耗量が大きい場合には摩擦材29が寿命であると診断して、モータ総回転量やブレーキ作動時のモータ総回転量に関わらずにユーザに摩擦材29(又はブレーキ装置7)の交換を促すことができる。また、摩耗量が中程度である場合には、まだ寿命ではないが摩耗が進行中であるためユーザに注意を促すことができる。
また、本実施形態において、「摩耗警告」が、摩擦材29の摩耗が正常に進行中であることを示す「通常摩耗警告」と、摩擦材29の摩耗が異常に進行中であることを示す「早期摩耗警告」と、を含み、警告情報出力部37が、摩耗量が第2しきい値以上かつ第1しきい値未満である(「中」である)場合に、第1回転量取得部33により取得されたモータ総回転量と、モータ総回転量に関して設定された第3しきい値と、に基づいて、モータ総回転量が第3しきい値以上である(「大」である)場合には「通常摩耗警告」を出力し、モータ総回転量が第3しきい値未満である(「小」である)場合には「早期摩耗警告」を出力する場合には、次のような効果を得る。
すなわち、上記構成により、摩耗量が中程度であり且つモータ総回転量が大きい場合には、モータ6の運転時間に対して摩耗量が適応した量であるか相対的に小さいということであるから、摩耗は進行中であるが正常な摩耗であるためまだ使用可能であることをユーザに知らせることができる。一方で、摩耗量が中程度であり且つモータ総回転量が小さい場合には、モータ6の運転時間に対して摩耗量が相対的に大きいということであるから、何らかの異常により摩耗が進行中であるため、まだ寿命ではないが早期に摩擦材29(ブレーキ装置7)を交換することをユーザに促すことができる。
また、本実施形態において、診断部36が、第2回転量取得部35により取得されたブレーキ作動時のモータ総回転量と、ブレーキ作動時のモータ総回転量に関して設定された第4しきい値と、に基づいて、ブレーキ作動時のモータ総回転量が第4しきい値以上である(「大」である)場合には、ブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する、注意情報出力部38を有する場合には、次のような効果を得る。
すなわち、上記構成により、ブレーキ作動時のモータ総回転量が大きい場合にはブレーキ装置7の動作状況が不適切な可能性がある(保持用でなく制動用として使用されている)と診断して、摩耗量やモータ総回転量に関わらずにユーザにモータ6とブレーキ装置7の運転パターンを確認するように注意を促すことができる。
また、本実施形態において、注意情報出力部38が、摩耗量が第2しきい値以上(「中」又は「大」)且つモータ総回転量が第3しきい値未満(「小」)である場合に、ブレーキ作動時のモータ総回転量が第4しきい値未満(「小」)である場合には、ブレーキ装置7の空転摩耗に関する注意を促す「空転摩耗注意」を出力する場合には、次のような効果を得る。
すなわち、上記構成により、例えば摩耗量が中程度以上で且つモータ総回転量が小さい場合(異常摩耗)に、ブレーキ作動時のモータ総回転量が小さい場合には、異常摩耗の原因はブレーキ解放時の空転摩耗であると診断して、ユーザに摩擦材29(ブレーキ装置7)の交換を促すことができる。
また、本実施形態において、ブレーキ診断装置9が、ブレーキ装置7のブレーキコイル25に流れる電流を検出する電流センサ11の検出結果に基づいて摩擦材29の摩耗量を推定する摩耗量推定部30、をさらに有し、摩耗量取得部31が、摩耗量推定部30により推定された摩耗量を取得する場合には、次のような効果を得る。
すなわち、上記構成により、電流センサ11が既設であればそれを流用することにより、摩擦材29の摩耗量を例えば物理的に計測するセンサ等を別途に設ける必要が無くなるので、ブレーキ診断装置9を小型化、軽量化、低コスト化できる。
また、本実施形態において、ブレーキ診断システム2が、ブレーキ診断装置9と、サーボモータ5のブレーキ装置7に電源を供給するブレーキ電源装置10と、ブレーキ装置7のブレーキコイル25に流れる電流を検出する電流センサ11と、を有し、ブレーキ診断装置9、ブレーキ電源装置10及び電流センサ11が、コントローラ3からの指令に基づいてサーボモータ5を制御するモータ制御装置4とは別体として構成される場合には、次のような効果を得る。
例えばブレーキ診断装置9の診断機能や電流センサ11等をモータ制御装置に一体的に実装する場合、ユーザは既存のモータ制御装置を新たなモータ制御装置に交換することが必要になるため、導入コストが増大する。また、ハードウェア及びソフトウェアを追加した新たなモータ制御装置を機種展開することになるため、開発コストも増大する。これに対して、本実施形態のブレーキ診断システム2では、ブレーキ診断装置9、ブレーキ電源装置10及び電流センサ11が、モータ制御装置4とは別体として構成されている。これにより、モータ制御装置4の汎用性を維持できると共に、ユーザは既存のモータ制御装置をそのまま利用しつつブレーキ診断システム2を例えば外部モジュールとして追加すればよいため、導入コストを低減できる。また、新たなモータ制御装置の機種展開も不要となるため、開発コストも抑制できる。
<2.第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、ブレーキディスクの片側の表面に摩擦材が設けられたいわゆる片面ブレーキを診断する。
(2-1.サーボモータの構成)
図12を参照しつつ、第2実施形態に係るサーボモータ105の構成の一例について説明する。なお、図12では前述の図2と同様の構成に同符号を付している。
サーボモータ105は、モータ6と、ブレーキ装置107と、エンコーダ8とを有する。モータ6やエンコーダ8の構成は前述の第1実施形態と同様である。
ブレーキ装置107は、前述の第1実施形態と同様に無励磁作動形のブレーキ装置であり、保持用ブレーキとして使用される。ブレーキ装置107は、フィールドコア21と、アーマチュア22と、ブレーキディスク123とを有する。
ブレーキディスク123は、固定ねじ(図示省略)等によりシャフト14に固定される。なお、固定ねじ以外にも、例えば圧入、接着、ねじ以外の固定具(リベットなど)等により、ブレーキディスク123をシャフト14に固定してもよい。ブレーキディスク123は、反負荷側の表面に摩擦材29を有する。ブレーキ装置107のその他の構成は、前述の第1実施形態と同様である。
アーマチュア22は、ブレーキコイル25が通電されていない状態(無励磁状態)では、ばね26により負荷側へ押圧され、ブレーキディスク123の摩擦材29と係合する。この結果、電源停止時等にシャフト14が停止状態で保持される。この状態が、ブレーキ装置107の作動状態である。一方、アーマチュア22は、ブレーキコイル25が通電されている状態(励磁状態)では、ブレーキコイル25による磁気吸引力により反負荷側へ吸引され、ブレーキディスク123が解放される。この結果、シャフト14が回転可能となる。この状態が、ブレーキ装置107の解放状態である。
ブレーキ装置107は、解放状態において、ブレーキディスク123の摩擦材29とアーマチュア22との間に所定のギャップが形成されるように構成される。このため、サーボモータ105の向きや姿勢に関わらず、基本的にブレーキ装置7の解放時に空転摩耗は生じない構成となっている。
(2-2.ブレーキ診断装置の機能構成)
図13を参照しつつ、第2実施形態に係るブレーキ診断装置109の機能構成の一例について説明する。なお、図13では前述の図3と同様の構成に同符号を付している。
図13に示すように、ブレーキ診断装置109は、摩耗量推定部30と、摩耗量取得部31と、第1回転量記録部32と、第1回転量取得部33と、診断部136とを有する。前述の第1実施形態と異なり、第2回転量記録部34及び第2回転量取得部35については有していない。各処理部の機能については前述の第1実施形態と同様である。
(2-3.診断部の診断手法)
図14及び図15を参照しつつ、診断部136による診断手法の一例について説明する。
図14に示すように、摩耗量には第1しきい値と第2しきい値が設定されている。この例では、第1しきい値と第2しきい値は固定値として設定されている。また、モータ総回転量には第3しきい値が設定されている。この例では、第3しきい値は例えば所定の数式やテーブルによりモータ総回転量の増加に応じて略直線的に増加するしきい値として設定されている。第3しきい値をこのように設定することにより、モータの動作時間を反映でき、モータが新品なのか長く使用されているのか等を判断することができる。なお、第3しきい値を摩耗量の増加に応じて略直線的に増加するしきい値として設定してもよい。
診断部136は、摩耗量取得部31により取得された摩耗量と、摩耗量に関して設定された第1しきい値及び第2しきい値と、第1回転量取得部33により取得されたモータ総回転量と、モータ総回転量に関して設定された第3しきい値とに基づいて、上記第1~第3しきい値による複数の区分(この例では6区分)ごとに診断結果を出力する。
図15は、これらの診断結果の一例を説明するための図である。なお、各しきい値における「大」、「中」、「小」については前述の第1実施形態(図6)と同様である。
図15に示すように、診断部136は、摩耗量及びモータ総回転量が共に「小」である場合には、摩耗が少なくほぼ新品であると推定し、「正常」である旨の診断結果を出力する。同様に、診断部136は、摩耗量が「小」で、且つ、モータ総回転量が「大」である場合には、モータの運転時間に対して摩耗量が相対的に小さいということであるから、正常に摩耗していると推定し、「正常」である旨の診断結果を出力する。
また、診断部136は、摩耗量が「大」で、且つ、モータ総回転量が「小」である場合には、摩擦材29が寿命であると推定して警告情報出力部37により摩擦材29(又はブレーキ装置7)の交換を促す「ブレーキ寿命警告」を出力する。加えて、診断部36は、モータの運転時間に対して摩耗量が相対的に大きいことから異常な摩耗が生じており、且つ、異常摩耗の原因は不適切な運転による摩耗である(片面ブレーキであるから空転摩耗ではない)と推定し、ブレーキ寿命警告と併せて、注意情報出力部38によりブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。
また、診断部36は、摩耗量及びモータ総回転量が共に「大」である場合には、摩擦材29は寿命であるけれども、モータの運転時間に対して摩耗量が適応した量であるということであるから、正常に摩耗していると推定し、警告情報出力部37により「ブレーキ寿命警告」のみを出力する。
また、診断部36は、摩耗量が「中」で、且つ、モータ総回転量が「小」である場合には、モータの運転時間に対して摩耗量が相対的に大きいということであるから、摩耗が異常に進行中であると推定して、警告情報出力部37により摩擦材29の摩耗が異常に進行中であることを示す「早期摩耗警告」を出力する。加えて、診断部36は、異常摩耗の原因は不適切な運転による摩耗である(片面ブレーキであるから空転摩耗ではない)と推定し、早期摩耗警告と併せて、注意情報出力部38によりブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。
また、診断部36は、摩耗量が「中」で、且つ、モータ総回転量が「大」である場合には、モータの運転時間に対して摩耗量が相対的に小さいということであるから、摩耗が正常に進行中であると推定して、警告情報出力部37により摩擦材29の摩耗が正常に進行中であることを示す「通常摩耗警告」を出力する。
(2-4.ブレーキ診断手順)
図16~図19を参照しつつ、ブレーキ診断装置109により実行されるブレーキ診断手順の一例について説明する。なお、図16では前述の図8と同様の手順に同符号を付している。
図16において前述の図8と異なる点は、ステップS80がない点である。その他の手順は前述の図8と同じであるため、説明を省略する。
図16に示すステップS90において、摩耗量の大きさが「大」である場合(第1しきい値以上の場合)には、図17に示すステップS400に移る。
図17に示すように、ステップS400では、ブレーキ診断装置109は、警告情報出力部37により、摩擦材29(又はブレーキ装置7)の交換を促す「ブレーキ寿命警告」を出力する。
ステップS410では、ブレーキ診断装置109は、診断部136により、上記ステップS70において取得したモータ総回転量が「小」であるか否か(第3しきい値未満か否か)を判定する。モータ総回転量が「大」である場合には(ステップS410:NO)、本フローを終了する(図16参照)。一方、モータ総回転量が「小」である場合には(ステップS410:YES)、ステップS420に移る。
ステップS420では、ブレーキ診断装置109は、注意情報出力部38により、ブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。その後、本フローを終了する(図16参照)。
なお、先のステップS90において、摩耗量の大きさが「中」である場合(第2しきい値以上第1しきい値未満の場合)には、図18に示すステップS500に移る。
図18に示すように、ステップS500では、ブレーキ診断装置109は、診断部136により、上記ステップS70において取得したモータ総回転量が「小」であるか否か(第3しきい値未満か否か)を判定する。モータ総回転量が「小」である場合には(ステップS500:YES)、ステップS510に移る。
ステップS510では、ブレーキ診断装置109は、警告情報出力部37により、摩擦材29の摩耗が異常に進行中であることを示す「早期摩耗警告」を出力すると共に、注意情報出力部38により、ブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。その後、本フローを終了する(図16参照)。
一方、上記ステップS500において、モータ総回転量が「大」である場合には(ステップS500:NO)、ステップS520に移る。
ステップS520では、ブレーキ診断装置109は、警告情報出力部37により、摩擦材29の摩耗が正常に進行中であることを示す「通常摩耗警告」を出力する。その後、本フローを終了する(図16参照)。
なお、先のステップS90において、摩耗量の大きさが「小」である場合(第2しきい値未満の場合)には、図19に示すステップS600に移る。
図19に示すように、ステップS600では、ブレーキ診断装置109は、診断部136により、上記ステップS70において取得したモータ総回転量が「小」であるか否か(第3しきい値未満か否か)を判定する。モータ総回転量が「小」である場合には(ステップS600:YES)、ステップS610に移る。
ステップS610では、ブレーキ診断装置109は、診断部136により、「正常」である旨の診断結果を出力する。その後、本フローを終了する(図16参照)。
一方、上記ステップS600において、モータ総回転量が「大」である場合には(ステップS600:NO)、ステップS620に移る。
ステップS620では、ブレーキ診断装置109は、診断部136により、「正常」である旨の診断結果を出力する。その後、本フローを終了する(図16参照)。
以上説明した第2実施形態によれば、本発明を片面ブレーキに適用した場合にも、前述の第1実施形態と同様にブレーキ診断装置の診断結果の有効性を向上できる。
<3.第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、ブレーキ装置の動作状況の適否について診断する。
(3-1.ブレーキ診断装置の機能構成)
図20を参照しつつ、第3実施形態に係るブレーキ診断装置209の機能構成の一例について説明する。なお、図20では前述の図3と同様の構成に同符号を付している。
図20に示すように、ブレーキ診断装置209は、第2回転量記録部34と、第2回転量取得部35(回転量取得部の一例)と、診断部236とを有する。診断部236は、注意情報出力部38を有する。各処理部の機能については前述の第1実施形態等と同様である。
(3-2.診断部の診断手法)
図21を参照しつつ、診断部236による診断手法の一例について説明する。
前述の第1実施形態と同様に、ブレーキ作動時のモータ総回転量には第4しきい値が設定されている。診断部236は、第2回転量取得部35により取得されたブレーキ作動時のモータ総回転量と、ブレーキ作動時のモータ総回転量に関して設定された第4しきい値とに基づいて、当該第4しきい値による複数の区分(この例では2区分)ごとに診断結果を出力する。
図21は、これらの診断結果の一例を説明するための図である。なお、第4しきい値における「大」、「小」については前述の第1実施形態(図6)と同じである。
図21に示すように、診断部236は、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「小」である場合には、ブレーキ作動時にモータ6がほぼ回転していないということであるから、ブレーキ装置7の動作状況(運転パターン)が適切である、すなわち保持用として使用されていると推定し、「正常」である旨の診断結果を出力する。
また、診断部236は、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」である場合には、ブレーキ作動時にモータ6が比較的大きく回転しているということであるから、ブレーキ装置7の動作状況(運転パターン)が不適切である、すなわち保持用でなく制動用として使用されている可能性があると推定し、注意情報出力部38によりブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。
なお、本実施形態では正常以外の診断結果を注意情報として出力しているが、緊急度あるいは重要度がより高い情報(例えば警告情報)として出力してもよい。
(3-3.ブレーキ診断手順)
図22を参照しつつ、ブレーキ診断装置209により実行されるブレーキ診断手順の一例について説明する。なお、図22では前述の図8と同様の手順に同符号を付している。
図22において、ステップS10~ステップS30及びステップS80は前述の図8と同じであるため、説明を省略する。
ステップS700では、ブレーキ診断装置209は、診断部236により、上記ステップS80において取得したブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」であるか否か(第4しきい値以上か否か)を判定する。ブレーキ作動時のモータ総回転量が「大」である場合には(ステップS700:YES)、ステップS710に移る。
ステップS710では、ブレーキ診断装置209は、注意情報出力部38により、ブレーキ装置7の動作状況に関する注意を促す「運転パターン注意」を出力する。その後、本フローを終了する。
一方、上記ステップS700において、ブレーキ作動時のモータ総回転量が「小」である場合には(ステップS700:NO)、ステップS720に移る。
ステップS720では、ブレーキ診断装置209は、診断部236により、ブレーキ装置7の動作状況が「正常」である旨の診断結果を出力する。その後、本フローを終了する。
以上説明した第3実施形態によれば、ブレーキ作動時のモータ総回転量を取得し、このデータに基づいてブレーキ装置7の使用状況が適切か否かについて診断することができるので、診断結果の有効性を向上できる。
<4.第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態では、摩耗量と、摩耗量に関して設定された2以上のしきい値とに基づいて、ブレーキ装置を診断する。
(4-1.ブレーキ診断装置の機能構成)
図23を参照しつつ、第4実施形態に係るブレーキ診断装置309の機能構成の一例について説明する。なお、図23では前述の図3と同様の構成に同符号を付している。
図23に示すように、ブレーキ診断装置309は、摩耗量推定部30と、摩耗量取得部31と、診断部336とを有する。診断部336は、警告情報出力部37を有する。各処理部の機能については前述の第1実施形態等と同様である。
(4-2.診断部の診断手法)
図24を参照しつつ、診断部336による診断手法の一例について説明する。
前述の第1実施形態と同様に、摩耗量には第1しきい値と第2しきい値が設定されている。診断部336は、摩耗量取得部31により取得された摩耗量と、摩耗量に関して設定された第1しきい値及び第2しきい値とに基づいて、上記第1しきい値及び第2しきい値による複数の区分(この例では3区分)ごとに診断結果を出力する。
図24は、これらの診断結果の一例を説明するための図である。なお、各しきい値における「大」、「中」、「小」については前述の第1実施形態(図6)と同じである。
図24に示すように、診断部336は、摩耗量が「小」である場合には、摩耗が少なく正常であると推定し、「正常」である旨の診断結果を出力する。また、診断部336は、摩耗量が「大」である場合には、摩耗量が大きいことから摩擦材29が寿命であると推定して、警告情報出力部37により摩擦材29(又はブレーキ装置7)の交換を促す「ブレーキ寿命警告」を出力する。また、診断部336は、摩耗量が「中」である場合には、まだ使用可能だが摩耗が進行中であると推定して、警告情報出力部37により摩擦材29の摩耗が進行中であることを示す「ブレーキ摩耗警告」(第2の警告情報の一例)を出力する。
なお、本実施形態では正常以外の診断結果を警告情報として出力しているが、例えばブレーキ摩耗警告については緊急度あるいは重要度がより低い情報(例えば注意情報)として出力してもよい。
(4-3.ブレーキ診断手順)
図25を参照しつつ、ブレーキ診断装置309により実行されるブレーキ診断手順の一例について説明する。なお、図25では前述の図8と同様の手順に同符号を付している。
図25において、ステップS10及びステップS40~ステップS60は前述の図8と同じであるため、説明を省略する。
ステップS90では、ブレーキ診断装置309は、診断部336により、上記ステップS60において取得した摩擦材29の摩耗量の大きさが「大」、「中」、「小」のいずれであるかを判定する。摩耗量の大きさが「大」である場合(第1しきい値以上の場合)には、ステップS800に移る。
ステップS800では、ブレーキ診断装置309は、警告情報出力部37により、摩擦材29(又はブレーキ装置7)の交換を促す「ブレーキ寿命警告」を出力する。その後、本フローを終了する。
一方、先のステップS90において、摩耗量の大きさが「中」である場合(第2しきい値以上第1しきい値未満の場合)には、ステップS810に移る。
ステップS810では、ブレーキ診断装置309は、警告情報出力部37により、摩擦材29の摩耗が進行中であることを示す「ブレーキ摩耗警告」を出力する。その後、本フローを終了する。
一方、先のステップS90において、摩耗量の大きさが「小」である場合(第2しきい値未満の場合)には、ステップS820に移る。
ステップS820では、ブレーキ診断装置309は、「正常」である旨の診断結果を出力する。その後、本フローを終了する。
以上説明した第4実施形態によれば、摩耗量と摩耗量に関して設定された2以上のしきい値とに基づいてブレーキ装置を診断するので、単に摩耗状態が多い(寿命)又は少ない(正常)という2種類の診断結果を出力するだけでなく、寿命となる前の段階においてユーザに早期に注意を促す診断結果(例えばブレーキ摩耗警告)を出力することが可能となる。したがって、ブレーキ装置7に不具合が発生するのを未然に防止できる。
<5.変形例>
なお、以上説明した各実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
以上では、電流センサ11の出力波形に基づいて、ブレーキ装置7が作動状態から解放状態となるときのアーマチュア22の吸引時間から摩擦材29の摩耗量を推定する場合について説明したが、他の手法により摩耗量を推定してもよい。例えば、摩擦材29の摩耗量が増加すると、ブレーキ装置7が解放状態から作動状態となるときのアーマチュア22の移動量が増加するため、アーマチュア22の解放に要する時間(「釈放時間」ともいう)が長くなる。そして、図示は省略するが、ブレーキ電流は、リレー12の接点が開くタイミングから減少し始め、ブレーキコイル25のインダクタンス及び巻線抵抗等によって定まる時定数に基づいて減少する。ブレーキ電流の減少に伴ってブレーキコイル25が発生する吸引力も減少し、当該吸引力がばね26による押し付け力を下回ったときに、アーマチュア22がブレーキディスク23側へ移動してブレーキディスク23が係合される。このときのアーマチュア22の移動によりブレーキコイル25の磁束が変化するので、ブレーキ電流に乱れが生じて電流センサ11の出力が一時的に上昇する。したがって、電流センサ11の出力波形に基づいて、ブレーキ装置7が解放状態から作動状態となるときのアーマチュア22の釈放時間から摩擦材29の摩耗量を推定してもよい。
なお、リレー12の接点が開くときにブレーキコイル25の逆起電力により電圧に変化が生じるために、例えば図26に示すように電圧センサ39を設けておき、当該電圧センサ39の出力波形に基づいてアーマチュア22の釈放時間を検出し、摩擦材29の摩耗量を推定してもよい。また、電流センサや電圧センサの代わりに、例えば超音波センサや光学センサ等の摩擦材29の摩耗量を物理的に計測するセンサを用いてもよい。
また以上では、第1実施形態の診断手法(図3~図11)を両面ブレーキに適用した場合について説明したが、例えば何らかの要因により片面ブレーキであっても空転摩耗が生じる可能性がある場合等には、第1実施形態の診断手法を片面ブレーキに適用してもよい。また以上では、第2実施形態の診断手法(図13~図19)を片面ブレーキに適用した場合について説明したが、例えば何らかの要因により両面ブレーキであっても空転摩耗が生じる可能性がない又は少ない場合等には、第2実施形態の診断手法を両面ブレーキに適用してもよい。また、第3実施形態の診断手法(図20~図22)、及び、第4実施形態の診断手法(図23~図25)は、両面ブレーキ及び片面ブレーキのいずれに適用してもよい。さらに、第2~第4実施形態の診断手法のうち、2つ又は3つを組み合わせて、両面ブレーキ又は片面ブレーキに適用することも可能である。
<6.ブレーキ診断装置のハードウェア構成例>
次に、図27を参照しつつ、上記で説明したCPU901が実行するプログラムにより実装された摩耗量取得部31等による処理を実現するブレーキ診断装置9のハードウェア構成例について説明する。なお、前述の第2~第4実施形態で記載したブレーキ診断装置109,209,309のハードウェア構成例についても同様である。
図27に示すように、ブレーキ診断装置9は、例えば、CPU901と、ROM903、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、入力装置913と、出力装置915と、記録装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、記録装置917等に記録しておくことができる。
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブルな記録媒体925に、一時的又は永続的に記録しておくこともできる。このような記録媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらの記録媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
また、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
また、プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
そして、CPU901が、上記記録装置917に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記の摩耗量取得部31、第1回転量取得部33、第2回転量取得部35等による処理が実現される。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置917からプログラムを直接読み出して実行してもよいし、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置917に記録せずに直接実行してもよい。
また、CPU901は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
そして、CPU901は、上記の処理を実行した結果を、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよく、さらにCPU901は、必要に応じてこの処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよく、上記記録装置917や記録媒体925に記録させてもよい。
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
但し、例えばしきい値や基準値等、所定の判定基準となる値あるいは区切りとなる値の記載がある場合は、それらに対しての「同一」「等しい」「異なる」等は、上記とは異なり、厳密な意味である。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。