以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
-第1実施形態-
図1は、第1実施形態のバックル10を説明するための図である。本実施形態のバックル10は、被服のズレを抑制するベルトのバックルであって、帯状の布または皮等からなるベルト1の一端が固定されるバックル本体2と、ベルト係止部3と、ベルト係止部3に設けられた係合部4とから構成される。
バックル本体2は、略環状に形成された金属部材である。バックル本体2は、その一端部を構成する軸2aを備えている。軸2aには、ベルト1の一端が固定されるとともに、係止部3の一端に形成されたリング状の基部3aが回動可能に支持されている。また、略環状に形成されたバックル本体2の内空間は、着用時にベルト1の他端が通されるベルト通し部5が形成される。なお、バックル本体2の形状は、図示するような矩形形状に限らず、円形状、楕円形状、又は図示する以外の多角形状であってもよく特に限定されない。
係止部3は、バックル本体2に回動可能に設けられたピン状部材(ツク棒)である。係止部3は、基部3aの逆側の端部がベルト通し部5を通ったベルト1の係止穴1a(図3参照)に差し込まれることによってベルト1をバックル本体2に係止する。
係合部4は、係止部3の一部分である。係合部4は、被服着用時に当該被服の一部と係合して、当該被服の一部を下側から支持するように構成される。係合部4の詳細は、図2を参照して後述する。
ここで、本発明が解決する課題について説明する。
図15は、本発明が解決する課題を説明するための図である。ジーンズやスラックスを含むズボン等被服(ボトム)を着用する際には、ずり下がり(ずり落ち)を抑制するためにベルトを締めるのが一般的である。しかしながら、ズボン着用時にベルトを締めていても、ズボンのウエスト寸法が着用者の体型に合っていない場合、特にズボンのウエスト寸法が着用者の腰回り寸法よりも大きい場合には、体型に対する被服の緩みに起因してズボンの特に前面上端部分(前開き部分あるいはフライ部分)がベルトに対してずり下がる現象が起こる。
図示するように、ズボンの前開き部分がベルトに対してずり下がっている姿は見る人にだらしない印象を与えるために見栄えが悪く、ファッション上好ましくない。また、ズボンがずり下がることにより着用者の肌に金属製のバックルが長く触れると、着用者に金属アレルギーを発症させるリスクがあるため、健康衛生上の観点からも好ましくない。本発明は、このような問題を生じさせるズボンのずり下がり現象を、外観に影響を与えず、且つ着用者に作業負担をかけずに容易に防止することを課題とする。当該課題を解決する具体的構成の一例である本実施形態の係合部4の詳細について以下に説明する。
図2は、本実施形態のバックル10を示す図である。図2(a)はバックル10を正面から見た正面図、図2(b)はズボン着用時(ベルト装着時)におけるバックル10を上側(図1の矢印方向)から見た上面図である。また、図2(a)で示す両矢印は重力方向における上下方向を示し、図2(b)に示す白抜き矢印が指す方向は、ズボン着用時にバックル10を使用した場合における身体側(ズボン側)を示している。なお、以下では、「ズボン側」は、当該白抜き矢印が指す方向を示し、「表側」は、当該白抜き矢印が指す方向とは逆側の方向(着用者から見て前方)を示し、「上側」「下側」はズボン着用時におけるバックル10の重力方向の上下方向を示し、「左右方向」は上下方向に直交する水平方向を示すものとする。
図2(a)で示すように、本実施形態の係止部3は、その基部3aがバックル本体2の軸2aにおける上下方向略中央部分に回動可能に支持され、正面視においては左右方向にほぼ直線な棒状(ピン形状)を示している。ただし、軸2aにおいて基部3aが支持される上下方向位置は略中央に限らず、特に後述するズボンの一部を係合部4に係合させる作業の容易性を向上させる観点から適宜設定されてよい。
本実施形態の係合部4は、係止部3の一部であって、ズボン側に凸形状となるように湾曲することにより表側に形成される凹形状部6にズボンの一部が係合するように構成される。ここでのズボンの一部とは、ズボンの特に前面上端近傍(前開き部分あるいはフライ部分の上端近傍)にあるボタン(いわゆるトップボタン)である。なお、ここでいうボタンには、ボタンとズボン生地とを連結する縫い糸やリジット等、ボタンとズボン生地との連結部も含むものとする。
係合部4は、単にズボン側に突出するだけでなく、図2(b)で示すようにバックル本体2の上側の軸(軸2b)と凹形状部6との間に所定幅の空間7を形成するように構成される方がより好ましい。このように構成された係合部4は、ズボン着用時にベルトを締める際に、バックル本体2との間に形成される空間7を通ってバックル本体2の内径側に導入されるボタンを引っ掛け、当該ボタンを下側から支持することができる。ズボンの前面の凹形状部6にズボンの一部が係合する態様について、図3を用いて説明する。
図3は、ズボン着用時に係合部4がボタンを係合する態様を説明する図である。
図3(a)は、ズボン着用時にベルトを締める際に、係合部4にボタンが係合される態様を説明する図である。図3(a)では、着用者がバックル10のベルト通し部5にベルト1の他端側を通し、さらに係止穴1aに係止部3の先端を差し込んだ状態において、着用者が例えばバックル本体2を持って係止部3を移動させることで、ボタン8の下側を係合部4に引っ掛けた状態が表されている。すなわち、図3(a)は、ズボン着用時にベルトを締める過程において、係合部4を有する係止部3によってボタン8が下側から支持されている状態を正面から見た図を示している。
図3(b)は、図3(a)におけるバックル10を下側から見た図である(図3(b)の矢印方向参照)。図示するように、本例においてはボタン8の特に連結部8aが係合部4に引っ掛かることによってボタン8が下側から係止部3に支持されているのが分かる。これにより、ズボンがずり下がろうとしても当該ズボンの一部であるボタン8がバックル10に下側から支持されるので、ズボンがバックル10に対してずり下がることを抑制することができる。なお、本実施形態の係止部3はバックル本体2と係合部4との間に空間7を形成するように構成されているので、ボタン8を係合部4に係合させる際に、ボタン8がバックル本体2の軸2bと接触しにくくなる。すなわち、バックル10が空間7を有するように構成されることにより、ボタン8とバックル本体2とが接触しにくくなるので、ボタン8を係合部4により容易に係合させることができる。
図3(c)は、ズボン着用時にベルト1を締めた状態を示す図である。図示するとおり、ボタン8をバックル10の係合部4に係合した後、通常行うとおりにベルト1を締めることにより、ボタン8及び係合部4はベルト1とズボンとの間に収容され、正面から見えなくなる。すなわち、本実施形態のバックル10は、ズボン装着時における腰回りの外観に影響を及ぼすことなく、ズボンのずり下がり防止機能を発揮することができる。なお、本実施形態の係止部3および係合部4は、図2、3等で図示する形状に限らず、ボタン8を下側から係合して支持することができる限りにおいて様々な形状を含んでよい。
図4は、本実施形態のバックル10の形状であって、特に係合部4が形成する空間7の詳細を説明する図である。図4(a)~(c)で示すバックル10は、ズボン装着時における上側から見た図を示す。また、図4(a)~(c)の左側に示す白抜き矢印は、ベルト装着時におけるズボン側を指すものとする。
図4(a)、(b)で示すように、係合部4がズボン側に凸形状となるように湾曲することにより表側に形成される凹形状部6は、図2(b)で示すような弧状に限らず、図示するような曲線や直線状等、適宜設定されてよい。
また、図4(c)で示すように、バックル本体2の上側の軸2bは、特にズボン側の形状が直線状である必要は必ずしもなく、表側に凸な湾曲形状を有していてもよい。
すなわち、本実施形態のバックル10の上面視において凹形状部6と軸2bとの間に形成される空間7の形状は適宜設定されてよい。ただし、空間7は、主にベルトを装着する際におけるボタン8とバックル本体2との接触機会を低減し、ボタン8を係合部4に係合させる作業をより容易にすることを目的として形成される。従って、空間7は、着用するズボンに備わるボタン8を上下方向から見た寸法(例えば図3(b)参照)が収まる程度の大きさに形成されるのが好ましい。
例えば、本実施形態の空間7は、ある市販のジーンズに備わるトップボタンの直径が1.7cm、厚さが1.5mmであったことを考慮して、空間7のズボン装着時における上下方向に直交する左右方向の長さをA、ズボン側方向に平行な方向の長さをBとした場合に、Aが1.7cmより大きく、Bが1.5mmより大きい長さとなるように形成されてよい。換言すると、空間7は、少なくとも左右方向に1.7cmの辺とズボン側方向に1.5mmの辺とで形成される長方形の面積を含むように形成されてよい。このような空間7がバックル10に形成されることにより、着用者がベルト装着時にボタン8を係合部4に係合させる作業の容易性をより向上させることができる。なお、上記面積は、係合対象とするボタン8の側面の形状および大きさに応じて、係合のし易さの観点から適宜設定されてよい。
以上、第1実施形態のバックル10によれば、被服のずれを抑制するベルト1のバックル10であって、ベルト1の一端が固定されるバックル本体2と、バックル本体2に設けられ、ベルト1をバックル本体2に係止する係止部3(ベルト係止部)と、バックル本体2または係止部3に設けられ、被服の一部を下側から支持するように当該被服の一部に係合する係合部4と、を備える。これにより、バックル10を従来のベルトに適用することによりズボン等被服の一部を下側から支持することができるので、ズボン等被服のずり下がりを容易に防止することができる。
また、第1実施形態のバックル10によれば、被服の一部は、ズボンの前面上端に備わるボタン8である。また、係止部3は、ベルト1の係止穴1aに差し込まれることによりベルト1を係止するピン状部材である。そして、係合部4は、係止部3の一部であって、ズボン着用時における当該ズボン側に凸形状となるように湾曲することにより当該ズボン側の逆側(表側)に形成される凹形状部6(第1凹形状部)にボタン8が係合するように構成される。これにより、係合部4がより身体側に位置するように構成されるので、ベルト装着時に被服の一部としてのボタン8を係合部4に係合させる作業を容易にすることができる。また、バックル10においてボタン8を指示する係合部4が係止部3に構成されるので、ズボン着用時にベルトを締めることで外観への影響を排除することができる。
また、第1実施形態のバックル10は、ズボン着用時における上面視において、バックル本体2と凹形状部6との間に所定幅の空間7を有する。これにより、着用者がベルト装着時にボタン8を係合部4に係合させる際にボタン8とバックル本体2とが接触しにくくなるので、ボタン8を係合部4に係合させる作業の容易性をより向上させることができる。
-第2実施形態-
本発明の第2実施形態にかかるバックル20について説明する。本実施形態のバックル20は、係止部3の形状が第1実施形態と相違する。以下では図面等を参照して当該相違点を中心に説明する。また、第1実施形態と同様の構成には同じ指示番号を付して説明は省略する。
図5は、第2実施形態のバックル20を説明する図である。図5(a)はバックル20を正面から見た正面図、図5(b)はベルト装着時におけるバックル20を上側から見た上面図である。また、図10(a)で示す両矢印は重力方向における上下方向を示し、図10(b)に示す白抜き矢印が指す方向は、ズボン着用時にバックル20を使用した場合におけるズボン側を示している。
図示するとおり、バックル20が有する係合部24は、係止部3の一部であって、下側に凸形状となるように湾曲することにより上側に形成される凹形状部26にズボンの一部(ボタン8)が係合するように構成される。このような構成によれば、ボタン8の特に連結部8aを係合部24に引っ掛けることでボタン8を下側から係止部3に支持することができる。また、特に連結部8aが下側に凸な凹形状部26に引っ掛かることにより、バックル20がズボンに対して左右方向にずれることをより好適に抑制することができる。なお、係合部24の形状は図5で図示する形状に限らず、ボタン8を下側から係合して支持することができる限りにおいて様々な形状を含む。
図6は、本実施形態のバックル20の形状の他の例を説明する図である。図6(a)~(d)で示すバックル20は、ベルト装着時における正面図である。また、図6(a)~(d)の左側に示す両矢印は、ベルト装着時における重力方向に対応する上下方向を指すものとする。
図6(a)、(b)で示すように、係合部24が下側に凸形状となるように湾曲することで上側に形成される凹形状部26は、図5(a)で示すような曲線に限らず、三角形状や直線状等、適宜設定されてよい。
また、図6(c)で示すように、バックル本体2の上側の軸2bは、特に下側(係合部24側)の形状が直線状である必要は必ずしもなく、上側に凸な湾曲形状を有していてもよい。換言すると、バックル本体2の軸2bの下側(係合部24側)は、上側に凹む凹形状部を有していてもよい。
また、図6(d)で示すように、係止部3の基部3aはバックル本体2の軸2aにおいて必ずしも上下方向略中央部分に設けられる必要はなく、より下方に設定されてもよい。そして、係止部3の基部3aとは逆側の端部(先端)がバックル2本体の上下方向略中央に位置する場合に、係合部24は、係止部3の基部3aから先端までの間に設けられる段差として構成されてもよい。この場合、図6(d)で示すように、係止部3の基部3aから先端までの間において形成される段差であって、上下方向の高さが基部3aの位置と略一致する部分を凹形状部26として構成してもよい。
なお、本実施形態のバックル20の正面視における凹形状部26と軸2bとの間の長さCは、凹形状部26および軸2bの形状、或いは、係止部3の基部3aの軸2aにおける上下方向位置等を調整することにより適宜設定されてよい。ただし、長さCは、主にベルトを装着する際においてボタン8がバックル本体2に接触する機会を低減し、ボタン8を係合部4に係合させる作業をより容易にすることを目的として適宜調整されてよい。従って、長さCは、着用するズボンに備わるボタン8を正面から見た寸法(図3(a)参照)が収まる程度の大きさに形成されるのが好ましい。
例えば、本実施形態の長さCは、ある市販のジーンズに備わるトップボタンの直径が1.7cmであったことを考慮して、1.7cmより大きい長さとなるように設定される。これにより、バックル本体2の内径側における係合部4の上側の領域にボタン8を導入し易くなるので、着用者がベルト装着時にボタン8を係合部4に係合させる際の作業の容易性をより向上させることができる。
以上、第2実施形態のバックル20によれば、被服の一部は、ズボンの前面上端に備わるボタンである。また、係止部3は、ベルト1の係止穴1aに差し込まれることによりベルト1を係止するピン状部材である。そして、係合部4は、係止部3の一部であって、ズボン着用時における下側に凸形状となるように湾曲することにより上側に形成される凹形状部26(第2凹形状部)に前記ボタンが係合するように構成される。これにより、係合部4がより下側に位置するように構成されるので、バックル本体2の内径側における係合部4の上側の領域が大きくなるので、ベルト装着時に被服の一部としてのボタン8を係合部4に係合させる作業を容易にすることができる。また、凹形状部26にボタン8を係合させることにより、バックル20がズボンに対して左右方向にずれることを抑制することができる。
-第3実施形態-
本発明の第3実施形態にかかるバックル30について説明する。本実施形態のバックル30は、係合部34の形状が上記実施形態と相違する。以下では図面等を参照して当該相違点を中心に説明する。また、上記実施形態と同様の構成には同じ指示番号を付して説明は省略する。
図7は、第3実施形態の係合部34を説明する図である。本実施形態の係合部34は、係止部3の略中央部分の厚みを薄くすることにより形成され、図7(a)~(d)でそれぞれ図示する係合部34の特徴を少なくとも一以上備えて構成される。図7(a)に示す両矢印は重力方向における上下方向を示し、図7(b)~(d)に示す白抜き矢印が指す方向はズボン側を示している。
図7(a)は、本実施形態の係合部34を説明する図であって、バックル30を正面から見た図である。本実施形態の係合部34は、係止部3の略中央部分に下側に凹む凹形状部34aが形成されることによって上下方向に薄くなることにより構成される。
図7(b)は、本実施形態の係合部34を説明する図であって、係止部3をベルト装着時における上側から見た図である。本実施形態の係合部34は、係止部3の略中央部分にズボン側に凹む凹形状部34bが形成されることによってズボン側方向に薄くなることにより構成される。
図7(c)は、本実施形態の係合部34を説明する図であって、図7(b)に示す凹形状部34bのA-A断面図である。凹形状部34bは、図7(c)で示すように、ズボン側方向に垂直な面で凹むように構成される。
図7(d)は、本実施形態の係合部34を説明する図であって、図7(b)に示す凹形状部34bのA-A断面図の他の例を示す図である。図示するように、凹形状部34bは、図7(d)で示すように、ズボン側方向に垂直な面に対して傾斜を有して凹むように構成されてもよい。さらに、凹形状部34bが有する上記傾斜の傾斜面は図示するように上方を向くように構成されるのが好ましい。これにより、凹形状部34bの上側が細くなり、ベルト装着時に凹形状部34bをボタン8のズボン側の下側へもぐり込ませやすくなるので、着用者がベルト装着時にボタン8を係合部4に係合させる際の作業の容易性をより向上させることができる。なお、傾斜は図示するような直線に限られず、例えばズボン側に湾曲するような曲線であってもよい。
このような、凹形状部34a、34bの少なくとも一方を含む係合部34を備えるバックル30によっても、ベルト装着時にボタン8を容易に係合し、ズボンがベルトに対してずり下がることを防止することができる。
以上、第3実施形態のバックル30によれば、被服の一部は、ズボンの前面上端に備わるボタンであって、ベルト係止部3は、ベルト1の係止穴1aに差し込まれることによりベルト1を係止するピン状部材であって、係合部34は、ベルト係止部3の一部であって、他の部分よりも薄く形成された凹形状部34a、b(第3凹形状部)にボタンが係合するように構成される。これにより、係止部3においてボタン8に係合される部分がより薄く(細く)なり、ボタン8とズボンとの間の領域(連結部8a近傍の領域)に入り込みやすくなるので、ベルト装着時に被服の一部としてのボタン8を係合部34に係合させる作業の容易性を向上させることができる。
-第4実施形態-
本発明の第4実施形態にかかるバックル40について説明する。本実施形態のバックル40は、係合部44の配置、および形状が上記実施形態と相違する。以下では図面等を参照して当該相違点を中心に説明する。また、上記実施形態と同様の構成には同じ指示番号を付して説明は省略する。
図8は、第4実施形態のバックル40を説明する図である。なお、本実施形態のバックル40は、主に図9で示すようなスラックスを着用する際に用いられるベルトに適用される。
図8(a)はバックル30を裏側(ズボン側)斜め上方から見た斜視図、図8(b)はバックル40をズボン側から見た裏面図、図8(c)はベルト装着時においてバックル40を上側から見た上面図である。また、図8(a)(b)で示す両矢印は重力方向における上下方向を示し、図8(c)に示す白抜き矢印が指す方向はズボン側を示している。
図示するとおり、本実施形態の係合部44は、バックル本体2の下側の軸2cの一部であって、軸2cからズボン側へ突出するとともに上側へ湾曲する(折り曲げられる)ことにより形成されるフック形状部44aにズボンの一部が係合するように構成される。
ここで、本実施形態の係合部44が係合するズボンの一部について図9を参照して説明する。ここでのズボンの一部は、ズボン(スラックス)のオビ(ウエストバンド)部分に備わる持ち出し部45である。持ち出し部45は、スラックスの正面から見てスラックス前面の上端部中央から正面視における少し左側に設けられるボタン45bを留めるための布部分であって、上記オビ部分から突出して設けられ、少なくともその下側45aは当該オビ部分に縫い付けられていない(図中の点線より矢印方向を参照)。
このようなスラックスを対象とする本実施形態の係合部44は、バックル本体2に設けられ、スラックスの持ち出し部45を係合するように構成される。より詳細には、係合部44は、ベルト装着時に持ち出し部45のズボン側(裏地)に入り込み、持ち出し部45の下側45aをフック形状部44aに引っ掛けるように構成される。これにより、着用者がベルト装着時に係合部44を持ち出し部45のズボン側(裏地)に挿入することにより、スラックスがベルトに対してずり下がることを容易に防止することができる。
なお、係合部44の形状、および配置は、スラックスの持ち出し部45を下側から支持できる限り適宜設定されてよい。例えば、軸2cの左右方向における係合部44の位置は、図示する位置に限られない。係合部44の位置は、少なくとも図8(c)の裏面図において中央より右側において、バックル40をスラックスの正面中央に配置した状態で持ち出し部45の裏側に入り込める限りにおいて適宜調整することができる。また、44の形状も、図示するような矩形状に限らず適宜設定可能であり、半円形状や棒状等であってもよい。
なお、女性用のスラックス等、図9に示す持ち出し部45が正面視において右側に突出するように構成されるスラックスもある。このようなスラックスに使用されることを考慮して、バックル40が有する係合部44の位置を左右方向において逆側、すなわち、バックル40の裏側から見て左よりの位置に設定してもよい。
以上、第4実施形態のバックル40によれば、被服の一部は、ズボンの前面上端において、当該ズボンのオビ部から突出して備わる持ち出し部45である。また、バックル本体2は、環状構造を有し、上下に対向する略平行な二つの軸を含む。そして、係合部44は、バックル本体2の一部であって、二つの軸の下方の軸2cにおいてズボン側に突出するとともにズボン着用時における上側に折り曲げられることにより形成されるフック形状部44aに持ち出し部45が係合するように構成される。これにより、いわゆるトップボタンを有さないスラックスのずり下がりを防止することができる。
-第5実施形態-
本発明の第5実施形態にかかるバックル50について説明する。本実施形態のバックル50は、バックル本体52、係止部53、および、係合部54の形状が上記実施形態と相違する。以下では図面等を参照して当該相違点を中心に説明する。また、上記実施形態と同様の構成には同じ指示番号を付して説明は省略する。
図10は、本実施形態のバックル50を説明する図である。図10(a)は、バックル50を表から見た斜視図を示し、図10(b)はバックル50を裏側(ズボン側)から見た斜視図を示している。
本実施形態のバックル50は、裏平板部52bと、裏平板部52bに設けられベルト1の一端が固定されるベルト固定部52cとからなるバックル本体52と、係止部53と、裏平板部52bに設けられた係合部54とを含んで構成される。
裏平板部52bは、略矩形状に形成された平板状部材であって、バックル50のズボン側を覆うように構成される。裏平板部52bの一端側にはベルト固定部52cが回動可能に設けられ、当該ベルト固定部52cとの間でベルト1の一端を固定する。また、裏平板部52bの他端側には係止部53が回動可能に設けられ、当該係止部53との間でベルト1の他端を係止する。そして、裏平板部52bには、係合部54としての開口部が形成される。係合部54の詳細については図11を用いて後述する。
ベルト固定部52cは、バックル本体52のズボン側において、バックル本体52の一端に回転軸52aを介して回動(開閉)可能に設けられている。ベルト固定部52aは、回転軸52aを支点に開いた状態で裏平板部52bとの間にベルト1を挿入した後、閉じることでベルト1を挟み込み、ベルト1の一端をバックル本体52に固定する。
係止部53は、略矩形状に形成された平板状部材であって、バックル50の表側を覆うように構成される。係止部53は、バックル本体52の他端に回転軸53aを介して回動(開閉)可能に設けられている。係止部53は、回転軸53aを支点に開いた状態で裏平板部の一部との間にベルト1の他端を挿入した後(図中の矢印方向参照)、閉じることでベルト1を挟み込み、ベルト1の一端をバックル本体52に係止する。
以上が本発明が適用されるバックル50の構成である。以下、バックル50が備える係合部54の詳細を説明する。
図11は、本実施形態の係合部54の形状を説明する図である。図11(a)はバックル本体2の裏平板部52bをズボン側からみた裏面図、図11(b)は裏平板部52bをベルト装着時に上方から見た上面図、図11(c)はベルト装着時に裏平板部52bを側面から見た側面図を示している。図11(a)で示す両矢印は重力方向における上下方向を示し、図11(b)、(c)に示す白抜き矢印が指す方向は、ズボン着用時にバックル50を使用した場合における身体側(ズボン側)を示している。なお、図11は、主にバックル本体52における裏平板部52bと係合部54の形状を説明するために図示したものであり、ベルト固定部52cや、ベルト装着時にベルトが通る孔等は省略されている(後述する図12、13についても同様)。
図11(a)で示すように、本実施形態の係合部54は、裏平板部52bの略中央(ベルト装着時にトップボタンと重なる位置)に形成された開口部である。本実施形態の係合部54は、下側に凸なU字形状部分を含む凸形状を示している。係合部54の大きさは、ズボンの一部としてのボタン8が導入可能であることを前提に適宜設定されてよい。例えば、係合部54の左右方向における幅Aは、上述のジーンズに備わるトップボタンの大きさを考慮して例えば1.7cmより大きい長さに設定される。また、上下方向における長さBは、当該トップボタンの厚みを考慮して、例えば1.5mmより大きい長さに設定される。
このような大きさの開口部(係合部54)が裏平板部52bに形成されることにより、ベルト装着時に係合部54にボタン8を導入することができるので、係合部54の下端54aにボタン8の特に連結部8aを引っ掛け、ボタン8を下側から支持することができる。これにより、バックル50を備えるベルト装着時において、ズボンがベルトに対してずり下がることを防止することができる。
また、本実施形態の係合部54は、図11(b)、(c)で示す特徴を備えていてもよい。すなわち、係合部54は、係合部54の少なくとも一部としての下端54aがズボン側に突出することにより、係合部54の開口面の少なくとも一部が上方(斜め上方を含む)を向くように構成されてもよい。係合部54がこのように構成されることにより、係合部54の開口面の面積を増大させるとともに、ベルト装着時にボタン8を係合部54に導入する際に要求されるボタン8を傾ける角度をより緩やかにすることができるので、着用者がベルト装着時にボタン8を係合部4に係合させる作業の容易性を向上させることができる。
なお、係合部54の形状は、図11で示すものに限らず、ボタン8を下側から係合して支持することができる限りにおいて様々な形状を含んでよい。
図12は、本実施形態の係合部54の形状の他の例を説明する図である。図12(a)~(c)では、バックル50を裏側(ズボン側)から見た裏面図が示される。なお、各図の左側に示す両矢印は、ズボン着用時における重力方向に対応する上下方向を指すものとする。
図12(a)、(b)に示すとおり、係合部54は、図11(a)で示す形状に限らず、矩形状、又は半円状であってもよい。また、図示しないが、下側に頂点を有する三角形状であってもよい。すなわち、係合部54の下端54aは、直線形状、曲線形状、又は三角形の頂角形状等、適宜設定されてよい。
また、係合部54は、裏平板部52bの少なくとも一端に達するように形成されてもよい。例えば、係合部54は、図12(c)で示すように、裏平板部52bの裏側から見て右側の端部が開放するように形成されてもよい。係合部54がこのように形成されることにより、ベルト装着時にボタン8を係合部54に横から(左右方向から)導入することができるので、ボタン8を係合部54により容易に係合させることができる。
なお、図12(a)、(b)で示す係合部54の左右の幅方向の長さAと上下方向の長さBは図11(a)を用いて説明したのと同様である。ただし、図12(c)に示す長さBは、ボタン8の連結部8a(図3(b))を導入可能な長さ以上に設定される。例えば、ある市販のジーンズの連結部8a(リジット)の幅が8mmであることを考慮して、当該長さBを8mmより大きい長さに設定してもよい。また、対象とするボタン8の連結部8aが縫い糸である場合は、長さBを例えば3mm以上の長さに設定してもよい。なお、図12では示さないが、係合部54の少なくとも下端54aを含む一部は、図11(b)、(c)を用いて説明したのと同様にズボン側へ突出するように構成されてもよい。
またさらに、係合部54は、図13で示すような形状であってもよい。図13(a)は、バックル50を裏側(ズボン側)から見た裏面図を示し、図13(b)は、バックル50を左側から見た左側面図を示し、図13(c)は、バックル50を右側から見た右側面図を示し、図13(d)は、バックル50を裏側の上方から見た斜視図を示している。すなわち、係合部54は、図13(a)、(d)で示すように、裏平板部52bを左右方向の端部まで覆うように設けられてもよい。この場合は、係合部54は、図13(b)、(c)、(d)で示すように、裏平板部52bと係合部54とで形成される開口面が上方を向くように構成されてもよい。このような形状の係合部54であれば、ズボン着用時に係合部54が形成する開口部にボタン8を上方からより容易に導入することができるので、係合部54にボタン8をより容易に係合させることができる。
このように、本実施形態の係合部54の形状は特に限定されず、ボタン8を係合可能な限り適宜設定されてよい。
以上、第5実施形態のバックル50によれば、被服の一部は、ズボンの前面上端に備わるボタンである。また、バックル本体52は、被服側に設けられる裏平板部52bと、裏平板部52bに設けられベルト1の一端を固定するベルト固定部52cとを有する。そして、係合部54は、裏平板部52bに設けられた開口部であって、開口部の下端54aはズボン側に突出した突出部(突出した下端54a)を有し、突出部により上方を向いた開口面にボタン8が係合するように構成される。これにより、上述のピン形状部材にかかる係止部を有さないバックルに対しても、本願発明にかかるズボン等被服のずり下がり防止機能を適用することができる。
-第6実施形態-
本発明の第6実施形態にかかるバックル70について説明する。本実施形態のバックル70は、係止部3の形状が上記実施形態と相違する。以下、図18を参照して、特に第2実施形態にかかるバックル20(図5参照)との相違点について説明する。また、上記実施形態と同様の構成には同じ指示番号を付して説明は省略する。
図18は、本実施形態のバックル70が備える係止部3を身体側(ズボン側)の上方から見た斜視図である。本実施形態の係止部3は、係合部24の両隣、すなわち係合部24の左右方向において当該係合部24と近接する位置、あるいは、係合部24の左右方向において凹形状部26と連続する位置から上方に突起するように形成された突起形状部71a、71bを有する。このような構成によれば、ボタン8が係合部24に係合された状態においてバックル70にズボンに対して左右方向にずれるような力が加えられた場合であっても、ボタン8の特に連結部8aが突起形状部71a、71bに引っ掛かり、バックル70の左右方向への移動が規制されるので、バックル70がズボンに対して左右方向にずれることをより確実に抑制することができる。
なお、本実施形態の係止部3は、突起形状部71a、71bを両方とも有する必要は必ずしもなく、少なくとも一方の突起形状部(71aまたは71b)を備えていればよい。また、突起形状部71a、71bは、上述した第2実施形態の係止部3だけではなく、図7を参照して説明した第3実施形態の係止部3等、本明細書において説明した係合部を備える全ての係止部3に矛盾が生じない範囲で適用することができる。
以上、第6実施形態のバックル70によれば、ベルト係止部3は、係合部24の左右方向の少なくともいずれか一方であって、係合部24に近接する位置において上方に突起する突起形状部71a、71bをさらに有する。これにより、バックル70を左右にずらすように働く力が加わった場合でも、係合部24に係合した被服の一部が突起形状部71a、71bに引っ掛かるので、バックル70がズボンに対して左右方向にずれることをより確実に抑制することができる。
-第7実施形態-
本発明の第7実施形態に係るベルト200について説明する。なお、以下の説明において使用するベルト200の用語は、バックル本体を含むベルト全体を示すものとする。そして、上述の各実施形態の説明において用いた用語「ベルト1」に相当する部分、すなわち一端がバックル本体に固定された帯部分は、以下の説明においてもベルト1、あるいは、ベルト(帯部)1と称される。
本実施形態のベルト200は、保護部材201をさらに備え、保護部材201に係合部203が設けられている点が上記実施形態と相違する。以下、図面を参照して本実施形態の詳細を説明する。
図19(a)、(b)は、ベルト200を正面から見た図である。図示するように、本実施形態のベルト200は、ベルト1又はバックル本体に一端が固定され、バックル本体をベルト着用時における身体側から覆うように設けられた保護部材201を備えている。図19(b)は、バックル本体がめくりあげられた状態を示す図であって、保護部材201が正面から視認できる状態が表された図である。
保護部材201は、ベルト着用時において、バックル本体とズボンとの間に介在するように構成される部材である。保護部材201は、ベルト着用時にバックル本体が直接的に身体に当たるのを防止する機能、あるいは、ベルト着用時にバックル本体がズボン等被服を摩耗させることを防止する機能等を有する。保護部材201は、例えば運動をする時等、激しい動きを行うことが予想される際に着用するベルトに主に適用される。一例として、ベルト200は、野球をする際に装着されるいわゆる野球ベルトに適用される。
そして、保護部材201には、被服の一部を下側から支持するように当該被服の一部に係合する係合部203が形成される。本実施形態の係合部203は、保護部材201に形成された孔部(開口部)である。本実施形態の係合部203は、左右方向を長手方向とする長方形状に形成される。係合部203の大きさは、ズボンの一部としてのボタン8が導入可能であることを前提に適宜設定されてよい。そして、ベルト装着時に係合部203にボタン8を裏側(身体側)から挿入することにより、係合部203の下端がボタン8の特に連結部8aに係合し、ボタン8を下側から支持することができる。これにより、ベルト200の装着時において、ズボンがベルト200に対してずり下がることを抑制することができる。なお、図示するベルト通し202は、ベルト200の着用時にベルト1のバックル本体とは逆側の端部を通すために設けられた空間部分である。ベルト通し202は、必須の構成ではなく、適宜省略されてもよい。
なお、係合部203の形状は、図19に示すような長方形状である必要は必ずしもない。図20(a)で示すような楕円形状であってもよいし、図20(b)で示すようなT字形状であってもよい。また、係合部203は、保護部材201を貫通する孔部として形成される必要は必ずしもない。係合部203は、ズボン着用時にボタン8を下側から支持することができることを前提に、例えば、保護部材201の裏側(身体側)において、ボタン8の少なくとも下端側の一部が収まるように設けられた凹部であってもよい。
以上、第7実施形態のベルト200は、ズボンのずれを抑制するベルト200であって、ベルト(帯部)1の一端が固定されるバックル本体と、一端がベルト1又はバックル本体に固定され、ズボン着用時においてバックル本体をズボン側から覆うように設けられた保護部材201と、保護部材201に設けられ、ズボンの前面上端に備わるボタン8を下側から支持するように当該ボタンに係合する係合部203と、を備える。これにより、いわゆる野球ベルト等、保護部材201を備えるベルトの装着時においてもズボンがベルト200に対してずり下がることを抑制することができる。
また、第7実施形態のベルト200によれば、係合部203は、保護部材201に設けられた孔部であって、当該孔部にボタン8の少なくとも一部が挿入されることにより当該ボタンを下側から支持するように構成される。これにより、ズボン着用時にボタン8を確実に係合することができる。
-第8実施形態-
本発明の第8実施形態にかかるバックル110について説明する。本実施形態のバックル110は、係止部3に備わる係合部111の形状が上記実施形態と相違する。以下、図21を参照して当該相違点について説明する。また、上記実施形態と同様の構成には同じ指示番号を付して説明は省略する。
図21は、本実施形態のバックル110が備える係止部3を身体側(ズボン側)から見た斜視図である。本実施形態のバックル110は、主に図9で示すようなスラックスを着用する際に用いられるベルトに適用される。
図示するとおり、本実施形態の係合部111は、係止部3の下側から下方へ延びる棒形状部と、当該棒形状部の下端からズボン側へ突出するとともに上側へ折り曲げられることにより形成されるフック形状部111aとを有する。係合部111は、このフック形状部111aにスラックスの持ち出し部45の下側45a(図9参照)が係合するように構成される。これにより、ベルト装着時に着用者が係合部111の先端部分を持ち出し部45のズボン側(裏地)に挿入することによって、スラックスがベルトに対してずり下がることを容易に防止することができる。なお、係止部3の左右方向における係合部111の位置、および、係合部111の棒形状部分の長さ、フック形状部111aの形状等は、デザイン性、及び、スラックスの持ち出し部45への係合のし易さの観点から適宜変更されてよい。
以上、第8実施形態のバックル110によれば、被服の一部は、ズボンの前面上端において当該ズボンのオビ部から突出して備わる持ち出し部45であって、係合部111は、ベルト係止部の下側から下方へ延びる棒形状部と、当該棒形状部の下端からズボン側に突出するとともにズボン着用時における上側に折り曲げられることにより形成されるフック形状部111aとを有し、当該フック形状部111aに持ち出し部45が係合するように構成される。このような構成によっても、ズボン等被服のずり下がりを容易に抑制することができる。
-第9実施形態-
本発明の第9実施形態にかかるバックル120について説明する。本実施形態のバックル120は、係止部3に備わる係合部121の形状が上記実施形態と相違する。以下、図22を参照して当該相違点について説明する。また、上記実施形態と同様の構成には同じ指示番号を付して説明は省略する。
図22(a)~(d)は、本実施形態のバックル120が備える係止部3を身体側(ズボン側)の上方から見た斜視図である。本実施形態のバックル120は、主に図23で示すようなステイループ(ピンループ)230を備えるスラックスを着用する際に用いられるベルトに適用される。
図示するように、本実施形態の係合部121は、係止部3の一部であって、係止部3から上方へ突出する棒形状部を含み、当該棒形状部がズボンの一部に係合するように構成される。
ここで、本実施形態の係合部121が係合するズボンの一部について、図23を参照して説明する。ここでのズボンの一部は、スラックスのオビ部分に備わるステイループ(ベルトステイループ、あるいはベルトピンループとも称される)230である。ステイループ230は、本来、係止部が挿入されることによって当該係止部を備えるバックルがスラックスに対して左右方向にずれないようにするために設けられる輪っかである。
このようなステイループ230を備えるスラックスを対象とする係合部121は、係止部3に設けられ、スラックスのステイループ230を係合するように構成される。より詳細には、係合部121は、ベルト装着時にステイループ230のループ内(輪っか内)に入り込み、ステイループ230を係合部121乃至係止部3に引っ掛けるように構成される。これにより、ベルト装着時に着用者が係合部121をステイループ230に挿入することにより、スラックスがベルトに対してずり下がることを容易に防止することができるとともに、バックル120がスラックスに対して左右方向にずれることを抑制することができる。
なお、係合部121の形状、および配置は、ステイループ230を引っ掛けて下側から支持できる限り適宜設定されてよい。例えば、係合部121は、図22(a)、(b)に示すように、係止部3のズボン側の側面から上方へ湾曲するように突出してもよいし、図22(c)、(d)に示すように、係止部3の上側から上方へ真っ直ぐ突出してもよい。また、係合部121は、図22(a)、(c)に示すように、棒形状部の上端部分が左右方向に延びるT字形状であってもよいし、図22(b)、(d)に示すような棒形状であってもよい。すなわち、係合部121の形状、および配置は、ステイループ230への係合のしやすさの観点から、適宜変更されてよい。
以上、第9実施形態のバックル120によれば、被服の一部は、ズボンの前面上端において当該ズボンのオビ部に備わるステイループ230であって、係合部121は、ベルト係止部3から上方へ延びる棒形状部を有し、当該棒形状部がステイループ230に挿入されることによって当該棒形状部にステイループ230が係合するように構成される。このような構成によっても、スラックスがベルトに対してずり下がることを容易に防止することができるとともにバックル120がスラックスに対して左右方向にずれることを抑制することができる。
-第10実施形態-
本発明の第10実施形態に係るベルトパーツ300について説明する。以下に説明するベルトパーツ300は、従来のベルトに着脱可能に構成されたベルト用のパーツである。ベルトパーツ300は、従来のベルトに取り付けられることによって、当該ベルトに、上記の各実施形態で説明したズボンのずれを抑制する機能を付加することができる。
図24(a)、(b)は、本実施形態のベルトパーツ300を説明する図であって、ベルトパーツ300がベルト1に取り付けられた状態をベルト着用時における身体側(ズボン側)から見た図である。図24(a)と図24(b)にそれぞれ示すベルトパーツ300は、係合する対象が異なる。以下詳細を説明する。
図24(a)に示すベルトパーツ300は、主に、保持部301と係合部302とを含んで構成される。図24(a)のベルトパーツ300は、主に図9、23で示すようなスラックスを着用する際に用いられるベルトに適用される。
保持部301は、環状形状を有し、その内径にベルト1が通るように構成される。これにより、保持部301の内径にベルト1を通して保持部301を移動させることにより、保持部301を備えるベルトパーツ300をベルト1の所望の位置に保持することができる。なお、ここでの環状形状は、完全に連続する環状だけでなく、一部切り欠かれた部分が存在する形状も含むものとする。この場合には、当該切り欠かれた部分からベルト1の上下方向いずれかの端部を挿入させてベルト1を保持部301の内径側に収めることによって、ベルトパーツ300をベルト1の所望の位置に保持することができる。さらに、保持部301は、例えば図26で示すような定革をベルト1に固定するための金具に当該定革とともに挟持されることによってベルトパーツ300をベルト1に保持するように構成されてもよい。
係合部302は、保持部301の下端からズボン側へ突出するとともに上側へ折り曲げられることにより形成されるフック形状部302aにスラックスの持ち出し部45の下側45a(図9参照)が係合するように構成される。これにより、ベルト装着時に着用者が係合部302の先端部分を持ち出し部45のズボン側(裏地)に挿入することで、スラックスがベルトに対してずり下がることを容易に防止することができる。
図24(b)に示すベルトパーツ300は、主に、保持部301と係合部303とを含んで構成される。図24(b)のベルトパーツ300は、主に図9、23で示すようなスラックスを着用する際に用いられるベルトに適用される。保持部301については、図24(a)のベルトパーツ300の構成と同様であるため説明を省略する。
係合部303は、保持部301からズボン側へ突出するとともに上側へ折り曲げられることにより形成されるフック形状部の上端に形成された凹形状部303aに図9、23で示すようなスラックスが備えるボタン45bが係合するように構成される。ボタン45bは、スラックス(ズボン)の前面上端に備わるボタンであって、持ち出し部45を留めるために使用される。係合部303は、ベルト装着時に着用者が凹形状部303aをボタン45bの特に不図示の連結部(ボタン45bとズボン生地との連結部)に係合させることによってボタン45bを下側から支持することができるので、ズボンがベルトに対してずり下がることを容易に防止することができる。
また、ベルトパーツ300は、上述した保持部301に代えて、図25で示すような保持部304を備えて構成されてもよい。
図25(a)、(b)は、本実施形態のベルトパーツ300の変形例を説明する図である。図25に示すベルトパーツ300は、図24で示したベルトパーツとは、特に保持部304の態用が相違する。
図25(a)、(b)に示すベルトパーツ300が備える保持部304は、ベルト1に形成された係止穴1a(図24参照)に挿入可能な棒形状部304aを含んで構成される。より詳細には、保持部304は、棒形状部304aを支持する基部304bと、基部304bから突出して形成される棒形状部304aとを有する。そして、棒形状部304aをベルト1の係止穴1aに挿入することにより、ベルトパーツ300をベルト1に保持することができる。なお、棒形状部304aの端部をナット等が螺合、あるいはキャップ等が嵌合可能な形状とし、棒形状部304aを係止穴1aに貫通させた後にその端部をナット等で固定することができるように構成してもよい。これにより、ベルトパーツ300をベルト1により確実に保持することができる。
なお、係合部302、303については、係合部302、303が基部304bから突出して形成される点を除いては、図25(a)に係る係合部302は図24(a)の係合部302と、図25(b)に係る係合部303は図24(b)の係合部303と、それぞれ同等の構成であるため説明を省略する。
以上がベルト1に着脱可能に構成されるベルトパーツ300の詳細である。ただし、上述したベルトパーツ300の形状は一例であって、図24、25を参照して説明した態様に限られない。ベルトパーツ300は、上述したようなズボンのズレを抑制する機能をズボンに付加することができることを前提に、デザイン性、被服の一部への係合容易性、ベルト1に対する着脱のし易さ等を考慮して適宜変更されてよい。
また、ベルトパーツ300は、必ずしも着脱可能に構成される必要はなく、図26、27に示すようにベルトを構成する一部材として常時備わっていてもよい。
図26は、ベルトパーツ300を備えるベルト400を説明する図である。図26(a)はベルト400を正面から見た正面図を示し、図26(b)はベルト400を上方から見た上面図を示し、図26(c)はベルト400をズボン側の上方から見た斜視図を示す。図示するベルト400は、主に図9で示すようなスラックスを着用する際に用いられるベルトに適用される。
特に図26(b)に表されるように、ベルトパーツ300は、長手方向がベルト1の短手方向(上下方向)に一致するような平板形状部305を有する。本実施形態の平板形状部305(固定部)は、定革をベルト1に固定するための金具とバックル本体との間において、ベルト(帯部)1が前後方向に2重に重ね合わせられた部分において当該ベルト1に挟まれるようにして固定されている。また、平板形状部305の上側の端部は、ズボン側に突出するとともに下側に折り曲がることによりカギ形状部を形成し、当該カギ形上部がベルト1の上端に引かかるように構成されている。そして、図26(c)に示すように、ベルト400は、ベルトパーツ300の下端からズボン側へ突出するとともに上側へ折り曲げられることにより形成されるフック形状部302aが備わり、当該フック形状部302aにスラックスの持ち出し部45の下側45a(図9参照)が係合するように構成される。このような構成によっても、着用者がベルト装着時に係合部302の先端部分を持ち出し部45のズボン側(裏地)に挿入することによって、スラックスがベルトに対してずり下がることを容易に防止することができる。なお、ベルトパーツ300がベルト400に固定される態様、すなわち固定部305の態様は特に限定されず、適宜変更されてよい。例えば、ベルトパーツ300は、定革をベルト1に固定するための金具に当該定革とともに挟持されることによってベルト400に固定されるように構成されてもよい。
図27は、ベルトパーツ300を備えるベルト400の変形例を説明する図である。本変形例によれば、定革をベルト1に固定するための金具がベルトパーツ300として構成される。すなわち、本変形例におけるベルトパーツ300は、定革と共にベルト1を挟持して当該ベルト1に固定される固定部305と、固定部305の下端からズボン側へ突出するとともに上側へ折り曲げられることにより形成されるフック形状部302aとを備え、当該フック形状部302aにスラックスの持ち出し部45の下側45a(図9参照)が係合するように構成される。このような構成によっても、着用者がベルト装着時に係合部302の先端部分を持ち出し部45のズボン側(裏地)に挿入することによって、スラックスがベルトに対してずり下がることを容易に防止することができる。
以上、第10実施形態のベルトパーツ300は、ズボンのずれを抑制するベルト1に着脱可能に構成されたベルトパーツであって、ズボンの前面上端において当該ズボンのオビ部から突出して備わる持ち出し部45、または、ズボンの前面上端に備わるボタン45bに係合する係合部302、303と、ベルトに着脱可能に保持される保持部301、304と、を備え、係合部302、303は、ズボン着用時においてズボン側に突出するとともに上側に折り曲げられることにより形成されるフック形状部302a、303aを有し、フック形状部302a、303aは、その一部が持ち出し部45、またはボタン45bを下側から支持するように構成される。このようなベルトパーツ300を従来のベルトに取り付けることによって、当該ベルトに上記の各実施形態で説明したズボンのずれを抑制する機能を容易に付加することができる。
また、第10実施形態のベルトパーツ300によれば、保持部304は、ベルト1に形成された係止穴1aに挿入可能な棒形状部を備える。これにより、ベルトに備わる係止穴1aを利用して、ベルトパーツ300を従来のベルトにより容易に取り付けることができる。
また、第10実施形態のベルト400は、ズボンのずれを抑制するベルト400であって、ベルトに固定され、ズボンの前面上端において当該ズボンのオビ部から突出して備わる持ち出し部45に係合する係合部を備え、係合部302は、ベルトに固定される固定部305と、ズボン着用時においてズボン側に突出するとともに上側に折り曲げられることにより形成されるフック形状部302aと、を有し、フック形状部302aは、ズボン着用時において持ち出し部45を下側から支持するように構成される。このような構成によっても、ズボン等被服のずり下がりを容易に抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。上記の各実施形態および変形例は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。
例えば、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせて、下側とズボン側との双方に突出する係合部を備えるバックルを構成することもできる。また、第3実施形態において図7(d)を用いて説明した凹形状部34bの傾斜を第1実施形態の凹形状部6に適用してもよい。また、バックル40が備えるフック形状部44aは、バックル40以外の他のバックル(バックル50、60、100等)にも適用することができる。
また、上述した係合部(4、24、34、54、111、121、203、302、303、501)の上下方向及び左右方向に係る位置は、図示する位置に必ずしも限定されない。これら係合部(4、24、34、54、111、121、203、302、303、501)の位置は、ベルト着用時においてバックル(10、20、30、50等)を前面中央(へその真下付近)に配置した際にズボンのトップボタンを良好に係合できる位置に適宜調整されてよい。
また、本発明にかかる係合部が適用されるバックルの形状は上述したものに限定されず、ベルトの係止穴1aに差し込まれるピン形状部材、あるいは、バックルの身体側を覆うように構成される平板状部材等を備える限り、他の形状のバックルにも適用することができる。
例えば、図10を用いて説明した第5実施形態に係る裏平板部52bは、図14で示すバックル60の裏平板部62bにも同様に適用することができる。
なお、バックル60のバックル本体62は、裏平板部62bに加えて、バックル60の表側を覆うように構成された表平板部62aを備え、裏平板部62bと表平板部62aとの間にベルト通し部62cを形成する。また、バックル60の係止部63は、バックル本体内において上下方向(図の両矢印方向)に平行に配置されるとともに、バックル60の上下方向端面に設けられた開口部65を左右方向に移動可能に設けられた棒状部材である。そして、係止部63は、ベルト通し部62cに図中の点線矢印方向に沿って導入されるベルト1の他端を、バックル本体62の内壁との間で挟持することによりベルト1をバックル本体62に係止するように構成される。
また、例えば、第1実施形態において、図4(c)を用いて説明した空間7は、図15(a)で示すような構成で形成することもできる。すなわち、図15(a)に示すバックル70は、従来の棒状のピン形状部材に対して、バックル本体2の上側の軸2bが表側に凸成形状を有することにより空間7を形成する。このような構成によっても、当該空間7に対して上側から下側へボタン8を導入することにより、ボタン8を従来の棒状のピン形状部材に係合させて下側から支持することができる。
また、上述した係合部は、図15(b)で示すような構成で形成することもできる。すなわち、図15(b)で示すバックル80が備える係合部84は、棒状のピン形状部材からズボン側に突出するとともに、上下方向に開口する開口部84aを有して構成される。このように構成されるバックル80によれば、ベルト装着時にボタン8を開口部84a内に上方から導入することにより係合してボタン8を下側から支持することができる。
またさらに、上述した係合部は、例えば、図15(c)、(d)で示すような構成で形成することもできる。すなわち、図15(c)、(d)で示すバックル90が備える係合部94は、棒状のピン形状部材からズボン側に突出するとともに上方に折り曲がって形成されており、その上方の端面に形成される凹形状部94aを有して構成される。このように構成されるバックル90によっても、ベルト装着時にボタン8の特に連結部8aを凹形状部94aに係合することによりボタン8を下側から支持することができる。
さらに、本願発明は、図16で示すような形状のバックル100にも適用することができる。
図16は、本願発明が適用されるバックル100を示す図である。図16(a)はバックル100を正面から見た正面図を示し、図16(b)はバックル100をベルト着用時における上側からみた上面図を示し、図16(c)はバックル100を用いてのズボン着用時にベルト1を締めた状態を示している。
図16(a)が示すように、バックル100を構成するバックル本体2は、その左右方向の略中央部分において軸2aと略平行に設けられた軸2dを備えている。そして、バックル100では、軸2dにベルト1の一端が固定されるとともに、係止部3の一端に形成されたリング状の基部3aが回動可能に固定される。
図16(b)が示すように、バックル100が備える係止部3は、基部3aからズボン側へ突出するとともに、上面視において矩形の環状に形成された係合部104を有している。係合部104は、図示するようにバックル100の左右方向の略中央部分において、ズボン側に凸形状となるとともに、その内径のズボン側に凹形状部104aを形成する。これにより、バックル100の左右方向の略中央部分において、凹形状部104aと、軸2bとの間に空間7が構成される。このように構成される係合部104によっても、ズボン着用時にベルトを締める際に、空間7に導入されるボタンを引っ掛け、当該ボタンを下側から支持することができる。
なお、本例における係合部104は、図示するような矩形状に限らず、楕円形状や円形状であってもよい。また、図示する空間7は、凹形状部104aと、軸2bとの間で形成されているが、係合部104の内径側の空間を空間7と見なすこともできる。その場合は、係合部104の内径の前面側(ズボン側の逆側)の部分が軸2bのズボン側よりもさらにズボン側に配置されていてもよい。バックル100がこのように構成される場合でも、ズボン着用時にベルトを締める際に、係合部104の内径側の空間にボタンを導入することにより、当該ボタンを下側から支持することができる。
なお、ズボン着用時にバックル100を用いてベルト1を締めた場合には、図16(c)が示すように正面視においてバックル本体2の軸2aを視認することができる。
またさらに、本願発明は、図27で示すような形状のバックル500にも適用することができる。
図27は、本願発明が適用されるバックル500をズボン側の上方から見た斜視図である。特徴を分かり易くするため、ベルト係止部は省略されている。図27が示すように、バックル500は、軸2aと略平行であって、バックル本体2の上側の軸2bと下側の軸2cとを繋ぐ二つの軸2d、2eを備える。そして、バックル500は、軸2d、2eを左右方向に繋ぐように構成された係合部501をさらに備える。係合部501は、バックル500の上面視(不図示)において少なくとも軸2cよりもズボン側に位置するように構成される。このように構成される係合部501によっても、ズボン着用時にベルトを締める際に、係合部501に形成された凹形状部501aがボタンを引っ掛け、当該ボタンを下側から支持することができる。
また、本明細書におけるズボン等被服には、スカートも含む。又、上述したバックル(10、20、30、40、50、60、70、80、90、100等)は、ベルトの一般的な使用態様を前提とする。すなわち、上記実施形態にかかるバックルは、被服用のベルトを着用者から見てズボンの前面左側から巻いて(着用者から見て前面左側のベルトループに先に通して)使用することを前提に構成されている。従って、逆の使用態様(ベルトをズボンの前面右側から巻いて使用すること)を前提とする場合には、同様の技術的効果が発揮されるように、例えば上下方向を逆にする等適宜修正されてよい。
なお、逆の使用態様(ベルトをズボンの前面右側から巻いて使用すること)時には、上述した係合部およびフック形状部を、例えばワンピース等の被服の着用時に当該被服の一部に引っ掛けて使用することもできる。このような使用方法によれば、係合部が被服の一部に引っ掛かることにより、被服着用時におけるバックルの位置を被服に合わせてより自由に設定できるとともに、当該バックルが被服に対して下方にずれることを抑制することができる。
本願は、2018年8月7日に日本国特許庁に出願された特願2018-148769に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。