JP7049060B2 - リチウム二次電池用電極、リチウム二次電池及びリチウム二次電池用電極の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用電極、リチウム二次電池及びリチウム二次電池用電極の製造方法 Download PDF

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Description

本明細書で開示する発明である本開示は、リチウム二次電池用電極及びリチウム二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、高電圧・高エネルギー密度が得られるだけでなく、小型・軽量化が図れるため、パソコンや携帯電話等の情報通信機器の関連分野ではすでに実用化されている。また、近年では、資源問題や環境問題から電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される電源としても利用されている。 この自動車向けのリチウムイオン二次電池では、高エネルギー密度であることが要求される。電池の高エネルギー化を図る際には、電極を厚膜化して集電箔の割合を減少させるとともに、高密度化することで単位体積当たりの活物質量を多くすることが必須である。このような場合、球形化天然黒鉛を負極活物質として使用すると、電極プレス時に粒子が潰れて膜厚方向に対して横方向に配向をしてしまい、電池入出力特性の低下が大きい。そのため、配向度を考慮した黒鉛粒子の利用(例えば特許文献1~3など参照)や、黒鉛粒子の垂直配向(例えば特許文献4~6など参照)などが報告されている。
特開2005-158718号公報 特表2012-519124号公報 特開2010-140795号公報 特許5929114号 特開2003-197182号公報 特開2003-197189号公報
しかしながら、特許文献1~3のように、配向度を調整した黒鉛粒子を利用するものでは、耐久性の低下や充放電容量自体の低下が課題である。また、天然黒鉛と異なり黒鉛粒子自体を合成することになるため、製造工程が煩雑となり、高コストとなる問題がある。また、特許文献4~6のように、黒鉛粒子自体を垂直配向するものでは、電極を高密度化すると配向度が下がり、結果として電池の充放電特性が低下してしまう問題があった。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、黒鉛を含む電極の合材密度を高めるに際して、充放電特性の低下をより抑制することができるリチウム二次電池用電極を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、活物質である黒鉛に少量の膨張黒鉛粒子を添加したところ、電極の合材密度を高めるに際して、充放電特性の低下をより抑制することができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示するリチウム二次電池用電極は、
活物質としての黒鉛と膨張黒鉛粒子とを含む電極合材が形成され、
前記電極合材は、前記電極合材の全体に対して0質量%を超え5質量%以下の膨張黒鉛粒子を含み、合材密度が1.3g/cm3よりも大きいものである。
本明細書で開示するリチウム二次電池は、
正極活物質を有する正極と、
上記のリチウム二次電池用電極である負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するリチウムイオン伝導媒体と、を備えたものである。
このリチウム二次電池用電極及びリチウム二次電池では、黒鉛を含む電極の合材密度を高めるに際して、充放電特性の低下をより抑制することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。黒鉛を含む電極合材を集電体上に形成したのち、高密度化を図り合材密度を高めるために圧力をかけると、黒鉛が割れたり、潰れたりすることがある。黒鉛の割れは、容量低下に繋がり、また、黒鉛が潰れるとリチウムイオンの移動パスが伸びる(屈曲度増加)などして抵抗が増大することがある。この電極では、高密度化を図るため圧力をかけた際に、層状で空間を多く有する膨張黒鉛粒子が潤滑剤的な働きをするため、黒鉛の割れや潰れなどをより抑制することができると推察される。したがって、黒鉛を含む電極の合材密度を高めた場合においても、充放電特性の低下をより抑制することができるものと推察される。
リチウム二次電池10の構成の一例を示す模式図。 実験例2,6の初回充放電曲線。 実験例2,6の0.1C及び0.5Cでの放電曲線。 実験例2,6の電極表面のSEM像。 実験例2,6の電極断面のSEM像。 膨張黒鉛のSEM像。
本実施形態で説明するリチウム二次電池用電極は、活物質としての黒鉛と膨張黒鉛粒子とを含む電極合材が形成されている。この電極合材は、電極合材の全体に対して0質量%を超え5質量%以下の膨張黒鉛粒子を含み、合材密度が1.3g/cm3よりも大きいものである。また、この電極は、リチウムイオン二次電池の負極であるものとしてもよい。
この電極は、活物質を含む電極合材と集電体とを密着させて形成したものとしてもよい。また、この電極は、例えば活物質と結着材とを混合した電極合材を適当な溶剤を加えてペースト状とし、集電体の表面に塗布乾燥し、電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。この電極には、例えば、必要に応じて導電材を添加してもよい。電極合材は、活物質や膨張黒鉛粒子、結着材とを含む電極合材の全体に対して0質量%を超え5質量%以下の範囲で膨張黒鉛粒子が含まれている。膨張黒鉛粒子の添加量がこの範囲では、充放電効率や放電レート特性、エネルギー密度などをより向上でき、好ましい。この膨張黒鉛粒子の含有量は、0.2質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また、この膨張黒鉛粒子の含有量は、4質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。膨張黒鉛粒子の添加量が4質量%以下では、充放電効率や電極合材の塗工性などをより向上でき、好ましい。この電極合材は、合材密度が1.5g/cm3以上であることが好ましく、1.6g/cm3以上であることがより好ましい。合材密度が高いほど、膨張黒鉛粒子の添加効果が顕著であり、好ましい。この合材密度は、高いほど好ましいが、圧力増加により集電体への悪影響などが生じることから2.2g/cm3以下としてもよい。また、電極合材は、目付質量が10mg/cm2以上であることが好ましく、12mg/cm2以上であることがより好ましい。目付質量が10mg/cm2以上では、電極合材の厚さ低減において電極合材の高密度化を要するため、膨張黒鉛粒子の添加効果が顕著であり、好ましい。この目付質量は、例えば、20mg/cm2以下としてもよい。用いる膨張黒鉛粒子は、例えば、黒鉛を膨張化させたのち、粉砕して粒度を整えたものとしてもよい。この膨張黒鉛粒子は、例えば、粒径が100μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。また、この粒径が1μm以上では、電極合材の混練時に凝集や分離などを起こしにくいことから、好ましい。
この電極に用いられる活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料として、黒鉛が挙げられる。黒鉛としては、例えば、人造黒鉛や天然黒鉛などが挙げられるが、天然黒鉛が好ましい。導電材としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子や導電材粒子などを繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1~500μmのものが用いられる。
本明細書で開示するリチウム二次電池は、正極活物質を有する正極と、上述したリチウム二次電池用電極である負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたものである。
この正極は、リチウムイオンを吸蔵放出しうる正極活物質を含むものとしてもよい。この正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/32、LiV23などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。この正極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ負極で例示したものを用いることができる。正極に用いられる集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は負極と同様のものを用いることができる。
このリチウム二次電池のイオン伝導媒体としては、有機溶媒に支持塩を含む非水系電解液などを用いることができる。有機溶媒としては、炭酸エステルや、フッ素含有炭酸エステルなどが挙げられる。炭酸エステルとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類などが挙げられる。フッ素含有炭酸エステルとしては、例えば、フッ素化環状カーボネートやフッ素化鎖状カーボネートなど、上述した炭酸エステルの1以上の水素をフッ素に置換したものとしてもよい。具体的には、モノフルオロエチレンカーボネートや、ジフルオロエチレンカーボネート、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、フルオロメチルジフルオロメチルカーボネートなどが挙げられる。なお、この非水系電解液には、炭酸エステルのほかに、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などのうち1以上の他の溶媒が添加されてもよい。この他の溶媒は、電解液に含まれないものとしてもよく、電解液の性状が変更されない程度、少ない量(例えば、10体積%以下)で添加されるものとしてもよい。
このイオン伝導媒体に含まれている支持塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、非水系電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。
このリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウム二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
このリチウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、リチウム二次電池10の一例を示す模式図である。このリチウム二次電池10は、集電体11に正極活物質を含む正極合材12を形成した正極シート13と、集電体14の表面に活物質(黒鉛)を含む電極合材17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18の間を満たすイオン伝導媒体20とを備えたものである。このリチウム二次電池10では、正極シート13と負極シート18との間にセパレータ19を挟み、これらを捲回して円筒ケース22に挿入し、正極シート13に接続された正極端子24と負極シートに接続された負極端子26とを配設して形成されている。このリチウム二次電池10において、電極合材17は、その全体に対して0質量%を超え5質量%以下の膨張黒鉛粒子を含み、合材密度が1.3g/cm3よりも大きいものである。
以上詳述した電極及びリチウム二次電池では、黒鉛を含む電極の合材密度を高めたものにおいて、充放電特性の低下をより抑制することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。黒鉛を含む電極合材を集電体上に形成したのち、高密度化を図り合材密度を高めるために圧力をかけると、黒鉛が割れたり、潰れたりすることがある。黒鉛の割れは、容量低下に繋がり、また、黒鉛が潰れるとリチウムイオンの移動パスが伸びるなどして抵抗が増大することがある。この電極では、高密度化を図るため圧力をかけた際に、層状で空間を多く有する膨張黒鉛粒子が潤滑剤的な働きをするため、黒鉛の割れや潰れなどをより抑制することができると推察される。したがって、黒鉛を含む電極の合材密度を高めるに際して、充放電特性の低下をより抑制することができるものと推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば上述した実施形態では、正極は、リチウムイオンを吸蔵放出するリチウム二次電池を主として説明したが、負極の電極合材に黒鉛及び膨張黒鉛を含むものとすれば、正極は特にこれに限られない。したがって、このリチウム二次電池は、リチウムイオン二次電池のほか、電気二重層キャパシタ、電気化学キャパシタなど、各種蓄電デバイスなどとすることができる。
以下には、リチウム二次電池用電極を具体的に作製した例を実験例として説明する。なお、実験例1~4が実施例に相当し、実験例5~7が比較例に相当する。
[電極の作製]
球形化天然黒鉛(日本黒鉛製、CGB-15)、膨張黒鉛(富士黒鉛工業製EXP-100S160)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース、結着剤であるスチレン-ブタジエンゴムを混合して水と共に混合して電極合材ペーストを得た。この電極合材は、質量での配合比が、黒鉛:膨張黒鉛:CMC:SBR=(98-x):x:1:1となるよう混合した。得られたペーストを13mg/cm2の目付量となるように銅箔上に塗布し、真空乾燥を施したのち、ロールプレス機で圧延処理を施して、電極密度が1.6g/cm3となるよう調製して負極シートを作製した。
[実験例1~4]
膨張黒鉛の添加量xを、1質量%、2質量%、3質量%、5質量%としたものをそれぞれ実験例1~4とした。実験例1~4の電極合材の厚さは81μmであった。
[実験例5~7]
電極密度を1.3g/cm3とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたものを実験例5とした。また、膨張黒鉛の添加量を0質量%とした以外は実験例2と同様の工程を経て得られたものを実験例6とした。また、電極密度を1.3g/cm3とした以外は実験例6と同様の工程を経て得られたものを実験例7とした。
[評価セルの作製]
上記作製した電極を負極とし、2cm2の大きさに打ち抜き、金属リチウムを対極とし、ECとDMCとEMCとの体積比が3:4:3の非水溶媒に1MのLiPF6を溶解させた電解液を用いて負極/Liの評価セルを作製した。作製した評価セルに対して、0.2mA/cm2の電流密度で0.005Vに初回充電を行い、同電流密度で1.5Vに放電を行った。この評価セルでは、充電は黒鉛負極へのLi+の挿入、放電は黒鉛負極からのLi+の脱離とする。
(放電レート特性の評価)
上記作製した評価セルを用いて充放電を行い評価した。まず、評価セルを20℃、0.005Vに定電流、定電位充電をしたのち、0.5mA/cm2(0.1Cに相当)又は2.5mA/cm2(0.5Cに相当)の電流値で終止電圧1.5Vまで定電流放電を実施した。放電レート特性は、0.1Cでの放電容量(mAh/g)に対する0.5Cでの放電容量(mAh/g)の割合(%)とした。
(SEM観察)
電極の表面および断面について走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製S-3600N)を用いてSEM観察した。
(理論エネルギー密度)
電極の密度から、負極として得られる理論エネルギー密度を算出した。計算の前提として、黒鉛は360mAh/g、膨張黒鉛は500mAh/gの容量であると仮定した。
(塗工性)
電極合材ペーストの塗工性を評価した。この塗工性は、電極合材ペーストの作製及び塗工において、ペーストの混練時に凝集、分離が起こり集電体への塗工が難しい場合を「×」とし、混練及び塗工しやすい場合を「○」として評価した。
(結果と考察)
作製した実験例について、膨張黒鉛の添加量、電極密度、充放電効率、放電レート特性、理論エネルギー密度及び電極合材の塗工性について表1にまとめた。また、図2は、実験例2,6の初回充放電曲線である。図3は、実験例2,6の0.1C及び0.5Cでの放電曲線である。図2に示すように、初回充放電曲線によれば、膨張黒鉛を添加しない実験例6では、放電容量が低く、不可逆容量が大きかった。これに対して、膨張黒鉛を添加した実験例2では、不可逆容量が低下し、放電容量がより大きかった。また、図3に示すように、膨張黒鉛を添加しない実験例6では、高密度化の影響によって放電容量自体が小さく、且つ放電レートの0.1Cから0.5Cへの増加による容量低下が顕著に見られた。これに対して、膨張黒鉛を添加した実験例2では、高密度化の影響は見られず放電容量が大きく、放電レート増加に伴う放電容量の低下が抑制されていることがわかった。また、表1に示すように、膨張黒鉛の添加量が1~5質量%であり電極密度が1.6g/cm3と高い実験例1~4では、高い放電レート特性及び高い理論エネルギー密度を示すことが明らかになった。特に、膨張黒鉛の添加量が1~3質量%である実験例1~3では、高い充放電効率及び高い塗工性も有することがわかった。なお、膨張黒鉛の添加量が5質量%では、放電レート特性は向上するが、比表面積が大きい膨張黒鉛によりLiイオンが消費されてしまうため、初回充放電時の効率が低下し、更に、ペーストの混練時に凝集、分離が起こり集電体への均一な塗工が難しかった。一方、膨張黒鉛を添加しない実験例6,7では、高密度ではレート特性が大幅に低下し、低密度ではエネルギー密度自体が低下した。膨張黒鉛が添加されていても電極密度が低い実験例5では、充放電効率や放電レート特性は良好であるが、理論エネルギー密度が低く、電池としてのエネルギーは増加しなかった。
図4は、実験例2,6の電極表面のSEM像である。図5は、実験例2,6の電極断面のSEM像である。図6は、膨張黒鉛のSEM像である。図4に示すように、電極表面のSEM観察では、大きな違いは見られないが、おそらく膨張黒鉛の変形による大きな粒子が確認された。また、図5に示すように、電極断面のSEM観察においては、膨張黒鉛粒子が変形した状態で確認された(図中の点線参照)。膨張黒鉛は、図6に示すように、層状で且つ空間を有しており、圧力が加えられた際に変形しやすいと推察される。膨張黒鉛は、潤滑剤的な役割を果たし、球形化天然黒鉛の割れや潰れなどをより抑制しているものと推察された。また、膨張黒鉛は、材料の密度は低いものの、それ自体がLiイオンの吸蔵放出ができるため、電極合材へ添加しても充放電容量の低下を招きにくいと考えられた。このため、天然黒鉛に膨張黒鉛を添加した電極においては、電極密度が1.5g/cm3を超えるような高密度化を図った場合でも、充放電特性の低下をより抑制することができるものと推察された。
Figure 0007049060000001
なお、本明細書で開示する電極及びリチウム二次電池は、上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本明細書で開示した電極及びリチウム二次電池は、二次電池の技術分野に利用可能である。
10 リチウム二次電池、11 集電体、12 正極合材、13 正極シート、14 集電体、17 電極合材、18 負極シート、19 セパレータ、20 イオン伝導媒体、22 円筒ケース、24 正極端子、26 負極端子。

Claims (7)

  1. 活物質としての球形化天然黒鉛と膨張黒鉛粒子とを含む電極合材が形成され、
    前記電極合材は、前記電極合材の全体に対して0質量%を超え5質量%以下の膨張黒鉛粒子を含み、合材密度が1.3g/cm3よりも大きく1.6g/cm 3 以下である、リチウム二次電池用電極。
  2. 前記電極合材は、電極合材の全体に対して1質量%以上3質量%以下の範囲で前記膨張黒鉛粒子が含まれている、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
  3. 前記電極合材は、合材密度が1.5g/cm3以上である、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用電極。
  4. 前記電極合材は、目付質量が10mg/cm2以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電極。
  5. 前記電極合材は、電極合材の全体に対して93質量%以上97質量%以下の前記球形化天然黒鉛を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電極。
  6. 正極活物質を有する正極と、
    請求項1~のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電極である負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えたリチウム二次電池。
  7. 活物質としての球形化天然黒鉛と膨張黒鉛粒子とを用いて電極合材を形成し、
    前記電極合材が、前記電極合材の全体に対して0質量%を超え5質量%以下の膨張黒鉛粒子を含み、合材密度が1.3g/cm3よりも大きく1.6g/cm 3 以下である、リチウム二次電池用電極を製造する、
    リチウム二次電池用電極の製造方法。
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