実施の形態1.
実施の形態1におけるモータ制御システムについて説明する。図1は、実施の形態1におけるモータ制御システムの構成を示す図である。図1に示すように、モータ制御システムは、電磁ブレーキ1と、同期電動機2と、駆動装置3aと、位置検出器4と、上位コントローラ5と、電磁ブレーキ制御装置6とを備える。実施の形態1のモータ制御システムにおいて、同期電動機2は、ブレーキ装置として電磁ブレーキ1を備える。図1において、同期電動機2は、電磁ブレーキ1により制動されている。
電磁ブレーキ1は、同期電動機2の回転軸21に組み付けられ、同期電動機2の制動を行う。電磁ブレーキ1は、図1に示すように、ヨーク11、コイル12、ボルト13、プレート14、アーマチュア15、ブレーキライニング16、及びばね17を備える。
ヨーク11は、図1に示すように、同期電動機2の一端面に設けられる。ヨーク11は、鉄等の材料から形成される。ヨーク11は、円柱形状である。ヨーク11は、中心に穴が設けられ、この中心の穴に回転軸21が挿入される。ヨーク11は、周縁部にねじ穴が設けられる。
コイル12は、図1に示すように、ヨーク11内に埋め込まれるようにして設けられる。コイル12は、円筒形状のボビンに、巻線を巻回して形成する。
ボルト13は、ヨーク11の周縁部のねじ穴に挿入される。これにより、ボルト13は、ヨーク11に対して固定される。
プレート14は、中心に穴が設けられ、この中心の穴に回転軸21が挿入される。プレート14は、円盤形状である。また、プレート14は、周縁部にねじ穴が設けられる。この周縁部のねじ穴には、ボルト13が挿入される。このため、プレート14は、ボルト13に対して固定される。これにより、プレート14は、ヨーク11に対して固定される。
アーマチュア15は、中心に穴が設けられ、この中心の穴に回転軸21が挿入される。アーマチュア15は、円盤形状である。また、アーマチュア15は、周縁部に穴が設けられる。この周縁部の穴には、ボルト13が挿入される。このとき、アーマチュア15は、ボルト13に沿って移動可能に支持される。これにより、アーマチュア15は、ヨーク11及び回転軸21に対して移動可能に支持される。
ブレーキライニング16は、プレート14とアーマチュア15の間に設けられる。ブレーキライニング16は、高い摩擦係数を持つように形成された摩擦材である。ブレーキライニング16は、回転軸21に固定される。
ばね17は、同期電動機2の一端面とアーマチュア15とに固定される。ばね17は、図1に示す復元力fを発生させる。この復元力fは、図1に示すように、アーマチュア15に対し、ブレーキライニング16へと押し付ける方向に働く。
同期電動機2は、回転軸21を有する。同期電動機2は、駆動装置3aから電流が供給される。同期電動機2は、供給された電流を、駆動力に変換する。この駆動力は、回転軸21を介して、回転軸21に接続された図示しない外部負荷へと伝達する。
駆動装置3aには、図1に示すように、電磁ブレーキ1、同期電動機2、位置検出器4、上位コントローラ5、及び電磁ブレーキ制御装置6が接続される。また、駆動装置3aは、CPU31a、記憶装置32、電流検出回路33、及び表示部34を備える。
記憶装置32は、n回分の正常時のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnと、閾値Thと、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbと、同期電動機2の定格トルクと、をあらかじめ記憶している。定格トルクとは、定格電圧、定格周波数で駆動した場合において、同期電動機2が出力するトルクのことをいう。なお、n回分の正常時のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnと、閾値Thと、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbとについては、後述する。
表示部34は、例えば、ランプやディスプレイなどであり、ユーザに対し、異常が発生したこと、及び発生した異常の原因を通知する。
位置検出器4は、同期電動機2の回転軸21に対して取り付けられる。位置検出器4は、同期電動機2の回転軸21の回転位置を検出する。また、位置検出器4は、検出した回転軸21の回転位置から、同期電動機2の回転軸21の回転速度を算出する。
上位コントローラ5は、駆動装置3aに対する指令を出力する。電磁ブレーキ制御装置6は、電磁ブレーキ1の制動を制御する。
次に、実施の形態1におけるモータ制御システムの動作について説明する。図1において、電磁ブレーキ1は、ばね17の復元力fにより、アーマチュア15をブレーキライニング16に押し付ける。電磁ブレーキ1は、アーマチュア15とブレーキライニング16間に発生する摩擦力により、同期電動機2を制動する。またこのとき、コイル12には、電流が流れていない。このため、コイル12は、磁束を発生しない。
図2は、実施の形態1における同期電動機2の駆動時について示す図である。同期電動機2の駆動時において、同期電動機2が駆動を開始する前に、電磁ブレーキ制御装置6は、駆動装置3aのCPU31aに対し、ブレーキ制御指令100を出力する。ブレーキ制御指令100は、駆動装置3aのCPU31aに対し、電磁ブレーキ1の制動を解除することを通知する信号のことである。
また、電磁ブレーキ制御装置6は、電磁ブレーキ制御信号101を出力する。電磁ブレーキ制御信号101は、電流検出回路33を介して、コイル12へ入力される。なお、電磁ブレーキ制御信号101とは、コイル12を励磁するための電流のことである。
電磁ブレーキ制御信号101が入力された場合、コイル12は、電流が流れて励磁される。これにより、コイル12は、磁束を発生させ、図2に示す吸着力Fを発生させる。コイル12の発生させた吸着力Fがばね17の復元力fを超えると、アーマチュア15は、コイル12へと吸着される。
アーマチュア15がコイル12へと吸着された場合、アーマチュア15とブレーキライニング16との間には、ギャップが発生する。このため、両者の間には、摩擦力が働かなくなる。これにより、電磁ブレーキ1は、同期電動機2の制動を解除する。
また、電磁ブレーキ制御信号101が流れた時、電流検出回路33は、電磁ブレーキ制御信号101を検出する。電磁ブレーキ制御信号101を検出した場合、電流検出回路33は、電流検出信号102を、CPU31aへと出力する。この電流検出信号102を受けて、CPU31aは、電磁ブレーキ1が同期電動機2の制動を解除したと判断する。
同期電動機2を駆動させる際、上位コントローラ5は、駆動装置3aに対して位置指令103を出力する。位置指令103とは、同期電動機2を駆動させる際における、回転軸21の目標の回転位置についての指令のことである。
駆動装置3aは、同期電動機2へ供給する電流を制御する。また、同期電動機2は、駆動装置3aから供給された電流により駆動する。
同期電動機2の駆動時において、位置検出器4は、回転軸21の回転位置を検出する。位置検出器4は、検出した回転軸21の回転位置を、位置フィードバック値104として、駆動装置3aへと出力する。また、位置検出器4は、検出した回転軸21の回転位置から、回転軸21の回転速度を算出する。位置検出器4は、算出した回転軸21の回転速度を、速度フィードバック値105として、駆動装置3aへと出力する。なお、以下において、同期電動機2の回転軸21の位置情報とは、位置フィードバック値104のことである。
駆動装置3aのCPU31aには、上位コントローラ5から、位置指令103が入力される。また、駆動装置3aのCPU31aには、位置検出器4から、位置フィードバック値104及び速度フィードバック値105が入力される。駆動装置3aのCPU31aは、位置フィードバック値104及び速度フィードバック値105を用いて、電流指令106を算出する。電流指令106とは、位置指令103通りに同期電動機2を駆動させるための指令のことであり、駆動装置3aから同期電動機2へと供給される電流のことである。
駆動装置3aのCPU31aは、図2に示すように、電流指令106を同期電動機2へと出力する。これにより、同期電動機2は、電流指令106に従って駆動する。なお、以下において、同期電動機2が電流指令106に従って駆動することを、同期電動機2の運転という。
次に、実施の形態1における駆動装置3aについて説明する。図3は、実施の形態1における駆動装置3aの構成を示す図である。なお、図3においては、説明の便宜上、電磁ブレーキ1、同期電動機2、位置検出器4、上位コントローラ5、及び電磁ブレーキ6についても図示している。
図3において、上位コントローラ5から出力された位置指令103は、CPU31aの位置制御部107へと入力される。また、位置制御部107には、位置フィードバック値104が入力される。位置制御部107は、位置指令103と位置フィードバック値104とに基づいて、速度指令値108を算出する。位置制御部107は、速度指令値108を速度制御部109へと出力する。
速度制御部109には、速度指令値108と速度フィードバック値105とが入力される。速度制御部109は、速度指令値108と速度フィードバック値105とに基づいて、電流指令値110を算出する。速度制御部109は、電流指令値110を電流制御部111へと出力する。
電流制御部111には、電流指令値110が入力される。また、電流制御部111には、電流指令106がフィードバックされ、入力される。電流制御部111は、電流指令値110とフィードバックされた電流指令106とに基づいて、電流指令106を算出する。
駆動装置3aは、このようにして求めた電流指令106を、同期電動機2へと出力する。これにより、駆動装置3aは、同期電動機2を駆動させる。
また、電流指令106は、CPU31aのトルク推定部112に対しても入力される。トルク推定部112は、電流指令106から、同期電動機2の発生させるトルクを算出する。これにより、駆動装置3aは、同期電動機2の発生させるトルクを検出する。
同期電動機2の駆動時において、電流指令106は、常にトルク推定部112へと入力される。このため、トルク推定部112は、算出したトルクから、同期電動機2のトルク波形を取得することができる。図4は、取得したトルク波形の一例を示す図である。
ここで、同期電動機2は、駆動装置3aに入力される位置指令103により、駆動する。このため、同期電動機2の1周期の動作は、既知である。よって、トルク推定部112は、図4に示すように、取得したトルク波形から、1周期分のトルク波形を求めることができる。
トルク推定部112は、同期電動機2の駆動開始時から1周期分のトルク波形を取得する。また、トルク推定部112は、この取得した1周期分のトルク波形において、図4に示す最大のトルク(以下において、ピークトルクとする)を求める。
トルク推定部112は、求めたピークトルクを記憶装置32へと出力する。記憶装置32は、トルク推定部112から入力されたピークトルクを記憶する。
電磁ブレーキ故障判断部113には、トルク推定部112により求められたピークトルクが入力される。また、電磁ブレーキ故障判断部113には、記憶装置32に記憶された閾値Thが入力される。
ここで、同期電動機2に負荷がかかった場合、同期電動機2には、負荷トルクが発生する。この場合、同期電動機2は、回転軸21を回転させるために、負荷トルクに応じたトルクを発生させる。同期電動機2にかかる負荷が大きいほど、同期電動機2は、大きなトルクを発生させる。また、電磁ブレーキ1の故障などにより、同期電動機2に大きな負荷がかかった場合、同期電動機2には、異常な負荷トルクが発生する。この場合、同期電動機2の発生させるトルクは、異常に増大する。このため、実施の形態1においては、同期電動機2が正常に運転しているときのピークトルクと、同期電動機2が発生させた異常なトルクとを判別するために、閾値Thを使用する。閾値Thの求め方については、後述する。なお、実施の形態1において、同期電動機2の発生させるトルクは、同期電動機2にかかった負荷に基づく変動値である。
電磁ブレーキ故障判断部113は、トルク推定部112から入力されたピークトルクと閾値Thとに基づいて、モータ制御システムに異常が発生したかどうかの判断を行う。なお、電磁ブレーキ故障判断部113は、同期電動機2が駆動を開始する前においても、モータ制御システムに異常が発生したかどうかの判断を行う。モータ制御システムに異常が発生したかどうかの判断については、後述にて説明する。
モータ制御システムに異常が発生したと判断した場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、異常検出信号114を表示部34へと出力する。
表示部34は、入力された異常検出信号114に基づいて、異常が発生したことを表示する。表示部34は、例えばランプ等を備える場合、異常検出信号114に基づいて、発生した故障原因を示すランプを点灯等する。また、表示部34は、例えばディスプレイ等を備える場合、異常検出信号114に基づいて、発生した故障原因を表す文字等をディスプレイ上に表示する。このようにして、表示部34は、ユーザに対し、異常が発生したこと、及び発生した故障の原因を通知する。
なお、トルク推定部112は、同期電動機2が正常に運転しているときに、同期電動機2が駆動を開始してから1周期分のトルクに基づいて、正常時のピークトルクTbを算出する。トルク推定部112は、この正常時のピークトルクTbの算出を、任意のn回行う。つまり、トルク推定部112は、n回分の正常時のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnを算出する。それから、トルク推定部112は、n回分の正常時のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnを、記憶装置32へと出力する。記憶装置32は、n回分の正常時のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnを記憶する。この場合において、同期電動機2が正常に運転しているときとは、例えば、モータ制御システムの新品を立ち上げた時のことである。このため、n回分の正常時のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnは、例えば、モータ制御システムの新品の立ち上げ時において、算出する。
図5は、実施の形態1におけるモータ制御システムの故障の判断手順を示すフローチャートである。図5を参照して、実施の形態1におけるモータ制御システムの故障判断の手順について説明する。
モータ制御システムの電源が投入された後、駆動装置3aが同期電動機2を駆動させる前に、電磁ブレーキ制御装置6は、ブレーキ制御指令100を出力する。ブレーキ制御指令100は、CPU31aの電磁ブレーキ故障判断部113へと入力される。電磁ブレーキ制御装置6は、電磁ブレーキ制御信号101を出力する場合、このブレーキ制御指令100を出力する。
図5のステップS1において、ブレーキ制御指令100が出力されていない場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、電磁ブレーキ1が制動を行っていると判断する。そして、ステップS2へと進む。
図5のステップS2において、電磁ブレーキ故障判断部113は、同期電動機2の回転軸21の位置情報に変化があったかどうかを判断する。具体的には、電磁ブレーキ故障判断部113は、位置検出器4から出力される位置フィードバック値104に変化があったかどうか判断する。
位置フィードバック値104に変化がない場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、回転軸21の回転位置に変化がないと判断する。この場合、同期電動機2は、電磁ブレーキ1により制動され、停止した状態が保たれている。このため、ステップS3において、電磁ブレーキ故障判断部113は、電磁ブレーキ1が正常に動作していると判断する。そして、ステップS1の判断へと戻る。
一方、ステップS2において、位置フィードバック値104に変化がある場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、回転軸21の回転位置が変化したと判断する。これにより、ステップS4において、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムにブレーキ性能劣化故障が発生したと判断する。
ブレーキ性能劣化故障とは、電磁ブレーキ1の制動に関わる部品が劣化することにより、電磁ブレーキ1の制動力が低下する故障のことである。ブレーキ性能劣化故障は、例えば、ブレーキライニング16に塗布された摩擦剤が磨耗したり、ボルト13が緩んだりすることにより、発生する。ブレーキ性能劣化故障は、電磁ブレーキ1の故障である。
なお、電磁ブレーキ1による制動中において、駆動装置3aは、同期電動機2への指令を行わない。このため、ブレーキ制御指令100が出力されていない場合、電磁ブレーキ1が正常に同期電動機2を制動しているならば、位置フィードバック値104に変化はない。しかし、ブレーキ性能劣化故障が発生した場合、電磁ブレーキ1は、制動力が低下する。このため、電磁ブレーキ1が制動を行っている場合であっても、同期電動機2の回転軸21は、同期電動機2に働く外力や回転軸21に接続された外部負荷の自重などにより、移動してしまう。
この場合、ステップS4において、電磁ブレーキ故障判断部113は、異常検出信号114を表示部34へと出力する。このときの異常検出信号114は、ブレーキ性能劣化故障を示す信号である。この信号を受けて、表示部34は、ブレーキ性能劣化故障が発生したことを表示する。
ブレーキ制御指令100が出力された場合、ステップS1において、電磁ブレーキ故障判断部113は、ブレーキ制御指令100がONであると判断する。この場合、電磁ブレーキ制御装置6は、電磁ブレーキ制御信号101を出力する。
次に、図5のステップS5において、電磁ブレーキ故障判断部113は、電磁ブレーキ1に、ブレーキ電流が流れているかどうかを判断する。この判断は、電磁ブレーキ制御信号101が、電磁ブレーキ1へと流れているか否かを検出することにより行う。つまり、この判断は、電流検出回路33が電磁ブレーキ制御信号101を検出することにより行う。
電磁ブレーキ制御信号101を検出しなかった場合、電流検出回路33は、電流検出信号102を電磁ブレーキ故障判断部113へと出力しない。この場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、電流検出信号102が入力されない。このため、ステップS5において、電磁ブレーキ故障判断部113は、ブレーキ電流が流れていないと判断する。これにより、ステップS6において、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムにブレーキ制御回路故障が発生したと判断する。ブレーキ制御回路故障とは、ブレーキ電流回路の断線や接続コネクタの接触不良などにより、電磁ブレーキ制御信号101の伝達経路に異常が発生し、電磁ブレーキ1にブレーキ電流が流れなくなる故障のことである。
上記のとおり、ステップS1において、電磁ブレーキ故障判断部113は、ブレーキ制御指令100がONであると判断している。このため、電磁ブレーキ故障判断部113は、電磁ブレーキ制御信号101が出力されたと判断する。しかし、電磁ブレーキ制御信号101が電磁ブレーキ1に流れない場合、コイル12は、励磁されない。この場合、電磁ブレーキ1は、制動を解除することができなくなる。ブレーキ制御回路故障は、電磁ブレーキ1の故障である。
なお、ブレーキ電流回路とは、電磁ブレーキ制御信号101が流れる接続線のことである。具体的には、ブレーキ電流回路は、電磁ブレーキ制御装置6と電流検出回路33とを結ぶ電線、電流検出回路33とコイル12とを結ぶ電線、及びこれらの接続コネクタのことである。つまり、ブレーキ電流回路の断線とは、これらの電線または接続コネクタが、断線することをいう。また、接続コネクタの接触不良とは、上記の接続コネクタが、電磁ブレーキ制御装置6、電流検出回路33、またはコイル12との間で接触不良を起こすことをいう。
また、ステップS6において、電磁ブレーキ故障判断部113は、異常検出信号114を表示部34へと出力する。このときの異常検出信号114は、ブレーキ制御回路故障を示す信号である。この信号を受けて、表示部34は、ブレーキ制御回路故障が発生したことを表示する。
一方、ステップS5において、電磁ブレーキ制御信号101を検出した場合、電流検出回路33は、電流検出信号102を電磁ブレーキ故障判断部113へと出力する。電流検出信号102が入力された場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、正常にブレーキ電流が流れていると判断し、ステップS7へと進む。
このようにして、実施の形態1におけるモータ制御システムは、同期電動機2が駆動を開始する前に故障の判断を行う。これにより、実施の形態1におけるモータ制御システムは、同期電動機2が駆動を開始する前に判断できる故障を、あらかじめ判別する。
次に、同期電動機2が駆動を開始した時に行う故障判断について説明する。
図5のステップS5において、正常にブレーキ電流が流れていることを確認できた場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、ステップS7において、同期電動機2の駆動の開始時であるかどうかを判断する。同期電動機2の駆動の開始時とは、同期電動機2が駆動を開始した後、1回目にステップS7の判断を行う時のことをいう。
同期電動機2の駆動の開始時でない場合、すでにステップS8以降の判断手順を実施済みである。このため、電磁ブレーキ故障判断部113は、異常の発生はないと判断する。この場合、ステップS1の判断へと戻る。
ステップS7において、同期電動機2の駆動の開始時であると判断した場合、モータ制御システムは、ステップS8以降の判断手順を実施する。
図5のステップS8において、トルク推定部112は、同期電動機2の発生させるトルクを、同期電動機2が駆動を開始してから1周期分算出する。トルク推定部112は、算出した1周期分のトルクから、ピークトルクTaを算出する。トルク推定部112は、算出したピークトルクTaを電磁ブレーキ故障判断部113へと出力する。
ここで、記憶装置32は、上記のとおり、事前にn回分の正常時のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnを記憶している。これらのピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnは、過去の同期電動機2の正常運転時に算出した値である。電磁ブレーキ故障判断部113には、これらn回分のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnが入力される。電磁ブレーキ故障判断部113は、これらn回分のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnから、基準ピークトルクTcを算出する。基準ピークトルクTcは、例えば、n回分のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnの平均値とする。
また、電磁ブレーキ故障判断部113には、トルク推定部112が算出した、今回運転時におけるピークトルクTaが入力される。電磁ブレーキ故障判断部113は、ピークトルクTaと基準ピークトルクTcとの差を、ピークトルク変動量ΔTaとして算出する。ピークトルク変動量ΔTaは、次の(式1)で表される。
ステップS8において、電磁ブレーキ故障判断部113は、上記の(式1)により算出したピークトルク変動量ΔTaを、記憶装置32が記憶している閾値Thと比較する。
ここで、閾値Thの求め方について説明する。例えば、同期電動機2を定格トルクで運転している場合を考える。この場合、同期電動機2が正常に運転しているならば、同期電動機2が発生させるトルクは、定格トルク程度である。また、閾値Thは、同期電動機2が正常に運転しているときのピークトルクTaと、異常時におけるトルクとを判別するための値である。このため、閾値Thは、同期電動機2が正常に運転しているときのピークトルクTaよりも大きな値とする必要がある。そこで、閾値Thは、同期電動機2が発生させるトルクについて、例えば、1.25倍した値とする。上記の例の場合、閾値Thは、例えば、同期電動機2の定格トルクを1.25倍した値とする。このようにして求めた閾値Thについて、記憶装置32は、あらかじめ記憶している。
ステップS8において、ピークトルク変動量ΔTaが閾値Thよりも小さい場合、同期電動機2は、正常に運転している。このため、ステップS9において、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムが正常であると判断する。電磁ブレーキ故障判断部113は、このときのピークトルク変動量ΔTaを記憶装置32に記憶させる。
なお、記憶装置32は、前回運転時におけるピークトルク変動量ΔTbを記憶している。前回運転時とは、今回の運転より前に、ステップS7で同期電動機2の駆動の開始時であると判断された直近の運転時のことである。このため、記憶装置32は、ピークトルク変動量ΔTaを記憶する際、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbを削除する。つまり、記憶装置32は、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbを削除するとともに、今回運転時に算出したピークトルク変動量ΔTaを、新たなピークトルク変動量ΔTbとして記憶する。次回の運転時において、モータ制御システムは、この新たなピークトルク変動量ΔTbを、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbとして使用する。
一方、ステップS8において、ピークトルク変動量ΔTaが閾値Thよりも大きい場合、同期電動機2は、異常なトルクを発生させている。このため、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムに異常が発生し、同期電動機2に異常な負荷トルクが発生したと判断する。そして、ステップS10へと進み、モータ制御システムの故障原因の判断を実施する。
図5のステップS10において、電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbと閾値Thとを比較して、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbが閾値Thに近いかどうか判断する。具体的には、ステップS10において、電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbと閾値Thとの差|ΔTb−Th|を算出する。前回運転時のピークトルク変動量ΔTbは、上記のとおり、事前に記憶装置32に記憶されている。
電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbと閾値Thとの差|ΔTb−Th|を、閾値Tαと比較する。ここで、閾値Tαは、例えば、同期電動機2の定格トルクの10%の値とする。なお、閾値Tαは、マージンを取って、同期電動機2の定格トルクの20%、30%等の値としても良い。
差|ΔTb−Th|が閾値Tαよりも小さい場合、ステップS10において、電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbと今回運転時のピークトルク変動量ΔTaとの変化が緩慢であると判断する。これにより、ステップS11において、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムに機械劣化故障が発生したと判断する。
機械劣化故障とは、モータ制御システム自体の経年劣化により、同期電動機2が異常なトルクを発生させる故障のことである。例えば、回転軸21に接続された外部負荷においては、時間の経過により、ギアのオイルが減少する。これにより、例えば、外部負荷は、このギア部分に発生する摩擦力が徐々に増大する。これにともない、同期電動機2が運転時に発生させるトルクは、徐々に増大する。このため、前回運転時において、ステップS8で異常が発生したと判断されなくても、同期電動機2の運転時に発生するトルクが前回運転時よりもさらに増大することにより、今回運転時において、ピークトルク変動量ΔTaが閾値Thよりも大きくなる。機械劣化故障は、電磁ブレーキ1ではない部分の故障である。
また、ステップS11において、電磁ブレーキ故障判断部113は、異常検出信号114を表示部34へと出力する。このときの異常検出信号114は、機械劣化故障を示す信号である。この信号を受けて、表示部34は、機械劣化故障が発生したことを表示する。
一方、差|ΔTb−Th|が閾値Tαよりも大きい場合、ステップS10において、電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbと今回運転時のピークトルク変動量ΔTaとの変化が急激であると判断する。つまり、電磁ブレーキ故障判断部113は、同期電動機2の今回の運転時において、同期電動機2の発生させるトルクが突発的に増大したと判断する。そして、ステップS12へと進み、同期電動機2の発生させるトルクが突発的に増大した場合における、モータ制御システムの故障原因の判断を実施する。なお、第1の故障原因判断とは、実施の形態1において、ステップS10における判断のことである。
図5のステップS12において、電磁ブレーキ故障判断部113は、ピークトルク変動量ΔTaと電磁ブレーキ1の制動力によるトルクTmとの差|ΔTa−Tm|を算出する。
ここで、電磁ブレーキ1の制動力によるトルクTmの大きさは、一般的に、同期電動機2の定格トルク程度の値である。このため、電磁ブレーキ1の制動力によるトルクTmの大きさは、電磁ブレーキ1の設計仕様により決定される。なお、実施の形態1において、電磁ブレーキ1の制動力によるトルクTmの値としては、同期電動機2の定格トルクを用いる。
電磁ブレーキ故障判断部113は、ピークトルク変動量ΔTaと事前に記憶装置32に記憶された同期電動機2の定格トルクとの差異、すなわち差|ΔTa−Tm|を、閾値Tβと比較する。ここで、閾値Tβは、例えば、同期電動機2の定格トルクの10%の値とする。なお、閾値Tβは、マージンを取って、同期電動機2の定格トルクの20%、50%等の値としても良い。
差|ΔTa−Tm|が閾値Tβよりも小さい場合、ステップS12において、電磁ブレーキ故障判断部113は、ピークトルク変動量ΔTaと電磁ブレーキ1の制動力によるトルクTmとが一致したと判断する。この場合、同期電動機2が発生させた異常なトルクは、電磁ブレーキ1の制動力によるものと判断できる。これにより、ステップS13において、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムにブレーキメカ故障が発生したと判断する。
ブレーキメカ故障とは、コイル12の劣化や電磁ブレーキ1の溶着など、電磁ブレーキ1の機械部分の故障のことである。ブレーキメカ故障が発生すると、電磁ブレーキ1は、同期電動機2の制動を解除できなくなる。この場合、同期電動機2を駆動させたならば、電磁ブレーキ1の制動力は、同期電動機2に対し、負荷として働く。このとき、同期電動機2は、電磁ブレーキ1の制動力に応じたトルクを発生させる。つまり、同期電動機2が発生させるトルクは、基準ピークトルクTcよりも、電磁ブレーキ1の制動力によるトルクTm程度増大する。よって、ブレーキメカ故障の場合、今回運転時のピークトルクTaと基準ピークトルクTcとの差であるピークトルク変動量ΔTaは、使用される電磁ブレーキ1の制動力によるトルクTmと一致する。
なお、コイル12の劣化とは、コイル12の発生する磁力が低下することをいう。コイル12が劣化した場合、電磁ブレーキ制御信号101によりコイル12が励磁されても、電磁ブレーキ1は、アーマチュア15とブレーキライニング16との間にギャップが発生しなくなる。このため、コイル12が励磁されても、電磁ブレーキ1は、同期電動機2の制動を解除できなくなる。よって、同期電動機2は、異常なトルクを発生させる。
また、電磁ブレーキ1の溶着とは、ブレーキライニング16が熱などにより溶け、ブレーキライニング16とアーマチュア15とが接合することをいう。電磁ブレーキ1の溶着は、例えば、電磁ブレーキ1の制動を解除し忘れたまま同期電動機2の運転を行ったような場合に、発生する。過去の運転時において電磁ブレーキ1の溶着が発生した場合、ブレーキライニング16とアーマチュア15とが接合したまま運転を行ったならば、同期電動機2は、異常なトルクを発生させる。
ステップS13において、電磁ブレーキ故障判断部113は、異常検出信号114を表示部34へと出力する。このときの異常検出信号114は、ブレーキメカ故障を示す信号である。この信号を受けて、表示部34は、ブレーキメカ故障が発生したことを表示する。
一方、ステップS12において、差|ΔTa−Tm|が閾値Tβよりも大きい場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、ピークトルク変動量ΔTaと電磁ブレーキ1の制動力によるトルクTmとが一致しないと判断する。この場合、同期電動機2が発生させた異常なトルクは、電磁ブレーキ1の制動力では発生し得ないものと判断できる。これにより、ステップS14において、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムにその他機械故障が発生したと判断する。
その他機械故障とは、障害物との接触や異物の挟み込みなど、電磁ブレーキ1ではない機械部分の故障のことである。障害物との接触とは、例えば、同期電動機2の回転軸21に接続された外部負荷が、何かしらの障害物と接触することをいう。異物の挟み込みとは、例えば、回転軸21に接続された外部負荷の持つギア等が、異物を噛み込んでしまうことをいう。このほか、その他機械故障とは、例えば、同期電動機2の内部において回転軸21が傾いてしまうことにより、同期電動機2の内部で回転軸21が回転できなくなることも指す。このように、その他機械故障においては、電磁ブレーキ1の制動力ではなく、外的要因により、同期電動機2の発生させるトルクが突発的に増大する。なお、その他機械故障が発生した場合、同期電動機2が発生させるトルクは、基準ピークトルクTcよりも、電磁ブレーキ1の制動力によるトルクTmの2、3倍程度増大する。
また、ステップS14において、電磁ブレーキ故障判断部113は、異常検出信号114を表示部34へと出力する。このときの異常検出信号114は、その他機械故障を示す信号である。この信号を受けて、表示部34は、その他機械故障が発生したことを表示する。なお、第2の故障原因判断とは、実施の形態1において、ステップS12における判断のことである。
このようにして、実施の形態1におけるモータ制御システムは、同期電動機2の駆動の開始時に故障判断を実施する。
以上において説明したように、実施の形態1における電磁ブレーキ故障判断部113は、ブレーキ制御指令100が出力されていない場合に、位置検出器4から出力される位置フィードバック値104に変化があったかどうかを判断する。電磁ブレーキ故障判断部113は、ブレーキ制御指令100が出力された場合に、電磁ブレーキ1にブレーキ電流が流れているかどうかを判断する。
また、同期電動機2の駆動の開始時において、電磁ブレーキ故判断部114は、今回運転時のピークトルク変動量ΔTaを、閾値Thと比較する。ピークトルク変動量ΔTaが閾値Thよりも大きい場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbを、閾値Thと比較する。前回運転時のピークトルク変動量ΔTbが閾値Thから遠い場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、ピークトルク変動量ΔTaと電磁ブレーキ1の制動力によるトルクTmとが一致するかどうかを判断する。
これにより、実施の形態1におけるモータ制御システムは、同期電動機2に異常な負荷トルクが発生した場合に、ブレーキ装置の故障とブレーキ装置ではない部分の故障とを区別して検知する。また、実施の形態1におけるモータ制御システムは、モータ制御システムに異常が発生した場合において、モータ制御システムの故障箇所及び故障原因を判断する。よって、故障箇所及び故障原因を判断する手間が省けるため、実施の形態1におけるモータ制御システムは、故障箇所の修理にかかる時間を削減できる。
なお、実施の形態1において、電磁ブレーキ制御装置6は、同期電動機2が駆動を開始する前に、電磁ブレーキ1の制動を解除することを通知するブレーキ制御指令100を出力し、それから、コイル12を励磁するための電磁ブレーキ制御信号101を出力するとした。また、図5のステップS1において、ブレーキ制御指令100が出力されていない場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、電磁ブレーキ1が制動を行っていると判断するとした。さらに、ブレーキ制御指令100が出力された場合、図5のステップS1において、電磁ブレーキ故障判断部113は、ブレーキ制御指令100がONであると判断し、電磁ブレーキ制御装置6は、電磁ブレーキ制御信号101を出力するとした。そして、図5のステップS5において、電流検出回路33が電磁ブレーキ制御信号101を検出しなかった場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、電磁ブレーキ制御信号101が電磁ブレーキ1へと流れていないと判断し、モータ制御システムにブレーキ制御回路故障が発生したと判断することとした。しかし、実施の形態1におけるモータ制御システムは、これに限られるものではない。
例えば、電磁ブレーキ制御装置6は、同期電動機2が駆動をしていない場合において、電磁ブレーキ1の制動中であることを通知する信号を出力し、同期電動機2が駆動を開始する前に、電磁ブレーキ1の制動中であることを通知する信号の出力を停止し、それから電磁ブレーキ制御信号101を出力するようにしても良い。この場合、図5のステップS1において、電磁ブレーキ故障判断部113は、電磁ブレーキ1の制動中であることを通知する信号が出力されている場合、電磁ブレーキ1が制動を行っていると判断する。また、電磁ブレーキ1の制動中であることを通知する信号の出力を停止した場合、図5のステップS1において、電磁ブレーキ故障判断部113は、電磁ブレーキ1の制動が解除されたと判断し、電磁ブレーキ制御装置6は、電磁ブレーキ制御信号101を出力する。そして、図5のステップS5において、電流検出回路33が電磁ブレーキ制御信号101を検出しなかった場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、電磁ブレーキ制御信号101が電磁ブレーキ1へと流れていないと判断し、モータ制御システムにブレーキ制御回路故障が発生したと判断する。この場合においても、電磁ブレーキ1の制動を解除することを通知するブレーキ制御指令100を用いる場合と同等の効果を得ることができる。
なお、トルク推定部112は、同期電動機2が駆動を開始してから1周期分のトルクに基づいて、ピークトルクTaを算出するとしたが、これに限られるものではない。例えば、トルク推定部112は、同期電動機2の駆動の開始後n周期分のトルクに基づいて、n周期分のピークトルクTa1、Ta2、・・・Tanをそれぞれ算出しても良い。そして、電磁ブレーキ故障判断部113は、例えばこれらn周期分のピークトルクTa1、Ta2、・・・Tanの平均値を、同期電動機2が駆動を開始してから1周期におけるピークトルクの代わりに用いても、同様の効果を得ることができる。
また、閾値Thは、同期電動機2が発生させるトルクについて、例えば、1.25倍した値としたが、これに限られるものではない。1.25倍ではなく、他の値であっても良い。
このほか、電磁ブレーキ故障判断部113は、n回分の正常時のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnに基づいて、これらのピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnが取り得ない値を求め、この求めた値を閾値Thとしても良い。この場合、例えば、n回分の正常時のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnの平均値と分散σ2を求める。そして、例えば、n回分の正常時のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnの平均値に3σを加えた値を求め、この値をさらに1.25倍する。このようにして算出した値を閾値Thとしても、同様の効果を得ることができる。
電磁ブレーキ故障判断部113は、基準ピークトルクTcを、n回分の正常時のピークトルクTb1、Tb2、・・・Tbnの平均値として算出することとしたが、これに限られるものではない。例えば、電磁ブレーキ故障判断部113は、基準ピークトルクTcとして、1回分の正常時のピークトルクTb1を使用しても良い。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
ステップS9において、モータ制御システムが正常であると判断した場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、ピークトルク変動量ΔTbを記憶装置32に記憶させた。このとき、前回運転時のピークトルク変動量ΔTbは、削除することとした。しかし、ピークトルク変動量ΔTbは、これに限られるものではない。例えば、記憶装置32は、算出したピークトルク変動量を、上記のように直前1回分だけでなく、任意の直近n回分について記憶するようにしても良い。そして、例えば、電磁ブレーキ故障判断部113は、ステップS8において、任意の直近n回分のピークトルク変動量ΔTb1、ΔTb2、・・・ΔTbnの平均値を、前回運転時のピークトルク変動量の代わりに用いても良い。また、例えば、電磁ブレーキ故障判断部113は、ステップS8において、前回運転時のピークトルク変動量ΔTb1を用いて判断を行った後、さらに前々回運転時のピークトルク変動量ΔTb2を用いて判断を行い、この判断を任意のn回続けるようにしても良い。このような場合においても、前回運転時のピークトルク変動量を用いて判断を行う場合と同様の効果を得ることができる。
実施の形態2.
実施の形態2におけるモータ制御システムについて説明する。実施の形態1と同一または同等の手段、構成に関しては、同一の名称と符号とを用いて説明を省略する。
実施の形態2における原理について説明する。実施の形態2における駆動装置3bは、実施の形態1の駆動装置3aと同様に、同期電動機2に対し、位置指令103を出力する。これにより、駆動装置3bは、同期電動機2が発生させるトルクを制御する。
一方、実施の形態2における駆動装置3bは、実施の形態1の駆動装置3aと異なる点として、トルク制限機能を持つ。このトルク制限機能により、駆動装置3bは、同期電動機2が発生させるトルクを、トルク制限値以上とならないように制御する。このため、実施の形態2においては、実施の形態1と同様なピークトルクが発生しない。よって、実施の形態2におけるモータ制御システムは、ピークトルクを用いた故障判断を行うことができない。そこで、実施の形態2においては、ピークトルクの代わりに、最大加速時間を用いる。
加速時間とは、同期電動機2の回転速度が、目標とする速度に達するまでに要する時間のことである。つまり、加速時間は、速度指令値110と速度フィードバック値105とが一致するまでに要した時間のことである。最大加速時間については、後述する。
図6は、目標とする速度と加速時間との関係の一例について示す図である。図6において、目標とする速度を回転速度Nとする。このとき、加速時間は、図6に示すH1、H2、及びH3のことである。
ここで、加速時間と同期電動機2にかかる負荷との関係について説明する。例えば、同期電動機2に負荷がかかった場合、同期電動機2には、負荷トルクが発生する。この場合、同期電動機2は、回転軸21を回転させるために、負荷トルクに応じたトルクを発生させる。このとき、同期電動機2の発生させたトルクがトルク制限値に達していないならば、同期電動機2は、さらに大きなトルクを発生させる。
しかし、上記のとおり、実施の形態2における駆動装置3bは、トルク制限機能を持つ。このため、同期電動機2は、発生させるトルクが制限されている。例えば、同期電動機2に対して大きな負荷がかかり、同期電動機2に負荷トルクT1が発生したとする。この場合、同期電動機2は、回転軸21を回転させるために、最大でトルク制限値T2のトルクを発生させる。このとき、同期電動機2から回転軸21に接続された外部負荷へと出力されるトルクT3は、次の(式2)となる。
(式2)に示すように、同期電動機2に大きな負荷がかかった場合、同期電動機2の発生させるトルクがトルク制限値T2に達したならば、外部負荷へと出力されるトルクT3は、減少する。また、外部負荷へと出力されるトルクが小さいほど、同期電動機2は、目標とする速度に達するまでに時間を要する。つまり、同期電動機2の発生させるトルクがトルク制限値T2に達した場合、同期電動機2にかかる負荷が大きいほど、その時の加速時間は、増大する。
また、電磁ブレーキ1の故障などにより、同期電動機2に大きな負荷がかかった場合、同期電動機2には、異常な負荷トルクが発生する。この場合、実施の形態2においては、上記のように、同期電動機2の発生させるトルクがトルク制限値に達し、加速時間が異常に増大する。このときの異常な加速時間は、正常時には発生し得ないようなものである。つまり、加速時間の大きさを調べることで、モータ制御システムに発生した異常について検知することができる。以上が、実施の形態2における原理についての説明である。
次に、実施の形態2におけるモータ制御システムの構成について説明する。実施の形態2におけるモータ制御システムは、実施の形態1におけるモータ制御システムに対し、駆動装置3bの構成が異なる。また、実施の形態2におけるモータ制御システムは、駆動装置3b以外の構成については実施の形態1と同様である。
図7は、実施の形態2における駆動装置3bの構成を示す図である。なお、図7においては、説明の便宜上、電磁ブレーキ1、同期電動機2、位置検出器4、上位コントローラ5、及び電磁ブレーキ6についても図示している。
実施の形態2において、記憶装置32は、n回分の正常時の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnと、閾値Hhと、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbと、電磁ブレーキ1の制動力による加速時間の変動量ΔHmと、をあらかじめ記憶している。なお、n回分の正常時の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnと、閾値Hhと、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbと、電磁ブレーキ1の制動力による加速時間の変動量ΔHmとについては、後述する。
実施の形態2において、駆動装置3bのCPU31bは、図7に示すように、加速時間推定部115を備える。加速時間推定部115には、位置検出器4から、速度フィードバック値105が入力される。加速時間推定部115は、この速度フィードバック値105に基づいて、加速時間を算出する。なお、実施の形態2において、同期電動機2の速度は、同期電動機2にかかった負荷に基づく変動値である。このため、同期電動機2の速度から算出した加速時間も、同期電動機2にかかった負荷に基づく変動値である。
ここで、同期電動機2は、駆動装置3bに入力される位置指令103により、駆動する。このため、同期電動機2の1周期の動作は、既知である。よって、加速時間推定部115は、図6に示すように、1周期分の加速時間を求めることができる。
図7において、加速時間推定部115は、同期電動機2の駆動の開始時から1周期分の加速時間を算出する。また、加速時間推定部115は、これらの加速時間の中から、最大の加速時間(以下において、最大加速時間とする)を選択する。
加速時間推定部115は、求めた最大加速時間を記憶装置32へと出力する。記憶装置32は、加速時間推定部115から入力された最大加速時間を記憶する。
電磁ブレーキ故障判断部113には、加速時間推定部115により求められた最大加速時間が入力される。また、電磁ブレーキ故障判断部113には、記憶装置32に記憶された閾値Hhが入力される。この閾値Hhについては、後述する。
電磁ブレーキ故障判断部113は、加速時間推定部115から入力された最大加速時間と閾値Hhとに基づいて、モータ制御システムに異常が発生したかどうかの判断を行う。なお、電磁ブレーキ故障判断部113は、同期電動機2が駆動を開始する前においても、モータ制御システムに異常が発生したかどうかの判断を行う。モータ制御システムの異常の判断については、後述にて説明する。
なお、加速時間推定部115は、同期電動機2が正常に運転しているときに、同期電動機2が駆動を開始してから1周期分の加速時間に基づいて、正常時の最大加速時間Hbを算出する。加速時間推定部115は、この正常時の最大加速時間Hbの算出を、任意のn回行う。つまり、加速時間推定部115は、n回分の正常時の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnを算出する。それから、加速時間推定部115は、n回分の正常時の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnを、記憶装置32へと出力する。記憶装置32は、n回分の正常時の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnを記憶する。この場合において、同期電動機2が正常に運転しているときとは、例えば、モータ制御システムの新品を立ち上げた時のことである。このため、n回分の正常時の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnは、例えば、モータ制御システムの新品の立ち上げ時において、算出する。
図8は、実施の形態2におけるモータ制御システムの故障の判断手順を示すフローチャートである。図8を参照して、実施の形態2におけるモータ制御システムの故障判断の手順について説明する。なお、実施の形態2において、図8のステップS21からステップS27までの判断は、実施の形態1における図6のステップS1からステップS7までの判断と同様である。このため、図8のステップS28から説明する。
同期電動機2が駆動の開始時である場合、図8のステップS28において、加速時間推定部115は、同期電動機2の加速時間を、同期電動機2が駆動を開始してから1周期分算出する。加速時間推定部115は、算出した1周期分の加速時間から、最大加速時間Haを算出する。加速時間推定部115は、算出した最大加速時間Haを電磁ブレーキ故障判断部113へと出力する。
ここで、記憶装置32は、上記のとおり、事前にn回分の正常時の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnを記憶している。これらの最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnは、過去の同期電動機2の正常運転時に算出した値である。電磁ブレーキ故障判断部113には、これらn回分の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnが入力される。電磁ブレーキ故障判断部113は、これらn回分の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnから、基準最大加速時間Hcを算出する。基準最大加速時間Hcは、例えば、n回分の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnの平均値とする。
また、電磁ブレーキ故障判断部113には、加速時間推定部115が算出した、今回運転時における最大加速時間Haが入力される。電磁ブレーキ故障判断部113は、最大加速時間Haと基準最大加速時間Hcとの差を、最大加速時間変動量ΔHaとして算出する。最大加速時間変動量ΔHaは、次の(式3)で表される。
ステップS28において、電磁ブレーキ故障判断部113は、上記の(式3)により算出した最大加速時間変動量ΔHaを、記憶装置32が記憶している閾値Hhと比較する。
ここで、閾値Hhの求め方について説明する。例えば、同期電動機2を定格トルクで運転している場合を考える。この場合、同期電動機2が正常に運転しているならば、同期電動機2が発生させるトルクは、定格トルク程度である。よって、同期電動機2が正常に運転しているならば、同期電動機2の加速時間は、同期電動機2の定格トルクに基づいて、算出することができる。また、閾値Hhは、同期電動機2が正常に運転しているときの最大加速時間Haと、異常時における加速時間とを判別するための値である。このため、閾値Hhは、同期電動機2が正常に運転しているときの最大加速時間Haよりも大きな値とする必要がある。そこで、閾値Hhは、同期電動機2が発生させるトルクに基づいて算出した加速時間について、例えば、1.25倍した値とする。上記の例の場合、閾値Hhは、例えば、同期電動機2の発生させるトルクを定格トルクとして算出した加速時間について、1.25倍した値とする。このようにして求めた閾値Hhについて、記憶装置32は、あらかじめ記憶している。
ステップS28において、最大加速時間変動量ΔHaが閾値Hhよりも小さい場合、同期電動機2は、正常に運転している。このため、ステップS29において、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムが正常であると判断する。電磁ブレーキ故障判断部113は、このときの最大加速時間変動量ΔHaを記憶装置32に記憶させる。
なお、記憶装置32は、前回運転時における最大加速時間変動量ΔHbを記憶している。このため、記憶装置32は、最大加速時間変動量ΔHaを記憶する際、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbを削除する。つまり、記憶装置32は、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbを削除するとともに、今回運転時に算出した最大加速時間変動量ΔHaを、新たな最大加速時間変動量ΔHbとして記憶する。次回の運転時において、モータ制御システムは、この新たな最大加速時間変動量ΔHbを、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbとして使用する。
一方、ステップS28において、最大加速時間変動量ΔHaが閾値Hhよりも大きい場合、同期電動機2は、異常な加速時間を発生させている。このため、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムに異常が発生し、同期電動機2に異常な負荷トルクが発生したと判断する。そして、ステップS30へと進み、モータ制御システムの故障原因の判断を実施する。
図8のステップS30において、電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbと閾値Hhとを比較して、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbが閾値Hhに近いかどうか判断する。具体的には、ステップS30において、電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbと閾値Hhとの差|ΔHb−Hh|を算出する。前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbは、上記のとおり、事前に記憶装置32に記憶されている。
電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbと閾値Hhとの差|ΔHb−Hh|を、閾値Hαと比較する。ここで、閾値Hαは、例えば、同期電動機2の発生させるトルクを定格トルクとして算出した加速時間の10%の値とする。なお、閾値Hαは、マージンを取って、同期電動機2の発生させるトルクを定格トルクとして算出した加速時間の20%、30%等の値としても良い。
差|ΔHb−Hh|が閾値Hαよりも小さい場合、ステップS30において、電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbと今回運転時の最大加速時間変動量ΔHaとの変化が緩慢であると判断する。これにより、ステップS31において、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムに機械劣化故障が発生したと判断する。
なお、回転軸21に接続された外部負荷の持つギア等に働く摩擦力は、モータ制御システム自体の経年劣化により、徐々に増大する。これにともない、同期電動機2が運転時に発生させるトルクは、徐々に増大する。このため、同期電動機2の運転時において、同期電動機2の発生させるトルクがトルク制限値に達することにより、同期電動機2の加速時間が徐々に増大する。よって、前回運転時において、ステップS28で異常が発生したと判断されなくても、同期電動機2の加速時間が前回運転時よりもさらに増大することにより、今回運転時において、最大加速時間変動量ΔHaが閾値Hhよりも大きくなる。
また、ステップS31において、電磁ブレーキ故障判断部113は、異常検出信号114を表示部34へと出力する。このときの異常検出信号114は、機械劣化故障を示す信号である。この信号を受けて、表示部34は、機械劣化故障が発生したことを表示する。
一方、差|ΔHb−Hh|が閾値Hαよりも大きい場合、ステップS30において、電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbと今回運転時の最大加速時間変動量ΔHaとの変化が急激であると判断する。つまり、電磁ブレーキ故障判断部113は、同期電動機2の今回の運転時において、同期電動機2の発生させるトルクが突発的に増大したことにより、同期電動機2の発生させるトルクがトルク制限値に達し、異常な加速時間が発生したと判断する。そして、ステップS32へと進み、同期電動機2の発生させるトルクが突発的に増大した場合における、モータ制御システムの故障原因の判断を実施する。なお、第1の故障原因判断とは、実施の形態2において、ステップS30における判断のことである。
図8のステップS32において、電磁ブレーキ故障判断部113は、最大加速時間変動量ΔHaと、電磁ブレーキ1の制動力による加速時間の変動量ΔHmとの差|ΔHa−ΔHm|を算出する。
ここで、電磁ブレーキ1の制動力は、一般的に、同期電動機2の定格トルク程度の値である。このため、電磁ブレーキ1の制動力による加速時間の変動量ΔHmは、既知の値である電磁ブレーキ1の制動力の大きさに基づいて、算出できる。また、記憶装置32は、この算出された電磁ブレーキ1の制動力による加速時間の変動量ΔHmを記憶する。なお、実施の形態2において、電磁ブレーキ1の制動力は、同期電動機2の定格トルクを用いる。
電磁ブレーキ故障判断部113は、最大加速時間変動量ΔHaと電磁ブレーキ1の制動力による加速時間の変動量ΔHmとの差異、すなわち差|ΔHa−ΔHm|を、閾値Hβと比較する。ここで、閾値Hβは、例えば、同期電動機2の発生させるトルクを定格トルクとして算出した加速時間の10%の値とする。なお、閾値Hβは、マージンを取って、同期電動機2の発生させるトルクを定格トルクとして算出した加速時間の20%、50%等の値としても良い。
差|ΔHa−ΔHm|が閾値Hβよりも小さい場合、ステップS32において、電磁ブレーキ故障判断部113は、最大加速時間変動量ΔHaと電磁ブレーキ1の制動力による加速時間の変動量ΔHmとが一致したと判断する。この場合、同期電動機2が発生させた異常な加速時間は、電磁ブレーキ1の制動力によるものと判断できる。これにより、ステップS33において、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムにブレーキメカ故障が発生したと判断する。
ステップS33において、電磁ブレーキ故障判断部113は、異常検出信号114を表示部34へと出力する。このときの異常検出信号114は、ブレーキメカ故障を示す信号である。この信号を受けて、表示部34は、ブレーキメカ故障が発生したことを表示する。
一方、ステップS32において、差|ΔHa−ΔHm|が閾値Hβよりも大きい場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、最大加速時間変動量ΔHaと電磁ブレーキ1の制動力による加速時間の変動量ΔHmとが一致しないと判断する。この場合、同期電動機2が発生させた異常な加速時間は、電磁ブレーキ1の制動力では発生し得ないものと判断できる。これにより、ステップS34において、電磁ブレーキ故障判断部113は、モータ制御システムにその他機械故障が発生したと判断する。
また、ステップS34において、電磁ブレーキ故障判断部113は、異常検出信号114を表示部34へと出力する。このときの異常検出信号114は、その他機械故障を示す信号である。この信号を受けて、表示部34は、その他機械故障が発生したことを表示する。なお、第2の故障原因判断とは、実施の形態2において、ステップS3
2における判断のことである。
このようにして、実施の形態2におけるモータ制御システムは、同期電動機2の駆動の開始時に故障判断を実施する。
以上のように、実施の形態2において、同期電動機2の駆動の開始時に、電磁ブレーキ故判断部114は、今回運転時の最大加速時間変動量ΔHaを、閾値Hhと比較する。最大加速時間変動量ΔHaが閾値Hhよりも大きい場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbを、閾値Hhと比較する。前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbが閾値Hhから遠い場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、最大加速時間変動量ΔHaと電磁ブレーキ1の制動力による加速時間の変動量ΔHmとが一致するかどうかを判断する。
これにより、実施の形態2におけるモータ制御システムは、同期電動機2に異常な負荷トルクが発生した場合に、トルク制限機能を持つ駆動装置3bにより、ブレーキ装置の故障とブレーキ装置ではない部分の故障とを区別して検知する。また、実施の形態2におけるモータ制御システムは、モータ制御システムに異常が発生した場合において、トルク制限機能を持つ駆動装置3bにより、モータ制御システムの故障箇所及び故障原因を判断する。よって、故障箇所及び故障原因を判断する手間が省けるため、実施の形態2におけるモータ制御システムは、駆動装置3bがトルク制限機能を持つ場合において、故障箇所の修理にかかる時間を削減できる。
なお、加速時間推定部115は、速度フィードバック値105から加速時間を算出し、同期電動機2が駆動を開始してから1周期分の加速時間に基づいて、最大加速時間Haを求めるとしたが、これに限られるものではない。例えば、加速時間推定部115は、同期電動機2の駆動の開始後n周期分の加速時間に基づいて、n周期分の最大加速時間Ha1、Ha2、・・・Hanをそれぞれ算出しても良い。そして、電磁ブレーキ故障判断部113は、例えばこれらn周期分の最大加速時間Ha1、Ha2、・・・Hanの平均値を、同期電動機2が駆動を開始してから1周期における最大加速時間の代わりに用いても、同様の効果を得ることができる。
また、閾値Hhは、同期電動機2が発生させるトルクに基づいて算出した加速時間について、例えば、1.25倍した値としたが、これに限られるものではない。1.25倍ではなく、他の値であっても良い。
このほか、電磁ブレーキ故障判断部113は、n回分の正常時の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnに基づいて、これらの最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnが取り得ない値を求め、この求めた値を閾値Hhとしても良い。この場合、例えば、n回分の正常時の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnの平均値と分散σ2を求める。そして、例えば、n回分の正常時の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnの平均値に3σを加えた値を求め、この値をさらに1.25倍する。このようにして算出した値を閾値Hhとしても、同様の効果を得ることができる。
電磁ブレーキ故障判断部113は、基準最大加速時間Hcを、n回分の正常時の最大加速時間Hb1、Hb2、・・・Hbnの平均値として算出することとしたが、これに限られるものではない。例えば、電磁ブレーキ故障判断部113は、基準最大加速時間Hcとして、1回分の正常時の最大加速時間Hb1を使用しても良い。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
ステップS29において、モータ制御システムが正常であると判断した場合、電磁ブレーキ故障判断部113は、最大加速時間変動量ΔHbを記憶装置32に記憶させた。このとき、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHbは、削除することとした。しかし、最大加速時間変動量ΔHbは、これに限られるものではない。例えば、記憶装置32は、算出した最大加速時間変動量を、上記のように直前1回分だけでなく、任意の直近n回分について記憶するようにしても良い。そして、例えば、電磁ブレーキ故障判断部113は、ステップS28において、任意の直近n回分の最大加速時間変動量ΔHb1、ΔHb2、・・・ΔHbnの平均値を、前回運転時の最大加速時間変動量の代わりに用いても良い。また、例えば、電磁ブレーキ故障判断部113は、ステップS28において、前回運転時の最大加速時間変動量ΔHb1を用いて判断を行った後、さらに前々回運転時の最大加速時間変動量ΔHb2を用いて判断を行い、この判断を任意のn回続けるようにしても良い。このような場合においても、前回運転時の最大加速時間変動量を用いて判断を行う場合と同様の効果を得ることができる。
なお、実施の形態1または実施の形態2において、モータ制御システムには、電磁ブレーキ制御装置6を設けた。また、電磁ブレーキ制御装置6は、ブレーキ制御指令100及び電磁ブレーキ制御信号101を出力し、電磁ブレーキ1の制動を制御するようにした。しかし、実施の形態1または実施の形態2におけるモータ制御システムは、これに限られるものではない。
図9は、駆動装置3c内に電磁ブレーキ制御用CPU35を設けた場合における、モータ制御システムの構成を示す図である。図9において、モータ制御システムは、電磁ブレーキ制御装置6を備えない。また、図9において、モータ制御システムは、電磁ブレーキ制御用CPU35を備える。この場合、電磁ブレーキ制御用CPU35は、ブレーキ制御指令100及び電磁ブレーキ制御信号101を、電磁ブレーキ制御装置6の代わりに出力する。これにより、電磁ブレーキ1は、同期電動機2に対する制動が解除される。図9に示す場合において、CPU31cの構成は、実施の形態1におけるCPU31aまたは実施の形態2におけるCPU31bと同様とする。また、図9に示すモータ制御システムにおいて、このほかの構成、動作等に関しては、実施の形態1または実施の形態2において説明したモータ制御システムと同様である。この場合においても、電磁ブレーキ制御装置6を設ける場合と同様の効果を得ることができる。
また、実施の形態1または実施の形態2において、モータ制御システムは、電磁ブレーキ制御装置6及び電磁ブレーキ制御用CPU35を、両方とも設けない構成としても良い。この場合、実施の形態1の駆動装置3aのCPU31aは、ブレーキ制御指令100及び電磁ブレーキ制御信号101を、電磁ブレーキ制御装置6または電磁ブレーキ制御用CPU35の代わりに出力する。あるいは、実施の形態2の駆動装置3bのCPU31bは、ブレーキ制御指令100及び電磁ブレーキ制御信号101を、電磁ブレーキ制御装置6または電磁ブレーキ制御用CPU35の代わりに出力する。これにより、電磁ブレーキ1は、同期電動機2に対する制動が解除される。この場合においても、電磁ブレーキ制御装置6または電磁ブレーキ制御用CPU35を設ける場合と同等の効果を得ることができる。
なお、実施の形態1または実施の形態2において、同期電動機2の速度は、回転速度でなく、角速度を用いても良い。また、実施の形態1または実施の形態2におけるモータ制御システムは、同期電動機2を備えるとしたが、これに限られるものではない。実施の形態1または実施の形態2におけるモータ制御システムは、サーボ機構を有する電動機であれば、同期電動機2の代わりに、例えば、誘導電動機などを用いても良い。このような変更を行ったとしても、実施の形態1または実施の形態2において奏する効果を同様に得ることができる。