JP7060351B2 - ポリビニルアセタール樹脂組成物 - Google Patents
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具体的なポリビニルアセタール樹脂の用途としては、例えば、インクやコンデンサ等のバインダーが知られており、なかでも積層セラミックコンデンサ等の積層電子部品の材料として多く用いられている。
セラミックグリーンシートに適度な強度を得るために、ポリビニルアセタール樹脂と、アクリル樹脂を含有する樹脂組成物をバインダーとして用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、アクリル樹脂との相溶性に優れた変性ポリビニルアセタール樹脂が記載されている。また、特許文献2には、エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、特定の有機化合物と、無機微粒子と、有機溶剤とを含有する無機微粒子分散ペーストが記載されており、表面平滑性に優れた焼結層を形成できることが記載されている。
これに対して、可塑剤を添加することでシートの柔軟性を確保することが行われているが、可塑剤を添加した場合、ブリードによる不良品率の増加や、製造工程が煩雑になるという問題があった。
以下に本発明を詳述する。
上記エチレンオキサイド基を有する構成単位としては、下記式(4)で表される構成単位であることが好ましい。
下記式(4)で表される構成単位を有することで、ポリビニルアセタール樹脂を製膜したフィルムの柔軟性が向上するという利点がある。
上記式(4)で表される構成単位は、下記式(5)で表されるエチレンオキサイド基を有する構成単位であることが好ましい。
上記R3としては、例えば、メチレン基、エチレン基、カルボニル基、エーテル基等が挙げられる。また、上記R3は単結合であってもよい。上記R4は、C及びOからなる群より選択される少なくとも1種を有する連結基又は単結合である。上記R4は炭素数が1~10のアルキレン基、もしくはカルボニル基が好ましい。上記R4としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、カルボニル基、エーテル基等が挙げられる。また、上記R4は単結合であってもよい。
更に、エチレンオキサイドの繰り返し数である整数nは特に限定されないが、2~50が好ましく、5~20がより好ましい。エチレンオキサイドの繰り返し数が上記範囲内であることで、貯蔵安定性の向上、およびポリビニルアセタール樹脂を製膜したフィルムに柔軟性を付与することが可能となる。
上記ポリビニルアセタール樹脂における上記水酸基を有する構成単位の含有量(水酸基量)の好ましい下限は50.6モル%、好ましい上限は98.6モル%である。上記水酸基量を50.6モル%以上とすることで、水溶性を維持することができ、98.6モル%以下とすることで、貯蔵安定性を維持することができる。
上記水酸基量のより好ましい下限は54モル%であり、より好ましい上限は97モル%である。
上記ポリビニルアセタール樹脂における上記アセチル基を有する構成単位の含有量(アセチル基量)の好ましい下限は0.2モル%、好ましい上限は15モル%である。上記アセチル基量を0.2モル%以上とすることで、貯蔵安定性を維持することができ、上記アセチル基量を15モル%以下とすることで、貯蔵安定性を維持することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は0.5モル%、より好ましい上限は12モル%である。
上記ポリビニルアセタール樹脂における上記アセタール基を有する構成単位の含有量(アセタール化度)は0.0001モル%以上、50モル%未満であることが好ましい。上記アセタール化度を0.0001モル%以上とすることで、貯蔵安定性や柔軟性を向上させることができる。上記アセタール化度を50モル%未満とすることで、水溶性を維持することができる。より好ましくは2~45モル%である。
なお、本明細書において、アセタール化度とは、ポリビニルアルコールの水酸基数のうち、ブチルアルデヒドでアセタール化された水酸基数の割合のことである。また、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を算出する。
上記ポリビニルアセタール樹脂は、アセトアルデヒドでアセタール化されたアセトアセタール基の含有量(アセトアセタール化度、A)とブチルアルデヒドでアセタール化されたブチラール基の含有量(ブチラール化度、B)が下記の式(1)を満たすことが好ましい。下記の式(1)を満たすことで、水溶性を維持しつつ、ポリビニルアセタール樹脂を製膜したフィルムに柔軟性を付与することができる。
0.0001≦1/2(1.32/A+B2)≦33.4 (1)
更に、上記ポリビニルアセタール樹脂におけるブチルアルデヒドでアセタール化されたブチルアセタール基の含有量は0モル%以上、25モル%未満であることが好ましい。上記範囲内とすることで、水溶性を維持することができる。
上記エチレンオキサイド単位量/水酸基量比を0.002以上とすることで、柔軟性を付与することができる。また、上記エチレンオキサイド単位量/水酸基量比が1.10以下であることで、貯蔵安定性を維持することができる。上記エチレンオキサイド単位量/水酸基量比は、0.01~0.8であることがより好ましい。
特に、上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては、上記式(4)で表される構成単位を予め有するポリビニルアルコールを用意し、その後アセタール化する方法、上記式(4)で表される構成単位を有しないポリビニルアルコールをアセタール化した後、上記式(4)で表される構成単位のR2に相当する部分を付加する方法等が挙げられる。
また、上記式(4)で表される構成単位のR2に相当する部分を付加する方法としては、例えば、上記アルキルビニルエーテルの種類を変更する方法等が挙げられる。
上記溶媒としては、上記ポリビニルアセタール樹脂を溶解させることができるものであれば特に限定されず、例えば、水のほか、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等が挙げられる。
上記溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の水系ポリビニルアセタール樹脂組成物中の溶媒の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は90重量%である。
本発明の水系ポリビニルアセタール樹脂組成物の用途は特に限定されないが、例えば、セラミックス粉末等の無機微粒子を添加し、必要に応じて添加される添加剤等を含有する水を媒体としたセラミックスラリーを、剥離性の支持体上に塗布し、乾燥することにより、機械的強度及び柔軟性に優れたセラミックグリーンシートを得ることができる。本発明の水系ポリビニルアセタール樹脂組成物を用いることにより、有機溶剤に代えて水を溶剤として使用できることから、環境汚染、毒性、爆発事故等の危険性等の観点からも好ましい。
また、上記剥離性の支持体上にセラミックスラリーを塗布する方法は特に限定されず、例えば、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の従来公知の方法が挙げられる。
攪拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を付したフラスコ中に、酢酸ビニル1000重量部、式(5)で表される化学式のR3がエチレン基であり、n=10であるポリ(オキシエチレン)ビニルエーテル320重量部及びメタノール300重量部を添加し、系内の窒素置換を行った後、温度を60℃まで昇温した。この系に2,2-アゾビスイソブチロニトリル1.1重量部を添加し、重合を開始した。重合開始から5時間で重合を停止した。重合停止時の系内の固形分濃度は53重量%であり、全モノマーに対する重合収率は65重量%であった。減圧下に未反応のモノマーを除去した後、共重合体の45重量%メタノール溶液を得た。得られた共重合体は酢酸ビニル単位96.0モル%、エチレンオキサイドを含有するアルキルビニルエーテル単位4.0モル%を含有することが未反応のモノマーの定量より確認された。
ポリビニルアルコール(a)のケン化度は99.5モル%、エチレンオキサイド単位量4.0モル%、重合度は600であった。
ポリビニルアルコール(a)240gを純水1800gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸20gとn-ブチルアルデヒド20gを添加した後、液温を40℃に保持してアセタール化反応を行った。その後、液温を40℃のまま3時間保持して反応を完了させ、20重量%水酸化ナトリウム希釈水溶液を15g添加することにより中和して、エチレンオキサイド変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:20重量%)を得た。
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセタール化度、及び、エチレンオキサイド単位量を測定した。その結果、水酸基量は87.5モル%、アセチル基量は0.5モル%、全アセタール化度(ブチラール化度)は8モル%、エチレンオキサイド単位量は4.0モル%であった。
なお、エチレンオキサイド基を有する構成単位は、上記式(4)で表される構成単位であり、上記式(5)で表される構造(R3=エチレン基、n=10)であった。
ポリビニルアルコール(a)に代えて、重合度600、ケン化度99.5モル%、エチレンオキサイド単位量1.0モル%のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりエチレンオキサイド変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:20重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、全アセタール化度(ブチラール化度)、及び、エチレンオキサイド単位量を測定した。結果を表1に示す。
n-ブチルアルデヒド20gに代えて、n-ブチルアルデヒド20g、アセトアルデヒド35gを添加した以外は、実施例1と同様の方法によりエチレンオキサイド変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:20重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、全アセタール化度、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、エチレンオキサイド単位量を測定した。結果を表1に示す。
ポリビニルアルコール(a)に代えて、重合度600、ケン化度99.5モル%、エチレンオキサイド単位量20.5モル%のポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりエチレンオキサイド変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:20重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、全アセタール化度(ブチラール化度)、及び、エチレンオキサイド単位量を測定した。結果を表1に示す。
ポリビニルアルコール(a)に代えて、重合度600、ケン化度99.5モル%、エチレンオキサイド単位を有しないポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:20重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、全アセタール化度(ブチラール化度)、及び、エチレンオキサイド単位量を測定した。結果を表1に示す。
ポリビニルアルコール(a)に代えて、重合度600、ケン化度88モル%、エチレンオキサイド単位を有しないポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:20重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセタール化度、及び、エチレンオキサイド単位量を測定した。結果を表1に示す。
実施例及び比較例で得られたポリビニルアセタール樹脂溶液について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
ポリビニルアセタール樹脂溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した後、乾燥することにより、樹脂シートを得た。
得られた樹脂シートをPETフィルムから剥離し、剥離したシートについてテンシロン引張試験機を用いて破断点伸度を測定した。
ポリビニルアセタール樹脂溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した後、乾燥することにより、樹脂シートを得た。
得られた樹脂シートをPETフィルムから剥離し、剥離したシートについて、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-200)を用い、変形様式は引張りモード、測定温度は-20℃~150℃、昇温速度は5℃/分で引張弾性率測定を行った。
上記に示した「弾性率」測定と同様の条件で測定を行い、tanδのピークトップ温度をガラス転移温度とした。
得られたポリビニルアセタール樹脂溶液を各種樹脂基材(ポリカーボネート[PC]、ポリエチレンテレフタレート[PET])に塗工し、160℃で60分間加熱することによりポリビニルアセタール樹脂溶液を乾燥させた。その後、JIS K 5400に準じて、碁盤目試験を行って、試験後に残った碁盤目の個数を数え、基材密着力を評価した。
得られたポリビニルアセタール樹脂溶液について、B型粘度計を用いて、作製直後と40℃加温状態で保管し、作製7日後の粘度を測定し、樹脂粘度の変化率を確認し、以下の基準で評価した。
◎:10%未満
○:10%以上、20%未満
△:20%以上、30%未満
×:30%以上
Claims (5)
- ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が、71モル%以上、98.6モル%以下であることを特徴とする請求項1記載のセラミックグリーンシート用ポリビニルアセタール樹脂組成物。
- ポリビニルアセタール樹脂は、エチレンオキサイド基を有する構成単位を0.1~10モル%含有することを特徴とする請求項1又は2記載のセラミックグリーンシート用ポリビニルアセタール樹脂組成物。
- ポリビニルアセタール樹脂は、重合度が250~4000であることを特徴する請求項1、2又は3記載のセラミックグリーンシート用ポリビニルアセタール樹脂組成物。
- ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度が0.0001モル%以上、50モル%未満であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のセラミックグリーンシート用ポリビニルアセタール樹脂組成物。
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